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JP4066203B2 - 新規なクレアチニンアミドヒドロラーゼ - Google Patents
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新規なクレアチニンアミドヒドロラーゼ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はクレアチニンの定量に用いることのできるクレアチニンアミドヒドロラーゼ活性を有する新規な酵素、ならびに該酵素をコードする遺伝子および遺伝子工学的技術による該酵素の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、クレアチニンアミドヒドロラーゼ(EC 3.5.2.10) は、臨床的に筋疾患、腎疾患の診断の指標となっている体液中のクレアチニンの測定用酵素として、他の酵素、例えばクレアチンアミジノヒドロラーゼ、ザルコシンオキシダーゼおよびペルオキシダーゼと共に使用されている。クレアチニンアミドヒドロラーゼは、水の存在下にクレアチニンに作用してクレアチンを生成する可逆的反応を触媒する酵素である。
【0003】
このようなクレアチニンアミドヒドロラーゼは、シュードモナス属(Journal of Biochemistry, Vol.86, 1109-1117 (1979))あるいはアルカリゲネス属(Chemical and Pharmaceutical Bulletin, Vol.34, No.1, 269-274 (1986)) の細菌が生産することが知られている。さらに、これら以外の細菌としては、フラボバクテリウム属、コリネバクテリウム属、マイクロコッカス属 (特開昭51-115989 号公報) 、ペニシリウム属 (特開昭47-43281号公報) 等の細菌が生産することが知られているにすぎない。このうち、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)PS-7が産生するクレアチニンアミドヒドロラーゼをコードする遺伝子は既に分離され、アミノ酸配列が公開されている(特許第2527035 号)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、今までに生産していない新しい細菌から、新規なクレアチニンアミドヒドロラーゼを単離し、そして、該酵素をコードする遺伝子をクローニングし、遺伝子工学的に該酵素を多量に製造する方法を提供することにある。また、本発明の別な目的は、該酵素を改変することにより、理化学的性質の改良された新規なクレアチニンアミドヒドロラーゼを製造する方法を導き出すことにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記目的を達成するために種々検討した結果、クレアチニンアミドヒドロラーゼ生産菌として、アースロバクター・エスピー(Arthrobacter sp.)TE1826(FERM P−10637)を選び、該菌体から新規なクレアチニンアミドヒドロラーゼを単離し、さらに、該菌体より抽出した染色体DNAからクレアチニンアミドヒドロラーゼをコードする遺伝子を分離することに成功し、該遺伝子より発現される新規なクレアチニンアミドヒドロラーゼを単離した。さらに、該遺伝子の全塩基配列を決定し、該酵素を遺伝子工学的技術により高価なクレアチニンのような誘導物質を培地に添加する必要なく、高生産させることに成功し、高純度な該酵素を安価に大量供給することを可能にした。
【0006】
すなわち、本発明は下記理化学的性質を有する新規なクレアチニンアミドヒドロラーゼである。
Figure 0004066203
【0007】
また、本発明は以下の(a)又は(b)のタンパク質であるクレアチニンアミドヒドロラーゼである。
(a)配列表の配列番号1に記載されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)アミノ酸配列(a)において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、クレアチニンアミドヒドロラーゼ活性を有するタンパク質
【0008】
本発明は、以下の(a)又は(b)のタンパク質であるクレアチニンアミドヒドロラーゼをコードする遺伝子である。
