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JP4042278B2 - 同期電動機の制御方式 - Google Patents
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JP4042278B2 - 同期電動機の制御方式 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、界磁鉄心内部に埋めこまれた永久磁石を界磁源とする同期電動機(IPM:InteriormountedPermanentmagnetMotor)の制御方式、特にトルク制御方式に関する。
【0002】
【従来の技術】
(1)IPMの特徴
誘導電動機に対してIPMは効率がよく、小型になることが知られている。高い効率の要因は、(a)誘導機は磁束を発生させるために励磁電流成分が必要であったが、同期電動機ではこれが存在しない。そのため、一次抵抗による銅損が少なくなる。(b)誘導機は二次回路に電流を流す原理のため、二次回路の抵抗の銅損があったが、同期電動機では存在しない。
【0003】
小型化の要因は、誘導機の二次導体の厚み分が永久磁石の厚みのみでよくなるため、界磁側の半径寸法も小さくなり、モータの外形寸法も小さくすることができる。
【0004】
(2)IPMの種類
同期電動機については、界磁鉄心の形状を基準にして分類すると、SPM(SurfacemountedPermanentmagnetMotor)、IPM(InteriormountedPemanentmagnetMotor)に分けられる。
【0005】
SPMは円筒型の鉄心形状に、その表面上にカワラ状の永久磁石を張付けたものである。端子からみた電機子インダクタンスはd軸(界磁軸)とq軸(界磁軸の直交軸)のインダクタンス成分が等しい円筒形の同期機特性を有している。
【0006】
これに対して、鉄心内部に永久磁石を埋め込むIPMの場合は、電機子インダクタンスについて、d軸(界磁軸)とq軸(界磁軸の直交軸)のインダクタンス成分が異なった突極形同期機特性を有している。
【0007】
本発明は、IPMのような突極性を有する場合の制御方式、特にトルク制御方式に係るものであり、IPMについての特性を説明した文献としては、次の文献1がある。
【0008】
文献1「PM形ブラシレスDCモータの最大トルク制御」、畠中啓太、童毅、森本茂雄、武田洋次、平紗多賀男(大阪府立大学)、半導体電力変換研究会、SPC−91−6」
(3)IPMの線形条件での関係式
IPMでは突極形の特性を有しているため、通常の永久磁石の磁束と電流によるトルク以外にも突極性によるリラクタンストルクが発生するが、これを有効利用してモータの出力トルクを向上させる制御方式がある。
【0009】
まず、モータのパラメータが一定値であるという線形な場合の関係式を説明しておく。インダクタンスを固定定数とした場合の電圧電流方程式は下記のようになる。
【0010】
【数1】
Figure 0004042278
【0011】
ここで、図6のように界磁極と同期して回転する2次元直交座標系(dq軸)を定義する。また、モータについては図7の等価回路について取り扱う。
【0012】
上記の式において、インダクタンスは、漏れ成分と回転子鎖交成分とがあり、次式のようになる。
【0013】
【数2】
Figure 0004042278
【0014】
また、トルク式は、電気角速度ωのかかった磁束項に左辺から転置した電流を乗算すればよく、次式のようになる。
【0015】
【数3】
Figure 0004042278
【0016】
なお、本発明とは直接に関係しないが、d,q軸の漏れインダクタンスが等しいと近似すると、巻線インダクタンスに含まれる漏れインダクタンスは(3)式の第2項の両インダクタンスに等分だけ含まれているため、トルク式には一次、二次のどちらのインダクタンスを使用してもよいことがわかる。
【0017】
【数4】
Figure 0004042278
【0018】
上記の(4)式の第1項が永久磁石とそれと直交な電流成分により生じるトルク成分になり、第2項が突極性によるリラクタンストルクの項になる。
