JP4046926B2 - ディレイ材付き接触型超音波センサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、超音波によって供試体の特定層の厚さや傷等を測定する超音波センサに関し、特には、超音波振動子と接するカップリング液で音響レンズを画成するとともに供試体に接触して供試体への超音波の入射と供試体からの反射波の受け入れとを行うディレイ材を具えるディレイ材付き接触型超音波センサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
超音波は、伝播する媒体の密度によって伝播速度(音速)が異なり、密度の異なる媒体同士の境界で反射する性質を持つ。それゆえ、供試体と超音波振動子との間に空気層があるとその空気層と供試体との境界で超音波が反射してしまって供試体内部に超音波を入射させられないことから、従来、供試体に接触して供試体への超音波の入射と供試体からの反射波の受け入れとを行うディレイ材を具えたディレイ材付き接触型超音波センサが知られており、かかる超音波センサでは通常、そのディレイ材と超音波振動子との間にカップリング液が満たされるとともに、超音波振動子に向くディレイ材の端面に凹曲面が形成され、その凹曲面がそれと超音波振動子と接するカップリング液で音響レンズを画成し、その音響レンズが、超音波振動子から発生する超音波を所定の焦点に収束させる。
【0003】
しかしながら、従来の通常のディレイ材付き接触型超音波センサでは超音波の焦点がディレイ材内に設定されていたため、ディレイ材内で超音波の乱反射が発生することから、それによる遅れ反射波を検出しないように不感時間を設定して使用しており、これがため薄い供試体には使用できないという問題があった。そこで本願出願人は、先に特開平8−247751号にて、超音波の焦点がディレイ材の外側すなわち供試体内に位置するようにディレイ材の高さを設定することで上記の問題を解決したディレイ材付き接触型超音波センサを開示した。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記従来のディレイ材付き接触型超音波センサについて本願発明者が研究したところ、ディレイ材付き接触型超音波センサでは、超音波の伝播経路上にディレイ材と供試体との間の境界に加えてセンサ内部のディレイ材とカップリング液との間の境界もあるため、それらの境界での反射波も検出されるので信号/ノイズ(S/N)比が悪いという不都合があるということが判明した。そしてこのことは、例えばエンジンのシリンダヘッド等の鋳物部品の表面に強化のために形成したリメルト強化層(再溶融により結晶粒を緻密化した層)とその奥の通常の結晶粒部分との境界等の、供試体内の境界からの散乱波を反射波として検出する場合、従来検出していた供試体底面からの反射波よりも弱いため特に問題となり、センサ出力をより増幅しなければ検出することができず、一方増幅度を高めるとノイズも大きくなって散乱波の検出を妨げてしまうという不都合があった。そこでこれにつき本願発明者がさらに研究を進めた結果、音響レンズの回転体形状の設定および、ディレイ材とカップリング液の高さの設定を改善すれば、弱い散乱波でも明確に検出し得るという点に想到した。
【0005】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
この発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、請求項1記載のこの発明のディレイ材付き接触型超音波センサは、超音波振動子と接するカップリング液で音響レンズを画成するとともに供試体に接触してその供試体への超音波の入射とその供試体からの反射波の受け入れとを行うディレイ材を具えるディレイ材付き接触型超音波センサにおいて、前記超音波振動子から発生した超音波の、前記ディレイ材と前記供試体との間の境界および前記ディレイ材と前記カップリング液との間の境界からの逐次に帰着する複数の縦波反射波の後に、またはそれら複数の縦波反射波のうち最後のものと同時に、前記超音波の、前記ディレイ材と前記供試体との間の境界からの横波反射波が帰着するとともに、前記複数の縦波反射波のうちその横波反射波の帰着の一つ前または同時の縦波反射波とさらに一つ前の縦波反射波との間に、前記超音波の、前記供試体の表面から所定測定範囲内の深さの境界からの縦波反射波が帰着する寸法に、前記音響レンズの高さおよび前記ディレイ材の高さが設定されていることを特徴とするものである。
