JP4047153B2 - 半導体装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体装置に係り、特に、p型半導体領域とn型半導体領域の間に低不純物濃度の半導体領域を有するpin構造の半導体装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、電力用半導体装置としてpinダイオードが一般的に用いられている。図33に示すように、pinダイオードは、n−型ベース層101と、n−型ベース層101の一方の主表面に接続されたp型エミッタ領域103と、対向する他方の主表面に接続されたn+型エミッタ領域107と、p型エミッタ領域103に接続されたアノード電極108と、n+型エミッタ領域107に接続されたカソード電極109とを備える。
【0003】
アノード電極108に、カソード電極109に対して正の電圧を印加する。p型エミッタ領域103からn−型ベース層101へ正孔が注入され、正孔の注入量に応じてn+型エミッタ領域107からn−型ベース層101へ電子が注入される。正孔及び電子(以後、「キャリア」と呼ぶ)はn−型ベース層101に蓄積され、n−型ベース層101の抵抗値が低くなる。ダイオードは通電状態となり、アノード電極108からカソード電極109へ電流が流れる。
【0004】
通電状態における印加電圧を反転させると、n−型ベース層101中に蓄積されたキャリアが排出され、n−型ベース層101とp型エミッタ領域103の間のpn接合から空乏層が広がり始める。その結果、ダイオードは逆阻止状態となる。
【0005】
従来のpinダイオードとして、n−型ベース層101とp型エミッタ領域103の間に配置されたn型又はn+型の半導体領域を更に有し、逆回復時のソフトリカバリー特性を実現しているものがある。(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0006】
他の従来のpinダイオードとして、n−型ベース層101にまで達する埋め込み制御電極を更に備え、キャリアの注入効率を向上させ、通電状態の順方向電圧を低減しているものがある(例えば、特許文献3及び特許文献4参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開平7−273354号公報(第2−3頁、第1図)
【0008】
【特許文献2】
特開2000−323488号公報(第5頁、第1図)
【0009】
【特許文献3】
特開平9−139510号公報(第12−14頁、第1図)
【0010】
【特許文献4】
特開平10−163469号公報(第3−4頁、第1図)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
近年のインバータ等の効率向上に伴ってスイッチング周波数が上昇したため、ダイオードの逆回復損失の低減が要求されている。逆回復損失の低減のためには、通電状態においてn−型ベース層101中に蓄積されるキャリア量を低減する必要がある。キャリア量を低減するためには、p型エミッタ領域103の不純物濃度を下げれば良い。しかし、p型エミッタ領域103とアノード電極108との間の接触抵抗を低く抑えるためには、p型エミッタ領域103の接触面における不純物濃度を下げることはできない。したがって、p型エミッタ領域103の不純物濃度の低減には限界があり、ダイオードの逆回復損失の低減には限界があった。
【0012】
また、p型エミッタ領域103の不純物濃度を下げてしまうと、低電流駆動時にn−型ベース層101中に蓄積されるキャリアが少なくなる。よって、逆回復時に空乏層が速く広がり、電圧の上昇率が高くなる。この高い電圧上昇率が、負荷の絶縁耐圧が劣化する原因となる。
【0013】
本発明はこのような従来技術の問題点を解決するために成されたものであり、その目的は、優れた逆回復特性を有する半導体装置を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の特徴は、第1主表面と第1主表面に対向する第2主表面とを有する第1導電型の半導体からなるベース層と、第1主表面においてベース層に接続した第1主電極層と、第1主電極層を貫通し、ベース層内に達する溝の内部に配置された制御領域と、第2主表面においてベース層に接続した第1導電型の半導体からなる第2主電極層とを具備する半導体装置であることである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。図面の記載において同一あるいは類似の部分には同一あるいは類似な符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、層及び領域の厚みと幅との関係、各層及び各領域の厚みの比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0016】
(第1の実施形態)
図1に示すように、第1の実施の形態に係る電力用半導体装置は、第1主表面と第1主表面に対向する第2主表面とを有するベース層1と、第1主表面においてベース層1に接続した第1主電極層(アノード層)14と、アノード層14を貫通し、ベース層1内に達する溝の内部に配置された制御領域4a、4b、4cと、第2主表面においてベース層1に接続した第2主電極層(カソード層)7と、アノード層14に接続した第1主電極(アノード電極)8と、カソード層7に接続した第2主電極(カソード電極)9と、複数の制御領域4a、4b、4cの内、両端に配置された制御領域の外周に沿って配置されたリング領域45a、45bと、リング領域45a、45bとアノード電極8との間に配置された層間絶縁膜46a、46bとを具備する。
【0017】
アノード層14は、ベース層1の第1主表面に接したバリア層32a、32b、32cと、バリア層32a、32b、32cの上部に選択的に配置された第1主電極領域(アノード領域)33a、33b、33c、33dとを具備する。アノード電極8は、バリア層32a、32b、32cにショットキー接続され、アノード領域33a、33b、33c、33dにオーミック接続されている。
【0018】
制御領域4a、4bは、溝の側面及び底面に沿って配置された制御絶縁膜5a、5bと、制御絶縁膜5a、5bの内側に配置された導電体領域6a、6bとを具備する。導電体領域6a、6bは、アノード電極8に接続している。
【0019】
ベース層1は、第1導電型の半導体からなる。バリア層32a、32b、32cは、ベース層1よりも高不純物濃度の第1導電型の半導体からなる。即ち、バリア層32a、32b、32cの不純物濃度はベース層1の不純物濃度より高く設定される。アノード領域33a、33b、33c、33d及びリング領域45a、45bは、第2導電型の半導体からなる。カソード層7は、第1導電型の半導体からなる。第1導電型と第2導電型とは互いに反対導電型である。すなわち、第1導電型がn型であれば、第2導電型はp型であり、第1導電型がp型であれば、第2導電型はn型である。以後、第1導電型がn型でり、第2導電型がp型である場合について説明する。また、不純物濃度に応じて、ベース層1は「n−型」と、バリア層32a、32b、32cは「n型」と、カソード層7は、「n+型」と、アノード領域33a、33b、33c、33dは「p型」と、リング領域45a、45bは「p+型」とそれぞれ表記する。
【0020】
リング領域45a、45bは、制御領域4aに隣接して制御領域4aよりも深く配置されている。リング領域45a、45bのp型不純物濃度は、逆回復状態において空乏化しない程度に設定される。リング領域45a、45bは、層間絶縁膜46a、46bによってアノード電極8から絶縁されている。但し、図示は省略するが、リング領域45a、45bはアノード領域33a、33b、33c、33dと電気的に接続されている。したがって、リング領域45a、45bは、アノード領域33a、33b、33c、33dを介してアノード電極8に接続されている。
【0021】
図2に示すように、ベース層1の第1主表面上にアノード層14が配置され、第2主表面上にカソード層7が配置されている。アノード層14は、第1主表面に接するバリア層32a、32b、32cと、バリア層32a、32b、32cの上部に選択的に配置されたアノード領域33a、33b、33c、33dとを備える。制御領域4a、4bは、アノード領域33a、33b、33c、33d及びバリア層32a、32b、32cを貫き、ベース層1の途中の深さまで達する溝の内部に配置されている。制御絶縁膜5a、5bは、溝の底面及び側面に沿って薄膜状に配置されている。導電体領域6a、6bは、制御絶縁膜5a、5bを介して溝の内部を埋め戻すように配置されている。アノード電極8は、アノード領域33a、33b、33c、33d、バリア層32a、32b、32c及び導電体領域6a、6bに接続されている。カソード電極9は、カソード層7に接続されている。
【0022】
図3に示すように、アノード電極に接する平面には、アノード領域33a、33b、33c、33d、バリア層32a、32b、32c、制御絶縁膜5a、5b及び導電体領域6a、6bが表出している。制御領域4a、4bは、一定の間隔をもってストライプ状に配置されている。導電体領域6a、6bの両側に制御絶縁膜5a、5bが配置されている。制御領域4aと制御領域4bの間にアノード領域33b、バリア層32b及びアノード領域33cが配置されている。
【0023】