【0019】
(4)電流とトルクの関係式(最大トルク条件)
前記の(3)式によれば、リラクタンストルクの影響により、d,q軸の両方の電流成分によってトルクが変化することになる。これをd,q電流座標上でトルクの等高線として表すと図8のように双曲線状になる。
【0020】
前記の(1)、(3)式からトルクを媒介変数とする方程式に変形し、(3)式のトルク式を、左辺がiqとなるように変形すると、下記の(5)式となる。
【0021】
【数5】
Figure 0004042278
【0022】
ここで、λd−id・(Ld−Lq)が分母となっており、トルクー定の等高線を描くと図8のような双曲線になる。
【0023】
図8の電流座標上において、トルクの等高線に接するように原点を中心とする補助円を描くと、その接点がトルクを発生できる最少電流の条件になる。この点で運転すると銅損が最少な効率の高い運転条件が得られる。
【0024】
この点の物理的な意味は、振幅一定の電流ベクトルを補助円上を位相のみ回転させた場合のトルクを、図9のように横軸に電流ベクトルの位相、縦軸にトルクとして描くと分かりやすい。ちょうど、図8の電流最少動作点は、言い替えれば電流振幅が一定の条件で最大トルクを発生させる条件となっている。このことから、図8の最大トルクの軌跡上に電流ベクトルを制御する方式を「最大トルク制御」と呼ぶことが多く、以下の説明でもこの呼び方を使用する。
【0025】
(5)電流と電圧の関係
定出力範囲では出力電圧が制限されるため、減磁電流を流す必要がある。前記の(1)式の電圧電流方程式から定常状態にて検討するため、pの項を零と近似して、電圧ベクトルの大きさを求めると、下記の(6)式となる。
【0026】
【数6】
Figure 0004042278
【0027】
さらに、変形すると下記の(7)式のようになり、電流座標上で電圧の等高線は楕円の方程式となる。
【0028】
【数7】
Figure 0004042278
【0029】
この楕円を図示したものが図10である。電圧制限があるときには、その制限範囲は楕円状となり、それよりも外に出る電流ベクトルでは電圧が制限値を越えてしまう。そのため、(3)式のトルクの式と(7)式の電圧との2つの条件を満足する必要がある。
【0030】
これらの条件を同じ電流座標上で示すと、図11のように、電圧とトルクの等高線の交点が定出力範囲における動作点となる。
【0031】
この動作点を求めるためには、(3)式と(7)式とを連立して解かねばならず代数的にはかなり複雑となる。演算時間的に制約があり、また実際にはインダクタンスなどの非線形要素などもあるため、収束計算により計算しなければならない。
【0032】
以上が、定数が一定で線形であると仮定した場合の、IPMの特性についての説明である。
【0033】
(6)従来の基本的な制御方式
下記の文献2では、実用的なトルク指令からq,d軸の各電流成分に展開することが論じられている。
【0034】
文献2「IPMモータの高効率可変速ドライブ」、柴田尚武、出光利明、亀山健(安川電機)、電気学会論文誌、MID−98−12」
【0035】
【発明が解決しようとする課題】
前記の文献2では、トルク指令と電圧条件(電圧飽和による電圧限界)が与えられ、それら満たすようなq,d軸の電流指令を求めているが、これらの電圧・電流・トルクの関係は線形な関係式とならないため、三角関数や平方根を使用したり、収束計算を行って近似解を得るようになっている。この収束演算をどのように構築すれば良いかが第1の問題点である。
【0036】
第2の問題点として、電圧飽和が発生したときに、減磁電流を流して端子電圧を制御する必要がある。電機子反作用磁束による電圧成分により端子電圧が増加して、変換器の出力可能電圧を越えて電圧飽和状態となることがある。こうなると電流制御が不可能となり、不安定になってしまう。
【0037】
電圧飽和しないように、誘起起電力自体を低めに設定する方法もあるが、電圧を低減した分だけ電流定格が増加し、ドライバに必要な容量が増加してしまう。
【0038】
