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JP4074680B2 - セルロース誘導体およびその製造方法 - Google Patents
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JP4074680B2 - セルロース誘導体およびその製造方法 - Google Patents

セルロース誘導体およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セルロースを構成するグルコース残基6位の1級水酸基がカルボキシル基に酸化されたグルクロン酸残基で構成されたセルロース誘導体およびその製造方法、並びにカルボキシル化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
セルロースは地球上に最も多量に存在する有機化合物であり、その安全性、強度などの利点を生かし、種々の分野で用いられている。また、化学改質によって新たな機能を付加した様々なセルロース誘導体が利用されている。代表的な例として、セルロースに親水性を付与して水溶性とするために、セルロースの水酸基を接点としてカルボキシル基を化学的に導入することが挙げられる。より具体的には、原料セルロースのアルカリ処理により得られるアルカリセルロース中間体を、イソプロピルアルコールなどの有機溶媒中、モノクロロ酢酸と反応させてカルボキシメチルセルロース(CMC)を得ることが知られている。しかし、この反応では、モノクロロ酢酸が反応系内に存在する水と反応して多量の副反応物を生じ、一般的に反応効率が低い。また、毒性を有する試薬であるモノクロロ酢酸を使用する必要があることに加えて、カルボキシル基を位置選択的に均一に導入することが困難であるという品質上の問題も解決されていない。
【0003】
一方、セルロースの水酸基に官能基を導入するのではなく、セルロースの酸化反応処理によって親水性を付与させる試みも行われている。例えば、クロロホルム中に分散させたセルロースにN2 4 を添加することにより、セルロースのグルコース残基6位の1級水酸基をカルボキシル基に酸化することが知られている(ヤッケル(Yackel)ら、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイティ(J. Am. Chem. Sci),64巻,p.121-127,(1942))。しかし、この方法では、副反応が避けられず、均一な酸化を達成できない。また、猛毒であるN2 4 を使用することから、工業的に実用性に乏しい。
【0004】
また、過ヨウ素酸による酸化反応によってセルロース分子中のC2位とC3位の間を切断し、アルデヒド基を導入する方法も知られている。しかし、この方法では、分子量低下や副反応を抑制できないため、実用的な方法とは言い難い。
【0005】
水溶性ラジカル試薬である2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ・ラジカル(以下、単に「TEMPO」という場合がある)を触媒量添加すると、次亜塩素酸の存在下で、水溶性糖類(例えば、デンプンなど)の1級水酸基が酸化してカルボキシル基が生成することが知られている(ノーイ(Nooy)ら、カーボハイドレイト・リサーチ(Carbohydrate Research),269巻,p.89-98,(1995))。
しかし、この方法を水不溶性であるセルロースに適用すると、グルコース残基の1級水酸基の8割程度までしか酸化されず、反応生成物の水への溶解性は1割程度と非常に低いレベルにとどまる。すなわち、この方法では、水不溶性セルロースを水溶化できないことが報告されている(パン(Pahn)ら、ジャーナル・オブ・カーボハイドレイト・ケミストリー(J. Carbohydrate Chem),15巻,p.819-830,(1996))。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、高い親水性や水溶性が付与されたセルロース誘導体(酸化セルロース)およびその製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、グルコース残基の1級水酸基が選択的に酸化されたグルクロン酸残基を有するセルロース誘導体(酸化セルロース)およびその製造方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、水不溶性セルロースであっても高い親水性や水溶性を付与できるセルロース誘導体の製造方法を提供することにある。
