JP4076970B2 - 不溶性シクロデキストリン担持高分子成形物の製造法 - Google Patents
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Description
シクロデキストリンの分子は、中央部に疎水性の空洞を有し、この空洞の大きさに合致する疎水性物質を空洞内に捕捉する「包接」と呼ばれる現象を起こす特徴を有している。このシクロデキストリンの性質が、食品、薬品、化粧品などの分野において様々な工業的利用の対象とされている。
また、シクロデキストリンの包接現象は、排水や河川水からの汚染物質の除去や有用物質の分離精製、光学活性物質の光学分割などへの応用も期待できる。しかしながら、シクロデキストリン自体は水溶性であるため、上記した用途に応用するためには、水に対し不溶性を示すように何らかの手段で変換することが必要である。
非特許文献1やその引用文献に述べられている通り、本方法により得られるエポキシ架橋型シクロデキストリンポリマーは、環境ホルモン物質としての作用が指摘されているフタル酸エステル類やアルキルフェノール類、あるいは自然環境中で生物によってアルキルフェノール類に変換されるアルキルフェノールエトキシレート類等の非イオン性界面活性剤などを吸着する性質を持つので、水からこれらの物質を除去することができる。
また、一般に、不溶性材料を水中で利用する場合、該材料の形状が粒子状であると取り扱いやすいが、上記方法では、シクロデキストリンポリマーは塊として得られるので、これを粒子状にするためには、架橋処理の工程を、流動パラフィンのような溶媒中でシクロデキストリン水溶液を分散させて反応を起こさせるような特殊な条件で行うことが必要であるという問題があった。
しかしながら、いずれの方法も、シクロデキストリン固定化反応が不均一系での反応となってしまうため、シクロデキストリンを効率よく大量に粒子へ化学的に固定化することが難しい。
また、ポリスチレン或いはその誘導体は、水中の微量疎水性物質の分析のための前処理に用いられる固相吸着剤として用いられることからも明らかなように、それ自身疎水性が高く非選択的に疎水性物質を吸着する性質を持っていることから、水中からシクロデキストリンの包接現象を利用して選択的に疎水性物質を吸着する吸着剤の担体としては、不適当である。
更に、シリカゲル(非特許文献2参照)の場合、シリカゲルに結合したシクロデキストリンのうち吸着に寄与しているものは、約4%しかないことが報告されていることから、シクロデキストリンの性質を生かした吸着材料としては満足できるものではない。
しかしながら、シクロデキストリンをキトサンに単に化学結合して得られるキトサン誘導体や、カルボキシメチル化シクロデキストリンと低分子量キトサンを中性水溶液中で反応させて得られるキトサン誘導体は、いずれも水溶性の性質を示す(非特許文献4及び非特許文献5参照)。
そこで、シクロデキストリンを不溶性に変換するためには、キトサンをまず成形後、架橋し、予め不溶性にして得られる架橋キトサンビーズにシクロデキストリンを固定することが必要であった。例えば、特許文献2においては、繊維状に成形したキトサンを架橋して不溶化した後に、シクロデキストリン誘導体を結合する方法が述べられている。また、非特許文献3は、特許文献2の発明者により、架橋キトサンビーズに関し発表された研究論文である。
しかしながら、この方法により得られる固定化材料は、形状がスポンジ状に限定され、吸着材として取り扱いやすさに優れたビーズ状の吸着材が製造できないという問題があった。
その結果、シクロデキストリン分子内に複数のカルボキシル基を導入したものと、アミノ基を有する親水性高分子成形体とを反応させると、カルボキシル基が架橋剤としての機能を発揮して、親水性を有する材料をその反応過程において溶解させることなく結合することができることを見出すと共に、得られる不溶性高分子成形物は、水中でもシクロデキストリンの性質を発揮して汚染物質を効率的に吸着することを確認し、本発明に到達した。
(上記一般式中、n及びmはそれぞれ0〜8の整数を表し、n+m=6〜8である。また、Rは、2個以上がカルボキシメチルエーテル基を示す。)
請求項2記載の本発明は、反応にあたり、水溶性縮合剤を添加する請求項1に記載の製造法である。
請求項4記載の本発明は、請求項3記載の不溶性高分子成形物を用いて汚染物質を除去する方法である。
