本発明は、いわゆるPCS制御,ACC制御といった車両の衝突防止、車両の衝突からの乗員の保護といった車両衝突に対応するための車両制御システムに関する。
近年、自動車等の車両の制御に関して、自車両の前方に存在する前方存在物との衝突に対応するための制御技術の開発が進んでいる。かかる制御として、例えば、前方存在物との衝突を防止するあるいは衝突を回避するといった制御も存在し、また、衝突が発生した場合を想定して乗員の保護の保護を図るといった制御も存在する。前者の代表的なものとして、例えば、いわゆるACC制御(Auto-Cruise-Controlあるいは Adaptive-Cruise-Control)がよく知られている。ACC制御は、概して言えば、先行車両との車間状態が設定された状態で前方車両に追従するように、エンジン装置等の出力の調整等を行うといった制御である。また、後者の代表的なものとして、いわゆるPCS制御(Pre-Clash-Safety)がよく知られている。PCS制御は、概して言えば車両の衝突を予測して、シートベルト等の保護装置を衝突前に作動させるといった制御である。このような衝突対応制御に対しては、より実用的であることが常に望まれている。
衝突対応制御に関する技術として、ACC制御に関して、例えば、下記〔特許文献1〕に記載されているような技術が存在し、PCS制御に関して、例えば、に、下記〔特許文献2〕に記載されているような技術が存在する。それらは、1つの前方存在物を探知し、その1つの前方存在物との衝突の可能性を判断して衝突対応制御を行うものであり、実際の車両の走行環境においては複数の前方存在物が存在するため、信頼性の点において満足できるものとはなっていない。これに対し、下記〔特許文献3〕には、複数の前方存在物を探知して、衝突対応制御を行う技術が記載されている。
特開2001−30792号公報
特開2000−62555号公報
特開平8−339500号公報
ところが、上記〔特許文献3〕に記載の技術は、複数の前方存在物をレーダ装置によって探知するものの、一定の条件(上記技術では、最も近距離に存在することを条件としているように思われる)に従って、1つの制御対象物のみとの衝突の可能性を判断するものとされており、信頼性の点においては充分とはいえず、その点において実用的なシステムとは言い難い。また、上述したように、衝突対応制御は、例えば、ACC制御,PCS制御といった目的の異なる制御が存在し、例えば、目的の異なる複数の制御を並行して実行するようなシステムの場合、その目的に応じて対象が異なることも考えられる。そのような場合に、一定の条件で制御対象物を特定した場合に、やはり実用的なシステムとはならない場合がある。そこで、複数の前方存在物を制御の対象に特定することが考えられるが、例えば、その数が多い場合は、探知装置,制御装置等の負担、つまりシステムの負担が大きくなり、処理速度が遅くなり、その点において実用的なシステムとはならない。反対に、処理速度をハード的に克服しようとすれば、システム自体のコストが大幅に増加するため、コスト面において実用的なシステムとはなり難い。そのような実情に鑑み、本発明は、実用的な衝突対応車両制御システムを得ることを課題としてなされたものである。
本発明の衝突対応車両制御システムは、(a)自車両の前方に存在する複数の前方存在物を探知可能な前方存在物探知装置と、(b)自車両を減速させる車両減速装置,衝突時に乗員を保護する乗員保護装置等の作動装置と、(c)自車両と前方存在物の衝突の可能性に基づく前記作動装置の制御である衝突対応制御を実行する衝突対応制御装置と、(d)制御において対象となる前方存在物である1以上の対象存在物を前記前方存在物探知装置によって探知された前方存在物の中から特定する対象存在物特定部と、(e)その対象存在物特定部における特定のための条件である特定条件を、設定された変更条件に基づいて変更する特定条件変更部とを備え、前記衝突対応制御装置が、前記1以上の対象存在物と自車両との衝突の可能性に基づく衝突対応制御を実行するように構成された衝突対応車両制御システムであって、前記衝突対応制御装置が、前記衝突対応制御としての第1制御と、その第1制御とは目的が異なる衝突対応制御であって設定された実行条件の下で実行される第2制御とを、並行して実行し得るようにされており、かつ、前記特定条件変更部が、前記変更条件としての前記第2制御の実行の有無に基づいて、前記第1制御における前記対象存在物の特定条件を、その第1制御における前記対象存在物の上限数が変更されるように変更することを特徴とする。
本発明の衝突対応車両制御システムによれば、前方存在物探知装置が探知した複数の前方存在物の中から制御対象物を特定する際の特定条件が、制御対象物の上限数が変更されように変更される。詳しく言えば、本発明の衝突対応車両制御システムは、複数種の制御を並行して実行できる実用的なシステムであることに加え、1つの制御が選択的に実行される場合、その制御の有無に基づいて、他の制御における対象存在物の上限数が変更されることから、効率のよい衝突対応制御が可能となる。なお、詳しい説明は、後の〔発明の態様〕において行う。
本発明の衝突対応車両制御システムによれば、例えばPCS制御,ACC制御等の衝突対応制御において制御の対象となる対象物を変更することが可能となり、効率のよい衝突対応制御が実施可能となる。したがって、本発明によれば、実用的な衝突対応車両制御システムが実現する。
発明の態様
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。本願発明を含む概念である。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも上記発明の理解を容易にするためであり、上記発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
なお、以下の各項において、(1)項,(2)項,(4)項および(6)項を合せたものが請求項1に相当し、(8)項が請求項2に、(9)項が請求項3に、(10)項が請求項4に、(11)項が請求項5に、(11)項に関する説明において記載されている態様が請求項6に、それぞれ相当する。
(1)自車両の前方に存在する複数の前方存在物を探知可能な前方存在物探知装置と、
自車両を減速させる車両減速装置,衝突時に乗員を保護する乗員保護装置等の作動装置と、
自車両と前方存在物の衝突の可能性に基づく前記作動装置の制御である衝突対応制御を実行する衝突対応制御装置と
を備える衝突対応車両制御システムであって、
