JP4076899B2 - 自動変速機の制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子制御により変速制御を行う自動変速機に関し、特に、バックアップ装置を備えたものの改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両の制御装置では、CPU、RAM、ROMなどからなるマイクロコンピュータによって制御対象(エンジンや自動変速機)の制御を行っており、走行中に学習した制御定数などはRAM上に格納されるが、イグニッションキーをOFFにしたときには、電源供給を遮断する以前にRAM上のデータを不揮発性の記憶手段で構成されるバックアップ装置に書き込む記憶保持動作が終了するまで電源供給を維持し、その後、電源を遮断して、次回の走行時に備えている(例えば、特許文献1)。なお、バックアップ装置としては、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory =E2PROM)、フラッシュメモリ、バッテリバックアップされたRAMなどの不揮発性記憶手段が用いられている。
【0003】
このような、バックアップ装置を備えた車両では、イグニッションキーがONとなったときに、前回の記憶保持動作が正確に行われたか否かを判定し、正確に行われていない場合には、前回のイグニッションキーOFF時に異常があったと判定して異常時の制御を行う。
【0004】
【特許文献1】
特開平5−61570号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、自動変速機の制御装置も上記と同様にマイクロコンピュータを用いて上述のように、イグニッションキーがOFFになると、RAM上のデータの記憶保持動作を行ってから制御装置の電源を遮断しているが、エンジンのクランキング時にはスタータモータ(またはモータジェネレータ)の作動により、制御装置に供給される電圧が一時的に低下し、寒冷地のコールドスタート時では、オイルの粘性などが常温に比して極めて高くなっているので、スタータモータが消費する電力も急増する。
【0006】
例えば、図4に示すように、VIGNを制御装置への供給電圧、VBをバッテリの電圧とすると、イグニッションキーをONにすると、VIGNも所定の電圧に上昇することから、マイクロコンピュータが起動して、制御に必要なデータをバックアップ装置から読み出す。
【0007】
その後、イグニッションキーがスタータ位置(図中ST)になると、スタータモータが作動するが、このとき、上述のように寒冷地のコールドスタート時ではスタータモータの消費電力が急増するので、制御装置へ供給される電圧VIGN及びバッテリの電圧VBは、スタータモータの電力消費の変動に伴って大きな増減を繰り返して、エンジンの完爆後に所定の電圧へ復帰する。
【0008】
このとき、図4の○印の供給電圧(図中X1、X2)では、CPUの稼動可能な供給電圧を下回った後に上昇し、CPUが再起動してリセットがかかるため、上記従来例においては、正常な記憶保持動作が完了しない。
【0009】
その後、エンジンが完爆して制御装置への供給電圧VIGNが所定の電圧以上となる時点(図中X3)以降において、再び制御装置(CPU)が起動することになり、上記従来例では、前回の記憶保持動作が正確に行われたか否かを判定する際に、図中X1、またはX2の時点で記憶保持動作が行われていないことから異常と判定されてしまい、制御装置などに異常がないにも拘わらず異常時の制御が開始されるという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたもので、制御装置への供給電圧が大きく変動した場合であっても、記憶保持動作についての誤判定を防止することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、揮発性記憶手段を含むマイクロコンピュータを備えて自動変速機を制御する制御手段と、イグニッションキーの位置に応じて前記制御手段への電力の供給を制御する電力供給手段と、前記イグニッションキーがOFFとなったときに前記揮発性記憶手段の記憶内容を不揮発性記憶手段へ格納するバックアップ手段とを備えた自動変速機の制御装置において、
前記バックアップ手段は、前記揮発性記憶手段の記憶内容と不揮発性記憶手段の記憶内容とを比較する手段と、前記比較結果が異なるときには、前記不揮発性の記憶手段に予め設けた領域に、記憶保持動作が必要であることを示す識別子を書き込む記憶保持動作要求手段と、前記イグニッションキーがOFFへ変化したときに、前記識別子が記憶保持動作が必要であることを示しているか否かを判定する判定手段と、この判定で前記識別子が記憶保持動作が必要であることを示している場合には、揮発性記憶手段の記憶内容を不揮発性記憶手段へ書き込んだ後に、前記不揮発性記憶手段の所定の領域の識別子を、記憶保持動作が完了したことを示す値に更新する記憶保持実行手段と、を備える。
