JP4073221B2 - セラミック焼成用道具材及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミック製造の技術分野に属するものであり、特に、アルミナからなる成形素体からアルミナ質セラミック焼成体を得る際の焼成において前記成形素体を載置するのに使用されるセラミック焼成用道具材及びその製造方法に関するものである。
【0002】
本発明のセラミック焼成用道具材は、例えば、成形素体を焼成して着色アルミナ質セラミック焼成体たとえば半導体装置用パッケージ基材を得るのに好適に利用される。
【0003】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来、半導体装置用パッケージ基材として着色アルミナ質セラミック(例えば褐色アルミナ)からなるものが使用されている。
【0004】
着色アルミナ質セラミックの焼成の際には、焼成に伴う成形素体の変形をできるだけ少なくするために、成形素体を焼成用道具材と呼ばれるセラミック製の載置台上に載置する。
【0005】
焼成用道具材は、骨材と結合材とから構成される。結合材は、アルミナ微粉と粘土微粉との混合物であり、焼成時の反応によってムライトが形成され、これにより骨材どうしの結合力が生ぜしめられ、焼成用道具材としての機械的強度が得られる。ムライトは、材質自体の特性として、高温においても強度が低下しないという特長を持ち、そのため焼成用道具材の高温におけるたわみ変形を抑制する作用を有しており、半導体装置用パッケージ基材などのセラミック製電子部品を焼成するための道具材の結合材として使用されている。
【0006】
しかし、ムライト結合材は、高温時とくに還元性雰囲気下において、それを構成する酸化物であるアルミナ(Al2 O3 )及びシリカ(SiO2 )への分解が生じやすく、分解により生成したシリカが、道具材使用回数の増加とともに次第に焼成用道具材の表面に堆積していき、被焼成物が着色アルミナ質セラミック成形素体である場合には、この生成したシリカとの反応により、焼成用道具材と接触する被焼成物の表面が、早期に(即ち焼成用道具材の使用回数が少ないうちに)変質しやすくなるという難点がある。変質は、通常、斑点状に生ずる。この様な変質が生ずると、成形体である電子部品の特性(例えば絶縁性)が所要のものから変化し、甚だしい場合には電子部品が特性劣化による欠陥品となる。
【0007】
この様な問題の発生を回避するため、焼成用道具材において、骨材及び結合材ともに、被焼成物焼成時に変質の生じにくいアルミナのみを用いることが考えられるが、その場合には被焼成物焼成時の高温クリープ変形の結果である反りが生じやすくなり、被焼成物焼成時に平坦性を求められる電子部品焼成用の道具材としての寿命は短いものとなる。
【0008】
そこで、本発明は、被焼成物焼成時における変形が少なく、しかも被焼成物焼成時にアルミナ質セラミック製成形素体を変質させることの殆どない焼成用道具材を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、以上の如き目的を達成するものとして、
大気雰囲気下での1700〜1830℃の範囲内の温度での焼成を経て製造され、
電融アルミナ及び/又は焼結アルミナからなる粒径10〜300μmの第1の骨材と、電融ムライトからなる粒径10〜300μmの第2の骨材と、結合材とを含んでなり、該結合材はローソーダ仮焼アルミナのみからなり粒径10μm未満であり、
全体におけるAl2O3/SiO2比[重量による]が85/15〜95/5の範囲内にあり、
骨材/結合材比[重量による]が80/20〜60/40の範囲内にあることを特徴とするセラミック焼成用道具材、
が提供される。ここで、骨材重量は、第1の骨材の重量及び第2の骨材の重量の合計である。
【0011】
また、本発明によれば、以上の如き目的を達成するものとして、
上記のセラミック焼成用道具材を製造する方法であって、電融アルミナ及び/又は焼結アルミナからなる第1の骨材形成用粉体と、電融ムライトからなる第2の骨材形成用粉体と、ローソーダ仮焼アルミナのみからなる結合材形成用粉体と、有機系粉体バインダーと、液体バインダーとを混合して得られる混合物を、混練し、乾燥し、大気雰囲気下で1700〜1830℃の範囲内の温度で焼成することを特徴とする、セラミック焼成用道具材の製造方法、
が提供される。
【0013】
第1の骨材として使用される電融アルミナは、JIS−R2001に耐火物用語255として記載されており、高アルミナ質原料を電気炉で溶融したものである。また、第1の骨材として使用される焼結アルミナは、JIS−R2001に耐火物用語254として記載されており、高アルミナ質原料を窯炉で焼結したものである。ムライトは、JIS−R2001に耐火物用語249として記載されており、3Al2 O3 /2SiO2 の基本的な化学式を持ったアルミナの珪酸塩である。第2の骨材として使用される電融ムライトは、ムライト組成の原料を電気炉で溶融したものである。
【0014】
