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JP4039103B2 - エステル化合物の製造方法 - Google Patents
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JP4039103B2 - エステル化合物の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はエステル化合物の製造方法に関し、より詳細にはアルデヒド類とアルコール類の混合物を液相中で脱水素してエステル化合物を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
不均一系触媒を使用するアルデヒド類とアルコール類の混合物を脱水素するエステル化合物の製造方法は、例えば特開2000−302727号に示されるような分子状酸素存在下、パラジウム系触媒を使用した反応が報告されている。しかしながら、分子状酸素添加による爆発の危険性があり、工業的な実用性に於ける安全的課題を解決したものとは言い難い。また、発生する水素ガスを再利用することができないという問題点を有している。
また、特開2001−328966号公報には分子状酸素を必要としない、不均一系触媒を用いたアルデヒド、アルコールの混合物の脱水素によるエステル製造法が報告されているが、気相法であるために反応により副生する水素ガス、及び生成物であるエステル化合物が触媒と均一相に共存する。そのため、エステルの水素化逆反応による平衡制約を生じ、高転化率、高選択率を達成することが困難なものであった。そのため発生する水素ガスを反応系内から放出でき得る液相脱水素反応の開発が期待されているのが現状である。
【0003】
一方、錯体触媒を使用したアルデヒド類とアルコール類の混合物を液相で脱水素するエステル化合物の製造法は既に検討されている。例えば、トリフェニルホスフィンを配位子としたルテニウム錯体触媒を用いる反応が挙げられる(J.Org.Chem.,1987,52,4319−4327)。しかしながら、この触媒系では反応の進行に長時間を必要とし、工業的な使用には反応速度の向上など生産性の問題点が残されていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、遷移金属錯体触媒を用い、酸素、水素受容体などの添加剤を必要とすることなく、また平衡制約無しに、短時間で効率よくエステル化合物を製造する方法を提供することを課題とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、(i)1つのアルキル基と2つのアリール基を置換基として有する単座ホスフィン配位子、(ii)2つのアルキル基と1つのアリール基を置換基として有する単座ホスフィン配位子、及び(iii)アルキル鎖の両端にリン原子が結合した特定の2座のホスフィン配位子からなる群から選択される少なくとも1つの配位子を、特に(iii)の2座ホスフィン配位子を有する錯体触媒を用いることにより上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明の要旨は下記(1)〜(4)に存する。
(1)アルデヒドとアルコールとからなる混合物を液相中で脱水素してエステル化合物を製造する方法において、下記構造式で表されるアルキル鎖の両端にリン原子が結合した2座のホスフィン配位子を有するルテニウム錯体触媒を用いることを特徴とするエステル化合物の製造方法。
【0006】
【化2】
【0007】
(式中、A、B、C及びDは、アリール基又はアルキル基を表し、但し、A及びBの少なくとも一方、並びに、C及びDの少なくとも一方はアリール基である。Yはアルキル鎖を表す。)
【0008】
(2)8族遷移金属錯体触媒が、ルテニウム錯体触媒である上記(1)に記載の製造方法。
【0009】
(3)アルデヒド類とアルコール類との混合比が、アルデヒド類のアルコールに対するモル比で1〜4である上記(1)又は(2)に記載の製造方法。
(4)アルデヒド類とアルコール類が、同一の炭素骨格を有する上記(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明は、アルデヒド類とアルコール類とからなる混合物を脱水素してエステル化合物を製造する方法において、「(i)1つのアルキル基と2つのアリール基を置換基として有する単座ホスフィン配位子、(ii)2つのアルキル基と1つのアリール基を置換基として有する単座ホスフィン配位子、及び(iii)上記構造式で表されるアルキル鎖の両端にリン原子が結合した2座のホスフィン配位子からなる群から選択される少なくとも1つの配位子を有する8族遷移金属錯体触媒」(以下、纏めてホスフィン配位子を有する8族遷移金属錯体触媒と呼ぶことがある)を用いることを特徴とするものである。以下、その詳細について説明する。