通電状態及び逆回復状態における図1乃至図3に示した電力用半導体装置の動作を説明する。アノード電極8に、カソード電極9に対して正の電圧を印加する。「正の電圧」は、バリア層32a、32b、32cとアノード領域33a、33b、33c、33dの間のpn接合に生じる拡散電位、及びアノード電極8とバリア層32a、32b、32cの間のショットキー接合に生じる内蔵電位(ビルトインポテンシャル)より大きい。すると、アノード領域33a、33b、33c、33dからバリア層32a、32b、32cへ正孔が注入され、正孔の注入量に応じてカソード層7からベース層1へ電子が注入される。キャリアはベース層1に蓄積され、ベース層1の抵抗値が低くなる。また、バリア層32a、32b、32cのショットキー接合界面からアノード電極8へ電子が排出される。電力用半導体装置は通電状態となり、アノード電極8からカソード電極9へ電流が流れる。
【0024】
通電状態におけるアノード電極8とカソード電極9の間に印加されている電圧の極性を反転させる逆回復時の動作を説明する。通電状態における印加電圧を反転させると、ベース層1中に蓄積されたキャリアが排出され、バリア層32a、32b、32cとアノード領域33a、33b、33c、33dの間のpn接合から空乏層が広がり始める。また、バリア層32a、32b、32cのショットキー接合界面から空乏層が広がり始める。その結果、アノード電極8とカソード電極9の間に電流は流れず、電力用半導体装置は逆回復状態となる。
【0025】
以上説明したように、アノード領域33a、33b、33c、33dとベース層1との間にバリア層32a、32b、32cを形成したことにより、アノード領域33a、33b、33c、33dからベース層1へ注入される正孔の量が制限される。したがって、通電状態においてベース層1中に蓄積されるキャリア量が低減する。その結果、半導体装置の逆回復損失が低減する。
【0026】
また、導電体領域6a、6bはアノード電極8へ接続されているため、ベース層1内に配置された導電体領域6a、6bの電位はアノード電極8の電位と同じになる。したがって、逆回復状態においてベース層1の制御領域4a、4bに接した部分から空乏層が広がる。よって、アノード領域33a、33b、33c、33dとバリア層32a、32b、32cとのpn接合の電界、及びアノード電極8とバリア層32a、32b、32cのショットキー接合の電界は緩和され、電力用半導体装置は十分な逆回復時の耐圧を確保することができる。
【0027】
更に、導電体領域6a、6b、制御絶縁膜5a、5b及びバリア層32a、32b、32cのMOS構造によって、逆回復状態において制御領域4a、4bに接したバリア層32a、32b、32cに反転層が形成される。その結果、逆回復状態において正孔が速やかに排出されるため、逆回復損失が更に低減される。
【0028】
更に、リング領域45a、45bを配置することにより、制御領域4aの端部に電界が集中することを防止できる。リング領域45a、45bとアノード電極8が直接接続しないことにより、濃度の高いリング領域45a、45bに電流が集中することを防止できる。そのため、逆回復時の熱破壊を防止できる。
【0029】
なお、図3のA−A’切断面において導電体領域6a、6bはアノード電極8に接続されている。しかし、A−A’切断面と異なる切断面において、導電体領域6a、6bはアノード電極8に接続されていても構わない。即ち、図3に示した平面の少なくとも一部において、導電体領域6a、6bはアノード電極8に接続されていればよい。
【0030】
第1の実施の形態において、バリア層32a、32b、32cの不純物濃度は、1×1011乃至1×1014cm−2であることが望ましい。
【0031】
なお、以上のような効果を得るために、制御領域4a、4bの深さおよび制御領域4a、4b間の距離は、バリア層32a、32b、32cの不純物濃度に応じて設定される。例えば、バリア層32a、32b、32cの最大深さが3.5μm、不純物濃度の最大値が1×1015cm−2のとき、制御領域4a、4bの深さを4μm、制御領域4a、4b間の距離を3μmとすればよい。但し、図示は省略するが、リング領域45a、45bはアノード領域33a、33b、33c、33dと電気的に接続されている。したがって、リング領域45a、45bは、アノード領域33a、33b、33c、33dを介してアノード電極8に接続されている。
【0032】
導電体領域6a、6bは、例えばリンを高濃度にドープした多結晶シリコンで形成することができる。導電体領域6a、6b内では電位差が生じないので、導電体領域6a、6bを溝内に埋め込み形成することによって、電界をさらに緩和することができる。さらに、導電体領域6a、6bをアノード電極8と接続することによって、導電体領域6a、6bの電位を安定させることが出来、耐圧の劣化を避けることができる。
【0033】
図4及び図5を参照して、図1乃至図3に示した半導体装置の製造方法を以下に示す。なお、図4及び図5に示す断面は、図3のA−A’切断面に対応している。
【0034】
(イ)先ず、n−型の半導体基板の第1主表面上に、半導体基板よりも不純物濃度の高いn型の半導体層をエピタキシャル成長させる。リソグラフィ法を用いて、n型の半導体層の上に酸化膜を選択的に成膜し、酸化膜をマスクとして、n型の半導体層の上部にボロン(B)イオンを選択的に注入する。n−型の半導体基板の第1主表面に対向する第2主表面よりリン(P)イオン或いは砒素(As)イオン等のn型不純物イオンを注入する。窒素雰囲気にてアニール処理を施すことにより、図4(a)に示すように、n+型のカソード層7、n−型のベース層1、n型のバリア層32が形成され、バリア層32上部に選択的にp型のアノード領域34a、34bが形成される。なお、n型のバリア層32はエピタキシャル成長ではなく、イオン注入及び熱拡散により形成してもよい。
【0035】
(ロ)フォトリソグラフィ法及び異方性エッチング法を用いて、アノード領域34a、34b、バリア層32及びベース層1の一部を選択的に除去する。異方性エッチング法としては反応性イオンエッチング(RIE)法を用いればよい。アノード領域34a、34bの一部を選択的に除去し、バリア層32の一部を選択的に除去し、ベース層1の一部を選択的に途中の深さまで除去した時点でエッチングは終了する。その後、等方的エッチング処理を施す。図4(b)に示すように、アノード領域33a、33b、33c、33d及びバリア層32a、32b、32cを貫通し、ベース層1の途中の深さまで達する溝10a、10bが形成される。等方的エッチング処理により、溝10a、10bの底面は、溝の側面に連続した曲面となる。
【0036】
(ハ)熱酸化法あるいは化学的気相成長(CVD)法を用いて、図5(a)に示すように、溝10a、10bの内面、アノード領域33a、33b、33c、33d及びバリア層32a、32b、32cの上に絶縁膜11を堆積する。絶縁膜11としては酸化膜、窒化膜、酸窒化膜などを使用すればよい。絶縁膜11の膜厚は、溝10a、10bが絶縁膜11によって埋め戻されない程度であればよい。CVD法或いはスパッタ法を用いて、絶縁膜11の上に導電体膜12を堆積する。導電体膜12は、溝10a、10bが絶縁膜11及び導電体膜12によって埋めもどれされるまで堆積する。導電体膜12としてはアルミニウム(Al)、チタン(Ti)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、Al−Si合金、TiW、WSi、TiSiなどを使用すればよい。
【0037】
(ニ)化学的機械的研磨(CMP)法等の平坦化技術を用いて、アノード領域33a、33b、33c、33d及びバリア層32a、32b、32cの上に堆積されている導電体膜12及び絶縁膜11を除去する。平坦化処理は、導電体膜12及び絶縁膜11の一部を除去し、アノード領域33a、33b、33c、33d及びバリア層32a、32b、32cが表出した時点で終了する。図5(b)に示すように、制御絶縁膜5a、5b及び導電体領域6a、6bを備えた制御領域4a、4bが溝10a、10b内部に埋め込まれる。
【0038】
(ホ)最後に、スパッタ法或いは金属蒸着法などを用いて、アノード領域33a、33b、33c、33d、バリア層32a、32b、32c及び制御領域4a、4b上にアノード電極8を堆積し、カソード層7上にカソード電極9を堆積する。以上の製造工程を経て、図1乃至図3に示した電力用半導体装置が完成する。
【0039】
以上説明したように、等方的エッチング処理によって溝10a、10bの底面を曲面としたことで、制御領域4a、4bの端部に電界が集中することを防止できる。
【0040】
(第1の実施の形態の変形例)
図6に示すように、第1の実施の形態の変形例に係る電力用半導体装置は、第1主表面と第1主表面に対向する第2主表面とを有するベース層1と、第1主表面においてベース層1に接続したアノード層14と、アノード層14を貫通し、ベース層1内に達する溝の内部に配置された絶縁体領域13a、13bと、第2主表面においてベース層1に接続したカソード層7と、アノード層14に接続したアノード電極8と、カソード層7に接続したカソード電極9とを具備する。アノード層14は、ベース層1の第1主表面に接したバリア層32a、32b、32cと、バリア層32a、32b、32c内に選択的に配置されたアノード領域33a、33b、33c、33dとを具備する。アノード電極8は、バリア層32a、32b、32cにショットキー接続され、アノード領域33a、33b、33c、33dにオーミック接続されている。図2に示した電力用半導体装置と異なる点は、溝内部に絶縁物からなる絶縁体領域13a、13bが配置されている点である。
【0041】
