JP4076766B2 - 発熱性外毒素に対する広スペクトルアンタゴニストおよびワクチン - Google Patents
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Description
発明の分野
本発明は発熱性外毒素中のタンパク質ドメインと構造的に関係のあるペプチドに関する。本発明のペプチドは該発熱性外毒素により媒介されるT細胞の活性化に拮抗し、かつ、該外毒素により誘導される毒性ショックに対して防御免疫を惹起することができる。本発明はさらに、該外毒素により誘導される毒性ショックに対して防御免疫を惹起することができる、毒性ショックの治療または予防のための、該ペプチドを含有する医薬製剤、および該ペプチドを含有するワクチンに関する。
【0002】
発明の背景
発熱性外毒素族は超抗原毒とも呼ばれ、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)および化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)により産生される。黄色ブドウ球菌外毒素(SE)からなる外毒素は摂取後の嘔吐および下痢を徴候とする主要なヒト食中毒症例を引き起こす[Schlievert, J Infect Dis 167:997 (1993)]。黄色ブドウ球菌は自然界に広く見られ、しばしばヒトと関わっている。SE族の5つの主要な血清型(SEA〜SEEおよびSEGで示される)のうち、SEBはが最も優勢である[Marrack and Kappler, Science 248:705 (1990)]。SEBはまた外科的または傷害的創傷に不随し得る非月経性毒性ショック症候群のヒト症例、ならびに特に子供が攻撃を受けやすいインフルエンザ患者の気道のウイルス感染の主要な原因として認識されている[Schlievert (1993) 同上; Tseng et al., Infect Immun 63:2880 (1995)]。毒性ショック症候群はその最も重篤な形態においてはショックおよび子をもたらす[Murray et al., ASM News 61:229 (1995); Schlievert (1993)同上]。より一般には、アトピー性皮膚炎[Schlievert (1993)同上]および川崎病症候群[Bohach et al., Crit Rev Microbiol 17:251 (1990)]では、SEA〜SEEおよび毒性ショック症候群毒1(TSST−1)を含むブドウ球菌外毒素族のメンバーの膜が毒性ショック症候群に関連づけられている。
【0003】
エアゾル暴露後にヒトにおいて致死的なショックを引き起こす可能性があり、またSEBが比較的容易に大量生産できるということから、SEBは生物兵器として使用され得るという観点がある[Lowell et al., Infet Immun 64:1706 (1996)]。SEBは主としてその致死性の点で潜在的な生物兵器であると考えられる。しかしSEBはまた、その強力な嘔吐および下痢誘発力により、一時的であっても戦闘力の有効性を著しく損ない、それによって通常の軍事手段に攻撃を受けやすくし得る活動不能剤(incapacitating agent)である。言うまでもないことであるが、SEBの有害な作用は軍事的局面に関してのみならず、概して攻撃しなければならない。
【0004】
SEBは感染した生物に逆説応答を誘導する有毒な細胞分裂促進剤であり、一方では免疫系の強力な刺激剤であり、他方では免疫応答によって妨げられない、感染性細菌の増殖を可能とし得る絶大な免疫抑制剤である[Hoffman, Science 248:685 (1990); Smith and Johnson J Immunol 115:575 (1975); Marrack et al., J Exp Med 171:455 (1990); Pinto et al., Transplantation 25:320 (1978)]。細胞の免疫応答中に、インターロイキン−2(IL−2)、インターフェロン−γ(IFN−γ)および腫瘍壊死因子−β(TNF−β)で例示されるTh1型サイトカイン遺伝子発現の活性化と、他方、CD8細胞およびその他の細胞サブセットによる[Ketzinel et al., Scand J Immunol 33:593 (1991); Arad et al., Cell Immunol 160:240 (1995)]、またTh2細胞、IL−4およびIL−10由来の阻害性サイトカインによる[Mosmann and Coffman, Annu Rev Immunol 7:145 (1989)]、その細胞媒介性の抑制との間で、抗原または細胞分裂促進剤により動的な相互作用が誘導される。
【0005】
SEBは発熱性外毒素族のメンバーであり[Herman et al., Ann Rev Immunol 9:745 (1991)]、細菌外毒素およびMlsタンパク質からなる。これらの抗原毒は通常の抗原の20,000倍高い齧歯類またはヒトT細胞産生を刺激する。このように、SEBはいくつかのマウスで全T細胞の30〜40%を活性化する[Marrack and Kappler (1990)同上]。実際に、SEBの毒性にはT細胞を必要とし、T細胞またはSEB反応性T細胞を欠いたマウスは、正常な動物において体重減少および死をもたらすSEB用量でも影響を受けない[Marrack et al. (1990)同上; Marrack and Kappler (1990)同上]。正常抗原とは異なり、SEBおよび関連の有毒細胞分裂促進剤はプロセッシングおよび抗原提示を必要としないが[Janeway et al., Immunol Rev 107:61 (1989)]、T細胞受容体β鎖(V−β)の可変部分の特異的部位に結合することでT細胞を活性化する[Choi et al., Nature 346:471 (1990)]。T細胞受容体の毒素との相互作用に重要な領域はV−βドメインの外面の、通常の抗原認識に関与しない領域にある[Choi et al., Proc Natl Acad Sci U.S.A. 86:8941 (1989)]。同時に、発熱性外毒素はMHCクラスII分枝と直接結合し[Scholl et al., Proc Natl Acad Sci U.S.A. 86:4210 (1989)]、従って主としてCD4+T細胞に作用するが、CD8+細胞もまた活性化される[Fleischer and Schrezenmeier, J Exp Med 167:1697 (1988); Fraser, Nature 339:221 (1989); Misfeldt, Infect Immun 58:2409 (1990)]。現在のところ、発熱性外毒素は抗原とクラスII MHCおよびT細胞受容体との通常の相互作用を迂回することから、極めて効果的にT細胞を活性化するということで一致を見ている[Janeway, Cell 63:659 (1990)]。もう1つの見解としては、発熱性外毒素は最小量の通常抗原の作用を助け、従ってそれを著しく過大にするコリガンドとして作用するということである[Janeway (1990)同上]。
【0006】
SEBおよび関連の外毒素の毒性はサイトカイン、特にIL−2、IFN−γおよび腫瘍壊死因子(TNF)の迅速かつ過剰な産生を刺激するこれらの分子の能力に関連するものと考えられる。IL−2、IFN−γおよびTNF−βは活性型Tヘルパー1型(Th1)細胞から分泌され、一方、TNF−βはTh1細胞、単球およびマクロファージにより分泌される。突然産生された高レベルのこれらサイトカインは毒素関連の毒性において中心的な病因として関連づけられており[Schard et al., EMBO J 14:3292 (1995)]、毒性ショックをもたらす血圧の急激な低下を引き起こすと考えられる。
【0007】
研究はSEによるT細胞の強い刺激のもっともらしい説明を与えているが、これらの毒素にはまたなぜ強い免疫抑制性もあるのかはまだ明らかでない。それらは、抗体の産生およびプラーク形成細胞の発生をはじめ、一次T細胞応答とB細胞応答の双方に低下をもたらす[Hoffman (1990)同上; Smith and Johnson (1975)同上; Marrack et al. (1990)同上; Pinto et al. (1978)同上; Ikejima et al., J Clin Invest 73:1312 (1984); Poindexter and Schlievert, J Infect Dis 153:772 (1986)]。
【0008】
ヒトのブドウ球菌毒素感受性はマウスの100倍優っている。黄色ブドウ球菌由来のもう1つの発熱性外毒素である毒性ショック症候群毒1、すなわちTSST−1はヒトT細胞を刺激して、鍵となるサイトカインIL−2、IFN−γおよびTNF−βを0.1pg/ml未満発現させるが、一方、ネズミ細胞は約10pg/mlを要する[Uchiyama et al., J Immunol 143:3173 (1989)]。マウスはそれらのT細胞レパートリーから、最もよく反応するV−β鎖を示す細胞を欠如させることによって、またはこれらのV−β遺伝子を欠失させることによって有毒な細胞分裂促進剤に対して相対耐性を発達させたようである[Morrack and Kappler (1990)同上]。かかる欠損はヒトにおいては検出されず、かなり矛盾のあるものとなっている。
【0009】
活動不能および致死の可能性のあるヒトにおけるSEB(および同じ超抗原族の外毒素)の作用は、民間人であれ軍人であれ、SEBの予防、SEBに暴露した者の治療および安全なSEBワクチンを必要としている。
