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JP4080182B2 - シェル形針状ころ軸受用軌道輪およびその製造方法 - Google Patents
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JP4080182B2 - シェル形針状ころ軸受用軌道輪およびその製造方法 - Google Patents

シェル形針状ころ軸受用軌道輪およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シェル形針状ころ軸受用軌道輪およびその製造方法に関する。
【0002】
シェル形針状ころ軸受はプレス加工した外輪を有する針状ころ軸受であって、このプレス加工した外輪はシェルとも称され、また、その内周面がころの転動する軌道面となることから軌道輪とも称される。
【0003】
【従来の技術】
図5に示されるシェル形針状ころ軸受は、軌道輪1と、軌道面すなわち軌道輪1の内周面2に転動自在に組み込まれた複数の針状ころ3と、針状ころ3を円周方向等間隔に保持する保持器4を主要な構成要素としている。軌道輪1は鋼板製のブランクからプレス加工により製作される。軌道輪1の両端部には、内径側に折り曲げた内向きのフランジ1a、1bを形成している。
【0004】
従来の軌道輪1の製造工程を図6ないし図10に示す。なお、図6ないし図9は各工程におけるプレス装置の断面図であり、図10は各工程における素材の断面を示す。
【0005】
図6は、加工開始直前の状態におけるプレス装置を示している。上パンチP1と上限位置にある下パンチP2との間に平板状のブランクすなわちシェル素材10がセットされている。パンチガイドG1は上パンチP1に対して相対移動可能に弾性保持されていて、図示のように、カップ状シェル素材10の外周部をダイスD1に弾性的に押し付けている。下パンチP2は上パンチP1に向けて弾性的に保持されており、上パンチP1の下降に追随して下降し、上パンチP1が上昇すると弾性力で上昇してダイスD1からカップ状シェル素材10を排出する働きをする。そして、上パンチP1を下降させてカップ状シェル素材10をダイスD1内に押し込むことによりカップ状シェル素材10に深絞りを施す。この深絞りは第一深絞り工程(図7(A))と第二深絞り工程の二段階に分けて行われる。その後、底押し行程(図8(A))、外径しごき行程(図8(B))、底抜き行程(9(A))、トリミング行程(図9(B))の各工程が続く。
【0006】
第一深絞り工程
図6に示した状態から図7(A)に示すように上パンチP1が下降することにより、カップ状シェル素材10が絞り加工され、図10(A)に示すように比較的底の浅いカップ状断面となる。この後、上パンチP1が後退するとともに下パンチP2が上昇し、カップ状シェル素材10の取り出しが行われる。
【0007】
第二深絞り工程
図7(B)に示すように、第一深絞り加工を経たカップ状シェル素材10をダイスD2内に挿入し、上パンチP3で最終製品と略等しい寸法までさらに深絞り加工する。第一および第二深絞り工程では、図10(A)(B)から分かるように、カップ状シェル素材10の底隅R11を最終製品に比べて大きな曲率半径とすることにより、深絞り加工が精度よく行えるようにしてある。
【0008】
底押し工程
図8(A)に示すように、カップ状シェル素材10を底押し用上パンチP4でダイスD3内に挿入し、カップ状シェル素材10の底隅R11を上パンチP4の先端外周で押圧して、図10(C)に示すように小さな曲率半径の隅R12に加工する。この底隅R12の曲率半径は最終製品(図4)たる軌道輪における底隅Rと実質的に等しい。
【0009】
外径しごき工程