アノード領域33a、33b、33c、33dとベース層1との間にバリア層32a、32b、32cを形成したことにより、アノード領域33a、33b、33c、33dからベース層1へ注入される正孔の量が制限される。したがって、通電状態においてベース層1中に蓄積されるキャリア量が低減する。その結果、電力用半導体装置の逆回復損失が低減する。
【0042】
また、溝内部に絶縁体領域13a、13bが配置されているため、逆回復状態において溝底部に電界が集中する。したがって、溝で挟まれたバリア層32a、32b、32cとアノード領域33a、33b、33c、33dの間の電界強度が緩和される。したがって、逆回復状態においてベース層1の絶縁体領域13a、13bに接した部分から空乏層が広がり、電力用半導体装置は十分な逆回復時の耐圧を確保することができる。アバランシェ降伏が起こりにくくなり、逆回復時の耐圧の低下を避けることができる。
【0043】
(第2の実施の形態)
図7に示すように、第2の実施の形態に係る電力用半導体装置は、第1主表面と第1主表面に対向する第2主表面とを有するベース層1と、第1主表面においてベース層1に接続したアノード層51と、アノード層51を貫通し、ベース層1内に達する溝の内部に配置された制御領域4a,4bと、第2主表面においてベース層1に接続したカソード層7と、アノード層51に接続したアノード電極8と、カソード層7に接続したカソード電極9と、複数の制御領域4a、4b、4cの内、両端に配置された制御領域の外周に沿って配置されたリング領域45a、45bと、リング領域45a、45bとアノード電極8との間に配置された層間絶縁膜46a、46bとを具備する。
【0044】
アノード層51は、ベース層1の第1主表面に接したバリア層2a、2b、2cと、バリア層2a、2b、2cの上部に配置されたアノード領域3a、3b、3cとを具備する。アノード電極8は、アノード領域3a、3b、3cにオーミック接続されている。制御領域4a、4bは、バリア層2a、2b、2c及びアノード領域3a、3b、3cに接している。
【0045】
制御領域4a、4bは、溝の側面及び底面に沿って配置された制御絶縁膜5a、5bと、制御絶縁膜5a、5bの内側に配置された導電体領域6a、6bとを具備する。導電体領域6a、6bは、アノード電極8に接続している。
【0046】
図8に示すように、ベース層1の第1主表面上にアノード層51が配置され、第2主表面上にカソード層7が配置されている。アノード層51は、第1主表面に接するバリア層2a、2b、2cと、バリア層2a、2b、2cの上部に配置されたアノード領域3a、3b、3cとを備える。制御領域4a、4bは、アノード領域3a、3b、3c及びバリア層2a、2b、2cを貫き、ベース層1の途中の深さまで達する溝の内部に配置されている。制御絶縁膜5a、5bは、溝の底面及び側面に沿って薄膜状に配置されている。導電体領域6a、6bは、制御絶縁膜5a、5bを介して溝の内部を埋め戻すように配置されている。アノード電極8は、アノード領域3a、3b、3c及び導電体領域6a、6bに接続されている。カソード電極9は、カソード層7に接続されている。図2に示した電力用半導体装置において、バリア層32a、32b、32cはアノード電極8にショットキー接続されていた。一方、図8に示す電力用半導体装置において、バリア層2a、2b、2cはアノード電極8にショットキー接続されず、アノード領域3a、3b、3cは、バリア層2a、2b、2cの上部に一様に配置されている。
【0047】
図9に示すように、アノード電極に接する平面には、アノード領域3a、3b、3c、制御絶縁膜5a、5b及び導電体領域6a、6bが表出している。制御領域4a、4bは、一定の間隔をもってストライプ状に配置されている。導電体領域6a、6bの両側に絶縁膜5a、5bが配置されている。制御領域4a、4bの間にアノード領域3bが配置され、制御領域4a、4bの外側にアノード領域3a、3cが配置されている。
【0048】
通電状態及び逆回復状態における図7乃至図9に示した電力用半導体装置の動作を説明する。アノード電極8に、カソード電極9に対して正の電圧を印加する。「正の電圧」は、バリア層2a、2b、2cとアノード領域3a、3b、3cの間のpn接合に生じる拡散電位より大きい。すると、アノード領域3a、3b、3cからバリア層2a、2b、2cへ正孔が注入され、正孔の注入量に応じてカソード層7からベース層1へ電子が注入される。キャリアはベース層1に蓄積され、ベース層1の抵抗値が低くなる。半導体装置は通電状態となり、アノード電極8からカソード電極9へ電流が流れる。
【0049】
通電状態におけるアノード電極8とカソード電極9の間に印加されている電圧の極性を反転させる逆回復時の動作を説明する。通電状態における印加電圧を反転させると、ベース層1中に蓄積されたキャリアが排出され、バリア層2a、2b、2cとアノード領域3a、3b、3cの間のpn接合から空乏層が広がり始める。その結果、アノード電極8とカソード電極9の間に電流は流れず、電力用半導体装置は逆回復状態となる。
【0050】
以上説明したように、アノード領域3a、3b、3cとベース層1との間にバリア層2a、2b、2cを形成したことにより、アノード領域3a、3b、3cからベース層1へ注入される正孔の量が制限される。したがって、通電状態においてベース層1中に蓄積されるキャリア量が低減する。その結果、電力用半導体装置の逆回復損失が低減する。
【0051】
また、導電体領域6a、6bはアノード電極8へ接続されているため、ベース層1内に配置された導電体領域6a、6bの電位はアノード電極8の電位と同じになる。したがって、逆回復状態においてベース層1の制御領域4a、4bに接した部分から空乏層が広がる。よって、アノード領域3a、3b、3cとバリア層2a、2b、2cとのpn接合の電界は緩和され、電力用半導体装置は十分な逆回復時の耐圧を確保することができる。
【0052】
更に、導電体領域6a、6b、制御絶縁膜5a、5b及びバリア層2a、2b、2cのMOS構造によって、逆回復状態において制御領域4a、4bに接したバリア層2a、2b、2cに反転層が形成される。その結果、逆回復状態において正孔が速やかに排出されるため、逆回復損失が更に低減される。
【0053】
更に、リング領域45a、45bを配置することにより、制御領域4aの端部に電界が集中することを防止できる。リング領域45a、45bとアノード電極8が直接接続しないことにより、濃度の高いリング領域45a、45bに電流が集中することを防止できる。そのため、逆回復時の耐圧劣化を防止できる。
【0054】
なお、図9に示したように、制御領域4a、4bは一定の間隔をおいてストライプ状に配置されている。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。図10(a)に示すように、制御領域36a、36b、36cは、円形の平面形状を有し、一定の間隔をおいて散点状に配置されていても構わない。制御領域36a、36b、36cは、円形の導電体領域38a、38b、38cと、導電体領域38a、38b、38cの外周を取り囲むリング状の絶縁膜37a、37b、37cとを備える。制御領域36a、36b、36cが配置されていない領域には、アノード領域35が表出している。図10(a)のG−G’切断面に沿った断面図が、図8に対応している。なお、図10(a)において、制御領域36a、36b、36cを、絶縁物からなる絶縁体領域で置き換えても構わない。
【0055】
また、図10(a)において、制御領域36a、36b、36cとアノード領域35とを入れ替えても構わない。即ち、図10(b)に示すように、アノード領域39a、39b、39cは、円形の平面形状を有し、一定の間隔をおいて散点状に配置されていても構わない。アノード領域39a、39b、39cが形成されていない領域には、制御領域(40、41)が表出している。制御領域(40、41)は、アノード領域39a、39b、39cの外周を取り囲むリング状の制御絶縁膜40と、アノード領域39a、39b、39c及び絶縁膜40が配置されていない領域に配置された導電体領域41とを備える。図10(b)において、絶縁膜40及び導電体領域41を、絶縁物からなる絶縁体領域で置き換えても構わない。
【0056】
図11に示すように、図10(b)の電力用半導体装置は、H−H’切断面において、第1主表面と第1主表面に対向する第2主表面とを有するベース層1と、第1主表面においてベース層1に接続したバリア層50a、50bと、バリア層50a、50bの上部に配置されたアノード領域39a、39bと、バリア層50a、50b及びアノード領域39a、39bを貫通し、ベース層1内に達する溝の内部に配置された制御領域(40、41)と、第2主表面においてベース層1に接続したカソード層7と、アノード領域39a、39b及び制御領域(40、41)に接続したアノード電極8と、カソード層7に接続したカソード電極9とを具備する。アノード電極8は、アノード領域3a、3b、3cにオーミック接続されている。 制御領域(40、41)は、溝の側面及び底面に沿って配置された制御絶縁膜40と、制御絶縁膜40の内側に配置された導電体領域41とを具備する。導電体領域41は、アノード電極8に接続している。
【0057】
(第2の実施の形態の変形例)
図12に示すように、第2の実施の形態の変形例に係る電力用半導体装置は、第1主表面と第1主表面に対向する第2主表面とを有するベース層1と、第1主表面においてベース層1に接続したアノード層51と、アノード層51を貫通し、ベース層1内に達する溝の内部に配置された絶縁体領域13a、13bと、第2主表面においてベース層1に接続したカソード層7と、アノード層51に接続したアノード電極8と、カソード層7に接続したカソード電極9とを具備する。アノード層51は、ベース層1の第1主表面に接したバリア層2a、2b、2cと、バリア層2a、2b、2cの上部に配置されたアノード領域3a、3b、3cとを具備する。アノード電極8は、アノード領域3a、3b、3cにオーミック接続されている。図8に示した電力用半導体装置と異なる点は、溝内部に絶縁物からなる絶縁体領域13a、13bが配置されている点である。
