JP4106582B2 - 車両用検知装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両に搭載されるレーダやヨーレートセンサ等よりなる検知装置のドリフト調整に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、4輪自動車においては、運転の容易性や安全性を向上させるために、先行車等の監視機能や先行車への追従走行機能が設けられる場合がある。また、車両走行時の安定性向上(例えば、横スベリ等の防止)のために、場合によっては4輪操舵方式(いわゆる4WS)として、車両の操舵系又は制動システム或いはエンジンシステムを状況に応じて積極的に自動制御する機能(以下、車両運動制御機能という)が設けられる場合もある。このような高度な機能には、先行車等を検知するためのレーダ又はカメラ(前方物体検知手段)や、自車両の横方向の挙動(例えば、ヨーレート)を検知するためのヨーレートセンサなど(横方向挙動検知手段)が必要となる。なお、横方向の挙動を検知するセンサは、自車両の横スベリの状態を把握するために必要になるし、先行車等の情報把握のために例えば自車両の走行している路面の状態(路面の曲率;直線道路か否かなど)を確実に検知するためにも有用なセンサである。
【0003】
ところで、上述したレーダやヨーレートセンサなどは、当然にゼロ点(レーダの場合には、検出エリアの中心軸位置)を適正に調整することが必要であり、ゼロ点が正確でないと前述の高度な制御機能(先行車追従制御等)が良好に実現できない。特に、ヨーレートセンサなどは、時間の経過とともにゼロ点がドリフトする性質を有する(即ち、経時ドリフトがある)ため、できれば短時間の間隔で定期的にドリフト調整を行う必要がある。また、レーダなども、車両の振動等によって検出エリアの中心軸が物理的に適正位置から微妙にずれてしまう恐れがないとはいえず、時々この移動量(ドリフト成分)を把握して必要に応じて調整することが望ましい。
【0004】
なお、車両に搭載されるヨーレートセンサのドリフト調整技術としては、車両の停止中にゼロ点調整を行う方法が、例えば特開昭57−200813号公報に記載されている。これは、車両停止中(実際のヨーレートがゼロの状態)のヨーレートセンサの出力をドリフト成分として記憶し、走行中のヨーレートセンサの出力を修正(前記ドリフト成分を加算又は減算)するものである。
また、例えば特開平5−314397号公報には、操舵角センサを用いて直線走行状態(実際のヨーレートがゼロの状態)を判断するようにし、直線走行状態と判断されたとき(操舵角が略ゼロのとき)に同様にヨーレートセンサのゼロ点調整を行う方法が開示されている。
また、例えば特開平11−23606号公報には、車輪速センサを用いて直線走行状態を判断するようにし、直線走行状態と判断されたとき(左右の車輪速差が略ゼロのとき)に同様にヨーレートセンサのゼロ点調整を行う方法が開示されている。
【0005】
一方、レーダのゼロ点(検出エリアの中心軸位置)の調整方法としては、停止中の車両の前方に軸調整用の基準反射体を設置し、この基準反射体の位置測定結果に基づいて検出エリアの位置調整を行う技術が各種提案されている。
また、レーダの軸調整を走行中に自動的に行う方法としては、例えば特開平11−142520号に開示されたものがある。これは、自車両と先行車が同一線状を直進走行している直線走行状態であるときに採取した先行車のデータ(レーダの検出データ)のみを、有効なデータとして複数抽出し、このデータを統計処理して得られた先行車の平均的中心位置に検出エリアの中心位置が一致するように、内部パラメータを設定変更するものであり、直線走行状態を判断するために操舵角センサ又はヨーレートセンサを使用する態様が例示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上述したレーダやヨーレートセンサなどの従来の調整方法は、以下のような問題点があった。