衝突対応車両制御システムが、制御において対象となる前方存在物である1以上の対象存在物を前記前方存在物探知装置によって探知された前方存在物の中から特定する対象存在物特定部と、その対象存在物特定部における特定のための条件である特定条件を変更する特定条件変更部とを備え、前記衝突対応制御装置が、前記1以上の対象存在物と自車両との衝突の可能性に基づく衝突対応制御を実行するものであることを特徴とする衝突対応車両制御システム。
本項に記載の衝突対応車両制御システムは、平たく言えば、前方存在物探知装置(以下、単に「探知装置」と略す場合がある)が探知した複数の前方存在物の中から、制御対象物を特定する際に、特定条件を変更することができるものであり、それにより、例えば、制御対象物を変更することが可能となる。具体的な態様については後に詳しく説明するが、特定条件は、例えば、制御の目的,形態,システムの処理能力等、種々の要因に応じて変更させることが可能であり、特定条件の変更によって、例えば、制御対象物の種類,制御対象物の数等を変更させることが可能となる。効率のよい衝突対応制御が実施できることから、実用的なシステムが実現する。
「前方存在物探知装置」は、具体的な態様が特に限定されるものでなく、例えば、レーザ光を利用したレーダ装置,電波を利用したレーダ装置,カメラとそのカメラによる撮像データを画像処理する画像処理装置とを含んで前方存在物を認識する画像認識装置等、種々のものを用いることができる。探知装置は、静止物であるか移動物(先行車両,対向車両等)であるかを問わず、複数の前方存在物を探知可能であることが望ましい。探知装置は、複数の前方存在物の各々と自車両との距離,その各々の自車両に対する方位,その各々と自車両との相対速度のうちの少なくとも1つを取得するものであることが望ましく、できれば、それらを同時に取得できるものであることが望ましい。その点を考慮すれば、探知装置は、ミリ波レーダ装置、詳しくは、FM−CWレーダ装置であってデジタル・ビーム・フォーミング(DBF)技術による走査が可能なレーダ装置であることが望ましい。ミリ波を検知波とするレーダ装置は、比較的長い波長の電波を検知波とするレーダ装置であり、レーザを利用したレーダ装置等とは異なり、回折現象,路面等による反射等を利用して、例えば直前先行車両に少なくともその一部が隠れた前方存在物であっても、それの距離,方位,相対速度等の情報を取得可能ある。
「作動装置」は、特に限定されるものではなく、例えば、上記例示列挙した自車両を減速させる車両減速装置,衝突時に乗員を保護する乗員保護装置の他、衝突対応制御によって制御可能な各種の車両搭載装置が作動装置となり得る。「車両減速装置」は、例えば、ブレーキ装置(液圧ブレーキ装置等)が代表的なものであるが、エンジンブレーキ,回生ブレーキ等による制動力も期待できることから、広く、エンジン装置,車両駆動モータ装置等の車両駆動力発生装置も車両減速装置に含ませることができ、また、それらの制動力をより効果的なものとするためにギヤチェンジを制限するような場合にあっては、トランスミッション装置も車両減速装置の一部とすることができる。「乗員保護装置」は、例えば、シートベルト装置(プリテンショナ付きのものが望ましい),エアバッグ装置,ステアリングコラムに衝撃吸収機構を備えたステアリング装置,衝撃発生時に退避してその衝撃を吸収するブレーキペダル等のペダル装置等が該当する。またその他の車両搭載装置として、例えば、衝突を回避するための操舵機構を備えたステアリング装置、衝撃を減少させるために車高を変化させることのできるサスペンション装置,運転者に衝突の可能性が高いことを知らせる警報装置,後方の車両に衝突の可能性を報知するブレーキランプ等の後方表示灯装置や通信装置等も、本項に記載の作動装置に該当する。
「衝突対応制御装置」は、コンピュータを主体とし、例えば、ACC制御,PCS制御等の衝突対応制御を行う制御装置とすることが可能である。ACC制御は、設定された車速の範囲内において先行車両への追従を目的とする制御であり、詳しくは、先行車両との衝突を防止すべく、先行車両との車間状態を適正に維持する制御である。PCS制御は、前方存在物への衝突が予測される場合に、衝突に先駆けて乗員保護装置の作動(作動の準備を含む)を開始する、あるいは、衝突を回避するための制動等を行うといった制御である。このように、衝突対応制御には種々のものが存在するが、衝突対応制御装置は、それらのいずれか1以上の制御を実行可能な制御装置であればよい。ただし、効率的な制御と、実用的なシステムという観点からすれば、それらの制御のうちの複数のものを実行可能な装置、具体的には、ACC制御とPCS制御との両者を実行可能な装置とすることが望ましい。
衝突対応制御において対象となる前方存在物である対象存在物は、制御の態様,種類等に応じて異なる。例えば、上述したACC制御は、先行車両への追従制御であるため、対象存在物は、自車両と概ね同じ方向に移動する前方車両である先行車両に限定される。また、上述したPCS制御は、広く衝突の可能性に基づく制御であるため、先行車両に限らず、静止物,対向車両等も対象存在物とされる。したがって、そのような対象特定物が異なる複数の制御を行い得るシステムにおいて、対象存在物の特定条件が変更可能な本項に記載の態様は、特に有効的である。なお、対象存在物への衝突の可能性は、衝突対応制御の種類によってその程度に差があり、一律に取り扱われるものではない。つまり、衝突の可能性は制御の種類によって異なる相対的な概念である。例えば、一般的には、PCS制御の場合は、ACC制御の場合と比較して、より衝突の可能性の高い状態において作動装置の作動が開始するように設定される。
衝突対応制御において、自車両が対象存在物に衝突する可能の高さは、対象存在物との距離,対象存在物に対する到達時間,衝突時間等のパラメータによって判断するのが便利である。ここでいう到達時間とは、現在の自車速のままで前方存在物の存在する位置まで到達するのに必要な時間であり、対象存在物の移動速度に依拠しない時間である。これに対し、衝突時間とは、対象存在物との相対速度が維持された場合に、対象存在物と衝突するのに必要な時間である。対象存在物が先行車両である場合には、上記距離は車間距離と、上記到達時間は車間時間と呼ぶことができる。種々の制御を行い得るシステムの場合、行う制御に応じて、上記パラメータの中から、適切な1以上のものを採用し、その採用したパラメータに基づいて作動装置の制御を行えばよい。