【0058】
アノード領域3a、3b、3cとベース層1との間にバリア層2a、2b、2cを形成したことにより、アノード領域3a、3b、3cからベース層1へ注入される正孔の量が制限される。したがって、通電状態においてベース層1中に蓄積されるキャリア量が低減する。その結果、電力用半導体装置の逆回復損失が低減する。
【0059】
また、溝内部に絶縁体領域13a、13bが配置されているため、逆回復状態において溝底部に電界が集中する。したがって、溝で挟まれたバリア層2a、2b、2cとアノード領域3a、3b、3cの間の電界強度が緩和される。したがって、逆回復状態においてベース層1の絶縁体領域13a、13bに接した部分から空乏層が広がり、電力用半導体装置は十分な逆回復時の耐圧を確保することができる。アバランシェ降伏が起こりにくくなり、逆回復時の熱破壊を避けることができる。
【0060】
(第3の実施の形態)
図13に示すように、第3の実施の形態に係る電力用半導体装置は、第1主表面と第1主表面に対向する第2主表面とを有するベース層1と、第1主表面においてベース層1に接続したアノード層52と、アノード層52を貫通し、ベース層1内に達する溝の内部に配置された制御領域4a,4bと、第2主表面においてベース層1に接続したカソード層7と、アノード層52に接続したアノード電極8と、カソード層7に接続したカソード電極9と、複数の制御領域4a、4bの内、両端に配置された制御領域の外周に沿って配置されたリング領域45a、45bと、リング領域45a、45bとアノード電極8との間に配置された層間絶縁膜46a、46bとを具備する。但し、図示は省略するが、リング領域45a、45bはアノード領域33a、33b、33c、33dと電気的に接続されている。したがって、リング領域45a、45bは、アノード領域33a、33b、33c、33dを介してアノード電極8に接続されている。
【0061】
アノード層52は、ベース層1の第1主表面に接したバリア層2a、2b、2cと、バリア層2a、2b、2cの上部に選択的に配置されたアノード領域3a、3cとを具備する。アノード電極8は、アノード領域3a、3cにオーミック接続され、バリア層2bにショットキー接続されている。制御領域4a、4bは、バリア層2a、2b、2c及びアノード領域3a、3cに接している。
【0062】
制御領域4a、4bは、溝の側面及び底面に沿って配置された制御絶縁膜5a、5bと、制御絶縁膜5a、5bの内側に配置された導電体領域6a、6bとを具備する。導電体領域6a、6bは、アノード電極8に接続している。
【0063】
図14に示すように、ベース層1の第1主表面上にアノード層52が配置され、第2主表面上にカソード層7が配置されている。アノード層52は、第1主表面に接するバリア層2a、2b、2cと、バリア層2a、2cの上部に配置されたアノード領域3a、3cとを備える。制御領域4a、4bは、アノード領域3a、3c及びバリア層2a、2b、2cを貫き、ベース層1の途中の深さまで達する溝の内部に配置されている。制御絶縁膜5a、5bは、溝の底面及び側面に沿って薄膜状に配置されている。導電体領域6a、6bは、制御絶縁膜5a、5bを介して溝の内部を埋め戻すように配置されている。アノード電極8は、アノード領域3a、3c及び導電体領域6a、6bにオーミック接続され、バリア層2bにショットキー接続されている。カソード電極9は、カソード層7に接続されている。
【0064】
図15に示すように、アノード電極に接する平面には、アノード領域3a、3c、バリア層2b、制御絶縁膜5a、5b及び導電体領域6a、6bが表出している。制御領域4a、4bは、一定の間隔をもってストライプ状に配置されている。導電体領域6a、6bの両側に制御絶縁膜5a、5bが配置されている。制御領域4aと制御領域4bの間にバリア層2bが配置されている。制御領域4a、4bの外側にアノード領域3a、3cが配置されている。
【0065】
通電状態及び逆回復状態における図13乃至図15に示した電力用半導体装置の動作を説明する。アノード電極8に、カソード電極9に対して正の電圧を印加する。「正の電圧」は、バリア層2a、2cとアノード領域3a、3cの間のpn接合に生じる拡散電位、及びアノード電極8とバリア層2bの間のショットキー接合に生じる内蔵電位より大きい。すると、アノード領域3a、3cからバリア層2a、2cへ正孔が注入され、正孔の注入量に応じてカソード層7からベース層1へ電子が注入される。キャリアはベース層1に蓄積され、ベース層1の抵抗値が低くなる。また、バリア層2bのショットキー接合界面からアノード電極8へ電子が排出される。半導体装置は通電状態となり、アノード電極8からカソード電極9へ電流が流れる。
【0066】
通電状態におけるアノード電極8とカソード電極9の間に印加されている電圧の極性を反転させる逆回復時の動作を説明する。通電状態における印加電圧を反転させると、ベース層1中に蓄積されたキャリアが排出され、バリア層2a、2cとアノード領域3a、3cの間のpn接合から空乏層が広がり始める。また、バリア層2bのショットキー接合界面から空乏層が広がり始める。その結果、アノード電極8とカソード電極9の間に電流は流れず、電力用半導体装置は逆回復状態となる。
【0067】
以上説明したように、アノード領域3a、3cとベース層1との間にバリア層2a、2cを形成したことにより、アノード領域3a、3cからベース層1へ注入される正孔の量が制限される。したがって、通電状態においてベース層1中に蓄積されるキャリア量が低減する。その結果、電力用半導体装置の逆回復損失が低減する。
【0068】
また、導電体領域6a、6bはアノード電極8へ接続されているため、ベース層1内に配置された導電体領域6a、6bの電位はアノード電極8の電位と同じになる。したがって、逆回復状態においてベース層1の制御領域4a、4bに接した部分から空乏層が広がる。よって、アノード領域3a、3cとバリア層2a、2cとのpn接合の電界、及びバリア層2bのショットキー接合の電界は緩和され、電力用半導体装置は十分な逆回復時の耐圧を確保することができる。
【0069】
更に、導電体領域6a、6b、制御絶縁膜5a、5b、及びバリア層2a、2b、2cのMOS構造によって、逆回復状態において制御領域4a、4bに接したバリア層2a、2b、2cに反転層が形成される。その結果、逆回復状態において正孔が速やかに排出されるため、逆回復損失が更に低減される。
【0070】
更に、リング領域45a、45bを配置することにより、制御領域4aの端部に電界が集中することを防止できる。リング領域45a、45bとアノード電極8が直接接続しないことにより、濃度の高いリング領域45a、45bに電流が集中することを防止できる。そのため、逆回復時の耐圧劣化を防止できる。但し、図示は省略するが、リング領域45a、45bはアノード領域33a、33b、33c、33dと電気的に接続されている。したがって、リング領域45a、45bは、アノード領域33a、33b、33c、33dを介してアノード電極8に接続されている。
【0071】
更に、図7乃至図9に示した電力用半導体装置に比して、アノード領域3a、3cの面積が減少するため、アノード領域3a、3cからベース層1へ注入される正孔の量が更に制限される。したがって、通電状態においてベース層1中に蓄積されるキャリア量が更に低減する。その結果、電力用半導体装置の逆回復損失が更に低減する。
【0072】
なお、図16に示すように、隣接する制御領域4a、4bに挟まれた領域の一部分に、アノード領域3a、3b、3cが選択的に配置されていても構わない。即ち、隣接する制御領域4a、4bに挟まれた領域の他の部分において、バリア層2a、2b、2cが配置されていても構わない。図15に示した電力用半導体装置との相違点は、制御領域4a、4bに対して垂直な方向にストライプ状にアノード領域3a、3b、3cを配置した点である。
【0073】
図17(a)に示すように、図16の電力用半導体装置はD−D’切断面において、第1主表面と第1主表面に対向する第2主表面とを有するベース層1と、第1主表面においてベース層1に接続したバリア層2a、2b、2cと、バリア層2a、2b、2cの上部に配置されたアノード領域3a、3b、3cと、バリア層2a、2b、2c及びアノード領域3a、3b、3cを貫通し、ベース層1内に達する溝の内部に配置された制御領域4a、4bと、第2主表面においてベース層1に接続したカソード層7と、アノード層52に接続したアノード電極8と、カソード層7に接続したカソード電極9とを具備する。
【0074】
図17(b)に示すように、図16のE−E’切断面において、ベース層1の第1主表面にバリア層2bが配置され、バリア層2bの上部に選択的にアノード領域3bが配置されている。ベース層1の第2主表面にカソード層7が配置されている。アノード領域3b及びバリア層2bは、アノード電極8に接続されている。カソード層7は、カソード電極9に接続されている。
【0075】
アノード領域3a、3b、3cと制御領域4a、4bとの間のマスク合わせ精度が良くない場合でも、電力用半導体装置の特性を劣化させることない。
【0076】
(第3の実施の形態の第1の変形例)