まず、車両の停止中にヨーレートセンサなどのゼロ点調整を行う方法は、車両が停止した時点では正確にゼロ点調整が可能となるが、車両が長時間停止することがない場合には、ゼロ点調整が長時間不可能になるため、それだけでは実用上不十分である。即ち、車両が高速道を長時間走行する場合などには、ゼロ点調整が長時間実行されず、この間に生じた経時ドリフト等によって車両の横方向の挙動が十分正確に検知できなくなる。
そこで、ヨーレートセンサなどの車両走行中のゼロ点調整が必要となるが、前述したような操舵角センサや車輪速センサを使用する従来の方法では、コスト面から高精度な調整ができないという課題があった。というのは、前記ゼロ点調整のために車両の直進状態をより正確に判断するためには、操舵角センサや車輪速センサとして非常に高価なものが必要になるからである。なお、操舵角センサは、通常パワーステアリングシステムの構成要素として車両に装備されるが、操舵の方向等を比較的粗く把握する程度のものが一般的に使用されており、上述のゼロ点調整に使用するには、特別高精度なものに変更する必要がある。また、車輪速センサは、例えばトラクションコントロールシステムなどを備えた高級車にしか装備されておらず、しかもこのように従来から車両に搭載されていたものでも、上記操舵角センサと同様に、車両の直進状態をより正確に判断できるような高精度なものではなかった。
【0007】
また、車両を停止させて基準反射体によりレーダなどの軸調整を行う方法は、一般に車両の生産工場や修理工場などで出荷時或いは定期点検時などに行うしかないため、まんがいち車両走行中に軸ずれが生じた場合には、例えば次回の定期点検時までずっと軸ずれが長期間修正されないままとなる。
そこで、レーダなどの検知手段についても、好ましくは車両走行中の調整が必要となるが、前述したように操舵角センサやヨーレートセンサによって直線走行状態を判断して、この直線走行状態において得られた先行車のデータに基づいて走行中の軸調整を行う方法では、やはり正確な調整ができない恐れがある。というのは、あまり正確ではない操舵角センサやゼロ点がドリフトしたヨーレートセンサの情報に基づいて、実際には直線走行状態でない状態で採取されたデータが軸調整に使用されてしまう恐れがあるからである。
【0008】
そこで本発明は、レーダなどの前方物体検知手段、ヨーレートセンサなどの横方向挙動検知手段を備えた車両用検知装置であって、他の検知手段(特に高価なセンサ)を必要とすることなく、特定の検知手段(特に、横方向挙動検知手段)のドリフト調整がより正確かつ安価に可能となる車両用検知装置を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明による車両用検知装置は、車両前方にある物体の少なくとも位置情報を検知するための前方物体検知手段と、車両の横方向の挙動情報を検知するための横方向挙動検知手段と、車両の走行速度を検知するための車速検知手段とを有する車両用検知装置であって、
車両の走行中に、各検知手段により検知された情報に基づいて、少なくとも前記横方向挙動検知手段のドリフト調整処理を実行する走行中調整手段を備えるものである。
ここで、「ドリフト調整処理」とは、検知手段の出力の適正値からのずれ(ドリフト成分)が修正されるように、例えば出力データに加算又は減算される補正値などを設定又は更新設定する処理である。
また本発明は、横方向挙動検知手段として車両のヨーレートを検知するヨーレートセンサが使用された場合に、特に効果が高い。ヨーレートセンサは、一般に、時間の経過とともにゼロ点がドリフトする性質を有するからである。
【0010】
この発明の好ましい態様は、前記横方向挙動検知手段が、前記挙動情報として車両のヨーレートを検知するためのヨーレートセンサであり、車両の停止中に、前記ヨーレートセンサのドリフト調整処理を実行する停止中調整手段を備えるものである。
