JP4090813B2 - リグニン系マトリックスを有する複合材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リグニンから誘導されたリグノフェノール誘導体、その二次誘導体、高次誘導体をマトリックスとして用いる複合材料に関する。詳しくは、リグノフェノール誘導体及び/又はその二次誘導体をマトリックスとすることで、フィラーなどの分散材を集合させて複合材料とする一方、前記誘導体を物理化学的処理により構造変換させマトリックスを脱複合可能な複合化技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
人工構築物には、繊維強化プラスチックや鉄筋コンクリートなど、マトリックス中に強化材料としてのフィラーを保持させた複合材料が多い。しかしながら、人工の複合材料は、強度などの機能が優先して追求されている。このため、複合化するに際して、複合化されたマトリックスと分散材とを合理的に解体する手法や次段階での利用が全く考慮されていないのが現状である。したがって、これらの人工構築物は、一旦構築されその後不用になると、それぞれの材料に分解することができないため、そのまま廃棄されるか、あるいは粉砕されて骨材や路盤材などに使用される他は、ほとんど再利用の途はない。
【0003】
一方、自然界における典型的な複合材料には、植物細胞壁がある。植物細胞壁は、セルロースとリグニンとが強固な複合構造を形成することにより、高い物理的強度と耐久性とを発現している。すなわち、植物細胞壁においては、直鎖状のセルロースが集合化したセルロースミクロフィブリルが異なる配向で交絡して骨格を形成し、この骨格の空隙を疎水性ネットワークポリマーであるリグニンが充填する複合構造を構成している。さらに、ヘミセルロースが、セルロース骨格を被覆するように存在し、リグニンとの親和性を強化し、複合構造の強靭化に寄与している。
植物体におけるリグノセルロース系複合構造は、長期にわたってその複合状態を維持し、一旦土に還れば、地中の微生物により容易にその複合状態が解放されて、自然界の炭素循環サイクルにフローさせることができる。
すなわち、リグノセルロース系複合体は、地球全体における炭素供給バランスの調節機能を担っている重要でかつ莫大な炭素資源であるといえる。したがって、当該複合体の利用を考える場合、セルロース及びリグニンを長期的に活用していくことが、炭素供給バランスを維持していく上で重要である。
【0004】
現在までのところ、リグノセルロース系複合体の利用形態は様々であるが、木工品などの他、ファイバーやチップなどの成形材料として他の材料と複合されて使用されることが多い。成形体の機能的観点から、これらの成形材料は、熱硬化性樹脂によって結合されて成形体とされている。しかしながら、熱硬化性樹脂を使用しているために、廃棄時にファイバーやチップとの分離が困難となり、結果として、リグノセルロース系資源の再利用は困難となっている。
一方、リグノセルロース系複合体中のセルロースは、ファイバー化とシート化とを繰り返すことによって再利用が図られている。しかしながら、同時に分離されたリグニンに関しては、燃料として消費されることが主体となっており、その一部が限定された用途に再利用されているに過ぎない。
【0005】
本発明者らはこれまでの研究により、濃酸による炭水化物の膨潤に基づく組織構造の破壊と、フェノール誘導体によるリグニンの溶媒和とを組み合わせてリグニンの不活性化を抑制しつつ、リグノセルロース系物質を炭水化物とリグニンのフェノール誘導体(以下、リグノフェノール誘導体という。)とに分離する方法を開発している(特開平2−233701号)。この方法で得られたリグノフェノール誘導体の活用法としては、例えば、セルロース系ファイバー等の成形材料に適用し成形体を作製することが報告されている(特開平9−278904号)。かかるリグノフェノール誘導体は、1,1−ビス(アリール)プロパンを高頻度構成単位として有するリグニン系ポリマーであって、高粘結性を潜在的に有していることがわかっている(特開平9−278904号)。
さらに、かかるリグノフェノール誘導体は、メチロール化することにより架橋性を付与でき、リニアあるいはネットワーク状の架橋構造を構築できると同時に、アルカリ処理によって、再び低分子化して溶媒中に溶解されることも、本発明者らにより見出されている(特開2001−261839号公報)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、現在までにおいて、リグノセルロース複合体のリグニン由来区分をマトリックスとして使用して人工的な複合材料を形成し、しかも、そのリグニン由来区分の構造変換に基づいて複合構造を解放、すなわち、脱複合することは全く見出されていない。また、この構造変換による複合状態の脱複合過程を経ることにより、リグニン由来区分を逐次利用することについても全く知られていない。
【0007】
そこで、本発明の課題は、リグノフェノール誘導体を利用した、脱複合が容易な複合材料を提供することを目的とする。
また、本発明は、リグノフェノール誘導体及び/又はそのさらなる誘導体をリグニン系マトリックスの構成材料として使用して、リグニン系マトリックスの逐次的利用を実現してリグニン資源の長期的利用を確保する方法を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、自然界において安定性の高い無機系材料とリグノフェノール誘導体とを複合化し、複合成分の相互の循環利用が容易な複合技術を提供することもその課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、リグノフェノール誘導体ならびにそのさらなる誘導体が特定ユニットを備える場合、自己以外の材料をよく拘束して複合材料のマトリックスを構築できること、同時にこのユニットの存在に基づく低分子化と構造変換によって、複合材料を脱複合させることを見出し、本発明を完成した。また、当該脱複合後でも、さらなる誘導体化が可能であることを利用して、当該マトリックスを逐次的利用して新たな複合材料を提供できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明によれば、以下の手段が提供される。
【0009】
(1)リグニン系マトリックスを有する複合材料であって、
前記リグニン系マトリックスは、以下の(a)〜(e):
(a)フェノール誘導体のフェノール性水酸基に対してオルト位の炭素原子が、リグニンのアリールプロパンユニットのC1位の炭素原子に結合した第一の1,1−ビス(アリール)プロパンユニットを有するリグノフェノール誘導体
(b)前記リグノフェノール誘導体に対して、水酸基保護処理、アルカリ処理、及び架橋性基導入反応から選択される1種の反応を行って得られ、かつ前記第一のユニットを有する二次誘導体
(c)前記リグノフェノール誘導体に対して、水酸基保護処理、アルカリ処理、及び架橋性基導入反応から選択される2種以上の反応を行って得られ、かつ前記第一のユニットを有する高次誘導体、
(d)前記二次誘導体のうち架橋性基導入反応により得られる二次誘導体が架橋されている二次誘導体の架橋体、及び
(e)前記高次誘導体のうち、架橋性基導入反応を経て得られる高次誘導体が架橋されている高次誘導体の架橋体
からなる群から選択される1種あるいは2種以上のリグニン系ポリマーを有し、
前記複合材料のアルカリ処理により脱複合可能である、複合材料。
(2)前記(a)リグノフェノール誘導体は、フェノール性水酸基に対する少なくとも一つのオルト位が置換されていないフェノール誘導体を含む1種あるいは2種以上のフェノール誘導体が添加されたリグノセルロース系材料と、酸とを接触させて得られる、(1)記載の複合材料。
(3)前記フェノール誘導体は、パラ位に置換基を有し残存するオルト位が置換されていない、(1)又は(2)に記載の複合材料。
(4)前記フェノール誘導体は、p−クレゾールである、(3)記載の複合材料。
(5)前記フェノール誘導体は、パラ位と残存するオルト位とに置換基を有する、(1)又は(2)に記載の複合材料。
(6)前記フェノール誘導体は、2,4−ジメチルフェノールである、(5)記載の複合材料。
(7)前記フェノール誘導体が、パラ位に置換基を有し残存するオルト位が置換されていないフェノール誘導体と、パラ位と残存するオルト位とに置換基を有するフェノール誘導体である、(1)又は(2)に記載の複合材料。
(8)前記フェノール誘導体は、p−クレゾール及び2,4−ジメチルフェノールである、(7)記載の複合材料。
(9)前記リグノフェノール誘導体は、フェノール誘導体のフェノール性水酸基に対してパラ位の炭素原子が、リグニンのアリールプロパンユニットのC1位の炭素原子に結合した第二の1,1−ビス(アリール)プロパンユニットを有する、(1)〜(8)のいずれかに記載の複合材料。
(10)前記リグノフェノール誘導体は、フェノール性水酸基に対する少なくとも一つのオルト位が置換されていないフェノール誘導体と少なくともパラ位が置換されていないフェノール誘導体とを含むフェノール誘導体が添加されたリグノセルロース系材料と、酸とを接触させて得られる、(9)記載の複合材料。
(11)前記第二のユニットを構成するフェノール誘導体は、2つのオルト位に置換基を有する、(9)又は(10)記載の複合材料。
(12)前記フェノール誘導体は、2,6−ジメチルフェノールである、(11)記載の複合材料。
(13)前記リグニン系マトリックスには、無機系材料を含有する、(1)〜(12)のいずれかに記載の複合材料。
(14)前記無機系材料は、金属塩である、(13)記載の複合材料。
(15)前記無機系材料は、アルカリ非膨潤性である、(13)又は(14)に記載の複合材料。
(16)アルカリ膨潤性材料を含有する、(1)〜(14)のいずれかに記載の複合材料。
(17)前記アルカリ膨潤性材料はセルロース系材料である、(9)記載の複合材料。
(18)さらに、ファイバー材料を含有する、(1)〜(10)のいずれかに記載の複合材料。
(19)リグニン系マトリックスを有する複合材料の製造方法であって、