「対象存在物特定部」は、探知装置によって探知された前方存在物の中から特定する機能を有するものであるが、システムにおいて、衝突対応制御装置に設けられていてもよく、また、探知装置に設けられていてもよい。つまり、例えば、探知装置が探知した複数の前方存在物の探知データが、衝突対応制御装置に送られ、衝突対応制御装置内の処理において、対象存在物が特定される場合は、対象存在物特定部は、衝突対応制御装置の一部分となる。また、探知装置が、例えばコンピュータを主体とする制御部を有しており、その制御部において対象存在物を特定する場合、対象物特定部は探知装置に含まれることになる。「特定条件変更部」は、対象存在物を特定するための条件である特定条件を変更する機能を有するものであるが、対象存在物特定部と同様に、衝突対応制御装置に設けられていてもよく、また、探知装置に設けられていてもよい。なお、対象存在物特定部と特定条件変更部とが同じ装置内に設けられる態様に限らず、例えば、対象存在物特定部が探知装置に設けられ、特定条件変更部が衝突対応制御装置に設けられた態様であってもよい。
(2)前記特定条件変更部が、前記特定条件を、特定される対象存在物の上限数が変更されるように変更するものである(1)項に記載の衝突対応車両制御システム。
本項に記載の態様は、平たく言えば、対象存在物の上限数が特定条件に含まれる態様である。特定される存在対象物の上限数が変更されれば、衝突対応制御において、制御効率を向上させることが可能である。例えば、衝突対応制御装置において、衝突の可能性を判断する存在対象物の数を制御の目的に応じて変更すれば、常に多くの数の前方存在物との衝突の可能性を判断しなくてもよいことから、少ない数の前方存在物との衝突の可能性を判断する際に、処理速度が比較的遅く安価なシステムにおいても、迅速な処理が可能となる。また、逆の見方をすれば、一部において、数多くの前方存在物との衝突の判断を行い得ることから、その場合において、信頼性の高いシステムが実現する。このように、目的に応じて対象存在物の特定数を変更できれば、実用性が高いシステムとなる。
(3)前記特定条件変更部が、前記特定条件を、前記対象存在物が多くとも1つ特定される第1条件と、設定された複数の数までの前記対象存在物の特定が許容される第2条件との間で変更するものである(2)項に記載の衝突対応車両制御システム。
本項に記載の態様は、特定可能な対象存在物の数を変更する上記態様におけるさらに限定的な一態様である。対象存在物の特定数を、2つの互いに異なる上限数の間で変更するものであり、簡便なシステムとなる。
(4)前記特定条件変更部が、設定された変更条件に基づいて、前記特定条件を変更するものである(1)項ないし(3)項のいずれかに記載の衝突対応車両制御システム。
制御の目的,形態等に依拠する変更条件に基づいた特定条件の変更を行えば、実用的なシステムが実現する。具体的な変更条件は、特に限定されるものではないが、例えば、自車両の走行状態を変更条件として特定条件を変更することが可能であり、また、カーナビゲーションシステムからの情報に基づいて、例えば衝突事故の多い道路を走行している状態であるか否かを判断し、その判断結果を変更条件として特定条件を変更する等、種々の特定条件の変更態様とすることが可能である。
(5)前記特定条件変更部が、自車両の走行速度が設定された閾速度を超えるか否かを前記変更条件として、それに基づいて前記特定条件を変更するものである(4)項に記載の衝突対応車両制御システム。
本項に記載の態様は、自車両の走行速度に基づいて特定条件の変更を行う態様である。つまり、自車両の走行状態を変更条件とする一態様である。自車両の走行速度の大小は、例えば、自車両の衝突の可能性を左右し、また、ACC制御の実行条件の1つともなり得る。したがって、自車両の走行速度に基づいて特定条件の変更を行う態様のシステムは、実際の制御に則った対象存在物の特定を可能にするシステムとなる。
(6)前記衝突対応制御装置が、前記衝突対応制御としての第1制御と、その第1制御とは目的が異なる衝突対応制御であって設定された実行条件の下で実行される第2制御とを、並行して実行し得るようにされており、前記特定条件変更部が、前記変更条件としての前記第2制御の実行の有無に基づいて、前記第1制御における前記対象存在物の前記特定条件を変更するものである(4)項または(5)項に記載の衝突対応車両制御システム。
本項に記載の態様は、制御の形態に基づいて、対象存在物の特定条件を変更する一態様である。複数種の制御を並行して実行できるシステムは、実用的なシステムとなる。かかるシステムにおいて、ある制御が選択的に実行される場合、その制御の有無に基づいて、他のある制御における対象存在物を変更できれば、効率のよい衝突対応制御が可能となる。
(7)当該システムが、前記対象存在物特定部として、前記第1制御における前記対象存在物と前記第2制御における前記対象存在物との両者を特定する1つのものを備えた(6)項に記載の衝突対応車両制御システム。
制御ごとに対象存在物特定部を設けることも可能であるが、本項に記載の態様のように、複数の制御におけるそれぞれの対象存在物の特定を1つの手段によって行えるようにすれば、簡便なシステムとなる。
(8)前記衝突対応制御装置が、前方存在物への衝突が比較的短時間の間に生じ得ると予測される場合における衝突に先駆けた乗員保護装置の作動,衝突回避のための制動等を行う衝突直前制御を、前記第1制御と前記第2制御との一方として実行し、かつ、先行車両との衝突を防止しつつその先行車両に追従する先行車両追従制御を、前記第1制御と前記第2制御との他方として実行するものである(6)項または(7)項に記載の衝突対応車両制御システム。
本項に記載の態様は、平たく言えば、前述のPCS制御とACC制御とを並行して実行可能な態様である。衝突直前制御がPCS制御に相当し、車両追従制御がACC制御に相当する。これら2つの制御は、互いに目的の異なる制御であり、両者とも実用化されている制御であることから、この2つの制御を同時に行い得るシステムは極めて実用的である。なお、ACC制御を第1制御とし、PCS制御を第2制御とし、PCS制御の有無によってACC制御における対象存在物の特定条件を変更する態様であってもよく、また、逆に、PCS制御を第1制御とし、ACC制御を第2制御とし、ACC制御の有無によってPCS制御における対象存在物の特定条件を変更する態様であってもよい。
(9)前記衝突対応制御装置が、前記衝突直前制御を前記第1制御として実行し、かつ、前記先行車両追従制御を前記第2制御として実行するものである(8)項に記載の衝突対応車両制御システム。
ACC制御は、主に、高速道路等、自車両の速度が比較的早く、かつ、比較的安定した走行環境下での走行において利用される。このことからすれば、ACC制御は、PCS制御に比較して、任意性の高い制御、つまり、実行の有無が運転者の任意に行われる傾向が強い制御である。したがって、本項のように、ACC制御の有無によってPCS制御の対象となる対象存在物の特定条件を変更する態様は、より実用的であるといえる。