また、この発明の好ましい別の態様は、前記走行中調整手段が、車両が停止状態から走行を開始した時点からの経時時間が規定時間内である場合には、前記検知手段のうち経時ドリフトのない検知手段(一般的には、前記前方物体検知手段、例えばレーダ)のドリフト調整処理を実行し、前記経時時間が規定時間を越えている場合には、前記検知手段のうち経時ドリフトのある検知手段(一般的には、前記横方向挙動検知手段、例えばヨーレートセンサ)のドリフト調整処理を実行するものである。
【0011】
また、前記ドリフト調整処理の具体例としては、前記前方物体検知手段により検知される物体までの距離(Y)、前記物体の横方向の相対速度(Vx)、及び前記物体の前後方向の相対速度(Vy)と、前記車速検知手段により検知される車速(V)と、前記横方向挙動検知手段により検知される車両の横方向の挙動情報(例えば、ヨーレートYaw)とから、各検知手段のドリフト成分の合成値に相当する移動量(例えば、後述するずれ角度θ、或いはθ・V/Yの値)を求め、求めた移動量の値だけ前記前方物体検知手段又は横方向挙動検知手段の情報の値を修正するように設定するものがある。
或いは、前記前方物体検知手段及び車速検知手段により検知された情報に基づいて、車両前方に停止物体の存在が認識された場合に、前記前方物体検知手段により検知される前記停止物体までの距離(Y)、及び前記停止物の横方向の相対速度(Vx)と、前記車速検知手段により検知される車速(V)と、前記横方向挙動検知手段により検知される車両の横方向の挙動情報(例えば、ヨーレートYaw)とから、各検知手段のドリフト成分の合成値に相当する移動量(例えば、後述するずれ角度θ、或いはθ・V/Yの値)を求め、求めた移動量の値だけ前記前方物体検知手段又は横方向挙動検知手段の情報の値を修正するように設定するものでもよい。
なお、上記移動量の値は、複数求めて平均化する態様が好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態の一例を図面に基づいて説明する。
図1は、本例の装置構成等を説明する図であって、図1(a)はレーダ等よりなる装置構成を示すブロック図、図1(b)はレーダの検出エリア等を示す図、図1(c)はドリフト成分を求めるための各データの関係を説明する図である。図1(a)において符号1で示すものが、レーダ(この場合、具体的にはレーザレーダ)である。また、符号21で示すものが、ヨーレートセンサであり、符号31が車速センサ(車速検知手段)を示している。
なお、これら検知手段(レーダ1、ヨーレートセンサ21、車速センサ31)により得られる情報の車両における利用形態は、特に限定されずどのようなものでもよい。何れにしろ、前述した先行車監視機能や先行車追従制御、或いは車両運動制御機能などの高度な機能の実現に有効利用できる。
また、各検知手段は、別ユニットとして構成されていてもよいが、各検知手段のうちの二つ以上が同一のユニット品として構成されていてもよい。また例えば、レーザレーダ1とヨーレートセンサ21が一つのユニット(例えばオプション部品或いは市販品)として製作され、ユーザの要望等によって車両に後付けされる(即ち、生産工場から出荷された後に取り付けられる)構成でもよい。なお、一般的にどんな車両にも標準装備される車速センサ31の出力系統は、容易に取り出して接続することができるため、このようなユニット品をユーザ自身が車両に装着して、図1(a)の構成を構築することも実現不可能ではない。
【0013】
レーダ1は、走査部11、LD(レーザダイオード)12、駆動回路13、走査位置検出部14、PD(フォトダイオード)15、信号処理部16、制御回路17(本発明の走行中調整手段及び停止中調整手段に相当)を有する。なお、例えば上述したLD12と走査部11とPD15を含む部分がレーダ1の検出ヘッドを構成している。
ここで走査装置11は、LD12により出力されたレーザ光を、揺動駆動される反射ミラー等により左右方向の所定角度に走査して、車両前方の所定のスキャンエリアに照射するもので、制御回路17により制御されて所定のタイミング及び周期で作動する。