【0010】
この必要性は危急のものであるにもかかわらず、防御または治療方法はまだない。従ってD−ガラクトサミンに感作したSEB中毒のネズミモデルにおいて(あるものはSEB毒素による筋肉内抗原投与に基づき、またあるものは粘膜のSEB暴露を用いた鼻内抗原投与に基づく)、プロテオソーム−SEBトキソイドワクチンでマウスを保護できたが、ここではSEBトキソイド成分は生物学的に活性な完全なタンパク質分子を30日間ホルマリンで処理することで調製したものであった[Lowell et al. (1996)同上]。本発明者らは、毒素から防御するというより、SEB分子内の特定のペプチドドメインに対して形成された抗体がSEBのヒトT細胞を刺激する能力を高めることを示した[WO98/29444; Arad et al., Nature Medicine, 6(4):414-421 (2000)]。SEBに暴露した人において防御免疫を付与することができないだけでなく、毒性応答の著しい悪化をもたらし得る特定のSEB感作抗体を惹起する危険性という観点から、この発見はSEBトキソイドのワクチンとしての使用を制限するものである。
【0011】
他の研究者らはそれぞれ30個のアミノ酸長のオーダーで、一連の重複するSEBペプチドを合成することで、完全なSEBタンパク質分ではなく断片の使用することに頼ろうとした[Jett et al., Infect Immun 62:3408 (1994)]。これらのペプチドを用いてウサギで抗血清を作製し、次ぎにSEBにより誘導されたヒトT細胞およびマクロファージの混合物の増殖を阻害するその能力を調べた。この努力によっても有効なまたは特異的な阻害応答は得られなかった。このように、SEBタンパク質分子のアミノ酸113〜144を含むペプチドpSEB(113〜144)、ならびにアミノ酸130〜160、151〜180および171〜200にわたるペプチドはそれぞれ、SEBにより誘導されたリンパ球増殖を若干阻害した抗血清を2.5倍まで惹起した[Jett et al. (1994)同上]。
【0012】
いく人かの研究者がペプチドワクチンの作出を試みた。例えば、Mayordomo et al. [J Exp Med 183:1357 (1996)]はネズミ腫瘍の治療のためにワクチンとしてp53由来のペプチド変異体を用いた。Huges and Gilleland [Vaccine 13:1750 (1995)]は緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の該膜タンパク質エピトープを提示する合成ペプチドを用いてネズミ急性肺炎モデルで緑膿菌感染から防御することができた。ヒトのおいてペプチド免疫を用いる試みでは、Brander et al. [Clin Exp Imunol 105:18 (1996)]が、CD8+/CD4+T細胞標的化複合ワクチンがメモリーCD4+T細胞応答を再刺激したが、細胞傷害性Tリンパ球を誘導することはできなかったことを示した。
【0013】
外毒素の主な供給源はすでに記載したように黄色ブドウ球菌と化膿連鎖球菌である。肉食細菌である化膿連鎖球菌は、T細胞の過剰な活性化というよく似た作用様式で一連の異なる毒素を産生する。黄色ブドウ球菌は主成分としてのSEBに次いで、SEA、SEC類、SEEおよびTSST−1(毒性ショック症候群毒1)も産生し、化膿連鎖球菌は主要な毒素としてSPE Aの他、その他の発熱性外毒素を産生する。従って、ブドウ球菌性の食中毒、そしてより深刻な生物戦争、または化膿連鎖球菌により引き起こされる毒性ショックでは、毒素混合物に遭遇する。かかる混合物の組成は確信を持って予測することはできない。生物戦争の最悪のシナリオでは、免疫学的研究に好ましいような単一の精製された発熱性外毒素ではなく、例えば黄色ブドウ球菌を培養することにより産生されるような手に入りやすくて未精製の自然の毒素混合物が用いられるのが必然である。
【0014】
明らかにこの複雑性は広域の発熱性外毒素アンタゴニストならびに広域ワクチンの開発を要求するものである。感作能がなく、致死量の毒素から試験動物を保護できるアンタゴニストが本発明者らにより見出された[WO98/29444およびArad et al., (2000)同上]。これらのアンタゴニストは発熱性外毒素のあるドメインに構造的に関連するペプチドであり、このドメインは外毒素内に中央折り返し点があり、SEBのドメイン番号をもとにして、β鎖7で始まり、β鎖7は短いβ鎖8を介してα−へリックス4につながり、α−へリックス4内で終わる。このドメインはMHCクラスII分子との相互作用は知られていない。
【0015】
これらのアンタゴニストペプチドは同一人が所有するWO98/29444およびArad et al., Nature Medicine, 6(4):414-421 (2000)に詳細に記載され、その内容は引用することによりそのまま本明細書の一部とされる。
【0016】
このようにWO98/29444は特に、SEBに対してのみならず、例えばSEA、SEC、TSST−1など、広範囲のSE毒系に対して防御を付与できるワクチンを開示している。さらにこの公報WO98/29444はSEBまたは他のいずれもの発熱性外毒素により誘導される毒性ショックの予防、および暴露した患者の治療を開示している。発明者らによる先行技術は、SEBならびに他のいずれもの発熱性外毒素の作用に拮抗する薬剤の設計を示し、その解毒剤は急性食中毒の医学的治療にも、毒性ショックおよび関連の病状の際に生命を守ることにも大きな価値を持つ。これまで発明者らによって開発されたペプチドはさらに、急性毒性ショック、および例えば偶発性食中毒によるものであり得るかかる毒素の有害な作用の応急処置または短期予防および救急予防に用いられる、またそれらに対する長期予防のための発熱性外毒素による中毒に対する免疫向けワクチンに用いられる、対発熱性外毒素アンタゴニストであることが示されている。
【0017】
さらに改良を加えた毒素アンタゴニストの研究では、発明者らは、in vitroヒト免疫応答における発熱性外毒素作用の遮断、厳密には毒素により媒介されるIFN−γmRNAの誘導の阻害、および多くの発熱性外毒素により媒介される応答に対する防御免疫の惹起において該公知のペプチドアンタゴニストよりも優れた新規な14マーのペプチド新規開発し、これが本発明の主な目的であり、広域ワクチンとしての開発の可能性を示唆するものである。
【0018】
本発明のこの目的またその他の目的は以下の記載により明らかとなる。
【0019】
発明の概要
本発明は配列番号1のアミノ酸配列を有する単離、精製ペプチドに関し、ここではp14とも呼ぶ。本発明のp14ペプチドは毒素により媒介されるT細胞の活性化に拮抗し、および/または発熱性外毒素または発熱性外毒素の混合物によって誘導される毒性ショックに対して防御することができる。
【0020】
本発明はさらに、毒素により媒介されるT細胞の活性化に拮抗し、かつ発熱性外毒素または発熱性外毒素混合物によって誘導される毒性ショックから防御することができるp14の誘導体に関する。かかる誘導体は本明細書では機能的誘導体と呼ぶ。本発明のペプチドの特異的な機能的誘導体は、そのN末端およびC末端の双方にD−Alaを有するp14(配列番号2、本明細書ではp14Aとも呼ぶ)、およびそのN末端にリシル−パルミトイル残基を有するp14の誘導体(配列番号3、p14−LPとも呼ぶ)である。
【0021】
本発明のペプチドおよび誘導体は毒素により媒介されるT細胞の活性化に拮抗し、かつ、例えばSEB、SEA、SEC、TSST−1、SPEA、SPEC、SED、SEE、SEH、SEC1、SEC2、SEC3から選択される発熱性外毒素または発熱性外毒素の混合物によって誘導される毒性ショックに対して防御することができる。これらの外毒素は本発明のペプチドおよび誘導体により標的とされる構造ドメインを共有しているが、このドメインはSEBのドメイン番号をもとにして、β鎖7内で始まり、β鎖7は短いβ鎖8を介してα−へリックス4につながり、α−へリックス4内で終わる。本発明のペプチドおよび誘導体は種々の毒素におけるこれらドメインの配列と少なくとも30%の相同性を有している。
【0022】
このように発熱性外毒素は黄色ブドウ球菌または化膿連鎖球菌によって産生される細菌の外毒素であり得る。
【0023】
本発明によれば、このペプチドはそのN末端を介してラウリル−システイン(LC)またはリシル−パルミトイル残基と、および/またはそのC末端を介してシステイン(C)残基と、または該ペプチドを免疫化のためのアジュバントと結合するのに好適なその他の残基とさらに結合してもよい。これらには機能的誘導体を得るために使用できるいくつかの修飾がある。
【0024】
さらに、このペプチドはオリゴマー、特にダイマー、トリマーの形態であってもよいし、あるいは拘束されたコンホメーションであってもよく、ここで拘束コンホメーションは内部架橋、小範囲の環化、延長またはその他の化学修飾によって得られる。
【0025】
本発明のペプチドおよび誘導体はIL−2、IFN−γまたはTNF−β遺伝子によってコードされる、発熱性毒素誘導性のmRNAの発現を阻害することができる。
【0026】
さらに、本発明のペプチドおよび誘導体は、免疫化された個体において、好適な免疫アジュバントの存在下で、発熱性毒素により媒介されるT細胞の活性化を遮断する抗体の産生を惹起することができる。
【0027】