図18に示すように、第3の実施の形態の第1の変形例に係る電力用半導体装置は、第1主表面と第1主表面に対向する第2主表面とを有するベース層1と、第1主表面においてベース層1に接続したアノード層52と、アノード層52を貫通し、ベース層1内に達する溝の内部に配置された絶縁体領域13a、13bと、第2主表面においてベース層1に接続したカソード層7と、アノード層52に接続したアノード電極8と、カソード層7に接続したカソード電極9とを具備する。アノード層52は、ベース層1の第1主表面に接したバリア層2a、2b、2cと、バリア層2a、2b、2cの上部に選択的に配置されたアノード領域3a、3cとを具備する。アノード電極8は、バリア層2bにショットキー接続され、アノード領域3a、3cにオーミック接続されている。図14に示した電力用半導体装置と異なる点は、溝内部に絶縁物からなる絶縁体領域13a、13bが配置されている点である。
【0077】
アノード領域3a、3cとベース層1との間にバリア層2a、2cを形成したことにより、アノード領域3a、3cからベース層1へ注入される正孔の量が制限される。したがって、通電状態においてベース層1中に蓄積されるキャリア量が低減する。その結果、電力用半導体装置の逆回復損失が低減する。
【0078】
また、溝内部に絶縁体領域13a、13bが配置されているため、逆回復状態において溝底部に電界が集中する。したがって、アノード領域3a、3cとバリア層2a、2cとのpn接合の電界、及びバリア層2bのショットキー接合の電界が緩和される。したがって、逆回復状態においてベース層1の絶縁体領域13a、13bに接した部分から空乏層が広がり、電力用半導体装置は十分な逆回復時の耐圧を確保することができる。アバランシェ降伏が起こりにくくなり、逆回復時の耐圧の低下を避けることができる。
【0079】
(第3の実施の形態の第2の変形例)
図19に示すように、第3の実施の形態の第2の変形例に係る電力用半導体装置は、第1主表面と第1主表面に対向する第2主表面とを有するベース層1と、第1主表面を含むベース層1の上部に選択的に配置されたアノード層52と、アノード層52を貫通し、ベース層1内に達する溝の内部に配置された制御領域4a、4bと、第2主表面においてベース層1に接したカソード層7と、アノード層52及びベース層1に接続したアノード電極8と、カソード層7に接続したカソード電極9とを具備する。アノード層52は、ベース層1に接したバリア層2a、2b、2c、2b’と、バリア層2a、2cの上部に配置されたアノード領域3a、3cとを具備する。制御領域4a、4bは、溝の側面及び底面に沿って配置された制御絶縁膜5a、5bと、制御絶縁膜5a、5bの内側に配置された導電体領域6a、6bとを具備する。
【0080】
アノード電極8は、バリア層2b、2b’及びベース層1にショットキー接続され、アノード領域3a、3cにオーミック接続されている。制御絶縁膜5a、5bは、溝の側面において、バリア層2a、2b、2c、2b’及びアノード領域3a、3cに接している。導電体領域6a、6bは、アノード電極8に接続している。図14に示した電力用半導体装置と異なる点は、バリア層2b及びバリア層2b’が隣接する制御絶縁膜5a、5bの側面に沿うように配置され、バリア層2b、2b’の間に位置するベース層1の一部分がアノード電極8にショットキー接続されている点である。
【0081】
図14に示したバリア層2a、2b、2cはエピタキシャル成長法によって形成されるが、図19に示したバリア層2a、2b、2c、2b’は拡散によって形成することができ、製造工程を簡略化することができる。
【0082】
また、アノード領域3a、3cとベース層1との間にバリア層2a、2cを形成したことにより、アノード領域3a、3cからベース層1へ注入される正孔の量が制限される。したがって、通電状態においてベース層1中に蓄積されるキャリア量が低減する。その結果、電力用半導体装置の逆回復損失が低減する。
【0083】
更に、導電体領域6a、6bはアノード電極8へ接続されているため、ベース層1内に配置された導電体領域6a、6bの電位はアノード電極8の電位と同じになる。したがって、逆回復状態においてベース層1の制御領域4a、4bに接した部分から空乏層が広がる。よって、アノード領域3a、3cとバリア層2a、2cとのpn接合の電界、及びバリア層2b、2b’及びベース層1のショットキー接合界面の電界は緩和され、電力用半導体装置は十分な逆回復時の耐圧を確保することができる。
【0084】
(第3の実施の形態の第3の変形例)
図20に示すように、第3の実施の形態の第3の変形例に係る電力用半導体装置は、第1主表面と第1主表面に対向する第2主表面とを有するベース層1と、第1主表面を含むベース層1の上部に選択的に配置されたアノード層52と、アノード層52を貫通し、ベース層1内に達する溝の内部に配置された制御領域4a、4bと、第2主表面においてベース層1に接したカソード層7と、アノード層52及びベース層1に接続したアノード電極8と、カソード層7に接続したカソード電極9とを具備する。アノード層52は、ベース層1に接したバリア層2a、2cと、バリア層2a、2cの上部に配置されたアノード領域3a、3cとを具備する。制御領域4a、4bは、溝の側面及び底面に沿って配置された制御絶縁膜5a、5bと、制御絶縁膜5a、5bの内側に配置された導電体領域6a、6bとを具備する。
【0085】
アノード電極8は、第1主表面においてベース層1にショットキー接続され、アノード領域3a、3cにオーミック接続されている。制御絶縁膜5a、5bは、溝の側面において、バリア層2a、2b、2c、2b’及びアノード領域3a、3cに接している。導電体領域6a、6bは、アノード電極8に接続している。図14に示した電力用半導体装置と異なる点は、制御絶縁膜5a、5bの間にはベース層1のみが配置され、アノード層52が配置されていない点である。
【0086】
図19に示した電力用半導体装置に比して、ベース層1よりもn型不純物濃度の高いバリア層2b、2b’が配置されていないため、ベース層1とアノード電極8とのショットキー接続界面におけるn型不純物濃度を低く抑えることができ、ショットキー接続を容易に形成することが出来る。
【0087】
また、アノード領域3a、3cとベース層1との間にバリア層2a、2cを形成したことにより、アノード領域3a、3cからベース層1へ注入される正孔の量が制限される。したがって、通電状態においてベース層1中に蓄積されるキャリア量が低減する。その結果、電力用半導体装置の逆回復損失が低減する。
【0088】
更に、導電体領域6a、6bはアノード電極8へ接続されているため、ベース層1内に配置された導電体領域6a、6bの電位はアノード電極8の電位と同じになる。したがって、逆回復状態においてベース層1の制御領域4a、4bに接した部分から空乏層が広がる。よって、アノード領域3a、3cとバリア層2a、2cとのpn接合の電界、及びベース層1とアノード電極8とのショットキー接合界面の電界は緩和され、電力用半導体装置は十分な逆回復時の耐圧を確保することができる。
【0089】
(第4の実施の形態)
図21に示すように、第4の実施の形態に係る電力用半導体装置は、第1主表面と第1主表面に対向する第2主表面とを有するベース層1と、第1主表面においてベース層1に接続したアノード層53と、アノード層53を貫通し、ベース層1内に達する溝の内部に配置された制御領域4a、4bと、第2主表面においてベース層1に接続したカソード層7と、アノード層53に接続したアノード電極8と、カソード層7に接続したカソード電極9と、複数の制御領域4a、4bの内、両端に配置された制御領域の外周に沿って配置されたリング領域45a、45bと、リング領域45a、45bとアノード電極8との間に配置された層間絶縁膜46a、46bとを具備する。但し、図示は省略するが、リング領域45a、45bはアノード領域33a、33b、33c、33dと電気的に接続されている。したがって、リング領域45a、45bは、アノード領域33a、33b、33c、33dを介してアノード電極8に接続されている。
【0090】
アノード層53は、ベース層1の第1主表面に接して選択的に設けたバリア層2a、2cと、バリア層2a、2cの上部及びベース層1の第 1 主表面上に配置されたアノード領域3a、3b、3cとを具備する。アノード電極8は、アノード領域3a、3b、3cにオーミック接続されている。アノード領域3bは、第1主表面においてベース層1に接続している。制御領域4a、4bは、バリア層2a、2c及びアノード領域3a、3b、3cに接している。
【0091】
制御領域4a、4bは、溝の側面及び底面に沿って配置された制御絶縁膜5a、5bと、制御絶縁膜5a、5bの内側に配置された導電体領域6a、6bとを具備する。導電体領域6a、6bは、アノード電極8に接続している。
【0092】
図22に示すように、ベース層1の第1主表面上にアノード層53が配置され、第2主表面上にカソード層7が配置されている。アノード層53は、第1主表面に接するバリア層2a、2cと、バリア層2a、2cの上部に配置されたアノード領域3a、3cと、第1主表面に接するアノード領域3bとを備える。制御領域4a、4bは、アノード領域3a、3b、3c及びバリア層2a、2cを貫き、ベース層1の途中の深さまで達する溝の内部に配置されている。制御絶縁膜5a、5bは、溝の底面及び側面に沿って薄膜状に配置されている。導電体領域6a、6bは、制御絶縁膜5a、5bを介して溝の内部を埋め戻すように配置されている。アノード電極8は、アノード領域3a、3b、3c及び導電体領域6a、6bに接続されている。カソード電極9は、カソード層7に接続されている。隣接する制御領域4a、4bに挟まれた領域の一部に、ベース層1に接したアノード領域3bが配置されている。
【0093】