以下の(a)〜(c):
(a)フェノール誘導体のフェノール性水酸基に対してオルト位の炭素原子が、リグニンのアリールプロパンユニットのC1位の炭素原子に結合した第一の1,1−ビス(アリール)プロパンユニットを有するリグノフェノール誘導体
(b)前記リグノフェノール誘導体に対して、水酸基保護処理、アルカリ処理、及び架橋性基導入反応から選択される1種の反応を行って得られ、かつ前記第一のユニットを有する二次誘導体、及び
(c)前記リグノフェノール誘導体に対して、水酸基保護処理、アルカリ処理、及び架橋性基導入反応から選択される2種以上の反応を行って得られ、かつ前記第一のユニットを有する高次誘導体
からなる群から選択される1種あるいは2種以上のリグニン系ポリマーの、目的とする複合材料をアルカリ処理により脱複合させるのに十分な量と、
前記リグニン系マトリックスに複合化される他の構成材料、
とを含有するマトリックス組成物を、加圧及び/又は加熱して成形する工程を備える、方法。
(20)前記リグニン系マトリックスの構成材料として、少なくとも架橋性基導入反応を経た前記リグニン系ポリマーを含有し、前記成形工程に際して架橋させる、(19)記載の方法。
(21)前記架橋性官能基導入反応を経た前記リグニン系ポリマーにおける、前記リグノフェノール誘導体は、前記第一のユニットを構成するフェノール誘導体がパラ位に置換基を有し残存するオルト位が置換されていないフェノール誘導体及び/又はパラ位と残存するオルト位とに置換基を有している、(19)又は(20)記載の方法。
(22)複合材料の使用方法であって、
リグニン系マトリックスを有する複合材料であって、
前記リグニン系マトリックスは、以下の(a)〜(e):
(a)フェノール誘導体のフェノール性水酸基に対してオルト位の炭素原子が、リグニンのアリールプロパンユニットのC1位の炭素原子に結合した第一の1,1−ビス(アリール)プロパンユニットを有するリグノフェノール誘導体
(b)前記リグノフェノール誘導体に対して、水酸基保護処理、アルカリ処理、及び架橋性基導入反応から選択される1種の反応を行って得られ、かつ前記第一のユニットを有する二次誘導体
(c)前記リグノフェノール誘導体に対して、水酸基保護処理、アルカリ処理、及び架橋性基導入反応から選択される2種以上の反応を行って得られ、かつ前記第一のユニットを有する高次誘導体、
(d)前記二次誘導体のうち架橋性基導入反応により得られる二次誘導体が架橋されている二次誘導体の架橋体、及び
(e)前記高次誘導体のうち、架橋性基導入反応を経て得られる高次誘導体が架橋されている高次誘導体の架橋体
からなる群から選択される1種あるいは2種以上のリグニン系ポリマーを有する複合材料を、アルカリ処理して、脱複合する工程と、
前記脱複合工程において得られたアルカリ処理されたリグニン系マトリックス中の前記リグニン系ポリマーに対して、水酸基保護処理、アルカリ処理、及び架橋性基導入反応から選択される1種あるいは2種以上の反応を施して、より高次の誘導体を得る工程、
とを備える、方法。
【0010】
(1)〜(18)の手段によれば、前記高分子材料中のリグノフェノール誘導体、二次誘導体及び高次誘導体が備える第一のユニットは、これらの誘導体の他架橋体においてアルカリ処理による低分子化と構造変換とを生じさせる。これにより、リグニン系マトリックスは緩みあるいは崩壊し、同時に、複合化されていた他の材料もリグニン系マトリックスから分離され、結果として本複合材料は脱複合される。なお、ここで、脱複合とは、複合材料の複合状態の緩みあるいは少なくとも部分的な崩壊を意味している。また、脱複合とは、複合材料からの、マトリックスの構成材料の少なくとも部分的な回収を可能とする程度のマトリックス構成材料の分離も意味している。
また、(19)〜(21)の手段によれば、容易に脱複合される複合材料が提供される。
また、(22)の手段によれば、アルカリ処理による脱複合により、前記高分子材料中のリグノフェノール誘導体、二次誘導体、高次誘導体及び架橋体が、低分子化及び構造変換される。これらの各種誘導体は、低分子化と構造変換後も、前記各種反応による誘導体化が可能である。このため、この方法によれば、逐次的に構造変化させつつ長期にわたってリグニン系マトリックスを利用することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の複合材料は、リグニン系マトリックス中に、上記した(a)〜(e)のリグニン系ポリマーの1種あるいは2種以上を有することを特徴としている。かかる複合材料は、上記(a)(b)及び(c)のリグニン系ポリマーを含有する複合材料用組成物を加圧及び/又は加熱して成形することによって得られる。特に、これらのリグニン系ポリマーが、架橋性基導入反応が施されたものである場合、所定の加熱条件下においては、上記(d)及び(e)のリグニン系ポリマーを含有するマトリックスを有する複合材料を得ることができる。
以下、上記マトリックス組成物について説明し、次いで、最終的に得られる複合材料とその利用について説明する。
【0012】
本発明における複合材料用組成物の成分でもあり、複合材料のリグニン系マトリックスの成分でもある、上記(a)、(b)及び(c)のリグニン系ポリマーについて説明する。
上記(a)のリグニン系ポリマーは、フェノール誘導体のフェノール性水酸基に対してオルト位の炭素原子が、リグニンのフェニルプロパンユニットのベンジル位(側鎖C1位)の炭素原子に結合した第1の1,1−ビス(アリール)プロパンユニットを有するリグノフェノール誘導体である。(b)及び(c)のリグニン系ポリマーは、いずれもこの(a)のリグノフェノール誘導体をさらに誘導体化して得られる。
なお、これらのリグニン系ポリマーは、フェノール誘導体のフェノール性水酸基に対してパラ位の炭素原子が、リグニンのアリールプロパンユニットのC1位の炭素原子に結合した第二の1,1−ビス(アリール)プロパンユニットを有するリグノフェノール誘導体を含むこともできる。
【0013】
これらの各種リグニン系ポリマーにおいては、いずれも、上記した第一のユニットを有している。また、これらのリグニン系ポリマーの架橋体である上記(d)及び(e)においても、第一のユニット中の導入フェノール誘導体は保持される。すなわち、これらのリグニン系ポリマーでは、この第一のユニット中の導入フェノール誘導体を脱複合のためのスイッチング素子(第一の素子)として使用し、この素子部位において高分子骨格を開裂させることができる。
したがって、上記(a)〜(e)のリグニン系ポリマーを用いることにより、リグニン系マトリックスによる複合化と脱複合とを両立させることができる。
一方、上記第二のユニットは、第一のユニットと異なり、当該部位における高分子骨格の開裂を抑制する。すなわち、第二のユニット中の導入フェノール誘導体を、脱複合を制限する素子(第二の素子)として使用することができる。
なお、以下の説明においては、(a)のリグニン系ポリマーである、第一のユニットを有するリグノフェノール誘導体を一次誘導体といい、この一次誘導体から生成する二次誘導体(上記(b))及び高次誘導体(上記(c))を包含する概念をリグノフェノール誘導体というものとし、特に、誘導体の種類を問わないときは、リグノフェノール誘導体と記載する。また、それぞれの誘導体について特に言及するときは、一次誘導体、二次誘導体及び高次誘導体とそれぞれ記載するものとする。二次誘導体及び高次誘導体において、架橋性基導入反応が施されて架橋性基が導入されているものを、架橋性体というものとする。さらに、リグノフェノール誘導体の架橋体というときは、二次誘導体の架橋体(上記(d))と高次誘導体の架橋体(上記(e))との双方を含み、特に架橋体の種類を問わないときは、架橋体というものとし、二次誘導体の架橋体か高次誘導体の架橋体かを区別するときは、それぞれ二次架橋体及び高次架橋体というものとする。
【0014】
(リグノフェノール誘導体)
(一次誘導体)
一次誘導体は、通常、所定のフェノール誘導体により親和されたリグニン含有材料、好ましくはリグノセルロース系材料を酸に接触させることにより、得ることができる。なお、リグノフェノール誘導体に関するより一般的な記載及びその製造プロセスについては、既に、特開平2−23701号公報、特開平9−278904号公報及び国際公開WO99/14223号公報、2001−64494号公報、2001−261839号公報、2001−131201号公報、2001−34233号公報において記載されている(これらの特許文献に記載の内容は、全て引用により本明細書中に取り込まれるものとする)。
【0015】
以下、この製造プロセスについて説明する。
本製造プロセスは、図1に示すように、特に、リグノセルロース系材料を予めフェノール誘導体で溶媒和、あるいはフェノール誘導体をリグノセルロース系材料に収着させた上で、当該リグノセルロース系材料を酸と接触させることにより、リグノセルロースの複合状態を緩和させ、同時に、天然リグニンのアリールプロパンユニットのC1位(ベンジル位)に選択的に前記フェノール誘導体をグラフティングさせて、リグノフェノール誘導体を生成させ、同時にセルロースとリグノフェノール誘導体とに分離できる方法である。
リグノフェノール誘導体は、リグニンのアリールプロパンユニットのC1位に、フェノール誘導体がC−C結合で導入された1,1−ビス(アリール)プロパン単位を含む重合体を意味するものである。リグノフェノール誘導体は、それ自体、リグノセルロース系材料から反応、分離して得られるリグニン由来のポリマーの混合物であり、また、得られるポリマーにおける導入フェノール誘導体の量や分子量は、原料となるリグノセルロース系材料および反応条件により変動する。
【0016】
本発明で用いる「リグノセルロース系材料」とは、木質化した材料、主として木材である各種材料、例えば、木粉、チップの他、廃材、端材、古紙などの木材資源に付随する農産廃棄物や工業廃棄物を挙げることができる。また用いる木材の種類としては、針葉樹、広葉樹など任意の種類のものを使用するこができる。さらに、各種草本植物、それに関連する農産廃棄物や工業廃棄物なども使用できる。
【0017】