(a)配列表の配列番号1に記載されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)アミノ酸配列(a)において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、クレアチニンアミドヒドロラーゼ活性を有するタンパク質
【0009】
また、本発明は以下の(c)、(d)又は(e)のDNAからなるクレアチニンアミドヒドロラーゼをコードする遺伝子である。
(c)配列表の配列番号2に記載される塩基配列からなるDNA
(d)上記(c)の塩基配列において、1もしくは複数の塩基が付加、欠失または置換されており、かつ、クレアチニンアミドヒドロラーゼ活性を有するアミノ酸配列をコードしているDNA
(e)上記(c)の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、クレアチニンアミドヒドロラーゼ活性を有するタンパク質をコードする細菌由来のDNA
【0010】
本発明は上記クレアチニンアミドヒドロラーゼをコードする遺伝子を含有する組換えベクターである。
【0011】
また、本発明は上記組換えベクターにより形質転換された形質転換体である。
【0012】
さらに、本発明は上記形質転換体を培地で培養し、クレアチニンアミドヒドロラーゼを生成させ、該クレアチニンアミドヒドロラーゼを採取することを特徴とするクレアチニンアミドヒドロラーゼの製造法である。
【0013】
また、本発明はアースロバクター・エスピー(Arthrobacter sp.)TE1826(FERM P−10637)を培養し、クレアチニンアミドヒドロラーゼを生成させ、該クレアチニンアミドヒドロラーゼを採取することを特徴とするクレアチニンアミドヒドロラーゼの製造法である。
【0014】
【発明の実施態様】
本発明のクレアチニンアミドヒドロラーゼは、クレアチニンアミドヒドロラーゼ生産微生物、例えばアースロバクター・エスピー(Arthrobacter sp.)TE1826(FERM P−10637)から入手し得る。しかしながら、クレアチニンアミドヒドロラーゼをコードする遺伝子を分離し、これより発現されるクレアチニンアミドヒドロラーゼを単離することにより、本発明のクレアチニンアミドヒドロラーゼを簡便、かつ効率的に入手することもできる。
本発明の一実施態様としては、(a)配列表の配列番号1に記載されるアミノ酸配列からなるタンパク質または(b)アミノ酸配列(a)において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、クレアチニンアミドヒドロラーゼ活性を有するタンパク質がある。
アミノ酸の欠失、置換、付加の程度については、基本的な特性を変化させることなく、あるいはその特性を改善するようにしたものを含む。これらの変異体を製造する方法は、従来から公知である方法に従う。
【0015】
本発明のクレアチニンアミドヒドロラーゼをコードする遺伝子は、例えばアースロバクター・エスピー(Arthrobacter sp.)TE1826(FERM P−10637)から抽出しても良く、また化学的に合成することもできる。ポリメラーゼチェーンリアクション法(PCR)の利用により、クレアチニンアミドヒドロラーゼ遺伝子を含むDNA断片を得ることも可能である。
【0016】
上記遺伝子としては、例えば(a)配列表の配列番号1に記載されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA、または(b)アミノ酸配列(a)において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、クレアチニンアミドヒドロラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNAがある。
DNAの欠失、置換、付加の程度については、基本的な特性を変化させることなく、あるいはその特性を改善するようにしたものを含む。これらの変異体を製造する方法は、従来から公知である方法に従う。
【0017】