本発明の別の目的は、より安全な試薬を用いて、温和な反応条件下で、セルロースを均一かつ効率よくカルボキシル化でき、高い水溶性を付与できる方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題に鑑み、TEMPOを用いた水溶性セルロース誘導体について鋭意検討した結果、TEMPOによる酸化反応に先立って、前処理として、セルロースをアルカリ処理することにより、水溶性セルロース誘導体が簡便かつ効率よく得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のセルロース誘導体(酸化セルロース)は、グルコース残基の1級水酸基が酸化されたグルクロン酸残基で構成されている。このセルロース誘導体は、高い水溶性を示す。
このようなセルロース誘導体は、下記式
【0008】
【化2】
Figure 0004074680
(式中、環Aは、環を構成する窒素原子とともに他のヘテロ原子を有していてもよい非芳香族性5又は6員環で構成された環を示す)
で表されるN−オキシル化合物(オキソアンモニウム塩)の存在下、酸化剤を用いて、▲1▼アルカリで処理したセルロース、又は▲2▼再生セルロースを酸化することにより得ることができる。前記式で表されるN−オキシル化合物には、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン N−オキシルなどが含まれるが、N−オキシル化合物は反応中間体として系中に存在していてもよい。また、N−オキシル化合物による酸化は、実質的に相当するオキソアンモニウムイオンが反応中間体であるとされており、この反応中間体を介在する反応であれば、他の先駆体を経てもよい。アルカリ処理はアルカリ金属成分を用いて行うことができる。このアルカリ処理により、セルロースの結晶構造・微細構造を変化させ、後続する酸化効率(グルコース残基6位へのカルボキシル基の導入効率)を著しく向上できる。そのため、酸化の程度に応じて、カルボキシル基を均一かつ効率よく導入でき、親水性や水溶性の程度を調整でき、高度に酸化することにより、水溶性のセルロース誘導体(酸化セルロース)を得ることができる。
前記酸化反応は、前記N−オキシル化合物と、臭化物又はヨウ化物との共存下で行うのが有利である。臭化物又はヨウ化物としては、水中で解離してイオン化可能な化合物、例えば、臭化アルカリ金属やヨウ化アルカリ金属などが使用できる。酸化剤としては、ハロゲン、次亜ハロゲン酸,亜ハロゲン酸や過ハロゲン酸又はそれらの塩、ハロゲン酸化物、窒素酸化物、過酸化物など、目的の酸化反応を推進し得る酸化剤であれば、いずれの酸化剤も使用できる。
なお、前記2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン N−オキシル(TEMPO)などのN−オキシル化合物は、オキソ・イオン、オキソ・カチオンやオキソ・ラジカルと称する場合があるが、本明細書では、これらの化合物および対応するオキソアンモニウム化合物を「N−オキシル化合物」と総称する。
【0009】
【発明の実施の形態】
[セルロース]
セルロースとしては、β−1,4−グルカン構造を有する多糖類である限り、高等植物由来のセルロース、動物由来のセルロース(ホヤセルロースなど)、バクテリア由来のセルロース、再生セルロース(レーヨンなど)などのいずれであってもよい。通常、セルロースとしては、高等植物由来のセルロース、例えば、木材繊維(針葉樹、広葉樹などの木材パルプなど)、種子毛繊維(リンターなどの綿花、ボンバックス綿、カポックなど)などが使用される。好ましいセルロースには、木材パルプ(サルファイト法、クラフト法などの慣用の方法で針葉樹、広葉樹などから得られる木材パルプ)、コットンリンターが含まれる。これらのセルロースには、さらに機械的力による叩解処理を施して、反応性を高めてもよい。