リグノセルロース系物質を溶媒和あるいはリグノセルロース系材料に収着させるフェノール誘導体としては、1価のフェノール誘導体、2価のフェノール誘導体、または3価のフェノール誘導体などを用いることができる。
1価のフェノール誘導体の具体例としては、1以上の置換基を有していてもよいフェノール、1以上の置換基を有していてもよいナフトール、1以上の置換基を有していてもよいアントロール、1以上の置換基を有していてもよいアントロキノンオールなどが挙げられる。
2価のフェノール誘導体の具体例としては、1以上の置換基を有していてもよいカテコール、1以上の置換基を有していてもよいレゾルシノール、1以上の置換基を有していてもよいヒドロキノンなどが挙げられる。
3価のフェノール誘導体の具体例としては、1以上の置換基を有していてもよいピロガロールなどが挙げられる。
本発明においては1価のフェノール誘導体、2価のフェノール誘導体及び3価のフェノール誘導体のうち、1種あるいは2種以上を用いることができるが、好ましくは1価のフェノールを用いる。
【0018】
1価から3価のフェノール誘導体が有していてもよい置換基の種類は特に限定されず、任意の置換基を有していてもよいが、好ましくは、電子吸引性の基(ハロゲン原子など)以外の基であり、例えば、炭素数が1〜4、好ましくは炭素数が1〜3の低級アルキル基含有置換基である。低級アルキル基含有置換基としては、例えば、低級アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基など)、低級アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基など)である。また、アリール基(フェニル基など)の芳香族系の置換基を有していてもよい。また、水酸基含有置換基であってもよい。
【0019】
これらのフェノール誘導体は、そのフェノール性水酸基に対してオルト位あるいはパラ位の炭素原子がリグニンのフェニルプロパンユニットのC1位の炭素に結合することにより、フェニルプロパンユニットに導入されることになる。したがって、少なくとも1つの導入サイトを確保するには、オルト位及びパラ位のうち、少なくともひとつの位置に置換基を有していないことが好ましい。
【0020】
以上のことから、本発明では、無置換フェノール誘導体の他、少なくとも一つの無置換のオルト位あるいはパラ位を有する各種置換形態のフェノール誘導体の1種あるいは2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0021】
本プロセスにおいては、使用するフェノール誘導体の種類を選択することにより、得られる一次誘導体への架橋性官能基の導入頻度を調節し、結果としてプレポリマーの架橋反応性を制御することができる。
即ち、架橋性基の導入部位は、フェノール性水酸基に対してオルト及びパラ位である。また、導入フェノールのリグニンのフェニルプロパン単位への導入サイトもフェノール性水酸基に対してオルト位あるいはパラ位である。したがって、導入フェノール誘導体における、フェノール性水酸基に対するオルト位及びパラ位(最大3サイト)への置換基の導入態様により、導入フェノール誘導体への架橋性官能基の導入サイトや導入量を制御し、ひいてはリグニン母体側への導入量も制御できる。例えば、導入フェノール誘導体の置換態様とリグニンへの結合部位及び架橋性基の導入部位は、以下の表のとおりとなる。
【表1】
【0022】
このように、反応性の異なる架橋性基導入部位を有するフェノール誘導体や、導入部位数がないか、あるいは異なるフェノール誘導体を1種あるいは2種以上組み合わせてリグニンに導入することにより、後で架橋性基の導入時に、架橋性基の導入部位や数を制御することができ、結果として、架橋性体を架橋して得られる架橋体の架橋密度も制御することができる。
【0023】
また、第一のユニットを有する一次誘導体を得るには、少なくとも一つのオルト位(好ましくは全てのオルト位)に置換基を有していないフェノール誘導体を用いる。また、少なくとも一つのオルト位(2位あるいは6位)が置換基を有さず、パラ位(4位)に置換基を有するフェノール誘導体(典型的には、2,4位置換1価フェノール誘導体)が好ましい。最も好ましくは、全てのオルト位が置換基を有さず、パラ位に置換基を有するフェノール誘導体(典型的には、4位置換1価フェノール誘導体)である。したがって、4位置換フェノール誘導体及び2,4位置換フェノール誘導体を1種あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0024】
第二のユニットを有する一次誘導体を得るには、パラ位に置換基を有していないフェノール誘導体(典型的には、2位(あるいは6位)置換1価フェノール誘導体)が好ましく、より好ましくは、同時に、オルト位(好ましくは、全てのオルト位)に置換基を有するフェノール誘導(典型的には2,6位置換1価フェノール誘導体)を用いる。すなわち、2位(あるいは6位)置換フェノール誘導体及び2、6位置換フェノールのうち1種あるいは2種以上を組み合わせて用いることが好ましい。
【0025】
フェノール誘導体の好ましい具体例としては、p−クレゾール、2,6−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2−メトキシフェノール(Guaiacol)、2,6−ジメトキシフェノール、カテコール、レゾルシノール、ホモカテコール、ピロガロール及びフロログルシノールなどが挙げられる。
特に、第一のユニットをリグノフェノール誘導体中に構築するには、p−クレゾール及び/又は2,4−ジメチルフェノールを用いることができる。第二のユニットを構築するには、2,6−ジメチルフェノールを用いることができる。
【0026】
リグノセルロース系材料に添加する酸としては、特に限定しないが、セルロースを膨潤させる作用を有していることが好ましい。例えば、65重量%以上の硫酸(好ましくは、72重量%の硫酸)、85重量%以上のリン酸、38重量%以上の塩酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、ギ酸などを挙げることができる。好ましい酸は、85重量%以上(好ましくは95重量%以上)のリン酸、トリフルオロ酢酸、又はギ酸である。また、セルロース、ヘミセルロース由来の水溶性多糖、オリゴ糖、単糖を効率的に回収するには、硫酸を用いることが好ましく、セルロースの高次構造をある程度保持した形で回収するには、リン酸など酸強度の低い酸を用いることが好ましい。
【0027】
リグノセルロース系材料中のリグニンを、リグノフェノール誘導体に変換し、分離する方法としては以下の3つの方法を挙げることができる。なお、これらの方法に限定されるものではない。
第1の方法は、特開平2−233701号公報に記載されている方法である。この方法は、木粉等のリグノセルロース系材料に液体状のフェノール誘導体(上記で説明したもの、例えば、p−クレゾール又は2,4−ジメチルフェノール)を浸透させ、リグニンをフェノール誘導体により溶媒和させ、次に、リグノセルロース系材料に濃酸(上記で説明したもの、例えば、72%硫酸)を添加し混合して、セルロース成分を溶解する。この方法によると、図1に示すように、リグニンを溶媒和したフェノール誘導体と、セルロース成分を溶解した濃酸とが2相分離系を形成する。フェノール誘導体により溶媒和されたリグニンは、フェノール誘導体相が濃酸相と接触する界面においてのみ、酸と接触され、反応が生じる。すなわち、酸との界面接触により生じたリグニン基本構成単位の高反応サイトである側鎖C1位(ベンジル位)のカチオンが、フェノール誘導体により攻撃される。その結果、前記C1位にフェノール誘導体がC−C結合で導入され、またベンジルアリールエーテル結合が開裂することにより低分子化される。これによりリグニンが低分子化され、同時にその基本構成単位のC1位にフェノール誘導体が導入されたリグノフェノール誘導体がフェノール誘導体相に生成される。このフェノール誘導体相から、リグノフェノール誘導体が抽出される。一次誘導体は、リグニン中のベンジルアリールエーテル結合が開裂して低分子化されたリグニンの低分子化体の集合体として得られる。なお、ベンジル位へのフェノール誘導体の導入形態は、そのフェノール性水酸基を介して導入されているものもあることが知られている。
図2には、アリールプロパンユニットを有する天然リグニンに対して相分離処理を行うことにより、本発明における第一のユニットを有する一次誘導体が得られることを示す。
【0028】
フェノール誘導体相からの一次誘導体の抽出は、例えば、次の方法で行うことができる。すなわち、フェノール誘導体相を、大過剰のエチルエーテルに加えて得た沈殿物を集めて、アセトンに溶解する。アセトン不溶部を遠心分離により除去し、アセトン可溶部を濃縮する。このアセトン可溶部を、大過剰のエチルエーテルに滴下し、沈殿区分を集める。この沈殿区分から溶媒留去し、一次誘導体を得る。なお、粗一次誘導体は、フェノール誘導体相を単に減圧蒸留により除去することによって得られる。
【0029】
第2および第3の方法は、リグノセルロース系材料に、固体状あるいは液体状のフェノール誘導体(例えば、p−クレゾール又は2,4−ジメチルフェノールなど)を溶解した溶媒(例えば、エタノールあるいはアセトン)を浸透させた後、溶媒を留去する(フェノール誘導体の収着工程)。次に、このリグノセルロース系材料に濃酸を添加してセルロース成分を溶解する。この結果、第1の方法と同様、フェノール誘導体により溶媒和されたリグニンは、濃酸と接触して生じたリグニンの高反応サイト(側鎖C1位)のカチオンがフェノール誘導体により攻撃されて、フェノール誘導体が導入される。また、ベンジルアリールエーテル結合が開裂してリグニンが低分子化される。得られる一次誘導体の特性は、第1の方法で得られるものと同様である。そして、第1の方法と同様にして、フェノール誘導体化されたリグノフェノール誘導体を液体フェノール誘導体にて抽出する。液体フェノール誘導体相からの一次誘導体の抽出も、第1の方法と同様にして行うことができる(これを第2の方法と称する)。あるいは、濃酸処理後の全反応液を過剰の水中に投入し、不溶区分を遠心分離にて集め、脱酸後、乾燥する。この乾燥物にアセトンあるいはアルコールを加えてリグノフェノール誘導体を抽出する。さらに、この可溶区分を第1の方法と同様に、過剰のエチルエーテル等に滴下して、一次誘導体を不溶区分として得る(これを第3の方法と称する)。以上、リグノフェノール誘導体の調製方法の具体例を説明したが、これらに限定されるわけではなく、これらに適宜改良を加えた方法で調製することもできる。