(10)前記特定条件変更部が、前記衝突直前制御における前記対象存在物として静止するあるいは移動する前方存在物が特定され、かつ、前記先行車両追従制御における前記対象存在物として自車両に先行して移動する前方存在物のみが特定されることを前提として、前記特定条件を変更するものである(8)項または(9)項に記載の衝突対応制御システム。
先に説明したように、ACC制御は、先行車両に追従することを目的とするための制御であるため、対象存在物は、先行車両とされる。また、PCS制御は、広く衝突に対処することを目的とする制御であるため、対象存在物は、移動物,静止物に拘わらず広く特定される。そのように、制御の目的に応じて対象存在物の特定条件を定めることにより、効率的な制御が実行可能である。
(11)前記特定条件変更部が、前記第2制御が実行される場合において特定される前記対象存在物の合計の上限数と、前記第2制御が実行されない場合において特定される前記第1制御における前記対象存在物の上限数とが、同じ数となることを前提として、前記特定条件を変更するものである(6)項ないし(10)項のいずれかに記載の衝突対応制御システム。
本項に記載の態様は、平たく言えば、第2制御の有無に拘わらず、特定される対象存在物の上限数が一定とされた態様である。例えば、第1制御がPCS制御であり、第2制御がACC制御であって、対象存在物特定部が一定数の対象存在物を特定する場合において、両者の制御がともに実行されるときには、PCS制御の対象存在物(ACC制御の対象存在物となる場合もある)を固定的な数だけ優先的に特定し、その余を、ACC制御においてのみ対象となる対象存在物として特定し、ACC制御が実行されない場合は、上記一定数の対象存在物のすべてをPCS制御の対象存在物として特定するような態様が含まれる。極端に言えば、常に一定の数の対象存在物を特定可能であるにも拘わらず、制御の形態に応じて対象存在物を効率的に特定できることから、コストと信頼性とのバランスが良好な、極めて実用的なシステムが実現される。
以下、本発明の一実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、本発明は、決して下記の実施例に限定されるものではなく、下記実施例の他、前記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
<システムのハード構成>
図1に、本発明の実施例である衝突対応車両制御システムのハード構成についてのブロック図を示す。図1に示すように、本システムは、いくつかの電子制御ユニット(コンピュータを主体とする制御装置であり、以下、「ECU」と略す)を含んで構成されている。本システムの中核をなすECUは、衝突対応制御装置としての衝突対応ECU10であり、この衝突対応ECU10は、後に詳しく説明するが、概して、自車両の前方に存在する前方存在物と自車両との相対位置関係等を把握するとともに、その相対位置関係等に基づいて後述の作動装置を制御することで、衝突対応制御を行う。
衝突対応ECU10は、センサ系LAN12(車両内LAN、他のLANも同様である)を介して、各種センサ装置と繋がっており、それらのセンサ装置を制御するともに、それらのセンサ装置から自車両の周辺情報,自車両の挙動に関する情報を入手する。本システムには、本発明に関係あるセンサ装置として、前方存在物を探知する前方存在物探知装置としてのレーダ装置14(探知デバイスとしてのレーダ16と、探知されたデータの処理等を行うレーダECU18とを含んで構成されている)が設けられている。レーダ装置14は、自身が探知した前方存在物のデータを、衝突対応ECU10に送信し、衝突対応ECU10は、そのデータに基づいて、衝突対応制御を行うのである。レーダ装置14については、後に詳しく説明する。なお、自車両のヨーレートを検出するヨーレートセンサ22も、LAN12に接続されている。
衝突対応ECU10は、制御系LAN30にも接続されており、このLAN30には、各種の作動装置が接続されている。各種作動装置は、それらの多くが電子制御式のものであり、自身が有するECUと衝突対応ECU10とがLAN30を介して接続されているのである。本発明に関係の深い作動装置として、図には、エンジンECU32と電子スロットルアクチュエータ(以下、「アクチュエータ」を「ACT」と略す)34とを備える駆動力発生装置としてのエンジン装置、トランスミッションECU36とトランスミッションACT38とを備えるトランスミッション装置、ブレーキECU42とブレーキACT44とを備えるブレーキ装置、ステアリングECU46とステアリングACT48とを備えるステアリング装置、シートベルトECU50とシートベルトACT52とを備えるシートベルト装置、エアバッグECU54とエアバッグACT56とを備えるエアバッグ装置、警報装置58が示されている。これらの作動装置は、衝突対応ECU10からの制御信号に基づいて作動する。これらの作動装置の動作については、後に詳しく説明する。
なお、本システムには、ACC制御のメインスイッチであってACC制御を実行する際に運転者によって操作されるACCスイッチ62が設けられており、このACCスイッチ62は、エンジンECU32に接続されている。ブレーキ装置は車輪速センサ64を、ステアリング装置は操舵角センサ66を有している。衝突対応ECU10は、上記スイッチ62の状態、センサ64,66によって検出された自車両の走行速度(4輪の車輪速を平均化処理する等して算出する)、操舵角(ステアリングホイールの操作角であってもよく、また、転舵車輪の舵角であってもよい)を自車両のステータス情報として入手する。
<レーダ装置>
レーダ装置14が備えるレーダ16は、ミリ波を探知波とするミリ波レーダであり、連続波(CW)に周波数変調(FM)が施された送信信号を用いるFM−CWレーダ装置である。このレーダ装置14は、自車両に搭載され、前方の車両や道路標識等の前方存在物を検出し、その前方存在物と自車両の相対位置関係および相対速度を同時に取得可能とされている。このレーダ16においては、アダプディブアレーアンテナフィルタが用いられるとともに、デジタル・ビーム・フォーミング(DBF)技術によるアンテナビームの形成および走査が行われ、前方存在物が点情報として検出されるのである。FM−CWレーダ装置の探知原理,DBF技術等は、本件出願人による特許出願(特開2003−130945号,特開平8−220220号)等に詳しく説明されており、既に公知の技術であるため、本明細書においての詳しい説明は省略する。
