JP4038983B2 - ボールねじ式の送り装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば、無段変速機においてプーリを軸方向に変位させるのに用いられる送り装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、送り装置としては、内側部材と外側部材それぞれのらせん溝軌道間に介装される複数のボールと、このボールと同数のポケットを有する保持器を備え、この保持器で複数のボールを個々に保持し、ボールを循環させないタイプの非循環式保持器付きボールねじ式送り装置が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この送り装置では、保持器がボールを個々に保持しているから、保持器とボールとのすべり摩擦によるポケット内周の摩耗によって、保持器の軸方向のガタが増加していた。この保持器の軸方向のガタは、特に、送り量が少ない場合でのストロークの精密な設定を困難にしていた。また、軸方向スペースの増大にもつながっていた。
【0004】
そこで、この発明の目的は、保持器とボールとの干渉が少なく、かつ、保持器の軸方向のガタが少ないボールねじ式送り装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1の発明の送り装置は、外周にらせん溝軌道を形成した内側部材と、
内周にらせん溝軌道を形成した外側部材と、
上記2つのらせん溝軌道間に介装される複数のボールと、
上記複数のボールを保持する複数のポケットが形成された円環状の保持器とを備えたボールねじ式の送り装置であって、
上記保持器の各ポケットは、複数のボールを収容する軸方向に延びた長穴状ポケットであり、
この長穴状ポケットは、上記らせん溝軌道の軌跡に合わせて、所定寸法だけ軸方向に位置ずれさせながら、周方向に配列されており、
上記内側部材のらせん溝軌道または上記外側部材のらせん溝軌道に、ストッパピンが設けられ、
上記ストッパピンが周方向に当接する段部を、上記保持器のうちのポケットの軸方向長さが短い部分にだけ設け、
上記長穴状ポケットは、軸方向両端に上記ボールが位置する軸方向長さにされており、
上記保持器は、
全体としての輪郭が上記らせん溝軌道の軌跡に合わせたらせん形状であることによって周方向の1箇所だけに上記軸方向長さが短いポケットが形成され、この軸方向長さが短いポケットは周方向両側に並んでいる他の複数のポケットよりも軸方向長さが短く、この軸方向長さが短いポケットの軸方向両側にだけ形成される周方向の端面が上記段部を構成していることを特徴としている。
【0006】
この請求項1の発明では、上記保持器は、軸方向に延びた各長穴状のポケットに複数のボールを収容するから、ボールを個々に保持する保持器に比べて、保持器とボールとの干渉を少なくすることができ、摺動抵抗や摩耗を軽減できる。
【0007】
また、この長穴状ポケットは、上記らせん溝軌道の軌跡に合わせて、所定寸法だけ軸方向に位置ずれさせながら、周方向に配列されているから、この長穴状ポケットの両端にボールを位置させることができる。これにより、保持器とボール間の軸方向のガタが無くなり、保持器の軸方向の無駄な動きが無くなり、保持器の位置を正確に定めることができる。したがって、ストロークの精密な設定と、軸方向スペースの抑制を達成できる。
【0008】
また、請求項1の発明では、上記保持器の軸方向長さが短い部分に設けた段部が、上記らせん溝軌道に設けたストッパピンに周方向に当接して、保持器の軸方向の動きを規制する。したがって、ストッパが保持器に対して軸方向に係合する場合に比べて、ストッパに加わる力を小さくでき、ストッパの小型化を図れる。また、ストッパを、保持器に周方向に係合するように配置すればよいから、軸方向寸法の縮小を図れる。
【0009】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の送り装置において、上記保持器は、プレス成形された板材を湾曲させて円筒形状に成形し、両端を嵌め合わせて固定したものであることを特徴としている。