【0030】
このようにして、少なくとも第一のユニットを有する他、使用したフェノール誘導体のオルト位あるいはパラ位でリグニンのフェニルプロパンユニットのC1位に当該フェノール誘導体がグラフトされた、1,1−ビス(アリール)プロパンユニットを有する一次誘導体を得ることができる。なお、得られる一次誘導体においては、通常、フェノールがグラフトされていないアリールプロパンユニットも残存している。
2種類以上のフェノール誘導体を導入した一次誘導体を得ようとする場合、前記相分離処理におけるフェノール収着工程でリグノセルロース系材料に2種類以上のフェノール誘導体を同時に使用することにより得ることもできる。また、リグノセルロース系材料に対して単一のフェノール誘導体を導入したものを混合することができる。前者の場合、コポリマー的であり、後者の場合ポリマーブレンド的である。これらの態様は、必要に応じて選択することができるが、得られる一次誘導体の分子内スイッチ的な機能や架橋度を調整する観点からは、前者の態様(コポリマー的態様)で一次誘導体を得ることが有用である。
【0031】
なお、フェノール誘導体の導入頻度は、導入しようとするフェノール誘導体の置換基の有無、位置、大きさ等によって変動する。したがって、導入頻度を調節することができる。特に、置換基の大きさによる立体障害によって導入頻度を容易に調節することができる。置換基を利用して導入位置などを制御しようとする場合、置換基として低級アルキル基を利用すると、炭素数や分枝形態によって容易に導入頻度を調節できる。置換基をメチル基とすると、導入頻度を高く維持して導入位置を制御できる。
以下に、リグノセルロース系材料から得られる一次誘導体の有する全体的、一般的性質を挙げる。ただし、本発明におけるリグノフェノール誘導体を、以下の性質を有するものに限定する趣旨ではない。
(1)重量平均分子量が約2000〜20000程度である。
(2)分子内に共役系をほとんど有さずその色調は極めて淡色である。典型的には淡いピンク系白色粉末である。
(3)針葉樹由来で約170℃、広葉樹由来で約130℃に固−液相転移点を有する。
(4)メタノール、エタノール、アセトン、ジオキサン、ピリジン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミドなどに容易に溶解する。
【0032】
この一次誘導体に対して、アルカリ処理、架橋性導入反応、水酸基保護処理などを行うことにより、リグニンの更なる誘導体(二次誘導体)を得ることができる。すなわち、アルカリ処理体、架橋性体(プレポリマー)が得られ、水酸基保護処理体を得ることができる。また、いずれかの誘導体化処理を行った二次誘導体に対して、さらに、異なる誘導体化処理を施すことにより、高次誘導体を得ることができる。
リグノフェノール誘導体は本来的に粘結性を有しており、リグニン系マトリックスの構成材料として使用されるとき、フィラーなどの被複合化材料を良好に拘束して、複合化されたリグニン系マトリックスを構成することができる。
以下、二次誘導体と誘導体化工程について説明する。
【0033】
(架橋性基導入反応)
プレポリマーは、一次誘導体を、アルカリ条件下で架橋性基形成化合物と反応させて、リグノフェノール誘導体中のフェノール性水酸基のオルト位及び/又はパラ位に架橋性基を導入することにより、得ることができる。
すなわち、本プレポリマーは、用いる一次誘導体のフェノール性水酸基を解離しうる状態下において、一次誘導体に架橋性基形成化合物を混合して反応させることによって得られる。一次誘導体のフェノール性水酸基が解離しうる状態は、通常、適当なアルカリ溶液中において形成される。使用するアルカリの種類、濃度及び溶媒は一次誘導体のフェノール性水酸基が解離するものであれば、特に限定されない。例えば、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液を使用できる。
【0034】
このような条件下において、架橋性基はフェノール性水酸基のオルト位又はパラ位に導入されるので、用いたフェノール誘導体の種類や組み合わせによって、架橋性基の導入位置がおおよそ決定される。すなわち、オルト位及びパラ位において2置換されている場合には、導入フェノール核には架橋性基は導入されず、リグニン母体側のフェノール性芳香核に導入されることになる。母体側のフェノール性芳香核は、主として一次誘導体のポリマー末端に存在するため、主としてポリマー末端に架橋性基が導入されたプレポリマーが得られる。図3上段には、2,4−ジメチルフェノールを導入フェノール誘導体として用いて得た一次誘導体において、架橋性基としてヒドロキシメチル基が導入された(メチロール化された)プレポリマーが例示されている。
また、オルト位及びパラ位において1置換以下の場合には、導入フェノール核とリグニン母体のフェノール性芳香核に架橋性基が導入されることになる。したがって、ポリマー鎖の端末の他、その長さにわたって架橋性基が導入され、多官能性のプレポリマーが得られる。図3に、p−クレゾールを導入フェノール誘導体として用いて得られた一次誘導体に対して、ヒドロキシルメチル基が導入された(メチロール化された)プレポリマーが示されている。
【0035】
したがって、2置換フェノール誘導体と1置換以下のフェノール誘導体とを組み合わせることで、架橋性を調節することができる。本発明においては、2,4−ジメチルフェノール及び/又は2,6−ジメチルフェノールに代表される2置換フェノール誘導体が用いられている場合、プレポリマーにリニアポリマー形成能が付与される(図3右側)。また、p−クレゾールに代表される1置換以下のフェノール誘導体が用いられている場合、プレポリマーにネットワークポリマー形成能が付与される(図3左側)。2置換フェノール誘導体と1置換以下フェノール誘導体とを組み合わせて用いることにより、ネットワーク性を調節することができる。
【0036】
一次誘導体に導入する架橋性基の種類は特に限定されない。リグニン母体側の芳香核、あるいは、導入フェノール誘導体の芳香核に導入可能なものであればよい。架橋性基としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、1−ヒドロキシバレルアルデヒド基等を挙げることができる。架橋性基形成化合物としては、求核性化合物であって、結合後に架橋性基を形成するかあるいは保持する化合物である。たとえば、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、グルタルアルデヒド類などを挙げることができる。導入効率等を考慮すると、ホルムアルデヒドを用いることが好ましい。また、各種ジイソシアネート類等の重合性化合物を用いることができる。
【0037】
一次誘導体と架橋性基形成化合物とを混合するに際して、架橋性基を効率よく導入する観点からは、架橋性基形成化合物をリグノフェノール誘導体中のリグニンのアリールプロパン単位の芳香核及び/又は導入フェノール核の1モル倍以上添加することが好ましい。より好ましくは、10モル倍以上であり、さらに好ましくは20モル倍以上である。
【0038】
次に、アルカリ液中にリグノフェノール誘導体と架橋性基形成化合物が存在する状態で、必要によりこの液を加熱することにより、架橋性基がフェノール核に導入される。加熱条件は、架橋性基が導入される限り、特に限定されないが、40〜100℃が好ましい。40℃未満では架橋性基形成化合物の反応率が非常に低く好ましくなく、100℃より高いと架橋性基形成化合物自身の反応などリグニンへの架橋性基導入以外の副反応が活発化するので好ましくない。より好ましくは、50〜80℃であり、例えば約60℃が特に好ましい。反応は、反応液を冷却等することにより停止し、適当な濃度の塩酸等により酸性化(pH2程度)し、洗浄、透析などにより酸、未反応の架橋性基形成化合物を除去する。透析後凍結乾燥などにより試料を回収する。必要であれば、五酸化二リン上で減圧乾燥する。
【0039】
こうして得られるプレポリマーは、第一のユニットや第二のユニットを含む1,1−ビス(アリール)プロパンユニットやリグニンのアリールプロパンユニット内のフェノール性水酸基に対するオルト位および/またはパラ位に架橋性基を有するようになる。
第1の好ましい架橋性体は、第一及び/又は第二のユニット中の導入フェノール核のフェノール性水酸基に対してオルト位及び/又はパラ位に架橋性基を備える架橋性ユニットを備えていることを特徴とする。また、第2の好ましい架橋性体は、第一及び/又は第二のユニット及び/又はフェニルプロパンユニット中の、リグニン母体側のフェノール核のフェノール性水酸基のオルト位及び/又はパラ位にのみ架橋性基を備える架橋性ユニットを備えていることを特徴とする。さらに、第3の架橋性体は、上記第1の架橋性ユニットと第2の架橋性ユニットとを備えていることを特徴とする。
【0040】
本プレポリマーの重量平均分子量は特に限定されないが、通常は2000〜20000、好ましくは2000〜10000程度である。また、架橋性基の導入量は通常、0.01〜1.5モル/C9単位程度であることが多い。
【0041】
(水酸基保護処理)
水酸基保護処理は、リグノフェノール誘導体におけるフェノール性及びアルコール性水酸基に対して、アシル基(アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、ベンゾイル基、トルオイル基、好ましくはアセチル基)を導入することによって行うことが好ましい。具体的には、無水酢酸などと接触させることにより行う。当該アシル化処理により、水酸基が保護される。このため、水酸基による特性発現が抑制される。たとえば、水素結合が低減されて、会合性を低下させることができる場合がある。