【0012】
【発明の効果】
したがって、本発明は、揮発性記憶手段(RAM)のデータに変化があったときにのみ記憶保持動作が必要であることを示す識別子を不揮発性記憶手段に書き込んでおき、イグニッションキーをOFFにしたときには、この識別子が記憶保持動作が必要である場合にのみ、揮発性記憶手段の記憶内容を不揮発性記憶手段へ書き込んだ後に、前記不揮発性記憶手段の識別子を記憶保持動作が完了したことを示す値に更新するので、イグニッションキーをONにした後、制御装置への供給電圧が大きく変動してマイクロコンピュータが再起動する場合であっても、以前の記憶保持動作が完了していれば前記識別子が書き換えられることがなく、前記従来例のように電圧変動による誤判定を確実に防止して、車両に搭載される自動変速機の制御装置の信頼性を向上させることが可能になる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は自動変速機の制御装置の概略構成図を示す。
【0015】
図1において、コントローラ1は、エンジン2に連結された自動変速機3の変速比等を車両の運転状態に基づいて制御するものである。
【0016】
エンジン2には、イグニッションキー4を介してバッテリ5から電力の供給を受けてエンジン2の始動(クランキング)を行うスタータモータ(またはモータジェネレータ)20が設けられ、また、コントローラ1もイグニッションキー4を介してバッテリ5から電力の供給を受ける。なお、イグニッションキー4は、上記従来例で示した従来例の図4と同様に、コントローラ1への電力供給を遮断する「OFF」位置、スタータモータ20を除く補機類とコントローラ1へ電力を供給する「ON」位置、スタータモータ20を含む全ての機器へ電力を供給する「スタート」位置を備えるものとする。
【0017】
そして、コントローラ1は、演算処理を行うCPU11、制御プログラムやマップなどを格納したROM12、演算時のデータやプログラムを記憶する揮発性の記憶手段としてのRAM(Random Accsess Memory)13、イグニッションキー4がOFFになったときに、RAM13上のデータ(学習値や制御パラメータなどの記憶内容)を格納するバックアップ手段としてのEEPROM14を備えている。なお、EEPROM14に代わって、フラッシュメモリなど電源遮断時にも記憶保持動作が可能な不揮発性の記憶手段を採用することができる。
【0018】
また、CPU11は、供給電圧が所定の電圧以上になると起動して、ROM12から予め設定したプログラムを読み込んで制御を開始する。制御開始時には、後述するように、EEPROM14に格納されているデータが、以前の記憶保持動作で正常に格納されたか否かを判定し、この判定結果が正常であれば通常の制御を行う一方、異常であれば異常時の制御(例えば、自動変速機3の耐久性を損なわないように運転性または動力性能を制限する制御)を実行する。
【0019】
このため、EEPROM14の記憶領域は、RAM13のデータを記憶する領域と、記憶保持動作が正確に行われたか否かを判定する識別子を記憶する領域を備えている。
【0020】
また、イグニッションキー4がOFFになったときに、RAM13のデータをEEPROM14の記憶領域に格納するための電力を供給する電源線15がバッテリ5から直接コントローラ11に接続されている。このため、イグニッションキー4がOFFになってもコントローラ11にEEPROM14へのデータ格納用電力が供給されるようになっている。
【0021】
次に、図2はコントローラ1で行われる制御の一例を示すフローチャートで、コントローラ1への供給電圧が所定の電圧以上になってCPU11が起動し、ROM12から読み込んだ所定のプログラムで行われる処理を示し、このフローチャートは所定の周期(例えば、数十msec)で繰り返し実行されるものである。
【0022】
まず、ステップS1では、EEPROM14から以前の記憶保持動作が正確に行われたか否かを判定する識別子(例えば、フラグ)を読み込んで、ステップS2では、以前の記憶保持動作が有効(正常)であったか否かを判定する。
【0023】
以前の記憶保持動作が有効であれば、EEPROM14内のデータは正しい値(以前の記憶保持動作が正確に完了)であるので、ステップS3以降の制御に進む一方、以前の記憶保持動作が無効(異常)であれば、EEPROM14内のデータに異常があるため、ステップS11に進んで異常時の制御を行う。
【0024】
記憶保持動作が有効であった場合のステップS3では、以前の記憶保持動作によって待避していたEEPROM14のデータをRAM13へ書き込み、その後、ステップS4では、RAM13上のデータに基づいて自動変速機3の通常の制御を行う。
【0025】