なお、レーヨン,セロファンなどの再生セルロースを原料とする場合には、アルカリ前処理を行ってもよいが、アルカリ処理を行わなくても水溶性生成物を得ることができる。
【0010】
セルロースとしては、α−セルロース含有量の高い高純度セルロースを用いる場合が多く、α−セルロース含有量は、通常、70〜100%(好ましくは80〜100%)程度である。工業的には、通常、α−セルロース含量85〜99%程度のセルロースが使用される。なお、用途によって、既にエステル化,エーテル化などによって化学修飾されたセルロースであってもよい。例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロースエーテルが市販されているが、これらはすでに製造段階で下記のアルカリ処理が施されている。このように、予めアルカリ処理された化学修飾セルロースにおいても、アルカリ処理を行ってもよいが、通常、アルカリ処理を行う必要はなく、このようなセルロース誘導体もアルカリ処理されたセルロースと言うことができる。
【0011】
[アルカリ処理]
セルロースのアルカリ処理は、慣用の方法、例えば、セルロースに対してアルカリ水溶液を散布したり湿潤させる方法、アルカリ水溶液にセルロースを浸漬又は懸濁する方法により行なうことができる。なお、浸漬物や懸濁液を撹拌又は振盪することにより処理効率を高めることもできる。
アルカリとしては、通常、アルカリ金属成分、例えば、アルカリ金属水酸化物(水酸化ナトリウム,水酸化カリウム,水酸化リチウムなど)、アルカリ金属炭酸塩(炭酸ナトリウム,炭酸カリウムなど)、アルカリ金属炭酸水素塩(炭酸水素ナトリウム,炭酸水素カリウムなど)などが使用できる。これらのアルカリ金属化合物は単独で又は二種以上混合して使用してもよい。好ましいアルカリは、アルカリ金属水酸化物、特に水酸化ナトリウムである。
このようなアルカリによる処理(マーセル化)によりアルカリセルロースが生成し、後述する酸化反応が円滑に進行する。
【0012】
アルカリ水溶液の濃度は、特に制限されず、広い範囲(例えば、5〜40重量%程度)から選択できるが、9〜30重量%(例えば、10〜30重量%)、好ましくは12〜20重量%(例えば、15〜19重量%)、特に15〜20重量%(例えば、17〜18重量%)程度である。なお、アルカリ金属成分としてナトリウム成分を用いた場合、ナトリウムセルロースは、ナトリウムセルロースI(Na-cell I)、ナトリウムセルロースII(Na-cell II)、ナトリウムセルロースIII(Na-cell III)、ナトリウムセルロースIV(Na-cell IV)のいずれであってもよいが、通常、ナトリウムセルロースI及び/又はナトリウムセルロースIIである。
アルカリの使用量は、セルロースのグルコース単位に対して、例えば、1〜200倍モル(例えば、1.2〜170倍モル)、好ましくは1.5〜150倍モル、さらに好ましくは2〜100倍モル程度の範囲から選択できる。浸漬や懸濁によりアルカリ処理する場合、アルカリの使用量は、セルロースのグルコース単位に対して、過剰量、例えば、5〜150倍モル、好ましくは10〜120倍モル、特に50〜100倍モル程度である。
【0013】
アルカリ処理の温度は、特に限定されず、例えば、0〜50℃程度の範囲である場合が多く、0℃〜30℃、好ましくは室温(10〜30℃程度)、さらに好ましくは15〜25℃(特に20℃付近)で行なうのが有利である。アルカリ処理時間は、結晶性、重合度、表面積などの原料セルロースの性状によって異なり、特に限定されないが、通常、10分〜6時間、好ましくは30〜3時間、特に1〜2時間程度である。
【0014】
アルカリ処理終了後、水洗した後、又はそのまま、適当な酸成分(塩酸,硫酸,硝酸など)でアルカリを中和し、セルロースを分離し水洗した後、引き続き酸化反応に供される。なお、アルカリを中和し、セルロースを分離(単離)・洗浄することなくそのまま酸化反応に供してもよい。また、アルカリ処理されたセルロースは、通常、乾燥することなくそのまま酸化反応に供される。