【0042】
(アルカリ処理)
アルカリ処理は、リグノフェノール誘導体を、アルカリと接触させることにより行う。好ましくは加熱する。アルカリ処理においては、図4に示すように、第一のユニットにおける導入フェノール誘導体のフェノキシドイオンによるC2位炭素の攻撃が生じる。すなわち、一旦この反応が生じれば、C2アリールエーテル結合が開裂する。本発明は、第一のユニットに導入されたフェノール誘導体を脱複合のためのスイッチング素子として使用する。すなわち、得られた二次誘導体においては、第一のユニットが保持されている必要がある。したがって、誘導体化工程としてのアルカリ処理は、全ての第一のユニットにおいてC2アリールエーテル結合を開裂させない程度に行い、最終的には第一のユニットを維持できるような不完全なアルカリ処理を要することになる。
【0043】
例えば、緩和なアルカリ処理では、図4に示すように、一次誘導体が第一のユニットを有する場合、当該導入フェノール誘導体の当該フェノール性水酸基が開裂し、生じたフェノキシドイオンが、C2アリールエーテル結合を構成するC2位を分子内求核反応的にアタックして、当該エーテル結合を開裂させて低分子化することができる。
C2アリールエーテル結合の開裂により、リグニンの母核にフェノール性水酸基が生成されることになる(図4右側、点線円内参照)。また、当該分子内求核反応により、導入フェノール核が、それが導入されたフェニルプロパン単位とクマラン骨格を形成した構造(アリールクマラン単位)が発現される。
これらの結果、フェノール誘導体側にあったフェノール性水酸基(図4左側、点線円内)が、リグニン母核側(図4右側、点線円内)に移動されたことになる。導入フェノール誘導体からのフェノール性水酸基の消失は、疎水性の向上に寄与することができる。
このため、第一のユニットを有するリグノフェノール誘導体においては、第一のユニットの存在部位において(1)C2アリールエーテル結の開裂による低分子化、(2)アリールクマラン構造の発現、(3)C2アリールエーテル結合で結合されていたリグニン母核側におけるフェノール性水酸基が発現する。
【0044】
当該アルカリ処理は、具体的には、リグノフェノール誘導体の架橋体をアルカリ溶液に溶解し、一定時間反応させ、必要であれば、加熱することにより行う。この処理に用いることのできるアルカリ溶液は、リグノフェノール誘導体中の導入フェノール誘導体のフェノール性水酸基を解離させることができるものであればよく、特に、アルカリの種類及び濃度、溶媒の種類等は限定されない。アルカリ下において前記フェノール性水酸基の解離が生じれば、隣接基関与効果により、クマラン構造が形成されるからである。例えば、p−クレゾールを導入したリグノフェノール誘導体では、水酸化ナトリウム溶液を用いることができる。例えば、アルカリ溶液のアルカリ濃度範囲は0.5〜2Nとし、処理時間は1〜5時間程度とすることができる。また、アルカリ溶液中のリグノフェノール誘導体は、加熱されることにより、容易にクマラン構造を発現する。加熱に際しての、温度、圧力等の条件は、特に限定することなく設定することができる。例えば、アルカリ溶液を100℃以上(例えば、140℃程度)に加熱することによりリグノフェノール誘導体の架橋体の低分子化を達成することができる。さらに、アルカリ溶液を加圧下においてその沸点以上に加熱してリグノフェノール誘導体の架橋体の低分子化を行ってもよい。
【0045】
なお、同じアルカリ溶液で同濃度においては、加熱温度が120℃〜140℃の範囲では、加熱温度が高い程、C2−アリールエーテル結合の開裂による低分子化が促進されることがわかっている。また、該温度範囲で、加熱温度が高い程、リグニン母体由来の芳香核由来のフェノール性水酸基が増加し、導入されたフェノール誘導体由来のフェノール性水酸基が減少することがわかっている。したがって、低分子化の程度及びフェノール性水酸基部位のC1位導入フェノール誘導体側からリグニン母体のフェノール核への変換の程度を、反応温度により調整することができる。すなわち、低分子化が促進され、あるいは、より多くのフェノール性水酸基部位がC1位導入フェノール誘導体側からリグニン母体へ変換されたアリールクマラン体を得るには80〜140℃程度の反応温度が好ましい。
【0046】
C1フェノール核の隣接基関与によるC2−アリールエーテルの開裂は、上述したようにアリールクマラン構造の形成を伴うが、リグノフェノール誘導体の架橋体の低分子化は、必ずしもアリールクラマンが効率よく生成する条件下(140℃付近)で行う必要はなく、材料によって、あるいは目的によってより高い温度(例えば170℃付近)で行うこともできる。この場合、一旦生成したクラマン環は開裂し、導入フェノール誘導体側にフェノール性水酸基が再生される結果、140℃処理物とは特性の異なるよりフェノール活性が高い素材を誘導することができる。
【0047】
以上のことから、アルカリ処理における加熱温度は、特に限定されないが好ましくは80℃以上200℃以下である。80℃を大きく下回ると、反応が十分に進行せず、200℃を大きく越えると好ましくない副反応が派生しやすくなるからである。
【0048】
クラマン構造の形成とそれに伴う低分子化のための処理の好ましい一例としては、0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液をアルカリ溶液として用い、オートクレーブ内140℃で加熱時間60分という条件を挙げることができる。特に、この処理条件は、p−クレゾール又は2,4−ジメチルフェノールで誘導体化したリグノフェノール誘導体に好ましく用いられる。
【0049】
(高次誘導体)
これらの二次誘導体化処理により各種二次誘導体を得ることができる。
さらに、これらの二次誘導体に対して、さらに上記した各処理(好ましくは種類の異なる処理)を行うことにより、高次誘導体化することができる。
この場合、施された処理によって発生した構造的特徴を組み合わせて保持する高次誘導体を得ることができる。例えば、アルカリ処理と架橋性導入反応、アルカリ処理と水酸基保護処理、架橋性基導入反応と水酸基保護処理とを組み合わせることができる。
【0050】
(複合材料用組成物)
複合材料は、このようなリグニン系ポリマー(架橋体以外の各種誘導体)とリグニン系マトリックスに複合化されるフィラーなどの他の材料(被複合化材料)とを含有する複合材料用組成物を成形することによって得ることができる。
リグニン系マトリックスに複合化される他の材料としては、特に限定しないで、有機系材料や無機系材料を用いることができる。有機系材料としては、各種天然あるいは合成樹脂を用いることができる。たとえば、セルロース系材料を用いることができる。
【0051】
無機系材料としては、セラミックス、ガラス、金属、無機塩類などとすることができる。リグニン系マトリックスは良好な拘束力を有しているため、自己集合性の少ない材料であっても良好にマトリックス内に保持することができる。したがって、材料の形態も繊維状などの交絡性を有するものの他、球形の粒子状、針状、チップ状等の各種形態を問わずに採用することができる。
無機系材料は、アルカリ処理による物理的及び/又は化学的変化が比較的小さいため、脱複合後において、再利用性を確保しやすい点において好ましい。
図5に、各種のリグノフェノール誘導体と、無機系材料とを複合化するスキームを例示している。
【0052】
アルカリ処理による脱複合を考慮すると、被複合化材料はアルカリ膨潤性を有していることが好ましい。すなわち、アルカリにより組織が軟化あるいは膨潤することが好ましい。同時に、親水性であることも好ましい。アルカリ膨潤性と親水性とを備えている場合には、アルカリ処理時におけるアルカリ液がリグニンマトリックスの高分子材料にアクセスしやすくなり、その結果、導入された脱複合素子による高分子骨格の崩壊が生じ易くなる。
なお、アルカリ膨潤性材料は、そのアルカリ膨潤性をある温度域で発揮することが好ましい。すなわち、実施しようとするアルカリ処理のための温度域においてアルカリにより膨潤することが好ましい。あるいは、使用するアルカリ膨潤性材料のアルカリ膨潤性の温度依存性に基づいてアルカリ処理温度を設定することも可能である。
【0053】
また、アルカリ膨潤性を有していない被複合化材料を用いる場合には、アルカリ膨潤性を有する被複合化材料と組み合わせて用いることにより、アルカリによる第1の素子へのアクセスビリティーを高めることができて、良好な脱複合を実現することができる。また、緩和な条件で脱複合を実現することができる。さらに緩和な条件での脱複合を実現できることにより、リグニン系マトリックスを構成するリグニン系ポリマー及び被複合化材料の構造変換レベルを最小限にすることができ、分離される脱複合後のリグニン系ポリマー(低分子化されている)の誘導体化の自由度を高めることができると同時に、被複合化材料の逐次利用も確保できるようになる。
リグニン系マトリックスにおいて高い耐水性を確保する観点からは、被複合化材料は、アルカリ非膨潤性材料を主体とし、アルカリ膨潤性材料を含有するように調製することが好ましい。
また、リグニン系マトリックス中で生成されるリグニン系ポリマーが、架橋体であって、ネットワーク型高分子材料である場合(複合材料用組成物がネットワーク型高分子を構成する架橋性体をリグニン系ポリマーとして含有する場合)には、特に、アルカリによるアクセスビリティーを確保する観点から、アルカリ膨潤性材料を含有するようにすることが好ましい。
【0054】
なお、アルカリ膨潤性材料は、アルカリの浸透性を確保するなどの観点から、均一分散性を確保しやすいことが好ましい。したがって、少なくとも複合化前の形態としては、粉末状、繊維状などの形態を有することが好ましい。繊維状であれば、単繊維状であってもよいし、複合繊維状であってもよい。さらには、繊維状体を構成成分とするネットワーク状あるいはシート状体であってもよい。