図23に示すように、アノード電極に接する平面には、アノード領域3a、3b、3c、制御絶縁膜5a、5b及び導電体領域6a、6bが表出している。制御領域4a、4bは、一定の間隔をもってストライプ状に配置されている。導電体領域6a、6bの両側に制御絶縁膜5a、5bが配置されている。制御領域4aと制御領域4bの間にアノード領域3bが配置されている。制御領域4a、4bの外側にアノード領域3a、3cが配置されている。
【0094】
通電状態及び逆回復状態における図21乃至図23に示した電力用半導体装置の動作を説明する。アノード電極8に、カソード電極9に対して正の電圧を印加する。「正の電圧」は、バリア層2a、2cとアノード領域3a、3cの間のpn接合に生じる拡散電位、及びアノード領域3bとベース層1の間のpn接合に生じる拡散電位より大きい。すると、アノード領域3a、3cからバリア層2a、2cへ正孔が注入され、アノード領域3bからベース層1へ正孔が注入される。正孔の注入量に応じてカソード層7からベース層1へ電子が注入される。キャリアはベース層1に蓄積され、ベース層1の抵抗値が低くなる。半導体装置は通電状態となり、アノード電極8からカソード電極9へ電流が流れる。
【0095】
通電状態におけるアノード電極8とカソード電極9の間に印加されている電圧の極性を反転させる逆回復時の動作を説明する。通電状態における印加電圧を反転させると、ベース層1中に蓄積されたキャリアが排出され、バリア層2a、2cとアノード領域3a、3cの間のpn接合から空乏層が広がり始める。また、アノード領域3bとベース層1の間のpn接合界面から空乏層が広がり始める。その結果、アノード電極8とカソード電極9の間に電流は流れず、電力用半導体装置は逆回復状態となる。
【0096】
以上説明したように、アノード領域3a、3cとベース層1との間にバリア層2a、2cを形成したことにより、アノード領域3a、3cからベース層1へ注入される正孔の量が制限される。したがって、通電状態においてベース層1中に蓄積されるキャリア量が低減する。その結果、電力用半導体装置の逆回復損失が低減する。
【0097】
また、バリア層2a、2cの面積を制御することで、ベース層1へ注入される正孔の量を調整することができる。
【0098】
更に、導電体領域6a、6bはアノード電極8へ接続されているため、ベース層1内に配置された導電体領域6a、6bの電位はアノード電極8の電位と同じになる。したがって、逆回復状態においてベース層1の制御領域4a、4bに接した部分から空乏層が広がる。よって、アノード領域3a、3cとバリア層2a、2cとのpn接合の電界、及びアノード領域3bとベース層1とのpn接合の電界は緩和され、電力用半導体装置は十分な逆回復時の耐圧を確保することができる。
【0099】
更に、導電体領域6a、6b、制御絶縁膜5a、5b及びバリア層2a、2cのMOS構造によって、逆回復状態において制御領域4a、4bに接したバリア層2a、2c及びベース層1に反転層が形成される。その結果、逆回復状態において正孔が速やかに排出されるため、逆回復損失が更に低減される。
【0100】
更に、リング領域45a、45bを配置することにより、制御領域4aの端部に電界が集中することを防止できる。リング領域45a、45bとアノード電極8が直接接続しないことにより、濃度の高いリング領域45a、45bに電流が集中することを防止できる。そのため、逆回復時の熱破壊を防止できる。
【0101】
なお、ベース層1に接するアノード領域3bの面積の割合は、アノード領域3a、3b、3c全体の10%以下であることが好ましい。制御領域4a、4b間の領域に対してベース層1に接するアノード領域3bが配置される割合、或いはアノード領域3bが形成される制御領域4a、4bの間隔を調整することにより、10%以下を実現することができる。バリア層2a、2cの面積が狭すぎると、十分な逆回復時の耐圧を確保し、逆回復損失を低減することができない。
【0102】
(第4の実施の形態の第1の変形例)
図24に示すように、第4の実施の形態の第1の変形例に係る電力用半導体装置は、第1主表面と第1主表面に対向する第2主表面とを有するベース層1と、第1主表面においてベース層1に接続したアノード層53と、アノード層53を貫通し、ベース層1内に達する溝の内部に配置された絶縁体領域13a、13bと、第2主表面においてベース層1に接続したカソード層7と、アノード層53に接続したアノード電極8と、カソード層7に接続したカソード電極9とを具備する。アノード層53は、ベース層1の第1主表面に接したバリア層2a、2cと、バリア層2a、2cの上部及びベース層1の第 1 主表面上に配置されたアノード領域3a、3b、3cとを具備する。アノード電極8は、アノード領域3a、3b、3cにオーミック接続されている。アノード領域3bは、第1主表面においてベース層1に接続している。図22に示した電力用半導体装置と異なる点は、溝内部に絶縁物からなる絶縁体領域13a、13bが配置されている点である。
【0103】
アノード領域3a、3cとベース層1との間にバリア層2a、2cを形成したことにより、アノード領域3a、3cからベース層1へ注入される正孔の量が制限される。したがって、通電状態においてベース層1中に蓄積されるキャリア量が低減する。その結果、電力用半導体装置の逆回復損失が低減する。
【0104】
また、溝内部に絶縁体領域13a、13bが配置されているため、逆回復状態において溝底部に電界が集中する。したがって、溝で挟まれたバリア層2a、2cとアノード領域3a、3cの間の電界強度、アノード領域3bとベース層1の間の電界強度が緩和される。したがって、逆回復状態においてベース層1の絶縁体領域13a、13bに接した部分から空乏層が広がり、電力用半導体装置は十分な逆回復時の耐圧を確保することができる。アバランシェ降伏が起こりにくくなり、逆回復時の耐圧の低下を避けることができる。
【0105】
(第4の実施の形態の第2の変形例)
図25に示すように、第4の実施の形態の第2の変形例に係る電力用半導体装置は、第1主表面と第1主表面に対向する第2主表面とを有するベース層1と、第1主表面においてベース層1に接続したアノード層53と、アノード層53を貫通し、ベース層1内に達する溝の内部に配置された制御領域4a、4bと、第2主表面においてベース層1に接続したカソード層7と、アノード層53に接続したアノード電極8と、カソード層7に接続したカソード電極9とを具備する。アノード層53は、ベース層1の第1主表面に接したバリア層2a、2b、2cと、バリア層2a、2b、2cの上部及びベース層1の第 1 主表面上に配置されたアノード領域3a、3b、3b’、3cとを具備する。制御領域4a、4bは、溝の側面及び底面に沿って配置された制御絶縁膜5a、5bと、制御絶縁膜5a、5bの内側に配置された導電体領域6a、6bとを具備する。導電体領域6a、6bは、アノード電極8に接続している。アノード電極8は、アノード領域3a、3b、3b’、3cにオーミック接続され、バリア層2bにショットキー接続されている。アノード領域3b、3b’は、第1主表面においてベース層1に接続している。図22に示した電力用半導体装置と異なる点は、バリア層2bに隣接してアノード領域3b、3b’が配置されている点である。
【0106】
通電状態及び逆回復状態における図25に示した電力用半導体装置の動作を説明する。アノード電極8に、カソード電極9に対して正の電圧を印加する。「正の電圧」は、バリア層2a、2cとアノード領域3a、3cの間のpn接合に生じる拡散電位、アノード領域3b、3b’とベース層1の間のpn接合に生じる拡散電位、及びアノード電極8とバリア層2bの間のショットキー接合に生じる内蔵電位より大きい。すると、アノード領域3a、3cからバリア層2a、2cへ正孔が注入され、アノード領域3b、3b’からベース層1へ正孔が注入される。正孔の注入量に応じてカソード層7からベース層1へ電子が注入される。キャリアはベース層1に蓄積され、ベース層1の抵抗値が低くなる。また、バリア層2bのショットキー接合界面からアノード電極8へ電子が排出される。半導体装置は通電状態となり、アノード電極8からカソード電極9へ電流が流れる。
【0107】
通電状態におけるアノード電極8とカソード電極9の間に印加されている電圧の極性を反転させる逆回復時の動作を説明する。通電状態における印加電圧を反転させると、ベース層1中に蓄積されたキャリアが排出され、バリア層2a、2cとアノード領域3a、3cの間のpn接合から空乏層が広がり始める。アノード領域3b、3b’とベース層1の間のpn接合界面から空乏層が広がり始める。また、バリア層2bのショットキー接合界面から空乏層が広がり始める。その結果、アノード電極8とカソード電極9の間に電流は流れず、電力用半導体装置は逆回復状態となる。
【0108】
以上説明したように、バリア層2a、2bの面積及びアノード領域3b、3b’の面積を制御することで、ベース層1へ注入される正孔の量を調整することができる。
【0109】
(第5の実施の形態)
図26に示すように、第5の実施の形態に係る電力用半導体装置は、第1主表面と第1主表面に対向する第2主表面とを有するベース層1と、第1主表面においてベース層1に接続したアノード層54と、アノード層54を貫通し、ベース層1内に達する溝の内部に配置された制御領域17a、17b、17cと、第2主表面においてベース層1に接続したカソード層7と、ベース層1の内部に配置され、制御領域17a、17b、17cに接続したセンス領域20a、20b、20cと、アノード層54及び制御領域17a、17b、17cに接続したアノード電極8と、カソード層7に接続したカソード電極9とを具備する。制御領域17a、17b、17cは、溝の側面に沿って配置された制御絶縁膜18a、18b、18cと、制御絶縁膜18a、18b、18cの内側に配置された抵抗体領域19a、19b、19cとを具備する。抵抗体領域19a、19b、19cは、センス領域20a、20b、20c及びアノード電極8に接続されている。第5の実施の形態において、アノード層54は、p型の半導体からなるアノード領域27a、27bを示す。センス領域20a、20b、20cは、p型の半導体からなる。
