しかし、通常の超電導磁石装置においては、超電導コイルの接続部分の接続抵抗の故に生じる磁束の低下は避け難いという問題がある。また、接続抵抗や超電導コイルの機械的変化により発熱が生じ、これがクエンチの原因となる。更に、超電導コイルの巻線作業や接続作業は人間に頼る部分が多いため、その製作精度は一様にされ難く、必ずしも高いとはいい難い。加えて、装置全体が大型であり、かつ高重量であるという問題もある。
本発明の目的は発生させる磁束の低下及びクエンチの発生を防止し、製作精度を高くかつ一様にし、そして装置全体を小型かつ軽量化するのに適した超電導磁石装置を提供することにある。
本発明の目的は次の解決手段によって達成される。
本発明の超電導磁石装置は、超電導用冷媒が収容される冷媒容器と、前記冷媒容器中に配置され、予め定められた磁場空間の中心軸に沿う磁束を発生する永久電流の保持媒体となる超電導多層複合体を含む静磁場発生手段と、前記静磁場発生手段を前記冷媒容器中に保持する手段とを含むことを特徴とする。
本発明の超電導磁石装置は更に、前記静磁場発生手段は、前記中心軸をシリンダ中心軸とするシリンダ状の超電導多層複合体を含むことを特徴とする。
本発明の超電導磁石装置は更に、前記静磁場発生手段は、前記中心軸に直交して配置された、前記中心軸を中心とした穴を有する平面板状の超電導多層複合体を含むことを特徴とする。
本発明の超電導磁石装置は更に、前記超電導多層複合体は、中央部より端部に近い方で小さい直径を有することを特徴とする。
本発明の超電導磁石装置は更に、前記静磁場発生手段は、直径の異なる少なくとも3個のシリンダ状超電導多層複合体を有し、前記少なくとも3個のシリンダ状超電導多層複合体は中央部から端部に向かって前記直径が順次小さくなるように配置されていることを特徴とする。
本発明の超電導磁石装置は更に、前記静磁場発生手段は、第1の直径を有する第1のシリンダ状超電導多層複合体と、前記第1のシリンダ状超電導多層複合体に部分的に同心円状に重なり、前記第1のシリンダ状超電導多層複合体より長さの短い少なくとも1つの第2のシリンダ状超電導多層複合体とを含むことを特徴とする。
本発明の超電導磁石装置は更に、前記静磁場発生手段は、前記中心軸をシリンダの中心軸とし、片方の開口部が完全に閉じられたシリンダ状超電導多層複合体を含むことを特徴とする。
本発明の超電導磁石装置は更に、前記静磁場発生手段は、片方の開口部の一部が閉じられたシリンダ状超電導多層複合体を含むことを特徴とする。
本発明の超電導磁石装置は更に、前記静磁場発生手段は、前記超電導多層複合体を覆うように片方の開口部が完全に閉じられたシリンダ状の超電導多層複合体から成る磁気シールドを含むことを特徴とする。
本発明の超電導磁石装置は更に、前記静磁場発生手段は、前記超電導多層複合体を覆うように片方の開口部の一部が閉じられたシリンダ状の超電導多層複合体から成る磁気シールドを含むことを特徴とする。
本発明の超電導磁石装置は更に、前記磁気シールドの開口部の閉じられた側の前記磁場空間を明るくする手段を含むことを特徴とする。
本発明の超電導磁石装置は更に、前記静磁場発生手段は、前記超電導多層複合体の内側に、前記中心軸を囲むように配置された超電導多層複合体から成る、磁束密度分布を調整するためのシムを含むことを特徴とする。
本発明の超電導磁石装置は更に、前記シムは、複数の穴を有することを特徴とする。
本発明の超電導磁石装置は更に、前記冷媒容器は互いに分離された第1,第2の冷媒室を有し、前記超電導多層複合体は前記第1の冷媒室に配置され、前記シムは前記第2の冷媒室を配置されていることを特徴とする。
本発明の超電導磁石装置は更に、前記静磁場発生手段は、前記超電導多層複合体を部分的に加熱する加熱手段と、前記加熱手段により前記超電導多層複合体の温度を部分的に制御し、発生する磁場の均一度を調整する手段とを含むことを特徴とする。
本発明の超電導磁石装置は更に、前記加熱手段は前記超電導多層複合体の表面に配置された1個以上の面ヒータを含むことを特徴とする。
本発明の超電導磁石装置は更に、前記保持手段は前記静磁場発生手段の熱膨張係数と実質的に同じ熱膨張係数を有することを特徴とする。
本発明の超電導磁石装置は更に、前記静磁場発生手段は、開口端面が所定の空間を隔てて互いに対向するように曲げられた管状超電導多層複合体と、前記管状超電導多層複合体の外周側又は内周側に配置された着磁コイル手段とを含み、前記冷媒容器は、前記冷媒容器の外部に前記所定の空間を形成するように構成されていることを特徴とする。
本発明の超電導磁石装置は更に、前記静磁場発生手段は、前記管状超電導多層複合体を覆うように前記冷媒容器内に配置された管状磁気シールドを含み、前記着磁コイルが前記管状磁気シールド内に配置されていることを特徴とする。
本発明の超電導磁石装置は更に、前記冷媒容器は互いに分離された第1,第2の冷媒室を有し、前記管状超電導多層複合体は前記第1の冷媒室に配置され、前記管状磁気シールドは前記第2の冷媒室に配置されていることを特徴とする。
本発明の超電導磁石装置は更に、前記静磁場発生手段は、前記開口端面に平行にそれぞれに近接して配置され、超電導多層複合体からなる少なくとも1つの穴を有する板状のシムを含むことを特徴とする。
本発明の超電導磁石装置は更に、前記静磁場発生手段は、前記中心軸を中心として同心円状に配置された、前記超電導多層複合体を着磁するための着磁コイル手段を含むことを特徴とする。
本発明の超電導磁石装置は更に、前記着磁コイル手段は、前記超電導多層複合体の外側に配置されていることを特徴とする。
本発明の超電導磁石装置は更に、前記静磁場発生手段は前記超電導多層複合体及び前記着磁コイル手段を覆うように、前記冷媒容器内に配置された、超電導多層複合体から作られた磁気シールドを含むことを特徴とする。
本発明の超電導磁石装置は更に、被検体が配置される空間を取り囲むように形成され、超電導用冷媒を収容する冷媒容器と、前記冷媒容器内に設けられ、前記空間を挟んで互いに対向するように配置された一対の円板状超電導多層複合体からなる静磁場発生手段と、前記静磁場発生手段を前記冷媒容器内に保持する保持手段とを含み、前記円板状超電導多層複合体は中心部に開口を有し、該開口の周囲を流れる電流によって前記空間を通り、前記一対の円板状超電導多層複合体に垂直な方向の磁束を発生することを特徴とする。
本発明の超電導磁石装置は更に、前記静磁場発生手段は、前記一対の円板状超電導多層複合体のそれぞれが、互いに一定の間隔をおいて重ね合わされた少なくとも2枚の円板状超電導多層複合体を含むことを特徴とする。
本発明の超電導磁石装置は更に、前記静磁場発生手段は、前記一対の円板状超電導多層複合体と前記空間を挟んで互いに対向するように配置された円板状超電導多層複合体から成る一対の磁気シールド板を含むことを特徴とする。
本発明の超電導磁石装置は更に、前記静磁場発生手段は、前記超電導多層複合体を覆うように前記冷媒容器中に配置され、前記永久電流と反対方向に流れる永久電流の保持媒体となる第2の超電導多層複合体から作られ、かつ前記超電導多層複合体を基準にして前記静磁場空間の中心軸と反対側に配置された磁気シールド板を含むことを特徴とする。
本発明の超電導磁石装置は更に、前記静磁場発生手段は、前記超電導多層複合体と前記磁気シールドとを接続する電気絶縁性の熱伝導体を含むことを特徴とする。
本発明の超電導磁石装置は更に、前記静磁場発生手段は前記冷媒容器中に前記超電導多層複合体を覆うように配置され、第2の超電導多層複合体から作られた磁気シールドを含み、前記冷媒容器は前記磁場空間を形成するように前記中心軸の周りに位置する内側周部分と、該内側周部分の外側において前記中心軸の周りに位置する外側周部分と、前記内側周部分と前記外側周部分との接続部を構成するサイド部分とを含み、前記磁気シールドは前記中心軸の周りに配置されるように該中心軸の方向に分割された一対の磁気シールド部材を含み、該一対の磁気シールド部材はそれぞれカップ状に形成されて、その縁部には互いに対向するようにつばが設けられていると共に、その底部には前記内側周部分が入り得る孔を有し、前記冷媒容器の外側周部分は前記一対の磁気シールド部材のつばの部分において前記中心軸の方向に分割されて、この分割された部分が液密的に接合され、更に前記冷媒容器のサイド部分と前記内側周部分は液密的に接合されていることを特徴とする。
本発明の超電導磁石装置は更に、前記磁気シールドの底部を基準にして前記中心軸の方向において前記サイド部分とは反対の側に配置されて、前記磁気シールド底部の前記孔付近の部分を押さえる押さえ部材を備えていることを特徴とする。
本発明の超電導磁石装置は更に、前記管状超電導多層複合体の両端部の断面寸法が中間部の断面寸法より大きいことを特徴とする。