また、(c)配列表の配列番号2に記載される塩基配列からなるDNA、(d)上記(c)の塩基配列において、1もしくは複数の塩基が付加、欠失または置換されており、かつ、クレアチニンアミドヒドロラーゼ活性を有するアミノ酸配列をコードしているDNAまたは(e)上記(c)の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、クレアチニンアミドヒドロラーゼ活性を有するタンパク質をコードする細菌由来のDNAがある。
ここで、ストリンジェントな条件とは、×2SSC(300mM NaCl、30mM クエン酸)、65℃、16時間である。
【0018】
本発明の遺伝子を得る方法としては、例えばアースロバクター・エスピー
(Arthrobacter sp.)TE1826(FERM P−10637)の染色体DNAを分離、精製した後、超音波破砕、制限酵素処理等を用いてDNAを切断したものと、リニヤーな発現ベクターとを両DNAの平滑末端または接着末端においてDNAリガーゼなどにより結合閉鎖させて組換えベクターを構築する。こうして得られた組換えベクターは複製可能な宿主微生物に移入した後、ベクターのマーカーと酵素活性の発現を指標としてスクリーニングして、クレアチニンアミドヒドロラーゼをコードする遺伝子を含有する組換えベクターを保持する微生物を得る。次いで該微生物を培養し、該培養菌体から該組換えベクターを分離・精製し、該組換えベクターからクレアチニンアミドヒドロラーゼ遺伝子を採取すれば良い。
【0019】
遺伝子供与体であるアースロバクター・エスピー(Arthrobacter sp.)TE1826(FERM P−10637)の染色体DNAは、具体的には、以下のように採取される。
すなわち、供与微生物を例えば1〜3日間撹拌培養して得られた培養物を遠心分離にて集菌し、次いでこれを溶菌させることによりクレアチニンアミドヒドロラーゼ遺伝子の含有溶菌物を調製することができる。溶菌の方法としては、例えばリゾチームやβ−グルカナーゼ等の溶菌酵素により処理が施され、必要に応じてプロテアーゼや他の酵素やラウリル硫酸ナトリウム(SDS)等の界面活性剤が併用され、さらに凍結融解やフレンチプレス処理のような物理的破砕方法と組み合わせても良い。
【0020】
このようにして得られた溶菌物からDNAを分離・精製するには常法に従って、例えばフェノール処理やプロテアーゼ処理による除蛋白処理や、リボヌクレアーゼ処理、アルコール沈澱処理などの方法を適宜組み合わせることにより行うことができる。
微生物から分離・精製されたDNAを切断する方法は、例えば超音波処理、制限酵素処理などにより行うことができる。好ましくは特定のヌクレオチド配列に作用するII型制限酵素が適している。
【0021】
ベクターとしては、宿主微生物内で自律的に増殖し得るファージまたはプラスミドから遺伝子組換え用として構築されたものが適している。
ファージとしては、例えばエシェリヒア・コリー(Escherichia coli)を宿主微生物とする場合には、Lambda-gt10 、Lambda-gt11 などが使用できる。
またプラスミドとしては、例えばエシェリヒア・コリー(Escherichia coli)を宿主微生物とする場合には、pBR322,pUC19、pBluescript 、pLED−M1(Journal of Fermentation and Bioenzineering, Vol.76, 265-269 (1993))などが使用できる。
このようなベクターを、上述したクレアチニンアミドヒドロラーゼ遺伝子供与体である微生物DNAの切断に使用した制限酵素で切断してベクター断片を得ることができるが、必ずしも該微生物DNAの切断に使用した制限酵素と同一の制限酵素を用いる必要はない。微生物DNA断片とベクターDNA断片とを結合させる方法は、公知のDNAリガーゼを用いる方法であれば良く、例えば微生物DNA断片の接着末端とベクター断片の接着末端とのアニーリングの後、適当なDNAリガーゼの使用により微生物DNA断片とベクターDNA断片との組換えベクターを作成する。必要なら、アニーリングの後、宿主微生物に移入して生体内のDNAリガーゼを利用し組換えベクターを作成することもできる。
【0022】
宿主微生物としては、組換えベクターが安定、かつ自律増殖可能で外来性遺伝子の形質発現できるものであれば良く、一般的にはエシェリヒア・コリーW3110 、エシェリヒア・コリーC600、エシェリヒア・コリーHB101 、エシェリヒア・コリーJM109 などを用いることができる。
【0023】