【0015】
[酸化又はカルボキシル化反応]
酸化剤を用いて、▲1▼アルカリ前処理したセルロース、又は▲2▼再生セルロースを酸化する酸化工程において、本発明では、触媒成分として、少なくとも下記式(1)で表されるN−オキシル化合物の存在下で酸化反応を行う。
【0016】
【化3】
Figure 0004074680
(式中、環Aは、環を構成する窒素原子とともに他のヘテロ原子を有していてもよい非芳香族性5又は6員環で構成された環を示す)
好ましい態様では、前記N−オキシル化合物(オキソアンモニウム塩)と、臭化物やヨウ化物とを組み合わせた触媒成分の共存下、酸化剤を用いて、▲1▼アルカリ処理したセルロース、又は▲2▼再生セルロースを酸化する。このような酸化反応により、グルコース単位の1級水酸基(グルコース単位6位のヒドロキシメチル基)を効率よく酸化し、上記ヒドロキシメチル基をカルボキシル基に変換して、グルコース単位をグルクロン酸単位に変換できる。
【0017】
前記式(1)において、環Aは、窒素原子とともに他のヘテロ原子(窒素原子、酸素原子、硫黄原子)を有していてもよい5又は6員環を有していればよく、5又は6員環は芳香族性環などと縮合していてもよい。このような環Aとしては、例えば、ピロリジン環、イミダゾリジン環、インドリン環、イソインドリン環、カルバゾール環などの非芳香族性5員環を有する環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環などの非芳香族性6員環を有する環が例示できる。好ましい環Aには、ピペリジン環が含まれる。
【0018】
好ましい化合物は、下記式(1a)、特に下記式(1b)で表されるオキソアンモニウム化合物(N−オキシル化合物)が含まれる。
【0019】
【化4】
Figure 0004074680
(式中、R1 ,R2 ,R3 およびR4 は同一又は異なって炭素数1〜4程度のアルキル基を示し、環Aは前記に同じ)
なお、酸化反応において、前記式(1),式(1a),式(1b)で表される化合物は、セルロースの酸化により下記式(2),式(2a),式(2b)
【0020】
【化5】
Figure 0004074680
(式中、R1 ,R2 ,R3 ,R4 ,環Aは前記に同じ)
で表されるN−ヒドロキシ化合物となり、N−ヒドロキシ化合物は反応系で還元されて前記式(1),式(1a),式(1b)で表される化合物に転換されるようである。そのため、N−オキシル化合物とオキソアンモニウム化合物,N−ヒドロキシ化合物は反応系において実質的に等価であると考えられる。
【0021】
1 ,R2 ,R3 およびR4 で表されるアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル基などが例示でき、通常、メチル基である。前記式(1a)で表される化合物には、2,2,6,6−テトラC1-3 アルキル−1−ピペリジニルオキシ・カチオン(2,2,6,6−テトラC1-3 アルキル−1−ピペリジン N−オキシル)、特にTEMPO(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン N−オキシル)が含まれる。なお、前記TEMPOなどのN−オキシル化合物は、水中では2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ・カチオンなどのカチオンラジカルとして機能するようである。
【0022】
前記式(1)で表されるN−オキシル化合物の使用量は、酸化反応に対して活性が発現する触媒量である限り特に制限されず、例えば、▲1▼アルカリ処理セルロース又は▲2▼再生セルロース100重量部に対して、0.1〜15重量部、好ましくは0.5〜10重量部、さらに好ましくは1〜5重量部程度であり、2〜8重量部程度であってもよい。セルロースのグルコース単位に対するN−オキシル化合物の使用量は、例えば、0.001〜0.5倍モル、好ましくは0.005〜0.1倍モル、特に0.01〜0.05倍モル程度である。
【0023】