本発明の超電導磁石装置は更に、前記静磁場発生手段は、前記管状超電導多層複合体の細管を束状に寄せ集めた細管集合体からなることを特徴とする。
また、本発明の超電導磁石装置は、超電導用冷媒が収容される冷媒容器と、前記冷媒容器中に配置され、予め定められた磁場空間の中心軸に沿う磁束を発生する永久電流の保持媒体となる複数の超電導多層複合体を含む静磁場発生手段と、前記静磁場発生手段を前記冷媒容器中に保持する手段とを含み、前記複数の超電導多層複合体の各々は、前記中心軸に直交して配置された、前記中心軸を中心とした穴を有する平面板状であり、前記磁場空間は、前記複数の穴に亘る空隙空間内に発生されることを特徴とする。
また、本発明の超電導磁石装置は、被検体が配置される空間を取り囲むように形成され、超電導用冷媒を収容する冷媒容器と、前記冷媒容器内に設けられ、前記空間を挟んで互いに対向するように配置されて対向方向に静磁場を発生する一対の静磁場発生源を有して成る静磁場発生手段と、前記静磁場発生手段を前記冷媒容器内に保持する保持手段とを含み、前記静磁場発生源は、複数の円板状超電導多層複合体が同軸状に、且つ、前記静磁場方向に垂直となるように配置され、前記円板状超電導多層複合体は、その中心部に開口を有し、該開口の周囲に流れる電流によって前記静磁場を発生し、前記複数の円板状超電導多層複合体の少なくとも2つの直径は、前記空間から離れた位置にある円板状超電導多層複合体の方が大きいことを特徴とする。
また、本発明の超電導磁石装置は、被検体が配置される空間を取り囲むように形成され、超電導用冷媒を収容する冷媒容器と、前記冷媒容器内に設けられた静磁場発生手段と、前記静磁場発生手段を前記冷媒容器内に保持する保持手段とを含み、前記静磁場発生手段は、前記空間を挟んで互いに対向するように配置されて対向方向に磁束を発生する一対の磁束発生用円板状超電導多層複合体と、前記一対の磁束発生用円板状超電導多層複合体と前記空間とを挟んで互いに対向するように配置され、前記磁束発生用円板状超電導多層複合体よりも直径の大きい磁気シールド用円板状超電導多層複合体とを有して成ることを特徴とする。
また、本発明の超電導磁石装置は、更に、前記静磁場発生手段は更に、前記中心軸を中心として同心円状に配置された、前記超電導多層複合体を着磁するための着磁コイル手段を含むことを特徴とする。
また、本発明の超電導磁石装置は、更に、前記着磁コイル手段は、前記超電導多層複合体の外側に配置されていることを特徴とする。
また、本発明の超電導磁石装置は、更に、前記静磁場発生手段は前記超電導多層複合体及び前記着磁コイル手段を覆うように、前記冷媒容器内に配置された、超電導多層複合体から作られた磁気シールドを含むことを特徴とする。
本発明の磁気共鳴イメージング装置は、被検体が配置される空間を取り囲むように形成され、超電導用冷媒を収容する冷媒容器と、前記冷媒容器内に配置され、前記空間を通る静磁場を発生させる永久電流の保持媒体となる超電導多層複合体を含む静磁場発生手段と、前記静磁場発生手段を前記冷媒容器内に保持する保持手段と、前記静磁場に重畳されるべき傾斜磁場を発生する傾斜磁場発生手段と、被検体に高周波パルスを印加する手段と、前記被検体から核磁気共鳴信号を発生させるように予め定められたパルスシーケンスに従って前記傾斜磁場と前記高周波パルスを制御する手段と、前記核磁気共鳴信号に基づいて前記被検体の断層像を構成する手段とを含むことを特徴とする。
本発明の磁気共鳴イメージング装置は更に、前記静磁場発生手段は、前記超電導多層複合体を着磁する手段を含むことを特徴とする。
本発明の超電導磁石装置の着磁方法は、着磁用コイルに励磁電流を流すことにより超電導多層複合体によって囲まれている空間に所定の値の磁束を発生させるステップと、前記超電導多層複合体を超電導状態となる温度に維持した状態に於いて前記励磁電流を徐々に低下させ、前記超電導多層複合体に超電導電流を発生させるステップと、前記超電導多層複合体を超電導状態となる温度に維持した状態に於いて前記着磁用コイルからの磁束の発生を零にし、前記超電導電流を永久電流として前記超電導多層複合体に保持させるステップとを含むことを特徴とする。
本発明の超電導磁石装置の着磁方法は更に、前記所定の値の磁束を発生させるステップは、前記超電導多層複合体が超電導状態となる温度よりも高い温度に於いて前記着磁用コイルにより前記所定の値の磁束を発生させるステップを含むことを特徴とする。
本発明の超電導磁石装置の着磁方法は更に、前記所定の値の磁束を発生させるステップは、前記超電導多層複合体が超電導状態となる温度に於いて前記着磁用コイルにより前記所定の値の磁束を発生させるステップを含むことを特徴とする。
本発明の超電導磁石装置の着磁方法は更に、前記所定の値の磁束を発生させるステップは、前記超電導多層複合体が超電導状態となる温度に於いて前記着磁用コイルにより前記所定の値の磁束を発生させるステップと、前記所定の値の磁束を発生させている状態で、前記超電導多層複合体を超電導状態となる温度よりも高い温度に加熱するステップと、前記所定の値の磁束を発生させている状態で、前記超電導多層複合体を再度超電導状態に戻すスップとを含むことを特徴とする。
予め定められた軸の周りに第1の超電導多層複合体を、その内側に前記軸が通る空間を形成するように配置し、前記第1の超電導多層複合体を基準にして前記軸の反対側に於いて、前記第1の超電導多層複合体を覆うように前記軸の周りに第2の超電導多層複合体を配置した超電導磁石装置の着磁方法であって、該方法は、前記第2の超電導多層複合体を超電導状態とし、該超電導状態を維持するステップと、着磁用コイルに励磁電流を流すことにより前記第1の超電導多層複合体によって囲まれている前記空間に所定の値を磁束を発生させるステップと、前記第1の超電導多層複合体を超電導状態となる温度に維持した状態に於いて前記励磁電流を徐々に低下させ、前記第1の超電導多層複合体に誘導電流を発生させるステップと、前記第1の超電導多層複合体を超電導状態となる温度に維持した状態に於いて前記着磁用コイルからの磁束の発生を零にし、前記超電導電流を永久電流として前記第1の超電導多層複合体に保持させるステップとを含むことを特徴とする。
本発明の超電導磁石装置の着磁方法は更に、前記着磁用コイルにより磁束を発生させる際、前記空間の端部に向かう磁束を磁束妨害手段により前記第2の超電導多層複合体側に押し返すステップを含むことを特徴とする。
本発明での静磁場発生源は予め定められた軸に沿う磁束を発生させるようにその軸の周りに流れる永久電流の保持媒体となる超電導多層複合体から作られている。この超電導多層複合体から作られた静磁場発生源は電気的接続部を本質的に必要としないと共に、通常の超電導コイルのように機械的変化を起こす恐れも実質的にない。したがって、接続部の接続抵抗の故に生じる磁束の減衰並びにその接続抵抗や超電導多層複合体から作られた静磁場発生源の機械的変化の故に生じる発熱に基づくクエンチの発生は防止される。更に、その超電導多層複合体から作られた静磁場発生源は通常の超電導コイルのような巻線作業や接続作業を必要としないため、その製作精度の一様性及び高度性が得られる。加えて、その超電導多層複合体から作られた静磁場発生源の構造的単純さの故に通常の超電導コイル型のものに比べて装置全体の小型化及び軽量化が達成された。
本発明によれば、上記の超電導多層複合体から作られた静磁場発生源は電気的接続部を本質的に必要としないと共に、通常の超電導コイルのように機械的変化を起こす恐れも実質的にない。したがって、接続部の接続抵抗の故に生じる磁束の減衰並びにその接続抵抗や超電導多層複合体から作られた静磁場発生源の機械的変化の故に生じる発熱に基づくクエンチの発生は防止される。
更に、その超電導多層複合体から作られた静磁場発生源は通常の超電導コイルのような巻線作業や接続作業を必要としないため、その製作精度の一様性及び高度性が得られる。加えて、その超電導多層複合体から作られた静磁場発生源の構造的単純さの故に通常の超電導コイル型のものに比べて装置全体の小型化及び軽量化が図られる。
図1は本発明に基づく磁気共鳴イメージング装置用の超電導磁石装置の一実施例を示す。図1(b)は図1(a)のIB−IB断面図である。この実施例は静磁場発生源としてシリンダ状の超電導多層複合体を用いた例で、11は外部に対して断熱された円筒状の中空部を有する冷媒容器で、この中空部には超電導用冷媒である液体ヘリウムが収容され、その上部には冷媒注入ポート12が設けられている。冷媒容器11内の冷媒中には静磁場発生源としての超電導多層複合体のシリンダ状体13が浸漬され、該シリンダ状体13は冷媒容器11内の所定位置に保たれるようにその両端において支持部材14a及び14bによって支持されており、該支持部材14a及び14bは冷媒容器11に固定されている。図では省略されているが、支持部材14a及び14bは冷媒がシリンダ状体13の内外間を自由に流通し得るように適当な数の冷媒流通孔を有する。なお、冷媒容器11の中心軸に沿う貫通孔33は磁気共鳴イメージング装置に本実施例を利用する場合の被検体等の収容空間となるものである。支持部材14a,14bは静磁場発生源の熱膨張係数と実質的に同じあるいはマッチする熱膨張係数を持っている。