第2の態様では、本発明は、少なくとも本発明のペプチドもしくはその機能的誘導体、またはそれらの任意の混合物の治療上有効量を有効成分として含んでなる、毒素により媒介されるT細胞の活性化の治療または短期の予防のための医薬組成物を提供する。本発明のペプチドおよび誘導体は発熱性外毒素または発熱性外毒素の混合物により誘導される毒性ショックに対して防御することができる。
【0028】
さらに本発明は、少なくとも本発明のペプチドもしくはその機能的誘導体、またはその混合物の免疫学的有効量を有効成分として含んでなる、少なくとも1種の発熱性外毒素により誘導される毒性ショックに対して長期免疫を付与するワクチンを提供する。
【0029】
さらに本発明は、本発明の単離、精製ペプチドまたは誘導体を含んでなる、少なくとも1種の発熱性外毒素により誘導される活動不能の予防および/または治療のための組成物に関する。
【0030】
また、急性毒性ショック、および例えば少なくとも1種の発熱性外毒素により誘導される偶発性食中毒によるものであり得る有害な作用の応急処置または短期予防のための方法も本発明により提供され、該方法はかかる治療を必要とする患者に、治療上有効量の本発明の医薬組成物、あるいは治療上有効量の本発明のペプチドもしくはその機能的誘導体またはその混合物を投与することを含んでなる。
【0031】
さらに本発明は、有効免疫量の本発明のワクチンを患者に投与することを含んでなる、発熱性外毒素または発熱性外毒素混合物により誘導される毒性ショックに対して長期免疫を付与する方法を提供する。
【0032】
なおさらに本発明は、本発明の単離・精製ペプチドまたは誘導体を含んでなる、少なくとも1種の発熱性外毒素により誘導される活動不能の予防または治療方法を提供する。
【0033】
発明の具体的な説明
本発明は発熱性外毒素により誘導される毒性ショックの長期および短期の治療および予防のために有効な薬剤、特に配列番号1のアミノ酸配列を有する14マー(mer)のペプチドに向けられ、発熱性外毒素内の特定ドメインおよびその機能的誘導体に関する。ペプチドの生物学的特性は以下のいくつかの基準によって評価できる。
【0034】
1.SEBアゴニスト活性の欠損
正常なヒト血液提供者からの末梢血単核細胞(PBMC)において、他のいずれの誘導剤も存在しない状態で、IL−2およびIFN−γ遺伝子によりコードされるmRNAの発現を誘導する能力によってアッセイされる。
【0035】
2.発熱性外毒素アンタゴニスト活性
PBMCにおいて、SEBなどの発熱性外毒素によって誘導される、IL−2、IFN−γおよびTNF−β遺伝子によりコードされるmRNAの発現を阻害する能力によってアッセイされる。
【0036】
3.免疫原性
免疫化したウサギにおいて、SEBと結合する免疫グロブリンG(IgG)抗体の産生を惹起するペプチドの能力によってアッセイされる。
【0037】
4.免疫原性
免疫化したウサギにおいて、ヒト細胞免疫応答に対するSEBなどの発熱性外毒素の有害な作用を遮断する抗体の産生を惹起するペプチドの能力によってアッセイされ、PBMCにおいてSEBによる、またはTSST−1もしくはより関連のある毒素SEAなどその他の発熱性外毒素によるIL−2およびIFN−γmRNAの誘導を阻害する、ペプチドに対して生じたウサギ血清の能力によってモニターされる。
【0038】
5.抗SEBワクチンなどのワクチンの活性
D−ガラクトサミンマウスモデルにおいて、致死量のSEBに対して免疫化動物を保護するペプチドの能力によってアッセイされる。
本発明者らはこれら5つの基準の各々を満たすペプチドを得た。かかるペプチドのいくつかはWO98/29444に開示されている。発明者らは今般、特定の14マーのペプチドおよびその誘導体が先行技術のペプチドに比べて改良された特性を示すことを見出した。このように、本発明の特定の具体例では、14マーのペプチドアンタゴニストを設計した。このペプチドはin vitroにおいてヒト免疫応答に対するSEBならびにその他の発熱性外毒素の作用を遮断し、厳密にはSEBにより媒介されるIL−2、IFN−γおよびTNF−β mRNAの誘導を阻害する。このペプチドは急性毒性ショック、および例えば発熱性外毒素により誘導される偶発性食中毒によるものであり得る有害な作用の治療に使用できることは明らかである。
【0039】
本発明のペプチドは発熱性外毒素のドメインのアミノ酸配列と相同なアミノ酸配列を有し(このドメインは外毒素中で中央折り返しを形成し、SEBのドメイン番号をもとにして、β鎖7で始まり、β鎖7内は短いβ鎖8を介してα−へリックス4につながり、α−へリックス4内で終わる)、毒素アゴニスト活性を持たず、かつ、毒素により媒介されるTリンパ球の活性化に拮抗することができる。この領域における相同性は他の発熱性外毒素中の対応領域とせいぜい約30%またはそれ未満でさえあるという低いものである。具体的には、本発明のペプチドp14はアミノ酸配列VQYNKKKATVQELD(配列番号1)を有し、先行技術のp12(配列番号4)の配列YNKKKATVQELDの前のN末端にSEB配列の2個の付加的アミノ酸(VQ)を有する。p14A(配列番号2)は、先行技術のp12A(配列番号5)(WO98/29444)と同様に、より強いプロテアーゼ耐性のためのD−アラニンをその両末端に隣接させている。
【0040】
表1は本願に記載される特定のペプチドおよびそれらの配列番号をまとめたものである。
【表1】
【0041】
もう1つの具体例では、本発明のペプチドアンタゴニストはSEB、SEAおよびTSST−1に対してヒトリンパ性細胞を防御する抗体を惹起することができ、このことは発熱性毒素に対する広域な防御免疫を付与し得ることを示している。しかし、特定の他のSEBタンパク質ドメインに由来するペプチドに対して生じた抗体は、毒素から防御するというよりももしろ、IL−2およびIFN−γmRNAのより高い誘導によって発現されるように、実際にはSEBおよびSEAに対するヒトPBMCの応答を高めた。これらSEBアンタゴニストペプチドでマウスを免疫化すると、致死量のSEBに対する防御を惹起し、その結果試験動物が生存した。これらのペプチドはまた発熱性外毒素により誘導される毒性ショックに対して長期免疫を付与するのに使用できることは明らかである。
【0042】
このように第1の態様では、本発明は、配列番号1のアミノ酸配列を含んでなるペプチド、およびかかるペプチドの機能的誘導体に関するものであり、ここで該単離、精製ペプチドは毒素アドニスト活性を持たず、外毒素により誘導される毒性ショックに対して防御免疫を惹起することができる。本明細書で用いられる用語の誘導体および機能的誘導体とは、毒素アゴニスト活性を示さず、かつ、外毒素により誘導される毒性ショックに対して防御免疫を惹起するペプチドの能力を妨げず、および/または毒素により媒介されるT細胞の活性化に拮抗するペプチドに対する任意の、挿入、欠失、置換および修飾を伴ったペプチド(以下、「誘導体」と呼ぶ)を意味する。誘導体は該ドメインと最低の、例えば約30%または30%よりいくらか低い相同性を維持すべきである。
【0043】
第2の態様では、本発明は、毒素アゴニスト活性を阻害せず、かつ、毒素により媒介されるT細胞の活性化に拮抗することができる配列番号1のアミノ酸配列を含んでなる単離・精製ペプチド、およびかかるペプチドの機能的誘導体に関する。本発明のペプチドは発熱性外毒素または発熱性外毒素の混合物により誘導される毒性ショックに対して防御することができる。
【0044】
発熱性外毒素は通常、細菌外毒素、特に黄色ブドウ球菌または化膿連鎖球菌により産生される外毒素である。
【0045】
本発明の単離・精製ペプチドは配列番号1で示されるアミノ酸配列(以下、p14またはp14(148〜161)とも呼ぶ)、およびその機能的誘導体を含んでなる。p14およびその機能的誘導体は発熱性外毒素または発熱性外毒素混合物により誘導される毒性ショックに対して防御免疫を惹起し、および/または毒素により媒介されるT細胞の活性化に拮抗することができる。これらのペプチドはまた、急性毒性ショック、および例えば発熱性外毒素により誘導される偶発性食中毒によるものであり得る有害な作用のいずれもの応急処置のために、またかかる毒性ショックに対する長期免疫の付与のために使用することができる。上記に示されたように、p14ペプチドと同様、機能的誘導体も好ましくは該発熱性外毒素のタンパク質ドメインと少なくとも30%の相同性を有する。p14(配列番号1)はその14のアミノ酸残基のうち11において、配列番号6で示される天然に存在するタンパク質の配列の148〜161位と相同である。
【0046】
さらに、後記の実施例で示されるように、p14ペプチドはまたTSST−1に対して毒素アンタゴニスト活性を有するが、TSST−1の対応領域とは30%未満の相同性しかなく、14のアミノ酸残基のうち4つを共有している。
【0047】
直鎖ペプチドの構造の欠如は、それらをヒト血清中のプロテアーゼの作用を受けやすくし、可能性のあるコンホメーションのわずかしか活性ではないので、標的部位に対するそれらの親和性を低下させるように働く。従ってアンタゴニストペプチド構造を最適化することが望ましい。
【0048】
ペプチド構造を改良するためには、本発明のペプチドをそれらのN末端を介してラウリル−システイン(LC)またはリシル−パルミトイル残基と、および/またはそれらのC末端を介してシステイン(C)残基と、あるいは以下でさらに詳細に記載されるが、ペプチドを免疫化のためのアジュバントと結合させるのに好適な他の残基に結合させることができる。プロテアーゼ耐性を向上させるには、D−AlaをN末端またはC末端のいずれか、あるいは両者に結合させればよい。
【0049】