【0006】
かかる超音波センサにあっては、超音波振動子から発生した超音波の、ディレイ材と供試体との間の境界およびディレイ材とカップリング液との間の境界からの逐次に帰着する複数の縦波反射波のうち、ディレイ材と供試体との間の境界からの、縦波よりも伝播速度が遅い横波反射波の帰着の一つ前または同時の縦波反射波と、それよりさらに一つ前の縦波反射波との間に、上記超音波の、供試体の表面から所定測定範囲内の深さの境界からの縦波反射波が帰着するように、音響レンズおよびディレイ材の高さが設定されているので、供試体の表面から所定測定範囲内の深さの境界からの縦波反射波が、ディレイ材と供試体との間の境界およびディレイ材とカップリング液との間の境界からの逐次に帰着する縦波反射波にも、またディレイ材と供試体との間の境界からの横波反射波にも重ならずに検出される。
【0007】
従ってこの超音波センサによれば、供試体の表面から所定測定範囲内の深さの境界からの弱い散乱波でも明確に検出し得て、S/N比の良い、精度の高い検出を行うことができる。
【0008】
一方、請求項2記載のこの発明のディレイ材付き接触型超音波センサは、超音波振動子と接するカップリング液で音響レンズを画成するとともに供試体に接触してその供試体への超音波の入射とその供試体からの反射波の受け入れとを行うディレイ材を具えるディレイ材付き接触型超音波センサにおいて、前記超音波振動子から発生した超音波の、前記ディレイ材と前記供試体との間の境界および前記ディレイ材と前記カップリング液との間の境界からの逐次に帰着する複数の縦波反射波の間に、前記超音波の、前記ディレイ材と前記供試体との間の境界からの横波反射波が帰着するとともに、前記複数の縦波反射波のうちその横波反射波の帰着の一つ前の縦波反射波とその横波反射波との間に、前記超音波の、前記供試体の表面から所定測定範囲内の深さの境界からの縦波反射波が帰着する寸法に、前記音響レンズの高さおよび前記ディレイ材の高さが設定されていることを特徴とするものである。
【0009】
かかる超音波センサにあっては、超音波振動子から発生した超音波の、ディレイ材と供試体との間の境界およびディレイ材とカップリング液との間の境界からの逐次に帰着する複数の縦波反射波の間に帰着する、ディレイ材と供試体との間の境界からの、縦波よりも伝播速度が遅い横波反射波と、前記複数の縦波反射波のうち、その横波反射波の帰着の一つ前の縦波反射波との間に、上記超音波の、供試体の表面から所定測定範囲内の深さの境界からの縦波反射波が帰着するように、音響レンズおよびディレイ材の高さが設定されているので、供試体の表面から所定測定範囲内の深さの境界からの縦波反射波が、ディレイ材と供試体との間の境界およびディレイ材とカップリング液との間の境界からの逐次に帰着する縦波反射波にも、またディレイ材と供試体との間の境界からの横波反射波にも重ならずに検出される。
【0010】
従ってこの超音波センサによれば、供試体の表面から所定測定範囲内の深さの境界からの弱い散乱波でも明確に検出し得て、S/N比の良い、精度の高い検出を行うことができる。
【0011】
そして請求項1または2記載のこの発明のディレイ材付き接触型超音波センサは、さらに、前記超音波振動子と前記音響レンズとその超音波振動子に対し中心軸線同士が角度を持つ前記ディレイ材とを保持するホルダと、前記ホルダを所定軸線周りに回動させるホルダ回動機構と、を具え、前記所定軸線に対し傾斜した向きに超音波ビームを放射することを特徴とするものである。
【0012】
ディレイ材付き接触型超音波センサでは、音響レンズは超音波振動子とディレイ材とで画成されることから、一般に、その超音波振動子とディレイ材との配置誤差によりそれらの中心軸線同士が一致せず僅かに角度を持ち、それゆえディレイ材の中心軸線に対し僅かに傾斜した向きに超音波が放射される。この点に鑑みてこの発明の超音波センサにあっては、超音波振動子と音響レンズとディレイ材とを保持するホルダを、ホルダ回動機構が所定軸線周りに回動させる。
【0013】