仮焼は、JIS−R2001に耐火物用語102として記載されており、生原料を物理的または化学的に変化させるために予備的に行う熱処理であり、仮焼アルミナはAl(OH)3 を窯炉で焙焼してAl2 O3 にしたものである。結合材として使用されるローソーダ仮焼アルミナは、Na2 O含有率が0.1重量%以下の仮焼アルミナである。尚、本明細書では、Na2 O含有率が0.1重量%を超えるものをハイソーダ仮焼アルミナという。
【0015】
本発明のセラミック焼成用道具材は、第1及び第2の骨材の粒径が10〜300μmであり、結合材の粒径が10μm未満であるので、均質で十分な強度と安定性とを有する。第1及び第2の骨材の粒径が小さすぎると、クリープ特性に劣り焼成時の変形が大きくなる傾向にある。一方、第1及び第2の骨材の粒径が大きすぎると、平滑な表面が得られず被焼成物にキズやピンホールを生じさせやすくなる傾向にある。
【0016】
また、結合材として粒径10μm未満のローソーダ仮焼アルミナからなるものを用いているので、低融物を形成することがなく、従って被焼成物との反応による該被焼成物の変質を発生させるようなことが生じにくい。
【0017】
ローソーダ仮焼アルミナからなる結合材は、粒径10μm未満で広範囲の粒度分布を持つものが、高充填性従って高密度による高い結合力と低い焼成収縮性を発揮できるので好ましい。ここで、広範囲の粒度分布とは、粒径2μm未満の範囲のものが10〜30重量%;粒径2μm以上且つ4μm未満の範囲のものが30〜50重量%;粒径4μm以上且つ6μm未満の範囲のものが10〜30重量%;粒径6μm以上且つ8μm未満の範囲のものが10〜30重量%;粒径8μm以上且つ10μm未満の範囲のものが5〜25重量%であるものをいう。また、高充填性アルミナとは、2.30以上の高い密度(嵩密度)を示すものをいう。
【0018】
また、本発明においては、第1及び第2の骨材の合計重量と結合材の重量との比である骨材/結合材比が80/20〜60/40の範囲内にあるのが好ましい。骨材及び結合材の合計重量に対する結合材重量の割合が40%を越える場合は、焼成収縮が大きくなり、そのため反りや変形が大きくなって、安定した製造ができなくなる傾向にある。一方、骨材及び結合材の合計重量に対する結合材重量の割合が20%未満の場合は、十分な結合力が得られず、所要の強度が得られなくなり、焼成用道具材の表面が粗くなり脱粒しやすくなる傾向にある。
【0019】
また、本発明においては、焼成用道具材全体におけるAl2 O3 重量とSiO2 重量との比であるAl2 O3 /SiO2 比が85/15〜95/5の範囲内にあるので、被焼成物焼成時に被焼成物における斑点状変質の発生が防止され、被焼成物焼成時の高温下でも耐クリープ性が良好であり、被焼成物の変形が防止される。Al2 O3 /SiO2 比においてSiO2 が過剰の場合には、被焼成物焼成時に被焼成物における斑点状変質が発生しやすくなる。また、Al2 O3 /SiO2 比においてAl2 O3 が過剰の場合には、被焼成物焼成時の高温下で耐クリープ性が低下して反り変形を生じやすくなり、これにより被焼成物も変形しやすくなる。
【0020】
道具材の形状は、例えば平板状であるが、これに限定されることはない。道具材の寸法は、平板状の場合には、例えば厚さ5〜12mm、縦横100〜300×100〜300mmである。
【0021】
本発明のセラミック焼成用道具材の製造方法において使用される有機系粉体バインダーとしては、ポリビニルアルコール、デキストリン、メチルセルロースが例示される。また、本発明のセラミック焼成用道具材の製造方法において使用される液体バインダーとしては、ポリカルボン酸アンモニウム水溶液、ワックスエマルジョン、ジエチレングリコールが例示される。混合物の混練にはミキサーが使用され、成形には振動成形機又は油圧プレスが使用される。
【0022】
本発明においては、結合材としてムライトを使用していないので、被焼成物焼成時の高温下においてもムライト分解によるシリカ発生の問題がなくなり、被焼成物における斑点状変質の発生が防止される。また、本発明では、骨材の一部に電融ムライトを用いているので、被焼成物焼成時の高温下でも耐クリープ性が良好であり、従って被焼成物における変形の発生が防止される。また、この電融ムライトは、粗粒のためムライトの分解が少なく、被焼成物の変質も少ない。
【0023】
本発明のセラミック焼成用道具材の製造方法においては、大気雰囲気下で1700〜1830℃の範囲内の温度で焼成する。焼成温度を1700℃未満とすると、焼成不足となり、道具材の十分な強度が得られず、たわみ抵抗性に劣り、また表面より脱粒が生じやすく、被焼成物に悪影響を与える傾向にある。一方、1830℃を越える焼成温度では、焼成時の収縮が大きくなり、得られる道具材の変形が大きくなる傾向にある。以上のように、道具材の焼成温度が1700℃未満の場合または1830℃を越える場合には、安定した道具材を得ることができなくなる。
【0024】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明する。
【0025】
実施例1〜8:
粒径10〜300μmの電融アルミナからなる第1の骨材形成用粉体と、粒径10〜300μmの電融ムライトからなる第2の骨材形成用粉体と、粒径10μm未満で広範囲の粒度分布[粒径2μm未満の範囲のものが18重量%;粒径2μm以上且つ4μm未満の範囲のものが34重量%;粒径4μm以上且つ6μm未満の範囲のものが21重量%;粒径6μm以上且つ8μm未満の範囲のものが17重量%;粒径8μm以上且つ10μm未満の範囲のものが10重量%]を持つ密度2.4のローソーダ仮焼アルミナからなる結合材形成用粉体と、ポリビニルアルコールからなる有機系粉体バインダーと、ポリカルボン酸アンモニウム水溶液からなる液体バインダーとを混合して、混合物を得た。この混合物中には粘土は含まれていなかった。
【0026】
この混合物を、ミキサーで混練し、振動成形機で100×100×5mmの寸法の板の形状に成形し、乾燥し、大気雰囲気下で以下の表1に示す温度で焼成し、焼成用道具材を得た。なお、同時に、たわみ変形測定用の試験片を得るために、20×100×5mmの寸法の試料を上記焼成用道具材より切り出した。
【0027】
得られた焼成用道具材の組成(第1骨材、第2骨材及び結合材の重量、Al2 O3 /SiO2 比、並びに骨材/結合材比)を以下の表1に示す。これらの焼成用道具材中には粘土は含まれていなかった。
【0028】
得られた焼成用道具材を用い、その上に褐色アルミナ質セラミックからなる成形素体を載置し、大気中で1400℃にて焼成し、室温まで冷却した。得られた焼成体を除去し、続いて、同一の焼成用道具材を用いて、同様にして、新たな成形素体を載置し、以下、同様に焼成を繰り返した。
【0029】
何回目の焼成で得られた焼成体の焼成用道具材との接触面に初めて斑点状の変質が発生したかを調べた。その結果を以下の表1に示す。尚、焼成体の道具材との接触面に一旦斑点状の変質が現われた場合には、それ以降の焼成においても斑点状の変質が現われることが確認されており、従って、最初に変質が現われた焼成回数を道具材の寿命の目安とすることができる。
【0030】
上記たわみ変形用試験片を用い、スパン90mmにて下面側から支持し、上面中央部に200gの重錘を載せ、電気炉中で1400℃にて10時間保持し、クリープ変形したたわみ変形量(上面周辺部の高さと上面中央部の高さとの差)を測定した。以下の表1にその結果を示す。
【0031】
また、表1に総合評価を示す。総合評価の判定基準は、次のとおりとした:
◎:変質発生までの焼成回数が100回を超え、且つ、焼成用道具材のたわみ変形が1.5mm未満;
○:変質発生までの焼成回数が50回以上、且つ、焼成用道具材のたわみ変形が3mm未満(但し◎以外);
×:変質発生までの焼成回数が49回以下、又は、焼成用道具材のたわみ変形が3mm以上。
【0032】
比較例1〜8:
第1の骨材、第2の骨材及び結合材として以下の表2に示されるものを表2に記載される重量で用いたことを除いて、実施例1〜8と同様に実施した。ハイソーダ仮焼アルミナの密度は2.0であった。得られた結果を、実施例1〜8と同様にして、表2に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
以上の実施例では第1の骨材として電融アルミナを用いているが、本発明においては、第1の骨材として電融アルミナに代えて又はそれと併用して焼結アルミナを用いることができる。それらの場合も、第1の骨材として電融アルミナを用いた場合と同等な作用効果が得られることが確認された。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、電融アルミナ及び/又は焼結アルミナからなる粒径10〜300μmの第1の骨材と、電融ムライトからなる粒径10〜300μmの第2の骨材と、ローソーダ仮焼アルミナからなる粒径10μm未満の結合材との組み合わせを用い、しかも全体におけるAl2 O3 /SiO2 比を85/15〜95/5の範囲内としたので、被焼成物焼成時の高温においてもムライトの分解によるシリカの揮発が十分に抑制され、かくして被焼成物に対する斑点状変質の発生を抑制することが可能な焼成用道具材が提供される。
Claims (2)
- 大気雰囲気下での1700〜1830℃の範囲内の温度での焼成を経て製造され、
電融アルミナ及び/又は焼結アルミナからなる粒径10〜300μmの第1の骨材と、電融ムライトからなる粒径10〜300μmの第2の骨材と、結合材とを含んでなり、該結合材はローソーダ仮焼アルミナのみからなり粒径10μm未満であり、
全体におけるAl2O3/SiO2比[重量による]が85/15〜95/5の範囲内にあり、
骨材/結合材比[重量による]が80/20〜60/40の範囲内にあることを特徴とするセラミック焼成用道具材。 - 請求項1のセラミック焼成用道具材を製造する方法であって、電融アルミナ及び/又は焼結アルミナからなる第1の骨材形成用粉体と、電融ムライトからなる第2の骨材形成用粉体と、ローソーダ仮焼アルミナのみからなる結合材形成用粉体と、有機系粉体バインダーと、液体バインダーとを混合して得られる混合物を、混練し、乾燥し、大気雰囲気下で1700〜1830℃の範囲内の温度で焼成することを特徴とする、セラミック焼成用道具材の製造方法。
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