駆動回路13は、制御回路17により制御されて、制御回路17で作られた発光タイミング毎にLD12を作動させてレーザ光を出力させる回路である。なお、ここでの発光タイミングは、走査の分解能に応じて予め設定されており、その頻度が高ければ一般に走査の分解能が高まる。
走査位置検出装置14は、走査装置11のスキャン方向を検出してその信号(スキャン方向信号)を制御回路17に入力する要素である。
PD15は、前記発行タイミングに対応するサンプリング周期で、照射されたレーザ光が検出対象に反射して戻ってきた反射光を受光し、その受光量に応じた電気信号(以下、受光量信号という。)を出力するもので、このPD15から出力された受光量信号は信号処理部16を介して制御回路17に入力されるよう構成されている。
【0014】
制御回路17は、例えばCPU,ROM,RAM等よりなるマイクロコンピュータ(以下、マイコンという。)により構成され、装置の通常運転時には、基本的に以下のような制御処理により測距動作を行う。
すなわち、走査装置11及び駆動回路13を上述したように制御するとともに、発光から受光までの伝搬遅延時間Tから検出対象までの距離(測定距離)を演算し、その際のスキャン方向から検出対象の方向を判定し、さらに受光した光の強度(前記受光量信号の大きさ)により受光量を判定するとともに、これらデータ(距離、方向、受光量)から、後述する如く検出対象物の判別や移動状態などを判定し、検出対象物の種別情報,位置情報,大きさの情報などを含む検出データを出力するものである。
【0015】
なお、図2(b)に例示するように、レーザ光を実際に照射する角度領域(スキャンエリア)は、反射波を受信して上述の距離データなどの測定を行う角度領域(検出エリア)よりも大きく設定してあり、この検出エリアのスキャンエリア内(実際には余裕をみて検出許容エリア内)におけるデータ処理上の設定位置(ソフト的なパラメータ)を変更することにより、装置の光学ヘッドの取付位置を物理的に変更することなく、検出エリアの左右方向のある程度の位置調整(即ち、軸調整)が可能となっている。
なお、走査を実現する走査部11の動作範囲(例えば、スキャン用モータの動作範囲)の制御処理上の設定値を(ソフト的なパラメータ)変更することによって、上記スキャンエリアや検出エリアの全体を走査方向にある程度位置調整する構成とすることもできる。
また、このようなパラメータ変更による調整を、以下ではソフト的光軸調整といい、このソフト的光軸調整によって、検出エリアの中心位置の左右方向(走査方向)の位置調整が可能となる範囲を、以下ではソフト的光軸調整可能範囲という。
【0016】
次に、上記レーダ1の動作について説明する。まず、レーザレーダとしての通常運転時の動作(測距動作)について説明する。
LD12は、制御回路17で作られた発光タイミング毎に、駆動回路13により制御されて作動しレーザ光を出力する。そして、このLD12からのレーザ光は、走査装置11により走査され、図1(b)に例示するように検出エリアよりも広いスキャンエリアに照射される。
照射されたレーザ光が検出対象に反射して戻ってくると、この反射光がPD15により受光され、その受光量信号が信号処理部16を介して制御回路17に入力される。制御回路17では、前記受光量信号及び走査位置検出装置14から入力されるスキャン方向信号から、前述のデータ(距離、方向、受光量)をまず生成する。
なお、このデータ(距離、方向、受光量)は、図1(b)に例示するような検出エリア内において発光及び受光が行われる度に生成され、結局、レーダ1の検出処理は検出エリア内にある被検出物についてのみ行われる。
【0017】
そして、制御回路17では、上記データ(距離、方向、受光量)や車速センサ31より入力される自車両の速度データVに基づいて以下の処理が所定の周期(この場合、レーザ光が走査される周期)で実行される。