図8(B)に示すように、カップ状シェル素材10をしごき用上パンチP5でダイスD4に挿入し、カップ状シェル素材10の外周面をダイスD4でしごき加工する。しごき用上パンチP5の先端外周は、カップ状シェル素材10の底隅R12の曲率半径と同じかそれよりも小さな曲率半径を有し、カップ状シェル素材10の外周面をしごき用ダイスD4の内周面に押し付けながらしごくことにより、カップ状シェル素材10の外周面を所定の外径寸法に仕上げる。このしごき工程も、荒しごきと仕上げしごきの二段階に分けて行うことがある。
【0010】
同時に、上パンチP5の外周の段付き面で、カップ状シェル素材10の開口端部に段付き部14をしごき加工する。段付き部14は、後工程の縁曲げを容易にするため薄肉にする工程で、たとえば図10(D)に示すような二段形状にしごき加工される。段付き部14の外側段部14aが後の縁切り工程で切除され、内側段部14bが後の縁曲げ行程で内側に折り曲げられてフランジとなる。
【0011】
底抜き工程
図9(A)に示すように、有底のカップ状シェル素材10を底抜き用上パンチP6でダイスD5内に挿入し、中空の底抜き用下パンチP7で受けながら上パンチP6を下降させることにより、カップ状シェル素材10の底中央部を打ち抜く。また、この底抜き加工で、図10(E)に示すように、カップ状シェル素材10の底にフランジ1aが形成される。
【0012】
トリミング(縁切り)工程
図9(B)に示すように、カップ状シェル素材10を縁切り用上パンチP8でダイスD6内に挿入し、下パンチP9で受けながら上パンチP8を下降させることによりカップ状シェル素材10の開口端部の縁切りを行う。この縁切りでは、図10(F)に示すように、段付き部14の外側段部14aが切除され、寸法精度の安定した内側段部14bだけが残る。
【0013】
後工程
トリミング行程の後、カップ状シェル素材10の全体に焼入れ処理が行われる。次に、カップ状シェル素材10の内側段部14bのある開口端部に、この開口端部を後の縁曲げ工程で折り曲げても割れが発生しないように焼戻し処理をした後、タンブリング(タンブラ加工)によって焼入れ処理および焼きなまし処理による着色が除去される。その後、カップ状シェル素材10に保持器付き針状ころ4が挿入され(図5参照)、開口端部の内側段部14bが縁曲げされて他方のフランジ1bが形成される。このようにして製作されたシェル形針状ころ軸受は、ハウジング等に形成した保持孔に軌道輪1を締め代をもって圧入して組み付けられる。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
従来のシェル形針状ころ軸受については、軸受寿命の不足、使用中の音響不良、ハウジング等に圧入するのに要する圧入力のばらつきと最大圧入力過大といった不具合が問題とされる場合があった。これらに共通する原因の一つとして軌道輪の精度不足が挙げられる。しかるに、上記従来のシェル形針状ころ軸受用軌道輪の製造方法では、軌道面の表面粗さや形状精度の向上を目的とした加工は施されていなかった。
【0015】
図8の外径しごき工程は内周面に対する直接的なしごき加工(内径しごき加工)になっていない。むしろ、図8の外径しごき工程でカップ状シェル素材の外周面がダイスでしごかれる際にカップ状シェル素材に大きな歪みが与えられる。この歪みの大きさと内周面(軌道面)の表面粗さとは比例関係にあって、カップ状シェル素材の外周面を大きな加工力でしごき加工するほど、内周面(軌道面)の表面粗さが悪化する。図11は加工によって素材に与えられる歪みの大きさと表面粗さの関係を表した概念図であるが、素材に対して加工を加えるほど表面粗さが悪化していくことを示している。したがって、軌道面の表面粗さ、形状精度を改善するためにはその部位に対して直接加工を施す必要がある。なお、タンブラ加工では外周面は表面粗さが向上するものの、軌道面となる内周面は焼入れによって発生したスラッジを除去する程度で、表面粗さはあまり向上しない。
【0016】
