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JP4064643B2 - 薄板構造継手の複合溶接方法 - Google Patents
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JP4064643B2 - 薄板構造継手の複合溶接方法 - Google Patents

薄板構造継手の複合溶接方法 Download PDF

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Description

【0001】
本発明は継手の溶接方法に関する技術分野に属し、より詳細には被溶接部材が薄い板材で構成された薄板構造物の突合せ継手の溶接を行うに際し、アーク溶接とレーザ溶接とを複合させて溶接を行う薄板構造継手の複合溶接方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図3は被溶接部材(被溶接母材)として鋼鈑を用いた従来の突合せ継手を示す正面図である。図3に示すように、水平の鋼板1と2が突合わせた状態で組み立てられており、鋼板1の先端面1aと鋼板2の先端面2aが当接している。
【0004】
3に示すように組み立てられた薄板構造の突合せ継手においては、アーク溶接により溶接を実施するのが通常である。
【0005】
また、従来の溶接方法として、レーザ溶接により溶接を行う方法も考えられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この突合せ継手を構成する被溶接部材の板厚が小さい例えば4mm未満の薄鋼板に対して前述の従来方法、即ち図3に示すような部材に対してアーク溶接を行う場合、およびレーザ溶接を行う場合には、それぞれ解決すべき課題が存在する。
【0007】
即ち、図3に示すような部材同士を突合せて溶接する場合に、被溶接部材として特に板厚4.0mm未満の薄板例えば3.5mmの薄鋼板に対してアーク溶接を実施すると、通常のアーク溶接の条件範囲では単位長さ当たりの入熱が過多となって、抜け落ちを生じて健全な溶接を行うことが出来ない。
【0008】
これを防止するために有効な手段として、溶接電流を減少させて入熱を低下させる方法や、溶接速度を増加させて入熱を低下させる方法が考えられる。
【0009】
しかしながら、上記手法によって抜け落ちを防止できた場合においても、前記薄鋼鈑を対象とする場合は依然として入熱過多であり、過大な余盛りが形成されることによる疲労強度の低下や、溶接金属部が大きすぎるために溶接後の収縮量が大きくなり、溶接変形が大きすぎる等の不具合を生じてしまう。
【0010】
これらを防止するために、更なる溶接電流値の低減や溶接速度の増加を行うと、計算上の入熱は下げることが可能であるが、現実にはアークが安定しなくなって健全な溶接を行うことが出来なくなる。
【0011】
また、前記課題解決のため、レーザ溶接により溶接する方法も従来方法として考えられ、このレーザ溶接によれば余盛り過多や溶接変形を極めて小さく抑えることが可能であるが、アーク溶接とは異なる以下に記述する問題点が存在する。
【0012】
即ち、実際の部材の組み立てを考えた場合には、鋼板を図3に示すよう状態に精密にセッティングすることは非常に難しく、例えば図4、図5に示すような被溶接部材間にギャップ(G)が生じることが多い。
【0013】
このように部材間にギャップが生じた突合せ継手に対してレーザ溶接を行おうとすると、ギャップ間からレーザビームが突き抜けてしまう。また、レーザビームの突き抜けを生じずに溶接を行うことが出来た場合においても、ギャップにより形成される空隙の体積分の溶融金属が不足して溶接部を形成することが出来なくなるために、健全な溶接を行うことが出来ない。また、このギャップに対する感受性は部材の板厚に依存する(即ち、板厚が薄くなるほど、健全な溶接を行うことができるギャップ量は小さくなる)ために、薄鋼板に対してレーザ溶接を行う場合には、ギャップ量は0または極めて0に近い値に部材を組み立てる必要が生じる。
【0014】