すなわち、まず、対象物までの距離と方向データ(極座標データ)を、X,Y座標(デカルト座標データ)に変換し、受光量のデータとともに各領域ごとに図示省略したメモリに格納する。なおここで、各領域とは、検出エリア内を例えば等分割して区画することにより予め設定された領域である。
【0018】
次に、デカルト座標系に変換され各領域毎に登録された前記メモリ内の距離データをもとに、データのグループ化を行い対象物を抽出するとともに、グループ化された対象物のレーザ発光部からのX方向(例えば左右方向),Y方向(例えば前後方向)の距離とその幅寸法を算出する。
ここで、グループ化とは、各領域の個々のデータの中で隣接する距離が接近しているものを集め一つの対象物とする処理である。具体的には、例えば個々のデータに対して前後方向及び左右方向にそれぞれ一定幅のウインドウ(デカルト座標系上の領域)を設け、このウインドウに含まれる他のデータを相互に同一グループとする。なお、こうしてグループ化したデータ(以下、グループデータ)は、以降の処理では一つの対象物についてのものとして、ひとまとめに取扱う。
【0019】
次に、前回スキャン時に検出した対象物と、今回スキャン時に検出した対象物を対応付けて、さらにその検出対象物の相対速度の算出を行う。
すなわち、前回のグループデータの位置とその相対速度から、今回のスキャン時にそのグループデータが現れると推定される位置を中心にして一定のウインドウを設定する。そして、今回のグループデータがこのウインドウ内にはいっているか否かを判別し、この範囲内にはいっていれば、その前回のグループデータと今回のグループデータを同一対象物についてのものであるとして対応付け、それらの移動距離から相対速度Vx(左右方向)及びVy(前後方向)を算出する。
次に、対象物の相対速度に基づいて対象物の停止物判別を行う。
すなわち、その対象物の相対速度Vyを自車両の速度V(車速センサ31により検知された速度)と比較することにより、その対象物が停止しているか移動しているかの判別を行う。即ち、例えば自車速度Vと相対速度Vyがほぼ等しい場合、停止物と判断する。
【0020】
次いで、上記判別結果に基づいて、例えば前方障害物の監視システムや追従走行制御システムの対象となる先行車等を特定する。そして、この特定された先行車等に関する情報(位置データや相対速度データ等)は、前方障害物の監視システムや追従走行制御システムの制御手段に逐次送信され、それらシステムの運転制御に使用される。
【0021】
次に、上記制御回路17が実行するドリフト調整処理について説明する。
まず、停止中のドリフト調整について説明する。制御回路17は、例えば本検知装置の起動中においては、図2(a)に示す処理を繰り返し実行する。即ち、例えば車速センサ31の出力値に基づいて車両が停止中であるか否かを判定し(ステップS1)、停止中であれば、ヨーレートセンサ21のゼロ点調整を行う(ステップS2)。このゼロ点調整は、例えば以下のように行う。即ち、車両停止中(実際のヨーレートがゼロの状態)のヨーレートセンサ21の出力をドリフト成分として更新記憶し、その後のヨーレートセンサの出力をこのドリフト成分を補正値として修正する(前記ドリフト成分を加算又は減算する)ように設定するものである。これにより、少なくとも車両が停止して上記ドリフト調整が実行された直後の状態では、ヨーレートセンサの出力(修正後)はドリフト成分のない極めて正確なものとなる。
【0022】
次に、走行中のドリフト調整について説明する。制御回路17は、車両が走行状態にあり、かつレーダ1が稼働中であるときには、図2(b)に示す処理を繰り返し実行する。
即ち、まずステップS11において、前述のレーダ1の測距動作によって停止物が観測されたか否か判定し、観測されていればステップS12に進み、観測されていなければこのステップS11を繰り返す。