しかしながら、シェル形針状ころ軸受用軌道輪のようなカップ状素材の内周面に内径しごき加工を施す場合、その開口端側からしごきパンチを圧入してしごかざるをえず、しかも、加工に伴って塑性流動する金属材料が素材の底隅に集中することになるため、しごき代を大きくとることができない。また、しごきパンチの先端外周は、カップ状シェル素材の底隅を形成する働きをするため、小さな曲率半径とする必要がある。したがって、加工面圧が過大となり、かじりを生じるおそれがある。このかじりは確実に面荒れを誘発する。
【0017】
先端外周を小さな曲率半径としたしごきパンチでカップ状シェル素材の内周面をしごくと、潤滑油が掻き出されて焼付きを起こしたり、しごきパンチの流動性が悪く、円周方向の一部にかじりが生ずることがある。さらに、かじり部分のみが急激に摩擦抵抗が増加してパンチの加工方向に抵抗が生じ、しごきパンチの円周方向で加工力に不均一が生じる。この不均一な加工力が最終的にしごきパンチを回転させるモーメントとして作用し、しごきパンチの傾きを助長してカップ状素材の内周面の表面粗さや真円度、円筒度等の精度を劣化させる。
【0018】
本発明の目的は、シェル形針状ころ軸受用軌道輪の表面粗さ、形状精度を改善することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
円筒状の軌道面の少なくとも一端側に内径側に折り曲げたフランジを有するシェル形針状ころ軸受用軌道輪において、前記軌道面がしごき加工面であって、その表面粗さ(Ra)が0.15μm以下である。しごき加工(ironing)はパンチとダイスによってワークの壁面の厚さを減らし、厚さを一様にする板金プレス加工の一分野として知られている。この発明のシェル形針状ころ軸受用軌道輪は、軌道面がしごき加工面すなわち直接しごき加工を施した面であるため、外周面にのみしごき加工を施した従来のシェル形針状ころ軸受用軌道輪に比べて、軌道面の表面粗さおよび円筒度、真円度といった形状精度が向上している。ここに、表面粗さは、JIS B 0601に規定された中心線平均粗さ(Ra)によるものとする。
【0020】
鋼板製ブランクを深絞り加工によりカップ状シェル素材に成形する深絞り工程と、前記カップ状シェル素材の底隅部を面押しして所定の曲率半径にする面押し工程と、前記カップ状シェル素材の開口端部に段付き部をしごき加工により形成する段付け工程と、前記開口端部の周縁部を切除する縁切り工程とを有するシェル形針状ころ軸受用軌道輪の製造方法において、前記縁切り加工の後に前記カップ状シェル素材の内周面をしごき加工するしごき工程をさらに有するシェル形針状ころ軸受用軌道輪の製造方法である。軌道輪の製造過程において、カップ状シェル素材の内周面にしごき加工を施すことにより、軌道面の寸法精度が高く表面粗さも良好なシェル形針状ころ軸受用軌道輪を得ることができる。
【0021】
シェル形針状ころ軸受用軌道輪の製造方法における前記しごき工程において、所定の外径を有するしごきパンチを前記カップ状シェル素材の底部に当接するまで挿入し、前記カップ状シェル素材を最終製品たる軌道輪の外径と実質的に等しい内径のダイスに圧入し、前記しごきパンチを前記カップ状シェル素材の開口側に向けて引き抜くことによりしごき加工を行うことを特徴とする。カップ状シェル素材の円筒状内周面のしごき加工を、カップ状シェル素材の開口端側からではなく、逆に開口端側に向けて行うことによって、カップ状シェル素材の内周面のしごき加工が実現した。その結果、シェル形針状ころ軸受用軌道輪の軌道面の表面粗さ、形状精度の向上という所期の目的を達成することができたものである。
【0022】
ここで、カップ状シェル素材には、その底部が打ち抜き加工されたもの、打ち抜き加工されないもののいずれも含まれる。このカップ状素材の底部の隅の面押し加工等の必要な各種プレス加工、しごき加工を終了して最終段階で内周面のしごき加工を実施することにより、しごき加工された内周面がそのまま最終製品たる軌道輪の軌道面となるため、表面粗さ、形状精度が高精度に維持される。
【0023】