【0110】
図27に示すように、ベース層1の第1主表面上にアノード領域27a、27bが配置され、第2主表面上にカソード層7が配置されている。制御領域17a、17b、17cは、アノード領域27a、27bを貫き、ベース層1の途中の深さまで達する溝の内部に配置されている。制御絶縁膜18a、18b、18cは、溝の側面に沿って薄膜状に配置されている。抵抗体領域19a、19b、19cは、制御絶縁膜18a、18b、18cを介して溝の内部を埋め戻すように配置されている。アノード電極8は、アノード領域27a、27b及び導電体領域6a、6bに接続されている。カソード電極9は、カソード層7に接続されている。
【0111】
図28に示すように、アノード電極に接する平面には、アノード領域27a、27b、制御絶縁膜18a、18b、18c及び抵抗体領域19a、19b、19cが表出している。制御領域17a、17b、17cは、一定の間隔をもってストライプ状に配置されている。抵抗体領域19a、19b、19cの両側に制御絶縁膜18a、18b、18cが配置されている。制御領域17a、17b、17cの間にアノード領域27a、27bが配置されている。
【0112】
通電状態及び逆回復状態における図26乃至図28に示した電力用半導体装置の動作を説明する。アノード電極8に、カソード電極9に対して正の電圧を印加する。「正の電圧」は、ベース層1とアノード領域27a、27bの間のpn接合に生じる拡散電位より大きい。すると、アノード領域27a、27bからベース層1へ正孔が注入され、正孔の注入量に応じてカソード層7からベース層1へ電子が注入される。キャリアはベース層1に蓄積され、ベース層1の抵抗値が低くなる。電力用半導体装置は通電状態となり、アノード電極8からカソード電極9へ電流が流れる。
【0113】
通電状態におけるアノード電極8とカソード電極9の間に印加されている電圧の極性を反転させる逆回復時の動作を説明する。通電状態における印加電圧を反転させると、ベース層1中に蓄積されたキャリアが排出され、ベース層1とアノード領域27a、27bの間のpn接合から空乏層が広がり始める。その結果、アノード電極8とカソード電極9の間に電流は流れず、電力用半導体装置は逆回復状態となる。
【0114】
逆回復状態になると、ベース層1中に蓄積された正孔、即ち逆回復電流の一部は、センス領域20a、20b、20c及び抵抗体領域19a、19b、19cを通過してアノード電極8に流れる。抵抗体領域19a、19b、19cで電圧降下が生じ、抵抗体領域19a、19b、19cのセンス領域20a、20b、20c側の電位がアノード電極8側の電位に対して上昇する。すると、抵抗体領域19a、19b、19c、制御絶縁膜18a、18b、18c、及びベース層1からなるMOS構造によって、図29(a)に示すように、ベース層1の制御絶縁膜18a、18bに接する面から空乏層25a、25bが広がる。空乏層25a、25bは、制御絶縁膜18a、18bの側面に垂直方向に広がる。空乏層25a、25bによって、ベース層1からアノード領域27aへの電流路が狭められる。
【0115】
通電状態での電流量が比較的多い場合、ベース層1中に蓄積されたキャリア量も増加し、逆回復電流が大きくなる。よって、抵抗体領域19a、19bを流れる電流も増えるため、図29(a)に示すように、空乏層25a、25bが大きく広がる。したがって、逆回復時にベース層1中に蓄積されたキャリアが、急激にアノード領域27aへ注入されることがなく、逆回復時のソフトリカバリー特性が向上する。
【0116】
一方、通電状態での電流量が比較的少ない場合、抵抗体領域19a、19bを流れる電流も減少するため、図29(b)に示すように、空乏層56a、56bは大きく広がらない。したがって、逆回復時に電流振動を抑制することができる。
【0117】
以上説明したように、通電状態での電流量が比較的多い場合、逆回復時のソフトリカバリ特性が向上する。一方、通電状態での電流量が比較的少ない場合、逆回復時に電流振動を抑制することができる。
【0118】
図30及び図31を参照して、図26乃至図29に示した電力用半導体装置の製造方法を以下に示す。なお、図30及び図31に示す断面は、図28のJ−J’切断面に対応している。
【0119】
(イ)先ず、n−型の半導体基板の第1主表面よりリン(P)イオン或いは砒素(As)イオン等のn型不純物イオンを注入する。窒素雰囲気にてアニール処理を施すことにより、図30(a)に示すように、n−型のベース層1及びn+型のカソード層7が形成される。
【0120】
(ロ)フォトリソグラフィ法及び異方性エッチング法を用いて、n−型の半導体基板の第1主表面に対向する第2主表面からベース層1の一部を選択的に除去する。図30(b)に示すように、ベース層1を途中の深さまで達する溝21a、21b、21cが形成される。
【0121】
(ハ)CVD法または熱酸化法を用いて、図30(c)に示すように、溝21a、21b、21cの内面及び半導体基板の第2主表面の上に絶縁膜23を堆積する。絶縁膜23の膜厚は、溝21a、21b、21cが絶縁膜23によって埋め戻されない程度であればよい。
【0122】
(ニ)イオン注入法を用いて、ベース層1全体に、半導体基板の第2主表面よりボロン(B)イオン等のp型不純物イオンを注入する。窒素雰囲気にてアニール処理を施すことにより、図31(a)に示すように、アノード領域27a、27b及びセンス領域20a、20b、20cが形成される。
【0123】
(ホ)異方性エッチング法を用いて、アノード領域27a、27b及びセンス領域20a、20b、20cの上に形成された絶縁膜23を選択的に除去する。図31(b)に示すように、溝21a、21b、21cの側面に沿って制御絶縁膜18a、18b、18cが形成される。
【0124】
(ヘ)CVD法或いはスパッタ法を用いて、図31(c)に示すように、半導体基板の第2主表面の上に抵抗体膜24を堆積する。抵抗体膜24は、溝21a、21b、21cが絶縁膜18a、18b、18c及び抵抗体膜24によって埋めもどれされるまで堆積する。
【0125】
(ト)最後に、CMP法等の平坦化技術を用いて、アノード領域27a、27bの上に堆積されている抵抗体膜24の一部を除去する。平坦化処理は、抵抗体膜24の一部を除去し、アノード領域27a、27bが表出した時点で終了する。以上の製造工程を経て、図26及び図29に示した電力用半導体装置が完成する。
【0126】
以上説明したように、溝21a、21b、21cの底面及び半導体基板の第2主表面にp型不純物イオンを注入することで、アノード領域27a、27b及びセンス領域20a、20b、20cが形成される。この時、溝21a、21b、21cの側面に絶縁膜23が形成されているので、溝21a、21b、21cの側面からp型不純物イオンは注入されることはない。なお、アノード領域27a、27b及びセンス領域20a、20b、20cは、同じ工程で形成している。しかし、異なる工程において形成しても構わない。
【0127】
(第5の実施の形態の変形例)
図32に示すように、第5の実施の形態の変形例に係る電力用半導体装置は、第1主表面と第1主表面に対向する第2主表面とを有するベース層1と、第1主表面においてベース層1に接続したアノード層55と、アノード層55を貫通し、ベース層1内に達する溝の内部に配置された制御領域17a、17b、17cと、第2主表面においてベース層1に接続したカソード層7と、ベース層1の内部に配置され、制御領域17a、17b、17cに接続したセンス領域20a、20b、20cと、アノード層55及び制御領域17a、17b、17cに接続したアノード電極8と、カソード層7に接続したカソード電極9とを具備する。アノード層55は、ベース層1の第1主表面に接したバリア層28a、28bと、バリア層28a28bの上部に配置されたアノード領域29a、29bとを具備する。制御領域17a、17b、17cは、溝の側面に沿って配置された制御絶縁膜18a、18b、18cと、制御絶縁膜18a、18b、18cの内側に配置された抵抗体領域19a、19b、19cとを具備する。抵抗体領域19a、19b、19cは、センス領域20a、20b、20c及びアノード電極8に接続されている。図27に示した電力用半導体装置と異なる点は、ベース層1とアノード領域29a、29bの間にバリア層28a、28bが配置されている点である。
【0128】
第5の実施の形態の変形例によれば、通電状態におけるアノード領域29a、29bからベース層1への正孔の注入量を少なくして逆回復損失を低減することが出来る。逆回復状態において、制御領域17a、17b、17cの底面付近に電界が集中する。制御領域17a、17b、17cの底面付近はセンス領域20a、20b、20cで保護されている。したがって、バリア層28a、28bの不純物濃度を高くしても耐圧は劣化しない。
【0129】
なお、本発明の他の実施の形態として、第1乃至第5の実施の形態に示した電力用半導体装置の一部分を用いた小信号用のダイオードを実施することができる。
