JP4066779B2 - 操舵装置 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、転舵装置を動力作動状態とマニュアル作動状態とに切り換え可能な操舵装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
上述の操舵装置が特許文献1〜4に記載されている。それらのうちの特許文献1に記載の操舵装置においては、マニュアル作動状態において、操舵部材に加えられた操作トルクによってケーブルがねじられ、それによって、転舵装置が作動させられる。この操舵装置においては、ケーブルをねじりトルクを伝達可能な剪断強度を有するものとする必要がある。また、ケーブルを搭載する際の制限が大きく、自由度が小さいという問題があった。
一方、特許文献5,6には、ステアリングホイールの回転操作に伴ってケーブルに張力が加えられ、その張力によって、転舵装置が作動させられる操舵装置が記載されている。この操舵装置においては、転舵装置が、常にケーブルの張力によって作動させられる。そのため、ケーブルを、剛性、強度が大きく、耐久性が優れたものとする必要がある。また、ケーブルはアウタチューブの内側に配設されるのが普通であるが、それらケーブルとアウタチューブとの間の摩擦を生じ難くするために、曲がる箇所を少なくしたり、曲げ角度を小さくしたりする等の必要があった。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−213335号公報
【特許文献2】
特開2000−85605号公報
【特許文献3】
特開2000−85606号公報
【特許文献4】
特開2000−85607号公報
【特許文献5】
特開平10−310068号公報
【特許文献6】
特開平10−138938号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題、課題解決手段、作用および効果】
以上の事情を背景として、本発明の課題は、転舵装置を、少なくともマニュアル作動状態と動力作動状態とに切り換え可能な操舵装置について、搭載時の自由度を高め、かつ、コストアップを回避することにある。上記課題は、操舵装置を下記各項に記載の態様とすることによって解決される。各態様は、請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまで、本明細書に記載の技術の理解を容易にするためであり、本明細書に記載の技術的特徴およびそれらの組み合わせが以下の各項に限定されると解釈されるべきではない。また、1つの項に複数の事項が記載されている場合、常に、すべての事項を一緒に採用しなければならないものではなく、一部の事項のみを取り出して採用することも可能である。
【0005】
以下の各項のうち、(5) 項が請求項1に対応し、(8) 項が請求項2に対応し、(10) 項〜 (13) 項がそれぞれ請求項3〜6に対応する。
【0006】
(1)運転者によって操作される操舵部材と、
車輪を転舵する転舵装置と、
その転舵装置を動力により駆動し、車輪を転舵させる動力式駆動源と、
前記操舵部材と前記転舵装置との間に設けられたケーブルを含み、そのケーブルに前記操舵部材の操作に伴って加えられる張力により前記転舵装置を作動させて、前記車輪を転舵させる操作力伝達装置と
を含む操舵装置。
本項に記載の操舵装置においては、転舵装置が、動力式駆動源により作動させられる場合と、運転者による操舵部材の操作に伴うケーブルの張力に起因して作動させられる場合とがある。
転舵装置は、ケーブルのねじりによって作動させられるものではなく張力によって作動させられるものである。そのため、ケーブルを、ねじりトルクを伝達可能な剪断強度を有するものとする必要がなくなる。転舵装置は、常に、ケーブルの張力によって作動させられるものではない。そのため、ケーブルを剛性や強度が大きく、耐久性が優れたものとする必要がなくなり、曲がる箇所、曲げ角度等の制限がなくなる。したがって、ケーブルを安価なものとすることができ、操舵装置のコストアップを回避することができる。また、配索の制限がなくなり、搭載上の自由度を向上させることができる。
転舵装置は、例えば、車輪にタイロッドを介して連結され、車両の幅方向に、車体に固定のハウジングに対して相対移動可能な転舵ロッドを含むものとすることができる。転舵ロッドに移動力が加えられると、それにより、幅方向に移動させられ、車輪の向きが変えられるのであり、車輪の舵角が変えられる。この意味において、転舵装置を、車輪変向装置、舵角変更装置と称することができる。
動力式駆動源は、電動モータとしたり、液圧発生装置としたりすることができる。転舵装置は、電動モータの駆動力によって車輪を転舵するものであっても、液圧によって転舵するものであってもよい。
操舵部材は、ステアリングホイール等の回転操作されるものであっても、アーム等の回動操作されるものであってもよいのであり、操舵部材の操作によってケーブルに張力を付与し得るものであればよい。ケーブルの巻き取りによって張力が付与される場合には、回転操作されるものであることが望ましいが、操舵部材と巻き取り装置との間に例えば回転数変換装置を設ければ、操舵部材の回転角度は小さくても差し支えない。
なお、転舵装置と動力式駆動源とを併せて主操舵装置と称し、転舵装置と操作力伝達装置とを併せて補助操舵装置と称することができる。転舵装置は、主として動力式駆動源の駆動力によって作動させられる。
(2)前記転舵装置の作動状態を、少なくとも、前記動力式駆動源の駆動力により作動させられる動力作動状態と、前記操作力伝達装置により伝達された操作力に基づいて作動させられるマニュアル作動状態とに切り換え可能な作動状態切換装置と、
前記転舵装置の動力作動状態において、前記動力式駆動源を車両の状態に基づいて制御する駆動源制御装置と
を含む(1)項に記載の操舵装置。
本項に記載の操舵装置において、転舵装置が、動力作動状態において動力式駆動源により作動させられ、マニュアル作動状態において操舵部材の操作に起因するケーブルの張力によって作動させられる。