本発明のペプチドならびにその誘導体は総て正電荷有していてもよいし、負電荷を有していてもよいし、あるいは中性であってもよく、また、ダイマー、マルチマーの形態であってもよいし、あるいは拘束されたコンホメーションであってもよい。
【0050】
拘束コンホメーションは内部架橋、短範囲の環化、延長または他の化学修飾によって得られる。ダイマーおよびトリマーなどのオリゴマーも考えられる。
【0051】
さらに本発明のペプチドをそのN末端および/またはC末端において種々の同一または異なるアミノ酸残基で延長してもよい。かかる延長の一例としては、ペプチドをそのN末端および/またはC末端において、天然に存在するアミノ酸残基であっても合成アミノ酸残基であってもよい同一または異なる疎水性アミノ酸残基で延長することができる。好ましい合成アミノ酸残基はD−アラニンであり、記載のように、これによりペプチドのプロテアーゼ耐性が増す。
【0052】
合成アミノ酸残基で延長されたペプチドの具体例としては、発熱性外毒素により誘導される毒性ショックに対して防御免疫を惹起し、および/または毒素により媒介されるT細胞の活性化に拮抗することができる配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するペプチド(以下、p14Aとも呼ぶ)、およびその機能的誘導体である。一つ好ましい態様では、本発明のペプチドはそのN末端およびC末端の双方にD−Ala残基を有するp14Aである。
【0053】
かかる延長のさらなる例は、そのN末端および/またはC末端の双方においてシステイン残基で延長したペプチドにより提供される。もちろんかかる延長はジスルフィド結合の形成から生じるCys−Cys環化による拘束されたコンホメーションをもたらしてもよい。
【0054】
もう1つの例は、N末端リシル−パルミトイルテールの組み込み(リシンはリンカーとして働き、パルミチン酸は疎水性アンカーとして働く)による誘導体p14A−LP(配列番号3)の作製である。
【0055】
さらに本ペプチドは天然に存在するアミノ酸残基であっても合成のアミノ酸残基であってもよい、延長された芳香族アミノ酸残基であってもよい。好ましい芳香族アミノ酸残基としては、チロシンおよびトリプトファンが挙げられる。あるいは、本ペプチドはそのN末端および/またはC末端において、天然に存在する発熱性外毒素のアミノ酸配列の対応する位置に存在するアミノ酸で延長することができる。
【0056】
しかしながら、本発明によれば、本発明のペプチドはそのN末端および/またはC末端において、天然には存在しない、もしくは合成アミノ酸である種々の同一または異なる有機部分で延長することができる。かかる延長の一例として、本ペプチドはそのN末端および/またはC末端において、N−アセチル基またはD−アラニン基で延長してもよい。このようにして延長されたペプチドはもまた、本発明の他のペプチドとして、急性毒性ショック、およびそれにより引き起こされる有害な作用のいずれもの応急処置に、またかかる毒性ショックに対する長期免疫を付与するために使用することができる。
【0057】
本発明のペプチドは後記の実施例に示されるように、IL−2、IFN−γまたはTNF−β遺伝子によりコードされる発熱性毒素により誘導されるmRNAの発現を阻害することができる。
【0058】
さらに本発明のペプチドは、免疫化した個体においてT細胞活性化を遮断する抗体の産生を惹起することができる。抗体の産生は好適な免疫アジュバントの存在下で高まる。好ましいアジュバントとしてはスカシガイ・ヘモシアニン(KLH)、プロテオソームまたはミョウバンが挙げられる。
【0059】
さらなる態様では、本発明は、少なくとも本発明のp14ペプチドまたはその機能的誘導体の治療上有効量を有効成分として含んでなる、毒素により媒介されるT細胞の活性化を治療または予防するための医薬組成物に関する。上記のように、本ペプチドは上記発熱性外毒素のタンパク質ドメインのアミノ酸配列と実質的に相同なアミノ酸配列を含んでなる。本発明の医薬組成物はまた、発熱性外毒素または発熱性外毒素混合物により誘導される毒性ショックに対する防御に有用である。
【0060】
本明細書の目的のための医薬上「有効量」とは、当技術分野で既知の考慮により決定されるものである。この量は毒素により媒介されるT細胞の活性化に十分拮抗するものでなければならない。
【0061】
本願を通じて用いられる毒素により媒介される活性化とは、単一の発熱性外毒素またはかかる毒素の混合物により媒介されるT細胞の活性化を意味し得る。
【0062】
実施例1〜3は14のアミノ酸からなる短いペプチド(p14またはp14A、配列番号6に示される天然に存在するSEBタンパクの配列の148〜161位に相当)は、対応するTSST−1との配列の相同性が比較的低くとも(30%未満)、マウスにおいてSEBにより、またTSST−1により誘導される毒性ショックに対して著しく有効なアンタゴニスト活性を示すことを示している。さらに、p14AはSEB抗原投与から7時間後というように遅れて投与した時でも、毒性ショックに対して防御免疫を惹起することができた。さらにp14Aは抗原投与して保護されたマウスに、種々の毒素に対して広スペクトル耐性を迅速に発展させることができた。
【0063】
本発明の医薬組成物は単位投与形で調製することができ、製薬分野で周知のいずれの方法によって製造してもよい。さらに本発明の医薬組成物は医薬上許容される担体、賦形剤または安定剤などの医薬上許容される添加剤、および所望によりその他の治療成分をさらに含んでもよい。もちろん許容される担体、賦形剤または安定剤は使用する用量および濃度で受容者に無毒なものである。
【0064】
本発明の組成物の治療上の用量はもちろん、患者群(年齢、性別など)、治療する症状の性質、および投与経路によって異なり、主治医により決定される。
【0065】
さおさらなる態様では、本発明は、少なくとも1種の本発明のペプチドまたはその誘導体の免疫学的有効量を有効成分として含んでなる、発熱性外毒素により誘導される毒性ショックに対する免疫を付与するためのワクチンに関し、かかるペプチドおよび誘導体の混合物を含んでもよい。
【0066】
用語「免疫学的有効量」とは発熱性外毒素または発熱性外毒素混合物により誘導される毒性ショックに対して免疫を付与するに十分な任意の量を意味する。
【0067】
本発明のワクチンは所望により好適な免疫アジュバントまたはその混合物をさらに含んでもよい。好適なアジュバントとしては、プロテオソーム、KLHおよびミョウバン、ならびにプロテオソームとミョウバン、およびKLHとミョウバンの組合せが挙げられる。
【0068】
後記の実施例で示されるように、本発明のワクチンは発熱性外毒素に対して防御免疫を惹起することができる。
【0069】
毒性ショック症候群に対して用いる抗体を開発する努力は、主としてモノクローナル抗体または可溶性受容体でTNFの作用を阻害することによって毒性カスケードの下流の現象を遮断することに注がれていた。毒素に応答して産生される高レベルのサイトカインはこのアプローチを無効にする。本発明は、T細胞の活性化が起こる前に毒性カスケードの最上で毒素作用を阻害するアンタゴニストを用いて、全く異なる戦略で発熱性外毒素の作用を遮断することができるということを示す。
【0070】
実施例では、毒素アンタゴニスト活性を評価するための、PBMCにおける、IFN−γ遺伝子(ならびに本明細書には示されていないがIL−2およびTNF−β遺伝子)の発現による、発熱性外毒素により媒介されるヒト細胞免疫応答の活性化の分子的方法、解析を詳細に記載する。ヒトPBMCでの研究は毒素拮抗特性、免疫特性およびワクチン効力を評価する動物試験と組合せたが、これらの方法が発熱性外毒素系の他のメンバーに対してもヒトPBMCを中和するか、またはそれを保護する薬剤を考案する際に適用できることが示される。
【0071】
ヒトはマウスよりも発熱性外毒素に対する感受性がはるかに高く、一方、霊長類モデルはコストなどのその他の制限要因を有することから、毒素により媒介される免疫応答の活性化および抑制のメカニズムを分析し得るヒトin vitro系が必要とされる。本発明はかかる系を提供し、それは以下のような主な利点がある。
【0072】
(1)サイトカイン産生の調節に関与する細胞間相互作用を保護する、新しく調製されたヒトリンパ系細胞集団は身体の末梢免疫系に可能な限り近いものである。
【0073】
(2)初期の免疫応答の結果はIL−2、IFN−γおよびTNF−β mRNAの一時的および高度に調節された発現を追跡することにより正確かつ直接的に分析することができる。
【0074】
(3)IFN−γ(ならびに所望によりIL−2およびTNF−β)遺伝子の発現はSEBにより惹起される活性に鋭敏な感受性がある。
【0075】
(4)この分子学的アプローチは一連の事象の累積した結果である細胞増殖または抗体産生などの生物学的応答の測定よりもはるかに直接的かつ特異的である。
【0076】
(5)提示したアプローチは、ヒトIL−2、IFN−γおよびTNF−β遺伝子の活性化に不可欠なSEB中の機能的ドメインをマッピングする手段を与え、アンタゴニストおよびワクチン双方の開発を助ける働きをし得る。
【0077】
このように本発明はまた、発熱性外毒素または発熱性外毒素混合物により誘導される毒性ショックを治療する方法に関する。該方法はかかる治療を必要とする患者に、治療上有効量の本発明の医薬組成物、または治療上有効量の少なくとも1種の本発明のペプチドもしくはその機能的誘導体を投与することを含んでなる。
【0078】
さらなる態様では、発熱性外毒素または発熱性外毒素混合物により誘導される毒性ショックを予防する方法が提供され、該方法はかかる治療を必要とする患者に、治療上有効量の本発明の組成物、または治療上有効量の少なくとも1種の本発明のペプチドもしくはその機能的誘導体を投与することを含んでなる。