しかしながら、前述のように溶接線全長に渡ってギャップが存在しないような、極めて高精度の組み立ては非常に難しく、特に薄鋼板に対してレーザ溶接を行う場合には、ギャップに対して敏感であるために、ギャップが存在した場合でも健全な溶接を行うことができるレーザ溶接方法が望まれている。
【0015】
また、鋼板を精密に組み立てることは難しいために、例えギャップを小さく抑えることが出来たとしても、接合面の位置が狙いの場所からずれる場合も考えられる。そのような場合には、溶融幅の極めて細いレーザ溶接では、接合面を溶融できずに溶接不良を生じることもあり得る。
【0016】
また、鋼板が高強度になるほど加工性が劣化するために組み立て精度を確保するのが難しくなり(ギャップ増大、ずれ量増大)、更に板厚が薄くなるほどギャップに対する感受性が増加するために、例えば近年の自動車用鋼板に見られるような薄板化、高強度化が進んだ場合にはより一層、レーザ溶接を健全に行うことが難しくなる。
【0017】
ギャップに関する問題点を解決するための手段として、溶接ワイヤ(フィラーワイヤ)を供給しながらレーザ溶接を行う方法も従来方法として考えられ、この方法による場合には通常のレーザ溶接(フィラーワイヤ無し)の場合と比較して、溶融金属の補充が可能になるために抜け落ちを生じ難くなり、許容できるギャップ量が多少増大する。しかしながら、フィラーワイヤを用いる方法ではワイヤの送給量に限りがあるために、ギャップの許容量拡大効果は希薄である。
【0018】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであって、レーザ溶接に消耗式電極を用いたアーク溶接を複合させることにより、薄板構造の突合せ継手を対象として溶接を行った場合にも抜け落ちを起こすことなく健全な溶接部が得られ、且つ部材間にギャップが存在した場合にも健全な溶接を行うことができ、更に組み立て誤差により接合面が所望の位置からずれた場合にも、健全な溶接を行うことが出来る適用範囲の広い溶接方法を提供することを目的としたものである。
【0019】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは上記目的を達成するために鋭意研究・実験を重ねた結果、本願明細書冒頭の特許請求の範囲の請求項1〜に記載の溶接方法を有効な解決手段としてここに提案するものである。即ち、請求項1にかかる本発明の複合溶接方法とは、被溶接部材が薄板で構成された突合せ継手を対象として、消耗式電極を用いたアーク溶接とレーザ溶接とを複合させてこれらの薄板構造継手を溶接する方法であって、この溶接の条件を、レーザ出力:3.5〜40kW、アーク電流:30〜500A、溶接速度:1〜20m/min、継手部材表面上でのアーク/レーザ間距離:1〜15mmとして実施することを特徴とするものである。
【0020】
また、請求項2に係る本発明の複合溶接方法とは、前記薄板の板厚が4.0mm未満である請求項1に記載の複合溶接方法である。なお、板厚が3.5mm以下のもの、好ましくは3.5mm以下0.5mm以上の薄板を用いればさらに有利である。
【0021】
また、請求項3に係る本発明の複合溶接方法とは、前記薄板が薄鋼鈑である請求項1又は請求項2に記載の複合溶接方法である。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明についてその技術的意義、作用を中心に詳述する。
【0025】
本発明方法においては、薄板部材に対してレーザ溶接を行う場合にアーク溶接を複合させて溶接を行うことを基本的な技術思想とし、それによって、前述のアーク溶接またはレーザ溶接単独で溶接を行う従来手法の場合の短所を解決し、双方の長所を兼備することが出来るものである。
【0026】
即ち、薄板で構成された部材からなる突合せ継手に対してアーク単独で溶接を行った場合には、アークが不安定になるために入熱を低減することができず、その結果抜け落ちを発生したり、余盛り過多となって疲労強度が低下したり、溶接変形が大きくなる等の不具合が生じる。これらの不具合は、アーク電流を減少させるか、もしくは溶接速度を増加させることによって低減出来るが、実際にはそのような条件ではアークが安定しなくなり、健全な溶接を行うことが出来なくなる。
【0027】