本発明の不溶性高分子成形物は、水中でもシクロデキストリンの性質を発揮して汚染物質を短時間で効率的に吸着することができるので、排水や河川水からの汚染物質の除去に有用である。また、有用物質の分離精製、光学活性物質の光学分割などへの応用も期待できる。
本発明の不溶性高分子成形物の製造法は、分子内に複数のカルボキシル基を有するシクロデキストリン誘導体を、アミノ基を有する親水性高分子成形体に反応させ、シクロデキストリン誘導体で親水性高分子成形体を架橋することを特徴とする。
まず、本発明においては、シクロデキストリンとして、分子内に複数のカルボキシル基を有するシクロデキストリン誘導体を用いる。このように、分子内に反応性官能基として利用しやすいカルボキシル基を複数含むことにより、シクロデキストリン自身に架橋剤としての機能を持たせることができる。したがって、このようなシクロデキストリン誘導体は、親水性高分子材料をその反応過程において溶解させることなく、結合することができる。
このような分子内に複数のカルボキシル基を有するシクロデキストリン誘導体としては、シクロデキストリンの水酸基がカルボキシル基を有する置換基で置換されたものを挙げることができ、好ましくは、以下の一般式で表されるシクロデキストリン誘導体を挙げることができる。
(上記一般式中、n及びmはそれぞれ0〜8の整数を表し、n+m=6〜8である。また、Rは、2個以上がカルボキシル基を含む官能基を示し、かつ、それぞれが異なっていても良い。)
、或いは、一般式
(上記一般式において、R´は、直鎖又は分岐アルキル基、アリール基を示す。)
で表される官能基であることが好ましい。
尚、カルボキシル基を含む官能基以外の場合のRは、架橋反応を阻害しないものであれば特に限定されない。他にシクロデキストリンの修飾反応を行わないときは、通常、水酸基である。
その一例を挙げると、酢酸、プロピオン酸等の有機酸をハロゲン化してなる有機酸誘導体や、コハク酸、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のジカルボン酸類の酸無水物、具体的には例えば、モノクロロ酢酸、モノブロモ酢酸、又はモノヨード酢酸を、シクロデキストリンと、中性〜アルカリ条件で反応させて、シクロデキストリンの水酸基にカルボキシル基を含む置換基を導入して得ることができる。モノクロロ酢酸を用いる方法としては、S.Satomura,K.Omichi,T.Ikenakaの研究論文(Carbohydrate Research、第180巻,137〜146ページ、1988年)やMakoto Hattori,Yoko Okada,and Koji Takahashiの論文(Journal of Agricauture and Food Chemisitry、第48巻、3789〜3794ページ、2000年)に記述がある。
上記の製造例においては、シクロデキストリンの水酸基を利用することから、材料となるシクロデキストリンの種類は限定されず、α−、β−、γ−シクロデキストリンや、それらのヒドロキシプロピル誘導体、糖分岐シクロデキストリンなどのいずれも利用できる。
尚、上記例示した製造法によりシクロデキストリンにカルボキシル基を導入すると、シクロデキストリン中の様々な部位の水酸基にカルボキシル基を有する置換基が導入されたシクロデキストリン誘導体の混合物を得ることができるが、本発明においてはこのような混合物をそのまま用いることができる。
また、この混合物中には、少なくとも、分子内に複数のカルボキシル基を有するシクロデキストリン誘導体が含まれていれば良く、他に1置換の(すなわち、分子内にカルボキシル基を1つしか有しない)カルボキシル基導入シクロデキストリン誘導体や、分子内にカルボキシル基が全く導入されていないシクロデキストリンが存在していても、その混合物を用いることについて特に問題はない。
アミノ基を有する親水性高分子としては、アミノ基を1つ以上有する親水性高分子、例えば、キトサン、ポリアリルアミン、それらの誘導体等の親水性高分子の1種又は2種以上の混合物を挙げることができる。成形体の形態は、粉末や粒子状、繊維状など様々なものを挙げることができ、特に限定されない。尚、アミノ基を有する親水性高分子成形体は、架橋反応により予め不溶化されている必要はないが、架橋されているもの等であっても全く問題なく使用することができる。