【0011】
本発明において、原料とするアルデヒド類及びアルコール類としては、具体的には、炭素数が1〜50の飽和または不飽和のアルデヒド類及びアルコール類が挙げられ、特に炭素数1〜10のアルデヒド類及びアルコール類が好ましい。またこれらのアルデヒド類及びアルコール類は、他の置換基を有していてもよい。
【0012】
アルデヒド類の具体例としては、ホルムアルデヒド、エタナール、プロパナール、ブタナール、ペンタナール、ヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール、ノナナール、デカナール、アクロレイン、クロトンアルデヒドなどの分岐を有していても、官能基を有していても構わない脂肪族アルデヒド類、ベンズアルデヒド、シンナミルアルデヒド、あるいは芳香族環上にメトキシ基、ハロゲン基、炭化水素基、などの官能基を有しても構わない芳香族アルデヒド類などが挙げられる。
大気圧下、高温度での反応が容易な沸点100℃以上のアルデヒド類が反応速度の観点から好ましく、特に好ましくは沸点150℃以上のアルデヒド類である。
【0013】
また、アルコール類の具体例としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール1−ブタノール、2−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、4−ヘプタノール、1―オクタノール、2−オクタノール、3−オクタノール、4−オクタノール、1−ノナノール、2−ノナノール、3−ノナノール、4−ノナノール、5−ノナノール、1−デカノール、2−デカノール、3−デカノール、4−デカノール、5−デカノール、アリルアルコール、1−ブテノール、2−ブテノール、1−ペンテノール、2−ペンテノール、1−ヘキセノール、2−ヘキセノール、3−ヘキセノール、1−ヘプテノール、2−ヘプテノール、3−ヘプテノール、1−オクテノール、2−オクテノール、3−オクテノール、4−オクテノール、1−ノネノール、2−ノネノール、3−ノネノール、4−ノネノール、1−デセノール、2−デセノール、3−デセノール、4−デセノール、5−デセノール、シクロヘキサノール、シクロペンタノール、シクロヘプタノール、1−フェネチルアルコール、2−フェネチルアルコール、メタノールアミン、エタノールアミン、また、特に分子内に含まれる任意の2つのヒドロキシル基が3〜6個の炭素鎖で結ばれたポリオール類、具体的には1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキシルジメチロール、1,3−シクロヘキシルジメチロール、1−ヒドロキシメチル−2−ヒドロキシエチルシクロヘキサン、1−ヒドロキシ−2−ヒドロキシプロピルシクロヘキサン、1−ヒドロキシル−2−ヒドロキシエチルシクロヘキサン、1,2−ベンジルジメチロール、1,3−ベンジルジメチロール、1−ヒドロキシメチル−2−ヒドロキシエチルベンゼン、1−ヒドロキシ−2−ヒドロキシプロピルベンゼン、1−ヒドロキシル−2−ヒドロキシエチルベンゼン等が挙げられる。
大気圧下、高温度での反応が容易な沸点100℃以上のアルコール類が反応速度の観点から好ましく、特に好ましくは沸点150℃以上のアルコール類である。
【0014】
なお、本発明においては、反応選択率の観点から、アルデヒド類とアルコール類とが、同一の炭素骨格を有するものを選択することが好ましい。具体的には、ベンズアルデヒドとベンジルアルコール、ホルムアルデヒドとメタノール、エタナールとエタノール、プロパナールと1−プロパノール、ブタナールと1−ブタノール、ヘプタナールと1−ヘプタノール、ヘキサナールと1−ヘキサノール、オクタナールと1−オクタノール、デカナールと1−デカノールなどの組み合わせが好ましく、特に好ましくはベンズアルデヒドとベンジルアルコール、オクタナールと1−オクタノール、デカナールと1−デカノールとの組み合わせである。
例えばベンズアルデヒドとベンジルアルコールの組み合わせでは、脱水素反応が進行する際に、アルデヒド類が水素化されても、生成するアルコールが原料であるベンジルアルコールであり、選択率低下を引き起こさずに反応を継続することができるためである。
【0015】
アルデヒド類とアルコール類との混合比は、アルデヒド類のアルコールに対するモル比で通常1〜10であり、好ましくは1〜4である。アルデヒドの割合が多すぎると、脱水素によりエステルを製造するのに必要な水素量を確保できず、原料アルデヒドが多く残存し、また逆にアルデヒドの割合が少なすぎると、安定なアセタール類が生成し、反応速度が低下してしまう傾向がある。