このようなアルカリ膨潤性材料としては、材質としては、セルロース(分離された天然セルロース)の他、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、酢酸セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシセルロースなどの各種セルロース誘導体などの親水性高分子を用いることができる。また、リグニンと複合状態のセルロースを含むリグノセルロースも用いることができる。
したがって、具体的なアルカリ膨潤性材料としては、セルロース系繊維(微細繊維の粉末含む)、セルロース系粉末、リグノセルロース系繊維(微細繊維粉末含む)、リグノセルロース系粉末等を用いることができる。
なお、アルカリ膨潤性材料の含有量は、得ようとするリグニン系マトリックスの架橋構造やその他の被複合化材料の種類や配合によって相違してくるが、その適切な含有量は、複合材料のアルカリ処理による脱複合試験により容易に確認することができる。たとえば、p−クレゾールを導入フェノール誘導体として用いた一次誘導体をメチロール化して得たプレポリマーをリグニン系ポリマーとして使用する場合、このリグニン系ポリマー100重量部、セルロース粉末100重量部、及びタルク800重量部を含有する複合材料用組成物を調製することにより、アルカリ処理による脱複合によって回収されるリグニン系ポリマーの回収率は、セルロース系粉末を含有しない場合に比較して著しく向上される。
【0055】
さらに、本組成物においては、上記した材料の他、複合材料の用途に応じて、各種添加剤を含めることができる。特に、フィラーとしては、常温で可塑性を有する、あるいは可撓性を有するフィラーを用いることにより、複合材料に内部応力の緩和性や靭性を付与することができる。形状的には、球状や不定形状などでもよいが、好ましくは繊維状である。また、典型的にはセルロース系繊維あるいはセルロース系粉末(微細繊維の粉末含む)を用いることができる。したがって、セルロース系繊維あるいはセルロース系微細繊維粉末は、アルカリ膨潤性としても良質なフィラーとしても有用である。
【0056】
本組成物においては、上記した各種の被複合化材料を1種あるいは2種以上を組み合わせることができる。また、本組成物におけるリグニン系ポリマーと被複合化材料との比率は、複合材料に付与したい機能や成形方法を考慮して適宜設定することができる。
また、本組成物には、本組成物を成形して得られる複合材料をアルカリ処理することにより、この複合材料を脱複合させるのに十分な量のリグニン系ポリマーが複合材料中に存在するように、リグニン系ポリマーを含有することが好ましい。複合材料における脱複合のための適切な量は、最終的に得られる複合材料中のリグニン系ポリマーの種類や被複合材料の種類によっても異なるが、その適切な含有量は、複合材料のアルカリ処理による脱複合試験により容易に確認することができる。
【0057】
複合材料用組成物の調製方法や組成物形態は、被複合化材料の形態などを考慮して適宜選択して、各種形態を採ることができる。粉末状のリグノフェノール誘導体と被複合化材料とを混合して得ることもできるし、固形状の被複合化材料に、適当な溶媒に溶解したリグノフェノール誘導体を浸透させ、乾燥することによっても得ることができる。さらに、仮成形された被複合化材料に対して、リグノフェノール誘導体液を浸透させ、乾燥することによっても得ることができる。
【0058】
(複合材料)
複合材料用組成物を、加熱及び/又は加圧することによって、形状を付与するとともにリグニン系マトリックスを形成して本複合材料を得ることができる。
成形方法は特に限定しないで、圧縮成形、射出成形、押出成形、ブロー成形、発泡成形、キャスティング成形、紡糸など必要に応じて各種成形方法を採用することができる。
リグノフェノール誘導体は、本来的に粘結性を有しているため、加圧することによっても拘束力を発揮しうる。好ましくは、加熱された状態で加圧することが好ましい。加熱と加圧とは同時であってもよいし、逐次的に行ってもよい。
リグニン系ポリマーとして、プレポリマーを含有する場合、加熱により架橋させて、成形と同時に複合材料のマトリックス中に図6に示すような架橋構造を得ることができる。
【0059】
熱架橋の条件は、架橋反応を進行できる限り、特に限定されない。例えば、1℃〜2℃/分の昇温プログラム条件で150℃〜180℃程度まで加熱し、その後冷却することができる。また、昇温後、最高設定温度に達してから1時間保持した後、冷却する条件を挙げることができる。各種の架橋構造を図6に示す。
【0060】
架橋によって構築される架橋体構造は、上述のとおり、導入フェノール核の置換部位と置換数とによって決まってくる。図6の左側は、1置換フェノールとして例えば、p−クレゾールを用いたリグノフェノール誘導体をメチロールしてプレポリマーとし、熱架橋することにより、ネットワーク型の高分子材料ができることを示している。このプレポリマーでは、分子鎖の全体にわたって架橋性基が導入されているからである。
【0061】
一方、図6の右側には、二置換フェノールとして2,4−ジメチルフェノールを用いたリグノフェノール誘導体をメチロール化してプレポリマーとし、熱架橋することにより、リニア型の架橋構造が形成されることが示されている。このようなプレポリマーでは、主としてポリマー末端に架橋性基が導入されているからである。
【0062】
さらに、図6の中央には、導入フェノール誘導体として、1置換フェノールと二置換フェノールとを用いることにより(典型的には、p−クレゾールと2,4−ジメチルフェノール)、両者に基づく第一のユニットを備えた一次誘導体に架橋性基を導入してプレポリマーとし、結果として、ネットワーク型とリニア型とを混成させた高分子材料が得られることが示されている。
【0063】
このようにして得られた複合材料は、リグニン系ポリマーによるマトリックスの特性と被複合化材料との特性を備えている。リグニン系マトリックスが、成形時に生成された架橋構造を有さず、一次誘導体、二次誘導体及び高次誘導体であるリグニン系ポリマーを主体とする場合でも、その本来的な粘結性に基づいてマトリックスを構成する。
また、リグニン系マトリックスが成形時に新たに生成されたネットワーク状〜リニア状の架橋構造を有する場合には、本来的な粘結性とその架橋構造によりマトリックスを構成する。架橋構造の形態(ネットワーク型とリニア型)にかかわらず、架橋体はマトリックスに均一に分布し、かつ、おおよそ近似した強度的特性や寸法安定性(耐水性ないし吸水性)を付与することができる。したがって、特に、材料相互間の相互作用が小さいかほとんどなく化学的にも安定した材料(典型的には無機系材料)を用いた場合には、複合材料の機械的強度や寸法安定性をリグニン系マトリックスによって大きく影響されにくく、無機系材料の特性を出しやすいというメリットがある。
【0064】
一方、リグノフェノール誘導体に対して親和性の高い溶媒、たとえば、THFに浸漬した場合、成形時に形成された架橋構造のリニア性が高いほど、容易にTHFに溶解し、複合材料は崩壊した。特に、1置換以下フェノール誘導体(たとえば、p−クレゾール)のみを用いた一次誘導体のプレポリマーを架橋させた場合には、そのネットワーク構造が被複合化材料を強固に拘束し、複合材料の形状を維持させることが可能である。また、2,4−置換フェノール誘導体(たとえば、2,4−ジメチルフェノール)のみを用いた一次誘導体のプレポリマーを架橋させた場合には、リグノフェノール誘導体親和性溶媒に対する浸漬処理によって、容易に複合形態を崩壊させることが可能である。
【0065】
本発明においては、リグノフェノール誘導体が第一のユニットを有すること及び架橋体が第一のユニット中に第一の素子(オルト位で導入されたフェノール誘導体)を保持していることに基づいて、アルカリ処理によってこれらを低分子化させることができる。すなわち、本発明の複合材料をアルカリ処理することによって、リグニン系マトリックスにおいて図4及び/又は図7に示す反応を生じさせ、リグニン系ポリマーを低分子化させて複合材料の脱複合を実現することができる。
アルカリ処理は、複合材料をそのまま、好ましくは粉砕等により小片化あるいは粉末化したものに対して行う。アルカリ処理条件は、複合材料を脱複合させることができればよく特に限定しない。上記したアルカリ処理の項において開示した各種の条件を採用できる。例えば、0.1N〜0.5N程度のNaOHなどのアルカリ溶液を100℃以上(例えば、140℃程度)に加熱することによりリグノフェノール誘導体及びその架橋体の低分子化を達成することができる。加圧下で沸点以上に加熱することもできる。緩和な条件としては、約80℃以上約150℃以下を採用することができる。また、約150℃以上約170℃以下で行うこともできる。
【0066】
このアルカリ処理によれば、リグノフェノール誘導体や架橋体内部の第一の素子において選択的にこれらを低分子化させて、リグニン系マトリクスを崩壊させることができる。当該低分子化によって、リグニン系マトリックスのリグノフェノール誘導体等のリグニン系ポリマーは容易に分離回収される。また、被複合化材料も容易に分離回収される。したがって、これらの材料は、いずれも、逐次利用が容易に確保される。
特に、リグニン系ポリマーは、アルカリ処理により低分子化とともに、新たな部分構造やフェノール性水酸基などが発現されることにより、さらなる誘導体化の自由度が高くなっている。
さらに、アルカリ処理という簡易な工程により脱複合されることは、再利用のコストを低減できる点において有利である。特に、緩和なアルカリ条件でも脱複合できる点は有利である。
【0067】
特に、本発明においては、脱複合が、リグニン系マトリックスの高分子内部のフェノール誘導体(スイッチング素子)において容易に達成される。したがって、上述のとおり、導入するフェノール誘導体の種類や導入頻度を容易に制御できるため、スイッチング素子の導入量も制御することができ、結果として、得ようとする複合材料に応じた脱複合性能や脱複合形態を付与することができる。
また、上述したように、架橋構造を有するリグニン系マトリックスにあっては、架橋構造にかかわらず近似した物理化学的特性を発揮する一方、架橋構造の相違によって、溶媒溶解性能と後述する脱複合性能とが大きく相違することになる。このことは、溶解溶媒性能と脱複合性能が、架橋構造の相違によって調節できることを意味している。