超電導多層複合体としては好適なものとしてNbTi層(30層)とCu層(31層)とを両表面がそれぞれCu層で形成されるように交互に積層し、かつ層と層の間にNb層(合計60層)をそれぞれ介在させたものを熱間圧延及び冷間圧延することにより得られた厚さ1mm程度のNbTi/Nb/Cu超電導多層複合体が用いられる(圧延により得られた厚さ1mm程度のシートをn枚一体化したシートも使用可能である)。また、これを深絞り加工することによりカップが得られ、更にこのカップの底を切り取ることにより超電導多層複合体のシリンダ状体13が得られる。NbTi/Nb/Cu超電導体多層複合体の作り方等はたとえばアイイーイーイー・トランザクションズ・オン・アプライド・スーパーコンダクティビティ,第3巻,第1号,1993年3月,第177頁〜第180頁(IEEE TRANSACTIONS ON APPLIED SUPERCONDUCTIVITY, VOL.3, NO.1,MARCH1993, PP177−180)に詳しく記載されている。
超電導多層複合体のシリンダ状体13にはその周方向に永久電流が流れており、したがってこの永久電流の故にシリンダ状体13の内部即ち貫通孔33内には磁場が形成される。
直ちに理解されるように、超電導多層複合体のシリンダ状体13は電気的接続部を本質的に必要としないと共に、通常の超電導コイルのように機械的変化を起こす恐れも実質的にない。したがって、接続部の接続抵抗の故に生じる磁束の低下並びにその接続抵抗やシリンダ状体13の機械的変化の故に生じる発熱に基づくクエンチの発生は防止される。更に、シリンダ状体13は前述のように超電導多層複合体の深絞り加工及び切断加工により形成され、したがって通常の超電導コイルのような巻線作業や接続作業を必要としないため、その製作精度の一様性及び高度性が保たれる。加えて、超電導多層複合体から作られた静磁場発生源の構造的単純さの故に通常の超電導コイル型のものに比べて装置全体の小型化及び軽量化が図られる。
図2は本発明に基づく超電導磁石装置の他の実施例を示す。図2(b)は図2(a)のIIB−IIB断面図である。この実施例も磁気共鳴イメージング装置用の磁石として説明する。この実施例は静磁場発生源として超電導多層複合体の円板状体を用いる例である。図において、11は外部に対して断熱された円筒状の中空部を有する冷媒容器で、この中空部には超電導用冷媒である液体ヘリウムが収容され、その上部には冷媒注入ポート12が設けられている。冷媒容器11内の冷媒中には静磁場発生源としての複数個の超電導多層複合体の円板状体43a〜43fが並置された状態で浸漬されていて、これらの中心部にはそれぞれ磁束通過孔44a〜44fが設けられている。超電導多層複合体の円板状体43a〜43fは冷媒容器11に取り付けられた支持部材45に固定されている。なお、この実施例でも図1の実施例と同様に冷媒容器11にその中心軸39に沿って貫通孔33が設けられてある。
超電導多層複合体としては、図1のシリンダ状体13と同様に、NbTi層(30層)とCu層(31層)とを両表面がそれぞれCu層で形成されるように交互に積層し、かつ層と層の間にNb層(合計60層)をそれぞれ介在させたものを熱間圧延及び冷間圧延することにより得られた厚さ1mm程度のNbTi/Nb/Cu超電導多層複合体が用いられる。そして、このNbTi/Nb/Cu超電導多層複合体から、所望の形及び大きさを有しかつその中心部に磁束通過孔を有する超電導多層複合体の円板状体43a〜43fを加工して得ることができる。
超電導多層複合体の円板状体43a〜43fにはそれぞれ永久電流が流れている。これらの永久電流はそれぞれ磁束通過孔44a〜44fの周りに流れる。このため、これらの永久電流によって磁束通過孔44a〜44fを通過する磁束、したがって磁界が形成される。
この実施例によれば、静磁場発生源としての超電導多層複合体の円板状体43a〜43fの数はコイルの巻き数に相当し、したがって、その数を増やすと、得られる磁界の強さが強くなる。この実施例によっても図1の実施例と同様の効果を期待し得ることが明らかである。
また、図2(a)の超電導多層複合体43a〜43fの形状は円板状に限らず様々な形状の板状体のものが可能である。
次に超電導多層複合体13の着磁方法について図1を用いて説明する。着磁の際は貫通孔33内に励磁電源15に接続された着磁用コイル16が挿入される。着磁方法としては以下の3つの方法(1),(2),(3)がある。
着磁方法(1):
常電導状態から超電導状態にし、その状態で着磁のための外部磁界を徐々に下げて零にする。図5には、超電導多層複合体において、超電導多層複合体の一方の側から加えた外部磁界Haと超電導多層複合体を挟んだ逆側における磁束密度Bの関係を示す。直線y=axは常電導状態での外部磁界Haと磁束密度Bとの関係を表わす。Hc1'は外部から加えた磁界が超電導多層複合体を透過して反対側に現われる磁界強度(以下、下側臨界磁界という)であり、Hc2は上部臨界磁界である。着磁方法(1)では、図5の(1)のルートで外部磁界が印加され、超電導多層複合体に磁束B1を保持する永久電流が流れる。
図1と図6(a)〜(e)を用いて着磁方法(1)の手順を説明する。まず、冷媒容器11の中は空の状態にされる。すなわち、超電導多層複合体13は初めに超電導状態となる温度よりも高い温度に保たれる。この状態において着磁用コイル16には励磁電源15から励磁電流が供給される(図6(c))。着磁用コイル16はソレノイド型のもので、これに電流が流れることによってそのコイルの中空部を通過するループの磁束が発生して着磁するための外部磁界を形成する(図6(d))。このループ状の磁束には超電導多層複合体13の管壁を貫通するループと超電導多層複合体13を貫通せず、外側を回るループの磁束がある。いずれにしても、このようなループ状の磁束は超電導多層複合体13にその周方向に、通過磁束を捕捉するための誘導電流を発生させる。しかし、超電導状態より高い温度ゆえ、誘導電流は抵抗のためにすぐに減衰し、零になる(図6(b))。
次いで、冷媒容器11に超電導用冷媒である液体ヘリウムが充填される(図6(a)のt1)。すなわち、超電導多層複合体13は超電導状態となる温度に冷却される。この後、図6(c)のaに示すように励磁電源15から着磁用コイル16に供給される励磁電流が徐々に低くされ、やがて零にされる。これによって、超電導多層複合体13には超電導特性に沿って磁束を保持する方向の誘導電流が発生し、永久電流として保持され(図6(b))、この永久電流によってループ状の磁束が発生される(図6(e))。このループ状の磁束はシリンダ状超電導多層複合体13の中心軸39に沿って空間33を通過するようになり、その結果として軸39に沿う静磁場が発生し続けられる。超電導多層複合体13がこのようにして永久電流保持媒体として着磁された後は着磁用コイル16は空間33から取り去られ、その空間33は磁気共鳴イメージングを行うように被検体を取置するための空間として使用される。
着磁方法(2):
図5の(2)のルートで着磁する方法であり、超電導状態にして外部磁界を上げてゆき、領域IIの所定値に固定し、一定時間後に外部磁界を徐々に低下させて零にするという方法である。
図1と図7(a)〜(e)を用いて詳細に説明する。図7(a),図7(c)に示すように、超電導多層複合体13を超電導状態となる温度に保ったまま着磁用コイル16に励磁電流を徐々に増加するように流すと、これに伴って、超電導コイル16によって発生される空間33を通る着磁用磁束が徐々に増加して着磁するための外部磁界を形成し(図7(d))、超電導多層複合体13にその周方向の電流が超電導特性に沿って磁束を増加させない方向に誘導される(図7(b))。また、着磁用コイル16に流す電流がHc1'を越えた外部磁界を発生させ所定値になったら、これを所定時間そのまま保つ。即ち、空間33を通る着磁用磁束、したがってそれにより超電導多層複合体13の周方向に誘導される電流も所定値に達した後この値を維持する。この後、図7(c)に示すように着磁用コイル16に流す電流を徐々に低下させ零にすると、超電導多層複合体13には、図7(b)に示すように超電導特性に沿って磁束上昇時と逆向きの電流が誘導されて着磁用コイルの電流が零になっても誘導されたその周方向の電流はある値の永久電流として保持される。該永久電流により、図7(e)の着磁値が得られる。
着磁方法(3):