前記N−オキシル化合物を用いる酸化反応条件などは特に限定されず、セルロースの性状、使用する設備などによって最適化されるべきであるが、臭化物やヨウ化物との共存下で酸化反応を行うと、温和な条件下でも酸化反応を円滑に進行させることができ、カルボキシル基の導入効率を大きく改善できる。
【0024】
臭化物やヨウ化物としては、水溶性であり、水中で解離してイオン化可能な種々の化合物(特に、無機塩や金属ハロゲン化物)が使用できる。臭化物やヨウ化物は、前記酸化剤により酸化されて水中でOX- アニオン(式中、Xは臭素原子又はヨウ素原子を示す)を生成し、このアニオンは、前記N−ヒドロキシ化合物から前記N−オキシル化合物の再生に関与するようである。
【0025】
臭化物やヨウ化物としては、例えば、アンモニウム塩(臭化アンモニウム、ヨウ化アンモニウム)、臭化又はヨウ化アルカリ金属(臭化リチウム、臭化カリウム、臭化ナトリウムなどの臭化物、ヨウ化リチウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウムなどのヨウ化物)、臭化又はヨウ化アルカリ土類金属(臭化カルシウム、臭化マグネシウム、臭化ストロンチウムなどの臭化物、ヨウ化カルシウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化ストロンチウムなどのヨウ化物)などが例示できる。これらの臭化物やヨウ化物は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
好ましい化合物には、臭化アルカリ金属(臭化ナトリウムなど)又はヨウ化アルカリ金属(ヨウ化ナトリウムなど)が含まれる。
【0026】
臭化物及び/又はヨウ化物の使用量は、酸化反応を促進できる範囲で選択でき、例えば、▲1▼アルカリ処理セルロース又は▲2▼再生セルロース100重量部に対して0.1〜100重量部、好ましくは1〜80重量部、さらに好ましくは10〜60重量部程度であり、5〜75重量部程度であってもよい。セルロースのグルコース単位に対する臭化物及び/又はヨウ化物の使用量は、例えば、0.1〜2倍モル、好ましくは0.2〜1.5倍モル程度であり、0.5〜1倍モル程度であってもよい。
【0027】
前記触媒成分の存在下、酸化剤で酸化すると、温和な条件(例えば、常温常圧など)であっても、セルロースにカルボキシル基を効率よく導入できる。
酸化剤としては、ハロゲン(塩素,臭素,ヨウ素など)、ハロゲン含有酸素酸又はその塩[次亜ハロゲン酸又はその塩(次亜塩素酸又はその塩、次亜臭素酸又はその塩、次亜ヨウ素酸又はその塩など)、亜ハロゲン酸又はその塩(亜塩素酸又はその塩、亜臭素酸又はその塩、亜ヨウ素酸又はその塩など)、過ハロゲン酸又はその塩(過塩素酸又はその塩、過ヨウ素酸又はその塩など)など]、ハロゲン酸化物(例えば、ClO,ClO2 ,Cl2 6 ,BrO2 ,Br3 7 などのハロゲン化酸素)、窒素酸化物(例えば、NO,NO2 ,N2 3 など)、過酸化物(過酸化水素、過酢酸など)などが含まれる。これらの酸化剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0028】
次亜ハロゲン酸塩としては、次亜塩素酸塩[例えば、次亜塩素酸アンモニウム、アルカリ金属塩(次亜塩素酸リチウム,次亜塩素酸カリウム,次亜塩素酸ナトリウムなど)、アルカリ土類金属塩(次亜塩素酸カルシウム,次亜塩素酸マグネシウム,次亜塩素酸ストロンチウムなど)など]、これらに対応する次亜臭素酸塩(次亜臭素酸リチウム,次亜臭素酸カリウム,次亜臭素酸ナトリウムなど)や次亜ヨウ素酸塩(次亜ヨウ素酸リチウム,次亜ヨウ素酸カリウム,次亜ヨウ素酸ナトリウムなど)が例示できる。
亜ハロゲン酸塩としては、亜塩素酸塩[例えば、亜塩素酸アンモニウム、アルカリ金属塩(亜塩素酸リチウム,亜塩素酸カリウム,亜塩素酸ナトリウムなど)、アルカリ土類金属塩(亜塩素酸カルシウム,亜塩素酸マグネシウム,亜塩素酸ストロンチウムなど)など]、これらに対応する亜臭素酸塩や亜ヨウ素酸塩が例示できる。