従ってこの発明の超音波センサによれば、その回動軸線が供試体表面と交差する向きに超音波センサを配置することで、その回動軸線と交差する供試体上の点の周囲を環状に超音波で走査することができ、これによりその回動軸線を中心とした一定範囲内の境界の深さ変化を検出することができる。
【0014】
また、請求項3記載のこの発明のディレイ材付き接触型超音波センサは、請求項1または2記載のディレイ材付き接触型超音波センサにおいて、前記超音波振動子の振動面上の所定発生位置から発生した超音波が前記供試体内の所定焦点位置で反射して戻る帰着位置と、前記振動面の中心点に関し前記発生位置と対称の位置との間の距離を、前記所定発生位置を前記振動面の中心点から外周端まで移動させながら求めて積算した値が最小となる形状に前記音響レンズの回転体形状が設定されていることを特徴とするものである。
【0015】
一般に、超音波振動子では、超音波の発生位置と帰着位置とが振動面の中心に対し点対称になっていると反射波を最も効率良く検出し得るとされており、上述した従来の超音波センサでは振動面の一方の外周端から発生した超音波が供試体内の焦点位置で反射して反対側の外周端に帰着するように音響レンズの球面の半径が設定されていたが、かかる設定では振動面全体について反射波を効率良く検出することはできなかった。これに対し上記本願発明の超音波センサによれば、超音波振動子の振動面全体として超音波の発生位置と帰着位置との対称性の誤差が最も少ない形状に音響レンズの回転体形状が設定されているので、焦点位置からの反射波を最も効率良く振動面で検出することができる。
【0016】
従ってこの超音波センサによれば、供試体内の焦点位置付近の境界からの散乱波を、センサ出力の増幅度をさほど高めなくても明確に検出し得て、供試体内の境界につき、S/N比の良い、精度の高い検出を行うことができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明の実施の形態を実施例によって、図面に基づき詳細に説明する。ここに、図1は、この発明のディレイ材付き接触型超音波センサの一実施例を示す構成図であり、この実施例の超音波センサは、円盤状の通常の超音波振動子1と、先端面(図では下端面)で供試体2の表面に接触する倒立裁頭円錐状の通常のディレイ材3と、それら超音波振動子1とディレイ材3との間に介挿されてそれら超音波振動子1とディレイ材3との間隔を設定するスペーサ4と、それら超音波振動子1とディレイ材3との間の空間に満たされてそれら超音波振動子1とディレイ材3とに接するカップリング液で形成された音響レンズ5と、を具えており、ここにおけるディレイ材3はその凹球面状の後端面(図では上端面)3aにより、音響レンズ5の曲率半径Rの凸球面を画成している。
【0018】
かかる実施例の超音波センサにあっては、図1中に矢印Aで示すように、超音波振動子1の振動面1aの例えば点P1から発生した超音波は、音響レンズ5で屈折してディレイ材3を通り、さらに供試体2の表面から供試体2内に入って、供試体2の表面から深さFPの位置にある、例えば鋳造部品のリメルト強化層とその奥の通常の結晶粒部分との境界等の境界2aで散乱波として反射し、再びディレイ材3を通った後、音響レンズ5で屈折して振動面1aの例えば点P2に帰着し、超音波振動子1で検出される。
【0019】
ところで、上記音響レンズ5の曲率半径Rは、従来のディレイ材付き接触型超音波センサでは、振動面1aの一方の外周端から発生した超音波が供試体2内に設定した所定焦点位置で反射して振動面1aの反対側の(振動面1aの中心点Oに関し点対称の)外周端に帰着するように設定されていた(逆にいえば、振動面1aの外周端を規準に焦点位置が決められていた)が、かかる設定では、図1に示すように振動面1aの外周端よりも内側の位置で発生した超音波は、焦点位置で反射すると振動面1aの中心点Oに関し点対称の位置に帰着しないため、測定したい境界付近に焦点位置がくるように曲率半径Rを設定しても振動面1a全体について反射波を効率良く検出することはできなかった。
【0020】