宿主微生物に組換えベクターを移入する方法としては、例えば宿主微生物がエシェリヒア・コリーの場合には、カルシウム処理によるコンピテントセル法やエレクトロポレーション法などを用いることができる。
【0024】
このようにして得られた形質転換体である微生物は、栄養培地で培養されることにより、多量のクレアチニンアミドヒドロラーゼを安定に生産し得る。宿主微生物への目的組換えベクターの移入の有無についての選択は、目的とするDNAを保持するベクターの薬剤耐性マーカーとクレアチニンアミドヒドロラーゼ活性を同時に発現する微生物を検索すれば良く、例えば薬剤耐性マーカーに基づく選択培地で生育し、かつ、クレアチニンアミドヒドロラーゼを生成する微生物を選択すれば良い。
【0025】
上記の方法により得られたクレアチニンアミドヒドロラーゼ遺伝子の塩基配列はサイエンス(Science, Vol.214, 1205-1210 (1981))に記載されたジデオキシ法により解読し、またクレアチニンアミドヒドロラーゼのアミノ酸配列は決定した塩基配列より推定した。このようにして一度選択されたクレアチニンアミドヒドロラーゼ遺伝子を保有する組換えベクターは、形質転換微生物から取り出され、他の微生物に移入することも容易に実施することができる。また、クレアチニンアミドヒドロラーゼ遺伝子を保持する組換えベクターから制限酵素やPCRによりクレアチニンアミドヒドロラーゼ遺伝子であるDNAを回収し、他のベクター断片と結合させ、宿主微生物に移入することも容易に実施できる。
【0026】
形質転換体である宿主微生物の培養形態は、宿主の栄養生理的性質を考慮して培養条件を選択すればよく、通常、多くの場合は液体培養で行うが、工業的には通気撹拌培養を行うのが有利である。培地の栄養源としては、微生物の培養に通常用いられるものが広く使用され得る。炭素源としては資化可能な炭素化合物であればよく、例えばグルコース、シュークロース、ラクトース、マルトース、フラクトース、糖蜜、ピルビン酸などが使用される。窒素源としては利用可能な窒素化合物であればよく、例えばペプトン、肉エキス、酵母エキス、カゼイン加水分解物、大豆粕アルカリ抽出物などが使用される。その他、リン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、マグネシウム、カルシウム、カリウム、鉄、マンガン、亜鉛などの塩類、特定のアミノ酸、特定のビタミンなどが必要に応じて使用される。培養温度は菌が発育し、クレアチニンアミドヒドロラーゼを生産する範囲で適宜変更し得るが、エシェリヒアコリーの場合、好ましくは20〜42℃程度である。培養時間は条件によって多少異なるが、クレアチニンアミドヒドロラーゼが最高収量に達する時期を見計らって適当時期に培養を終了すればよく、通常は6〜48時間程度である。培地pHは菌が発育しクレアチニンアミドヒドロラーゼを生産する範囲で適宜変更し得るが、特に好ましくはpH6.0〜9.0程度である。
【0027】
培養物中のクレアチニンアミドヒドロラーゼを生産する菌体を含む培養液をそのまま採取し利用することもできるが、一般には、常法に従ってクレアチニンアミドヒドロラーゼが培養液中に存在する場合は濾過、遠心分離などにより、クレアチニンアミドヒドロラーゼ含有溶液と微生物菌体とを分離した後に利用される。クレアチニンアミドヒドロラーゼが菌体内に存在する場合には、得られた培養物から濾過または遠心分離などの手段により菌体を採取し、次いでこの菌体を機械的方法またはリゾチームなどの酵素的方法で破壊し、また必要に応じてEDTA等のキレート剤及びまたは界面活性剤を添加してクレアチニンアミドヒドロラーゼを可溶化し、水溶液として分離採取する。
【0028】
このようにして得られたクレアチニンアミドヒドロラーゼ含有溶液を、例えば減圧濃縮、膜濃縮、更に硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウムなどの塩析処理、或いは親水性有機溶媒、例えばメタノール、エタノール、アセトンなどによる分別沈澱法により沈澱せしめればよい。また、加熱処理や等電点処理も有効な精製手段である。その後、吸着剤或いはゲル濾過剤などによるゲル濾過、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーを行うことにより、精製されたクレアチニンアミドヒドロラーゼを得ることができる。