鋼板製ブランクを深絞り加工によりカップ状シェル素材に成形する深絞り工程と、前記カップ状シェル素材の開口端部に段付き部をしごき加工により形成する段付け工程と、前記カップ状シェル素材の底部分を打ち抜く底抜き工程と、前記カップ状シェル素材の開口端部の周縁部を切除する縁切り工程と、所定の外径を有するしごきパンチを前記カップ状シェル素材の底部に当接するまで挿入し、前記カップ状シェル素材の底隅部を面押しして所定の曲率半径にする面押し工程と、前記カップ状シェル素材を最終製品たる軌道輪の外径と実質的に等しい内径のダイスに圧入し、前記しごきパンチを前記カップ状シェル素材の開口側に向けて引き抜くことによりしごき加工を行うしごき工程とを有することを特徴とするシェル形針状ころ軸受用軌道輪の製造方法である。
【0024】
有底カップ状のシェル素材の底部を打ち抜き加工して内向きのフランジを形成する工程の後の最終工程に内周面のしごき加工工程を実行するものであり、しごき加工に使用されるしごきパンチでしごき加工直前にカップ状シェル素材のフランジのある隅Rを面押し加工する。これにより、1本のしごきパンチに、カップ状シェル素材の底の隅R部を面押しするパンチと、内周面をしごき加工するパンチとを兼ねさせることができる。しかも、内径しごき加工に先立ってしごきパンチをカップ状シェル素材に挿入する際に、面押し工程も同時に実行することができるため、実質上一工程省略したこととなり、サイクルタイムが短縮される。
【0025】
シェル形針状ころ軸受用軌道輪の製造方法において、前記しごきパンチが、最終製品たる軌道輪における軌道面の内径と実質的に等しい外径の先端部と、前記先端部から離れるほど外径が漸減するテーパ部とからなる加工ヘッドを有することを特徴とする。
【0026】
しごきパンチをカップ状シェル素材の開口から奥まで挿入して加工ヘッドの先端部をカップ状シェル素材の底に当接させ、そうして両者を一体化した状態でダイスに圧入した後、しごきパンチをカップ状シェル素材の開口側に向けて引き抜くことによりカップ状シェル素材の内周面をしごき加工する。加工ヘッドのテーパ部は先端部から離れるほど外径が漸減しているため、しごき加工に際してカップ状シェル素材に過大な面圧が発生することがなく、かじり発生を防止すると共に、潤滑油をかみ込み易くして焼き付けを抑制する。この明細書において、実質的に等しいとは、通常の加工公差の範囲内のものを含む趣旨である。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、図1ないし図3を参照して本発明の実施の形態を説明する。なお、添付図面の全図を通じて実質上同一の部品または部分には同一の符号を付して説明の重複を避けることとする。
【0029】
図1はシェル形針状ころ軸受(図5参照)用軌道輪の製造過程におけるしごき工程を段階的に図示したものである。カップ状シェル素材10は既述の図10(F)のトリミング工程で得られたものとほぼ同様の形状で、円筒状の内周面2の一端に内向きのフランジ1aを有し、他端側は開口端部15となっている。開口端部15は段付き部14を縁切り加工した円筒端部である。このカップ状シェル素材10は、図8のしごき工程を除く既述の図7および図9の各工程を経て製作することができる。
【0030】
図2(A)にも示すように、しごきパンチ20は概ね円柱状で、先端に加工ヘッド23を有する。加工ヘッド23はテーパ部21と先端部22とからなる。テーパ部21は先端にゆくほど大径となった、言い換えれば先端から離れるほど外径が漸減した円錐テーパ面である。先端部22の外径は最終製品たる軌道輪における軌道面の内径寸法と実質的に等しく設定してある。先端部22の外周面は小さな曲率半径の曲面で、この曲率半径はカップ状シェル素材10の底隅R12の曲率半径と等しいか、それよりも小さい。カップ状シェル素材10のしごき加工前の内周面2の内径は、しごきパンチ20の先端部22の外径より僅かに小さく設定される。
【0031】