【0079】
本発明はまた、発熱性外毒素により誘導される毒性ショックに対して患者を免疫化する方法に関し、該方法は患者に、有効免疫量の本発明のワクチン、または少なくとも1種の本発明のペプチドもしくはその機能的誘導体を投与することを含んでなる。
【0080】
本発明のペプチドまたはワクチンの治療上の用量はもちろん、患者群(年齢、性別など)、治療する症状の性質、および投与経路によって異なり、主治医により決定される。
【0081】
本発明のペプチドおよびワクチンは優良医療規範に従って投与および服用できる。特に本発明の免疫化法は本発明のペプチドまたはワクチンの1回の投与を含んでなる。投与は、静脈内、筋肉内または皮下注射をはじめ種々の方法で行える。しかし、鼻内投与などのその他の投与方法も可能である。
【0082】
本明細書に記載の発熱性外毒素アンタゴニストペプチドの設計はこれまで軽視されていた領域、発熱性外毒素の予防および毒素に曝された個体の治療における新規な適用を見出すだけでなく、安全な発熱性外毒素ワクチンの開発をも促進する。定義されるペプチドワクチンは悪化させる特性がなく、トキソイドワクチンよりも優れていると考えられる。
【0083】
ヒトでは、発熱性外毒素に曝されることによる毒性ショックは、(1)活動不能と(2)死という異なる2つの要素を持つ。
【0084】
致死濃度よりも数log低い濃度でさえ、発熱性外毒素は著しく活動不能をもたらし、高い罹病率を示す[USAMRIID Manual, (1998) Eitzen E, Pavlin J, Cieslak T, Christopher G, Culpepper R, eds. Medical Management of Biological Casualties Handbook. 3rd ed. Fort Detrick, Maryland: United States Army Medical Research Institute of Infectious Diseases, 1998]。例えば食中毒(集団食中毒であり得る)で見られる活動不能応答は多数の人々に影響を及ぼす。さらに、活動不能応答は軍隊の脅威であり、国家の保安の脅威である。死に対する防御については、発明者らはペプチドアンタゴニストp12Aおよびp14Aがマウスにおいて毒素によりもたらされる死を回避することを示した。マウスにおいて嘔吐または下痢などの活動不能症状は見られなかった。活動不能を予防および/または治療する実験はブタにおいて行った(実施例7)。
【0085】
吐気、すなわち、悪心、嘔吐および食欲不振は典型的には中脳(髄質)によって制御される一連の神経症状である。嚥下および嘔吐の血管運動・呼吸中枢および反射中枢は髄質にある。延髄の嘔吐中枢は、吐気を引き起こす最終の共通の経路の起点であり、髄質をよじることで嘔吐が起こる[Hamilton, (1956) Textbook of human anatomy. McMillan & Co Ltd, London]。嘔吐中枢は実際には嘔吐に関与する原動力、呼吸、血管および唾液分泌のプロセスのパターンを制御する絡み合った神経ネットワークである。真の嘔吐中枢はいくつかの神経学的経路を介し、ドーパミン、ヒスタミン、アセチルコリン、セロトニン(5HT)、ノルエピネフリン、およびグルタミンに応答する髄質の種々のタイプの神経伝達受容体により刺激される。制吐剤(主としてドーパミンおよびセロトニンアンタゴニスト)はこれらの受容体を遮断することによって働く。
【0086】
真の嘔吐中枢に対するこれら複数の経路の作用は複雑である。マウスのSEBへの経口暴露の数時間内に、腸管粘膜に存在するT細胞ではIL−2およびIFN−γ遺伝子の強い発現が誘導される[Spiekermann and Nagler-Anderson, (1998) Spiekermann GM, Nagler-Anderson C (1998) J Immunol 161:5825-5831]。このように、結果としての粘膜T細胞の活性化および高レベルTh1サイトカインに対する腸管粘膜の他の細胞の応答は脳への神経伝達物質の放出を誘発し、内臓感覚系の必須の役割を助ける。嘔吐に関しては胃からの刺激は必要とされないことに注目すべきである。胃は上記で説明したように種々の刺激に応答して産生される髄質からのシグナルを受容した際に嘔吐反射のエフェクターとして働く。大腸の刺激が小腸へ向けて移動し、最終的に肛門へ達すると下痢が起こる。
【0087】
後記の実施例(特に実施例7ならびに図9および10)で示されるように、本発明者らは、それが本発明の目的であるが、発熱性外毒素アンタゴニストが毒素により媒介される活動不能症状(SE中毒および初期致死ショックに対するヒト応答に類似)を著しく軽減することを見出した。毒素はTh1サイトカインの誘導および放出を惹起し、次いで髄質のニューロンを直接的または間接的に活性化して活動不能症状を引き起こす細胞免疫応答を標的とすることで働くと考えられる。このようにT細胞の活性化を遮断する発熱性外毒素アンタゴニストの単一の作用様式は死および活動不能の双方を防ぐその能力を説明する。図9および10のデータは、発熱性外毒素に対する免疫応答においてヒトに近い動物であるブタモデルにおいて、毒素による活動不能に対するアンタゴニストの保護作用の確実性を示す。
【0088】
このように本発明はさらに、少なくとも1種の発熱性外毒素により誘導される活動不能の予防および/または治療のための医薬組成物に関し、該組成物は配列番号1のアミノ酸配列を有するペプチド、配列番号2のアミノ酸配列を有するペプチド、配列番号3のアミノ酸配列を有するペプチド、およびその任意の混合物から選択される単離・精製ペプチドと、所望により医薬上許容される担体、希釈剤、アジュバントおよび/または賦形剤をさらに含んでなる。
【0089】
本発明はさらに、少なくとも1種の発熱性外毒素により誘導される活動不能を予防および/または治療する方法に関し、該方法はかかる治療を必要とする患者に、配列番号1のアミノ酸配列を有するペプチド、配列番号2のアミノ酸配列を有するペプチド、配列番号3のアミノ酸配列を有するペプチド、およびその任意の混合物から選択される少なくとも1種の治療上有効量の単離・精製ペプチド、またはそれを含んでなる組成物を投与することを含んでなる。有効量の単離ペプチドまたはそれを含んでなる組成物は所定の時間間隔で繰り返し患者に投与してもよい。毒性ショックになった時患者には通常塩の点滴を施すが、容易に水に溶けるアンタゴニストペプチドとの混合にはクリアランスを相殺するため、救急期のその持続投与を見込んでおく。このことは好ましく、極めて迅速なアンタゴニスト投与経路である。投与経路、用量および処置頻度は主治医により決定される。
【0090】
実施例
材料および方法
細胞培養およびヒトサイトカイン遺伝子発現の誘導
健康なヒト提供者のPBMCをFicoll Paque(Pharmacia)で分離し、50mlのRPMI1640培地で2回洗浄し、4×106/mlの濃度に再懸濁し、2%ウシ胎児血清、2mMグルタミン、10mM MEM非特異的アミノ酸、100mMピルビン酸ナトリウム、10mM Hepes pH7.2、5×10−5M 2−メルカプト−エタノール、100単位/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシンおよび5μg/mlナイスタチンを添加した同培地で培養した。SEB(ロット14〜30、the Department of Toxinology, U. S. Army Medical Research Institute of Infectious Diseasesから)、SEAまたはTSST−1(Sigma)を加えて100ng/mlとした。
【0091】
RNアーゼプロテクション解析
グアニジニウムイソチオシアネートで全RNAを抽出した[Chomczynski and Sacchi, Anal Biochem 162: 156 (1987)]。RNアーゼプロテクション解析は、pBS(Promega)に挿入したDNAから、in vitroでα−[32P]UTPを用いて転写されたゲノムアンチセンスRNAプローブを用いて行った[Arad et al. (1995)同上]。T7プロモーターから転写されたIL−2プローブ(600ヌクレオチド(nt))はIL−2遺伝子の3番目のエキソンおよび3番目のイントロンの一部に相補的であり、8M尿素−ポリアクリルアミドゲルでは、IL−2 mRNAで保護された117ntのRNA断片が得られる。T3プロモーターから転写されたIFN−γプローブ(274nt)はIFN−γ遺伝子の3番目のエキソンおよび3番目のイントロンの一部に相補的であり、IFN−γ mRNAで保護された183ntのRNA断片が得られる。 T3プロモーターから転写されたTNF−βプローブ(700nt)はエキソン1の一部、エキソン2、エキソン3およびイントロン3の一部ならびにエキソン4に相補的であり、TNF−β mRNAは274および263ntの2断片を保護する。ハイブリダイゼーションではセンスRNA転写物を検出するシグナルが得られなかった。18S rRNA(90ntを保護する)またはβ−アクチン(415ntを保護する)のアンチセンスRNAプローブを負荷対照とした。
【0092】
IL−2およびIFN−γ RNAの定量ドットブロットハイブリダイゼーション