【0029】
例えば、セファデックス(Sephadex) G-25 (ファルマシア バイオテク)などによるゲルろ過、DEAEセファロースCL-6B(ファルマシア バイオテク)、オクチルセファロースCL6-B(ファルマシア バイオテク)カラムクロマトグラフィーにより分離・精製し、精製酵素標品を得ることができる。この精製酵素標品は、電気泳動(SDS-PAGE)的に、ほぼ単一のバンドを示す程度に純化されている。
【0030】
本発明のクレアチニンアミドヒドロラーゼは、以下に示す理化学的性質を有する。
Figure 0004066203
【0031】
本発明のクレアチニンアミドヒドロラーゼと公知のクレアチニンアミドヒドロラーゼとの性質の比較を表1に示す。また、本発明のクレアチニンアミドヒドロラーゼのアミノ酸配列と唯一、公知であるシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)PS-7が産生するクレアチニンアミドヒドロラーゼのアミノ酸配列との相同性は37.0%であり、両者の比較を図1に示す。
本発明のクレアチニンアミドヒドロラーゼは、同一反応を触媒する公知の酵素とは性質の異なる新規な酵素である。
【0032】
【表1】
Figure 0004066203
【0033】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
実施例中、クレアチニンアミドヒドロラーゼ活性の測定は以下の試薬および測定条件で行った。
<試薬>
試薬A クレアチニン測定試薬「ダイヤカラーCRE 」(東洋紡製)のA溶解 液(酵素試薬Aバイアルに90mlの溶解液Aを加えて溶解したもの)
試薬B 400mM クレアチニン水溶液
試薬C 1.5%フェノール水溶液
試薬D 0.5%4−アミノアンチピリン溶液
【0034】
<測定条件>
まず、試薬A、試薬B、試薬C、試薬Dを3:1:0.04:0.04の割合(容量比)で混合し、試薬混液を作成する。この試薬混液3mlを37℃で約5分予備加温後、0.1mlの酵素溶液を加え,37℃で反応を開始し、4分間反応させた後、500nmにおける1分間当たりの吸光度変化を分光光度計にて測定する。盲検は酵素溶液の代わりに蒸留水を試薬混液に加えて、以下同様に吸光度変化を測定する。上記条件で1分間に1マイクロモルのクレアチニンを分解する酵素量を1単位 (U)とする。
【0035】
実施例1 染色体DNAの分離
アースロバクター・エスピーTE1826(FERM P−10637)の染色体DNAを次の方法で分離した。同菌株を100mlの2×YT培地(1.6%ポリペトン、1%酵母エキス、0.5%塩化ナトリウム(pH7.2))で37℃一晩振盪培養した後、遠心分離(8,000rpm、10分間)により集菌した。15mMクエン酸ナトリウム、0.15M塩化ナトリウムを含んだ溶液で菌体を洗浄した後、20%シュークロース、50mMトリス塩酸(pH7.6)、1mM EDTAを含んだ溶液5mlに懸濁し、1mlのリゾチーム溶液(100mg/ml)を加えて、37℃、30分間保温し、次いで11mlの1%ラウロイルサルコシン酸、0.1M EDTA(pH9.6)を含む溶液を加えた。この懸濁液に臭化エチジウム溶液を0.5%塩化セシウムを約100%加え、攪拌混合し、55,000rpm 、20時間の超遠心分離でDNAを分取した。分取したDNAは1m EDTAを含んだ10mMトリス塩酸、pH8.0溶液(以下,TEと略記)で透析し、精製DNA標品とした。これを等量のクロロホルム・フェノール溶液で処理後遠心分離により水層を分取し、2倍量のエタノールを加えて上記方法で、もう一度DNAを分離し、2mlのTEで溶解した。
【0036】
実施例2 クレアチニンアミドヒドロラーゼをコードする遺伝子を含有するDNA断片及び該DNA断片を有する組換えベクターの調製
実施例1で得たDNA5μgを制限酵素 Sau3AI (東洋紡製)で部分分解し、2kbp以上の断片に分解した後、制限酵素 BamHI(東洋紡製)で切断した pBluescriptKS(+) 1μgとをT4−DNAリガーゼ(東洋紡製)1単位で、16℃、12時間反応させ、DNAを連結した。連結したDNAはエシェリヒア・コリーJM109 のコンピテントセル(東洋紡製)を用いて形質転換し、クレアチニンアミドヒドロラーゼ活性検出用寒天培地[1.0%ポリペプトン、0.5%酵母エキス、0.5% NaCl 、1%クレアチニン、200U/ml クレアチンアミジノヒドロラーゼ(東洋紡製)、10U/mlザルコシンオキシダーゼ(東洋紡製)、5U/ml ペルオキシダーゼ(東洋紡製)、0.01% ο−ジアニシジン、50μg/mlアンピシリン、1.5%寒天]に塗布した。クレアチニンアミドヒドロラーゼ活性の検出は、上記培地に生育し、且つ茶色に染色されるコロニーを指標に行った。