しごきパンチ20を使ってカップ状シェル素材10の内周面2をしごくのに先立って、図2(B)に示すように、カップ状シェル素材10にしごきパンチ20を挿入してしごきパンチ20の先端をカップ状シェル素材10の底のフランジ1aに当接させる。この段階ではしごきパンチ20とカップ状シェル素材10の内周面との間にはすきまがあり、両者の関係はルーズである。
【0032】
このようにして一体化させた状態のカップ状シェル素材10/しごきパンチ20を、図1(A)に示すように、ダイス30の円筒形ダイス穴31に圧入する。ダイス穴31の内径は最終製品たる軌道輪における所定の外径と実質的に等しく設定する。そして、このダイス穴31の内径よりカップ状シェル素材10の外径を僅かに大きく設定する。したがって、ダイス穴31にカップ状シェル素材10を圧入すると、カップ状シェル素材10の外周面が拘束されて外径が縮径し、それに伴い内径も縮径して所定のしごき代が形成される。
【0033】
次に、図2(B)に示すように、ダイス30上に平板状のストッパ40をセットして、ストッパ40の下面にカップ状シェル素材10の上端を当接させる。ストッパ40は、しごき荷重によってカップ状シェル素材10がダイス穴31から抜け出すのを防止する。
【0034】
続いて、図2(C)に示すように、しごきパンチ20を上昇させてカップ状シェル素材20から引き抜くことによりしごき加工を行う。このとき、しごきパンチ20の加工ヘッド23がカップ状シェル素材10のフランジ1a側から開口端部15側に向けて移動し、内周面2をしごき加工する。内周面2のしごき加工を終えると、図2(D)に示すように、しごきパンチ20はストッパ40の上方に抜き出される。
【0035】
しごきパンチ20の加工ヘッド23は円錐テーパ形状であって、最も大径の先端部22がカップ状シェル素材10の内周面2をフランジ1aの内端から開口端部15に向けて順にしごき加工する。この場合、加工ヘッド23のテーパ部21のテーパ角度を小さくすることにより、しごき加工時の面圧が過大となることを回避することができる。
【0036】
しごきパンチ20の加工ヘッド23が円錐状であるため、しごき加工時に加工部の円周方向における加工面圧分布に不均一が生じたとしても、カップ状シェル素材10に対するしごきパンチ20の傾きが変わりにくく、かじりが発生しない。したがって、カップ状シェル素材の内周面(軌道面)2の面荒れを誘発しない。
【0037】
加工ヘッド23のテーパ部21がしごき加工方向に緩やかに縮径しているため、くさび効果により加工部に潤滑油をかみ込みやすく、焼付きが防止される。
【0038】
しごき加工に伴って塑性流動する金属材料は開口端部15に向かって流れるため、余分な金属材料の逃げ場があり、製品ばらつきによる工具類の底づき等のトラブルが発生する心配がない。
【0039】
以上の各利点の相乗効果でもってしごきパンチ20によるカップ状シェル素材10の安定した内径しごき加工が実現し、しごき加工された内周面(軌道面)2の表面粗さや真円度、円筒度等の精度が改善される。
【0040】
この実施の形態では、カップ状シェル素材の内径しごき加工はカップ状シェル素材製作の最終工程で実行され、精度よく仕上げられた内周面がそのまま最終製品たる軌道輪の軌道面として提供される。カップ状シェル素材は有底のカップ状シェル素材であってもよく、その場合のカップ状シェル素材の内周面のしごきパンチによるしごき加工は図1に関連して既述したのと同様に行うことができる。
【0041】
また、カップ状シェル素材の円筒状内周面の一端のフランジの底隅を小さな曲率半径に面押し加工する工程の直後に内径しごき加工工程を実行するようにしてもよい。たとえば、次に述べるように図3に示す工程による軌道輪製造も有効である。
【0042】