図5の(3)のルートで着磁する方法であり、領域Iで超電導多層複合体を加熱し、一時常電導状態にし、その後再び超電導状態にして、外部磁界を徐々に低下させるという方法である。
図1と図8(a)〜(f)を用いて詳細を説明する。超電導多層複合体13を超電導状態に保ったまま着磁用コイル16に励磁電流を徐々に増加し外部磁界を下側臨界磁界Hc1'内の所定値に設定し、その状態で内部に設けられたヒーターにより超電導多層複合体13を常電導特性状態になるように加熱する(図8(a),図8(f))。それにより、超電導多層複合体13の内部に外部磁界が自由に通過できる状態となる。
その後、ヒーターをオフにし、超電導多層複合体13を超電導状態に戻す。この状態のもとで励磁電流を減少させて、外部磁界を徐々に低下させる(図8(c),図8(d))。その低下過程において、超電導多層複合体13の内部を通過した磁束を保持するように、誘導電流が発生する(図8(b))。この誘導電流が永久電流となり図8(e)の着磁値を得る。
図3,図4のヒーターの設置例を示す。図3は、図1の超電導多層複合体13をヒーター46で加熱する例であり、ヒーター46は超電導多層複合体13を挟むように設置され、外部に設けられたスイッチSWを介して、電源47に接続されている。図4では図2の超電導多層複合体43a〜43fの各々を挟むようにヒーター46が設置される。他は、図3と同様である。
図9及び図11は磁気シールドを備えた本発明の超電導磁石装置の一実施例である。図10は図9のX−X断面図である。これらの図において、11は外部に対して断熱された冷媒容器で、これは仕切り22によって二つの冷媒室23及び24に仕切られている。両冷媒室23及び24には超電導用冷媒である液体ヘリウムが収容され、両冷媒室に液体ヘリウムを挿入するための冷媒注入ポート25及び26は冷媒容器11にそれぞれ設けられている。冷媒室23内には静磁場発生源としての超電導多層複合体からなるシリンダ状体13が設置され、これは支持体14によって支持されている。支持体14は冷媒容器11に固定されていて、液体ヘリウムが自由に流通し得るように適当数の冷媒流通孔17を有する。冷媒室24にはシリンダ状体13を覆うように磁気シールドとしての超電導多層複合体からなる円形箱状体30が配置され、これはこの内外間を冷媒が流通し得るように冷媒容器11に固定されている。
静磁場発生源すなわちシリンダ状体13の内部空間33にはソレノイド型の着磁用の着磁コイル16が配置され、これは励磁電源15に接続されている。冷媒容器11の、空間33の軸39に沿う一端(図では左端)には磁束妨害部材40が設けられている。この磁束妨害部材40は超電導用冷媒である液体ヘリウムで満たされた容器41とその中に浸漬された超電導多層複合体42からなる。この超電導多層複合体42としてはシリンダ状体13及び円形箱状体30と同様に前述したNbTi/Nb/Cu超電導多層複合体が用いられる。磁束妨害部材40は、シリンダ状体13を着磁する際、最初の段階から使用され、着磁終了後は取りはずされる。
一方、冷媒注入ポート25及び26はそれぞれコック36及び37を介して超電導用の冷媒源38に接続されている。冷媒注入ポート25及び26のキャップを外し、コック36及び37が開けると、冷媒室23及び24には超電導用冷媒である液体ヘリウムが注入される。円形箱状体30は超電導状態となる温度に保たれると磁気シールドとして作用するようになるので、シリンダ状体13から発生されて、外部に漏洩されようとする磁束すなわち磁場は円形箱状体30によって遮蔽される。加えて、着磁コイル16から発生される磁束であって、かつ空間33において該空間33の、軸39に沿う端部(図では左端)に向かう磁束は磁束妨害部材40によって外部にほとんど漏洩することなしに磁気シールド30内に押し返されるように導かれる。なぜならば、磁束妨害部材40は液体ヘリウムで満たされた容器41とその中に配置された超電導多層複合体42からなり、したがって該超電導多層複合体42は磁気シールドとして機能するからである。これは着磁コイル16から発生される磁束によるシリンダ状体13の着磁効率の増大が図られることを意味する。
図11は本発明に基づく方法を説明するための超電導多層複合体の着磁装置のもう一つの実施例を示す。この実施例の図9に示される実施例に対する相違点は磁場妨害部材40が空間33を進む磁束と方向が反対の磁束を発生させる、励磁電源15に接続されたコイル43からなっていることである。コイル43に励磁電源15から電流が供給されると、該コイル43は着磁コイル16によって発生されるループ状の磁束と方向が反対の磁束を発生し、この磁束は空間33において該空間33の、軸39に沿う端部(図では左端)に向かう磁束を磁気シールド30内に押し返すように導く機能を果たす。したがって、図11の実施例によってもシリンダ状体13の着磁効率の増大が図られる。
図12,図13,図14,図15は垂直に静磁場を発生させる超電導多層複合体を用いた超電導磁石装置の一実施例である。図12において、11は外部に対して断熱され、超電導用冷媒である液体ヘリウムで満たされた冷媒容器である。11はコ字状をしており、図12では紙面の背後側で図示の上部と下部の容器が連通している。その内部平坦部には図13に示される円板状の超電導多層複合体からなる静磁場発生源27a及び27b並びに28a及び28bが配置されている。静磁場発生源27a及び27b並びに28a及び28bは、それぞれは冷媒容器11の外部に存在する空間33を介して互いに対向している。18a,18bは、着磁用コイルであり、上記静磁場発生源を着磁後取り除かれる。静磁場発生源27a,27b;28a,28bから永久電流I1,I2により発生される磁束Bは空間33,静磁場発生源27a及び28aの中央開口、静磁場発生源27b及び28bの中央開口、空間33の経路を形成する(図13)。したがって、空間33には垂直方向(図12の上下方向)に静磁場が形成される。空間33は磁気共鳴イメージングを行うように被検体としての被検者が配置される空間として用いられる。一対の円板状超電導多層複合体のそれぞれは、2枚に限らず、所定の間隔をおいて重なった1枚以上の円板状超電導多層複合体を含む実施例も考えられる。
次に着磁方法について説明する。図12中の着磁用コイル18a,18bは励磁電源15に接続され、その極性は同一方向に接続される。その結果、図12に示すような磁界101が発生される。また、冷媒は、冷媒源38がコック36を介して冷媒容器11に設けられた、冷媒注入ポート25から注入される。着磁は既に説明した3つの方法(1),(2),(3)により行われる。
図14及び図15の実施例と図12,図13の実施例との相違点は、静磁場発生源28a,28bの代わりにアクティブ磁気シールド29a,29bが設けられていることである。静磁場発生源27a,27bの中央部には比較的大きな開口が設けられているが、アクティブ磁気シールド29a,29bには開口が存在しない。また、磁気遮蔽の観点から、アクティブ磁気シールド29a,29bの径は、図15に示されているように静磁場発生源27a,27bのそれよりも大きく取ることが望ましい。
図14の実施例の着磁方法について説明する。図14中、18aは静磁場発生源27a,27bを着磁するための着磁用コイルで、励磁電源15aに接続される。また、2つの着磁コイル18bは励磁電源15bに接続される。但し、着磁コイル18bの極性は着磁コイル18aと反対方向である。その結果、図14に示すような方向の磁界102,103,104が発生する。
このような構成において、励磁電源15a,15bにて、使用する所定の磁場強度を得ると同時に、磁気シールド29a,29bによる磁気シールドが効果的に行われるようバランスをとった調整を行いつつ、着磁を行う。着磁の仕方は既に説明した3つの方法(1),(2),(3)のいずれかで行われる。
以上の実施例は静磁場発生源として円板を適用したものであるが、これをシリンダ状態にしても同様の効果が得られる。
図16は、着磁コイルを内蔵した超電導磁石装置の一実施例である。既に説明した実施例の構成要素と同一の機能を有するものには同じ番号を付してある。超電導多層複合体から作られたシリンダ状の静磁場発生源13は冷媒容器11内においてその中央貫通孔33の中心軸39の周りに配置され、冷媒容器11に固定されたボビン25に埋め込まれている。シリンダ状の超電導多層複合体13を着磁するためのソレノイド型の着磁コイル34は冷媒容器11内において超電導多層複合体13の外側に配置され、ボビン19によって支持されている。したがって、静磁場発生源13と着磁コイル34は事実上一体化されている。なお、ボビン20はガラス繊維強化プラスチック(FRP)で作られてよい。