転舵装置の動力作動状態においては、動力式駆動源が車両の状態に基づいて制御される。車両の状態には、車両の走行状態、車両に搭載された搭載装置(搭載された操作部材を含む)の状態(例えば、転舵装置の作動状態、操作部材の操作状態等が該当する。)、車両が置かれた環境の状態等が該当する。車両の状態は、例えば、車両の走行速度、操舵部材の操作量、路面の摩擦係数等の物理量で表すことができるが、それに限らない。これら物理量の変化速度、変化加速度等の変化状態、物理量が設定量以上であるかどうかの状態で表したり、物理量に基づく評価で表したりすることもできる。
具体的に、車両の走行状態は、走行速度、ヨーレイト、横加速度、前後加速度、車輪のスリップ状態等に基づいて表すことができる。これら物理量に基づけば、車両の旋回状態、駆動・制動状態等を表したり、旋回状態が限界状態にあるかどうか、駆動スリップや制動スリップが過大であるかどうか等を表したりすることができる。車両に搭載された搭載装置の状態は、バッテリの出力電圧、タイヤの空気圧、操舵部材の操舵量,操舵速度で表したり、転舵装置の状態(例えば、車輪の転舵角、動力駆動源の発熱状態、転舵装置が作動限界にあるかどうかの状態等)で表したり、制動装置、駆動装置の作動状態等で表したりすることができる。車両の置かれた環境を表す状態には、路面の状態、車両に加わる外乱(例えば、横風)の状態等が該当し、路面の状態は、路面の摩擦係数、凹凸等で表すことができ、外乱の状態は、横風の有無、横風の強さ(車両のヨーレイトと操舵部材の操作状態との関係から取得される場合がある)等で表すことができる。
動力式駆動源は、車両の状態に基づいて制御されるのであり、上述の各状態の少なくとも1つに基づいて制御される。例えば、運転者による操舵部材の操作状態に基づいて制御される場合がある。また、操舵部材の操作状態に基づいて制御される場合において、その制御態様が、車輪のスリップ状態、タイヤの空気圧、路面の摩擦係数等に基づいて変更される場合がある。さらに、操舵部材の操作状態とは関係なく制御される場合がある。例えば、横風に起因するヨーレイト分を除くように制御されるようにする場合がある。
転舵装置の作動状態は、少なくとも、上述の動力作動状態とマニュアル作動状態とに切り換えられるが、動力駆動源による駆動力とケーブルの張力との両方によって作動させられるフル作動状態にされることもある。フル作動状態においては、大きな力で車輪を転舵させることができる。
(3)前記操作力伝達装置が、前記操舵部材の操作によって前記ケーブルに張力が付与される張力付与状態と、前記操舵部材が操作されても前記ケーブルに張力が付与されない張力非付与状態とに切り換える張力付与状態切換装置を含む(1)項または(2)項に記載の操舵装置。
本項に記載の操舵装置においては、張力付与状態切換装置により、操作力伝達装置が、張力付与状態と張力非付与状態とに切り換えられる。張力非付与状態においては、操舵部材に操作力が加えられても、ケーブルに張力が加えられることがない。張力付与状態においては、運転者による操舵部材の操作によってケーブルに張力が加えられる。
張力付与状態切換装置は、例えば、操舵部材とケーブルとの間に設けられたクラッチとすることができる。クラッチによれば、操舵部材とケーブルとが機械的に接続されたり、遮断されたりする。クラッチは、電磁式クラッチ、油圧式クラッチ等とすることができるが、エネルギを供給しない状態で接続状態とされるものが望ましい。また、機械的に接続状態と遮断状態とに切り換え可能なクラッチを設けることは不可欠ではなく、機械的に接続された状態で、操作力がケーブルに伝達される状態と伝達されない状態とに切り換え可能なものとすることもできる。
なお、張力付与状態切換装置は、前述の転舵装置の作動状態切換装置の一態様であると考えることができる。
(4)前記操舵部材に、操作力に応じた操舵反力を付与する反力付与装置を含む(1)項ないし(3)項のいずれか1つに記載の操舵装置。
操舵部材には、反力付与装置によって操舵反力が付与される。運転者は、その操舵反力に応じて操舵部材を操作する。
また、クラッチ等により操舵部材が転舵装置から遮断された状態において、車輪が運転者による操舵部材の操作状態とは関係なく転舵される場合であっても、反力付与装置により操作力に応じた反力が付与されれば、運転者の違和感を軽減することができる。
(5)運転者によって操作される操舵部材と、
車両の車輪を転舵する転舵装置と、
その転舵装置を動力により作動させて、車輪を転舵させる動力式駆動源と、
前記操舵部材と前記転舵装置との間に設けられたケーブルを含み、そのケーブルによって前記操舵部材と前記転舵装置とが接続された状態において、前記操舵部材の操作状態と 前記転舵装置の転舵状態との関係が予め定められた設定範囲内にある場合に、前記転舵装置に前記動力式駆動源の駆動力が加えられて前記ケーブルの張力が加えられない張力非付与状態にあるが、前記操作状態と前記転舵状態との関係が前記設定範囲から外れた場合に、前記ケーブルの張力と前記動力式駆動源の駆動力との両方が加えられる張力付与状態となる操作力伝達装置と
を含むことを特徴とする操舵装置。
図6に示すように、ケーブルとシャフトとでは、荷重の伝達特性、すなわち、変位と荷重との関係が異なる。シャフトについては、変位と荷重との間に、変位の増加量に対する荷重の増加量である荷重増加率がほぼ一定である線形の関係があるが、ケーブルについては、荷重増加率が一定でない非線形の関係にある。ケーブルは、初期状態において緩みを有する状態で配索されるのが普通である。そのため、図7に示すように、変位付与当初においては荷重増加率が非常に小さくなり、緩みが消滅した後に荷重増加率が大きくなる。荷重増加率が非常に小さい領域を低剛性域と称し、それ以外の領域を低剛性域に対して高剛性域と称する。
低剛性域においては、操舵部材が操作されても、ケーブルに張力が加えられない張力非付与状態にあり、クラッチの遮断状態と実質的に同じ状態にある。高剛性域においては、操舵部材の操作に応じて張力が加えられる張力付与状態にある。この状態は、クラッチの接続状態と実質的に同じである。
このように、操作力伝達装置は、ケーブルの特性によって、張力付与状態と張力非付与状態とをとり得るのであり、クラッチを設けなくても、張力非付与状態と張力付与状態とを実現し得る。