【0010】
この請求項2の発明では、板材をプレス成形して湾曲させて円筒形状にするから、従来のような円柱状の金属材料を旋削で形成された保持器に比べて、製作費を低減でき、製造効率も上げることができる。
【0011】
また、請求項3の発明は、請求項1に記載の送り装置において、
上記保持器は、長穴状ポケットの軸方向の端から軸方向に貫通したスリットを有しており、上記スリットは、長穴状ポケット毎に逆の軸方向に貫通していることを特徴としている。
【0012】
この請求項3の発明では、上記保持器は、長穴状ポケットの軸方向の端から軸方向に貫通したスリットを有しているから、ストッパピンに係合した際の応力を緩和でき、破断を防げる。さらに、熱処理(浸炭焼入れ等)しても、熱処理変形を緩和できる。
【0013】
また、この請求項3の発明では、上記スリットは、長穴状ポケット毎に逆の軸方向に貫通しているので、保持器の軸方向の両側に対し、周方向にわたって略均等に応力を分散できる。したがって、変形を抑えつつ、効率よく破断を防げる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0015】
図1に、この発明の送り装置の実施の形態の断面を示す。この実施形態は、外周にらせん溝軌道1Aが形成された内筒部材1と、内周にらせん溝軌道2Aが形成された外筒部材2と、上記らせん溝軌道1Aと2Aとの間に配置され、保持器3で保持された複数のボール5からなる。
【0016】
図2に示すように、この保持器3は、全体としてその輪郭が、らせん溝軌道1Aの軌跡に合わせた螺旋形状になっていて、その各ポケット11は、上記らせん溝軌道1Aのらせん軌道に合わせて、軸方向に位置ずれしながら、周方向に配列されている。また、この保持器3の周方向の端面3Aと3Bは、長穴状ポケット12に隣接して形成されていて、保持器3の段部4と9を構成している。この長穴状ポケット12は、その周方向両側に並んでいる他の複数の長穴状ポケット11よりも軸方向長さが短く、ボール5を2つだけ保持している。一方、各長穴状ポケット11は、ボール5を3つだけ保持している。
【0017】
図1に示すように、上記外筒部材2のらせん溝軌道2Aの基部2B側の一端には貫通孔6が形成され、この貫通孔6に外周側からストッパピン7が打ち込まれている。また、上記内筒部材1のらせん溝軌道1Aの基部側の一端には貫通孔8が形成され、この貫通孔8に内周側からストッパピン10が打ち込まれている。図3に、内筒部材1の内周側から打ち込まれたストッパピン10の端面10Bがらせん溝軌道1Aに突き出している様子を示す。
【0018】
図2に示すように、内筒部材1のらせん溝軌道1Aに打ち込まれたストッパピン10は、保持器3の周方向の端面3Aに対して周方向に係合する。また、外筒部材2に打ち込まれたストッパピン7は、保持器3のもう1つの周方向の端面3Bに周方向に係合する。
【0019】
上記保持器3は、図5に示すように、プレス成形された板材61(例えば、SPCC(スチールプレート・コールドコマーシャル)などの炭素鋼板からなる)を湾曲させ、図4に示すように、円筒形状にして、両端の膨出形状の凸嵌合部51とこの凸嵌合部51に嵌る凹嵌合部52とで結合されたものである。
【0020】
この実施形態によれば、図1に示した最短縮状態から、外筒部材2に対して内筒部材1を、矢印Zの方向に反時計回りに回転させることで、保持器3,ボール5および外筒部材2を一体に矢印Yの軸方向に直線移動させて、伸長させることができる。また、内筒部材1を矢印Zと逆の時計回りに回転させることで、保持器3,ボール5および外筒部材2を一体に矢印Yの逆方向に直線移動させて、収縮させることができる。ここで、上記最短縮状態に至ると、ストッパピン10が保持器3の端面3Aに周方向に係合し、ストッパピン7の周面7Aが端面3Bに係合して、内筒部材1と保持器3,ボール5,外筒部材2との相対回転が止まり、それ以上の収縮が止まる。
【0021】