本レーダ装置14は、設定された探知範囲において前方存在物を探知する。詳しく言えば、自車両の前方の設定された角度範囲(例えば、10゜〜20゜といった範囲)において走査するとともに、最遠方探知距離も設定されており(例えば200mとかいった値)、遠方に存在する前方存在物の探知を行わないようにされている。また、本レーダ装置14は、カーブ路を走行する際には、操舵角センサ66によって検出された操舵角および車輪速センサ64によって検出された車両速度に基づいて(ヨーレイトセンサ22によるヨーレイトに基づいてもよい)、自車両の走行予定線を推定し、その走行予定線に応じて前方存在物の探知範囲を左右方向に変更可能とされている。
レーダ装置14は、極短い時間間隔(例えば、数十msec)をおいて連続的に探知を行う。レーダ装置14が備えるレーダECU18は、CPUを主体とするものであり、レーダ16によって取得された毎回の探知データを処理し、直近の複数回の検出結果を基に、探知対象となる前方存在物である探知対象物(以下、「探知物」と略す場合がある)の特定を行う。言い換えれば、レーダ装置14は、特定の前方存在物を追従して監視する機能を備えているのである。この特定のプロセスは、得られた相対位置関係,相対速度の変化等に基づいて行われ、探知する必要のない前方存在物等が監視対象から外される。このプロセスは、特に限定されるものではないが、例えば、前述の本件出願人の特許出願(特開平8−220220号)等に詳しく説明されているためここでの説明は省略する。この処理により、先行車両,路上に存在する停止車両等の静止物等、目的に応じた前方存在物が、探知物として監視の対象とされるのである。
本レーダ装置14では、探知物に関する情報として、3つのパラメータが取得される。3つのパラメータ(「探知物パラメータ」という場合がある)は、それぞれ、探知物と自車両との距離、探知物の自車両を基準とした方位、探知物と自車両との相対速度である。図2を利用すれば、それらはそれぞれ、距離l、方位θ、相対速度vと表すことができる。図2は、両側2車線の道路において、自車両C0の前方に、前方存在物としての複数台の車両(先行車両,停止車両,対向車両)が存在している状態を示す図であり、この図では、自車両C0から最も近い距離に存在する対向車両C1の距離l,方位θ,相対速度vが示されている。なお、相対速度vは、本明細書では、探知物と自車両C0とが接近する場合を正とし、探知物と自車両C0とが離間する場合を負とする。
図2を用いてさらに説明すれば、本レーダ装置14では、前方存在物である7台の車両C1〜C7の各々が探知物とされる。つまり、レーダ装置14は、複数の前方存在物を探知可能とされている。図2に示すような状態で複数の車両C1〜C7が存在する場合、各車両C1〜C7について、距離l,方位θ,相対速度vの3つの探知物パラメータが取得される(各車両C1〜C7をCnと、それらのパラメータを総称して距離ln,方位θn,相対速度vnと総称する場合がある)。なお、詳しい説明は省略するが、レーダ16は、比較的長い波長の電波を探知波とするため、レーザレーダ等とは異なり、1つの前方存在物の陰に隠れる他の前方存在物をも、回折現象等を利用して探知可能となっている。
本システムにおいては、レーダ装置14から衝突対応ECU10に、探知物パラメータを含む探知物データが送信、つまり出力されるのであるが、探知されたすべての探知物に関するデータが出力されるとは限らない。本レーダ装置14では、衝突対応ECU10の処理能力,レーダECU18による処理の負担等に考慮して、出力される探知物の数が制限されている。詳しく言えば、衝突対応制御において対象とする前方存在物(以下、「対象存在物」と、あるいは略して「対象物」という場合がある)の上限数を一定の数とし、レーダ装置14から出力される探知物データを、その上限数までの探知物のものに絞り込む処理が行われている。この絞込処理は、レーダECU18によって行われる処理であり、探知物の中から対象存在物を特定する処理であることから対象存在物物特定処理と呼ぶことができる。
<衝突対応制御の概要>
本システムは、目的の異なる2つの衝突対応制御を行うようにされている。2つの衝突対応制御のうちの1つは、前方存在物への衝突が比較的短時間の間に生じ得ると予測される場合における衝突に先駆けた乗員保護装置の作動,衝突回避のための制動等を行う衝突直前制御、いわゆるPCS制御であり、もう1つは、先行車両との衝突を防止しつつその先行車両に追従する先行車両追従制御、いわゆるACC制御である。PCS制御は、自車両の走行中において常時行われ、ACC制御は、運転者の任意,自車両の走行状態等に応じて、行われたり行われなかったりする。つまり、衝突対応制御は、常時行われる第1制御と選択的に行われる第2制御とを含み、第2制御が行われている間において両者が並行して行われるようにされており、本システムでは、その第1制御がPCS制御とされ、第2制御がACC制御とされているのである。
PCS制御とACC制御とでは、目的の相違から、制御における対象となる前方存在物が異なる。PCS制御では、走行車両等の移動物であるか停止車両等の静止物であるかを問わず、広く制御における対象とされるのに対し、ACC制御では、先行車両等の自車両に先行して移動する前方存在物に限定される。本システムでは、そのことを前提とした対象存在物の特定が、レーダECU18によって行われる。先に説明したように、対象存在物に関するデータの出力数には、上限が設けられており、また、ACC制御は選択的に実行される制御であることから、本システムでは、ACC制御の実行の有無、つまり、衝突対応制御の形態に基づいて、対象存在物の特定条件を変更している。詳しく言えば、ACC制御を行う場合には、PCS制御の対象物とACC制御の対象物との両者を、ACC制御を行わない場合は、PCS制御の対象物のみが特定されるように、上述したデータ出力の数の制限の中で、特定条件を適切に変更しているのである。
<衝突対応制御および対象存在物特定における具体的処理>
本システムにおいて、衝突対応制御は、主に、衝突対応ECU10によって行われ、対象存在物特定処理は、主に、ECU18によって行われる。それぞれのECU10,18は、ともにコンピュータを主体とするものであり、それぞれが所定のプログラムを実行することにより、衝突対応制御,対象存在物特定処理が行われる。図3に、衝突対応ECU10によって実行される衝突対応制御プログラム(図3(a))およびレーダECU18によって実行されるレーダ探知処理プログラム(図3(b))のフローチャートであって、本発明に関係する部分のみを記載した簡単なフローチャートを示す。