なお、低剛性域においては必ずケーブルが張力非付与状態にあると考えることができるが、それに限らない。例えば、図7に示すように、低剛性域内のうち、荷重増加率が殆ど0であるとみなし得る領域にある場合にケーブルが張力非付与状態にあるとすることができる。ケーブルに変位が加えられても張力がほぼ0である状態を張力非付与状態と称することができるのである。
なお、本項に記載の操舵装置には、(2)項〜(4)項の技術的特徴を採用することができる。
(6)前記操舵部材が、回動操作されるものであり、
前記転舵装置が、車輪にタイロッドを介して連結された転舵ロッドを含み、
前記操作力伝達装置が、(a)前記操舵部材の操作に伴って回転させられる第1プーリと、(b)その第1プーリとの間に前記ケーブルが巻き掛けられた第2プーリと、(c)その第2プーリの回転トルクを前記転舵ロッドの軸線方向移動力に変換する変換装置とを含む(1)項ないし(5)項のいずれか1つに記載の操舵装置。
変換装置は、第2プーリの回転を転舵ロッドの軸線方向の直線移動に変換する運動変換装置と考えることができる。
なお、操舵部材は、ステアリングホイールとすることができ、第1プーリは、ステアリングホイールが保持されるステアリングシャフトに、そのステアリングシャフトと一体的に回転可能に設けることができる。
(7)前記転舵ロッドに、前記動力式駆動源の駆動力を伝達し、軸線方向に移動させる駆動力伝達装置を含む(6)項に記載の操舵装置。
動力式駆動源が転舵用モータである場合には、その転舵用モータの回転を転舵ロッドの軸線方向の直線移動に変換する運動変換装置と考えることができる。
本項に記載の操舵装置においては、転舵ロッドは、動力式駆動源の駆動力によって移動させられる場合や、ケーブルの張力に基づいて移動させられる場合がある。転舵ロッドが動力式駆動源の駆動力によって移動させられる状態において、転舵ロッドの直線移動に伴って第2プーリが回転させられる。第2プーリは、転舵ロッドの移動、すなわち、車輪の転舵に応じて回転させられるのであり、第2プーリの回転状態(回転位相。回転位相は、両回転方向において、それぞれ、その大きさが360°以上になる場合が多い)は、転舵ロッドの移動量、移動方向、すなわち、車輪の転舵角、転舵方向等の転舵状態によって決まる。
一方、第1プーリは、運転者による操舵部材の操作に伴って回転させられる。第1プーリの回転状態(回転位相。回転位相は、両回転方向において、それぞれ、その大きさが360°以上になる場合が多い)は、操舵部材の操作量(例えば、操舵部材がステアリングホイールである場合における操舵角)、操作方向等の操作状態によって決まる。
第1プーリの回転状態(以下、操作側状態と称する)と第2プーリの回転状態(以下、車輪側状態と称する)との関係が、設計上決まる正規の関係にある場合(例えば、第1プーリと第2プーリとで、ケーブルの巻き径が同じで、かつ、同じ方向にほぼ同じ角速度で回転する場合)には、ケーブルに加えられる張力は殆ど0である。それに対して、操作側状態と車輪側状態との関係が上述の正規の関係から設定関係以上外れた場合には、外れの程度に応じた張力がケーブルに加えられ、転舵ロッドに駆動力が加えられる。
車両の通常の走行状態においては、操作側状態と車輪側状態との関係が正規の関係または正規の関係から設定関係以上外れないのが普通である。操舵部材が操作されてもケーブルに張力が付与されない張力非付与状態にある。この操作側状態と車輪側状態との関係が正規の関係から設定状態以上外れない間においては、実質的に車輪の転舵状態と関係なく操舵部材を操作することができる。
それに対して、例えば、運転者による操舵部材の操作速度が非常に大きい場合等には、車輪の転舵遅れが生じ、操作側状態と車輪側状態との関係が正規の関係から設定関係以上外れる。外れの程度に応じた張力がケーブルに付与され、張力に応じた駆動力が転舵ロッドに加えられる。ケーブルは張力付与状態になる。転舵ロッドには、動力式駆動源による駆動力と外れの程度に応じた張力に応じた駆動力とが加えられ、これらの和の力によって移動させられる。これらの外れの程度によって車輪の転舵がアシストされるのであり、それによって、車輪の転舵角を、運転者の意図する大きさに修正することができる。
この正規の関係、設定関係は、ケーブルの有する特性、配索の状態等によって設計上決まる。
なお、操舵装置に反力付与装置が設けられ、その反力付与装置による反力が、ケーブルの低剛性域においても高剛性域においても操舵部材に加えられる場合において、高剛性域においては、反力付与装置によって付与される反力と路面反力との両方が加えられるため、操舵部材に加わる反力を大きくすることができ、過大な操作を抑制することができる。
(8)前記転舵装置が、前記車輪にタイロッドを介して連結された転舵ロッドを含み、
前記操作力伝達装置が、(a)前記操舵部材の操作トルクが付与される第1プーリと、(b)その第1プーリとの間に前記ケーブルが巻き掛けられた第2プーリと、(c)その第2プーリの回転トルクを前記転舵ロッドの軸線方向移動力に変換する変換装置と、(d)前記第1プーリと第2プーリとの間に湾曲した状態で配設され、前記ケーブルを自身の内周面で案内するアウタチューブと、(e)そのアウタチューブの両端を固定する固定状態と、少なくとも一端の長手方向の移動を許容する移動許容状態とに切り換え可能なアウタチューブ制御装置とを含む(5)項ないし(7)項のいずれか1つに記載の操舵装置。
(9)前記第1プーリが前記車両の車体に固定された第1プーリ保持部材に相対回転可能に保持され、前記第2プーリが転舵装置本体に設けられた第2プーリ保持部材に相対回転可能に保持され、
前記操作力伝達装置が、前記アウタチューブの少なくとも一方の端部と、その少なくとも一方の端部に対応する前記第1プーリ保持部材と第2プーリ保持部材との少なくとも一方との間に設けられた弾性部材を含む(8)項に記載の操舵装置。
(10)前記アウタチューブ制御装置が、前記弾性部材を変形させることにより、前記アウタチューブを前記固定状態と前記移動許容状態とに切り換える弾性部材変形部を含む(9)項に記載の操舵装置。
