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JP4100650B2 - 飲食品用保存剤 - Google Patents
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は飲食品用保存剤に関し、更に詳しくは飲食品に添加することにより、安全に飲食品の日持ちを向上させる保存剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
飲食品の保存料、日持ち向上剤としては、食品添加物公定書などにおいて保存料または殺菌料として指定されているもののほか、温和な微生物増殖抑制作用あるいは食品のpHを低下させる作用を有する化合物、例えばグリシン、有機酸、エタノール、あるいはリゾチーム、茶抽出物、その他の天然物が用いられている。近年では、合成添加物の安全性に対する不安から、天然物の使用量が増加する傾向にある。天然物由来の保存料、日持ち向上剤としては、上記以外にも、エゴノキ抽出物、カワラヨモギ抽出物、ヒノキチオール、ペクチン分解物、ホオノキ抽出物、レンギョウ抽出物、甲殻類の殻を原料とするキトサン、あるいは魚類の精巣のプロタミン、カシワ葉抽出物等が知られているが、いずれも風味や価格、力価の点で問題があり、新規天然飲食品用保存料、日持ち向上剤の開発が待ち望まれている。
【0003】
サクラ抽出物とカンバの抽出物に関して以下の報告がある。
食品の保存法(特開昭60−94078号公報)には、サクラ樹脂、又は樹脂のエステル化物を付着させる方法が開示されている。抗菌性成分(特開平9−227396号公報)は、カビなどの繁殖を抑制する作用をもつサクラの葉から得られる抗菌性成分について開示されているが、該サクラの葉は塩処理したサクラの葉ではない。また、加工食品の保存性を高める方法及び保存料(特開平8−280368号公報)には、エゾノウワミズザクラ抽出物やシラカンバ抽出物を多価アルコール処理することで、加工食品の保存性を高める方法が開示されているが、該サクラの葉は塩処理したサクラの葉ではなく、さらに、シラカンバ抽出物とサクラ抽出物の併用については記載されていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、安全、安価、且つ実際に飲食品に添加して力価が高い新規飲食品用保存剤を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明を概説すれば、本発明は、塩処理したサクラ葉をエタノール濃度40〜80%のエタノールで抽出した含水エタノール抽出物とカンバ抽出物とを、固形分の比率が10:90〜90:10の比率となるように組合せた物を含有する飲食品用保存剤に関する。
【0006】
本発明者らは、新規飲食品用保存剤を開発するために鋭意検討した。その結果、塩処理したサクラの抽出物は強い抗菌性があり、更にサクラ抽出物とカンバ抽出物とを組合せることによって抗菌性が高まり、実際に飲食品用保存剤として利用できることを見出し本発明を完成させた。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について具体的に説明する。
まず、塩処理したサクラの抽出物の抗菌性について、オオシマザクラの葉(塩処理していないサクラ葉又は塩処理したサクラ葉)を有機溶剤(塩化メチレン、アセトン、酢酸エチル)、水で抽出した検討例1で説明する。
【0008】
〔検討例1〕
塩処理したサクラ葉としては、50枚を束にしたサクラ葉を、樽に並べ一層毎に塩をふり、樽の上部まで達したら水を注いで葉を浸した後(この時の食塩水の濃度は18〜20%)、重しをして6か月間漬け込み調製したものを用いた。
塩処理したサクラ葉又は塩処理していないサクラ葉を、流水で洗った後、凍結乾燥し、粉砕しサクラ葉の粉末を得た。サクラ葉の粉末20gに50mlの塩化メチレンを加え、室温で24時間抽出した。該抽出液を固液分離した後、上清は濃縮乾固し、塩化メチレン可溶画分1gを得た。不溶画分のうち、70%アセトン水溶液可溶画分を濃縮乾固した後、更に酢酸エチルを加えて抽出し、酢酸エチル可溶画分0.3gを得た。不溶画分について更に水で抽出し、同様にして水可溶画分1.5gを得た。
【0009】