冷媒容器11内にはその内壁に密接するように超電導多層複合体から作られた磁気シールド30が配置され、該磁気シールド30は静磁場発生源13及び着磁コイル34を、静磁場発生源13を基準として軸39と反対側において覆っている。冷媒容器11の上部には冷媒注入ポート25が設けられていると共に、着磁コイル34への電流供給用のコネクタ部89も設けられている。
尚、磁気シールド30はなくてもよい。また、磁気シールドを有し、着磁のために冷媒容器内を2つに仕切り、磁気シードのみを独立して冷却することも可能であり、その場合は図9の構成に似たものとなる。
また、図12,図14の構成に於いて、着磁コイルを内蔵する場合は、超電導多層複合体27a,27bの外側に着磁コイルを設けることができる。
着磁の仕方は、前述の着磁方法(1),(2),(3)のうちのいずれかで行う。
図17は、本発明による超電導磁石装置の他の実施例である。既に説明した実施例の構成要素と同一の機能を有するものには同じ番号を付す。図17において、超電導磁石装置の基本構成は図16に示したものと同じであり、異なる所は、冷媒容器11,磁気シールド30、及びシリンダ状超電導多層複合体13を支持するボビン19の構造である。本実施例では、上記の冷媒容器11及び磁気シールド30を分割構造として、組立を容易に行うことができるようにしたものである。
冷媒容器11は外部空間33を形成するように軸39の周りに位置する内側周部分11aと、該内側周部分11aの外側において軸39の周りに位置する外側周部分11bと、内側周部分11aと外側周部分11bとの接続部を構成するサイド部分11c及び11dとで構成されている。磁気シールド30は軸39の周りに配置されるように軸39の方向に分割された一対の磁気シールド部材30a及び30bからなる。一対の磁気シールド部材30a及び30bはそれぞれカップ状に形成され、その縁部には互いに接触状態で対向するつば30c及び30dが設けられていると共に、その底部30e及び30fには冷媒容器11を構成する内側周部分11aが入り得る孔が設けられている。冷媒容器11を構成する外側周部分11bはつば30a及び30bの部分11dにおいて軸39の方向に第1の外側周部分11b1及び第2の外側周部分11b2の2つに分割されている。したがって、第1の外側周部分11b1及びサイド部分11cでもって第1のカップ状冷媒容器部材を、また、第2の外側周部材11b2及びサイド部材11dでもって第2のカップ状冷媒容器部材をそれぞれ形成していることになる。分割部分11dはつば30a及び30bを包むような形で溶接等により液密的に接合され、また、サイド部分11c及び11dも内側周部分11aに溶接等により液密的に接合されている。
ボビン19はその両端において押え部材91にボルト92a及びナット92bを用いて固定されている。押え部材91は磁気シールド部材30a及び30fに向かって開口するコ字状断面を有し、それぞれ冷媒容器11を構成する内側周部分11aに密に嵌まっている。
次に、装置の製作、特に磁気シールド30の装置への組入れ方を説明するに、静磁場発生源としての超電導多層複合体13及び着磁用コイル34を有するボビン19をその両端において押え部材91にボルト92a及びナット92bを用いて固定する。この場合、押え部材91の一方の外端部から他方の外端部までの間隔は一対の磁気シールド部材底部30e及び30f間の内側寸法と実質的に同じにされる。次いで、押え部材91を図のように冷媒容器11を構成する内側周部分11aに嵌め込む。その後、一対の磁気シールド部材30a及び30bを図のように互いに対向させる。すなわち、その底部30e及び30fの孔に内側周部分11が入るようにしてつば30c及び30dを図のように対向させる。最後に、第1及び第2のカップ状冷媒容器部材を内側周部分11aに両側から図のように嵌め込み、11dで示される互いに対向する部分を図のように溶接等により液密的に接合すると共に、サイド部分11e及び11fは内側周部分11aと同様に溶接等により液密的に接合される。サイド部分11c及び11d間の内側寸法は底部30e及び30f間の外側寸法と実質的に同じにされている。もちろん、断熱構造物90の装置への組込みも当然なされなければならないのであるが、そのやり方は周知のやり方と同じでよいので、ここでは省略する。
以上の説明から、装置の製作は簡単に行われ得ることが理解される。同時に、装置の製作を簡単にするために磁気シールド30による磁気シールド効果を妨げる要素は実質的に存在しない。これは磁気シールド30による磁束の外部漏洩防止効果を実質的に損なうことなしに超電導磁石装置の製作が容易に行われ得ることを意味する。
磁気シールド30の底部30e及び30fはサイド部分11c及び11d並びに押え部材91によって実質的に堅固にサンドイッチされている。したがって、何らかの原因で外部から底部30e及び30fにその外側に向かう電磁力が作用する場合はもちろん、その内側に向かう電磁力が作分した場合でも磁気シールド30の破損又は位置ずれは事実上生じない。
分割部分11dの接合方法としては、第1及び第2の外側周部分11b1及び11b2を直接接合するのではなく、図18に示されるように、つば30c及び30d並びに第1及び第2の外側周部分11b1及び11b2の端部を全体的に包むような当て具93を用い、これを第1及び第2の外側周部分11b1及び11b2に溶接等により液密的に接合するようにしてもよい。同様に、図19に示すように、内側周部分11aとサイド部分11dとの接合についても当て具94を用い、これを内側周部分11a及びサイド部分11dに溶接等により液密的に接合するようにしてもよい。もちろん、内側周部分11a及びサイド部分11dの接合についても事情は全く同じである。
本実施例においては、冷媒容器11を仕切りによって2つの冷媒室に分割し、静磁場発生源13を一方の冷媒室に、磁気シールド30を他方の冷媒室に配置することもできる。この場合には、両冷媒室にそれぞれ冷媒注入ポートを取り付ける必要がある。
図20,図21及び図22は、大きな径の管状超電導多層複合体をC字型に曲げて構成した超電導磁石装置の実施例である。既に説明した実施例の構成要素と同一の機能を有するものには同一の番号を付する。
図20の実施例においては、外部に対して断熱され、超電導用冷媒である液体ヘリウムで満たされた冷媒容器11はコ字状(又はC字状)断面を有し、その内部にはC字状断面を有する静磁場発生源27が配置されている。静磁場発生源27は超電導多層複合体から作られた管状体である。管状体27の両端部は冷媒容器11の外部に存在する空間33を介して互いに対向している。静磁場発生源27の外周又は内周側には1つ又は複数の着磁コイル(図示せず)が、静磁場発生源27の全長に沿ってソレノイドコイル状に巻かれている。静磁場発生源27から発生される磁束は符号53で示されるように空間33を通り、したがって空間33には静磁場が形成される。空間33は磁気共鳴イメージングを行うように被検体1が配置される空間として用いられる。具体的には、被検体は移動テーブル上に寝かせられ、この移動テーブルを図示の右方向から左方向に、又は紙面と垂直な方向に移動することによって空間33に運ばれる。超電導多層複合体27は図1の超電導多層複合体13と同じようにして作られている。
着磁コイルによる着磁は、前述の着磁方法(1),(2),(3)のいずれかにより行われる。
図21の実施例は、下記の点で図20の実施例と相違する。管状超電導多層複合体27の両端部が広口になっている。すなわち管状超電導多層複合体27の断面(横断面)の寸法(大きさ)がその中央部においてよりも両端部において大きいことである。この実施例によれば、管状超電導多層複合体27の中央部の断面寸法が図20の実施例のそれと同じならば、管状超電導多層複合体27の両端部が広口にされている分だけ磁束の分布範囲が広くなる。別の言い方をするならば、磁束の分布範囲が図20の実施例のそれと同じならば、管状超電導多層複合体27の中央部を図20の実施例のそれよりも細くすることができる。これは管状超電導多層複合体27の曲げ加工の容易化を可能とする。
図22の実施例においては、管状静磁場発生源27の周りに磁気シールド51を配置したこと、管状静磁場発生源27の両端部に円形の板状シム52を配置したことで、図20の実施例と異なる。図22は、超電導磁石装置の要部断面図、図23は、図22のXXIII−XXIII断面図である。