アウタチューブの端部とプーリ保持部材との間と、アウタチューブの中間部との少なくとも一方に弾性部材が設けられた場合において、その弾性部材の変形が許容される状態においては、アウタチューブの一端部の長手方向の移動が許容される。ケーブルに弾性部材の弾性力の大きさを越える張力が加えられることはない。アウタチューブは実質的に移動許容状態にあり、ケーブルは実質的に張力非付与状態にある。
ケーブルに加えられる変位が設定量以上になり、アウタチューブの一端部の長手方向の移動に伴う弾性部材の変形量が変形限度に達すると、アウタチューブは、弾性部材の弾性力により第1プーリ保持部材と第2プーリ保持部材との間で固定される。アウタチューブは実質的に固定状態にされ、ケーブルは実質的に張力付与状態にされる。運転者による操舵部材の操作によってケーブルに張力が加えられ、その張力に応じた駆動力が転舵ロッドに加えられる。
このように、弾性部材を設ければ、ケーブルが実質的に張力非付与状態にある場合の領域を広くすることができるのであり、ケーブルの低剛性域をみかけ上広くすることができる。また、ケーブルとアウタチューブとを併せて操作力伝達部材または単にケーブルと称することができるが、この場合には、操作力伝達部材またはケーブルの低剛性域が広くされたことになる。たいていの場合には、低剛性域が広くなると、それに伴って張力非付与状態にある領域も広くなる。
弾性部材変形装置は、電気信号に応じて作動状態が切り換えられる駆動源と、駆動源により移動させられる可動部材とを含み、可動部材の移動により、弾性部材を初期状態と変形状態(弾性変形限度まで変形させられた状態)とに切り換えるものとすることができる。駆動源が電気信号に応じて作動させられるものであるため、任意な時期に、アウタチューブを固定状態と移動許容状態とに切り換えることができる。
また、アウタチューブの固定状態において、操舵部材、転舵装置の中立位置を確認することができる。動力式駆動源の非駆動状態において、アウタチューブが固定状態にされれば、低弾性領域がなくなり、操舵部材に加えられる操作力の増加に伴ってケーブルに加えられる張力が増加する。したがって、車両がほぼ直進走行状態にあることがわかれば、操舵部材、転舵装置の中立位置の確認(操舵角センサ、操舵トルクセンサの0点、転舵角センサの0点の修正)を行うことができる。中立位置は、アウタチューブ、ケーブルの経時変化によって変わることがある。
なお、第1プーリを駆動プーリとし、第2プーリを従動プーリとすることが望ましく、ケーブルを2本設け、駆動プーリの回転方向によってそれぞれ異なるケーブルが引っ張られるようにすることが望ましい。
(11)前記弾性部材変形部が、操舵部材の操作速度が設定速度以上の場合,操作トルクが設定値以上の場合および路面の摩擦係数が設定値より小さい場合のうちの少なくとも1つの場合に、前記移動許容状態から前記固定状態に切り換える弾性状態切換部を含む(10)項に記載の操舵装置。
(12)前記弾性部材変形部が、前記動力式駆動源が異常である場合に、前記固定状態とする切換部を含む(10)項または(11)項に記載の操舵装置。
変形状態においては、操舵応答性を向上させることができ、転舵ロッドに大きな駆動力を付与することができる。例えば、操舵部材の操作速度が設定速度以上の場合、操作トルクが設定値以上の場合等に変形状態に切り換えることは妥当なことである。
また、所望の時期に、初期状態と変形状態との間の切換えが行われるようにすれば、車両の操舵特性を運転者の所望する特性にすることができる。
(13)前記転舵装置が、前記車輪にタイロッドを介して連結された転舵ロッドを含み、
前記操作力伝達装置が、(a)前記操舵部材の操作トルクが付与される第1プーリと、(b)前記第1プーリとの間に前記ケーブルが巻き掛けられた第2プーリと、(c)前記車両の車体に固定され、前記第1プーリを相対回転可能に保持する第1プーリ保持部材と、(d)前記転舵装置本体に設けられ、前記第2プーリを相対回転可能に保持する第2プーリ保持部材と、(e)前記第2プーリの回転トルクを前記転舵ロッドの軸線方向移動力に変換する変換装置と、(f)前記第1プーリ保持部材と前記第2プーリ保持部材との間に湾曲した状態で配設され、前記ケーブルを自身の内周面で案内するアウタチューブと、(g)そのアウタチューブの少なくとも一方の端部と、その少なくとも一方の端部に対応する前記第1プーリ保持部材と前記第2プーリ保持部材との少なくとも一方との間と、前記アウタチューブの中間部の2つに分割された部分の間との少なくとも一方に設けられた弾性部材とを含む(5)項ないし(7)項のいずれか1つに記載の操舵装置。
(14)運転者によって操作される操舵部材と、その操舵部材に加えられる操作力に応じた反力を付与する反力付与装置とを含む操作装置と、
駆動源と、車輪にタイロッドを介して連結された転舵ロッドと、前記駆動源の出力を前記転舵ロッドに伝達する駆動伝達装置とを含む主転舵装置と、
前記転舵ロッドに、前記操舵部材に加えられた操作力を機械的に伝達する操作力伝達装置と
を含む操舵装置であって、
前記操作力伝達装置が、前記操舵部材と前記転舵ロッドとの間に設けられたケーブルを含むことを特徴とする操舵装置。
転舵ロッド、操作力伝達装置等によって、主転舵装置に対して補助転舵装置が構成されると考えることができる。また、主転舵装置と操作装置とを併せて主操舵装置または動力式操舵装置と称し、補助転舵装置と操舵部材とを併せてマニュアル式操舵装置と称することもできる。
本項に記載の操舵装置には、(1)項ないし(13)項のいずれかに記載の特徴を採用することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態である操舵装置について図面に基づいて説明する。本操舵装置は、いわゆる、ステア・バイ・ワイヤ式の操舵装置である。
図1において、10は転舵装置である。転舵装置10は、車輪12を転舵する装置であり、車輪12にタイロッド14を介して連結される転舵ロッド16を含む。転舵ロッド16が軸線方向、すなわち、車両の幅方向に移動させられることによって、車輪12が転舵される。