【0130】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、優れた逆回復特性を有する半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態に係る電力用半導体装置全体を示す断面図である。
【図2】図1に示した電力用半導体装置の一部分を拡大して示す、図3のA−A’切断面に沿った断面図である。
【図3】アノード電極を省略した、図1に示した電力用半導体装置のアノード電極に接する平面の一部分を示す図である。
【図4】図4(a)及び図4(b)は、図1に示した電力用半導体装置の製造方法における主要な製造工程を示す工程断面図である(その1)。
【図5】図5(a)及び図5(b)は、図1に示した電力用半導体装置の製造方法における主要な製造工程を示す工程断面図である(その2)。
【図6】第1の実施の形態の変形例に係る電力用半導体装置の一部分を示す断面図である。
【図7】第2の実施の形態に係る電力用半導体装置全体を示す断面図である。
【図8】図7に示した電力用半導体装置の一部分を拡大して示す、図9のB−B’切断面に沿った断面図である。
【図9】アノード電極を省略した、図7に示した電力用半導体装置のアノード電極に接する平面の一部分を示す図である。
【図10】図10(a)は、アノード電極を省略した、散点状に配置された円形の制御領域を有する電力用半導体装置の一部分を示す平面図である。G−G’切断面は、図8の断面図に対応する。図10(b)は、アノード電極を省略した、散点状に配置された円形のアノード領域を有する電力用半導体装置の一部分を示す平面図である。
【図11】図10(b)に示した電力用半導体装置のH−H’切断面に沿った断面図である。
【図12】第2の実施の形態の変形例に係る電力用半導体装置の一部分を示す断面図である。
【図13】第3の実施の形態に係る電力用半導体装置全体を示す断面図である。
【図14】図13に示した電力用半導体装置の一部分を拡大して示す、図15のC−C’切断面に沿った断面図である。
【図15】アノード電極を省略した、図13に示した電力用半導体装置のアノード電極に接する平面の一部分を示す図である。
【図16】アノード電極を省略した、第3の実施の形態に係る電力用半導体装置の一部分を示す平面図である。
【図17】図17(a)は、図16に示した電力用半導体装置のD−D’切断面に沿った断面図である。図17(b)は、図16に示した電力用半導体装置のE−E’切断面に沿った断面図である。
【図18】第3の実施の形態の第1の変形例に係る電力用半導体装置の一部分を示す断面図である。
【図19】第3の実施の形態の第2の変形例に係る電力用半導体装置の一部分を示す断面図である。
【図20】第3の実施の形態の第3の変形例に係る電力用半導体装置の一部分を示す断面図である。
【図21】第4の実施の形態に係る電力用半導体装置全体を示す断面図である。
【図22】図21に示した電力用半導体装置の一部分を拡大して示す、図23のF−F’切断面に沿った断面図である。
【図23】アノード電極を省略した、図21に示した電力用半導体装置のアノード電極に接する平面の一部分を示す図である。
【図24】第4の実施の形態の第1の変形例に係る電力用半導体装置の一部分を示す断面図である。
【図25】第4の実施の形態の第2の変形例に係る電力用半導体装置の一部分を示す断面図である。
【図26】第5の実施の形態に係る電力用半導体装置全体を示す断面図である。
【図27】図26に示した電力用半導体装置の一部分を拡大して示す、図28のJ−J’切断面に沿った断面図である。
【図28】アノード電極を省略した、図26に示した電力用半導体装置のアノード電極に接する平面の一部分を示す図である。
【図29】図29は図26に示した電力用半導体装置の動作を説明する為の断面図であり、図29(a)は通電状態の電流量が比較的多い場合を示し、図29(b)は通電状態の電流量が比較的少ない場合を示す。
【図30】図30(a)乃至図30(c)は、図26に示した電力用半導体装置の製造方法における主要な製造工程を示す工程断面図である(その1)。
【図31】図31(a)乃至図31(c)は、図26に示した電力用半導体装置の製造方法における主要な製造工程を示す工程断面図である(その2)。
【図32】第5の実施の形態の変形例に係る電力用半導体装置の一部分を示す断面図である。
【図33】従来のpinダイオードを示す断面図である。
【符号の説明】
1 ベース層
2a、2b、2c、28a、28b、32、32a、32b、32c、50a、50b バリア層
3a、3b、3c、3b’、27a、27b、29a、29b、33a、33b、33c、33d、34a、34b、35、39a、39b、39c アノード領域
4a、4b、17a、17b、17c、36a、36b、36c 制御領域
5a、5b、18a、18b、18c、37a、37b、37c、40 制御絶縁膜
6a、6b、38a、38b、38c、41 導電体領域
7 カソード層
8 アノード電極
9 カソード電極
10a、10b 溝
13a、13b 絶縁体領域
14、51〜55 アノード層
19a、19b、19c 抵抗体領域
20a、20b、20c センス領域
25a、25b、56a、56b 空乏層
45a、45b リング領域
Claims (8)
- 第1主表面と該第1主表面に対向する第2主表面とを有する第1導電型の半導体からなるベース層と、
前記第1主表面において前記ベース層に接続された第1主電極層と、
前記第1主電極層を貫通し、前記ベース層内に達する溝の内部に配置された制御領域と、
前記第1主電極層及び前記制御領域に接触した第1主電極と、
前記第2主表面において前記ベース層に接続され、且つ第1導電型の半導体からなる第2主電極層と、
前記第2主電極層に接続された第2主電極とを具備する半導体装置であって、
前記第1主電極層は、
前記第1主表面に接した、前記ベース層よりも高不純物濃度の第1導電型の半導体からなるバリア層と、
前記バリア層の上部に選択的に配置され、前記第1主電極にオーミック接続された第2導電型の半導体からなる第1主電極領域と、
を具備することを特徴とする半導体装置。 - 前記バリア層は、前記制御領域に接し、且つ前記第1主電極にショットキー接続されていることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
- 第1主表面と該第1主表面に対向する第2主表面とを有する第1導電型の半導体からなるベース層と、
前記第1主表面において前記ベース層に接続された第1主電極層と、
前記第1主電極層を貫通し、前記ベース層内に達する溝の内部に配置された制御領域と、
前記第1主電極層及び前記制御領域に接触した第1主電極と、
前記第2主表面において前記ベース層に接続され、且つ第1導電型の半導体からなる第2主電極層と、
前記第2主電極層に接続された第2主電極とを具備する半導体装置であって、
前記第1主電極層は、
前記第1主表面に接した、前記ベース層よりも高不純物濃度の第1導電型の半導体からなるバリア層と、
前記バリア層の上部に配置され、前記第1主電極にオーミック接続された第2導電型の半導体からなる第1主電極領域と、
を具備することを特徴とする半導体装置。 - 第1主表面と該第1主表面に対向する第2主表面とを有する第1導電型の半導体からなるベース層と、
前記第1主表面の一部において前記ベース層に接続された第1主電極層と、
前記第1主電極層を貫通し、前記ベース層内に達する溝の内部に配置された制御領域と、
前記第1主表面の他の一部に露出した前記ベース層、前記第1主電極層及び前記制御領域に接触した第1主電極と、
前記第2主表面において前記ベース層に接続され、且つ第1導電型の半導体からなる第2主電極層と、
前記第2主電極層に接続された第2主電極とを具備する半導体装置であって、
前記第1主電極層は、
前記第1主表面の一部に接した、前記ベース層よりも高不純物濃度の第1導電型の半導体からなるバリア層と、
前記バリア層の上部に配置され、前記第1主電極にオーミック接続された第2導電型の半導体からなる第1主電極領域と、
を具備することを特徴とする半導体装置。 - 前記制御領域間であって、前記バリア層および前記第1主電極領域が形成されていない領域の前記制御領域に沿って配置され、前記第1主表面の他の一部において露出し、前記第1主電極に接続された前記ベース層よりも高不純物濃度の第1導電型の半導体からなるバリア層を更に具備することを特徴とする請求項4記載の半導体装置。
- 第1主表面と該第1主表面に対向する第2主表面とを有する第1導電型の半導体からなるベース層と、
前記第1主表面において前記ベース層に接続された第1主電極層と、
前記第1主電極層を貫通し、前記ベース層内に達する溝の内部に配置された制御領域と、
前記第1主電極層及び前記制御領域に接触した第1主電極と、
前記第2主表面において前記ベース層に接続され、第1導電型の半導体からなる第2主電極層と、
前記第2主電極層に接続された第2主電極とを具備する半導体装置であって、
前記第1主電極層は、
前記第1主表面に接して選択的に形成され、前記ベース層よりも高不純物濃度の第1導電型の半導体からなるバリア層と、
前記バリア層の上部および前記第1主表面上に形成され、前記第1主電極にオーミック接続された第2導電型の半導体からなる第1主電極領域と、
を具備することを特徴とする半導体装置。 - 前記制御領域は、前記溝の側面及び底面に沿って配置された制御絶縁膜と、前記絶縁膜の内側に配置された導電体領域とを具備することを特徴とする請求項1乃至6のいづれかに記載の半導体装置。
- 前記制御領域は、絶縁物からなることを特徴とする請求項1乃至6のいづれかに記載の半導体装置。
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