尚、キチンは、キトサンのアミノ基がアセチル化されたものを意味するが、そのアセチル化度について特に規定はないことから、アセチル化されていないアミノ基を有するキチンも存在する可能性があり、このようなキチンは、本発明で言うキトサンの誘導体に含まれる。
キトサンあるいはその誘導体の成形体は、粉末、粒子状、繊維状、フィルム状など様々な形態のものであっても良い。また、キトサンと他の高分子や添加物を加えた混合物の成形体であっても問題ない。
反応条件は、その反応過程において、シクロデキストリン誘導体が親水性高分子成形体と充分に反応して架橋するまでの間に、親水性高分子成形体が溶解して成形体の形状を維持できなくなることがないように調節することが重要である。
例えば、アミノ基を有する親水性高分子成形体が、キトサン又はその誘導体の成形体のようにアルカリ性で不溶性を示す場合には、反応を、アルカリ性水溶液中で行うことが好ましい。アルカリ条件下で(一般に、pH7.5〜14、好ましくはpH8.5〜12)反応させることにより、アミノ基を有する親水性高分子成形体の形状を維持したまま、シクロデキストリン誘導体を結合させることができる。
アルカリ性水溶液としては、pH9のホウ酸−塩化カリウム−水酸化ナトリウム緩衝液、pH10の炭酸水素ナトリウム−水酸化ナトリウム緩衝液等のアルカリ性に調整した適当な緩衝液を挙げることができる。
水溶性縮合剤は、水に可溶で、水溶液中でシクロデキストリン誘導体のカルボキシル基と親水性高分子成形体のアミノ基との縮合を促進するものであればよく、特に限定されない。具体的には、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリド(DMT−MM)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(水溶性カルボジイミド)等を用いることができるが、アルカリ条件下でも活性が高い点で、DMT−MMが望ましい。
汚染物質としては、工業排水、家庭用排水等の排水や河川水等の水中に混入しているものであると、本発明の不溶性高分子成形物の性質がいかんなく発揮される点で好ましい。例えば、ビスフェノールA、フタル酸エステル類、4−ノニルフェノール、ノニルフェノールエトキシレート等のアルキルフェノール類などの環境ホルモンとしての作用が指摘されている物質、アルキルフェノールエトキシレート類等の非イオン性界面活性剤、エストロゲン、トリクレンやパークレン等の有機塩素化合物などが好ましく挙げられる。
本発明の不溶性高分子成形物を用いて、これらの汚染物質を除去する場合の例を挙げると、汚染物質を含む、或いは含む可能性の高い汚水中に、本発明の不溶性高分子成形物を、必要に応じて攪拌しながら、所定時間(汚染物質の種類により異なるが、一般に、1時間〜3日程度)浸漬することにより、汚染物質を80%以上除去することができる。不溶性高分子成形物の汚水に対する添加割合は、不溶性高分子成形物のシクロデキストリン含有量や、汚染物質の種類、濃度などに応じて、適宜定めることができる。
本製造例1では、文献(S.Satomura,K.Omichi,T.Ikenaka,Carbohydrate Research,第180巻,137−146ページ、1988年)を参考にして、以下の実施例で用いるためのカルボキシメチル化シクロデキストリン(CM−β−CD)を合成した。
すなわち、まず、β−シクロデキストリン50gを20%水酸化ナトリウム水溶液231.5gに溶かし、さらに16.3%モノクロロ酢酸水溶液135mlを加えた。この溶液を50℃で4時間攪拌し、塩酸で中和した。生じた沈殿物をろ別し、ろ液を過剰のメタノールに投入して得られた沈殿を乾燥させ、43.26gの目的物を得た。
また、本製造例により得られたカルボキシメチル化β−シクロデキストリンの1分子あたりのカルボキシメチル基の数を、プロトンNMR分析により調べたところ、およそ4.3個と見積もられた。
本製造例2では、キトサンハンドブックに記載の方法を参考にキトサン粒子を作成した。
キトサン10gを3%酢酸水溶液170mLに溶解し、水240mLで希釈した。このキトサン水溶液を、別途調製した水酸化ナトリウム15gを含む水−エタノール混合溶液(水300mL、エタノール80mL)に皮下注射針に通して滴下した。滴下の際、水−エタノール混合溶液は攪拌した。生じたキトサン粒子をろ別し、エタノールで一晩攪拌し、新しいエタノールに浸し、冷蔵庫内で保存した。使用前にエタノールから水に溶媒交換した。使用時のキトサン粒子は、白色で、平均直径2.7mm、含水率97%であった。