図22において、外部に対して断熱された冷媒容器11はC字状縦断面と円形状横断面を有する。冷媒容器11は、縦断面がC字状、横断面が円形をなし、そして両端がそれぞれ閉じられた仕切り22によって2つの冷媒室23及び24に仕切られて(分離されて)おり、これらの冷媒室23及び24には超電導用冷媒である液体ヘリウム用の冷媒注入ポート25及び26が設けられている。冷媒室23には縦断面がC字状の、超電導多層複合体から作られた管状静磁場発生源27が配置されている。管状静磁場発生源27の両端部は冷媒容器11の外部に存在する空間33を介して互いに対向しており、また、その外周には1つ又は複数の着磁コイル32がソレノイドコイル状に巻かれている。着磁コイル32は、管状静磁場発生源27の内周側に配置してもよい。50は着磁コイル32用のコネクタ部である。冷媒室24には縦断面がC字状の、超電導多層複合体から作られた磁気シールド51が管状静磁場発生源27の外周を囲むように配置されている。冷媒室24には管状静磁場発生源27の両端部に近接して円形の板状シム52がそれぞれ配置され、該板状シム52は図24に示されるように少なくとも1個の磁束通過孔を有する。管状静磁場発生源27から発生される磁束は符号53で示されるように空間33を通り、したがって空間33には静磁場が形成される。空間33は磁気共鳴イメージングを行うように被検体が配置される空間として用いられる。具体的には、被検体は移動テーブル上に寝かせられ、この移動テーブルを図示の右方向から左方向に、又は紙面と垂直な方向に移動することによって空間33に運ばれる。超電導多層複合体27は図1の超電導多層複合体13と同じようにして作られている。
図24の板状シム52について説明する。管状静磁場発生源27に於いて、磁束は管状静磁場発生源27内でも外側経路より内側経路を通過する量が一般に多い。従って、空間33は、その状態が従った磁束分布となる。これを補正し、均一な磁束分布とするため、板状シム52を設ける。板状シム52としては、例えば、内側経路部位には少数の穴をあけるか或いは小さい穴をあけ、外側経路部位には多数の穴をあけるか或いは大きい穴をあけて磁束分布の均一化を図る。穴の形状は円形に限らない。
着磁コイル32による着磁は前述の着磁方法(1),(2),(3)のいずれかにより行われる。
図25及び図26は、小さな径の管状超電導多層複合体をC字型に曲げたものを複数個集めて構成した超電導磁石装置の実施例である。図25は本実施例の全体構成の概略図、図26は静磁場発生源27の断面図である。
図25の実施例と図20の実施例の相違点は、管状超電導多層複合体からなる静磁場発生源27が、図示の如く超電導多層複合体で作られた細管を束状に寄せ集めてできた細管集合体によって構成されていることである。この細管集合体27は、外表面が電気絶縁処理された超電導多層複合体から作られた細管を束ねて全体的に図26のような形状となるように曲げ加工し、その後これにエポキシ樹脂を含浸させ、固めることで実現できる。もちろん、両端面は加工により図示のように平らに形成され得る。
着磁コイル(図示せず)は、細管集合体27の外周全域に亘り、1個又は複数個配置される。着磁の仕方は、既に説明した3つの方法(1),(2),(3)のいずれかで行われる。
上記の如く、超電導多層複合体の細管を束状に寄せ集めてできた細管集合体27は、工作上並びに管径の大小混合により、一本の管の場合に比べて、曲げ加工の容易性並びに静磁場空間33の磁束密度分布の均一性の向上(配列による)の利点がある。
次に、図27を参照して超電導多層複合体から作られた静磁場発生源13の構造について説明する。超電導多層複合体である静磁場発生源13の本体は、ほぼ均一な肉圧を有するとともに、実質的にシリンダ状に成形されている。図示されているように、その管の一端の内径D2はその管の中央部における内径D1よりも小さくなっている。また、シリンダ状空間を通る予め定められた長手中心軸39に沿って均一な静磁場を発生させるように、上記シリンダ状の超電導多層複合体の形状は、長手中心軸39に対して軸対称に構成されている。さらに、シリンダ状超電導多層複合体の両端部の直径が、その中央部に直径よりも短くなっている。特に、図27の場合には、シリンダ状超電導多層複合体の直径がその中央部からその端部に向かって漸次短くなっている。このシリンダ状超電導多層複合体の軸方向断面の形状は円の一部であっても良い。
図28は、本発明の他の実施例の静磁場発生源13を示す。この実施例においては、シリンダ状超電導多層複合体である静磁場発生源13が、一定の直径を有する中央部領域Aと、それぞれの中央部領域と連続する2つの端部領域BおよびCとの3つの領域から構成されている。上部両端部領域BおよびCの軸方向断面の形状は、円錐台形になっている。図28の例によっても、図27に示される実施例と同様の効果が得られ、静磁場全体としての均一度のより一層の改善が図られる。
図29は、本発明の他の実施例である静磁場発生源13を示す。この実施例においては、シリンダ状超電導多層複合体である静磁場発生源13が、複数個(この例では、5個)の円筒体60,61および62から構成されている。これらの円筒体の直径は、中央部から端部に向かって順次その径が小さくなっている。すなわち、円筒板60,61,62の順に直径が小さくなっている。各円筒体を接続する必要はなく、各円筒体によって発生される軸方向の磁場が実質的に乱れることがないよう、各円筒体を図のように規則的に配列するだけで良い。なお、この実施例においては、5個の円筒体を用いてシリンダ状磁石を構成した例を示したが、本発明の観点からみて、円筒体は60と61の少なくとも3個あれば所定の目的を達成することができる。その場合には、必要に応じて円筒体60の長さを長く取る必要がある。また、円筒体の個数を増やすことによって、図27の実施例に近い効果が得られることは説明するまでもなく明らかであろう。
本実施例の磁石は、一定径の円筒体だけで構成できるので、前に述べた実施例のように面倒な加工工程を必要としない利点を有する。以上説明した実施例は、例示であって、当業者であれば本発明の精神を逸脱しない範囲において容易に他の変形が可能である。例えば、図28においては、端部領域の軸方向断面の形状が円錐台を形成しているが、この円錐の周囲面は図のように直線状である必要はなく、前にも述べたとおり、端部に向かって漸次その直径が小さくなるような曲線状になっていても良い。管状超電導多層複合体の両端部の直径を、その中央部の直径よりも短くすることにより、磁束の漏洩点が管状体の中央部から一層遠くになり、超電導多層複合体磁石の全長にわたっての磁束の均一性が、全長にわたって等しい直径を持つ管状体よりも長くとることができる。したがって、装置全体をより一層小型にすることができる。
次に、図30を参照して超電導多層複合体から作られた静磁場発生源13の他の実施例について説明する。超電導多層複合体である静磁場発生源13は、この実施例においては、一定の径D1を有し、かつほぼ均一な肉厚を有する超電導多層複合体の第1の円筒管54,円筒管54よりもわずかに大きな径D3 を有する超電導多層複合体の第2の円筒管55,56、および同じ径D3 を有する超電導多層複合体の第3の円筒管57,58から構成されている。第3の円筒管57,58は、それぞれ第2の円筒管55,56よりも長さが短くなっている。この条件を満足する限り、これら第2,第3の円筒管55,56,57,58の長さは、ある程度任意に決めることができる。要は、メインの第1の円筒管54の端部付近の磁界を強めることによって、端部開口が漏れでる磁束の傾斜角が、単一円筒管の場合よりもより一層中心軸39に平行になるようにしたものである。したがって、より一層平行磁場の均一性を高めるためには、管の端部から中心に向かって順次長さが短くなるように3種類以上の長さの異なる円筒管を配列するのが良い。
以上説明した実施例は、例示であって、当業者であれば本発明の精神を逸脱しない範囲において容易に他の変形が可能である。例えば、図30の実施例においては、第1の円筒管54の端部と第2の円筒管55,56の端部が揃うように配列されているが、前に述べた本発明の原理からみて、第2の円筒管の一部が第1の円筒管の端部よりも外側に突きでていても良い。また、図30の実施例においては、第2の円筒管の径が第1の円筒管の径よりも大きくなっているが、この逆であっても良い。しかし、超電導多層複合体は磁束を通さないので、図30の実施例のように第2の円筒管の径が第1の円筒管の径よりも大きい方が、平行磁場の均一性がより一層高められる。また、超電導磁石を構成する管は、必ずしも円筒でなくとも良く、例えば、より一層被検体の形状に適合するような楕円であっても良い。
この実施例では、管状超電導多層複合体の両端部付近において、二重管構造を採用することにより、端部付近の磁束の方向が中心軸に平行な方向に補正され、超電導多層複合体磁石の全長にわたっての磁束の均一性が、全長にわたって等しい直径を持つ単一のシリンダ状体磁石よりも改善される。したがって、装置全体をより一層小型にすることができる。
