JP4045816B2 - 多孔性酸化チタン薄膜被覆フィルムの形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は光触媒機能を有する多孔性酸化チタン薄膜を耐熱性の低いポリマーフィルム基材上に形成する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
酸化チタン薄膜は、光照射によりその表面で生じる酸化・還元反応(電子供受反応)機構を利用してセルフクリーニング、抗菌、浄化などの機能をもつ光触媒機能材料として広く利用されている。この光触媒機能を向上させるため反応比表面積を大きくする多孔質化に関する開発が進められている。従来、多孔性酸化チタン薄膜の成膜プロセスは、酸化チタンあるいはアルコキサイドチタンの微粒子を溶媒中に分散させ、それを基材上に塗布し、その後焼成する方法(例えば、特開平11−204152号公報)が多く見られた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前記の微粒子塗布のような方法では、300℃以上の高温で焼成する必要があった。しかし、基材によっては耐熱性が低く、よって高温の印加が基材に対し変質あるいは劣化が生じることがあった。
【0004】
また、真空蒸着のような物理蒸発堆積(PVD)法において、成膜の際プラズマあるいはイオンビームの照射による原子のはじき出し効果を利用し、制御性のよい空孔(欠陥)の形成方法(例えば、特開2001−98373号公報)も見られる。この方法では、基材に高温を印加せずともプラズマやイオンビームの反応活性化により酸化チタン薄膜を上記ポリマーフィルム上に形成できる。しかし、酸化物の場合、酸素が選択的にはじき出されやすいため組成が変化し特性の劣化することがある。
【0005】
本発明の目的は、PVD法により高温を印可できない耐熱性の低いポリマーフィルム上に、生産性の高い連続成膜が可能な、制御された多孔性を有する酸化チタン薄膜被覆フィルムの形成方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
表記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、ポリマーフィルム基材を巻き取る巻取装置を備え、その基材の下方に設置された蒸発源から金属チタンあるいは酸化チタンを蒸発させ、同時にラジカルビーム発生源及びイオンビーム発生源から酸素ラジカルおよび希ガスイオンを照射し、前記基材上で酸化チタン薄膜を形成する多孔性酸化チタン薄膜被覆フィルムの形成方法であって、前記ポリマーフィルム基材に照射するイオンビームの[(イオン原子量)×(加速電圧)] 1/2 の値が130以上であることを特徴とする多孔性酸化チタン薄膜被覆フィルムの形成方法である。
【0007】
また、請求項2に係る発明は、請求項1記載の多孔性酸化チタン薄膜被覆フィルムの形成方法において、前記ポリマーフィルム基材付近に照射される酸素ラジカル濃度が、同時に照射されるチタン原子濃度の10倍以上であることを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に係る発明は、請求項1または2記載の多孔性酸化チタン薄膜被覆フィルムの形成方法において、前記ポリマーフィル基材に照射するイオンの種類として、アルゴン、クリプトン、キセノンのいずれかの希ガスであることを特徴とする。
【0010】
<作用>
基材に対して、イオンビームと同時に化学反応に活性な酸素ラジカルビームを照射することで高エネルギーイオンビームによる空孔生成と同時に選択的にスパッタされた酸素原子の欠陥を直ちに補うことができ、組成変化に伴う特性劣化を防ぐことができる。
【0011】
また、この酸素ラジカル濃度は蒸発金属濃度に対し10倍以上と十分に存在させることで前記欠陥を効果的に補うことができる。
【0012】
また、イオンを希ガスのような不活性ガスにすることにより、チタン原子とイオンとの反応を生じさせない。また照射されるイオンを原子量の比較的重いアルゴン・クリプトン・キセノンにすることにより、イオンによる原子のはじき出し効果を最大限に生じさせることができる。
【0013】
また、イオンビームの運動量の目安となる[(イオン原子量)×(加速電圧)]1/2の値が130以上にすることにより、イオンによる原子のはじき出し効果を最大限に生じさせることができる。イオンの衝撃強度はその運動量に依存している。イオンエネルギーを表す加速電圧(Vacc)をその運動エネルギー(mv2/2、m:イオン原子量、v:速度)とすると、運動量mvは(mVacc)1/2に比例関係にある。したがって(mVacc)1/2の値は原子のはじき出し効果を計る目安となることがわかる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一例としての実施形態を図面を用いて説明する。
本発明は、図1のような巻取式真空蒸着装置を用いて行うものである。この装置は、真空チェンバー(1)内にポリマーフィルム(2)を移動させるための巻き出し機(3)及び巻き取り機(4)、冷却可能なクーリングキャン(5)、蒸着材料である金属チタンあるいは酸化チタン(6)を保持する蒸発源(7)、ポリマーフィルム基材(2)に向かって導入されているラジカルビーム発生源(8)およびイオンビーム発生源(9)から構成されている。
【0015】