そこで上記実施例の超音波センサでは、上記音響レンズ5の曲率半径Rは、以下の如くして、超音波振動子1の振動面1a全体として超音波の発生位置と帰着位置との対称性の誤差が最も少ない形状に設定されている。すなわち、この実施例では音響レンズ5の供試体側の表面は曲率半径Rの球面であるので、図2に模式的に示すように、y軸を中心軸線とした超音波振動子1の半径をr、ある超音波発生点の半径をr0、音響レンズ5の球面の中心点のy座標を−Rとするとともに、超音波の、音響レンズ5の球面への入射角をθ1、その球面からの出射角をθ2、供試体内への入射角をθ3とし、さらに、音響レンズ5の高さをS、ディレイ材3の高さをH、供試体2内の焦点位置の深さをFP、超音波の縦波の、音響レンズ5内の音速をVLC、ディレイ材3内の音速をVLD、供試体2内の音速をVLM、Cを係数とすると、超音波の経路がy軸に関して対称となる際には、以下の〔数1〕の関係式が成り立つ。但し(2)、(3)式はスネルの法則による。
【0021】
【数1】
【0022】
上記の関係式では、高さS,H、音速VLC,VLD,VLM、そして半径rは基本的に定数である。従って、所望の焦点位置深さFPを設定すれば、曲率半径Rに対して対称性が成立する半径r0が定まり、そこから係数Cが定まることになる。ここで、超音波発生点の半径raを上記r0から変化させると、音響レンズ5が球面であるゆえ、深さFPの境界で反射した反射波は振動面1a上の、y軸に関してその超音波発生点と対称の点には戻らず、その対称点からずれて位置する。この位置ずれ量を、超音波発生点の位置をra=0からra=rまで変化させながら求めていって、位置ずれ量の積分値(積算値)を求め、かかる積分値を、曲率半径Rひいては対称性が成立する半径r0を変化させながら調べて、その積分値が最小となる場合すなわち振動面1a全体について最も位置ずれ量が少なくなる場合の対称性が成立する半径r0を求め、その半径r0から、係数Cの最適値を求める。
【0023】
この係数Cの最適値は、焦点位置の深さFPによって異なるが、超音波センサでの通常の測定深さの範囲では0.65≦C≦0.85となり、このCの値の範囲から逆算して求めた音響レンズ曲率半径Rは、音響レンズ5(カップリング液)内の音速VLC=1516m/sec 、ディレイ材3(合成樹脂)内の音速VLD=2330m/sec 、供試体2(アルミニウム合金鋳造物のリメルト強化層)内の音速VLM=6544m/sec の場合に、図3〜図7の如くになる。ここに、図3〜図5は、測定可能範囲の最大深さに焦点位置の深さFPを合わせた場合であり、また図6,図7は、測定可能範囲の1/2の深さに焦点位置の深さFPを合わせた場合である。
【0024】
図8は、対称性が成立する半径r0を変化させた場合の位置ずれ量の積算値の変化と、超音波の第1反射波の強度との関係を例示するものであり、図示のように、反射波強度は、積算値が最小のときに最大となっている。また図9(a)および(b)は、従来の超音波センサおよび上記実施例の超音波センサでそれぞれ検出した供試体表面からの反射波WSと供試体内の境界からの散乱波WBとを示すものであり、図示のように上記実施例の超音波センサでは散乱波WBがはっきりと検出されている。
【0025】
従って、上述の如くして音響レンズ5の球面の曲率半径Rが設定されたこの実施例の超音波センサによれば、焦点位置からの反射波を最も効率良く振動面1aで検出し得ることから、供試体2内の焦点位置付近の境界2aからの散乱波を、センサ出力の増幅度をさほど高めなくても明確に検出することができるので、供試体2内の境界2aの深さについて、S/N比の良い、精度の高い検出を行うことができる。
【0026】
なお、上記実施例では音響レンズ5が球面を有していたが、音響レンズ5が回転楕円面を有している場合も同様にして、対称点からの位置ずれ量の積算値が最小となる場合を求めることで、焦点位置からの反射波を最も効率良く振動面で検出し得るような、回転楕円面の長径や短径等の形状パラメータを求めることができる。
【0027】