衝突対応制御プログラムは、特定条件変更ルーチンおよび作動装置制御ルーチンを含んで構成され、また、レーダ探知処理プログラムは、対象存在物特定ルーチンを含んで構成されている。作動装置制御ルーチンが実行されて作動装置の制御が行われ、対象存在物特定ルーチンが実行されて対象存在物特定処理が行われる。また、特定条件変更ルーチンが実行されることによって、対象存在物の特定における条件を変更する特定条件変更処理が行われる。上記2つのプログラムは、ともに、自車両の作動開始(イグニッションスイッチのON)直後所定の初期処理が行われた後、作動停止までの間、極短い時間間隔(例えば、数十msec)をおいて繰り返し実行される。以下に、図2のシチュエーションの下での、実際の制御,処理を、それらのルーチンの実行に沿って、詳しく説明する。なお、説明の都合上、特定条件変更処理,対象存在物特定処理,作動装置の制御の順に行うものとする。
i)特定条件変更処理
図4に、特定条件変更処理を実行するための特定条件変更処理ルーチンのフローチャートを示す。特定条件変更処理をこのフローチャートに沿って説明すれば、まず、ステップ11(以下、「S11」と略す。他のステップも同様とする。)において、ACCスイッチ62の状態が判断される。ACCスイッチ62がON状態にあれば、次のS12に移行し、自車両の走行速度である自車速v0が、設定されている閾速度であるACC実行下限速度v0・ACC(例えば、40km/hといった速度である)を上回るか否かが判断される。ACC実行下限速度v0・ACCを上回っている場合であれば、S13において、ACC実行判定フラグFACCが1にセットされる。つまり、ACC実行モードとされるのである。ACCスイッチ62がON状態でない、あるいは、自車速v0が、ACC実行下限速度v0・ACC以下である場合は、ACC実行判定フラグFACCが0にセットされ、ACC非実行モードとされる。
ACCスイッチ62がON状態にあること、および、自車速v0が、ACC実行下限速度v0・ACC以上であることは、ACC制御の実行条件であるとともに、本システムにおいて、対象存在物特定条件を変更するための変更条件とされているのである。上記ACC実行判定フラグFACCおよび自車速v0は、S15において、レーダECU18に送信される。
ii)対象存在物特定処理
図5に、対象存在物特定処理を実行するための対象存在物特定ルーチンのフローチャートを示す。対象存在物特定処理をこのフローチャートに沿って説明すれば、まず、S21において、衝突対応ECU10から送信されて既に受け取っているACC実行判定フラグFACCおよび自車速v0が読み出される。次いで、S22において、探知物とされた前方存在物のデータが取得される。探知物データは、先に説明したように、3つの探知物パラメータ(距離l,方位θ,相対速度v)を含む物とされており、図6(a)にテーブル形式で示すような各探知物Cnごとの探知物パラメータ(ln,θn,vn)が取得される。図2のシチュエーションでは、各車両C1〜C7パラメータが取得される。
次に、S23において、各探知物Cnの各々が先行車両であるか否かが判定される。探知物Cnが先行車両である場合、探知物Cnと自車両C0との速度差は大きくなく、相対速度vnは、比較的小さい。そこで、S23では、相対速度vnの絶対値が自車速v0に対する一定割合以下(例えば、20%以下)である場合に、その探知物Cnを、先行車両と認定する。具体的には、探知物データの1つとして、先行車両判定フラグFCnが設定され、先行車両である場合には、その探知物CnのフラグFCnが、1にセットされる。先行車両でない場合には、フラグFCnは0にセットされる。
続くS24において、ACC実行判定フラグFACCによる判定が行われ、ACC実行モードであるかACC非実行モードであるかが認識される。その認識結果に応じて、対象物特定条件が変更されて、それらのモードの各々に応じた特定処理が行われる。具体的には、FACCが1であり、ACC実行モードであると認識された場合は、S25およびS26のACC実行モード時特定処理が行われ、FACCが0であり、ACC非実行モードであると認識された場合は、S27のACC実行モード時特定処理が行われる。
対象物の特定結果は、図6(b)にテーブル形式で示すような対象物データとして出力される。対象物データには、各対象物Cm(Cmは総称である)ごとの対象物パラメータ(lm,θm,vm)および先行車両判定フラグFCmが含まれており、各対象物Cmは、自車両との距離lmの値が小さい順に順番付けられる。本システムでは、Ca,Cb,・・・というように順番付けられるものとし、各対象物Cmの対象物パラメータ(lm,θm,vm)および先行車両判定フラグFCmも、その添え字を使用するものとする。なお、本システムでは、対象物データの出力数が4を上限としているため、Cmは、多くともCa,Cb,Cc,Cdの4つとなる。特定処理では、探知物Cnから選択して特定され、その選択された探知物Cnの上記パラメータ等が、対象物Cmのパラメータ等として採用されるのである。
ACC実行モード時特定処理では、まず、S25において、移動物,静止物を問わず最も自車両C0との距離lnの近い探知物Cn(ln=MIN)が、対象物Caとされる(この対象物を「最近対象物Ca」と呼ぶ場合がある)。この処理は、PCS制御における対象を1つ確保するための処理である。次に、S26において、先行車両と認定された探知物Cn(FACC=1)の中から、距離lnの小さいものから順に選択され、対象物Cbから順に、その選択された探知物Cnが、上限数まで特定される。なお、最近対象物Caが先行車両である場合には、距離lnが2番目に小さいものから順に選択されて、特定される。この処理は、ACC制御の対象を確保するための処理である。これに対し、ACC非実行モード時特定処理では、S27において、移動物,静止物を問わず自車両C0との距離lnが近い順に選択され、対象物Caから順に、その選択された探知物Cnが、上限数まで特定される。この処理で特定される対象物Cmは、すべてがPCS制御における対象物となる。
図2のシチュエーションで、実際にどのうように対象物Cmが特定されるかを説明する。図2では、C1〜C7までの車両が前方存在物として存在している。自車両C0からの距離lnは、C1が最も小さく、C7に向かって大きくなっている。C1,C3,C5が、センターラインを挟んだ対向車両であり、C4,C6,C7が、自車両C0を先行する先行車両であり、また、C2が、路肩に停車している停止車両である。ACC実行モード時特定処理では、図7(a)に示すように、最近対象物CaとしてC1が特定され、Cb,Cc,Cdとしてそれぞれ、C4,C6,C7が、特定される。一方、ACC非実行モード時特定処理では、図7(b)に示すように、Ca,Cb,Cc,Cdとして、それぞれ、C1,C2,C3,C4が特定される。このように、ACC制御が実行されるか否かで対象存在物Cmは、異なるものとなる。なお、図7における☆印は、PCS制御における対象物を示している。PCS制御の側からすれば、上記特定処理は、対象存在物が多くとも1つ特定される第1条件と、設定された複数の数までの対象存在物の特定が許容される第2条件との間で、特定条件が変更される処理であるといえる。