20は動力式駆動源としての電動モータであり、電力により転舵ロッド16を移動させる。この転舵用モータ20と転舵ロッド16との間には、転舵用モータ20の駆動力を転舵ロッド16に伝達する図示しない駆動力伝達装置が設けられる。駆動力伝達装置は、電動モータ20の回転を転舵ロッド16の軸線方向の直線移動に変換する運動変換装置でもある。
【0010】
30は操舵部材としてのステアリングホイールであり、ステアリングホイール30の回転操作によってステアリングシャフト32も回転させられる。ステアリングシャフト32には、反力付与装置34,接続遮断機構としてのクラッチ36が設けられる。反力付与装置34は、反力付与用の電動モータを含み、ステアリングホイール30に加えられる操舵トルクに抗したトルクを付与する。クラッチ36は、ステアリングホイール30に加えられた操舵トルクを転舵装置10に伝達する状態と伝達しない状態とに切り換えるものであり、例えば、電磁力によって接続状態と遮断状態とに切り換えられる電磁クラッチとすることができる。
本実施形態においては、ステアリングホイール30、反力付与装置34等により操作装置38が構成される。
【0011】
また、ステアリングシャフト32、転舵装置10には、それぞれ、第1プーリ40,第2プーリ42が設けられる。第1プーリ40はステアリングシャフト32に、それと一体的に回転可能に設けられ、第2プーリ42は、運動変換装置を介して転舵ロッド16に係合させられる。これら一対のプーリ40,42の間にはケーブル44、46が巻き付けられる。ケーブル44,46はいずれも、両端部がそれぞれ第1プーリ40,第2プーリ42に固定されたものであり、これらのいずれか一方向の回転時にケーブル44,46のいずれか一方が引っ張られ、逆方向の回転時にケーブル44,46のいずれか他方が引っ張られる。
クラッチ36の接続状態においては、ステアリングホイール30の操作によって第1プーリ40が回転させられる。それによって、ケーブル44または46が巻き取られ、張力が加えられる。第2プーリ42が回転させられ、転舵ロッド16に張力に応じた駆動力が加えられる。
クラッチ36の遮断状態においては、転舵ロッド16の移動に伴って第2プーリ42が回転させられ、ケーブル44,46を介して第1プーリ40が回転させられる。ケーブル44,46に加えられる張力は非常に小さく、第1プーリ40,第2プーリ42は、空回り状態にあると考えることができる。クラッチ36が遮断状態にあるため、ケーブル44,46の摩擦等に起因して発生する力がステアリングホイール30に伝達されることはない。
ケーブル44,46は、図2、3に示すように、アウタチューブ50,52の内周面に配設され、アウタチューブ50,52に案内されて引っ張られる。アウタチューブ50,52は、それぞれの両端部が、車体に固定のプーリ保持部材としてのプーリハウジング54,56に湾曲された状態で固定される。
本実施形態においては、第1、第2プーリ40,42、ケーブル44,46、クラッチ36等により操作力伝達装置58が構成される。
【0012】
本操舵装置には、図4に示すように、制御装置60が設けられる。制御装置60は、CPU62,ROM64,RAM66,I/F68等を含むコンピュータを主体とするものであり、I/F68には、トルクセンサ70,転舵角センサ72等が接続されるともに、転舵用モータ20,反力付与用モータ34,クラッチ36等が図示しない駆動回路を介して接続される。トルクセンサ70は、運転者によってステアリングホイール30に加えられた操舵トルクを検出するものであり、転舵角センサ72は、転舵ロッド16の転舵装置10のハウジング74に対する相対位置(中立位置からの変位量)を検出するものであり、転舵ロッド16の相対位置に基づいて車輪の転舵角が取得される。
【0013】
本実施形態において、システムが正常な場合には、クラッチ36が遮断状態にされる。クラッチ36の遮断状態において、操舵トルクに応じて反力付与用モータ34が制御されるともに、転舵用モータ20が制御される。
ステアリングホイール30に路面反力が加えられない状態にあっても、反力付与用モータ34の制御により操舵反力が加えられる。また、転舵用モータ20は、例えば、車輪12の実際の転舵角が目標転舵角に近づくように制御される。目標転舵角は、操舵トルクに応じて決められるようにしても、操舵トルクと車両の状態(例えば、路面の摩擦係数、車輪のスリップ状態、タイヤの空気圧、車両の旋回状態等)とに基づいて決められるようにしても、操舵トルクとは関係なく車両の状態に基づいて決められるようにすることもできる。なお、転舵用モータ20は、転舵ロッド16に加えられる駆動力が運転者によってステアリングホイール30に加えられる操舵トルクに応じた大きさとなるように制御されるようにすることもできる。
【0014】
システムが異常な場合等には、クラッチ36が接続状態とされ、反力付与用モータ34,転舵用モータ20の制御は行われない。ステアリングホイール30の操作に応じて第1プーリ40が回転させられ、それに応じてケーブル44,46のいずれか一方が引っ張られ、張力が加えられる。第2プーリ42が回転させられ、転舵ロッド16が移動させられる。車輪12がステアリングホイール30の操舵トルクに基づいて転舵される。
また、クラッチ36が遮断状態から接続状態に切り換わった当初には、第1プーリ40,第2プーリ42は、空回り状態にあり、ケーブル44,46は実質的に張力非付与状態にある。クラッチ36が接続状態に切り換わった当初には、運転者によって操舵トルクが加えられても、張力が直ちに加えられることがない。そのため、接続状態への切換え時に、ステアリングホイール30への操舵反力が急激に大きくなることを回避することができ、切換え時の運転者の違和感を軽減することができる。
本実施形態においては、クラッチ36等により作動状態切換装置が構成され、制御装置60の転舵用モータ20を制御する部分等により駆動源制御装置が構成される。クラッチ36は、張力付与状態切換装置でもある。また、転舵装置10、転舵用モータ20、駆動源制御装置等により主操舵装置が構成され、転舵装置10,操作力伝達装置58等により補助操舵装置が構成されると考えることができる。
【0015】