図10は、上記実施例の超音波センサでの超音波の伝播状況を模式的に示す説明図であり、説明の便宜上音響レンズ5の表面は平坦に描かれている。また超音波の経路のうち実線は縦波、破線は横波を示している。図示のように、超音波振動子1の振動面1a上の例えば点P1で発生した超音波は、音響レンズ5とディレイ材3との境界上の点R1で反射すると縦波反射波LW1として振動面1a上の点P2に帰着し、その縦波反射波LW1はその後、音響レンズ5の両面すなわち振動面1a上の点とディレイ材3上の点R2, R3とで反射を繰り返して縦波反射波LW2,LW3として振動面1a上の点P3, P4に逐次帰着する。また上記超音波は、ディレイ材3と供試体2の表面との境界上の点R4で反射すると縦波反射波LW4として点P2に帰着し、さらに供試体2内の必要測定深さ範囲D内に位置する境界2a上の点R5で反射すると縦波反射波LW5として縦波反射波LW4の後に点P2に帰着する。さらに上記超音波は、ディレイ材3と供試体2の表面との境界上の点R4で反射する際に入射角が大きいことから横波反射波TWにもなり、その横波反射波TWも振動面1a上の点P5に帰着する。
【0028】
ところで、従来のディレイ材付き接触型超音波センサでは、かかる縦波反射波LW1〜LW5および横波反射波TWの帰着のタイミングを調整していなかったことから、検出すべき境界2aの深さに対応してその境界2aからの縦波反射波LW5が帰着するタイミング付近で他の反射波も帰着してしまい、検出すべき縦波反射波LW5が他の反射波と区別がつきづらかったり他の反射波と重なってしまったりしてその縦波反射波LW5を明確に検出するのが困難であった。
【0029】
そこでこの実施例の超音波センサでは、以下の二種類の方法の何れかにより音響レンズ5の高さSとディレイ材3の高さHとを設定することで、上記の問題を解決している。先ず、第1の方法は、図11に示すように、音響レンズ5内で反射を繰り返している縦波反射波(縦波繰り返し反射波)のうちN+1番目の縦波反射波、すなわち図示例では3番目の縦波反射波LW3の後またはそれと同時に横波反射波TWが帰着するようにして、その横波反射波TWの一つ前または同時の縦波反射波である上記N+1番目の縦波繰り返し反射波LW3の帰着と、その前の、供試体2の表面からの縦波反射波LW4の帰着との間の時間を、所望の測定深さ範囲を測定するための測定エリアSAとし、その測定エリアSA内に供試体2内の必要測定深さ範囲D内に位置する境界2aからの縦波反射波LW5が帰着するようにしたものである。
【0030】
このように必要測定深さ範囲Dとの関係で測定エリアSAを設定するには、以下の〔数2〕の関係式から音響レンズ5の高さSとディレイ材3の高さHとを求める。ここでは、音響レンズ5内の縦波超音波の音速をVLC、ディレイ材3内の縦波超音波の音速をVLD、ディレイ材3内の横波超音波の音速をVSD、供試体2内の縦波超音波の音速をVLMとし、また図11に示すように、供試体2の表面からの縦波反射波LW4と縦波繰り返し反射波との時間差Aを、それらが重ならないように縦波繰り返し反射波の減衰時間を考慮して決めてある。
【0031】
【数2】
【0032】
なお、N=1とすると、Sが大きくなり過ぎ、またN=4以上とするとHが大きくなり過ぎるため、Nは2または3が好ましく、図11の例のようにN=2とするのが最も妥当である。図12は、上記の方法で求めた必要測定深さ範囲Dと高さ寸法HおよびSとの関係を示すものである。
【0033】
図13(a)および(b)は、従来の超音波センサおよび上記実施例の超音波センサでそれぞれ検出した縦波繰り返し反射波RW1(1番目),RW2(2番目)・・と供試体表面からの縦波反射波LWと供試体表面からの横波反射波TWとを示しており、また図14(a)および(b)は、図13(a)および(b)を時間軸を拡大して示すものであり、図示のように、従来の超音波センサでは測定エリアSA内にかなりのノイズが入り込んでいるが、上記実施例の超音波センサでは測定エリアSAにノイズがほとんど存在しない。
【0034】
第2の方法は、図15に示すように、音響レンズ5内で反射を繰り返している縦波反射波(縦波繰り返し反射波)のうちN+1番目の縦波反射波、すなわち図示例では3番目の縦波反射波LW3の直前に横波反射波TWが帰着するようにして、その横波反射波TWの帰着と、その一つ前の縦波反射波である供試体2の表面からの縦波反射波LW4の帰着との間の時間を、所望の測定深さ範囲を測定するための測定エリアSAとし、その測定エリアSA内に供試体2内の必要測定深さ範囲D内に位置する境界2aからの縦波反射波LW5が帰着するようにしたものである。
【0035】