図31に、超電導多層複合体を用いた静磁場発生源の他の実施例を示す。図中13は超電導多層複合体を用いた円筒形静磁場発生源で、中心軸は39にて示す。該円筒長手方向(Z方向)の中心の円筒内部の磁場を活用しMRI装置を形成する。またBZ は磁場を形成する磁束の方向を示す。このような前記超電導多層複合体13に、面ヒータを8a,8b,8c,8d,8eに分割独立して取付け、各々ヒータを加熱する電源Pを設け、該Pを各々制御する制御ユニット9を設けた構成とする。このような構成のもとで、前記超電導多層複合体13が着磁されているものと仮定し、ヒータによるシミングを行う。
まず前記超電導多層複合体13の着磁された状態での電流分布は、図31中の磁束の方向がBZ 方向であればこれを発生し続ける永久電流として円筒周方向に流れている。一般にソレノイド形コイルでのコイル内部中心の磁場はZ方向の円筒中心から端面に近づくに従い低くなる。これを補うよう、従来の巻線方式では円筒中心から両端面に向け巻回数を増加させる手段を用いているが、前記超電導多層複合体13においては一般にZ方向円筒全長に亘り形状と超電導複合体の特性に沿った電流分布となる。よって、従来の巻線方式と同様に補正したい場合はZ方向円筒長さ方向をn分割し、着磁後流れる電流を制御し、従来巻線の巻回数による補償と同等の目的を達しようとするものである。そのためにZ方向円筒長さの中心を両端部より電流を小さくするための制御を行う。
その動作を図32(a)を用いて説明する。図32(a)は前記超電導多層複合体13の永久電流を温度の変化により示したもので、NbTiを用いた合金形超電導材を液体ヘリウムで冷却して使用する場合の使用温度範囲は4.2K 付近で運転され、臨界温度Tc(9K以上で超電導状態は失なわれる)以内で使用する。よって、4.2Kが最大永久電流でTc点が最小永久電流値となる。この間で超電導多層複合体13の温度を部分的に変え、その部分の永久電流値を制御し、永久電流によってつくられる磁場を調整する。図32(b)はその制御状態を示したもので、時間軸に対し、ヒータ電流を例えば3種(1)(2)(3)に制御し、該ヒータ電流を(1)<(2)<(3)とすれば、ヒータの温度は該ヒータ電流に比例して高くなる。よって永久電流密度は4.2Kに於ける値に対し(1),(2),(3)の順で減少量が大きくなる。従って、超電導多層複合体13の円筒中を流れる永久電流はヒータ電流を制御することにより希望の値に調整することができるので所期の目的を達成することが可能となる。
上記においては超電導多層複合体についての例を述べたが、円板形超電導多層複合体にした場合でも全く同様の効果を得られると共に、ヒータの設置形態とか密度とかを変えることにより、従来の巻線方式での調整では困難な形状の場合でも連続的な微調整が可能である。更に部分的に臨界温度Tcを超えた制御を行っても、線材と異なり安定な動作が得られる。この現象は、前記超電導多層複合体13の特長のひとつでもある。また前記超電導多層複合体13を1個の円筒として扱ったがこれをn分割し、それぞれにヒータを付加し、これを集合体としても同一の効果を得ることが可能である。
尚、本実施例での着磁に関しては、既に記載された着磁方法(1),(2),(3)の何れの方法でも可能である。
図33は、本発明による超電導磁石装置の他の実施例である。図34は図33のXXXIV−XXXIV断面図である。既に説明した実施例の構成要素と同一の機能を有するものには同じ番号を付す。
11は外部に対して断熱された冷媒容器で、これは仕切り22によって2つの冷媒室23及び24に仕切られている。両冷媒室23及び24には超電導用冷媒である液体ヘリウムが収容され、両冷媒室に液体ヘリウムを注入するための冷媒注入ポート25及び26は冷媒容器11にそれぞれ設けられている。冷媒室23内には静磁場発生源としての超電導多層複合体からなるシリンダ状体13が配置され、これは支持体14によって支持されている。支持体14は仕切り22に固定されていて、液体ヘリウムが自由に流通し得るように適当数の冷媒流通孔29を有する。冷媒室24にはシムとしての超電導多層複合体からなるシリンダ状体63が配置され、これは支持体64によって支持されている。支持体64は冷媒容器11に固定されていて、液体ヘリウムが自由に流通し得るように適当数の冷媒流通孔65を有する。
着磁用コイル16は、冷媒容器11の外周に配置され、これは励磁電源15に接続されている。一方、冷媒注入ポート25及び26はそれぞれコック36及び37を介して超電導用の冷媒源38に接続されている。冷媒注入ポート25及び26のキャップを外し、コック36及び37を開けると冷媒室23及び24には超電導用冷媒である液体ヘリウムが注入される。
はじめに、冷媒室23を空にし、冷媒室24を液体ヘリウムで満たしておく。この状態において励磁電源15から着磁用コイル16に電流を供給する。着磁用コイル16はソレノイド型のもので、これに電流が流れると、そのコイルの中空部を通るループ状の磁束が発生する。このループ状の磁束は、シリンダ状体13とシム63の一端側から両者の内周を経由して、両者の他端側に出て、着磁コイル16の外周を回るループを形成する。いずれにしても、そのようなループ状の磁束はシリンダ状体13にその周方向に流れる誘導電流を発生させるが、シリンダ状体13は常電導状態ゆえ誘導電流は減衰し、零になる。この場合、超電導多層複合体から作られたシム63には超電導特性に応じて、磁束を通さないための誘導電流が誘導される。
次いで、冷媒室23を液体ヘリウムで満たすと、シリンダ状体13は電導状態となる温度に冷却される。したがって、この状態において励磁電源15の電流を徐々に減らし、着磁用コイル16への電流の供給を零にするならば、シリンダ状体13にはループ状磁束を保持する方向の誘導電流が超電導材料の特性に従って生じる。通過した磁束に対応して生じた誘導電流は永久電流として保持され、この永久電流によってループ状の磁束が発生される。このループ状の磁束はシリンダ状体13の中心軸39に沿って空間33を通過し、その結果としてシリンダ状体13の中心軸39に沿う静磁界が発生し続けられる。シリンダ状体13がこのようにして着磁された後は着磁用コイル16は冷媒容器11の外周から徐去され、静磁場が形成された空間33が磁気共鳴イメージングを行うように被検体が配置されるための空間として使用される。
冷媒中において静磁場発生源13と軸39との間であってかつその軸39の周りに配置された、超電導多層複合体から作られたシム63は磁気シールドの機能を有する。したがって、超電導多層複合体から作られた静磁場発生源13から発生される磁束は、シム63の、両端部と空間部を通過することになる。このため、空間33に形成される静磁場の均一度はシム63がない場合に比べて高められることになる。また、シム63の、軸方向の寸法を適切に定めることによって空間33に形成される静磁場の均一な範囲を軸39に沿って拡げることができる。
図35は図33に示される超電導多層複合体から作られたシム63の他の実施例を示す。このシムは一群の静磁場補正用孔66を有する。静磁場発生源13から発生される磁束の一部は一群の静磁場補正用孔66を通って空間33に入り、その空間33に形成される静磁場に影響を及ぼすことになる。したがって、一群の静磁場補正用孔66の分布,数及び大きさ,形状を適切に定めることにより静磁場の局所的補正が可能となり、その結果として静磁場全体としての均一度のより一層の改善が図られるようになる。
図36は本発明による超電導磁石装置の他の実施例である。図37は図36のXXXVII−XXXVII断面図である。既に説明した実施例の構成要素と同一の機能を有するものには同じ番号を付す。これらの図において、外部に対して断熱された冷媒容器11には超電導用冷媒である液体ヘリウムが収容され、その上部には液体ヘリウムを注入するための冷媒注入ポート12が設けられている。冷媒容器11内の冷媒中には静磁場発生源としての超電導多層複合体からなるシリンダ状体13が配置され、これは支持体14によって支持されている。支持体14は冷媒容器11に固定されていて、液体ヘリウムが自由に流通し得るように適当数の冷媒流通孔29を有する。静磁場発生源としてのシリンダ状体13を基準にしてその内部空間33の軸39と反対側において超電導用冷媒中に配置された、磁気シールドとしての超電導多層複合体からなるシリンダ状体63が備えられ、これは支持体64によって支持されている。支持体64は冷媒容器11に固定されていて、液体ヘリウムが自由に流通し得るように適当数の冷媒流通孔65を有する。静磁場発生源としての管状体13の磁気シールドとしての管状体63との間には電気絶縁性の熱伝導体95が介在されている。すなわち、電気絶縁性の熱伝導体95は電気絶縁体95b及びこれを挟持する熱伝導部材95aとを含み、これによってシリンダ状体13とシリンダ状体63とは熱的に一体となるように接続されるが電気的には互いに絶縁される。