しかしながら、消耗式電極を用いたアーク溶接にレーザ溶接を複合させて溶接を行うと、低電流または高溶接速度の場合でもアークを安定させることができ、前述のような問題を解決できるのである。
【0028】
複合溶接を行った場合にアーク溶接の問題点が解決されるメカニズムについては不明であるが、アークとレーザビームもしくはプラズマが相互に影響しあうことによってアークの安定性が高まり、上述のような効果を生み出していると考えている。
【0029】
また、レーザ単独で溶接を行った場合の問題点としては、部材組み立ての難しさから生じる組み立て位置のずれや部材間にギャップがある場合には、とたんに健全な溶接を行うことが出来なくなる点にある。これらの問題点は、板厚が4mm未満の薄板部材、とりわけ3.5mm以下の薄板部材を溶接する場合に特に顕著な問題となる。
【0030】
しかしながら、レーザ溶接にアーク溶接を複合させて溶接を行うと、前述のような問題を解決することが出来るようになる。
【0031】
即ち、レーザ溶接を行う際に、フィラーワイヤを供給しながら溶接を行うと若干のギャップ許容量拡大効果があることは前述したが、フィラーワイヤを供給する代わりに消耗式電極を用いたアーク溶接によりワイヤを供給してやれば、その効果は飛躍的に増大し、ギャップの許容範囲が広い溶接が実現されるのである。なぜなら、フィラーワイヤによる方法で若干なりともギャップ感受性が低減できるのは、ギャップによる空隙を充填する溶融金属をフィラーワイヤによって補充できることによるものである。しかしながら、フィラーワイヤは自発的に溶融することができず、非常に狭いレーザビームに挿入することによってこれを熱源として溶融するために、過大な供給量になると溶融しなくなる。そのため、フィラーワイヤによる方法では、溶融金属の補充量に限界があり、従ってギャップに対する許容範囲拡大効果は小さいものとなる。
【0032】
しかしながら、フィラーワイヤの代わりに消耗式電極を用いたアーク溶接によって溶融金属の補充を行う場合には、ワイヤは自らのアークで自発的に溶融することができるために多量の溶融金属を補充することが可能となり、したがってギャップに対する許容範囲拡大効果も、フィラーワイヤの場合と比較して飛躍的に増大するものである。この効果は、レーザ溶接に非消耗式電極を用いるアーク溶接(TIG溶接)を複合させた場合にも、ワイヤの溶融熱源が増えるという意味では効果的であるが、飛躍的な成果を得るためには、消耗式電極を用いるアーク溶接を複合させる方が有効である。
【0033】
また、薄板部材を組み立てて溶接を行う場合の問題点としては、ギャップだけでなく、組立て誤差による位置ずれが考えられる。例えば、本来は図のように突合せ継手を形成するために部材を組み立てて、矢印で示した位置を溶接する予定であっても、実際には図に示すようにセッティングしようとした位置(図中の点線)からずれて組み立てられてしまうことがある(図の実線)。しかしながら、そのような場合おいても部材セッティングのずれを認識できずに、当初予定していた矢印の位置を溶接してしまい、場合によっては突合せ面を全く溶融しない、もしくは不十分にしか溶融せずに、例えば図2に示すような溶接不良を発生することが考えられる。レーザ溶接により形成される溶接金属部の幅、即ち溶融される幅が非常に細いために、部材セッティングの狙いがずれてしまうと、とたんに不具合を生じてしまうのである。
【0034】
この問題を解決するために、セッティングのずれに対応して、レーザ溶接の溶接位置をその都度変更し、部材のセッティングされた位置を溶接する方法も考えられるが、実際にはそのような方法は溶接に関わる時間の大幅増大に繋がり、製造コストアップを生み出すので実用的ではない。そのため、部材セッティングが多少ずれた場合においても、同一の溶接位置で健全な溶接を行えることが求められる。
【0035】
以上のような、部材のセッティングずれに関わる問題に対しても、レーザ溶接に消耗式電極を用いたアーク溶接を複合させた本発明による溶接方法で解決することが出来る。即ち、レーザ溶接がセッティングずれに対して対応できないのは、前述したように溶融部の幅が極めて細いことによる。しかしながら、複合溶接によれば、アークの広がりにより溶融部の幅が大きいアーク溶接をレーザ溶接に複合させるために、レーザ単独で溶接を行った場合と比較して、幅の広い溶融部(溶接部)を得ることが出来る。