このように必要測定深さ範囲Dとの関係で測定エリアSAを設定するには、以下の〔数3〕の関係式から音響レンズ5の高さSとディレイ材3の高さHとを求める。ここで、音速VLC,VLD,VSD,VLMは先の方法におけると同一である。
【0036】
【数3】
【0037】
なお、この場合もN=1とすると、Sが大きくなり過ぎ、またN=4以上とするとHが大きくなり過ぎるため、Nは2または3が好ましく、図15の例のようにN=2とするのが最も妥当である。
【0038】
上記第2の方法で音響レンズ5の高さSとディレイ材3の高さHとを求めた場合でも、先の第1の方法の場合と同様、上記実施例の超音波センサで測定エリアSAからノイズをなくすことができる。
【0039】
図16(a)および(b)は、上記実施例のディレイ材付き接触型超音波センサの応用例を模式的に示す説明図であり、ここでは上記実施例の超音波センサが、超音波振動子1と音響レンズ5とディレイ材3とを保持するホルダ6を具えるとともに、そのホルダ6を、ディレイ材3の中心軸線と実質上一致する所定軸線TA周りに回動させる、モータ駆動のホルダ回動機構7を具えている。
【0040】
上記実施例のディレイ材付き接触型超音波センサでは、音響レンズ5は超音波振動子1とディレイ材3とで画成されることから、その超音波振動子1とディレイ材3との配置誤差によりそれらの中心軸線同士が一致せず僅かに角度を持ち、それゆえ、図16(a)に示すように、ディレイ材3の中心軸線ひいては上記回動軸線TAに対し僅かに傾斜した向きに超音波ビームSBが放射される。
【0041】
従って上記応用例の超音波センサによれば、図16(b)に示すように、その回動軸線TAが供試体2表面と実質上直交する向きに超音波センサを配置してホルダ回動機構7でホルダ6を回動させることで、その回動軸線TAと交差する供試体2上の点の周囲を環状に超音波ビームSBで走査することができ、これによりその回動軸線TAを中心とした一定範囲内の境界2aの深さ変化ひいてはその範囲内の例えばリメルト強化層の最小厚さを検出することができる。
【0042】
以上、図示例に基づき説明したが、この発明は上述の例に限定されるものでなく、例えば、供試体やディレイ材の材質等を所要に応じて変更することもでき、また超音波センサの使用目的も境界の検出のみならず探傷等にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明のディレイ材付き接触型超音波センサの一実施例を模式的に示す構成図である。
【図2】 上記実施例の超音波センサにおける超音波の伝播経路を示す説明図である。
【図3】 上記実施例の超音波センサにおける音響レンズの曲率半径を所定の測定可能範囲について焦点位置がその測定可能範囲の最大深さの場合で示す関係線図である。
【図4】 上記実施例の超音波センサにおける音響レンズの曲率半径を他の所定の測定可能範囲について焦点位置がその測定可能範囲の最大深さの場合で示す関係線図である。
【図5】 上記実施例の超音波センサにおける音響レンズの曲率半径を他の所定の測定可能範囲について焦点位置がその測定可能範囲の最大深さの場合で示す関係線図である。
【図6】 上記実施例の超音波センサにおける音響レンズの曲率半径を所定の測定可能範囲について焦点位置がその測定可能範囲の最大深さの1/2の場合で示す関係線図である。
【図7】 上記実施例の超音波センサにおける音響レンズの曲率半径を他の所定の測定可能範囲について焦点位置がその測定可能範囲の最大深さの1/2の場合で示す関係線図である。
【図8】 上記実施例の超音波センサにおける対称性が成立する超音波発射点半径と反射波強度との関係を示す関係線図である。
【図9】 (a)および(b)は、従来の超音波センサおよび上記実施例の超音波センサでそれぞれ検出した供試体表面からの反射波と供試体内の境界からの散乱波とを示す特性図である。
【図10】 上記実施例の超音波センサでの超音波の伝播状況を模式的に示す説明図である。
【図11】 上記実施例の超音波センサでの音響レンズの高さとディレイ材の高さとを設定する第1の方法を示す説明図である。
【図12】 上記第1の方法で設定した音響レンズの高さとディレイ材の高さとを必要測定深さ範囲との関係で示す関係線図である。
【図13】 (a)および(b)は、従来の超音波センサおよび上記実施例の超音波センサでそれぞれ検出した縦波繰り返し反射波と供試体表面からの縦波反射波と供試体表面からの横波反射波とを示しす説明図である。