【0016】
本発明における触媒は、(i)1つのアルキル基と2つのアリール基を置換基として有する単座ホスフィン配位子、(ii)2つのアルキル基と1つのアリール基を置換基として有する単座ホスフィン配位子、及び(iii)上記構造式で表されるアルキル鎖の両端にリン原子が結合した2座のホスフィン配位子からなる群から選択される少なくとも1つの配位子を有する8族遷移金属錯体である。特に好ましくは、(iii)の2座のホスフィン配位子を有する8族遷移金属錯体である。
ホスフィンの置換基のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、通常炭素数1〜20の、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基であり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ベンジル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
また、ホスフィンの置換基のアリール基としては、通常炭素数6〜24の、好ましくは炭素数6〜12のアリールであり、例えばフェニル、ナフチル、トリル、キシリル等が挙げられる。
【0017】
2座配位子としては、下記構造式のように示され、式中、A、B、C及びDは、アリール基又はアルキル基を表し、但し、A及びBの少なくとも一方、並びに、C及びDの少なくとも一方はアリール基である。
【0018】
【化3】
【0019】
即ち、A、Bは2つともアリール基(同じでも異なってもよい)、又は一方がアリール基で他方がアルキル基である。C、Dに関しても同様の構造をとる。
Yは、アルキル鎖を表し、炭素数は通常1〜8であり、好ましくは1〜4であり、最も好ましくは2である。アルキル鎖は置換基を有していても、分岐していてもよい。
【0020】
これらホスフィンの置換基のアルキル基、アルキル鎖及びアリール基は、更に置換基を有していてもよく、例えばハロゲン原子(塩素、臭素、フッ素等)、アミノ基、アルコキシル基(好ましくは炭素数1〜10)、ヒドロキシル基、等が挙げられる。
【0021】
(i)1つのアルキル基と2つのアリール基を置換基として有する単座ホスフィン配位子としては、具体的には、ジフェニルメチルホスフィン、ジフェニルエチルホスフィン、ジフェニルプロピルホスフィン、ジフェニルブチルホスフィン、ジフェニルヘキシルホスフィン、ジフェニルオクチルホスフィン、ジフェニルベンジルホスフィン、ジトリルメチルホスフィン、ジトリルエチルホスフィン、ジトリルブチルホスフィン、ジ(フルオロフェニル)メチルホスフィン、ジ(クロロフェニル)メチルホスフィン、ジ(ブロモフェニル)メチルホスフィン、ジキシリルメチルホスフィン、ジ(メトキシフェニル)メチルホスフィン、ジ(ヒドロキシフェニル)メチルホスフィン、ジ(アミノフェニル)メチルホスフィン、ジナフチルメチルホスフィン、フェニルトリルメチルホスフィン等が挙げられる。
【0022】
(ii)2つのアルキル基と1つのアリール基を置換基として有する単座ホスフィン配位子としては、具体的には、ジメチルフェニルホスフィン、ジエチルフェニルホスフィン、ジプロピルフェニルホスフィン、ジブチルフェニルホスフィン、ジペンチルフェニルホスフィン、ジヘキシルフェニルホスフィン、ジオクチルフェニルホスフィン、ジベンジルフェニルホスフィン、ジメチルトリルホスフィン、ジエチルトリルホスフィン、ジブチルトリルホスフィン、ジオクチルトリルホスフィン、ジメチル(フルオロフェニル)ホスフィン、ジメチル(クロロフェニル)ホスフィン、ジメチル(ブロモフェニル)ホスフィン、ジメチルキシリルホスフィン、ジメチル(メトキシフェニル)ホスフィン、ジメチル(ヒドロキシフェニル)ホスフィン、ジメチル(アミノフェニル)ホスフィン、ジメチルナフチルホスフィン、メチルエチルフェニルホスフィン等が挙げられる。
【0023】
(iii)アルキル鎖の両端にリン原子が結合した特定の2座のホスフィン配位子としては、具体的には、ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,1‘−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、1,2−ビス(ジトリルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジフルオロフェニルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジクロロフェニルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジブロモフェニルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジナフチルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジメトキシフェニルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジヒドロキシフェニルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジアミノフェニルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(メチルフェニルホスフィノ)エタン、1、2−ビス(エチルフェニルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ブチルフェニルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(シクロヘキシルフェニルホスフィノ)エタン、ビス(メチルフェニルホスフィノ)メタン、1、3−(メチルフェニルホスフィノ)プロパン等が挙げられ、それらのうち1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンが好ましい。
【0024】
本発明における8族遷移金属の供給形態としては特に制限されるものでなく、8族遷移金属又は8族遷移金属化合物のいずれかを源体として使用することが可能である。8族遷移金属としては、ルテニウム、イリジウム、ロジウム等が挙げられ、好ましくはルテニウムである。8族遷移金属化合物としては、ルテニウム化合物が好ましく、酸化物、水酸化物、無機酸塩、有機酸塩、錯化合物等が挙げられる。
【0025】
8族遷移金属化合物の具体例としては、二酸化ルテニウム、四酸化ルテニウム、水酸化ルテニウム、三塩化ルテニウム、三臭化ルテニウム、三沃化ルテニウム、硝酸ルテニウム、酢酸ルテニウム、トリス(アセチルアセトナト)ルテニウム、トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)ルテニウム、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)ルテニウム、ヘキサクロロルテニウム酸ナトリウム、テトラカルボニルルテニウム酸ジカリウム、ペンタカルボニルルテニウム、シクロペンタジエニルジカルボニルルテニウム、ジブロモトリカルボニルルテニウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ヒドリドルテニウム、テトラ(トリフェニルホスフィン)ジヒドリドルテニウム、テトラ(トリメチルホスフィン)ジヒドリドルテニウム、ビス(トリ−n−ブチルホスフィン)トリカルボニルルテニウム、テトラヒドリドデカカルボニルテトラルテニウム、ドデカカルボニルトリルテニウム、オクタデカカルボニルヘキサルテニウム酸ジセシウム、ウンデカカルボニルヒドリドトリルテニウム酸テトラフェニルホスフォニウム、三塩化イリジウム、三臭化イリジウム、三沃化イリジウム、硝酸イリジウム、酢酸イリジウム、トリス(アセチルアセトナト)イリジウム、トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)イリジウム、三塩化ロジウム、三臭化ロジウム、三沃化ロジウム、硝酸ロジウム、酢酸ロジウム、トリス(アセチルアセトナト)ロジウム、トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)ロジウム等が挙げられ、好ましくはトリス(アセチルアセトナト)ルテニウム、トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)ルテニウムである。
【0026】
本発明の方法に使用される、ホスフィン配位子を有する8族遷移金属錯体触媒は、予め合成し、単離、精製して用いてもよいし、調製液をそのまま(単離、精製せずに)用いてもよいし、その前駆体をそれぞれ単独に反応系(即ち、原料であるアルデヒド類及びアルコール類)に添加して、反応系内で触媒を調製して使用してもよい。尚、予め触媒を合成する場合には、リン化合物を8族遷移金属よりも過剰に用いた方が、効率よく触媒を生成させることができる。
即ち具体的には、本発明においては、エステル化の方法として、例えば下記(1)〜(3)の方法等を採用することができる。
(1)8族遷移金属とリン化合物をそれぞれ別にエステル化反応液中へ供給し、反応液中で8族遷移金属−リン錯体触媒を形成しつつ、エステル化反応を行う方法。