この通常の制御では、学習制御による学習値や自動変速機3の経時変化などに対応する制御パラメータが変更されると、RAM13上のデータを更新し、常時最新のデータが記憶されている。
【0026】
ステップS5では、RAM13上のデータのうち、記憶保持動作が必要なデータ(上記学習値や制御パラメータなど)と、EEPROM14内のデータを比較し、RAM13上のデータが更新されたか否かを判定し、RAM13上のデータが更新されていなければステップS7に進む。
【0027】
一方、RAM13上のデータが更新された場合には、ステップS6に進んでEEPROM14上の記憶保持動作の状態を示す識別子の領域に「無効」を示す情報を書き込む。この「無効」の情報は、記憶保持動作が必要なRAM13上のデータとEEPROM14内のデータが異なることを意味し、現在の状態で記憶保持動作が正常に完了しないまま電源が遮断されると、次回の制御開始時には上記ステップS2の判定で「無効」と判定され、最新のデータ(学習値や制御パラメータ)が消失したことを指し示すことになる。
【0028】
次に、ステップS7では、イグニッションキー4がOFFになったか否かを判定し、OFFであればステップS8に進む一方、そうでない場合(ONまたはスタート)にはステップS4へ戻り通常の制御を継続する。
【0029】
イグニッションキー4がOFFとなったステップS8では、EEPROM14から記憶保持動作の識別子を読み込んで、この識別子が「無効」、つまり上記ステップS5でRAM13上の記憶保持動作が必要なデータが更新されたか否かを判定し、無効の場合ではステップS9以降で記憶保持動作を行う一方、識別子が「有効」の場合では記憶保持動作が必要なRAM13上のデータは更新されていないので、そのまま処理を終了し、RAM13上のデータをバックアップすることなく電源を遮断する。
【0030】
一方、記憶保持動作の識別子が無効の場合のステップS9では、RAM13上の記憶保持動作が必要なデータをEEPROM14に書き込んで、その後、ステップS10では、識別子の値を「有効」に更新して処理を終了し、この後、電源を遮断する。
【0031】
以上の制御の作用について、図3を参照しながら説明する。
【0032】
まず、前回の記憶保持動作が正常な状態である時刻T1でイグニッションキー4をOFFからONにすると、上記ステップS2の判定で、EEPROM14の識別子が「有効」であることから通常の制御が行われる。
【0033】
図中時刻T1からT2の期間に学習値や制御パラメータなどの記憶保持動作が必要なデータが更新されない場合には、EEPROM14の識別子は「有効」のままであるので記憶保持動作が必要なデータに変化がないため、時刻T2でイグニッションキー4をOFFにすると、EEPROM14への書き込みは行われずにコントローラ1の電源は遮断される。
【0034】
次に、時刻T3では寒冷地のコールドスタート時でバッテリ5からコントローラ1への供給電圧が大きく変動する状態で、イグニッションキー4をONにして、さらにスタート位置でスタータモータ20を作動させてエンジンを始動した場合を前記従来例で用いた図4を参照しながら説明する。
【0035】
時刻T2では記憶保持動作の状態を示す識別子が「有効」のままであるので、イグニッションキー4をONにすると、上記T1と同様に通常の制御が開始され、その後イグニッションキー4をスタート位置(図中ST)へ切り換えると、エンジン2のクランキングの負荷が大きいため、スタータモータ20の電力消費が大きく変動して、コントローラ1に供給される電圧VIGNも大きく変動し、図中X1では、CPU11が動作可能な電圧を下回って停止し、その後、図中Y1で所定の電圧以上となってCPU11が動作を再開すると、上記ステップS2の判定が行われる。
【0036】
直前の電圧降下(図中X1)では、EEPROM14への書き込みを行っておらず、また、記憶保持動作の識別子も時刻T2と同様に「有効」のままである。このため、図中Y1でCPU11が再起動して上記図2の処理を行っても、前記従来例のように「異常」と判定されることはなく、上記ステップS2の判定でEEPROM14から読み込んだ識別子が「有効」であるので、通常の制御が開始される。
【0037】
したがって、本発明によれば、寒冷地のコールドスタート時などの電源の負荷が大きい状態で一時的な電圧降下でCPU11が再起動するような場合であっても、前回の記憶保持動作が異常であると誤判定するのを確実に防止して、コントローラ1の信頼性を向上させることができるのである。
【0038】
次に、図3の時刻T3で正常にコントローラ1が起動し、走行中にRAM13上のデータのうち記憶保持動作が必要なデータに変化が生じると、上記ステップS5、S6の判定でEEPROM14の識別子に「無効」が書き込まれる。
【0039】