【図14】 (a)および(b)は、図13(a)および(b)をそれぞれ時間軸を拡大して示す説明図である。
【図15】 上記実施例の超音波センサでの音響レンズの高さとディレイ材の高さとを設定する第2の方法を示す説明図である。
【図16】 (a)および(b)は、上記実施例のディレイ材付き接触型超音波センサの応用例を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
1 超音波振動子
2 供試体
2a 境界
3 ディレイ材
4 スペーサ
5 音響レンズ
6 ホルダ
7 ホルダ回動機構
SB 超音波ビーム
D 必要測定深さ範囲
FP 焦点位置の深さ
H ディレイ材の高さ
R 音響レンズの曲率半径
S 音響レンズの高さ
Claims (3)
- 超音波振動子(1)と接するカップリング液で音響レンズ(5)を画成するとともに供試体(2)に接触してその供試体への超音波の入射とその供試体からの反射波の受け入れとを行うディレイ材(3)を具えるディレイ材付き接触型超音波センサにおいて、
前記超音波振動子から発生した超音波の、前記ディレイ材と前記供試体との間の境界および前記ディレイ材と前記カップリング液との間の境界からの逐次に帰着する複数の縦波反射波(LW1,LW2,LW4,LW3)の後に、またはそれら複数の縦波反射波のうち最後のもの(LW3)と同時に、前記超音波の、前記ディレイ材と前記供試体との間の境界からの横波反射波(TW)が帰着するとともに、前記複数の縦波反射波のうちその横波反射波(TW)の帰着の一つ前または同時の縦波反射波(LW3)とさらに一つ前の縦波反射波(LW4)との間に、前記超音波の、前記供試体の表面から所定測定範囲内の深さの境界からの縦波反射波(LW5)が帰着する寸法に、前記音響レンズの高さ(S)および前記ディレイ材の高さ(H)が設定されており、
前記超音波振動子(1)と前記音響レンズ(5)とその超音波振動子に対し中心軸線同士が角度を持つ前記ディレイ材(3)とを保持するホルダ(6)と、
前記ホルダ(6)を所定軸線(TA)周りに回動させるホルダ回動機構(7)と、を具え、
前記所定軸線に対し傾斜した向きに超音波ビーム(SB)を放射することを特徴とする、ディレイ材付き接触型超音波センサ。 - 超音波振動子(1)と接するカップリング液で音響レンズ(5)を画成するとともに供試体(2)に接触してその供試体への超音波の入射とその供試体からの反射波の受け入れとを行うディレイ材(3)を具えるディレイ材付き接触型超音波センサにおいて、
前記超音波振動子から発生した超音波の、前記ディレイ材と前記供試体との間の境界および前記ディレイ材と前記カップリング液との間の境界からの逐次に帰着する複数の縦波反射波(LW4,LW3)の間に、前記超音波の、前記ディレイ材と前記供試体との間の境界からの横波反射波(TW)が帰着するとともに、前記複数の縦波反射波のうちその横波反射波(TW)の帰着の一つ前の縦波反射波(LW4)とその横波反射波(TW)との間に、前記超音波の、前記供試体の表面から所定測定範囲内の深さの境界からの縦波反射波(LW5)が帰着する寸法に、前記音響レンズの高さ(S)および前記ディレイ材の高さ(H)が設定されており、
前記超音波振動子(1)と前記音響レンズ(5)とその超音波振動子に対し中心軸線同士が角度を持つ前記ディレイ材(3)とを保持するホルダ(6)と、
前記ホルダ(6)を所定軸線(TA)周りに回動させるホルダ回動機構(7)と、を具え、
前記所定軸線に対し傾斜した向きに超音波ビーム(SB)を放射することを特徴とする、ディレイ材付き接触型超音波センサ。 - 前記超音波振動子の振動面上の所定発生位置から発生した超音波が前記供試体内の所定焦点位置で反射して戻る帰着位置と、前記振動面の中心点に関し前記発生位置と対称の位置との間の距離を、前記所定発生位置を前記振動面の中心点から外周端まで移動させながら求めて積算した値が最小となる形状に、前記音響レンズの回転体形状(R)が設定されていることを特徴とする、請求項1または2記載のディレイ材付き接触型超音波センサ。
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