【0036】
そのため、図に示すようなセッティング位置にある部材を溶接した場合に
おいても、複合溶接によれば接合面を溶融することができ、図1に示すような健全な溶接部を得ることが出来る。
【0037】
ここで、レーザ溶接において溶融幅が細いことは、セッティングずれに対しては短所であるが、溶接歪みの観点で考えると長所となっている。即ち、基本的には溶接歪みは溶接幅が細い程小さくなる傾向にある。従って、アーク溶接をレーザ溶接に複合させて溶融部の幅を太くする手法は、セッティングずれの問題は解決できるものの、アーク溶接なみの溶接変形を生じてしまうように考えられる。
【0038】
しかしながら、実際には、複合溶接においては溶融部の幅はレーザ溶接単独の場合と比較して太くできるが、アーク溶接単独の場合のように太くなり過ぎることはなく、理想的な値となるために、アーク溶接単独の場合のような溶接変形を生じることなく、セッティングずれの問題を解決することが出来るのである。その理由としては不明瞭な点もあるが、発明者らは以下のように説明されると考えている。
【0039】
即ち、レーザ溶接単独の場合と比較して溶融幅を広くすることが出来る理由としては、複合溶接ではアーク溶接のアークの広がりがレーザ溶接と比較して広いために可能となる訳である。
【0040】
また、アーク溶接単独の場合と比較して溶融幅を狭くすることができ、溶接変形を低減できる理由は以下の通りである。
【0041】
即ち、レーザ溶接に消耗式電極を用いたアーク溶接を複合させる本発明による溶接方法によれば、前述のように、アーク溶接単独の場合にはアークが不安定になるレーザ溶接並みの高速の溶接速度で溶接を行うことが出来ること、および通常のアーク溶接単独ではアークが不安定になる低電流域での溶接が出来ることにより、単位溶接長さあたりのアーク溶接による入熱量を低くすることが可能となる。
【0042】
また、複合溶接における溶け込み深さは、レーザ溶接による溶け込みにより稼ぐことが出来るために、同一のアーク溶接条件において、アーク単独溶接を実施した場合と、アーク溶接とレーザ溶接を複合させた場合では、複合溶接の方が溶け込み深さを深くすることが出来る。
【0043】
従って、同一溶け込み深さを得るためのアーク溶接条件は、複合溶接の方が低入熱に抑えることができるために、溶融幅が狭くなるのである。
【0044】
また更に、アーク溶接単独の場合にはアークが広がってしまい、過大な溶融幅になってしまうが、複合溶接の場合は、アークがレーザビームに引張られて集中するような現象が認められた。このような、レーザビームによるアークの集中効果も併せて、複合溶接では溶融幅を適正量に抑えることが出来るようである。
【0045】
本発明に係わる突合せ継手の溶接方法での溶接条件についての数値限定理由を以下に説明する。
【0046】
レーザ出力(3.5〜40kw)について
レーザ出力が3.5kw未満であると、複合溶接の効果が希薄になるために好ましくない。一方、40kwを超えると、薄板部材を被溶接部材とする場合、特に板厚が4mm未満である部材に対して溶接を行う場合には抜け落ちを起こしてしまい、健全な溶接を行うことが出来なくなるために好ましくない。従って、本発明ではレーザ出力を3.5〜40kwの範囲に特定する。
【0047】
アーク電流(30〜500A)について
アーク電流が30A未満であると、複合溶接においてもアークが不安定になるために好ましくない。500Aを超えると、薄板部材を被溶接部材とする場合、特に板厚が4mm未満である部材に対して溶接を行う場合には抜け落ちを起こしてしまい、健全な溶接を行うことが出来なくなるために好ましくない。また、過大な余盛りを形成してしまうことに起因する疲労強度の低下や、入熱過多による溶接変形増大を起こすことからも好ましくない。従って、本発明ではアーク電流を30〜500Aの範囲に特定する。
溶接速度(1〜20m/min)について
溶接速度を1m/min未満にすると、同様に薄板部材を被溶接部材とする場合、特に板厚が4mm未満である部材に対して溶接を行う場合には、抜け落ちを起こしたり、溶接変形を生じる可能性があるために、1m/min以上に設定するのが好ましい。また、20m/minを超えると、本発明による複合溶接においてもアークが安定しなくなり、健全な溶接が行えなくなるために好ましくない。従って、本発明では溶接速度を1〜20m/minの範囲に特定する。