(2)8族遷移金属とリン化合物を予め反応させ、8族遷移金属−リン錯体触媒を作り、この8族遷移金属−リン錯体触媒を単離、精製した後、エステル化反応液中へ供給しエステル化反応を行う方法。
(3)上記(2)と同様に調製した8族遷移金属−リン錯体触媒を単離、精製せずにそのままエステル化反応液中へ供給し、エステル化反応を行う方法。
【0027】
しかしながら、触媒源体である8族遷移金属化合物とアルコールが副反応を生じ、エステル類の選択率低下を引き起こすことがあるため、触媒は予め合成しておき、その後アルコール類とアルデヒド類とからなる混合物に添加する上記(2)又は(3)の方法が好ましい。上記(3)の方法は、上記(2)の方法よりも簡便であるが、添加するリンの量によっては、8族遷移金属化合物と結合していないリン化合物が存在しており、そのリンがエステルと副反応を起こす可能性があるのでその意味からは(2)の方法が好ましい。
【0028】
上記(1)の方法でエステル化を行う場合であって、本発明において、8族遷移金属錯体触媒として好ましいルテニウム錯体触媒である場合について詳述する。
配位子が単座ホスフィン配位子の場合、ルテニウム錯体触媒において、単座ホスフィン配位子とルテニウム化合物とは、リン原子/ルテニウム原子の原子比がモル比で1〜20であるのが好ましく、より好ましくは2〜6となるように混合される。
ホスフィン配位子が少なすぎると触媒活性種が生成するのに不十分であり反応速度が低下する傾向があり、逆にホスフィン配位子が多すぎると、単座のホスフィン配位子の場合では、過剰量のホスフィン配位子が生成物のエステルと反応し、多量の高沸点副生物を生成し、選択率低下を引き起こしてしまう傾向がある。
【0029】
また、配位子が2座ホスフィン配位子の場合、ルテニウム錯体触媒において、2座のホスフィン配位子とルテニウム化合物とは、リン原子/ルテニウム原子の原子比がモル比で2〜4であるのが好ましく、より好ましくは2〜3となるように混合される。
ホスフィン配位子が少なすぎると触媒活性種が生成するのに不十分であり反応速度が低下する傾向がある。逆に多すぎると、2座のホスフィン配位子の場合では、過剰量のホスフィン配位子がルテニウム錯体触媒の活性点を塞いでしまい、反応速度が低下する傾向がある。
【0030】
本発明において、予め調製を行った8族遷移金属錯体触媒を用いる場合、即ち上記(2)の方法でエステル化を行う場合であって、本発明において、8族遷移金属錯体触媒として好ましいルテニウム錯体触媒である場合、触媒中に含まれるリン原子とルテニウム原子とは、配位子が単座の場合、モル比で2〜4であるのが好ましく、特には2であるのが好ましく、また配位子が2座の場合も、リン原子/ルテニウム原子の原子比はモル比で2〜4であるのが好ましく、特には2であるのが好ましい。
【0031】
更には、上記(3)の方法でエステル化を行う場合であって、本発明において、8族遷移金属錯体触媒として好ましいルテニウム錯体触媒である場合、予め調製した錯体触媒の調製液中に含まれるリン原子とルテニウム原子とは、配位子が単座の場合、モル比で2〜6であるのが好ましく、配位子が2座の場合はモル比で2〜3であるのが好ましい。
【0032】
(i)1つのアルキル基と2つのアリール基を置換基として有する単座ホスフィン配位子を有する8族遷移金属錯体としては、具体的には、ビス(アセチルアセトナト)ビス(ジフェニルメチルホスフィン)ルテニウム、ビス(アセチルアセトナト)ビス(ジフェニルエチルホスフィン)ルテニウム、ビス(アセチルアセトナト)ビス(ジフェニルブチルホスフィン)ルテニウム、ビス(アセチルアセトナト)ビス(ジフェニルオクチルホスフィン)ルテニウム、ビス(アセチルアセトナト)ビス(ジナフチルメチルホスフィン)ルテニウム、ジヒドリドテトラキス(ジフェニルメチルホスフィン)ルテニウム、ジヒドリドテトラキス(ジフェニルエチルホスフィン)ルテニウム、ジヒドリドテトラキス(ジフェニルブチルホスフィン)ルテニウム、ジヒドリドテトラキス(ジフェニルオクチルホスフィン)ルテニウム、ジヒドリドテトラキス(ジナフチルメチルホスフィン)ルテニウム、ビス(アセチルアセトナト)(ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン)ルテニウム等が挙げられる。
【0033】
また、(ii)2つのアルキル基と1つのアリール基を置換基として有する単座ホスフィン配位子を有する8族遷移金属錯体としては、具体的に、ビス(アセチルアセトナト)ビス(ジメチルフェニルホスフィン)ルテニウム、ビス(アセチルアセトナト)ビス(ジエチルフェニルホスフィン)ルテニウム、ビス(アセチルアセトナト)ビス(ジブチルフェニルホスフィン)ルテニウム、ビス(アセチルアセトナト)ビス(ジオクチルフェニルホスフィン)ルテニウム、ビス(アセチルアセトナト)ビス(ジメチルナフチルホスフィン)ルテニウム、ジヒドリドテトラキス(ジメチルフェニルホスフィン)ルテニウム、ジヒドリドテトラキス(ジエチルフェニルホスフィン)ルテニウム、ジヒドリドテトラキス(ジブチルフェニルホスフィン)ルテニウム、ジヒドリドテトラキス(ジオクチルフェニルホスフィン)ルテニウム、ジヒドリドテトラキス(ジメチルナフチルホスフィン)ルテニウム等が挙げられる。
