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JP4094994B2 - 電子源装置 - Google Patents
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子ビームを磁界により約270度回転させて被照射材料に照射する際に、当該電子ビームの回転中心を安定に持ち上げる電子源装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
加熱されたフィラメントから放出された電子を加速して引き出し、磁界によって約180度〜回転させると共にレンズ作用によって電子ビームスポットにしてルツボ内の被溶解材料を照射しつつ、電子ビームの経路の途中に配置したXスキャンコイルおよびYスキャンコイルにより当該電子ビームスポットを所定領域内を平面走査(X方向およびY方向に走査)し、当該電子ビームのエネルギーで被溶解材料の所定領域内をほぼ均一に加熱し溶解して蒸発させ、対向面に配置した基板に蒸着などする電子源装置がある。
【0003】
従来、この電子源装置で、ルツボの上面を、電子銃側の上面とほぼ等しいあるいは下方向に位置させて
・電子ビームを当該ルツボ内の被照射材料にほぼ垂直に照射を実現すると共に、
・当該ルツボからの直接の輻射熱が電子銃側に到来しないように、かつルツボ内の被照射材料から蒸発した材料が電子銃側に蒸着(付着)し汚染してチャージして電子ビームを不安定にしないようにするために、電子ビームを約270度回転させる永久磁石からの磁界を上方向に持ち上げるポールピースを電子銃の上方向に設けて当該電子ビームの回転中心を上側に持ち上げる技術がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述した技術により、ポールピース(軟鉄)を電子銃の上側に設けて電子ビームの回転中心を上側に持ち上げた電子源装置の場合には、結果としてルツボの上面を、電子銃側の上面とほぼ同じあるいは下方向できるという有利な点があるが、しかし、ルツボ内の被照射材料を照射加熱する電子ビームスポットの位置が使用により移動してしまい、均一に常にほぼ同じ領域を平面走査できずシフトしてしまう現象が発生した。この電子ビームスポットのシフトを発生させる原因を追求する各種実験を繰り返した中で、ルツボ内に
・被照射材料としてSi02の円板状の材料を入れ、電子ビームの加速電圧8KV,400mA(3.2KW)で90SECの条件で電子ビーム加熱して蒸着した結果、ポールピースの温度が80〜85℃に上昇
・被照射材料としてZr02の円板状の材料を入れ、電子ビームの加速電圧8KV,900mA(7.2KW)で150SECの条件で電子ビーム加熱して蒸着した結果、ポールピースの温度が200℃以上(90℃までのサーモラベル焼損)にも上昇していた事実を確かめた。このため、当該事実による影響を無くしてルツボ内の電子ビームスポットの時間経過にともなうシフトを低減する対策を発案した。
【0005】
本発明は、これらの問題を解決するため、電子ビームをポールピースを設けて磁界による当該電子ビームの回転中心を上方向に持ち上げて約270度回転させて、電子銃側の上面と同じあるいは下方向に配置したルツボ内の被照射材料面をほぼ垂直方向から照射しつつスキャンコイルで所定領域内を平面走査する際に、電子ビームスポットが時間経過に従いシフトしてしまう現象を解決することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
図1を参照して課題を解決するための手段を説明する。
図1において、フィラメント1は、通電加熱し、電子ビーム2を放射するものである。
【0007】
電子ビーム2は、通電加熱されたフィラメント1から放出されて加速された電子ビームであって、ここでは、図示外の永久磁石で発生された磁界を、ポールピースでその磁界分布を上方向に持ち上げて回転中心Cを上方向に持ち上げられた状態で約270度回転してほぼ垂直にルツボ4内の被照射材料を照射して加熱するものである。
【0008】
ポールピース3は、図示外の永久磁石によって発生された磁界分布を上方向に持ち上げて電子ビーム2の回転中心を上方向に持ち上げるものである。