製造例1で得られたカルボキシメチル化β−シクロデキストリン0.65g(乾燥重量)をガラス瓶にいれ、pH9のホウ酸−塩化カリウム−水酸化ナトリウム緩衝液を加えて水溶液とした。さらに、製造例2で調製したキトサン粒子0.1gと、水溶性縮合剤DMT−MMを0.0908g、0.2167g、0.3633g、及び0.7232gの各配合量で蒸留水に溶解して調製した4種類のアルカリ性水溶液を添加し、室温で5時間攪拌した。
それぞれの水溶液から、シクロデキストリン担持キトサンビーズをろ別し、蒸留水中に浸し、一日ごとに水を替えて2日間洗浄した後、得られたシクロデキストリン担持キトサンビーズを凍結乾燥した。各DMT−MMの配合量、及び各配合量で得られたシクロデキストリン担持キトサンビーズの収量、及び該ビーズ中のシクロデキストリン含有量を、表1に示す。
実施例1の手順に従い、製造例1で得られたCM−β−CD 7.4544g、製造例2で調製したキトサン粒子1.2g、並びに、pH10の炭酸水素ナトリウム−水酸化ナトリウム緩衝液150mL及びDMT−MM 4.1218gを50mLの蒸留水に溶かしたアルカリ性水溶液を用いて、6時間反応させた。
その結果、シクロデキストリン含有量20.1%のシクロデキストリン担持キトサンビーズ1.2gを得ることができた。
製造例1で得られたCM−β−CD 7.5gを、pH10の100mM炭酸水素ナトリウム−水酸化ナトリウム緩衝液50mLに溶解した。これに、富士紡績社より市販されているキトサンビーズ(商品名キトパールAL−10、平均粒径約1mm、含水率90%)1.2gを加えた後、50mLの蒸留水に溶解した3.43gのDMT−MMを加え、室温で6時間反応させた。
反応後、シクロデキストリン担持キトサンビーズをナイロン製網に移し、蒸留水に漬け、6日間洗浄した。このシクロデキストリン担持キトサンビーズを凍結乾燥し、該ビーズ中のシクロデキストリン含有量を測定したところ、11.8%であった。
実施例1に記載の方法で合成したCD含有率27.7%のシクロデキストリン担持キトサンビーズ0.02gと、ビスフェノールAを10−5モル/Lの濃度で含む水溶液20mLとをガラス製三角フラスコに入れ、ガラス栓をした。この三角フラスコを25℃に保った水槽中で毎分95回振とうし、試験開始前及び24時間経過後の水溶液の吸光度から、吸着前後の水溶液中のビスフェノールAの濃度を測定した。吸着前の水溶液中のビスフェノールAの濃度に対する吸着前後の濃度の減少割合の百分率を、吸着率(除去率)として算出した。
また、実施例2に記載の方法で調製したシクロデキストリン含有率20.1%のシクロデキストリン担持キトサンビーズ0.02gと、4−ノニルフェノール、及びエチレングリコールの平均重合度(以下nとする)が2.5、5、7、10、15、18及び20のそれぞれであるノニルフェノールエトキシレートのうちのそれぞれとを10−5モル/Lの濃度で含む水溶液20mLを用いて、上記ビスフェノールAの場合と同様に吸着実験を行い、吸着率(除去率)を算出した。
一方、対照として、シクロデキストリンを結合しないキトサンビーズを用いて、ビスフェノールA及びn=20のノニルフェノールエトキシレートのそれぞれについて、上記の場合と同様に吸着実験を行った。
各吸着対象物質に対する吸着率(除去率)の結果を、表2に示した。
以上の結果から、分子内に複数のカルボキシル基を有するシクロデキストリン誘導体を、アミノ基を有する親水性高分子成形体に反応させ、シクロデキストリン誘導体で親水性高分子成形体を架橋することにより、水中でシクロデキストリンの性質が発揮され、汚染物質の除去に有効な不溶性高分子成形物を製造することができることが明らかとなった。
本発明の不溶性高分子成形物は、水中でもシクロデキストリンの性質を発揮して汚染物質を短時間で効率的に吸着することができるので、排水や河川水からの汚染物質の除去に有用である。また、有用物質の分離精製、光学活性物質の光学分割などへの応用も期待できる。
Claims (4)
- 反応にあたり、水溶性縮合剤を添加する請求項1に記載の製造法。
- 請求項1又は2に記載の製造法により製造される不溶性高分子成形物。
- 請求項3記載の不溶性高分子成形物を用いて汚染物質を除去する方法。
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