1ml培養物からPBMCを回収し、7.5Mグアニジニウム−HClに溶解した。エタノール中、−20℃で一晩沈殿させたRNAをホルムアルデヒドに溶解し、60℃で15分間インキュベートした。10×クエン酸ナトリウム生理食塩水による4種の連続2倍希釈物を96ウェルドットブロット装置を用いて2組、ニトロセルロースシートに塗布した。真空炉にて80℃で焼き付けた後、シートをヒトIL−2およびIFN−γ各々の32P標識アンチセンスRNAプローブとそれぞれハイブリダイズした。感光させたオートラジオグラムをELISAリーダーで630nmで走査した。RNAレベルをA630の単位で表した。所定のRNAサンプルの連続2倍希釈物では、各サンプルに存在する特異的RNAの濃度に比例した遺伝子発現強度の200倍レンジを超える直線的光学濃度応答が得られる[Arad et al. (1995) 同明細書参照; Gerez et al., Clin Immunol Immunopathol 58: 251 (1991); Kaempfer et al., J Clin Oncol 14: 1778 (1996)]。
【0093】
SEB関連ペプチドの合成
ペプチドは、一般に、引用することにより本明細書の一部とされるWO98/29444に記載されるように合成した。
【0094】
p14はフルオロニル−メトキシカルボニル化学を用いて合成し、切断し、その側鎖をトリフルオロ酢酸で脱保護した。トリフルオロ酢酸−ペプチドスレートは培地に可溶であった。同じ手法を用いてD−Alaを結合した。
【0095】
N末端ラウリルシステイン(LC−)およびリシル−パルミトイル(LP−)ならびにC末端システイン(C−)は他のアミノ酸に用いた同じ条件の下で加えた。
【0096】
ペプチドはHPLCにより95%を超える純度であった。
【0097】
免疫化
実施例5に記載のようにマウスを免疫化した。
【0098】
毒性ショックに対するマウスの保護
10〜12週齢の10匹の雌BALB/cマウス(Harlan, Jerusalem, Israel)群を腹腔内注射による毒素抗原投与時に20mgD−ガラクトサミン(Sigma)を腹腔内注射により免疫化した。
【0099】
毒性ショックに対するブタの保護
5日齢混血ブ(主としてヨークシャー;2.5kg)を各試験条件について6匹の群に無作為化し、各群の各々個体にSEA(25μg)を腹腔内注射した。アンタゴニストペプチドはSEAの30分前およびSEA後5時間まで図に示された時間に腹腔内投与した。嘔吐および下痢は8時間までは毎時、次いで12時間までは3時間ごと、さらに21時間目と24時間目に評価した。
【0100】
実施例1
致死抗原投与したマウスにおけるp14Aの有効な防御活性
図1の試験では、SEB暴露から20時間までに90%の対照マウスが死に至った。しかしながら、SEBを致死抗原投与する直前にp14Aを投与した場合にはこれらのマウスの90%が生存していた(図1)。p14Aの防御効果は15の試験にわたって再現性が認められた。生存している動物には苦痛である様子もなく、挙動においても正常な対照動物と見分けがつかないほどであった。それらはモニターした2週間に限っては生存していた。p14A単独に暴露したマウスは十分に生存可能な状態であり、副作用もみられなかった。
【0101】
この防御効果はBALB/cマウス株に特有のものではなかった。A/JマウスもまたSEBによる死を防ぐIPp12Aにより防御された[WO98/29444]。このことから防御が厳密にMHC依存性でないことが示され、従ってアンタゴニストペプチドがMHCクラスII分子と相互作用することが知られていない超抗原ドメインを標的化するという事実に一致している。
【0102】
実施例2
アンタゴニストペプチドでSEBにより誘導される致死ショックからマウスを防御・救済する
アンタゴニストペプチド単独に暴露したマウスは生存可能な状態であり、副作用もみられなかった。SEBを抗原投与したマウスのうち、毒素暴露から24時間の時点でまだ生存しているのは30%だけで、後には20%となった。しかしながら、毒素の30分前にp14を施した場合にはSEBを抗原投与した総てのマウスが防御された(p=0.0003)。生存している動物には苦痛である様子もなく、挙動においても正常な対照動物と見分けがつかないほどであった。それらはモニターした2週間に限っては生存していた。アンタゴニストペプチドの投与を、致死抗原投与の3時間(p=0.05)、5時間(p=0.08)または7時間後にまで遅らせた場合には部分的防御が得られた。20〜40時間の間にはp14Aの漸減的防御効果がみられ、それぞれ70%、60%および50%の生存を得た。p14Aによって、SEB抗原投与前に施した場合に感染が完全に防御されるだけでなく、すでに毒性ショックに陥っているマウスを救うことができることに注目すべきである。これらの結果は図2に示されている。
【0103】
アンタゴニストペプチドがSEBに対し20〜40倍モル過剰である場合に防御されるまたは救われることから、ペプチドがin vivoにおいて効力のある超抗原アンタゴニストであることがわかる。
【0104】
実施例3
致死抗原投与したマウスにおけるp14Aの有効な防御活性
超抗原の致死性研究用に許容される動物モデルのD−ガラクトサミン感作マウスを用いて、p12Aおよびp14Aの防御活性を調査した。図3では、SEBを致死抗原投与する直前に、p12Aで処置したマウスでは約70%生存、未処置(ペプチドを投与しない)の動物ではたった40%であるのに対して、p14を投与した場合にはこれらのマウスの約90%が60時間を超えた後でも生存していたことがわかる。p14Aの防御効果は15にわたる試験で再現性が認められた。生存している動物には苦痛である様子もなく、挙動においても正常な対照動物と見分けがつかないほどであった。それらはモニターした2週間に限っては生存していた。p14Aまたはp12A単独に暴露したマウスは十分に生存可能な状態であり、副作用もみられなかった。
【0105】
実施例4
IFN−γ遺伝子発現の誘導に対するp14Aの有効な拮抗活性
PBMC集団におけるTSST−1またはSEBによるIFN−γの誘導の程度に対するp14Aおよびp12A(配列番号5)の効力を比較し、その結果を図4および5に示している。
【0106】
p14Aはp14の誘導体であり、そのNおよびC両末端にD−Ala残基を有している。同様に、p12Aはp12の誘導体であり、そのNおよびC両末端にD−Ala残基を有している。TSST−1はSEBの全配列とほんの6%しか相同性を示さないが、p12Aおよびp14Aとも、この毒素により誘導されるIFN−γ発現を阻害した(TSST−1、図4)。また、p12Aおよびp14Aの両方がSEBにより誘導される発現も阻害した(図5)。p14AがTSST−1またはSEBのいずれに対しても、p12Aよりも極めて有効な拮抗活性を示したことは驚くべきことであった。
【0107】
p12Aおよびp14AはTSST−1の関係のあるドメインとほとんど相同性を有していない。それにもかかわらず、両ペプチドともTSST−1により誘導されるIFN−γ発現を阻害した。またこの際、実際にp14Aがp12Aの4/12に対して、たった4/14アミノ酸残基しかTSST−1の関連ドメインと共有していないにもかかわらず、p14Aで予期しない有利な結果が得られた。
【0108】
実施例5
保護マウスには致死ショックに対する広スペクトル耐性が急速に展開する
アンタゴニストペプチドが広域防御活性を示すかどうかを調べるために、本発明者らは、SEBと全体で27%のアミノ酸配列相同性しか示さない[Betley and Mekalanos 1988. J. Bacteriol. 170: 34-41]超抗原、SEAの致死抗原投与中にその効果を調べた。図6Aからわかるように、p14AはまたSEAの致死抗原投与からもマウスを保護した。WO98/29444では、アンタゴニストペプチドp12AがSEB、連鎖球菌毒素SPEA(SEAと30%、SEBと48%相同性を有する)またはSEAおよびSEB各々と全体で7%および6%の配列相同性しか示さないTSST−1による死からマウスを保護したことを示した。
【0109】
図6の試験では、p14Aでの防御によりSEAの致死抗原投与で生存した(図6A)7匹のマウスに2週間後、SEBを再び抗原投与した。この際ペプチドアンタゴニスト不在下であった(図6B)。これらのマウスは総て生存していたが、10匹の対照群ではSEB暴露で生存したものはいなかった。2週間後、SEBのこの第2の抗原投与で生存したマウスをもう一度さらに別の超抗原毒素、このときTSST−1に、再びペプチドアンタゴニスト不在下で暴露させた。TSST−1を抗原投与した対照群では10匹総てのマウスが死に至ったが、処置群では7匹のうち1匹だけが死に至った(図6C)。これらの6匹の生存個体に2週間後、そこでSPEAを4回抗原投与した。これら6匹のマウスのうち4匹が生存していたが、対照群では10匹のマウスのうち1匹しかSPEA暴露で生存していなかった。このように、p14Aにより、SEAが媒介する致死ショックから保護されたマウスは異なる発熱性外毒素の連続的抗原投与に対する抵抗力を急速に獲得していた。
【0110】
実施例6
アンタゴニストペプチドでSEAにより誘導される致死ショックからマウスを保護する
SEAを抗原投与する30分前にマウスにp14Aを注射した。この結果は図7に示されている。わかるように、アンタゴニストペプチドによる前処置でSEA抗原投与に対して100%の防御が得られた。これに対し、未処置のマウスでは60時間後、10%しか生存していなかった。p14AがSEAの関係のあるドメインと10/14残基しか一致性を示していなくとも、p14AはSEAの有利なアンタゴニストである。
【0111】
実施例6
アンタゴニストペプチドによる免疫化でSEBにより誘導される致死ショックからマウスを防御する