シリンダ状体13の内部空間33にはソレノイド型の着磁用励磁コイル16が配置され、これは励磁電源15に接続されている。冷媒容器11の外周にはソレノイド型の打消用励磁コイル96が配置され、これも励磁電源15に接続されている。一方、冷媒注入ポート25はコック36を介して超電導用の冷媒源38に接続されている。冷媒注入ポート25はキャップを外し、コック36を開けると冷媒容器11には超電導用冷媒である液体ヘリウムが注入される。
シリンダ状体13の着磁方法を説明するに、はじめに、冷媒容器11には超電導用冷媒である液体ヘリウムが収容されておらず、したがって、シリンダ状体13は常電導状態となる温度に保たれているものとする。この状態において、励磁電源15から着磁コイル16に電流を流すと、空間33を通るループ状の磁束が発生する。このループ状の磁束は励磁コイル16の一端側から空間33を通ってシリンダ状体13の一端側を回り、更に管状体13の他端側を回って励磁コイル16の他端側を戻るように形成される。もちろん、着磁コイル16の一端側から出てシリンダ状体13の管壁をその内側から外部に貫通し、それからシリンダ状体13をその外部から内部に貫通して戻るループ状の磁束もある。いずれにしても、そのようなループ状の磁束はシリンダ状体13にその周方向に流れる誘導電流を発生させるが常電導状態故減衰し零になる。次いで、コック36を開き、冷媒源38から冷媒容器11に液体ヘリウムを注入する。これによって、シリンダ状体13は超電導状態となる温度まで冷却される。この後、励磁電源15からの着磁コイル16への励磁電流の供給を徐々に低下させ止めると、シリンダ状体23に新たに誘導された超電導電流は永久電流として保持され、この永久電流にもとづいてループ状の磁束が発生される。シリンダ状体13は超電導状態となる温度に保たれており、したがって、永久電流に基づいて生じたループ状の磁束は、空間33をその軸39に沿って通過するようになるため、その結果としてその軸39に沿う静磁界が発生し続けられる。
冷媒容器11が空の状態のときは、励磁電源15からは着磁コイル16に電流が供給されるだけではなく、着磁コイル96にも電流が供給される。着磁コイル96に電流が供給されるとループ状の磁束が発生し、これによってシリンダ状体63にはその周方向に流れる誘導電流が発生されるが常電導状態故減衰し零になる。一方、冷媒容器11に液体ヘリウムを注入することによりシリンダ状体13が超電導状態になる温度に保たれている状態のときは、シリンダ状体63も超電導状態になる温度に保たれている。したがって、励磁電源15からの着磁コイル16への電流の供給が徐々に低下させ止められるとき、励磁電源15からの着磁コイル96への電流の供給も徐々に低下させ止められるならば、シリンダ状体63に誘導された超電導電流も永久電流として保持されることになる。
シリンダ状体13及び63への着磁が終了すると、着磁コイル16及び96は図示の位置から取り除かれる。
シリンダ状体13に流れる永久電流によって生じる磁場の冷媒容器11外への漏洩は避け難い。しかるに、シリンダ状体63に保持される永久電流の方向はシリンダ状体13に保持される永久電流のそれと反対で、その大きさはそれによって発生される磁場がシリンダ状体13からの冷媒容器11外への漏洩磁場を打ち消してその漏洩をできるだけ少なくするような値に設定される。この漏洩磁場を消ち消すために常電導状態の温度において着磁コイル96に流すべき電流の大きさ等は実験的に求めるのがよい。シリンダ状体63はこれに永久電流を流して漏洩磁場を打ち消していることから、いわゆるアクティブシールドとして機能することが理解される。
図38は、本発明による超電導磁石の他の実施例を示す図である。本実施例では、超電導多層複合体で構成された静磁場発生源13の一端側が、閉じた形状となっている。
本実施例では、超電導多層複合体から作られた磁気シールド67は静磁場発生源13を基準にして軸39と反対側及びその軸39の一端側において静磁場発生源13を覆うように超電導用冷媒中に配置されている。超電導多層複合体は、通常の鋼板よりも優れた磁気シールド特性を有している。したがって、静磁場発生源13からの外部漏洩磁場は磁気シールド67によって効果的に遮蔽される。特に、磁気シールド67の開口部前方では漏洩磁場は完全になくなる訳ではないが磁気シールド67の球面体部67aの後方へは磁束が漏れることがなくなる。したがって、球面体67aの後方は(極端に言えば、開口部より後方)は磁気フリーのスペースとして利用できるようになる。
冷媒容器11に仕切りを設け、静磁場発生源13を第1の冷媒室に、磁気シールド67を第2の冷媒室にそれぞれ配置することによって、第2の冷媒室と独立して第1の冷媒室を空にしたり、これに冷媒を充填したりすることができる。このようにすることによって、磁気シールド67の励磁の影響から完全に遮蔽することもできる。
本発明による超電導磁石の他の実施例として、図38の磁気シールドを省いたものや、静磁場発生源13の両端が図1と同様、開放状態になっているものが考えられる。
図39及び図40は、それぞれ本発明の他の実施例を示している。図39の実施例では、磁気シールド67の球面体部67aの中央部に被検体の断面積程度の大きさを持つ開口が設けられている。中央部に開口を設けているので、解放感があり、通風や採光の面でも優れている。その他の構成および作用は、図38の実施例と同様である。また、図40の実施例では、被検体用空間の上記磁気シールド67の端部に光の反射体すなわち鏡68が設けられている。鏡のような光の反射体を設けることによって、空間の奥行きが広がり、解放感が高められる。なお、光の反射体は被検体用空間を明るくするものであれば良く、反射体ではなく、照明でも良い。この実施例も、その他の構成および作用は、図38の実施例と同様である。
図41は超電導多層複合体を静磁場発生源として用いた磁気共鳴イメージング装置のハードウエア部分を示す。被検体71は静磁場発生源として用いられる超電導多層複合体を含む超電導磁石装置72によって発生される静磁場中に配置される。高周波パルス発生装置73によって発生される高周波パルスは増幅器74によって増幅された上、送受信コイル75に導かれ、該送受信コイル75から被検体71に電磁波が印加される。これによって被検体71の核スピンが励起される。このようにして励起された被検体71の核スピンから発生される核磁気共鳴信号は送受信コイル75によって検出され、受信装置77に導かれる。傾斜磁場発生用コイル76は傾斜磁場制御装置78の制御によりX,Y及びZ軸方向の傾斜磁場を発生し、スライス面を特定する。これらの傾斜磁場は静磁場に重畳される。
シーケンス制御装置79は傾斜磁場制御装置78,高周波パルス発生装置73及び受信装置77に接続され、予め定められたパルスシーケンスにより高周波パルスの発生、X,Y及びZ軸方向の傾斜磁場の発生及び核磁気共鳴信号の受信のタイミングを制御する。シーケンス制御装置79はまたコンピュータ80に受信装置77に導かれた核磁気共鳴信号に基づく像再構成処理を行わせ、情報の授受を行う操作卓81を通して表示装置82に像を表示させる。
図41に示された超電導多層複合体を静磁場発生源としたMRI装置では、従来知られている様々なパルスシーケンス、例えば、種々のスピン・エコー法,エコー・プレーナ(echo planer)法等により断層像を得ることができる。また、今後開発されるであろう静磁場を用いる様々なパルスシーケンスでの断層像撮影を可能とする。
8a,8b,8c,8d,8e 面ヒータ、9 制御ユニット、11 冷媒容器、11,25,26 冷媒注入ポート、13,54 シリンダ状超電導多層複合体、14,45 支持部材、15 励磁電源、16,18,34,96 着磁コイル、17 冷媒流通孔
、19 ボビン、22 仕切り、23,24 冷媒室、27,28 静磁場発生源、29 アクティブ磁気シールド、30 磁気シールド、33 静磁場空間、36,37 コック、38 冷媒源、39 軸、40 磁束妨害部材、41 容器、42 超電導多層複合体、43 コイル、43a,43b,43c,43d,43e,43f 円板状超電導多層複合体、44a〜44f 磁束通過孔、46 ヒータ、47 電源、50,89 コネクタ部、52 板状シム、53 磁束、55,56,57,58 円筒管、60,61,62 円筒体、63 シリンダ状シム、64 支持体、65 冷媒流通孔、66 静磁場補正用孔、67 磁気シールド、71 被検体、72 超電導磁石装置、73 高周波パルス装置、74 増幅器、75 送受信コイル、76 傾斜磁場発生用コイル、77 受信装置、78 傾斜磁場制御装置、79 シーケンス制御装置、80 コンピュータ、81 操作卓、82 表示装置、90 断熱構造物、91 押え部材、92a ボルト、92b ナット、93,94 当て具、95 熱伝導体、101,102,103,104 磁界