図3(A)に示すカップ状シェル素材10は深絞り工程で得られた有底カップ状のもので、底の隅部は曲率半径の大きな隅R部11である。このカップ状シェル素材10を図3(B)に示すように底抜き加工し、段付け加工とトリミング加工して隅R部11に鍔部1aを形成し、開口端部15に段付き部14を形成する。この後、図3(C)に示すようにパンチ20を底まで挿入したカップ状シェル素材10をダイス30のダイス穴31に圧入する。図3(C)のダイス穴31は底付き穴で、このダイス穴31の底部32にカップ状シェル素材10のフランジ1aを当接させて、パンチ20の先端外周22で隅R11を面押しして、隅R11を小さな所定の曲率半径の隅R12に加工する。面押しが終了したパンチ20を上昇させると、図1と同じ要領でカップ状シェル素材10の内周面がパンチ20の加工部23でしごき加工される。
【0043】
図3の製造方法のように共通のパンチ20でカップ状シェル素材10の面押し加工と内径しごき加工を行うことで、軌道輪製造用パンチの数が少なくでき、パンチを使用した加工工程数も少なくできる。
【0044】
【発明の効果】
本発明の効果を検証するため、鋼板製カップ状シェル素材の円筒状内周面の、しごき加工前後の表面粗さ、円筒度、真円度を測定したところ、次の実験データを得た。
【0045】
実験1(表面粗さRa)
カップ状シェル素材の内周面の円周方向三等分位置について、しごき加工前としごき加工後の表面粗さRa(μm)を測定した結果は次のとおりであった。
【0046】
しごき加工前 (0.3366)、(0.3671)、(0.3851)
しごき加工後 (0.0319)、(0.0328)、(0.0409)
しごき加工前の表面粗さは従来の製品軌道面の表面粗さに相当することから、上記実験結果より、本発明品の表面粗さは従来品の約1/10に改善されることが分かる。
【0047】
また、カップ状シェル素材の内周面の、しごき加工前の表面粗さがRa=0.3366、しごき加工後の表面粗さがRa=0.0319である1箇所の粗さ曲線を図4に示す。図4(A)がしごき加工前、図4(B)がしごき加工後であり、両者の対比から表面粗さが改善されたことが明瞭に見て取れる。かかる軌道面の表面粗さRaは、実用上0.15以下が望ましいとされるところ、カップ型シェル素材の内周面をしごき加工することによって平均して表面粗さRa≦0.1が達成できる。
【0048】
実験2(円筒度CY)
カップ状シェル素材の円筒度CY(μm)を測定した結果は次のとおりである。ここに、円筒度は、円筒状の面に内接する円筒と、その面上の各点との間の各ラジアル平面内での最大のラジアル距離と定義される。
【0049】
しごき加工前 18.2
しごき加工後 15.0
この実験結果より、円筒度も十分に改善されることが確認された。
【0050】
実験3(真円度)
カップ状シェル素材の内周面の三等分位置における真円度を測定した結果は次のとおりである。ここに、真円度は、円形の線に内接する円と、その円形の線上の各点との間の最大のラジアル距離と定義される。
【0051】
しごき加工前 (10.8μm)、(8.4μm)、(7.2μm)
しごき加工後 (4.4μm)、(4.2μm)、(4.5μm)
しごき加工前の真円度は従来の製品軌道面の真円度に相当することから、この実験結果より、真円度が約2倍に改善されたことが分かる。
【0052】
上記のとおり、本発明によりシェル形針状ころ軸受用軌道輪の表面粗さ、形状精度を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法を説明するための断面図であって、
(A)はカップ状シェル素材挿入時、
(B)はストッパー設置時、
(C)はしごき加工時、
(D)はしごき加工後を示す。
【図2】(A)はしごきパンチとカップ状シェル素材の断面図、
(B)はしごきパンチとカップ状シェル素材に挿入した状態の断面図である。
【図3】本発明の別の実施の形態を説明するための断面図であって、
(A)は深絞り加工時のカップ状シェル素材断面図、
(B)は底抜き工程およびトリミング工程後のカップ状シェル素材断面図、
(C)はしごき加工直前の底押し工程の断面図である。
【図4】(A)はカップ形シェル素材の内周面のしごき加工前の粗さ曲線図、