過ハロゲン酸塩としては、過塩素酸塩[例えば、過塩素酸アンモニウム、アルカリ金属塩(過塩素酸リチウム,過塩素酸カリウム,過塩素酸ナトリウムなど)、アルカリ土類金属塩(過塩素酸カルシウム,過塩素酸マグネシウム,過塩素酸ストロンチウム,過塩素酸バリウムなど)など]、これらに対応する過ヨウ素酸塩(過ヨウ素酸リチウム,過ヨウ素酸カリウム,過ヨウ素酸ナトリウムなど)などが例示できる。
好ましい酸化剤には、ハロゲン含有酸素酸又はその塩、特に次亜ハロゲン酸塩(好ましくは次亜塩素酸塩)、なかでも次亜塩素酸アルカリ金属塩などが含まれる。
【0029】
酸化剤の使用量は、セルロースに対するカルボキシル基の導入量、親水性や水溶性の程度などに応じて選択でき、例えば、セルロースのグルコース単位に対して0.1〜20倍モル、好ましくは0.5〜15倍モル、さらに好ましくは1〜10倍モル程度の範囲から選択できる。
水溶性セルロース誘導体を得る場合には、酸化剤の使用量は、セルロースのグルコース単位に対して過剰量、例えば、▲1▼前記アルカリ処理セルロース又は▲2▼再生セルロース100重量部に対して、100〜500重量部、好ましくは150〜400重量部、さらに好ましくは200〜300重量部程度である。セルロースのグルコース単位に対する酸化剤の使用量は、通常、過剰モル、例えば、1.2〜10倍モル、好ましくは1.5〜7倍モル、さらに好ましくは2〜5倍モル程度である。
【0030】
酸化反応は、通常、水を溶媒とする水性の反応系で行われる。すなわち、非水溶性セルロースを用いる場合、酸化反応は、▲1▼アルカリ処理したセルロース又は▲2▼再生セルロースが懸濁した不均一反応系で行う場合が多く、必要に応じて撹拌しながら行うことができる。
【0031】
本発明の方法は温和な条件であっても酸化反応を円滑に進行させることができるという特色がある。そのため、反応温度は適当な範囲、例えば、0℃〜100℃程度の範囲から適当に選択できる。反応温度は、例えば、0℃〜50℃、好ましくは室温(10〜30℃程度)、さらに好ましくは15〜25℃程度の低温であってもセルロースを効率よく酸化できる。また、反応は加圧下で行ってもよいが、常圧で行うのが反応操作上有利である。
【0032】
なお、反応の進行に伴ってカルボキシル基が生成し、反応液のpH低下が認められる。そのため、酸化反応を高いレベルにまで進行させるためには、反応系は、アルカリ性領域、例えば、pH9〜12(例えば、10〜12)、好ましくは10〜11程度に維持するのが有利である。反応系のpH調整は、アルカリ(水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ金属成分を含む水溶液など)を反応系に適宜添加することにより行うことができる。
【0033】
代表的な酸化反応は、▲1▼アルカリ処理を施したセルロース、又は▲2▼再生セルロースを水に懸濁し、所定量のN−オキシル化合物(TEMPOなど)、アルカリ金属臭化物(臭化ナトリウムなど)やアルカリ金属ヨウ化物(ヨウ化ナトリウムなど)、および酸化剤(例えば、次亜塩素酸ナトリウムなどの次亜塩素酸塩など)を添加し、必要に応じて撹拌しながら0℃〜室温で行なうことができる。
【0034】
酸化反応の進行に伴ってセルロースが反応系に溶解するとともに、反応液のpHが低下する。そのため、pH低下の進行が認められなくなった時点を反応終点とすることもでき、所望する親水性や水溶性の程度に応じて、所定のpH値への到達を基準にして反応終点とすることもできる。なお、酸化反応においては、必要に応じて酸化剤(次亜塩素酸ナトリウムなど)をさらに追加して酸化反応をより効率的に進行させてもよい。
【0035】
反応終了後、反応混合液に、貧溶媒(例えば、メタノール,エタノールなどのアルコール類)を添加し、生成物を沈殿させた後、遠心分離又は濾過によって単離し、さらに洗浄液(エタノール/水混合溶媒など)で洗浄した後、乾燥することによって生成物が得られる。
本発明のセルロース誘導体は、グルクロン酸残基の導入により親水性、特に水溶性が大きく改善され、通常、中性乃至アルカリ性領域、例えば、pH7以上(pH7〜14程度)、特にpH8以上(pH8〜12程度)において水溶性である。
【0036】