【0048】
レーザ/アーク間距離(1〜15mm)について
レーザ/アーク間距離とは図においてレーザートーチ(左側)とアークトーチ(右側)をセッティングしたときの被溶接部材表面上での距離Dを示すものであるが、このアーク/レーザ間距離が1mm未満であると、アークとレーザが必要以上に干渉してしまい、健全な溶接が行えなくなるので好ましくない。また、15mmを超えた場合には、アークとレーザの相互作用が希薄になるか又は無くなり、本発明による十分な効果が得られなくなるのでやはり好ましくない。従って、本発明ではレーザ/アーク間距離を1〜15mmの範囲に特定する。
【0049】
【実施例】
以下、本発明に係わる溶接方法である、消耗式電極を用いたアーク溶接にレーザ溶接を複合して溶接を行った場合を本発明の実施手法(以下、単に実施手法という)とし、消耗式電極を用いたアーク溶接単独およびレーザ溶接単独で溶接を行った場合を比較手法として、実施手法と比較手法を比較して具体的に説明する。
【0050】
まず始めに、実施手法および比較手法の溶接方法における、ギャップが存し
た場合の健全な溶接を行うことのできる許容量を調査した。図に本試験に用いた突合せ継手を示す。
【0051】
実施手法および比較手法ともに、ここに示すような、板厚3.5mmの鋼鈑5と6により突合せ継手を組み立て、組み立ての際に鋼鈑5と6のそれぞれの端面5a、6a間の距離、即ちギャップ(G)の値を種々変化させたものを用いて溶接を行った。
【0052】
溶接方法は、アーク溶接はAr+20%CO2をシールドガスとして用いたMAG溶接とし、径が1.2mmφのワイヤを使用した。また、レーザ溶接にはCO2レーザを用いた。複合溶接はそれらを組み合わせたものとした。
【0053】
表1に、実施手法および比較手法の詳細な溶接条件を示す。これらの溶接条件は、図に示す板厚3.5mmの突合せ継手においてギャップ(G)を0にセッティングした場合において、完全溶け込み溶接が実現出来る条件を選定し、その同一条件をギャップ量が変化した場合の継手にも適用した。ギャップ量によって溶接条件を変更せずに、全て同一条件で試験を行う理由は、実際に部材を自動溶接で組み立てる場合も、ギャップ量を計測してフィードバックし、そのギャップ量に対応した溶接条件の変更をするというようなことはせず、理想通りにセッティングできた場合であるギャップ=0mmの状態に対する適正溶接条件により溶接を行うため、それを模擬したものである。
【0054】
【表1】
Figure 0004064643
【0055】
表2に試験結果を示す。ここで、表2中の判定の○および×は、抜け落ちに関しては、抜け落ちを起こさずに溶接を行うことが出来たものを○、抜け落ちを起こして健全な溶接を行うことが出来なかったものを×、変形に関しては、目視レベルで変形を確認出来ない、もしくは極めて軽微であるものを○、明らかに溶接変形を生じているものを×とし、総合評価としては抜け落ちおよび変形の両項目で○となったものを○(合格)、双方または片方が×となったものを×(不合格)とした。
【0056】
【表2】
Figure 0004064643
【0057】
表2に示すように、実施手法の複合溶接においては、No.1〜5のギャップ量が0mm〜1.5mmまでのすべての条件において、抜け落ちが生じることなく健全な溶接を行うことができ、且つ溶接後の変形量も軽微であるために、総合判定で○(合格)と判定された。
【0058】
一方、比較手法のレーザ溶接単独の場合は、No.1〜3のギャップ量が0.5mm以下の場合は抜け落ち、変形ともに○であり、総合判定でも○となったが、No.4および5のギャップが1.0mm以上のものについては抜け落ちが生じたために、健全な溶接を行うことが出来なかった。従って総合評価でもNo.4および5は×(不合格)と判定された。また、比較手法のアーク溶接単独の場合は、一般的にはレーザ溶接と比較してギャップに対する許容範囲は広いとされているが、本試験結果ではレーザ溶接単独の場合と同レベルのギャップが1.0mm以上の範囲について抜け落ちが生じた。これは本試験の条件選定が、ギャップが0mmの状態に対して完全溶込み溶接を達成できるものとなっているため、ギャップ=0mmの状態でも抜け落ちを発生しないぎりぎりの条件であり、従ってギャップが存在する場合には抜け落ちを生じ易くなったためと考えた。また、溶接変形に関しては、すべての条件において変形量が大きく×と判定され、従って総合評価でも全ての条件が×と判定された。これらの結果より、以下のような知見が得られた。即ち、比較手法のレーザ溶接単独の場合は溶接変形に関しては優れているものの、ギャップが存在する場合の許容量が小さく抜け落ちが生じるために、最大0.5mmまでのギャップに対してしか合格にならなかった。一方で、他の比較手法のアーク溶接単独の場合も抜け落ちに関してはレーザ溶接単独の場合と同程度であり、且つギャップ量に係わらず溶接変形量が大きいために、全ての条件において不合格となった。それに対して本発明による複合溶接の場合は、ギャップの許容量および溶接変形のいずれに対しても優れた結果となり、実施した最大ギャップ量の1.5mmの場合でも、抜け落ちおよび変形の双方に関して健全な溶接を行うことができた。従って、比較手法のレーザ溶接単独またはアーク溶接単独の場合と比較して、抜け落ちを発生せず且つ変形量も軽微である健全溶接を達成できる溶接範囲が、本発明の実施手法に係る複合溶接の方が優れていると判断できる。
次に、他の実施例として、消耗式電極を用いたアーク溶接にレーザ溶接を複合して溶接を行った実施手法と、消耗式電極を用いたアーク溶接単独およびレーザ溶接単独で溶接を行った場合の比較手法において、組み立て誤差に対する評価試験および適正溶接条件の選定を行った。図10に、試験に用いた突合せ継手を示す。実施手法および比較手法ともに、ここに示すような、板厚3.5mmの鋼鈑7と8により組み立てた突合せ継手において、鋼鈑7と8のそれぞれの端面7aおよび8a間の距離、即ちギャップの値を0(図10では判り易くするために空隙を設けて描画しているが、実際のギャップは0)にセッティングして、端面7aと8aの当接面から一定量(図中のずれ量)離れた位置を溶接し、セッティングがずれた場合の評価と溶接条件の評価を行った。評価手法は、溶接時の抜け落ち発生の有無、溶接後の変形量の大きさは前述のギャップに関する試験と同様であるが、本試験ではそれらに加えて、ずれが生じた場合でも当接面を完全に溶融して健全な溶接継手を形成することが出来たかを計る指標として、溶接後に引張試験を行って母材破断したものを○(合格)、溶接部で破断したものを×(不合格)として評価した。最終的な評価方法としては、上述の抜け落ち、変形、ずれ許容量に対する判定が全て合格であったものを、合格として総合評価にした。溶接方法は、アーク溶接はCO2をシールト゛カ゛スとして用いたCO2溶接とし、径が1.2mmφのワイヤを使用した。また、レーザ溶接にはYAGレーザを用いた。複合溶接はそれらを組み合わせたものとした。表3に、実施例および比較例の詳細な溶接条件および試験結果を示す。
【0059】
【表3】
Figure 0004064643
【0060】
ここに示すNo.1〜9は本発明の実施手法によるもの即ち実施例であり、本発明が提案する通り、その複合溶接条件が適正範囲であったために、全ての条件において総合評価で合格となった。ずれ量は本試験で実施した最大値の2mmにおいても合格であった。
また、No.10〜16は複合溶接によるものであるが、溶接条件が本発明が規定する適正範囲から逸脱していたために、総合評価で不合格となってしまった。
即ち、No.10はレーザ出力が請求の範囲よりも小さいために、複合溶接による効果を得ることが出来ずにアークが不安定になってしまい、健全な溶接を行うことが出来なかった。その結果、部材当接面を完全に溶融することができずに、引張試験で不合格となった。
また、No.11はアーク電流が請求の範囲よりも小さいために、アークが不安定になってしまい、健全な溶接を行うことが出来ず、その結果、部材当接面を完全に溶融することができずに、引張試験で不合格となった。
No.12はアーク電流が請求の範囲よりも大きいために、抜け落ちを生じてしまい、健全な溶接を行うことが出来なかった。
No.13は溶接速度が請求の範囲よりも小さいために、複合溶接で高速溶接が実現できることによる能率面での利点を得られないだけでなく、溶接変形が生じた。また、引張試験の結果も不合格となった。