従って、モータの定格電圧は高めに設定しておいて定格電流を高めに設定しておき、直流電源電圧や出力電圧を監視しておき、電圧飽和に達しそうになったら、減磁電流を流して端子電圧の飽和を防止する制御が必要になる。
【0039】
第3の問題点は、磁気的な非線形性によるものである。前述の文献では前提条件として、モータのインダクタンスは一定であると仮定している。しかし、実際のIPMの鉄心内部では、永久磁石の磁束と電機子反作用磁束とが合成されるため、磁束変化による鉄心の磁気飽和が発生して負荷電流等によってインダクタンス成分が変化してしまう。
【0040】
磁束の非線形性の例を電流のdq座標上でd,q軸の各磁束成分尾の等高線として示したものが、図12、図13の例である。
【0041】
本来、インダクタンスが一定であれば、磁束の等高線は各軸に平行かつ等間隔になる。ところが、実際には鉄心内部の磁気飽和などの影響により、d,q軸成分の電流が干渉することにより、磁束が非線形に変化するため曲がった特性となっている。等間隔でないのは、インダクタンスの値が磁気飽和などにより変化しているためであり、軸に平行でないのはd軸電流によりq軸磁束が発生しているなど、軸間の干渉磁束が存在していることを意味している。これを、式的に表現すると次のようになる。
【0042】
従来は、インダクタンスとして、Ld,Lqのみ存在しており、電流と磁束の関係は次式と考えられていた。ここで、一方の対角成分は零とみなしていた。
【0043】
【数8】
Figure 0004042278
【0044】
しかし、実際にはd−q間軸間の干渉があり、2行2列のインダクタンスは次のような形となる。さらに、各インダクタンス成分は電流により非線形に変化してしまう。
【0045】
【数9】
Figure 0004042278
【0046】
このような非線形性があると、トルク指令通りに出力トルクが制御できないほか、電圧も制御できず電圧飽和が発生して、電流制御系自体も制御不能に陥るため不安定になったりする。
【0047】
このような磁束の非線形性があっても制御を行うために、下記の文献3では電圧とトルク成分をフィードバックする制御系を提案している。
【0048】
文献3「突極形永久磁石同期電動機のトルクフィードバック制御方式、近藤圭一浪、松岡孝一(鉄道総研)、中沢洋介、清水秀幸(東芝)電気学会論文詩D,119刊10号、p.1115、平成11年」
しかし、この論文でも次のような問題点がある。
【0049】
トルクをフィードバックして電流指令を計算する部分に、PI演算を使用している。このPI演算が固定のままではインダクタンスの変動に対応していないために、収束性が最適に制御されていない。そのため、トルク指令の変化に対して、実際の出力トルクの応答を低めに設定しなくてはならない。
【0050】
また、文献3では電圧のフィードバックはd軸、トルクのフィードバックはq軸にのみ影響するように構成されているため、d軸のフィードバック成分の影響により生じるトルク変動は直接演算によって補正されておらず、間接的に次回以降のトルクフィードバック演算で補正する形態となっている。そのため、さらに応答性が遅くなることが想定される。
【0051】
文献3では鉄道用に開発しているため高いトルク応答性能が要求されておらず、そのような用途の場合にはこのような方式でも適用可能であるが、産業用の可変速システムとして使用するためにはトルク制御の応答性の改善が要望される。
【0052】
本発明の目的は、上記までの課題を解決した同期電動機の制御方式を提供することにある。
【0053】
【課題を解決するための手段】
本発明は、永久磁石を界磁源とし磁気非線形性を有する同期電動機をトルク指令に応じてトルク制御し、該トルク指令に対して最大トルク条件などによってd軸電流指令を演算する手段と、該トルク指令とd軸電流指令からq軸電流指令を演算する手段を有する同期電動機の制御方式であって、
前記q軸電流指令を演算する手段は、
界磁に同期して回転する回転座標系の電流に応じた磁束成分を関数またはテーブル近似等で推定する磁束推定部と、
前記電流と磁束推定結果からその電流状態で発生するトルクを推定する推定トルク演算部と、
前記推定したトルクをトルク指令に一致させるよう該推定トルクとトルク指令との誤差成分を補正するq軸電流成分を求める電流変化量演算部と、