前記ポリマーフィルム(2)は、巻き出し機(3)からクーリングキャン(5)に沿って供給され、酸化チタン薄膜が形成される。酸化チタン薄膜が形成されたポリマーフィルム(2)は巻き取り機(4)によって巻き取られる。
【0016】
本発明に使用するポリマーフィルム(2)基材としては、例えばポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミドなど厚さ10〜200μmのポリマーフィルムであれば本発明の目的を逸脱しない。
【0017】
前記蒸着材料を蒸発させる蒸発源(7)としては、抵抗加熱法・電子ビーム法・スパッタリング法など金属あるいは金属酸化物を蒸発させられるものであれば本発明の目的を逸脱しない。
【0018】
上記巻取式真空蒸着装置を用いて行われる本発明の多孔性酸化チタン薄膜被服フィルムの形成方法について述べる。まず真空度2×10-4Pa以下とした真空チェンバー(1)下部に設置された蒸発源(7)内に保持された蒸着材料である金属チタンあるいは酸化チタン(6)を、クーリングキャン(5)上のポリマーフィルム(2)に向けて蒸発させる。一方、ラジカルビーム発生源(8)から酸素ラジカルを、イオンビーム発生源(7)から希ガスのイオンを上記ポリマーフィルム(2)に向けて同時に照射し、酸化チタン薄膜を成膜させる。
【0019】
【実施例】
以下、本発明の好ましい一実施例についてさらに具体的に説明する。本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
図1に示した形成装置により蒸着材料を金属チタンとして電子ビームにより0.1nms-1の一定速度で蒸発させ、ポリエステルフィルム上に酸化チタン薄膜を形成した。この時、基材に照射される酸素ラジカル濃度は6×1015cm-2s-1で一定とした。これは、蒸発チタン原子濃度の約10倍に相当する。また、イオンビームはガスとして、He、Ne、Ar、Kr、Xeを用い、電流密度8μA cm-2で一定とし、加速電圧Vaccを200〜800eVの範囲で変化させた。基材となるポリエステルフィルムには強制加熱は施さなかった。図2には、ポリエステルフィルム上に形成された酸化チタン薄膜の膜密度に対するイオンビームの[(原子量)×(加速電圧)]1/2の(mVacc)1/2依存性を示した。図2から、希ガスの種類に無関係に同様の(mVacc)1/2依存性が認められた。イオンビームを照射してない(mVacc)1/2=0では膜密度は3.8gcm-3であった。(mVacc)1/2が50から130の範囲で膜密度は4.0gcm-3までわずかに増加するが、130以上で膜密度が減少し始め、300付近では2.5cm-3となった。したがって、上記範囲の(mVacc)1/2で酸化チタン薄膜の空孔生成(多孔質化)が効果的に生じることがわかった。また、この時生成した酸化チタン薄膜の化学構造は完全酸化されていた。このように(mVacc)1/2を変化させることで酸化チタン薄膜の空孔率(多孔性)の制御が可能となった。
【0020】
(mVacc)1/2が130以上の場合、He及びNeではその加速電圧はそれぞれ4200、850eV以上必要となる。しかし、800eV以上の加速電圧は通常のイオンビーム発生装置では発生させることが難しい。したがって、使用できるガスとしてはAr、Kr、Xeが望ましい。
【0021】
【発明の効果】
以上のように、本発明の多孔性酸化チタン薄膜被覆フィルムの形成方法によれば、ポリマーフィルムなど耐熱性の低い基材に対して、劣化・変質を最小限に抑え、かつ膜密度の低い多孔質な酸化チタン薄膜被覆フィルムを効率的に形成できる。
【0022】
また、前記多孔性酸化チタン薄膜被覆フィルムを、ロール状態から巻き出されたポリマーフィルム上に形成できることで、高スループットの連続成膜が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を説明するための巻き取り式成膜装置の略図である。
【図2】本発明の実施例1の[(イオン原子量)×(加速電圧)]1/2である(mVacc)1/2に対する酸化チタン薄膜の膜密度の関係図である。
【符号の説明】
1:真空チェンバー
2:ポリマーフィルム
3:巻き出し機
4:巻き取り機
5:クーリングキャン
6:蒸着材料
7:蒸発源
8:ラジカルビーム発生源
9:イオンビーム発生源
Claims (3)
- ポリマーフィルム基材を巻き取る巻取装置を備え、その基材の下方に設置された蒸発源から金属チタンあるいは酸化チタンを蒸発させ、同時にラジカルビーム発生源及びイオンビーム発生源から酸素ラジカルおよび希ガスイオンを照射し、前記基材上で酸化チタン薄膜を形成する多孔性酸化チタン薄膜被覆フィルムの形成方法であって、
前記ポリマーフィルム基材に照射するイオンビームの[(イオン原子量)×(加速電圧)] 1/2 の値が130以上であることを特徴とする多孔性酸化チタン薄膜被覆フィルムの形成方法。 - 前記ポリマーフィルム基材付近に照射される酸素ラジカル濃度が、同時に照射されるチタン原子濃度の10倍以上であることを特徴とする請求項1記載の多孔性酸化チタン薄膜被覆フィルムの形成方法。
- 前記ポリマーフィル基材に照射するイオンの種類として、アルゴン、クリプトン、キセノンのいずれかの希ガスであることを特徴とする請求項1または2記載の多孔性酸化チタン薄膜被覆フィルムの形成方法。
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