(B)はカップ形シェル素材の内周面のしごき加工後の粗さ曲線図である。
【図5】シェル形針状ころ軸受の部分断面図である。
【図6】ブランクをセットした状態のプレス装置の断面図である。
【図7】(A)は図6に示されるプレス装置の第一深絞り工程における拡大断面図、
(B)は図6に示されるプレス装置の第二深絞り工程における拡大断面図である。
【図8】(A)は図6に示されるプレス装置の底押し工程における拡大断面図、
(B)は図6に示されるプレス装置の外径しごき工程における拡大断面図である。
【図9】(A)は図6に示されるプレス装置の底抜き工程における拡大断面図、
(B)は図6に示されるプレス装置のトリミング工程における拡大断面図である。
【図10】(A)は図7(A)に示される工程におけるカップ状シェル素材の拡大断面図、
(B)は図7(B)に示される工程におけるカップ状シェル素材の拡大断面図、
(C)は図8(A)に示される工程におけるカップ状シェル素材の拡大断面図、
(D)は図8(B)に示される工程におけるカップ状シェル素材の拡大断面図、
(E)は図9(A)に示される工程におけるカップ状シェル素材の拡大断面図、
(F)は図9(B)に示される工程におけるカップ状シェル素材の拡大断面図である。
【図11】加工による歪みと表面粗さの関係を示す概念図である。
【符号の説明】
1 軌道輪
1a、 1b フランジ
2 軌道面(カップ状シェル素材の内周面)
3 針状ころ
4 保持器
10 カップ状シェル素材
11 底隅R
12 底隅R
14 段付き部
15 開口端部
20 パンチ
21 テーパ部
22 先端部
23 加工ヘッド
30 ダイス
31 ダイス穴
40 ストッパ

Claims (3)

  1. 鋼板製ブランクを深絞り加工によりカップ状シェル素材に成形する深絞り工程と、
    前記カップ状シェル素材の底隅部を面押しして所定の曲率半径にする面押し工程と、
    前記カップ状シェル素材の開口端部に段付き部をしごき加工により形成する段付け工程と、
    前記開口端部の周縁部を切除する縁切り工程と、
    を有するシェル形針状ころ軸受用軌道輪の製造方法において、
    前記縁切り工程の後に前記カップ状シェル素材の内周面をしごき加工する内径しごき工程をさらに有し、
    前記内径しごき工程において、所定の外径を有するしごきパンチを前記カップ状シェル素材の底部に当接するまで挿入し、前記カップ状シェル素材を最終製品たる軌道輪の外径と実質的に等しい内径のダイスに圧入し、前記しごきパンチを前記カップ状シェル素材の開口側に向けて引き抜くことによりしごき加工を行うことを特徴とするシェル形針状ころ軸受用軌道輪の製造方法。
  2. 鋼板製ブランクを深絞り加工によりカップ状シェル素材に成形する深絞り工程と、
    前記カップ状シェル素材の開口端部に段付き部をしごき加工により形成する段付け工程と、
    前記カップ状シェル素材の底部分を打ち抜く底抜き工程と、
    前記カップ状シェル素材の開口端部の周縁部を切除する縁切り工程と、
    所定の外径を有するしごきパンチを前記カップ状シェル素材の底部に当接するまで挿入し、前記カップ状シェル素材の底隅部を面押しして所定の曲率半径にする面押し工程と、
    前記カップ状シェル素材を最終製品たる軌道輪の外径と実質的に等しい内径のダイスに圧入し、前記しごきパンチを前記カップ状シェル素材の開口側に向けて引き抜くことによりしごき加工を行う内径しごき工程と
    を有することを特徴とするシェル形針状ころ軸受用軌道輪の製造方法。
  3. 前記しごきパンチが、最終製品たる軌道輪における軌道面の内径と実質的に等しい外径の先端部と、前記先端部から離れるほど外径が漸減するテーパ部とからなる加工ヘッドを有することを特徴とする請求項1または2に記載のシェル形針状ころ軸受用軌道輪の製造方法。
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