No.14は溶接速度が請求の範囲よりも大きいために、アークが不安定になって健全な溶接を行うことが出来ず、引張試験で不合格となった。
No.15はレーザ/アーク間距離が請求の範囲よりも小さいために、レーザとアークが必要以上に干渉しあい、アークおよびレーザビームが不安定となり、引張試験で不合格となった。
No.16はレーザ/アーク間距離が請求の範囲よりも大きいために、複合溶接による効果を十分に得ることが出来ずに、アークが不安定になって、引張試験で不合格となった。
また、No.17〜21は、レーザ溶接単独による比較例であり、ずれ量を変化させて許容範囲を調査した。その結果、複合溶接では今回実施したずれ量の全ての範囲(最大値2mm)まで総合評価で合格であったが、レーザ溶接単独では0.5mm以下では合格となるものの、それ以上の範囲では当接面を完全に溶融することが出来ずに、結果として不合格になった。
また、No.22〜26は、アーク溶接単独による比較例であり、レーザ溶接単独の場合と同様の試験を行った。
その結果、実施した全ての条件範囲において溶接変形が生じてしまい、従って総合評価でも全て不合格となった。因みに、ずれ量に対する許容範囲のみを評価すると、レーザ溶接と比較して優れた結果となり、1.5mmまで合格であったが、複合溶接で合格となった2mmについては不合格であった。
なお、上述の実施例では薄板部材として鋼鈑を用いたが、本発明の溶接方法は鋼鈑に限らず溶接が可能な材質であれば他の金属板(あるいはその合金板)等を対象とした場合にも同様にして実施できることは言うまでもない。
【0061】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明による手法によれば、レーザ溶接に消耗式電極を用いたアーク溶接を複合させ、しかもかかる複合溶接における溶接条件を適切に組合せて選定・実施することにより、被溶接部材が薄板で構成された継手部材に対して溶接を行った場合にも抜け落ちを起こすことなく健全な溶接部が得られ、且つ部材間にギャップが存在した場合にも健全な溶接を行うことができ、更に組み立て誤差により接合面が所望の位置からずれた場合にも、健全な溶接を行うことが出来る等適用範囲の広い優れた溶接を実現できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 セッティングずれを起こした突合せ継手に対して本発明複合溶接法により溶接した場合の溶接部の状況を示す正面図。
【図2】 セッティングずれを起こした突合せ継手に対して従来の溶接法に溶接した場合の溶接部の状況を示す正面図。
【図3】 従来の突合せ継手を示す正面図。
【図】 従来の突合せ継手を構成する部材間に発生するギャップを示す正面図。
【図】 従来の突合せ継手を構成する部材間に発生するギャップ及び上下の位置ずれ示す正面図。
【図】 本発明複合溶接法におけるアーク/レーザ間距離を示す正面図。
【図】 突合せ継手に対して予定される溶接位置と接合面の位置との関係を示す正面図。
【図】 突合せ継手に対して予定される溶接位置と実際にセッティングされた接合面の位置との関係を示す正面図。
【図】 本発明複合溶接法による実施手法と従来法による比較手法の比較試験に用いられた突合せ継手を示す正面図。
【図10】 本発明複合溶接法における実施手法と従来法による比較手法の他の比較試験に用いられた突合せ継手を示す正面図。
【符号の説明】
1〜8…鋼鈑、G…ギャップ、D…アーク/レーザ間距離

Claims (3)

  1. 被溶接部材が薄板で構成された突合せ継手を対象として、消耗式電極を用いたアーク溶接とレーザ溶接とを複合させてこれを溶接する方法であって、この溶接の条件を、レーザ出力:3.5〜40kW、アーク電流:30〜500A、溶接速度:1〜20m/min、継手部材表面上でのアーク/レーザ間距離:1〜15mmとして実施することを特徴とする薄板構造継手の複合溶接方法。
  2. 前記薄板の板厚が4mm未満である請求項1に記載の複合溶接方法。
  3. 前記薄板が鋼鈑である請求項1又は請求項2に記載の複合溶接方法。
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