この後、時刻T4では、イグニッションキー4がOFFになると同時に、何らかの原因でコントローラ1への電力の供給が突然遮断されたと仮定すると、EEPROM14の識別子が「無効」のままで、記憶保持動作が行われずにCPU11は停止する。
【0040】
そして、時刻T5で、再びイグニッションキー4をONにすると、EEPROM14の識別子は「無効」であるので、ステップS2の判定では、前回の記憶保持動作が必要なデータの待避が正常に行われていないと判定でき、何らかのトラブルが発生している可能性があるため、ステップS11に進んで、異常時の制御が行われる。
【0041】
なお、時刻T4において、記憶保持動作が正常に行われれば、上記ステップS10でEEPROM14の識別子に「有効」が書き込まれるので、次回の始動時には上記時刻T1、T3と同様に正常にコントローラ1が起動する。
【0042】
以上のように、本発明によれば、RAM13上のデータのうち記憶保持動作が必要なデータに変化があったときにのみEEPROM14の識別子を「無効」として、この識別子が「無効」でイグニッションキー4をOFFにしたときのみ、RAM13上の所定のデータをEEPROM14内へバックアップするようにしたので、イグニッションキー4をONにした後、スタータモータ20の負荷が大きい寒冷地のコールドスタート時のようにコントローラ1への供給電圧が大きく変動する場合であっても、前記従来例のようにエンジン2の完爆後に記憶保持動作が異常と判定されるのを確実に防止できるので、車両に搭載されるコントローラ1の信頼性を向上させることが可能になる。
【0043】
なお、上記実施形態においては自動変速機の制御装置に本発明を適用した一例を示したが、エンジンや制動装置など他の車両用の制御装置へ適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す自動変速機の制御装置の概略構成図。
【図2】同じくコントローラで行われる制御の一例を示すフローチャート。
【図3】作用を示すグラフで、イグニッションキーの状態、EEPROMとRAMのデータの同一性、以前の記憶保持動作の判定、記憶保持動作の正当性と時刻の関係を示す。
【図4】スタータモータの負荷が大きいときの始動時のイグニッションキーの状態と、コントローラへの供給電圧VIGNと、バッテリ電圧VBと時刻の関係を示す。
【符号の説明】
1 コントローラ
2 エンジン
3 自動変速機
4 イグニッションキー
5 バッテリ
11 CPU
13 RAM
14 EEPROM
Claims (4)
- 揮発性記憶手段を含むマイクロコンピュータを備えて自動変速機を制御する制御手段と、
イグニッションキーの位置に応じて前記制御手段への電力の供給を制御する電力供給手段と、
前記イグニッションキーがOFFとなったときに前記揮発性記憶手段の記憶内容を不揮発性記憶手段へ格納するバックアップ手段とを備えた自動変速機の制御装置において、
前記バックアップ手段は、
前記揮発性記憶手段の記憶内容と不揮発性記憶手段の記憶内容とを比較する手段と、
前記比較結果が異なるときには、前記不揮発性記憶手段に予め設けた領域に、記憶保持動作が必要であることを示す識別子を書き込む記憶保持動作要求手段と、
前記イグニッションキーがOFFへ変化したときに、前記識別子が記憶保持動作が必要であることを示しているか否かを判定する判定手段と、
この判定で前記識別子が記憶保持動作が必要であることを示している場合には、揮発性記憶手段の記憶内容を不揮発性記憶手段へ書き込んだ後に、前記不揮発性記憶手段の所定の領域の識別子を、記憶保持動作が完了したことを示す値に更新する記憶保持実行手段と、
を備えたことを特徴とする自動変速機の制御装置。 - 前記制御手段は、前記不揮発性記憶手段の所定の領域から識別子を読み込んで、記憶保持動作が完了したか否かを判定する記憶内容判定手段を有し、
この記憶内容判定手段で記憶保持動作が完了したと判定した場合には前記不揮発性記憶手段の記憶内容を揮発性記憶手段へ書き込んだ後に予め設定された通常の制御を実行する一方、そうでない場合には予め設定された異常時の制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の自動変速機の制御装置。 - 前記記憶内容判定手段は、前記マイクロコンピュータの起動時に実行されることを特徴とする請求項2に記載の自動変速機の制御装置。
- 前記電力供給手段は、イグニッションキーの位置に応じて自動変速機に連結されたエンジンの始動手段に電力を供給することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一つに記載の自動変速機の制御装置。
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2003
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