前記q軸電流成分を現在のq軸電流と加算して新たなトルク電流指令として出力する電流加算部とを備えたことを特徴とする。
【0054】
また、前記磁束推定とトルク演算と電流変化量演算及び電流加算の一連の演算は、トルク推定がトルク指令に収束するように、複数回繰り返して収束演算した結果を電流指令として出力することを特徴とする。
【0055】
また、前記回転座標系の電流変化時のd軸及びq軸の自己インダクタンスを演算し、この自己インダクタンスを前記電流変化量演算部によるq軸電流演算に使用する自己インダクタンス演算部を備えたことを特徴とする。
【0056】
また、同期電動機に印加する出力電圧が電圧制限値以上に増加した場合は減磁電流を発生させる電圧飽和防止制御手段を設け、最大トルク条件などのパターンによって出力されるd軸電流指令と加算したものを、新たなd軸電流指令とすることを特徴とする。
【0057】
また、前記d軸電流の絶対値制限値以下にした電流指令になるように、d軸電流に応じてq軸電流の制限値を可変で減少させることを特徴とする。
【0058】
また、前記減磁電流が同期電動機の減磁電流制限値に達してそれ以上に減磁電流を増加できないとき、かつ、まだ電圧制限値よりも高いときには、q軸電流指令をさらに減少させる手段を備えたことを特徴とする。
【0059】
【発明の実施の形態】
(第1の実施形態)
IPMを用いて、速度制御系を構成した場合の制御ブロックを図1に示す。各部は次の要素で構成されている。
【0060】
速度制御アンプ1は、速度指令に速度検出が追従するように、PI(比例・積分)演算などにより、トルク指令を演算する。トルク−電流指令変換部2は、トルク指令と後に示す電圧飽和防止制御部からの減磁電流指令からd,q軸の電流指令に変換する。電流制御アンプ3は電流指令に応じた実電流を発生させるため電圧を演算する。電力増幅器4は、電流制御アンプ3の出力電圧をPWM変調などによって電力増幅する。IPM5は実際に負荷を駆動するためのモータである。位置センサ6はIPM5の回転位置(位相)を検出する。位相検出器7は、位置センサ6が出力する信号を、実際の位相角度θに変換する。速度検出器8は位置検出データ(θ)を微分して速度を演算する。絶対値変換部9は、電力増幅器4の出力電圧、または、電流制御アンプ3が出力する電圧指令より、IPM5の端子電圧を演算する。電圧飽和防止制御部10は端子電圧が電力増幅器の出力電圧限界に達しないように、減磁電流を制御する。
【0061】
本実施形態は、図1におけるトルク−電流指令変換部2と電圧飽和防止制御部10の部分について、新しい制御方法を提案するものである。それ以外の部分は従来と同様な制御方式が適用できる。また、速度制御用途以外に、トルク制御系や位置制御系など他の用途にも展開が可能である。
【0062】
以下、トルク−電流指令変換部2と電圧飽和防止制御部10の各部について詳細に説明する。
【0063】
(1A)非線形を考慮するため電流に対する磁束として非線形関数を定義
まず、図2の磁束テーブル11に相当する磁束の非線形性の取り扱い方法を説明する。
【0064】
ここでは、前記の式(9)を関数近似または磁束テーブルとして、取り扱うことにする。界磁に同期して回転する回転座標系(d,q座標)の電流(id,iq)を入力とし、その時のdq座標上の磁束成分(Λd(id,iq)、Λq(id,iq))を出力とする「非線形磁束関数」を使用する。実際には、下記のような様々な非線形性の表現方法がある。
【0065】
・高次方程式や三角関数や対数関数を用いて関数近似して非線形性を近似する方法。
【0066】
・2次元のテーブルをd軸磁束、q軸磁束の2種類用意し、それらを補間して非線形を近似する方法。
【0067】
本実施形態では、どのような非線形表現方式を適用しても同等の機能が実現できるため、抽象的に「非線形磁束関数」と呼んでこれらを表すことにする。
【0068】
近似した「非線形磁束関数」の磁束と実磁束とを区別出来るように、テーブルデータの関数としては大文字のΛを使用して、次式の関数表現で取り扱う。
【0069】
【数10】
Figure 0004042278
【0070】