次に得られた各々のサクラ葉抽出物を、液体培地による抗菌試験に供した。検定菌はバチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)PCI219株(以下、B菌と略記する)、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)IFO3972株(以下、E菌と略記する)、ハンゼヌラ・アノマラ(Hansenula anomala)IFO0127株(以下、H菌と略記する)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)IFO6341株(以下、A菌と略記する)の4種類を用いた。ワックスマン液体培地に、各々のサクラ葉抽出物を100ppm、300ppm、1000ppm添加し、前培養した各々の検定菌を103 コロニー形成単位〔colony forming unit(以下、cfuと略記する)〕/mlとなるように植菌し、30℃で72時間培養した。検定菌の生育のない濃度の上限を最小阻止濃度〔minimum inhibitory concentration(以下、MICと略記する)〕とした。サクラ葉抽出物のMICを表1に示す。
【0010】
【表1】
Figure 0004100650
【0011】
表1に示したように、塩処理していないサクラ葉の場合、塩化メチレン、酢酸エチル可溶画分のB菌に対するMICは、両画分共に1000ppmであり、B菌に対して抗菌活性があった。
塩処理したサクラ葉の場合、塩化メチレン、酢酸エチル可溶画分のB菌に対するMICは、各々300ppm、100ppmであり、B菌に対して抗菌活性があった。
すなわち、塩処理したサクラ葉の抽出物は、塩処理していないサクラ葉の抽出物より強い抗菌活性があった。
【0012】
次に、検討例1と同じく塩処理したサクラの抽出物の抗菌性について、オオシマザクラの葉(塩処理していないサクラ葉又は塩処理したサクラ葉)をエタノールで抽出した検討例2で説明する。
【0013】
〔検討例2〕
検討例1と同様の塩処理したサクラ葉又は塩処理していないサクラ葉を各々100g流水で洗った後、裁断し、蒸留水及び濃度の異なるエタノール水溶液(各々25、50、75又は99.5v/v%)1リットルを用いて、60℃で30分間抽出した後、固液分離し、サクラ葉の含水エタノール抽出物を得た。
【0014】
各々のサクラ葉抽出物のB菌に対するMICを検討例1と同様の方法で測定した。なお、サクラ葉抽出液の添加濃度は、固形分として19〜57ppmで行った。サクラ葉の含水エタノール抽出物のMICを表2に示す。
【0015】
【表2】
Figure 0004100650
【0016】
表2に示したように、塩処理していないサクラ葉の蒸留水及び含水エタノール抽出物のB菌に対するMICは、いずれの濃度においても57ppm超であった。
また、塩処理したサクラ葉の含水エタノール抽出物のMICは、99.5v/v%エタノールの場合は57ppm、75v/v%エタノールの場合は28.5ppm、50v/v%エタノールの場合は33.3ppmであり、50v/v%〜99.5v/v%の含水エタノール抽出物に抗菌活性があった。
すなわち、塩処理したサクラ葉の抽出物は塩処理していないサクラ葉の抽出物より強い抗菌活性があった。
【0017】
次に、サクラ抽出物とカンバ抽出物とを組合せた場合の抗菌性について、オオシマザクラの葉(塩処理したサクラ葉)とシラカンバの葉を含水エタノールで抽出した検討例3で説明する。
【0018】
〔検討例3〕
検討例1と同様の塩処理したサクラ葉100gを流水で洗った後、裁断し、60v/v%エタノール水溶液1リットルを用いて、60℃で30分間抽出後、固液分離し、塩処理したサクラ葉の含水エタノール抽出物(抽出物中の固形分含量は0.19%)を得た。
また、カンバ抽出物は、シラカンバの葉の含水エタノール抽出物〔小川香料(株)製:商品名シラカバエキスOG−1、固形分含量5.7%〕を用いた。
【0019】
検討例1と同様の方法で、塩処理したサクラ葉の含水エタノール抽出物とシラカンバの葉の含水エタノール抽出物のB菌に対するMICを測定した。B菌に対するMICは、塩処理したサクラ葉の含水エタノール抽出物の場合、固形分として38ppm、シラカンバの葉の含水エタノール抽出物の場合、固形分として56ppmであった。
次に、塩処理したサクラ葉抽出物とシラカンバ葉抽出物とを組合せて検討例1と同様の方法で、B菌に対するMICを測定した。なお、塩処理したサクラ葉の含水エタノール抽出物の添加濃度は、単独MICを100%として比例配分した濃度、すなわち固形分として38ppm(100%)、28.5ppm(75%)、19ppm(50%)、9.5ppm(25%)で行った。同様に、シラカンバ葉の含水エタノール抽出物の添加濃度は、固形分として56ppm(100%)、42ppm(75%)、28ppm(50%)、14ppm(25%)で行った。塩処理したサクラ葉抽出物とシラカンバ葉抽出物とを組合せた抗菌性を表3に示す。なお、菌の生育した場合は(+)で示し、菌の生育が阻害された場合は(−)で表す。