【0034】
(iii)アルキル鎖の両端にリン原子が結合した特定の2座のホスフィン配位子を有する8族遷移金属錯体としては、具体的に、ビス(アセチルアセトナト)(1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)ルテニウム、ビス(アセチルアセトナト)(1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン)ルテニウム、ビス(アセチルアセトナト)(1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン)ルテニウム、ジヒドリド(ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン)ルテニウム、ジヒドリド(1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)ルテニウム、ジヒドリド(1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン)ルテニウム、ジヒドリド(1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン)ルテニウム等が挙げられる。
【0035】
好ましくはビス(アセチルアセトナト)ビス(ジメチルフェニルホスフィン)ルテニウム、ビス(アセチルアセトナト)ビス(ジエチルフェニルホスフィン)ルテニウム、ビス(アセチルアセトナト)ビス(ジブチルフェニルホスフィン)ルテニウム、ビス(アセチルアセトナト)ビス(ジオクチルフェニルホスフィン)ルテニウム、ビス(アセチルアセトナト)ビス(ジメチルナフチルホスフィン)ルテニウム、ビス(アセチルアセトナト)ビス(ジフェニルメチルホスフィン)ルテニウム、ビス(アセチルアセトナト)ビス(ジフェニルエチルホスフィン)ルテニウム、ビス(アセチルアセトナト)ビス(ジフェニルブチルホスフィン)ルテニウム、ビス(アセチルアセトナト)ビス(ジフェニルオクチルホスフィン)ルテニウム、ビス(アセチルアセトナト)ビス(ジナフチルメチルホスフィン)ルテニウム、ジヒドリドテトラキス(ジメチルフェニルホスフィン)ルテニウム、ジヒドリドテトラキス(ジエチルフェニルホスフィン)ルテニウム、ジヒドリドテトラキス(ジブチルフェニルホスフィン)ルテニウム、ジヒドリドテトラキス(ジオクチルフェニルホスフィン)ルテニウム、ジヒドリドテトラキス(ジメチルナフチルホスフィン)ルテニウム、ジヒドリドテトラキス(ジフェニルメチルホスフィン)ルテニウム、ジヒドリドテトラキス(ジフェニルエチルホスフィン)ルテニウム、ジヒドリドテトラキス(ジフェニルブチルホスフィン)ルテニウム、ジヒドリドテトラキス(ジフェニルオクチルホスフィン)ルテニウム、ジヒドリドテトラキス(ジナフチルメチルホスフィン)ルテニウム、ビス(アセチルアセトナト)(ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン)ルテニウム、ビス(アセチルアセトナト)(1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)ルテニウム、ビス(アセチルアセトナト)(1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン)ルテニウム、ビス(アセチルアセトナト)(1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン)ルテニウムである。
【0036】
特に好ましくはビス(アセチルアセトナト)(1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)ルテニウムであるが、ジヒドリド(1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)ルテニウムも好ましい。
【0037】
本発明の方法に使用される、ホスフィン配位子を有する8族遷移金属錯体触媒の合成方法としては、限定されるものではないが、例えば、8族遷移金属及び/又は8族遷移金属化合物とホスフィン配位子を水素、希ガス、窒素、二酸化炭素、炭化水素ガス等のガス雰囲気下、溶媒中あるいは溶媒非存在下で、加熱する方法が挙げられる。
加熱温度は通常120℃以上、好ましくは140℃以上であり、通常220℃以下、好ましくは200℃以下である。