本発明者らはアンタゴニストペプチドを細胞膜に固定することにより、その免疫原性が高まる可能性を考察した。p14Aを、リジンがリンカーとして、パルミチン酸が疎水性アンカーとして作用する、N末端リシル−パルミトイルリーダーで合成してp14A−LPを得た。図8はp14A−LPおよびp14Aによるマウスの免疫化を示している。p14A−LPで免疫化した11匹のマウスのうち10匹が、p14Aで免疫化した10匹のマウスのうち7匹が致死SEB抗原投与で生存していた。これに対し、アジュバントで免疫化した対照群では10匹のマウスのうち3匹だけであった。免疫化した生存個体に2週間後、再び抗原投与すると、p14A−LPで免疫化した10匹のマウスのうち7匹が、p14Aで免疫化した7匹のマウスのうち4匹が2倍用量のSEBでも生存していた。この用量は投薬を受けていない10匹の対照マウスを24時間内に10匹とも死に至らしめることができる用量である(図8B)。SEBの最初の抗原投与から1週間後に採収した免疫化マウス血清の酵素結合免疫収着検定(ELISA)によりかなりのレベルの抗SEB IgM(0.835単位)が認められたが、p14Aペプチドに対して向けられたIgMは極めて低い値(0.08単位)であった。さらにこれらの血清を漸増濃度のp14A、10μg/mlまで、とともに一晩プレインキュベーションしたが、それらのSEBとの結合能力は低下しなかった(0.840単位)。アンタゴニストペプチドがSEB−結合抗体を完成していないことは明らかである。アンタゴニストペプチドは抗SEB−抗体を誘導しているが、まだそれ自体に対する抗体が検出されていないことは注目すべきである。このことから、アンタゴニストペプチドのそれが誘導する抗体に対する親和性は毒素の親和性よりもはるかに低いことが示される。これらの結果は、アンタゴニストペプチドを用いる抗毒素ワクチンアプローチには、疎水性アンカーの利用に限定されるものではないが、生産性があることを示している。
【0112】
実施例7
p14AでSEAにより誘導される活動不能からブタを保護する
ヒトT細胞はブドウ状球菌超抗原に対し、ネズミのものより少なくとも2オーダーの大きさで感作しやすい。ヒトは毒性ショック症候群を引き起こしやすいが、マウスは、TCRの最も高い反応性のあるVβ鎖を示す細胞がネズミT細胞のすべての範囲から消失しているかまたは関連のVβ遺伝子が欠失していることが明らかであり[Arad et al., 2000,同明細書参照]、耐性である。そのためマウスは超抗原毒素に対して自然耐性を有しており、それらが毒性ショックを受ける前に感作しているはずである。さらにマウスは体重および免疫系に関してヒトとはかけ離れている。よって人間により近い動物モデルでもアンタゴニストの効果を立証しておくことが重要である。
【0113】
本発明者らは両方の問題:毒素活動不能およびより高度な動物モデルの使用、に取り組んできた。ブタはヒトとよく似た免疫系を有している;例えば、ブタおよびヒト間の、ショックを媒介するTh1サイトカインIL−2およびIFN−γをコードするmRNAのヌクレオチド配列相同性は75〜85%のオーダーであるが、ヒトおよびマウスmRNA間では類似性は認められない。
【0114】
ブタは感作の必要のない急性超抗原暴露に感受性であり、ヒトに見られるものとよく似た活動不能症状をひき起こす。悪心、嘔吐(ニューロン応答)ならびに重症の下痢(腸免疫応答)をはじめとする毒性ショックの早期活動不能症状の再現可能なブタモデルを確立した。図9からわかるように、アンタゴニストペプチドp14Aは毒素により誘導される活動不能を効果的に緩和している。
【0115】
5日齢混血ブタ(主としてヨークシャー;2.5kg)を、各試験条件について6匹の群に無作為し、各群の各々の個体にSEA(25μg)により重症の活動不能を引き起こした。これは静脈または腹腔経路のいずれによって与えても類似した動態および強さで、2時間以内には目にも明らかとなり、24〜36時間で鎮静した。腹腔経路は静脈経路と同様に効果的であり、なお外傷が少なくてすむことから活動不能試験にはSEAの腹腔内投与を用いた。この結果からはブタが特別にSEA感受性であることが確認される[Taylor et al., Infect Immun 36: 1263 (1982)]。この選択的感受性の理由には、SEAがそのβを捕らえて独立した第2の部位にあるMHCII分子と結合し、それをいっそう強固に結合して、MHCII分子間に架橋をもたらしていることがある[Hudson et al., J Exp Med 182: 711 (1995); Schad et al., EMBO J 14: 3292 (1995); Abrahmsen et al., EMBO J 14: 2978 (1995)]。毒素アンタゴニストにより標的化されるドメインはMHCIIの結合部位およびSEAのTCR結合部位とも離れている。それにもかかわらず、アンタゴニストp14Aにより10匹のマウスのうち7匹がSEAによる死から保護され、かつ生存個体には広域防御免疫が惹起され(図6)、図7の試験ではSEA抗原投与した10匹のマウスのうち10匹にそれが現れた。
【0116】
次の基準を用いてブタの活動不能を評価した:嘔吐(評点4);下痢、軽度(評点1)、中度(評点2)、重度(評点4)、および水下痢(評点6)(データなし)。長期食欲不振および雌ブタの乳首の代わりの吸水口の使用、無関心ならびによろめきがはっきりと観察されるが、これらは容易に定量できない;体温格差は正常な対照動物と平均1℃未満にとどまる。
【0117】
本発明者らはヒトPBMC(図4および5)および致死毒性ショックから保護されたマウス(図3)においてin vitroでの超抗原の作用を阻害する能力に関し、p12Aよりもp14Aの方が効果があることを示した。p14AアンタゴニストペプチドによりブタのSEA活動不能症状(嘔吐および下痢)が鎮静した。
【0118】
図9からわかるように、漸増用量のp14Aにより全般的な活動不能、ならびに嘔吐および下痢が目に見えて緩和された。これらの結果は、実施した6回のアンタゴニスト投与の最後の投与後に起こり、広く維持、発症する全般的活動不能(p=0.002)および下痢(p<0.001)に関してはかなり有意であり、post hoc検定で有意であった。また、嘔吐もアンタゴニスト用量に応じて緩和した。
アンタゴニストペプチド単独では副作用はみられなかった:p14A単独を受けた混合群の18匹のブタでは活動不能のいずれの症状も認められなかった(図9)。
本発明者らはアンタゴニストペプチドp14Aによる、対照動物では長期化し、たいてい5時間(試験群におけるアンタゴニストペプチドの最終投与時間)を超えて24時間まで、発症する下痢の効果的な抑制を認めた;このことからアンタゴニストペプチドの長期にわたる効果が示される。
【0119】
p14Aアンタゴニストペプチドp14AによりブタのSEA活動不能症状(嘔吐および下痢)が抑制され、アンタゴニストの投与回数によってその効果が高まった(図10)。この抑制は統計学的に有意である。SEA暴露後にp14Aアンタゴニストペプチドの投与を4回受けたブタ群は、SEA暴露後にアンタゴニストペプチドの投与を2回しか受けていない群よりも低い活動不能を示した。また後の両方の群はSEA暴露の30分前に1用量のアンタゴニストペプチドを受けていたが、より多くの回数の毒素後処置を行うほどより効果の高い活動不能の抑制が得られる。これらの結果から、例えば、毒性ショックにあるおよび重症の食中毒にあるヒトで見られるような、活動不能症状の治療におけるアンタゴニストペプチドの可能性ある効用が示される。
【0120】
このように、アンタゴニストペプチドp14Aは、マウスだけでなく、免疫系がヒトのものとより密接に関係している動物であるブタにおいても、in vivoで毒素アゴニスト活性を全く検出することなく超抗原毒素、SEAの毒性ショック症状を止めることが可能である。
【0121】
これらの実施例は本発明の範囲の具体例をさらに記載し、例示するものである。これら実施例は本発明を限定するものではなく、単に例示を目的としたものであり、本発明の精神および範囲を逸脱することなくその多くの変法が可能である。
【0122】
本明細書において引用される総ての参考文献は、引用することにより本明細書の一部とされる。
【0123】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
以下の図面により本発明をさらに詳細に説明する。
【図1】アンタゴニストペプチドがSEBにより誘導される致死ショックからマウスを保護することを示す説明図。
10匹のBalb/cマウスに20mgD−ガラクトサミンを感作させ、同時に10μgSEBを抗原投与した(○)。もう一方の10匹のマウスにはSEB抗原投与30分前に25μgのp14Aを施した(●)。生存個体をモニターした。
【図2】アンタゴニストペプチドがSEBにより誘導される致死ショックからマウスを保護・救済することを示す説明図。
10匹のBALB/cマウス群に20mgD−ガラクトサミンを感作させ、同時に10μgSEBを抗原投与した。同時に注射した。1アリコートの25μgのp14AをSEB抗原投与30分前(▲)またはSEB投与後の3(黒四角)、5(○)もしくは7(●)時間後に注射した。p14Aを受けなかった10匹の感作無投薬マウスをSEB対照とした(□)。総ての注射は腹腔内により行った。
【図3】アンタゴニストペプチドp12Aおよびp14AによるSEBにより誘導される致死ショックからのマウスの保護を示す説明図。