次いでステップS12では、観測された停止物の幅(左右方向の大きさ)が既定値(例えば、40cm)以下か否か判定し、既定値以下であればステップS13に進み、既定値を越えていればステップS11に戻る。幅の大きな停止物は、部分的に検出されて見かけ上の重心が変動することによって、横方向の相対速度Vxの検出データの誤差が大きくなる恐れがあるため、このような大きな停止物の検出データを採用しないようにするためである。なお、本レーザレーダで検知可能な距離は100m程度であり、100m前方において40cm程度であると、本レーザレーダの分解能ぎりぎりの大きさであり、精度が最も高められる。またこのような、大きさの停止物としては、路側帯にあるリフレクタ(反射体)などが該当する。
次にステップS13では、車速Vが既定値(例えば、60km/hr)以上か否か判定し、既定値以上であればステップS14に進み、既定値未満であればステップS11に戻る。車速Vが小さいと、後述のステップS16で算出するずれ角度θ(移動量)の値の誤差が大きくなるからである。
【0023】
そしてステップS14では、本検知装置のドリフト成分(各検知手段のドリフト成分の合成値である移動量)に相当するデータとして、ずれ角度θ(θ=α−β)を、後述の式(4)によって求めて記憶する。
即ち、停止物の相対速度Vx(左右方向),Vy(前後方向)、停止物までの距離Y、及び自車の走行経路の曲率半径Rの関係は、図1(c)に示すようになり、図1(c)における角度αとβは、各検知手段の測定誤差(即ち、主にドリフト成分)がなければ、当然等しくなる。このため、角度αとβの差であるずれ角度θは、各検知手段のドリフト成分の合成値に相当する。そして、自車のヨーレートをYawとすると、次式(1)が成り立つ。
Yaw=V÷R …(1)
また通常、RはYに対して、VyはVxに対して十分大きいため、次の近似式(2),(3)が成立する。
α≒Y÷R …(2)
β≒Vx÷Vy …(3)
また、停止物であるためVy=Vである。これらのことから、ずれ角度θは、下記式(4)によって算出可能である。
θ=(Y・Yaw−Vx)÷V …(4)
なお、上記式(2),(3)のような近似式を使用しないで、三角関数を用いて正確に計算する態様としてもよい。
【0024】
なお、式(4)に代入する距離Y及び相対速度Vxの値としては、ステップS11で観測されたと判断された停止物に対するレーダ1の検出データから得られた値を使用する。また、ヨーレートYawとしては、当該停止物の観測時にヨーレートセンサ21の出力から読み取られた値を使用する。また、自車速度Vとしては、当該停止物の観測時に車速センサ31の出力から読み取られた値を使用する。
また、このようにして求めたずれ角度θは、各検知手段(レーダ1、ヨーレートセンサ21、車速センサ31)の全てにドリフト成分を含めた測定誤差がなければ、常に略ゼロとなるはずである。また、各検知手段のうち車速センサ31は、タイヤの回転数を用いるため、他の検知手段に比べて測定誤差が極めて僅かであり無視できる。また、レーダ1の光軸ずれは、車両に大きな加速度が加わる等の特別なことがない限りめったに生じない(即ち、レーダ1は経時ドリフトがない)。したがって、ずれ角度θの値は、レーダ1のドリフト成分(光軸移動量)と、ヨーレートセンサ21のドリフト成分に相当するもので、さらにいえば、ほとんどの場合、主にヨーレートセンサ21の経時ドリフト成分によるものである。
【0025】
次にステップS15では、ステップS14の演算によって新たに求められたずれ角度θの値が規定個数(例えば、100個)に到達したか否か判定し、到達すればステップS16に進み、未到達であればステップS11に戻る。
そしてステップS16では、新たに求められた規定個数のずれ角度θの値の平均値を求める。
次いでステップS17では、車両が停止状態から発進してからの経過時間が規定時間内(例えば、10分内)か否か判定し、規定時間内であればステップS18に進み、規定時間内でなければステップS19に進む。