また、図2のインダクタンステーブル12は、式(10)の関数を電流成分で微分した、自己インダクタンス成分を演算する部分である。
【0071】
このインダクタンス行列のうち、軸間の干渉項である相互インダクタンス成分は、他の自己インダクタンス成分よりも値が小さいため、図2の例では自己インダクタンスのみ使用している。次項で説明するようにこの関数を平均的な固定値と大胆に近似してしまっても、本発明が意図する機能は実現できるが、ここでは、「インダクタンス演算」を利用する例について説明する。
【0072】
(1B)磁束の非線形を考慮したトルクの計算式
前項の電流を入力とする非線形磁束関数を使用すると、トルクを計算することができる。図2の出力トルク演算部13は、このトルク演算を行うブロックである。まず、トルク式を導出する。式(10)非線形磁束関数を使用すると(1)式の電圧電流方程式は(11)式となる。
【0073】
【数11】
Figure 0004042278
【0074】
ここで、1項は電機子巻線の抵抗と漏れインダクタンスによる電圧降下分であり、2項が永久磁石と電機子反作用磁東による電圧成分である。2項では非線形性を考慮しているため、軸間の干渉項も非線形磁東関数の中に含まれている。
【0075】
この方程式に基づいてトルクを計算するには、機械的エネルギーを第2項を用いて求め、それを角速度ωで割ればよい。そうすると、次式になる。
【0076】
【数12】
Figure 0004042278
【0077】
以上のように、非線形なインダクタンスを有するシステムであっても、磁束を直接使えばトルク演算が可能である。出力トルク演算部13ではこのトルク演算を実行する。
【0078】
(1C)d軸電流指令の演算方法(最大トルク条件)
電流が既知である場合には、前記の(11)式でトルクを求めることができるようになったが、実際の制御では、与えられるのはトルク指令であり、これからid,iqをどのように計算するかが問題となっている。そこで、次に電流指令演算方法を説明する。
【0079】
本項では、まずd軸電流(減磁電流)成分について説明する。d軸電流は、トルク指令を入力として図11の定トルク範囲の電流軌跡に相当するd軸電流を出力する関数を定義しておく。この関数は、磁束の非線形性が分っていれば、オフラインで事前に計算しておくことができる。
【0080】
また、この最大トルク関数の精度に関して考察してみると、最大トルク条件からずれた結果を出力したとしても、実際には図9のように、最大トルク付近のトルク特性はなだらかな頂点を構成していることから、理想的な点とほぼ同等のトルクを得ることができる。
【0081】
したがって、このd軸電流関数の精度はそれほど要求されない。多少の誤差が含まれても最大トルク条件とほぼ同等な効率を実現できるため、インダクタンスや磁束を線形と近似して計算しておいてもよい。
【0082】
電圧飽和が起こると電流制御自体が制御不能になるため、トルクよりも電圧抑制制御側の順位を高く設定するため、トルク電流演算より前に指令を演算し、その結果からトルク電流を計算する構成とする。
【0083】
図2の減磁電流テーブル17と絶対値演算部18によってこのd軸電流の関数演算を行う。なお、過大な減磁電流を流すと永久磁石自体が消磁してしまうようなモータの場合は、減磁電流リミッタ19で電磁電流の最大値を制限することによりモータの保護を行ってもよい。
【0084】
(1D)トルク指令から電流指令への変換方法(収束演算の適用)
d軸電流に対して、q軸電流成分は直接トルクを制御する必要が有るため、トルク制御精度が要求される。また、電圧飽和防止のため減磁電流が最大トルク条件よりも増加させる必要も生じる。そこで、トルク電流指令の演算方法は、d軸電流の変化に対応できなくてはならない。
【0085】
また、磁束特性が電流によって変化する非線形性も存在するため、ここでは収束演算を用いた演算方法を適用する。
【0086】
前記の文献3では、単にPI演算を使用していたが、本実施形態ではインダクタンスを使用して磁束の変化を予測してトルクを出力するために必要な電流を演算、さらにそれを繰り返して収束させる方式とした。
【0087】