このように、本実施形態においては、補助操舵装置にケーブル44,46が用いられる。ケーブル44,46には、常時、張力が加えられるわけではない。そのため、ケーブル44,46を、耐久性が低いものとすることができる。また、ケーブル44,46の特性に起因する変位初期時の伝達遅れを抑制する必要性が低いため、剛性が大きいものとする必要性が低い。さらに、路面から大きな力が急激に加えられることも少ないため、強度を大きいものとする必要性も低く、曲げ角度等の制限も少ない。また、操舵トルクがケーブルのねじれによって伝達されるわけではないため、ケーブルを、ねじりトルクを伝達可能な剪断強度を有するものとする必要もない。したがって、ケーブル44,46を安価なものとすることができ、操舵装置のコストアップを抑制することができる。また、ケーブル44,46の配索の自由度を高めることができる。
【0016】
なお、上記実施形態においては、転舵用モータ20が、クラッチ36の遮断状態において制御されるようにされていたが、クラッチ36の接続状態においても制御されるようにすることもできる。この場合には、運転者による操作力に基づく駆動力と動力式駆動源20による駆動力とを合わせた駆動力で車輪12を転舵させることができる。運転者の操作力によってアシストされるのである。
また、上記実施形態においては、第2プーリ42が転舵ロッド16に駆動力伝達装置を介して設けられていたが、転舵ロッド16にピニオン、駆動力伝達装置を介して設けられるようにすることができる。この場合には、第2プーリ42の回転に伴ってピニオンが回転させられ、転舵ロッド16が移動させられることになる。
【0017】
また、クラッチ36は不可欠ではない。その場合の一例を図5に示す。
ケーブル44,46の特性を利用すれば、運転者によってステアリングホイール30に加えられた操舵トルクによりケーブル44,46に張力が加えられる張力付与状態と、ステアリングホイール30が操作されても張力が加えられない張力非付与状態とを実現することができる。なお、図5では、アウタチューブ50,52等の図示を省略した。
図6に示すように、ケーブルとシャフトとでは、荷重の伝達特性、すなわち、変位と荷重との関係が異なる。シャフトについては、変位と荷重との間に、変位の増加量に対する荷重の増加量である荷重増加率がほぼ一定である線形の関係があるが、ケーブルについては、荷重増加率が一定でない非線形の関係にある。ケーブルは、初期状態において緩みを有する状態で配索されるのが普通であるため、図7に示すように、変位付与当初においては荷重増加率が非常に小さくなり、緩みが消滅した後に荷重増加率が大きくなるのである。荷重増加率が非常に小さい低剛性域においては、ステアリングホイール30に操舵トルクが加えられても、ケーブル44,46に加えられる張力が非常に小さい張力非付与状態にあり、クラッチの遮断状態と実質的に同じ状態にある。それ以外の領域(低剛性域に対して高剛性域と称することができる)においては、操舵に応じて張力が加えられる張力付与状態にある。この状態は、実質的にクラッチの接続状態と同じ状態にある。このように、クラッチを設けなくても、張力非付与状態と張力付与状態とを実現し得る。
【0018】
また、第1プーリ40は、運転者によるステアリングホイール30の回転操作に応じて回転させられる。第1プーリ40の回転状態は、運転者によるステアリングホイール30の操舵角、操作方向等の操作状態によって決まる。一方、第2プーリ42は、転舵ロッド16の移動に伴って回転させられる。第2プーリ42の回転状態は、転舵ロッド16の移動量、移動方向、すなわち、車輪12の転舵角、転舵方向等の転舵状態によって決まる。以下、第1プーリ40の回転状態を操作状態と称し、第2プーリ42の回転状態を転舵状態と称する。また、第1プーリ40,第2プーリ42においてケーブル44,46の巻き径が同じである場合を想定した回転状態を、それぞれ、操作量、転舵量と称することとする。操作量、転舵量は符号を有する値である。
第1プーリ40の操作状態と第2プーリ42の転舵状態とが正規の関係にある場合(操作量と転舵量とが同じ符号で、絶対値がほぼ同じ大きさである場合、すなわち、仮にケーブルの巻き径が同じ場合において、第1プーリ40と第2プーリ42とが同じ方向にほぼ同じ角速度で回転する場合)には、ケーブル44,46に加えられる張力はほぼ0である。それに対して、操作状態と転舵状態との関係が正規の関係から設定関係以上外れた場合(操作量と転舵量との差の絶対値が設定値以上の場合)には、外れの程度(差の絶対値の大きさ)に応じてケーブル44,46に張力が加えられ、その張力に基づいた駆動力が転舵ロッド16に加えられる。
【0019】
図8,9に示すように、車両の通常の走行状態においては、たいていの場合には、操作量と転舵量との差の絶対値は設定値以下である。ステアリングホイール30が操作されてもケーブル44,46に実質的に張力が付与されない張力非付与状態にある。これらの差の絶対値が設定値以下の状態においては、実質的に、車輪12の転舵状態と関係なくステアリングホイール30を操作することができる。
それに対して、例えば、運転者によるステアリングホイール30の操作速度が非常に大きい場合等には、車輪12の転舵遅れが生じ、操作量と転舵量との差の絶対値が設定値以上になる。これらの差に応じた張力がケーブル44,46に付与され、張力に応じた駆動力が転舵ロッド16に加えられる。ケーブル44,46は張力付与状態にされるのである。転舵ロッド16には、転舵用モータ20による駆動力とこれらの差に応じた駆動力とが加えられ、これらの和の力によって移動させられる。操作状態と転舵状態との関係の正規の関係からの外れの程度によって車輪12の転舵がアシストされるのであり、それによって、車輪の転舵角を、運転者の意図する大きさに修正することができる。なお、転舵用モータ20による駆動力とこれらの差に応じた駆動力とは逆向きの場合もあり、この場合には、操作抑制力として作用する。
この操作量と転舵量との差の絶対値の設定値、すなわち、正規の関係および張力非付与状態にあるとみなし得る正規の関係に基づいて決まる範囲は、ケーブルの有する特性、配索の状態等によって設計上決まる。