【0068】
また、必要に応じて、リグニン系マトリックス中のリグニン系ポリマーに対するアルカリのアクセスビリティをアルカリ膨潤性材料の使用により容易に調節し、脱複合性能も調節することができる。
【0069】
なお、脱複合に際しては、同時にあるいは別個にリグノフェノール誘導体親和性溶媒による溶解処理も行うことができる。ここで、当該親和性溶媒としては、メタノール、エタノール、アセトン、ジオキサン、ピリジン、テトラヒドロフラン、及びジメチルホルムアミドから選択される1種あるいは2種以上の溶媒を同時あるいは逐次使用することができる。この溶解処理は、前記アルカリ処理による脱複合工程に先だって行うこともできるし、後段で行うこともできる。
【0070】
【実施例】
以下、本発明を具体例について説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
一次誘導体の調製
ヒノキ(Chamaecyparis obtusa)の木粉(リグノセルロース系材料)の脱脂試料の約1000gを、500ml容ビーカーにとり、各種フェノール誘導体(p−クレゾール、p−クレゾール:2,4−ジメチルフェノール=1:1、2,4−ジメチルフェノール)のアセトン溶液(リグニンC9単位当たり3モル倍量のフェノール誘導体を含む)を加え、ガラス棒で撹拌し、アルミホイルおよびパラフィルムでビーカーに蓋をし、24時間静置させた。その後、ドラフト内で木粉を激しく撹拌し、アセトンを完全に留去して、各種フェノール誘導体収着木粉を得た。
この留去物に対して、72wt%硫酸5000mlを加え、30℃で、1時間激しく撹拌した後、混合物を大過剰の水に投入、不溶解区分を遠心分離(3500rpm、10分、25℃)にて回収、脱酸し、凍結乾燥して、3種類の一次誘導体を得た。
【0071】
(実施例2)
一次誘導体への架橋性基の導入
実施例1で得られた3種類の一次誘導体各5gを、0.1NNaOH水溶液500mlに溶解し、ホルムアルデヒド37%水溶液約45mlを添加して、窒素雰囲気下、60℃で3時間反応させた。反応終了後、1N塩酸を加えてpH2まで酸性化した後、生じた沈殿を遠心分離(条件等)して回収し、脱酸後、凍結乾燥することにより、ヒドロキシメチル基を導入(メチロール化)した3種類のプレポリマーを得た。以下、これらのプレポリマーを用いたフェノール誘導体の組成に基づいて、HM−リグノ−p−クレゾール、HM−リグノ−p−クレゾール:2,4−ジメチルフェノール=1:1、HM−リグノ−2,4−ジメチルフェノールと称する。なお、得られたプレポリマーは-80℃にて保存した。
【0072】
(実施例3)
複合材料の作製
実施例2で得られたプレポリマー各100mgをテトラヒドロフラン(THF)10mlに溶解後、この溶液をタルク900mg(粒径約10〜約50μm)に添加して、よく混合した後、連続的攪拌してテトラヒドロフランを留去することにより、タルクに各プレポリマーを収着させた。
この収着試料の各全量を、SHIMAZUフローテスターCFT−500DにてInitial Temp.;70℃、Final Temp.;180℃、Rate;1.5℃/分、100kgで圧縮成形して前記各プレポリマーを架橋させ、架橋体を含有する円柱状複合材料(成形体)(直径10mm)を作製した。なお、タルク1000mgから同様の成形条件にて成形体を作製し、コントロール成形体とした。
【0073】
(実施例4)
複合材料の作製
さらに、実施例2で得られたプレポリマーのうち、HM−リグノ−p−クレゾール100mgのテトラヒドロフラン溶液を、上記と同様のタルク800mgとセルロースの微小繊維の粉末100mgとの混合物に添加してよく混合した後、連続攪拌してテトラヒドロフランを留去することにより、当該混合物にこのプレポリマーを収着させ、上記と同様の圧縮成型条件により架橋体を含有する成形体を作成し、セルロース含有成形体を作製した。
【0074】
(実施例5)
複合材料の評価
1.外観、寸法等
使用したタルクは、凹凸に富む表面を有しているものの、自己凝集性がほとんどないため、コントロール成形体は非常に脆く、強く触れると容易に崩壊した。一方、実施例3の各種成形体は、いずれも、薄いベージュ色で表面平滑性に優れていた。
また、重量、寸法、密度についての測定結果を図8に示す。寸法は、実施例3の各種成形体について安定しており、密度はいずれも約1.8であった。
【0075】
2.SEM観察
SEMにより実施例の各種成形体表面を観察したところ、架橋体の明確なマトリックス相は観察されなかった。このことは、使用したリグニン系ポリマーが、タルク間において均一なフィルム状に分布してバインダとして良好に機能していることを意味している。
【0076】
3.硬さ試験(Brinell Hardness)
SHIMADZU AG-1 10kNにてJIS2117に準じて行った。各種成形体の上面中央部に直径10mmの硬球を0.5mm/分の速度で圧入し、硬球が1/πmm=0.32mmの深さまで陥入するのに必要な荷重P(N)を測定し,以下の式(1)を用いて硬さHB(MPa)を測定した。
HB=P/10 (1)
HB : ブリネル硬さ (MPa)
P : 荷重 (N)
【0077】
結果は図9に示すように、コントロール成形体が0.7MPaであったのに対し、3種類の実施例3の成形体は、いずれもおおよそ9〜10MPaであり、どの架橋体も同様のタルク粒子を強固に集合化し、物理的強度の向上に寄与していることがわかった。しかしながら、実施例3の成形体はいずれも、試験中容易にクラックを生じて割れる傾向にあった。
これに対して、実施例4のセルロース含有成形体は、ブリネル硬さに相違はなかったものの、クラックの形成が抑制される結果が得られた。この結果によれば、セルロースなどの可撓性のある繊維状体を複合系マトリックス中に用いることにより、成形体内部で生じた応力を効果的に緩和できることがわかった。すなわち、フィラーの選択により、複合材料の弾性特性を容易に調整することができることがわかった。
【0078】
4.圧縮弾性率(MOE)
実施例3で得られた成形体について、圧縮弾性率を測定した。なお、荷重速度は、960N/cm・分とした。
結果は、図10に示すように、コントロール成形体が12MPaであったのに対し、実施例3の3種類の成形体は、いずれもおおよそ50〜60MPaであり、どの架橋体含有成形体も、ほぼ同等の圧縮弾性率を有していた。
【0079】
5.吸水試験
実施例3の成形体をステンレス製ネットに置き,成型体の底面から3cmの深さまで水を張った容器に沈めた。成型体が浮上する場合には、成形体の上面から1〜2mm上にステンレス製ネットを設置し、それ以上の浮上を抑制した。室温にて60分間水に浸漬後、成形体を取り出し、ろ紙上で転がして表面の水分を手早く除去した。60℃にて3日間乾燥させた。その際,吸水前,吸水後,乾燥後の重量および寸法を測定し,以下の式(2)、(3)を用いて吸水率Aw%、体積膨張率Vol%を求めた。
Aw%=(Wt’−Wt)/Wt × 100 (2)
Vol%=(Vol’−Vol)/Vol × 100 (3)
Aw% : 吸水率 (% to sample weight)
Wt : 試料重量 (g)
Wt’ : 吸水試験後の試料重量 (g)
Vol% : 体積膨張率 (% to sample volume)
Vol : 試料体積 (cm3)
Vol’ : 吸水試験後または再乾燥後の試料体積 (cm3)
【0080】
結果は、図11に示すように、実施例3の成形体はいずれも高い撥水性を示し、1時間水浸漬後の吸水率は0.6w%以下であり、吸水・乾燥条件下における体積膨張率も1%以下であった。これらの結果は、各成形体がタルクの有する撥水性を有し、水による膨潤性を有していないことに基づくものである。
【0081】
(実施例6)
複合材料からの架橋体の溶出試験
実施例3の3種類の成形体を、それぞれテトラヒドロフラン10mlに25℃で24時間浸漬して、テトラヒドロフラン中に溶出した架橋体量を測定し、成形体中に含まれていた架橋体量に対する割合(%)を溶出率として算出した。なお、テトラヒドロフラン中の架橋体量は、溶出液を蒸発させた残渣の重量を測定することで求めた。また、成形体中に含まれていた架橋体量は、100mgとして計算した。
結果は、図12に示すように、タルク−HM−リグノ−p−クレゾール複合体からは、架橋体は全く溶出されず、このため、成形体形状を完全に維持していた。また、タルク−HM−リグノ−p−クレゾール:2,4−ジメチルフェノール=1:1複合体についてもほとんど溶出されず、成形体形状を維持していた。これに対し、タルク−HM−リグノ−2,4−ジメチルフェノールは、速やかにおおよそ3割の架橋体が溶出され、成形体は崩壊した。
以上の結果より、HM−リグノ−p−クレゾールの架橋体は、ネットワーク型の高分子構造を形成して、強固にタルク粒子を保持していることがわかった。
【0082】
(実施例7)
複合材料からの脱複合処理
実施例3の3種類の成形体及び実施例4の成形体を粉砕した後、0.5NのNaOHを加え、140℃で1時間、170℃で1時間及び2時間加熱してアルカリ処理した。その後、アルカリ処理液をろ過により不溶画分と可溶画分とに分離し、不溶画分は乾燥後、重量を測定した。可溶画分は、全容量を測定後、293nmにおける吸光度を測定し、回収された架橋体のアルカリ処理体量を算出し、成形体中に含まれる架橋体量(100mg)に対する割合(%)を求めた。
なお、アルカリ処理体量の算出にあたっては、p−クレゾールを用いて得られた一次誘導体(リグノ−p−クレゾール)の140℃及び170℃における0.5NNaOHによる加熱処理後の二次誘導体につき、293nmにおける吸光度を基に作成した検量線を作成し、この検量線を用いた。なお、結果を図13に示す。
【0083】