本発明のセルロース誘導体は、種々の用途、例えば、製紙用添加剤、糊剤、接着剤、乳化剤や保護コロイド、懸濁剤、合成洗剤のビルダー、粘性安定剤(乳剤、クリーム、ジャムなど安定剤)、結合剤、粘調剤などとして広い用途に利用できる。
【0037】
【発明の効果】
本発明では、酸化反応により、高い親水性や水溶性のセルロース誘導体、特にグルコース残基の1級水酸基が選択的に酸化されたグルクロン酸残基を有するセルロース誘導体を得ることができる。また、本発明の方法では、水不溶性セルロースであっても高い水溶性を付与できる。特に、より安全な試薬を用いて、温和な反応条件下で、セルロースを簡便かつ効率よくカルボキシル化でき、高い水溶性を付与できる。
【0038】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
実施例1
原料セルロースとして針葉樹漂白サルファイトパルプ(α−セルロース含量95%)1gを17.5重量%水酸化ナトリウム水溶液100g中に懸濁させ、時々撹拌しながら室温で2時間アルカリ処理した。次いで、懸濁液のpHが7となるように塩酸を添加し、濾過によってセルロースを単離し、さらに水洗・濾別を3回繰り返し、アルカリ処理セルロースを得た。
TEMPO 0.02gと臭化ナトリウム0.24gを含む水溶液100mlに、絶乾換算で0.5gの上記アルカリ処理セルロースを未乾燥のまま添加し、撹拌下にセルロースを分散させた。その後、次亜塩素酸ナトリウム(和光純薬(株)製、商品名アンチホルミン)4.6gを添加し、酸化反応を開始した。酸化反応では、反応液のpH10〜11を維持するように、0.4N水酸化ナトリウム水溶液を適宜添加しながら、室温で50分間反応した。酸化反応によりセルロースは完全に反応系中に溶解した。反応終了後、反応液にエタノールを添加し、反応生成物を沈殿させ、遠心分離によって生成物を回収した。回収物を70%エタノール水溶液を用いて3回洗浄・回収操作に供した後、99%エタノールで洗浄・回収の後、真空乾燥によって反応生成物を得た(収率95%)。
【0039】
反応生成物を重水素水に溶解した後、常法に従って、13C−NMRを測定し、化学構造を調べたところ、図1に示す結果を得た。図1から明らかなように、生成物のスペクトルにおいて、178ppmにカルボキシル基に由来するピークが認められ、グルコース単位の1級水酸基のC6位に相当する62ppmのピークは完全に消失していた。このことから、グルコース単位のC6位の1級水酸基は完全にカルボキシル基に酸化されている。
【0040】
また、水に対する溶解性を調べるため、生成物の1重量%水溶液を調製し、目視により判定したところ、透明な溶液であり、反応生成物が水溶性であることが確認された。
【0041】
実施例2
原料セルロースとして針葉樹漂白パルプ(α−セルロース含量85%)を用いた以外、実施例1と同様にしてアルカリ処理および酸化反応を行なったところ、実施例1と同様の13C−NMRスペクトルを示す反応生成物が得られた。この反応生成物の水に対する溶解性は、実施例1と同様であった。
【0042】
実施例3
原料セルロースとして広葉樹漂白パルプ(α−セルロース含量97%)を用いた以外、実施例1と同様にしてアルカリ処理および酸化反応を行なったところ、実施例1と同様の13C−NMRスペクトルを示す反応生成物が得られた。この反応生成物の水に対する溶解性は、実施例1と同様であった。
【0043】
実施例4
原料セルロースとして広葉樹漂白パルプ(α−セルロース含量87%)を用いた以外、実施例1と同様にしてアルカリ処理および酸化反応を行なったところ、実施例1と同様の13C−NMRスペクトルを示す反応生成物が得られた。この反応生成物の水に対する溶解性は、実施例1と同様であった。
【0044】
実施例5
セルロース原料としてリンターセルロース(東洋濾紙パルプ)を用いた以外、実施例1と同様にしてアルカリ処理および酸化反応を行なったところ、実施例1と同様の13C−NMRスペクトルを示す反応生成物が得られた。この反応生成物の水に対する溶解性は、実施例1と同様であった。
【0045】
実施例6