本実施形態においては、図7に示すように、低剛性域より張力非付与状態にある領域の方が狭くされている。低剛性域は、荷重が第1設定値以下の領域であるが、張力非付与状態にある領域は、荷重が第1設定値よりさらに小さく、殆ど0である第2設定値より小さい領域とされている。なお、低剛性域と張力非付与状態の領域とは一致すると考えることもできる。
【0020】
さらに、張力付与状態においては、ステアリングホイール30と車輪12との間で力が伝達される状態となり、それによって、ステアリングホイール30に加えられる反力が急激に大きくなる。ステアリングホイール30には、反力付与用モータ34によって加えられる反力と路面反力との両方が加えられることになるのであり、それによって、ステアリングホイール30の操舵が重くなり、過大な操舵を抑制することができる。
本実施形態においては、クラッチ36が設けられないため、コストダウンを図ることができる。また、運転者によって加えられた操舵トルクを確実に車輪に伝達することができる。
【0021】
さらに、図10に示すように、アウタチューブ50,52の途中にそれぞれ弾性部材80、82を設けることができる。アウタチューブ50,52がそれぞれ分割され、これら分割されたアウタチューブ50a,b、アウタチューブ52a,bの間にそれぞれ弾性部材80,82が設けられるのである。弾性部材80の両端部は、それぞれ、アウタチューブ50a,bに相対移動不能に支持され、弾性部材82の両端部は、それぞれ、アウタチューブ52a,bに相対移動不能に支持される。
弾性部材80,82の変形が許容される範囲内においてアウタチューブ50,52の長手方向の移動が許容される。このアウタチューブ50,52の長手方向の移動が許容される範囲内においては、ケーブル44,46に弾性部材80,82の弾性力の大きさを越える張力が付与されることはないのであり、実質的に張力非付与状態にあるとすることができる。
【0022】
また、図10に示すように、弾性部材82の変形量が小さい状態においては、ケーブル46の変位に伴ってアウタチューブ52が移動させられる。アウタチューブ52は移動許容状態にあるのであり、ケーブル46は張力非付与状態にある。
ケーブル46の変位量がさらに増加し、アウタチューブ52が移動するとともに弾性部材82が変形し、変形量が弾性変形限度に達すると、アウタチューブ52の移動が阻止される。弾性部材82の弾性力により、アウタチューブ52は、プーリハウジング54,56の間で固定される。アウタチューブ52が固定状態とされて、ケーブル46が張力付与状態とされる。弾性部材82の弾性変形限度は、アウタチューブ52a,bの端部同士が当接することによって規定されるようにしても、分割されたアウタチューブ52a,bの少なくとも一方にストッパを設け、ストッパ同士あるいは、ストッパとアウタチューブ52a,bの一方の端部とが当接することによって規定されるようにしても、弾性部材としてのスプリングが密着状態にされることによって規定されるようにしてもよい。
このように、弾性部材80,82を設ければ、弾性部材80,82の変形量に対応する分だけ実質的に張力非付与領域を広くすることができる。このことは、ケーブルの低剛性域がみかけ上広くなったと考えたり、ケーブルとアウタチューブとを併せた操作力伝達部材の低剛性域が広くなったと考えたりすることができる。
弾性部材80,82は、図11に示すように、アウタチューブ50,52とプーリハウジング54,56の少なくとも一方との間に設けることもできる。弾性部材80,82は、一端部においてプーリハウジング54,56のいずれか一方に固定され、他端部において、アウタチューブ50,52に固定される。
また、弾性部材80,82の特性を変更すれば、車両の操舵特性を変更することができる。
【0023】
さらに、図12に示すように、アウタチューブ50,52を固定状態と移動許容状態とに切り換え可能なアウタチューブ制御装置100を設けることができる。アウタチューブ制御装置100は、車体に固定の駆動源102と、プーリハウジング54と弾性部材80,82との間に設けられた可動部材104とを含む。可動部材104は、駆動源102の作動により移動させられ、弾性部材80,82を初期状態と変形状態(弾性変形限度まで変形させられた状態)とに切り換える。
本実施形態においては、駆動源102が弾性部材変形用の電動モータとされる。弾性部材変形用モータ102の出力軸106がボールねじ等の運動変換装置を介して可動部材104に係合させられ、電動モータ102の回転に伴って可動部材104が初期位置と変形位置とに直線的に移動させられる。
可動部材104が初期位置にある場合には、弾性部材80,82は初期状態にあり、アウタチューブ50,52が移動許容状態にある。可動部材104が変形位置に移動させられると、弾性部材80,82が変形状態に切り換えられ、アウタチューブ50,52が固定状態にされる。
なお、駆動源は、液圧シリンダとすることもできる。この場合には、可動部材104がピストンにそれと一体的に移動可能に設けられる。ピストンのシリンダに対する相対移動に伴って可動部材104が初期位置と変形位置とに移動させられる。
【0024】
図12に示すように、可動部材104の初期位置においては、前述のように、アウタチューブ52は移動許容状態にあり、ケーブル46は実質的に張力非付与状態(弾性部材の弾性力以上の張力が付与されない状態)にある。弾性部材82がケーブル46の変位により弾性変形限度に達するまで変形させられるとアウタチューブ52が固定状態とされて、ケーブル46が実質的に張力付与状態とされる。
それに対して、可動部材104が弾性部材変形用モータ102によって変形位置に移動させられた状態においては、アウタチューブ50,52は固定状態にされる。ケーブル44,46は張力付与状態にされ、運転者による操作力によってケーブル46に張力が加えられる。
【0025】
弾性部材変形用モータ102は、図13に示すように、制御装置60の指令に基づいて制御される。例えば、操舵トルクの変化速度が設定速度以上の場合、操舵トルクの絶対値が設定値以上の場合等、車輪12を速やかに転舵させる必要がある場合、車輪12を大きな力で転舵させる必要がある場合等に可動部材104が変形位置に移動させられるようにすることができる。