図2のシチュエーションでは、前方存在物が車両のみとされているが、車両以外の前方存在物であっても、探知物Cn,対象物Cmとなり得る。なお、出力される対象物Cmの全体の上限数をACC制御の有無に拘わらず一定としているが、全体の上限数が変更されるような態様とすることも可能である。なお、探知物Cnの数が少なく、対象物Cmの上限に満たない場合は、例えば、距離lnが無限大の前方存在物が存在するものと仮定し、その満たない数の対象物Cmとして、その仮定した前方存在物を特定するような処理を行えばよい。上記のように特定された対象物Cmの対象物データは、S28において、衝突対応ECU10に送信される。
iii)作動装置の制御
ACC制御,PCS制御自体は、既によく知られた制御であり、以下に説明する作動装置の制御は一例である。本システムにおいても、作動装置の動作は公知の制御に従って行えばよい。図8に、衝突対応制御下で作動装置の制御を実行するための作動装置制御ルーチンのフローチャートを示す。作動装置の制御をこのフローチャートに沿って説明すれば、まず、S31において、レーダECU18から送信されて既に受け取っている対象物Cmの対象物データ、すなわち、対象物パラメータ(lm,θm,vm)および先行車両判定フラグFCmが読み取られる。次いで、S32において、ACC実行判定フラグFACCの値により、現在の制御形態がACC実行モードであるかACC非実行モードであるかが判断される。いずれのモードであるかによって、続く処理が異なる。
ACC実行モードである場合は、S33において、最近対象物Caへの衝突時間TPaが算出される。衝突時間TPは、自車両が前方存在物と衝突するまでの時間であり、前方存在物までの距離lをその前方存在物との相対速度vで除した値(l/v)である。衝突時間TPは、PCS制御下において作動装置の作動を開始させる目安となる時間となる。続くS34において、算出された最近対象物Caの衝突時間TPaが、閾値として設定されているPCS動作開始時間TP0以下であるか否かが判断される(正の値であることが前提)。ACC実行モード時においては、最も近い対象物のみが、PCS制御の対象とされ、1つの対象物との衝突の可能性が高いか否か判断されるのである。
ACC非実行モードである場合は、S35において、すべての対象物Cmについて、それらの各々への衝突時間TPmが算出され、続くS36において、算出された各対象物Cmの衝突時間TPmが、PCS動作開始時間TP0以下であるか否かが判断される。ACC非実行モード時には、ACC実行モード時とは異なり、レーダ装置14から対象物データを出力されたすべての対象物Cmが、PCS制御の対象とされ、それらすべての対象物Cmについて、それらとの衝突の可能性が高いか否か判断される。
S34において最近対象物Caとの衝突の可能性が高い判断された場合、あるいは、S36においていずれかの対象物Cmとの衝突が高いと判断された場合には、S37において、ACC制御下での作動装置の制御を禁止するとともに、PCS制御下での作動装置の制御を許容する処理が行われる。本システムでは、いずれかの一方の制御下で作動装置の動作が行われるようになっており、S37の処理は、それを実現するための処理である。
続く、S38において、PCS制御下で作動装置の制御、すなわち、ブレーキ装置準備制御,シートベルト装置の作動制御等が行われる。ブレーキ装置準備制御は、衝突直前に運転者がブレーキ操作を行うことを予想して、そのブレーキ操作の準備を行う制御である。具体的には、衝突対応ECU10から、ブレーキECU42にPCS制御動作開始の信号が送られ、ブレーキECU42は、ブレーキACT44の一種である液圧ポンプの作動を開始させる。シートベルト装置は、シートベルトACT52として、シートベルトに張力を与える巻取り装置(プリテンショナ)を備えており、このプリテンショナが作動させられる。具体的には、衝突対応ECU10から、シートベルトECU50にプリテンショナの作動指令が発せられる。シートベルトECU50は、その指令を受けてプリテンショナを作動させる。また、後方の車両の追突を防止すべく、作動装置の一種であるブレーキランプが点灯させられる。なお、S34,S36において、PCS動作開始時間TP0より短い時間である別の閾時間に基づく判定をも行うことにより、2段階に衝突可能性を判断するようにしてもよい。そして、衝突の蓋然性がより高いと判定された場合に、エアバッグ装置を起動させる、ステアリング装置による回避動作を行う、ブレーキ装置によって緊急ブレーキをかけるといった動作を行わせることも可能である。
S34において最近対象物Caとの衝突の可能性がそれほど高くないと判断された場合、あるいは、S36においていずれの対象物Cmとの衝突の可能性もそれほど高くないと判断された場合には、S39において、PCS制御下での作動装置の制御を禁止するとともに、ACC制御下での作動装置の制御を許容する処理が行われる。このS39の処理は、前述のS37の処理とは逆の意味を持つ処理である。
続くS40において、ACC制御下での作動装置の制御を行うための条件を具備しているか否かが判断される。この条件の1つは、先に説明したところのACC実行判定フラグFACCが1となっていること、つまり、ACCスイッチ62がON状態であり、自車速v0が設定されているACC実行下限速度v0・ACCよりも大きいことである。この条件に加え、ここでは、ブレーキペダルが操作されていないこと、アクセルペダルが操作されていないことが条件とされる。これらのすべての条件を具備する場合、ACC制御下における作動装置の制御が可能とされる。いずれかの条件を具備していない場合は、本ルーチンは終了する。