10匹のBALB/cマウス群に、20mgD−ガラクトサミンとともに5μgの毒素を腹膜内注射してSEB(Sigma)を抗原投与した。示されたように25μgのp12Aまたはp14AのいずれかをSEB投与30分前に腹膜内注射した。生存個体をモニターした。
【図4】TSST−1によるIFN−γ遺伝子発現誘導に対するアンタゴニストペプチドp12Aおよびp14Aの効力を示す説明図。
健康なヒト提供者のPBMCをFicoll Paque(Pharmacia)で分離し、50mlのRPMI1640培地で2回洗浄し、4×106/mlの濃度に再懸濁し、2%ウシ胎児血清、2mMグルタミン、10mM MEM非特異的アミノ酸、100mMピルビン酸ナトリウム、10mM Hepes、pH7.2、5×10−5M 2−ME、100単位/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシンおよび5μg/mlナイスタチンを添加した同培地で培養した。一晩静置した後、1ml中4×106PBMCのアリコートを、100ng/mlのTSST−1(Sigma)単独の存在下または示された10μg/mlのp12Aもしくはp14Aの存在下で、示された回数培養した。全RNAを示された回数抽出し、連続2倍希釈物を32P標識IFN−γアンチセンスRNAプローブを用いるブロットハイブリダイゼーション解析[Arad et al., (2000) 同上]に付した。オートラジオグラムを濃度計で630nmにて定量し、630nmの吸光度をプロットする。
【図5】SEBによるIFN−γ遺伝子発現誘導に対するアンタゴニストペプチドp12Aおよびp14Aの効力を示す説明図。
1ml中4×106PBMCのアリコートを、100ng/mlのSEB(ロット14〜30、the Department of Toxinology, United States Army Medical Research Institute of Infectious Diseases(USAMRIID, Frederick, Maryland)から)単独の存在下または指示された10μg/mlのp12Aもしくはp14Aの存在下で、示された回数培養した。全RNAを示された回数抽出し、連続2倍希釈物を32P標識IFN−γアンチセンスRNAプローブを用いるブロットハイブリダイゼーション解析に付した。オートラジオグラムを濃度計で630nmにて定量し、630nmの吸光度をプロットする。図4の場合と同じPBMC集団を用いた。
【図6】アンタゴニストにより保護したマウスには致死ショックに対する広域免疫が急速に現れることを示す説明図。
(A)20mgD−ガラクトサミンによる感作および10μgSEAによる同時抗原投与30分前に、10匹のBALB/cマウスにp14Aを施した(●)。さらにp14Aの注射は行わずに、7匹の生存個体に2週間後、10μgSEB(▲;B)、続いて2週間後に10μgTSST−1(黒四角;C)、さらに2週間後に15μgSPEA(▲;D)を再び抗原投与した。各抗原投与では、10匹の感作無投薬マウスを毒素対照とした(○、△、□)。総ての注射は腹腔内により行った。
【図7】アンタゴニストペプチドがSEAにより誘導される致死ショックからマウスを保護することを示す説明図。
10匹のBALB/cマウス群に10μgSEAを腹腔内により抗原投与し、SEA投与30分前に25μgのp14Aを腹腔内注射した。
【図8】アンタゴニストペプチドでの免疫化でSEBにより誘導される致死ショックからマウスを保護することを示す説明図。
A:10匹のBALB/cマウス群(p14A−LPについては11匹のマウス)に、フロイントアジュバント(FA)中の示されたペプチド10μgを3回注射(0、2および4週間目)して免疫化し、その後6週間目に10μgSEBおよび20mgD−ガラクトサミンを腹腔内注射して抗原投与した。生存個体をモニターした。B:最初の抗原投与から2週間後、Aの生存個体(p14A−LP、n=10;p14A、n=7)に20μgSEBおよび20mgD−ガラクトサミンを再び抗原投与した。LP、リシル−パルミトイル。FAおよびp14A−LP(▲)、FAおよびp14A(□)またはFA単独(黒四角)で免疫化したマウス;SEBを抗原投与した無投薬対照マウス(○)。
【図9】発熱性外毒素アンタゴニストでSEAにより用量依存的に起こる浮力かからブタを保護することを示す説明図。
ブタ群(全体の群の大きさ、n)に、0時間に25μg/kgSEAを腹腔内により抗原投与した。示されたようにp14A(25、50または100μg/kg)をSEA投与から〜0.5時間および1、2、3、4および5時間後に腹腔内により施した。それぞれのブタを、11時点を24時間にわたって観察した。これらの時点の曲線の下にある面積を全般的活動不能、嘔吐および下痢についてプロットする。全般的活動不能のスコアは嘔吐および下痢スコアの合計である。群間の反復測定解析の結果、p値を得る。統計解析はWindows9.0ソフトウェアのSPSSを用いてTukey HSD post hoc検定によりデータ集合のANOVAを行った(なお、p≦0.05には1つのアステリスクを付けている)。毒素投与なしのp14A対照を右に示す。
【図10】アンタゴニストペプチドの反復投与によるSEAにより誘導される活動不能からのブタの保護を示す説明図。
6匹の子ブタ群に25μg/kgSEAを腹腔内により抗原投与した。p14A(50μg/kg)を0、1.5および2.5時間(×3)にまたは0、1.5、2.5、3.5および4.5時間(×5)にIPにより施した。嘔吐および下痢の活動不能スコアをそれぞれ示す。生理食塩水対照動物にはSEAもp14Aも与えなかった。曲線の下にある面積を、評価した全般的活動不能、嘔吐および下痢について、10時点を24時間にわたってプロットする。統計解析はWindows9.0ソフトウェアのSPSSを用いてTukey HSD post hoc検定によりデータ集合のANOVAを行った(なお、p≦0.05には1つのアステリスクを付けている)。
Claims (10)
- 配列番号1のアミノ酸配列からなる単離、精製ペプチド。
- 配列番号2および配列番号3からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる単離、精製ペプチド。
- 発熱性外毒素または発熱性外毒素の混合物により誘導される毒性ショックに対して防御免疫を惹起することができ、および/または発熱性外毒素により媒介されるTリンパ球の活性化を阻害し、発熱性外毒素または発熱性外毒素混合物により誘導される毒性ショックに対して防御し得る、請求項1のペプチドの機能的誘導体であって、請求項2に記載されたペプチドである、誘導体。
- 発熱性外毒素により媒介されるTリンパ球の活性化を阻害し、かつ、発熱性外毒素または発熱性外毒素混合物により誘導される毒性ショックから防御する組成物であって、配列番号2のアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号3のアミノ酸配列からなるペプチド、およびそれらの任意の混合物から選択される単離、精製ペプチドと、所望により医薬上許容される担体、希釈剤、アジュバントおよび/または賦形剤をさらに含んでなる、組成物。
- 発熱性外毒素により誘導される毒性ショックに対して防御免疫を惹起する免疫原性組成物であって、配列番号2のアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号3のアミノ酸配列からなるペプチド、およびそれらの任意の混合物から選択される単離・精製ペプチドと、所望により医薬上許容される担体、希釈剤、アジュバントおよび/または賦形剤をさらに含んでなる、免疫原性組成物。
- 少なくとも1種の発熱性外毒素により誘導される活動不能の治療のための医薬組成物であって、配列番号2のアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号3のアミノ酸配列からなるペプチド、およびそれらの任意の混合物から選択される単離、精製ペプチドと、所望により医薬上許容される担体、希釈剤、アジュバントおよび/または賦形剤をさらに含んでなる、医薬組成物。
- 発熱性外毒素により媒介されるTリンパ球の活性化を阻害し、かつ、発熱性外毒素または発熱性外毒素混合物により誘導される毒性ショックから防御するための医薬の製造のための、配列番号2のアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号3のアミノ酸配列からなるペプチド、およびそれらの任意の混合物から選択される単離、精製ペプチド、またはそれを含んでなる組成物の使用。
- 発熱性外毒素により誘導される毒性ショックに対して免疫防御を惹起するための医薬の製造のための、配列番号2のアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号3のアミノ酸配列からなるペプチド、およびそれらの任意の混合物から選択される単離、精製ペプチド、またはそれを含んでなる免疫原性組成物の使用。
- 少なくとも1種の発熱性外毒素により誘導される活動不能を予防および/または治療するための医薬の製造のための、配列番号2のアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号3のアミノ酸配列からなるペプチド、およびそれらの任意の混合物から選択される単離、精製ペプチド、またはそれを含んでなる組成物の使用。
- 医薬が、単離・精製ペプチドまたはそれを含んでなる組成物の有効量を所定の間隔時間に患者に繰り返し投与するためのものである、請求項9に記載の使用。
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