カバー31は、ポールピース3を覆って、ルツボ4あるいはルツボ4内の溶解した被照射材料からの輻射熱を外部に取り出し、ポールピース3の温度上昇に伴う磁気特性の劣化を防止して電子ビームスポットのシフトを防止するものである。
【0009】
ルツボ4は、被照射材料を入れて電子ビームのスポットで当該被照射材料を加熱して溶解し、対向して配置した図示外の基板上に蒸着させるためのものである。
【0010】
次に、構造およびその動作を説明する。
フィラメント1から放出されて加速された電子ビーム2は図示外の永久磁石からの磁界を当該フィラメント1の上方向に配置したポールピース3によって持ち上げた磁界分布によって約270度回転されて、電子銃側の上面と同じあるいは下方向に配置したルツボ4内の被照射材料面をほぼ垂直で中心を照射した状態で、図示外のスキャンコイル(X、Y)5(図2参照)によって所定領域内を面走査して均一加熱して溶解し、図示外の対向して配置した基板上に蒸着するようにしている。この際、ポールピース3のルツボ4に面する側を少なくともカバー31によって覆って当該ルツボ4(あるいはルツボ4内の被照射材料)からの輻射熱を外部に取り出し、ポールピース3の温度上昇を抑えて磁気特性の劣化を防止して被照射材料を照射する電子ビームスポットの位置のシフトを防止するようにしている。
【0011】
ここで、カバー31の材料として銅を用いるようにしている。
また、輻射熱によるカバー31の温度上昇を、液体を循環させて冷却あるいはヒートパイプにより冷却するようにしている。
【0012】
従って、電子ビーム1をポールピース3によって持ち上げられた磁界分布で約270度回転させてルツボ4内の被照射材料面をほぼ垂直方向から照射しつつスキャンコイル5で所定領域内を平面走査し、ルツボ4の上面を電子銃側の上面と同じあるいは下方向に位置付けて当該ルツボ4からの熱輻射が到来して加熱されなくかつ蒸発物が電子銃側に到来して蒸着して汚染してチャージして電子ビームを不安定にならない状態のもとで、ポールピース3のルツボ4に面する側をカバー31で覆って当該ポールピース3の輻射熱による温度上昇を抑えて磁気特性の劣化を防止しルツボ4内の電子ビームスポットの位置のシフトを無くすことが可能となる。
【0013】
【発明の実施の形態】
次に、図1から図3を用いて本発明の実施の形態および動作を順次詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の説明図を示す。
図1の(a)は正面図(概略)を示し、図1の(b)はルツボ4内を上面から見た図を示す。ここで、フィラメント1、電子ビーム2などの配置位置およびその経路は全て真空に排気される容器(チャンバー)に収納し、フィラメント1が酸化して消耗しないようにしたり、電子ビーム2が容易に(大部分が)ルツボ4内の被照射材料面に到達したり、更に、フィラメント1から放出された電子ビームを加速する電圧(例えば〜10KV)が放電しないようしたりされるものである。
【0015】
図1において、フィラメント1は、通電して加熱し、電子ビーム2を放射するものである。
電子ビーム2は、通電加熱されたフィラメント1から放出されて加速された電子ビームであって、ここでは、図示外の永久磁石で発生された磁界を、ポールピース3でその磁界分布を上方向に持ち上げて回転中心Cを上方向に持ち上げられた状態で約270度回転してほぼ垂直にルツボ4内の被照射材料を照射して加熱するものである。
【0016】
ポールピース3は、図示外の永久磁石によって発生された磁界分布を上方向に持ち上げて電子ビーム2の回転中心Cを上方向に持ち上げる軟磁性材料で作成したものである。
【0017】
カバー31は、ポールピース3を覆って、ルツボ4あるいはルツボ4内の溶解した被照射材料からの輻射熱を吸収(一部反射)して当該吸収した熱を外部に取り出し、ポールピース3の温度上昇に伴う磁気特性の劣化を防止して電子ビームスポットのシフトを防止するためのものである。カバー31は、後述する図2、図3に示すように、導熱性の銅などで作成したものであって、内部に更に冷却し易いように液体(例えば水)を循環させて冷却したり、更に、ヒートパイプを取り付けてカバー31の熱を外部に放出したりするようにしてもよい。