本実施形態ではインダクタンスという磁束の微分をつかって収束演算を行うので、一種のニュートンラプソン法的な方法であるともいえる。
【0088】
ここで、使用するインダクタンス成分は、あくまでも電流変化時の磁束を予測するためにのみ使用しており、最終的なトルク精度は、前述の磁束テーブル11を基準としている。つまり、インダクタンスの精度が悪いときには、収束性は劣ってくるものの、最終的な収束時のトルク精度には影響を与えない。また、q軸間の干渉インダクタンス成分は計算を簡単にするために無視することにした。
【0089】
まず・前回の電流指令id,iqが既知であり、また、その時の磁束成分Λd(id,iq),Λq(id,iq)も計算されており、さらに前回の電流指令によって発生するトルクTも前記の(12)次式で計算済みであるとする。そして、これに対して、新たなトルク指令T’とd軸電流指令id’(減磁電流指令)が与えられた場合のq軸電流iq’を求めるものとする。
【0090】
電流がid,iqからid’,iq’に変化したと仮定した場合、この電流変化分Δid,Δiqによって磁束Λd’(id,iq),Λq’(id,iq)がどのように変化するかをインダクタンスを用いて線形近似した次式で適用して推定する。
【0091】
【数13】
Figure 0004042278
【0092】
【数14】
Figure 0004042278
【0093】
本来は、軸間の干渉インダクタンスも存在するが、これを考慮すると以降で求めるトルク電流推定式が2次式となってしまうこと、また、干渉インダクタンスの値が小さく影響が小さいことから、ここでは零と近似している。
【0094】
この前回の電流id,iqのときの磁束式と,(12)式のトルク式より新たなq軸電流iq’を求める式が以下のように得られる。
【0095】
【数15】
Figure 0004042278
【0096】
上記の式で、前回のトルク成分との差分トルクに置き換えると、下記のように、電流の変化項で表すことができる。
【0097】
【数16】
Figure 0004042278
【0098】
さらに,Δiqを求める式に変形を行うと、
【0099】
【数17】
Figure 0004042278
【0100】
このように(17)式により、q軸電流の変化量として求めることが出来るため、前回値のq軸電流指令と加算すると次回のiq’を得ることができる。
【0101】
このようにインダクタンスにより磁束の変化を予測してトルク電流成分が得られるので、得られた電流指令を用いて、再度非線形磁束関数による磁束演算と、それを用いたトルク演算を行い、指令値と一致することを確認する。
【0102】
もし、このトルク計算値が指令値と異なっている場合には、再度現在の電流を用いて同じ手順で計算を繰り返す。そうすると、最終的にはトルク指令と一致する電流・磁束条件に収束していくようになる。これが、本実施形態で適用する収束演算法であり、図2のトルク電流演算部14に相当する。
【0103】
このようなインダクタンスから変化電流を求める収束法は高速ではあるが、インダクタンスの誤差などにより、真値よりも過大となり行きすぎ量が発生することもある。そうすると、収束時にハンチングしたり、収束できなかったりするため、実際には図2のローパスフィルタ15によって電流出力に緩和ゲインをかけたりして、安定化を図ることにする。
【0104】
汎用インバータに適用する場合には、収束演算の繰返し数が多くなると、演算時間の制限が問題となる。場合によっては、1回しか収束演算ができないこともある。このときには図2のローパスフィルタ16によってトルク指令自体にも一次遅れやクッション等を加えて急激な変化を抑制することも有効である。これにより、大幅に電流変化(磁束変化)が生じないため、電流指令もゆっくりと変化するようになり、収束演算回数が少なくても誤差が少なくなる。
【0105】
トルク指令に遅れ成分を挿入すると、当然応答性能自体も制限されてしまうため、サーボモータのように高速な応答性が要求される場合は、収束演算回数を多くする方法を採用する必要がある。トルク指令に一次遅れを挿入するのは、省エネ用途のようなそれほど応答性を要求されない用途に適している。