図13に示すように、いずれの成形体においても、アルカリ処理のエネルギーレベルが高まるにつれ回収率が向上した。タルク−HM−p−クレゾール複合体(ネットワーク型架橋構造をマトリックス中に含む)の場合、最も緩和なアルカリ処理条件(140℃、1時間)では、アルカリ可溶化されたアルカリ処理体量は約20%程度であり、最もエネルギーレベルの高いアルカリ処理条件(170℃、2時間)でも、約70%程度であった。これに対して、タルク−HM−2,4−ジメチルフェノール複合体(リニア型架橋構造をマトリックス中に含む)、及びタルク−p−クレゾール:2,4−ジメチルフェノール=1:1複合体の場合、最も緩和なアルカリ処理条件でも、高い分離率を得ることができた。
【0084】
さらに、実施例4の成形体であるタルク−セルロース−HM−p−クレゾール複合体では、140℃におけるアルカリ処理条件下ではセルロースを含有しない複合体と回収率に大きな相違はなかったが、170℃によるアルカリ処理条件下において飛躍的に回収率が向上した。これは、170℃条件下にてセルロースが膨潤し、そのために架橋体とアルカリとの接触頻度が向上したためである。したがって、被複合化材料のアルカリ膨潤性、さらにはその温度依存性を用いて、アルカリ処理による脱複合の効果をコントロールできることがわかった。
【0085】
(実施例8)
アルカリ処理体の分子量
実施例7で得られたアルカリ可溶画分の一部を採取し、塩酸を添加してpH2まで酸性化した後、沈殿区分を遠心分離にて回収し、その平均分子量をGPCにて測定した。なお、分子量測定用試料は、以下のようにして調製した。
□試料1mgを精留済みのGPC溶離液(THF)に溶かし、試料とした。なお、p−クレゾールを内部標準物質として使用した。
なお、測定は、以下の条件で行った。
装置:SHIMAZU LC−10システム、LC10AD、SPD−10A
カラム:Sodwex KF804、KF803、KF802、KF801
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1ml/分
圧力:55kg/cm2
検出器:UV(280)
レンジ:0.32
サンプル量:25μl
検量線は基準物質としてポリスチレン400000、233000、100000、25000、9000、4000、2000、906、ビスフェノールA及びp−クレゾールを用い作成した。
分子量の測定結果を結果を図14に示し、また、GPCチャートを図15にそれぞれ示す。
【0086】
図14及び図15に示すように、アルカリ可溶化後の分子量は、HM−リグノ−p−クレゾールにおいて高いレベルに維持され、HM−リグノ−p−クレゾール:2,4−ジメチルフェノール=1:1やHM−2,4−ジメチルフェノールにおいては、大きく低分子化された。このことは、実施例7におけるアルカリ可溶化の結果とよく対応している。この分子量の測定結果から、架橋体における形態、すなわち、ネットワーク型構造の有無やその割合などにより、アルカリ処理による低分子化の程度が大きく変化し、脱複合レベルもそれに応じて変化することがわかった。
【図面の簡単な説明】
【図1】リグノフェノール誘導体(一次誘導体)の製造プロセスの原理を示す図である。
【図2】アリールプロパンユニットを有する天然リグニンに対する相分離処理により、第一のユニットを有する一次誘導体が得られることを示す図である。
【図3】図3の上段には、フェノール誘導体として2,4−ジメチルフェノールを導入して得た一次誘導体に架橋性基(HM基)を付加したプレポリマーを示し、下段には、これを架橋した状態を示す。
【図4】一次誘導体における脱複合メカニズムを示す図である。
【図5】各種リグノフェノール誘導体と無機系材料とを複合化するスキームを示す図である。
【図6】複合材料のマトリックス中に得られる架橋構造の態様を示す図である。
【図7】架橋体における脱複合メカニズムを示す図である。
【図8】実施例3で得た複合体の重量、寸法、密度等を示す表である。
【図9】ブリネル硬さの試験結果を示す図である。
【図10】弾性圧縮率の試験結果を示す図である。
【図11】実施例3で得た複合体の吸水率を示す図(a)と体積膨張率を示す図(b)とを組み合わせた図である。
【図12】実施例3で得た複合体からの架橋体の溶出率を示す表である。
【図13】実施例3及び4で得た複合体の脱複合処理後におけるアルカリ処理体の回収率を示すグラフである。
【図14】脱複合処理により得られたアルカリ可溶画分中のアルカリ処理体の分子量の測定結果を示す図である。
【図15】脱複合処理により得られたアルカリ可溶画分中のアルカリ処理体の分子量の測定時に得られたGPCチャートを示す図である。
Claims (22)
- リグニン系マトリックス を有する複合材料の製造方法であって、
以下の(a)〜(c):
(a)フェノール誘導体のフェノール性水酸基に対してオルト位の炭素原子が、リグニンのアリールプロパンユニットのC1位の炭素原子に結合した第一の1,1−ビス(アリール)プロパンユニットを有するリグノフェノール誘導体
(b)前記リグノフェノール誘導体に対して、水酸基保護処理、アルカリ処理、及び架橋性基導入反応から選択される1種の反応を行って得られ、かつ前記第一のユニットを有する二次誘導体、及び
(c)前記リグノフェノール誘導体に対して、水酸基保護処理、アルカリ処理、及び架橋性基導入反応から選択される2種以上の反応を行って得られ、かつ前記第一のユニットを有する高次誘導体
からなる群から選択される1種あるいは2種以上のリグニン系ポリマーであって少なくとも架橋性基導入反応を経たリグニン系ポリマーの、目的とする複合材料をアルカリ処理により脱複合させるのに十分な量と、
前記リグニン系マトリックス に複合化される他の構成材料と、
を含有するマトリックス組成物を、加圧及び/又は加熱して成形するとともに前記導入した架橋性基を架橋させる工程を備える、方法。 - 前記(a)リグノフェノール誘導体は、フェノール性水酸基に対する少なくとも一つのオルト位が置換されていないフェノール誘導体を含む1種あるいは2種以上のフェノール誘導体が添加されたリグノセルロース系材料と、酸とを接触させて得られる、請求項1記載の製造方法。
- 前記フェノール誘導体は、パラ位に置換基を有し残存するオルト位が置換されていない、請求項1又は2に記載の製造方法。
- 前記フェノール誘導体は、p−クレゾールである、請求項3記載の製造方法。
- 前記フェノール誘導体は、パラ位と残存するオルト位とに置換基を有する、請求項1又は2に記載の製造方法。
- 前記フェノール誘導体は、2,4−ジメチルフェノールである、請求項5記載の製造方法。
- 前記フェノール誘導体が、パラ位に置換基を有し残存するオルト位が置換されていないフェノール誘導体と、パラ位と残存するオルト位とに置換基を有するフェノール誘導体とを含む、請求項1又は2に記載の製造方法。
- 前記フェノール誘導体は、p−クレゾール及び2,4−ジメチルフェノールである、請求項7記載の製造方法。
- 前記リグノフェノール誘導体は、フェノール誘導体のフェノール性水酸基に対してパラ位の炭素原子が、リグニンのアリールプロパンユニットのC1位の炭素原子に結合した第二の1,1−ビス(アリール)プロパンユニットを有する、請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
- 前記リグノフェノール誘導体は、フェノール性水酸基に対する少なくとも一つのオルト位が置換されていないフェノール誘導体と少なくともパラ位が置換されていないフェノール誘導体とを含むフェノール誘導体が添加されたリグノセルロース系材料と、酸とを接触させて得られる、請求項9記載の製造方法。
- 前記第二のユニットを構成するフェノール誘導体は、2つのオルト位に置換基を有する、請求項9又は10記載の製造方法。
- 前記フェノール誘導体は、2,6−ジメチルフェノールである、請求項11記載の製造方法。
- 前記リグニン系マトリックス には、無機系材料を含有する、請求項1〜12のいずれかに記載の製造方法。
- 前記無機系材料は、金属塩である、請求項13記載の製造方法。
- 前記無機系材料は、アルカリ非膨潤性である、請求項13又は14に記載の製造方法。
- アルカリ膨潤性材料を含有する、請求項1〜15のいずれかに記載の製造方法。
- 前記アルカリ膨潤性材料はセルロース系材料である、請求項16記載の製造方法。
- さらに、ファイバー材料を含有する、請求項1〜17のいずれかに記載の製造方法。
- 複合材料の使用方法であって、
リグニン系マトリックス を有する複合材料であって、
前記リグニン系マトリックス は、以下の(a)〜(e):
(a)フェノール誘導体のフェノール性水酸基に対してオルト位の炭素原子が、リグニンのアリールプロパンユニットのC1位の炭素原子に結合した第一の1,1−ビス(アリール)プロパンユニットを有するリグノフェノール誘導体
(b)前記リグノフェノール誘導体に対して、水酸基保護処理、アルカリ処理、及び架橋性基導入反応から選択される1種の反応を行って得られ、かつ前記第一のユニットを有する二次誘導体
(c)前記リグノフェノール誘導体に対して、水酸基保護処理、アルカリ処理、及び架橋性基導入反応から選択される2種以上の反応を行って得られ、かつ前記第一のユニットを有する高次誘導体、
(d)前記二次誘導体のうち架橋性基導入反応により得られる二次誘導体が架橋されている二次誘導体の架橋体、及び
(e)前記高次誘導体のうち、架橋性基導入反応を経て得られる高次誘導体が架橋されている高次誘導体の架橋体
からなる群から選択される1種あるいは2種以上のリグニン系ポリマーを有する複合材料を、アルカリ処理して、脱複合する工程と、
前記脱複合工程において得られたアルカリ処理されたリグニン系マトリックス中の前記リグニン系ポリマーに対して、水酸基保護処理、アルカリ処理、及び架橋性基導入反応から選択される1種あるいは2種以上の反応を施して、より高次の誘導体を得る工程、
とを備える、方法。 - 前記フェノール誘導体は、パラ位に置換基を有し残存するオルト位が置換されていないフェノール誘導体及び/又はパラ位と残存するオルト位とに置換基を有するフェノール誘導体を含む、請求項19に記載の使用方法。
- 前記リグニン系マトリックス には、無機系材料を含有する、請求項20に記載の使用 方法。
- アルカリ膨潤性材料を含有する、請求項19〜21のいずれかに記載の使用方法。
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