【0038】
これらの遷移金属及び/又は遷移金属化合物の使用量は、反応液中の濃度が、反応液中の金属として好ましくは0.001〜10.0重量%、より好ましくは0.01〜3.0重量%となる量である。
尚、反応液は、原料のアルデヒド類及びアルコール類、並びに必要に応じて使用したその他の溶媒を含むものである。
本発明においては、(i)1つのアルキル基と2つのアリール基を置換基として有するホスフィン配位子を有する8族遷移金属錯体を単独で、又は複数種併用して使用してもよいし、(ii)2つのアルキル基と1つのアリール基を置換基として有するホスフィン配位子を有する8族遷移金属錯体を単独で、又は複数種併用して使用してもよいし、(iii)上記構造式で表されるアルキル鎖の両端にリン原子が結合した2座のホスフィン配位子からなる群から選択される少なくとも1つの配位子を有する8族遷移金属錯体を単独で、又は複数種併用して使用してもよいし、(i)、(ii)又は(iii)の触媒を適宜組み合わせて使用してもよいが、併用する場合は、合計して、触媒金属濃度が上記範囲となるように用いる。
【0039】
本発明により製造されるエステル化合物としては、酪酸ブチル、酪酸エチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、プロピオン酸プロピル、ペンタン酸ペンチル、ヘキサン酸ヘキシル、ヘプタン酸ヘプチル、オクタン酸オクチル、ノナン酸ノニル、デカン酸デシル、ベンジルベンゾエート、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ノニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−(ジエチルアミノ)エチル、メタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル等が挙げられ、好ましくは対象な骨格を有するエステル化合物であり、例えば、ベンジルベンゾエート、オクチル酸オクチル等である。
【0040】
本発明のエステル化合物の製造方法は、液相中で行われるものであり、反応原料以外の溶媒を更に用いてもよいし、反応原料および生成物そのものを溶媒とし、他の溶媒を用いずに行ってもよい。特に、後者の反応原料および生成物そのものを溶媒とし、他の溶媒を用いずに行う方法が好ましい。
【0041】
本発明において使用可能な溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、アニソール、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサンのエーテル類、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭素、n−ヘキサン、n−オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、ニトロメタン、ニトロベンゼン等のニトロ化合物、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のカルボン酸アミド、ヘキサメチルリン酸トリアミドその他のアミド類、N,N−ジメチルイミダゾリジノン等の尿素類、ジメチルスルホン等のスルホン類、ジメチルスルフォキシド等のスルフォキシド類、ガンマブチロラクトン、カプロラクトン等のラクトン類、テトラグライム、トリグライム等のポリエーテル類、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート等の炭酸エステル類等が挙げられ、好ましくはエーテル類、ポリエーテル類、および反応原料、生成物のアルコール、多価アルコール、アルデヒド、エステル類である。
中でも、エーテル類、ポリエーテル類が好ましく、特にトリグライム、テトラグライムが好ましい。
【0042】
反応温度は通常20〜350℃、好ましくは50〜250℃、さらに好ましくは100〜220℃である。
本発明は開放系で、反応で生成する水素を抜き出すことにより、反応を促進することができるが、常圧下あるいは加圧下でも反応は進行し、水素、およびメタン、エタン、ブタンなどの炭化水素ガス、および窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素などの不活性ガスなどの雰囲気下で行うことができる。
好ましくは常圧下、不活性ガス雰囲気下、又は水素ガス雰囲気下である。尚、水素ガス雰囲気下の場合、その圧力はゲージ圧力で0.001MPa〜1MPaであるのが好ましい。
反応は回分方式および連続方式のいずれでも実施することができる。