【0106】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、インダクタンスの非線形性を考慮して各電流状態におけるインダクタンス値を用いる例を示した。こうすると最適な収束性が得られる。しかし、インダクタンスの変動が少ない場合には、インダクタンスを平均値などの適当な固定値としてもよい。インダクタンスは収束のための電流予測演算のみに使用されており、トルク演算自体には使用されていない。つまり、インダクタンスは収束性には影響するものの、トルク精度には関係しない。
【0107】
そこで、本実施形態では、インダクタンスを一定値とするものである。図3にそのブロック図を示す。同図が図2と異なる部分は、インダクタンスを演算するインダクタンステーブル12を省略した構成になる。
【0108】
(第3の実施形態)
本実施形態は、電圧飽和防止制御を付加した場合である。
【0109】
定出力範囲では回転速度が高くなっても電圧を一定に保つ必要があるため、IPMの場合は減磁電流を流す必要がある。
【0110】
そこで、本実施形態では、設定された電圧以上に出力電圧が上昇した場合には、負側のd軸電流(減磁電流)を増加させて端子電圧の上昇を抑制する電圧飽和防止制御機能を追加する。そのブロック図を図4に示す。
【0111】
図4では、図2に対して、電圧飽和防止制御部20を追加する例として示している。制御部20からの減磁電流出力はid電流指令への加算分として得る。制御部20では、出力電圧V1より、端子電圧の絶対値成分を計算し、この成分が電圧飽和設定値Vlimitを越えた場合には、PI演算により、減磁電流を増加させる。
【0112】
(第4の実施形態)
第3の実施形態では、電圧飽和を防止するため減磁電流フィードバックを追加したが、減磁電流の追加分だけ出力電流が増加してしまう。通常の電力増幅器4は電流の制限があるため、減磁電流が増加しても、この電流制限以内になるように電流指令にもリミッタ処理を行う必要が有る。
【0113】
実際には、減磁電流自体を削減してしまうと電圧飽和が発生して、電流制御自体が不安定となるため適用できない。
【0114】
そこで、本実施形態では、トルク電流に相当するq軸側の電流を減少させることにする。図5に制御ブロック図を示す。同図は、第3の実施形態のブロック図に、電流制限機能を追加するものとしてトルク電流リミッタ値演算部21を設けている。
【0115】
演算部21のうち、21aでは、d軸電流Id_refの絶対値をとり、その後次式でq軸電流の制限値を計算する。
【0116】
【数18】
Figure 0004042278
【0117】
これにより、I'q_lim以下にq軸電流を制限しておけば、電流の絶対値がI1_limを越えることは無くなる。
【0118】
次に、d軸電流である減磁電流は、永久磁石が消磁しないように減磁電流の制限が設定されている場合が有る。この場合は、減磁電流を利用して電圧低下を行うことは出来なくなるため、その場合は、q軸電流の方を減少させて、q軸電流とインダクタンスによる電圧成分を低減させて端子電圧を抑制する。
【0119】
そこで、21bでは、電圧飽和防止減磁電流制御部20の減磁電流制限値以上にd軸電流が増加した場合は、21aの出力であるq軸電流制限値をさらに、低減させている。
【0120】
21cでは、21a、21bの出力を合成したd軸電流制限値は絶対値であるため、負値にならにように制限している。
【0121】
21dでは、21cが出力したq軸電流の制限値(絶対値)に従って、実際に、q軸電流指令の正及び負側をそれぞれ制限している。
【0122】
【発明の効果】
IPMは鉄心の突極性により、電流の電機子反作用によりインダクタンスが変化して非線形性を有していることが多い。そこで、本発明では、電流と磁束の関係を非線形関数として制御器内部に持たせる、この磁束関数を用いてトルクを計算することにより、トルク精度を改善することができる。
【0123】
また、インダクタンスを用いたトルクと電流との関係式より、収束性のよい電流指令演算が実現でき、その結果、トルク指令に対する応答性を改善できる。
【0124】