【0020】
【表3】
Figure 0004100650
【0021】
* :ppm
**:相乗効果を有していた。
【0022】
塩処理をしたサクラ葉抽出物とシラカンバ葉抽出物とを組合せた場合は、すべての組合せで菌の生育が阻害された。すなわち、単独では抗菌性が認められない濃度〔塩処理をしたサクラ葉の抽出物38ppm未満、シラカンバ葉抽出物56ppm未満〕を組合せた場合にも抗菌性があった。
このうち、塩処理をしたサクラ葉抽出物単独のMICの50%濃度(19ppm)とシラカンバ葉抽出物単独のMICの25%濃度(14ppm)とを組合せた試験区は、合計75%濃度(33ppm)で抗菌性があり、相乗効果を有していた。
塩処理をしたサクラ葉抽出物単独のMICの25%濃度(9.5ppm)とシラカンバ葉抽出物単独のMICの50%濃度(28ppm)とを組合せた試験区は、合計75%濃度(37.5ppm)で抗菌性があり、相乗効果を有していた。
塩処理をしたサクラ葉抽出物単独のMICの25%濃度(9.5ppm)とシラカンバ葉抽出物単独のMICの25%濃度(14ppm)とを組合せた試験区は、合計50%濃度(23.5ppm)で抗菌性があり、相乗効果を有していた。このことは、抗菌効果がある天然物としては非常に低い濃度であった。
本発明では、塩処理をしたサクラ葉抽出物の単独MICとシラカンバ葉抽出物の単独MICを、各々100%とし、両抽出物を組合せた場合の濃度比率の合計が100%未満の場合、相乗効果を有すると定義する。
【0023】
飲食品用保存剤は、飲食品の含有成分との作用により飲食品用保存剤の効果が不十分な場合もあり、実際に飲食品に添加して効果を確認することが重要である。したがって、検討例1〜3の結果を基に、サクラ抽出物とカンバ抽出物とを組合せ、実際に飲食品に添加した効果について、塩処理したオオシマザクラの葉抽出物とシラカンバの葉抽出物とを玉子焼きに添加した検討例4で説明する。
【0024】
〔検討例4〕
表4に示す玉子焼きの卵液の配合に、検討例3と同様の方法で得られた塩処理したサクラ葉の含水エタノール抽出物とシラカンバの含水エタノール抽出物とを固形分で各々9.5ppm、14ppmになるように添加した。対照として、塩処理したサクラ葉の抽出物とシラカンバの葉抽出物を添加しない玉子焼きを調製した。
【0025】
【表4】
Figure 0004100650
【0026】
調製した玉子焼きは、サランラップに包み20℃で3日間保存した。1日毎にサンプル中の一般細菌数を測定した。一般細菌数は、玉子焼きサンプルを滅菌した生理食塩水中で磨砕し、希釈した後、標準寒天培地を用いて48時間35℃で培養し、生じたコロニーを計数することにより求めた。一般細菌数の測定結果を表5に示す。
【0027】
【表5】
Figure 0004100650
【0028】
表5に示したように、保存開始時の菌数は、無添区、添加区共に200cfu/g未満であった。保存1日目の菌数は、無添加区ではすでに菌数が腐敗の基準とした10cfu/g以上に増加しているのに対し、添加区では200cfu/g未満であった。添加区の菌数が10 以上になるのは3日目であり顕著な日持ち向上効果があった。
【0029】
本発明でいうサクラは、バラ科サクラ属の樹木である。バラ科サクラ属の種としては、セイヨウミザクラ、ミヤマザクラ、チョウジザクラ、マメザクラ、カンヒザクラ、エドヒガン、ソメイヨシノ、タカネザクラ、オオシマザクラ、オオヤマザクラ、カスミサクラ、ヤマザクラ、サトザクラ、イヌザクラ、ウワミズザクラ、シウリザクラ、エゾノウワミズザクラ、ニワザクラ等があるが、これらの種に限定されない。また、多くの園芸品種も知られているが、園芸品種にも限定されない。樹木の部位は、大別して葉、芽、種子、樹皮、心材等に分類できるが、これらの部位に限定されない。サクラ餅等に使用するために栽培されているオオシマザクラの葉が、入手が容易な点で好適である。
【0030】