セルロース(針葉樹漂白サルファイトパルプ、α−セルロース含量95%)1gを水8.3g中に離解し、アルカリ濃度が17.5重量%となるように水酸化ナトリウムペレットを加え、時々撹拌しながら1時間処理した。水100mlを加えた後、濃塩酸約4mlを加えて中和した後、TEMPO、臭化ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウムを実施例1と同様の割合で添加し、実施例1に記載の方法と同様に酸化反応を行った。得られた反応生成物は、実施例1と同様の13C−NMRスペクトルを示し、水に対する溶解性も、実施例1と同様であった。
【0046】
実施例7
酸化反応におけるTEMPOの添加量を0.01gとし、反応時間を2時間とした以外、実施例1と同様にしてアルカリ処理および酸化反応を行なったところ、実施例1と同様の13C−NMRスペクトルを示す反応生成物が得られた。この反応生成物の水に対する溶解性は、実施例1と同様であった。
【0047】
実施例8
アルカリ処理することなく、繊維長5mmに切断したレーヨン繊維1gを、実施例1と同様にして酸化反応に供したところ、セルロースは反応系中に完全に溶解した。
【0048】
比較例
TEMPO 0.02gと臭化ナトリウム0.24gを含む水溶液100mlに、乾燥セルロース(針葉樹漂白サルファイトパルプ、α−セルロース含量95%)0.5gを加え、撹拌下にセルロースを分散させた。その後、次亜塩素酸ナトリウム(和光純薬(株)製、商品名アンチホルミン)4.6gを添加し、酸化反応を行なったところ、セルロースは一部膨潤するものの、実施例1のように反応系中へ完全溶解せず、水溶性セルロース誘導体は得られなかった。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は実施例1における13C−NMRスペクトルである。

Claims (8)

  1. 下記式
    Figure 0004074680
    (式中、環Aは、環を構成する窒素原子とともに他のヘテロ原子を有していてもよい非芳香族性5又は6員環で構成された環を示す)
    で表されるN−オキシル化合物の存在下、酸化剤を用いて、(1)アルカリで処理したセルロース、又は(2)再生セルロースを酸化するセルロース誘導体の製造方法。
  2. N−オキシル化合物が、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン N−オキシルである請求項記載のセルロース誘導体の製造方法。
  3. 10〜30重量%水酸化ナトリウム水溶液でセルロースをアルカリ処理する請求項又はに記載のセルロース誘導体の製造方法。
  4. 15〜19重量%水酸化ナトリウム水溶液でセルロースをアルカリ処理する請求項のいずれかの項に記載のセルロース誘導体の製造方法。
  5. 2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン N−オキシルと、水中でイオン化可能な臭化物又はヨウ化物との共存下、酸化剤を用いて、(1)アルカリ処理したセルロース、又は(2)再生セルロースを酸化する請求項のいずれかの項に記載のセルロース誘導体の製造方法。
  6. 臭化物又はヨウ化物が、臭化アルカリ金属又はヨウ化アルカリ金属である請求項記載のセルロース誘導体の製造方法。
  7. 酸化剤が、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、過ハロゲン酸又はそれらの塩、ハロゲン酸化物、窒素酸化物、過酸化物から選択された少なくとも一種である請求項又はに記載のセルロース誘導体の製造方法。
  8. アルカリ処理したセルロースを、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン N−オキシルと、臭化アルカリ金属又はヨウ化アルカリ金属との共存下、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、過ハロゲン酸およびそれらの塩から選択された少なくとも一種の酸化剤を用いて酸化し、グルコース残基の6位にカルボキシル基を導入するカルボキシル化方法。
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