この実施形態では、保持器3は、軸方向に延びた長穴状のポケット11,12に複数のボール5を収容するから、ボール5を個々に保持する保持器に比べて、保持器3とボール5との干渉を少なくすることができ、摺動抵抗や摩耗を軽減できる。また、この各長穴状ポケット11は、らせん溝軌道1A,2Aの軌跡に合わせて、所定寸法だけ軸方向に位置ずれさせながら、周方向に配列されているから、この長穴状ポケット11の両端にボール5を位置させることができる。これにより、保持器3とボール5間の軸方向のガタが無くなり、保持器3の軸方向の無駄な動きが無くなり、保持器3の位置を正確に定めることができる。したがって、ストロークの精密な設定と、軸方向スペースの抑制を達成できる。
【0022】
また、この実施形態では、ストッパピン10が保持器3の端面3Aに周方向に係合することで、内筒部材1に対して保持器3がストッパピン10を越えて基部1B側に移動することを防ぐ。また、ストッパピン7が端面3Bに周方向に係合することで、外筒部材2に対して保持器3がストッパピン7を越えて基部2B側に移動することを防ぐ。
【0023】
したがって、この実施形態では、ストッパが保持器に対して軸方向に係合する場合に比べて、ストッパピン7,10に加わる力を小さくでき、ストッパピン7,10の小型化を図れる。また、ストッパピン7,10を、保持器3に周方向に係合するように配置すればよいから、軸方向の配置スペースを低減でき、軸方向寸法の縮小を図れる。
【0024】
また、この実施形態では、板材61をプレス成形して湾曲させて円筒形状にするから、従来のような円柱状の金属材料を旋削で形成された保持器に比べて、製作費を低減でき、製造効率も上げることができる。
【0025】
また、この実施形態では、2つのストッパピン7,10が、内側部材1と外側部材2とに分けて設けられているので、ストッパ配置スペースを内側部材1と外側部材2とで分担できる。したがって、内側部材1または外側部材2の一方に2つのストッパピンが設けられている場合に比べて、全体の軸方向寸法を小さくすることができる。したがって、この実施形態の送り装置を備えることで、無段変速機のコンパクト化を図ることができる。
【0026】
尚、上記実施形態では、保持器3が一体ものであったが、図6の平面展開図に示すように、各長穴状ポケット11の軸方向の両端から軸方向に貫通したスリット71を有することで、保持器73を複数の分離した部分75が周方向に配列されたものとしてもよい。この場合には、保持器73は、長穴状ポケット11の軸方向の端から軸方向に貫通したスリット71を有し、各部分75に分離しているから、全体として、ストッパピン10,7に係合した際の応力を緩和でき、破断を防げる。さらに、熱処理(浸炭焼入れ等)しても、熱処理変形を緩和できる。
【0027】
また、図7の平面展開図に示すように、各長穴状ポケット11,11…が、1つ毎に逆の軸方向に貫通したスリット82を1つ有していてもよい。この場合には、保持器81を、一体ものとして扱える上に、保持器81の軸方向の両側に対し、周方向にわたって略均等に応力を分散できる。したがって、変形を抑えつつ、効率よく破断を防げる。
【0028】
さらにまた、上記スリット82は、全部のポケット11ではなく、1つおきや2つおきのポケットに形成されていてもよく、個数はいくつであってもよい。
【0029】
【発明の効果】
以上より明らかなように、請求項1の発明は、円環状の保持器を備えたボールねじ式の送り装置であって、上記保持器は、軸方向に延びた各長穴状のポケットに複数のボールを収容するから、ボールを個々に保持する保持器に比べて、保持器とボールとの干渉を少なくすることができ、摺動抵抗や摩耗を軽減できる。また、この長穴状ポケットは、らせん溝軌道の軌跡に合わせて、所定寸法だけ軸方向に位置ずれさせながら、周方向に配列されているから、この長穴状ポケットの両端にボールを位置させることができる。これにより、保持器とボール間の軸方向のガタが無くなり、保持器の軸方向の無駄な動きが無くなり、保持器の位置を正確に定めることができる。したがって、ストロークの精密な設定と、軸方向スペースの抑制を達成できる。
【0030】