ACC制御下における作動装置の制御が可能とされた場合は、S41において、先行車両と認定されている対象物Cmの中から、自車両が追従対象とする追従対象車両が特定される。具体的には、操舵角センサ66によって検出された操舵角および自車速v0に基づいて(ヨーレイトセンサ22によるヨーレイトに基づいてもよい)、自車両の走行予定線を推定し、さらに、その走行予定線に基づきそれを中心とする所定の幅を有する走行予定レーンを推定する。そして、先行車両と認定された対象物Cmの各々の距離lm,方位θmを基に、それら各々が上記走行予定レーン内に存在するか否かが判定され、走行予定レーン内に存在する対象物Cmの中から、最も距離lmの近い対象物Cmが追従対象車両として特定される。図2のシチュエーションにおいては、C4,C6,C7が先行車両と認定されており、C4およびC7が走行予定レーン内に存在すると判定され、自車両C0に近いC4が追従対象車両として特定される。
続いて、S42において、追従対象車両と自車両C0との車間時間TAが算出される。車間時間TAは、自車両C0が、現時点での追従対象車両の存在位置に到達するまでの時間であり、距離lを自車速v0で除した値(l/v0)である。ACC制御では、この車間時間TAによって、追従対象車両への衝突の可能性が判断される。次のS43においては、その判断がなされる。具体的には、算出された車間時間TAが、設定された閾時間TA0(例えば2secといった固定的な値として設定されてもよく、また、1.8sec,2.0sec,2.4secというように変動的な値として設定されてもよい)以下である否かが判定される。
追従対象車両との車間時間TAが閾時間TA0より大きいと判定された場合は、S44において、ACC定速制御下で、作動装置が制御される。具体的には、自車速v0が、定められた範囲(例えば、40〜100km/h)において運転者によって設定された車速を維持するように制御される。詳しく言えば、衝突対応ECU10は、上記設定車速と自車速v0との偏差に基づいて、自車両C0に必要となる加減速度である目標加減速度を算出し、この目標加減速度をエンジンECU32に送る。エンジンECU32は、目標加減速度に応じて電子スロットルACT34を動作させ、エンジン装置の出力を調整するのである。
S43において、追従対象車両との車間時間TAが閾時間TA0以下であると判定された場合は、追従対象車両へ衝突する可能性があると認識され、S45において、ACC減速制御下で、作動装置が制御される。具体的には、車間時間TAと閾時間TA0との偏差および追従車両と自車両C0との相対速度vに基づいて、自車両C0の減速が行われる。詳しく言えば、まず、衝突対応ECU10は、上記偏差および相対速度vに基づいて、自車両C0に必要とされる目標減速度G*を算出する。この算出された目標減速度G*は、エンジンECU32,トランスミッションECU36,ブレーキECU42に送られる。これら各ECU32,36,42は、それぞれ、その目標減速度G*に応じて電子スロットルACT34,トランスミッションACT38,ブレーキACT44を動作させることで、それぞれの作動装置はその目標減速度G*に応じた制動力を自車両C0に与えるのである。さらに詳しく言えば、目標減速度G*がある範囲にある場合はエンジン装置の出力制限のみが行われ、その範囲を超えて目標減速度G*が大きい場合には、さらに、トランスミッション装置のシフトダウンあるいはシフトチェンジの制限がなされ、さらに目標減速度G*が大きい場合には、ブレーキ装置による制動が行われる。このように目標減速度G*に応じて作動装置が段階的に作動させられるのである。
以上が、本システムによる衝突対応制御および対象存在物特定の具体的処理である。本システムでは、ACC制御の実行の有無に基づいて、制御の対象物が変更される。概して言えば、ACC制御実行モードでは、1つの対象物がPCS制御の対象物とされ、ACC制御非実行モードでは、レーダ装置14において特定されたすべての対象物がPCS制御の対象物とされる。したがって、ACC制御が実行されない場合は、PCS制御の対象が拡張され、衝突の直前対応が効果的に行われるのである。例えば、図2のシチュエーションにおいては、ACC制御非実行モード時にC2,C3,C4もPCS制御の対象とされるため、C3が高速で走行しており、C3の衝突時間TPがC1より短くて衝突の可能性が最も高いような場合であっても、C3との衝突に対して有効な衝突直前対応が可能とされるのである。
<本システムの機能構成>
上記衝突対応制御プログラムおよびレーダ探知処理プログラムに従って実行される処理に鑑みれば、本システムの機能構成は、図9のブロック図のように表現できる。この図に従って、本システムの機能構成を説明すれば、以下のようである。衝突対応制御装置として機能する衝突対応ECU10は、上記特定条件変更ルーチンによる処理を実行して対象存在物の特定条件を変更する特定条件変更部80と、上記作動装置制御ルーチンによる処理を実行してブレーキ装置,シートベルト装置等の作動装置82の制御を行う作動装置制御部84とを含んで構成されている。その作動装置制御部84は、主に上記S33ないしS38の処理を実行してPCS制御下で作動装置82の制御を行うPCS制御部86と、主に上記S40ないしS45の処理を実行してACC制御下で作動装置82の制御を行うACC制御部88とを含んで構成されている。また、レーダ装置14が備えるレーダECU18は、上記対象存在物特定ルーチンによる処理を実行し、特定条件変更部80によって変更された特定条件に従って、探知物の中から制御対象となる対象物を特定する対象存在物特定部90を含むものとされている。
本発明の実施形態である衝突対応車両制御システムの全体構成を示すブロック図である。
本システムが実行する衝突対応制御を具体的に説明するためのシチュエーションを示す図であって、2車線の道路において、自車両の前方に、前方存在物としての複数台の車両が存在している状態を示すである。
本発明の実施形態である衝突対応車両制御システムにおいて実行される衝突対応制御プログラムおよびレーダ探知処理プログラムの簡単なフローチャートである。
衝突対応制御プログラムを構成する特定条件変更処理ルーチンを示すフローチャートである。
レーダ探知処理プログラムを構成する対象存在物特定ルーチンを示すフローチャートである。
レーダ装置によって取得される探知物データおよび出力される対象物データを模式的に示すテーブルである。
図2のシチュエーションにおいて特定された対象存在物の対象物データを模式的に示すテーブルである。
衝突対応制御プログラムを構成する作動装置制御ルーチンを示すフローチャートである。
本発明の実施形態である衝突対応車両制御システムの機能構成を表すブロック図である。
符号の説明
10:衝突対応ECU(衝突対応制御装置) 14:レーダ装置(前方存在物探知装置) 16:レーダ 18:レーダECU 62:ACCスイッチ 64:車輪速センサ 80:特定条件変更部 82:作動装置 84:作動装置制御部 86:PCS制御部 88:ACC制御部 90:対象存在物特定部