【0018】
ルツボ4は、被照射材料を入れて電子ビームのスポットで当該被照射材料を加熱して溶解し、対向して配置した図示外の基板上に蒸着させるためのものである。ここでは、ポールピース3をカバー31で覆ってルツボ4(あるいはルツボ4内の加熱されて溶解された被照射材料)からの輻射熱を外部に取り出して当該ポールピース3の温度上昇を抑えて当該ポールピース3の磁気特性の劣化を防止して回転中心C等のシフトを防止し、ルツボ4内の被照射材料のほぼ中心を常に照射してシフトしないようにしている(図1の(b)参照)。尚、ルツボ4内の被照射材料のほぼ中心を垂直に電子ビームスポットで照射した状態で、図示外のスキャンコイル(X,Y)5(図2参照)によって、所定領域(例えば40mmφ)を均一に平面走査するようにしている。
【0019】
ここで、
・電子ビームの▲1▼(実線)は、輻射熱の影響を受ける前の電子ビームスポットの経路の例であって、図1の(b)に示すように、ルツボ4内の被照射材料のほぼ中央を照射している状態を示す。
【0020】
・電子ビームの▲2▼(点線)は、輻射熱の影響を受けた後の従来の電子ビームスポットの経路の例であって、図1の(b)に示すように、ルツボ4内の被照射材料の中央からシフトかつスポットサイズが大きくシフトした状態を示す。このように、従来のカバー31が無い状態では、ルツボ4(あるいは内部の被照射材料)からの輻射熱でポールピース3が加熱されて温度上昇(約200℃以上)して磁気特性が劣化して磁界分布がシフトし、結果として▲2▼の点線に示す経路にシフトして図1の(b)に示すように、ルツボ4内の電子ビームスポット位置がシフトしてしまっていた。これを、カバー31を設けて、▲1▼の電子ビームのような経路のままにしてシフトを無くし、図1の(b)の実線のほぼ中央に電子ビームスポットが常に照射されるようにしたものである。
【0021】
図2は、本発明の斜視図(概略)を示す。これは、図1の構成をもとに、実際に作成したときの概要を示したものである。
図2において、ポールピース熱対策治具カバー31は、既述した図1のカバー31の具体例を示し、ここでは、銅で作成してポールピース3を図示のように覆うように作成し、ルツボ4(あるいはルツボ4内の被照射材料)からの輻射熱を受け取って外部に取り出し、内部の軟磁性材料のポールピース3の温度上昇を抑え、結果として、電子ビーム2の経路を図1の▲1▼の状態に常に保持してルツボ4内のほぼ中央を常に電子ビームスポットが照射した状態に維持するものである。尚、ほぼ中央を常に電子ビームスポットを照射した状態で、スキャンコイル(X,Y)5によって被照射材料面上を均一に平面走査して均一に領域内を加熱するようにしている。
【0022】
ここで、図1の(b)の点線の電子ビームスポットが中心からシフトした状態を、スキャンコイル(X,Y)5にバイアス電流を流して中央に照射するように調整することが考えられるが、当該スキャンコイル(X,Y)5の中心位置で偏向して図1の点線の経路を曲げた経路を通ってルツボ4内の被照射材料の中心を照射するようにすると、
・被照射材料への入射角がほぼ垂直から斜めになってしまい照射条件が変わってしまう(斜め入射により照射条件が変わってしまう)と共に、
・電子ビームスポットサイズが例えば図1の(b)の点線の場合のように大きくなったままで中心位置に移動し照射条件が変わってしまうという問題があり、
実用にならないという欠点があります。つまり、スキャンコイル(X、Y)5で、図1の(b)の点線の電子ビームスポットを、実線の電子ビームスポットには偏向不可(電子ビームスポットの位置、サイズ、電子ビームスポットが被照射材料に入射する角度がほぼ垂直という3つの照射条件を満たさなく不可)ということです(スキャンコイル(X、Y)4にバイアス電流を流す調整では、位置のみ調整可で、他の2つが調整不可です)。
【0023】