【0037】
使用したDNA1μg当たり約100,000 個の形質転換体のコロニーが得られ、上記スクリーニングの結果、茶色に染色されるコロニーを1株見いだした。この株をLB液体培地(1%ポリペプトン、0.5%酵母エキス、0.5% NaCl 、50μg/mlアンピシリン)で培養し、クレアチニンアミドヒドロラーゼ活性を測定したところ、該活性が検出された。この株の保有するプラスミドには約6.6kbpの挿入DNA断片が存在しており、このプラスミドをpCNAB1とした。
【0038】
次いで、pCNAB1の挿入DNAを制限酵素 ApaI (東洋紡製)にて切り出し、同制限酵素で切断した pBluescriptKS(+) に連結して、pCNHAA−1を作成した。このpCNHAA−1の制限酵素地図を図2に示す。
【0039】
実施例3 塩基配列の決定
pCNHAA−1の約4.6kbpの挿入DNA断片について種々の制限酵素にてサブクローンを調製した。種々のサブクローンは常法に従い、Radioactive Sequencing Kit(東洋紡製)を用いて、塩基配列を決定した。決定した塩基配列およびアミノ酸配列を配列表に示した。アミノ酸配列から求められる蛋白質の分子量は28,497であり、アースロバクター・エスピーTE1826のクレアチニンアミドヒドロラーゼの分子量とほぼ一致した。
【0040】
実施例4 組換えベクターpCNHAR−1の作成
pCNHAA−1の挿入DNA断片よりクレアチニンアミドヒドロラーゼ遺伝子以外の部分を除くため、PCRによる挿入DNA断片の小型化を実施した。PCRは以下に示す反応液組成及び増幅条件にて行った。
<反応液組成>
Pfu DNAポリメラーゼ(ストラタジーン製) 5U/100μl
10倍濃度Pfu DNA ポリメラーゼ用バッファー 10 μl/100μl
pCNHAA-1(鋳型DNA) 0.1 μg/100μl
dATP,dTTP,dGTP,dCTP 各0.2mM
2種のプライマー 各1μM
(配列表の配列番号3、4に記載)
【0041】
<増幅条件>
変性 95℃、30秒間
温度変更 1分30秒間
アニーリング 45℃、1秒間
温度変更 1秒間
反応 75℃、2分30秒間
温度変更 1秒間
(上記サイクルを計30サイクル実施)
【0042】
増幅DNA断片約0.8kbpを制限酵素 NdeI と BamHI(東洋紡製)にて処理し、同じ制限酵素で切断したpLED−M1に連結して、pCNHAR−1を作成した。pCNHAR−1の制限酵素地図を図3に示す。
pCNHAR−1の挿入DNA断片は、クレアチニンアミドヒドロラーゼ遺伝子以外の部分を含まない。すなわち、挿入DNA断片の両端には NdeI と BamHI制限酵素切断部位がそれぞれ存在し、 NdeI はクレアチニンアミドヒドロラーゼ遺伝子の開始コドン(ATG) と重なり、 BamHIはクレアチニンアミドヒドロラーゼ遺伝子の終止コドン(TGA) の直後に位置している。
【0043】
実施例5 形質転換体の作成
エシェリヒア・コリーJM109 のコンピテントセル(東洋紡製)をpCNHAR−1で形質転換し、形質転換体エシェリヒア・コリーJM109 (pCNHAR-1)を得た。
【0044】
実施例6 エシェリヒア・コリーJM109 (pCNHAR-1)からのクレアチニンアミドヒドロラーゼの製造
LB培地500mlを2Lフラスコに分注し、121℃、15分間オートクレーブを行い、放冷後別途無菌ろ過した50mg/mlアンピシリン(ナカライテスク製)0.5mlを添加した。この培地にLB培地であらかじめ,30℃、7時間振盪培養したエシェリヒア・コリーJM109 (pCNHAR-1)の培養液5mlを接種し、37℃で18時間通気撹拌培養した。培養終了時のクレアチニンアミドヒドロラーゼ活性は約18U/mlであった。
【0045】