本発明でいう塩処理は、塩の種類、塩の濃度、処理方法、処理期間に限定されない。塩の種類は、食品に用いることが可能なものであればよい。処理方法は、塩を散布する方法、塩を散布し塩もみする方法、塩水に浸漬する方法等があるが、いずれの方法を用いてもよい。また、サクラ餅等に使用されている塩蔵サクラ葉〔例えば、サクラ葉50枚を束にしたを樽にならべて、一層毎に塩をふり、樽の上部まで達したら水を注いで葉を浸した(この時の食塩水の濃度は18〜20%)後、重しをして6か月間以上漬け込み、葉の色がべっ甲色から茶色に変色した塩蔵サクラ葉〕を用いてもよい。
なお、検討例では塩処理に用いた塩水には有効成分が含まれていなかったので、該塩水を廃棄し、また洗い流したが、該塩水に有効成分が含まれる場合は、該塩水より有効成分を回収して使用することも可能であり、本発明の範囲内である。
【0031】
本発明でいうサクラ抽出物に用いる抽出溶媒は、有機溶媒が望ましく、水抽出だけでは不十分である。有機溶媒としてはメタノール、エタノール、アセトン、プロピレングリコール、塩化メチレン、酢酸エチル等が例示できる。中でも、食品製造用剤としての安全性、使い易さからエタノールが好適である。
抽出時の溶媒の濃度は高い方が抗菌性物質の抽出には優れており、通常20%以上が望ましい。更に好適には40〜80%が望ましい。
抽出方法は、限定されることがない。原料を必要に応じて裁断後、溶媒を加え、定法通り適宜かくはんして抽出し、圧搾、ろ過などの方法で固液分離すればよい。また、抽出時間については適宜選択できるが、10分間〜24時間程度が望ましい。抽出温度については必要に応じて加温してもよい。
抽出物は、必要に応じて濃縮、脱色、脱臭、乾燥などの処理を施してもよい。
【0032】
本発明でいうカンバは、カバノキ科カバノキ属に属するものであればよい。樹木の部位は、大別して葉、芽、種子、樹皮、心材等に分類できるが、これらの部位に限定されない。
【0033】
本発明でいうカンバ抽出物に用いる抽出溶媒の種類、抽出溶媒の濃度、抽出方法、抽出時間、処理方法等に限定はない。
本発明でいうカンバ抽出物は、サクラ抽出物とカンバ抽出物とを組合せることで得られる効果と同等の効果を有するものを使用することが可能である。
【0034】
本発明で言う飲食品保存剤の形状は、液体、粉体、固体等いずれの形状でも可能である。
【0035】
本発明の飲食品用保存剤は、他の飲食品用保存剤や日持ち向上剤、あるいは調味料などの食品素材を共存させることは可能であり、本発明の本質を何ら損なうものではない。
【0036】
本発明のサクラ抽出物とカンバ抽出物とを組合せた物を含有する飲食品用保存剤において用いるサクラ抽出物は、塩処理したものでも、塩処理していないものでもよい。
本発明のサクラ抽出物とカンバ抽出物とを組合せた物を含有する飲食品用保存剤は、サクラ抽出物とカンバ抽出物の固形分の比率は、1:99〜99:1の比率が好ましく、抗菌作用、日持ち向上の相乗作用をより高めるためには10:90〜90:10の比率を採用することが更に好ましい。
【0037】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
実施例1
オオシマザクラの塩蔵葉を、60v/v%エタノールで抽出してサクラ葉の含水エタノ ール抽出物〔固形分含量0.19%〕を得た。該サクラ葉抽出物とシラカンバの葉の含水エタノール抽出物〔小川香料(株)製:商品名シラカンバエキスOG−1、固形分含量5 .7%〕とを20:1(v:v)の比率で組合せて飲食品保存剤を調製した。次に、表6に示す玉子焼きの卵液の配合に、該飲料保存剤を0.525v/v%になるように添加し、玉子焼きを調製した。対照として、該飲食品保存剤を添加しない玉子焼きを調製した。
【0039】
【表6】
Figure 0004100650
【0040】
玉子焼きはサランラップに包み20℃で3日間保存した。1日毎にサンプル中の一般細菌数を測定した。その結果、添加区は無添加区と比較して、顕著な日持ち向上効果があった。
【0041】
【発明の効果】
本発明により、安全、安価、且つ実際に飲食品に添加して力価が高い塩処理したサクラ抽出物を含有する飲食品保存剤を提供することが可能である。塩処理されたサクラの抽出物を含有する飲食品保存剤は、抗菌活性が強く、また、サクラの抽出物とカンバ抽出物とを組合せることで、少量の添加で高い相乗効果がある。

Claims (1)

  1. 塩処理したサクラ葉をエタノール濃度40〜80%のエタノールで抽出した含水エタノール抽出物とカンバ抽出物とを、固形分の比率が10:90〜90:10の比率となるように組合せた物を含有する飲食品用保存剤。
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