図3は、本発明の斜視図を示す。これは、図2の電子銃部を完全に組み上げた後の斜視図の例を示す。ここでは、ポールピース熱対策治具カバー3によってポールピース3が覆われて内部に完全に収納されており、図示外のルツボ4(あるいはルツボ4内の被照射材料)からの輻射熱による加熱を完全に防止し、温度上昇を抑えて磁気特性の劣化を防止し、電子ビームスポットをルツボ4内の被照射材料のほぼ中央を常にほぼ垂直方向から照射するように維持することが可能となる。そして、この電子ビームスポットが被照射材料のほぼ中央をほぼ垂直に照射している状態のもとで、スキャンコイル(X、Y)5によって所定領域内を均一に平面走査し、所定領域内を均一に電子ビーム加熱して溶解し、対向して配置した図示外の基板上に蒸着することが可能となる。
【0024】
尚、本願発明の図3に示す銅製のポールピース熱対策治具カバー31を設け、〔発明が解決しようとする課題〕の欄で記述したと同一の
・被照射材料としてSi02の円板状の材料を入れ、電子ビームの加速電圧8KV,400mA(3.2KW)で90SECの条件で電子ビーム加熱して蒸着した結果、ポールピースの温度が50℃以下
・被照射材料としてZr02の円板状の材料を入れ、電子ビームの加速電圧8KV,900mA(7.2KW)で150SECの条件で電子ビーム加熱して蒸着した結果、ポールピースの温度が55〜60℃に抑えることができ
・図1の(b)の▲1▼の実線の電子ビームスポットに維持することができた。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、電子ビーム1をポールピース3によって持ち上げられた磁界分布で約270度回転させてルツボ4内の被照射材料面をほぼ垂直方向から照射しつつスキャンコイル5で所定領域内を平面走査し、ルツボ4の上面を電子銃側の上面と同じあるいは下方向に位置付けて当該ルツボ4からの熱輻射が到来して加熱されなくかつ蒸発物が電子銃側に到来して蒸着して汚染してチャージして電子ビーム2を不安定にならない状態のもとで、ポールピース3のルツボ4に面する側をカバー31で覆って当該ポールピース3の輻射熱による温度上昇を抑えて磁気特性の劣化を防止しルツボ4内の電子ビームスポットの位置のシフトを無くすことができた。
【0026】
これにより、ルツボ4内の被照射材料が加熱当初から加熱終了まで、更に続いて繰り返しても常に同じ照射条件で被照射材料を平面走査して均一加熱条件を保持でき、結果として、対向して配置した図示外の基板上に均一かつ再現性の高い皮膜の蒸着膜を繰り返し形成することが可能となり、極めて信頼性の高く安定性の良好な電子源装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の説明図である。
【図2】本発明の斜視図(概略)である。
【図3】本発明の斜視図である。
【符号の説明】
1:フィラメント
2:電子ビーム
3:ポールピース
31:カバー(ポールピース熱対策治具カバー)
4:ルツボ
5:スキャンコイル(X、Y)
C:回転中心

Claims (3)

  1. 電子源から放出されて加速された電子ビームを磁界によって180度以上回転させて被照射材料にほぼ垂直方向から照射させるための磁石と、
    前記電子源の上方向に配置して前記磁石からの磁界分布を上方向に持ち上げて電子ビームの回転中心を上方向に持ち上げる、電子ビームの通路を挟んで対向して設けた、前記磁石から磁性材料で接続されたポールピースと、
    前記ポールピースによって上方向に持ち上げられた磁界分布によって回転された電子ビームのスポットが被照射材料のほぼ垂直方向から照射する位置を、所定領域内で走査する走査磁界を発生させる偏向コイルと、
    前記ポールピースの前記被照射材料に面した側を少なくとも覆って当該被照射材料からの輻射熱を取り込んで外部に引き出し、当該輻射熱によるポールピースの温度上昇を低減して当該ポールピースの温度上昇に伴う磁気特性の劣化による前記電子ビームスポットのシフトを防止する熱導性のカバーと
    を備えたことを特徴とする電子源装置。
  2. 前記カバーの材料として銅を用いたことを特徴とする請求項1記載の電子源装置。
  3. 前記輻射熱によるカバーの温度上昇を、液体を循環させて冷却あるいはヒートパイプにより冷却したことを特徴とする請求項1あるいは請求項2記載の電子源装置。
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