上記菌体を遠心分離にて集菌し、20mMリン酸緩衝液、pH7.5に懸濁した。上記菌体懸濁液をフレンチプレスで破砕し、遠心分離を行い上清液を得た。得られた粗酵素液をポリエチレンイミンによる除核酸処理および硫安分画処理を行った後、セファデックス(Sephadex) G-25 (ファルマシア バイオテク)によるゲルろ過により脱塩し、DEAEセファロースCL-6B (ファルマシア バイオテク)カラムクロマトグラフィー、オクチルセファロースCL6-B(ファルマシア バイオテク)カラムクロマトグラフィーにより分離・精製し、精製酵素表品を得た。本方法により得られたクレアチニンアミドヒドロラーゼ標品は、電気泳動(SDS-PAGE)的にほぼ単一なバンドを示し、この時の比活性は約30U/mg−タンパク質であった。
【0046】
以下に、上記方法により得られたクレアチニンアミドヒドロラーゼの性質を示す。
Figure 0004066203
【0047】
実施例7
アースロバクター・エスピー(Arthrobacter sp.)TE1826(FERM P−10637)を2XYT培地(1.6% ポリペトン、1%酵母エキス、0.5%塩化ナトリウム、pH7.2)にて、37℃、約1〜3日間培養し、培養液を遠心分離して集菌し、次いで、これを溶菌させることによって、クレアチニンアミドヒロラーゼを生成させ、該クレアチニンアミドヒドロラーゼを採取した。
【0048】
【発明の効果】
本発明により、アースロバクター属細菌から新規なクレアチニンアミドヒドロラーゼ遺伝子が単離され、遺伝子工学的技術による該酵素の製造法が確立され、高純度な該酵素の大量供給とクレアチニンの定量への利用が可能となった。また、該遺伝子を改変することにより、理化学的性質の改良された新規なクレアチニンアミドヒドロラーゼを製造する方法を導き出すことができる。
【0049】
【配列表】
Figure 0004066203
Figure 0004066203
【0050】
Figure 0004066203
Figure 0004066203
Figure 0004066203
【0051】
Figure 0004066203
【0052】
Figure 0004066203

【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のクレアチニンアミドヒドロラーゼのアミノ酸配列とシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)PS-7が産生するクレアチニンアミドヒドロラーゼのアミノ酸配列との比較を示す図である。
【図2】pCNAA−1の制限酵素地図を示す図である。
【図3】pCNHAR−1の制限酵素地図を示す図である。

Claims (8)

  1. 配列表の配列番号1に記載されるアミノ酸配列からなるタンパク質であるクレアチニンアミドヒドロラーゼ。
  2. 配列表の配列番号1に記載されるアミノ酸配列からなるタンパク質であるクレアチニンアミドヒドロラーゼをコードする遺伝子。
  3. 以下の(c)又は(d)のDNAからなるクレアチニンアミドヒドロラーゼをコードする遺伝子。
    (c)配列表の配列番号2に記載される塩基配列からなるDNA
    (d)上記(c)の塩基配列において、1もしくは数個の塩基が付加、欠失または置換されており、かつ、配列番号1に記載されるアミノ酸配列からなるタンパク質であるクレアチニンアミドヒドロラーゼ活性を有するアミノ酸配列をコードしているDNA
  4. 配列表の配列番号2に記載される塩基配列からなるDNAを含有するクレアチニンアミドヒドロラーゼをコードする遺伝子。
  5. 請求項2、3または4記載のクレアチニンアミドヒドロラーゼをコードする遺伝子を含有する組換えベクター。
  6. 請求項記載の組換えベクターで宿主細胞を形質転換した形質転換体。
  7. 請求項記載の形質転換体を培養し、クレアチニンアミドヒドロラーゼを生成させ、該クレアチニンアミドヒドロラーゼを採取することを特徴とするクレアチニンアミドヒドロラーゼの製造法。
  8. アースロバクター・エスピー(Arthrobacter sp.)TE1826(FERM P−10637)を培養し、クレアチニンアミドヒドロラーゼを生成させ、該クレアチニンアミドヒドロラーゼを採取することを特徴とするクレアチニンアミドヒドロラーゼの製造法。
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