【0043】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
尚、下記実施例・比較例において、選択率及び転化率は、それぞれサンプリングした反応液を、ガスクマトグラフィーにて分析し、内部標準法で、ベンジルベンゾエートなどの収量、ベンズアルデヒド、ベンジルアルコールなどの原料の残量を決定し、この値から求めた。
【0044】
実施例1
50ml容のガラス製反応器に、トリス(アセチルアセトナト)ルテニウム0.375g、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン0.374g(モル比、リン/ルテニウム=2.0)、ベンズアルデヒド4.02g、ベンジルアルコール1.01g(モル比、アルデヒド/アルコール=4.1)を加え(ルテニウム触媒濃度1.6重量%)、170℃、10時間反応させ、ベンジルベンゾエートを選択率79%、アルデヒド、アルコール合計転化率93%で得た。
【0045】
実施例2
50ml容のガラス製反応器に、トリス(アセチルアセトナト)ルテニウム0.298g、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン0.301g(モル比、リン/ルテニウム=2.0)、ベンズアルデヒド2.02g、ベンジルアルコール2.02g(モル比、アルデヒド/アルコール=1.0)を加え(ルテニウム触媒濃度1.6重量%)、170℃、10時間反応させ、ベンジルベンゾエートを選択率87%、アルデヒド、アルコール合計転化率78%で得た。
【0046】
比較例3
50ml容のガラス製反応器に、トリス(アセチルアセトナト)ルテニウム0.301g、ジエチルフェニルホスフィン0.259g(モル比、リン/ルテニウム=2.0)、ベンズアルデヒド2.04g、ベンジルアルコール2.06g(モル比、アルデヒド/アルコール=1.0)を加え(ルテニウム触媒濃度1.6重量%)、170℃、10時間反応させ、ベンジルベンゾエートを選択率82%、アルデヒド、アルコール合計転化率74%で得た。
【0047】
比較例1
50ml容のガラス製反応器に、トリス(アセチルアセトナト)ルテニウム0.300g、トリフェニルホスフィン0.396g(モル比、リン/ルテニウム=2.0)、ベンズアルデヒド2.10g、ベンジルアルコール2.01g(モル比、アルデヒド/アルコール=1.1)を加え(ルテニウム触媒濃度1.6重量%)、170℃、10時間反応させ、ベンジルベンゾエートを選択率39%、アルデヒド、アルコール合計転化率33%で得た。
【0048】
比較例2
50ml容のガラス製反応器に、ジヒドリドテトラキス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(Aldrich製)0.216g、ベンズアルデヒド0.503g、ベンジルアルコール0.520g(モル比、アルデヒド/アルコール=1.0)を加え(ルテニウム触媒濃度1.5重量%)、170℃、10時間反応させ、ベンジルベンゾエートを選択率68%、アルデヒド、アルコール合計転化率47%で得た。
【0049】
上記の通り、本発明の実施例では、トリフェニルホスフィンを配位子とした錯体触媒を使用した比較例と比べて、選択率及び転化率ともに高く、効率よくエステル化合物を製造し得ることが判る。
【0050】
【発明の効果】
本発明は、トリフェニルホスフィンを配位子とした錯体触媒ではなく、(i)1つのアルキル基と2つのアリール基を置換基として有する単座ホスフィン配位子、(ii)2つのアルキル基と1つのアリール基を置換基として有する単座ホスフィン配位子、及び(iii)上記構造式で表されるアルキル鎖の両端にリン原子が結合した2座のホスフィン配位子からなる群から選択される少なくとも1つの配位子を有する8族遷移金属錯体をエステル化合物の製造方法に使用するので、酸素、水素受容体などの添加剤を必要とすることなく、また平衡制約無しに、短時間で効率よくエステル化合物を製造することができる。

Claims (2)

  1. アルデヒドとアルコールとからなる混合物を液相中で脱水素してエステル化合物を製造する方法において、下記構造式で表されるアルキル鎖の両端にリン原子が結合した2座のホスフィン配位子を有するルテニウム錯体触媒を用いることを特徴とするエステル化合物の製造方法。
    (式中、A、B、C及びDは、アリール基又はアルキル基を表し、但し、A及びBの少なくとも一方、並びに、C及びDの少なくとも一方はアリール基である。Yはアルキル鎖を表す。)
  2. アルデヒドとアルコールとの混合比が、アルデヒドのアルコールに対するモル比で1〜4である請求項1に記載の製造方法。
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