また、電圧飽和を防止するため、減磁電流フィードバック制御機能を追加し、定出力範囲でも動作可能である。
【0125】
さらに、変換器の電流制限に対応して、電流指令自体にも適切な制限がかかるように構成したことにより、出力トルクは減少するものの、電流制御は常に制御状態を維持できるようになり、飽和状態による不安定現象などが発生しない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示すIPMの制御ブロック図。
【図2】実施形態におけるトルク−電流指令変換部のブロック図。
【図3】実施形態におけるトルク−電流指令変換部のブロック図。
【図4】実施形態における電流飽和防止制御を付加したブロック図。
【図5】実施形態におけるトルク電流リミッタ値演算を付加したブロック図。
【図6】座標軸の説明図。
【図7】IPMの等価回路図。
【図8】トルク−電流ベクトル図。
【図9】電流相差角−トルク特性図。
【図10】電流座標上の電圧等高線図。
【図11】電流座標上におけるトルクと電圧の等高線図。
【図12】D軸磁束の等高線図。
【図13】Q軸磁束の等高線図。
【符号の説明】
1…速度アンプ
2…トルク−電流指令変換部
3…電流制御アンプ
4…電力増幅器
5…IPM
6…位置センサ
7…位置検出器
8…速度検出器
9…絶対値変化部
10、20…電圧飽和防止制御部
11…磁束テーブル
12…インダクタンステーブル
13…出力トルク演算部
14…トルク電流演算部
15、16…ローパスフィルタ
17…減磁電流テーブル
18…絶対値回路
19…減磁電流リミッタ
21…トルク電流リミッタ値演算部

Claims (6)

  1. 永久磁石を界磁源とし磁気非線形性を有する同期電動機をトルク指令に応じてトルク制御し、該トルク指令に対して最大トルク条件などによってd軸電流指令を演算する手段と、該トルク指令とd軸電流指令からq軸電流指令を演算する手段を有する同期電動機の制御方式であって、
    前記q軸電流指令を演算する手段は、
    界磁に同期して回転する回転座標系の電流に応じた磁束成分を関数またはテーブル近似等で推定する磁束推定部と、
    前記電流と磁束推定結果からその電流状態で発生するトルクを推定する推定トルク演算部と、
    前記推定したトルクをトルク指令に一致させるよう該推定トルクとトルク指令との誤差成分を補正するq軸電流成分を求める電流変化量演算部と、
    前記q軸電流成分を現在のq軸電流と加算して新たなトルク電流指令として出力する電流加算部とを備えたことを特徴とする同期電動機の制御方式。
  2. 前記磁束推定とトルク演算と電流変化量演算及び電流加算の一連の演算は、トルク推定がトルク指令に収束するように、複数回繰り返して収束演算した結果を電流指令として出力することを特徴とする請求項1に記載の同期電動機の制御方式。
  3. 前記回転座標系の電流変化時のd軸及びq軸の自己インダクタンスを演算し、この自己インダクタンスを前記電流変化量演算部によるq軸電流演算に使用する自己インダクタンス演算部を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の同期電動機の制御方式。
  4. 同期電動機に印加する出力電圧が電圧制限値以上に増加した場合は減磁電流を発生させる電圧飽和防止制御手段を設け、最大トルク条件などのパターンによって出力されるd軸電流指令と加算したものを、新たなd軸電流指令とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の同期電動機の制御方式。
  5. 前記d軸電流の絶対値制限値以下にした電流指令になるように、d軸電流に応じてq軸電流の制限値を可変で減少させることを特徴とする請求項4に記載の同期電動機の制御方式。
  6. 前記減磁電流が同期電動機の減磁電流制限値に達してそれ以上に減磁電流を増加できないとき、かつ、まだ電圧制限値よりも高いときには、q軸電流指令をさらに減少させる手段を備えたことを特徴とする請求項4または5に記載の同期電動機の制御方式。
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