また、請求項1の発明は、上記保持器の軸方向長さが短い部分に設けた段部が、上記らせん溝軌道に設けたストッパピンに周方向に当接して、保持器の軸方向の動きを規制する。したがって、ストッパが保持器に対して軸方向に係合する場合に比べて、ストッパに加わる力を小さくでき、ストッパの小型化を図れる。また、ストッパを、保持器に周方向に係合するように配置すればよいから、軸方向寸法の縮小を図れる。
【0031】
また、請求項2の発明では、上記保持器は、プレス成形された板材を湾曲させて円筒形状に成形し、両端を嵌め合わせて固定したものであるから、従来のような円柱状の金属材料を旋削で形成された保持器に比べて、製作費を低減でき、製造効率も上げることができる。
【0032】
また、請求項3の発明では、上記保持器は、長穴状ポケットの軸方向の端から軸方向に貫通したスリットを有しているから、ストッパピンに係合した際の応力を緩和でき、破断を防げる。さらに、熱処理(浸炭焼入れ等)しても、熱処理変形を緩和できる。
【0033】
また、請求項3の発明の送り装置では、上記スリットは、長穴状ポケット毎に逆の軸方向に貫通しているので、保持器の軸方向の両側に対し、周方向にわたって略均等に応力を分散できる。したがって、変形を抑えつつ、効率よく破断を防げる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明のボールねじ式送り装置の実施形態の半断面図である。
【図2】 上記実施形態の内筒部材,保持器,ボール、ストッパピンの嵌合状態を示す模式図である。
【図3】 上記実施形態の内筒部材にストッパピンが打ち込まれている様子を示す模式図である。
【図4】 上記実施形態の保持器の外観を示す斜視図である。
【図5】 上記保持器の平面展開図である。
【図6】 上記保持器の変形例を示す平面展開図である。
【図7】 上記保持器のもう1つの変形例を示す平面展開図である。
【符号の説明】
1…内筒部材、1A…らせん溝軌道、1B…基部、2…外筒部材、
2A…らせん溝軌道、3,73,81…保持器、3A,3B…端面、
5…ボール、6,8…貫通孔、7,10…ストッパピン、7A,10A…周面、
7B,10B…端面、11,12…スリット状ポケット、
71…スリット、75…部分、82…スリット。
Claims (3)
- 外周にらせん溝軌道を形成した内側部材と、
内周にらせん溝軌道を形成した外側部材と、
上記2つのらせん溝軌道間に介装される複数のボールと、
上記複数のボールを保持する複数のポケットが形成された円環状の保持器とを備えたボールねじ式の送り装置であって、
上記保持器の各ポケットは、複数のボールを収容する軸方向に延びた長穴状ポケットであり、
この長穴状ポケットは、上記らせん溝軌道の軌跡に合わせて、所定寸法だけ軸方向に位置ずれさせながら、周方向に配列されており、
上記内側部材のらせん溝軌道または上記外側部材のらせん溝軌道に、ストッパピンが設けられ、
上記ストッパピンが周方向に当接する段部を、上記保持器のうちのポケットの軸方向長さが短い部分にだけ設け、
上記長穴状ポケットは、軸方向両端に上記ボールが位置する軸方向長さにされており、
上記保持器は、
全体としての輪郭が上記らせん溝軌道の軌跡に合わせたらせん形状であることによって周方向の1箇所だけに上記軸方向長さが短いポケットが形成され、この軸方向長さが短いポケットは周方向両側に並んでいる他の複数のポケットよりも軸方向長さが短く、この軸方向長さが短いポケットの軸方向両側にだけ形成される周方向の端面が上記段部を構成していることを特徴とする送り装置。 - 請求項1に記載の送り装置において、
上記保持器は、プレス成形された板材を湾曲させて両端を嵌め合わせて固定したものであることを特徴とする送り装置。 - 請求項1に記載の送り装置において、
上記保持器は、長穴状ポケットの軸方向の端から軸方向に貫通したスリットを有しており、
上記スリットは、長穴状ポケット毎に逆の軸方向に貫通していることを特徴とする送り装置。
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