また、路面の摩擦係数が小さい場合等運転者に路面反力を伝達することが望ましい場合に変形位置に移動させられるようにしたり、転舵用モータ20の異常時に変形位置に移動させられるようにしたりすることができる。
また、可動部材104が変形位置に移動させられれば、ステアリングホイール30の中立位置、転舵装置10の中立位置(転舵ロッド16のハウジングに対する中立位置)を確認することができる。可動部材104の変形位置においては、ケーブル44,46は張力付与状態にあるため、操舵トルクの増加に伴って張力が大きくなるはずである。このことを利用すれば、転舵用モータ20の非作動状態において、車両が直進状態にあることが検出されれば、トルクセンサ70,転舵センサ72の0点を修正することができる。
【0026】
本発明は、前記〔発明が解決しようとする課題、課題解決手段および効果〕に記載の態様の他、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態である操舵装置全体を模式的に示す図である。
【図2】上記操舵装置の操作力伝達装置全体を模式的に示す平面図である。
【図3】上記操作力伝達装置全体を模式的に示す側面図である。
【図4】上記操舵装置に含まれる制御装置を表すブロック図である。
【図5】本発明の別の一実施形態である操舵装置全体を模式的に示す図である。
【図6】ケーブルの荷重伝達特性とシャフトの荷重伝達特性とを比較して示す図である。
【図7】第1プーリと第2プーリとの回転状態の差と、ケーブルの伝達力との関係を示す図である。
【図8】転舵量および操作量の変化を示す図である。
【図9】上記操舵装置における操作量と転舵量との差の絶対値とケーブルに加えられる張力との関係を示す図である。
【図10】上記操舵装置の操作力伝達装置の別の態様を示す図である。
【図11】上記操舵装置の操作力伝達装置のさらに別の態様を示す図である。
【図12】上記操舵装置の操作力伝達装置の別の態様を示す図である。
【図13】上記操舵装置の制御装置を示すブロック図である。
【符号の説明】
10転舵装置
16転舵ロッド
20転舵用モータ
30ステアリングホイール
34反力付与用モータ
36クラッチ
38操作装置
40,42プーリ
44,46ケーブル
50,52アウタチューブ
58操作力伝達装置
60制御装置
80,82弾性部材
102駆動源
104可動部材
Claims (6)
- 運転者によって操作される操舵部材と、
車両の車輪を転舵する転舵装置と、
その転舵装置を動力により作動させて、車輪を転舵させる動力式駆動源と、
前記操舵部材と前記転舵装置との間に設けられたケーブルを含み、そのケーブルによって前記操舵部材と前記転舵装置とが接続された状態において、前記操舵部材の操作状態と前記転舵装置の転舵状態との関係が予め定められた設定範囲内にある場合に、前記転舵装置に前記動力式駆動源の駆動力が加えられて前記ケーブルの張力が加えられない張力非付与状態にあるが、前記操作状態と前記転舵状態との関係が前記設定範囲から外れた場合に、前記ケーブルの張力と前記動力式駆動源の駆動力との両方が加えられる張力付与状態となる操作力伝達装置と
を含むことを特徴とする操舵装置。 - 前記転舵装置が、前記車輪にタイロッドを介して連結された転舵ロッドを含み、
前記操作力伝達装置が、(a)前記操舵部材の操作トルクが付与される第1プーリと、(b)その第1プーリとの間に前記ケーブルが巻き掛けられた第2プーリと、(c)その第2プーリの回転トルクを前記転舵ロッドの軸線方向移動力に変換する変換装置と、(d)前記第1プーリと第2プーリとの間に湾曲した状態で配設され、前記ケーブルを自身の内周面で案内するアウタチューブと、(e)そのアウタチューブの両端を固定する固定状態と、少なくとも一端の長手方向の移動を許容する移動許容状態とに切り換え可能なアウタチューブ制御装置とを含む請求項1に記載の操舵装置。 - 前記操作力伝達装置が、(a)前記車両の車体に固定され、前記第1プーリを相対回転可能に保持する第1プーリ保持部材と、(b)前記転舵装置本体に設けられ、前記第2プーリを相対回転可能に保持する第2プーリ保持部材と、(c)前記アウタチューブの少なくとも一方の端部と、その少なくとも一方の端部に対応する前記第1プーリ保持部材と前記第2プーリ保持部材との少なくとも一方との間に設けられた弾性部材とを含み、前記アウタチューブ制御装置が、前記弾性部材を変形させることにより、前記固定状態と前記移動許容状態とに切り換える弾性部材変形部を含む請求項2に記載の操舵装置。
- 前記弾性部材変形部が、操舵部材の操作速度が設定速度以上の場合,操作トルクが設定値以上の場合および路面の摩擦係数が設定値より小さい場合のうちの少なくとも1つの場合に、前記移動許容状態から前記固定状態に切り換える弾性状態切換部を含む請求項3に記載の操舵装置。
- 前記弾性部材変形部が、前記動力式駆動源が異常である場合に、前記固定状態とする切換部を含む請求項3または4に記載の操舵装置。
- 前記転舵装置が、前記車輪にタイロッドを介して連結された転舵ロッドを含み、
前記操作力伝達装置が、(a)前記操舵部材の操作トルクが付与される第1プーリと、(b)前記第1プーリとの間に前記ケーブルが巻き掛けられた第2プーリと、(c)前記車両の車体に固定され、前記第1プーリを相対回転可能に保持する第1プーリ保持部材と、(d)前記転舵装置本体に設けられ、前記第2プーリを相対回転可能に保持する第2プーリ保持部材と、(e)前記第2プーリの回転トルクを前記転舵ロッドの軸線方向移動力に変換する変換装置と、(f)前記第1プーリ保持部材と前記第2プーリ保持部材との間に湾曲した状態で配設され、前記ケーブルを自身の内周面で案内するアウタチューブと、(g)そのアウタチューブの少なくとも一方の端部と、その少なくとも一方の端部に対応する前記第1プーリ保持部材と前記第2プーリ保持部材との少なくとも一方との間と、前記アウタチューブの中間部の2つに分割された部分の間との少なくとも一方に設けられた弾性部材とを含む請求項1に記載の操舵装置。
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