そして、ステップS18では、ステップS16で平均化されたずれ角度θの値に基づいてレーダ1の光軸調整(ドリフト調整処理)を行う。具体的には、前述したソフト的光軸調整によって、検出エリアの中心位置の左右方向(走査方向)の位置をずれ角度θだけ変更する。なお、ずれ角度θがソフト的光軸調整可能範囲外である場合には、レーダ1の光学ヘッドの取付角度を機械的に変更する構成としてもよい。即ち、レーダ1の光学ヘッドを駆動する駆動機構を設けておき、この駆動機構を制御することで機械的に光軸調整するようにしてもよい。
【0026】
一方、ステップS19では、ステップS16で平均化されたずれ角度θの値に基づいてヨーレートセンサ21の補正(ドリフト調整処理)を行う。具体的には、ずれ角度θの値をヨーレートの値に換算し、これにより得られた値ΔYawを、その後使用するヨーレートセンサ21の補正値として更新設定する。例えば、停止物までの距離Yと車速Vの規定個数分の値(前述のずれ角度θの規定個数分の値にそれぞれ対応するもの)から、V/Yの平均値を求め、さらにこれをずれ角度θの平均値に乗算することによって、ヨーレートの値に換算した移動量の値ΔYaw(=θ・V/Y)を求める。そしてその後は、ヨーレートセンサ21の出力をこのΔYawの値を補正値として修正する(このΔYawの値を加算又は減算する)ように設定するものである。これにより、レーダ1の光軸が正確な状態でこのドリフト調整が実行された直後の状態では、ヨーレートセンサの出力(修正後)はドリフト成分の影響のない極めて正確なものとなる。
なお、ステップS18又はS19を経るとステップS11に戻る。
【0027】
以上説明したドリフト調整の処理によれば、まず図2(a)の停止中のドリフト調整によって、少なくとも車両が停止してこのドリフト調整が実行された直後の状態では、ヨーレートセンサの出力(修正後)はドリフト成分の影響のない極めて正確なものとなる。このため、前述の規定時間(ステップS17参照)が十分短く設定されていれば、ステップS18において実行されるレーダ1の光軸調整は、ヨーレートセンサの経時ドリフトの影響を受けずに極めて正確なものとなる。これにより、まんがいち走行中のショックなどでレーダ1の光軸ずれが発生しても、図2(b)における処理の進行がステップS18に進む条件が成立した時点で、他の高価なセンサを使用することなく、適宜正確にこの光軸ずれが修正される。なお、発明者らの実験によれば、従来100m前方で1m程度の光軸ずれが定常的にあったものが、このような処理によって40cm程度に格段に低減できることが分かっている。
また、走行開始後の経過時間が規定時間に到達した以降は、新たなずれ角度θの値が規定個数算出される度に、ステップS19によるヨーレートセンサ21のドリフト調整が実行されて、ヨーレートセンサ21の経時ドリフトが周期的に修正されるので、結局ヨーレートセンサ21による情報は、他の高価なセンサを使用することなく、停止中でも走行中でもほとんどの場合、正確に調整された状態に維持される。何故なら、レーダ1の光軸ずれはめったに発生しないので、仮にステップS18の機能がなくても、ステップS19の調整動作は高い確率で正確なものとなるからである。しかも本例の場合、まんがいちステップS19を実行する時点においてレーダ1の光軸ずれが発生していて、この光軸ずれの影響でステップS19の調整が一時的に不正確なものとなっても、その後車両が停止して再発進すれば、前述のステップS2及びステップS18が実行されてヨーレートセンサ21もレーダ1も新たに正確に調整される。即ち、ヨーレートセンサ21又はレーダ1の何れかの情報が不正確な状態は、必ず長続きしない構成となっており、むしろほとんどの場合、両者ともに常に正確に調整された状態となる。
【0028】
なお、本発明は上記態様例に限られず、各種の態様や変形が有り得る。
例えば、レーダ1の出荷時の軸調整が正確になされ、その後軸ずれが必ず発生しないように強固に車体に取り付けられる構成である場合などには、ステップS18(或いは、さらにステップS17)を削除してもよいし、さらに停止中のドリフト調整(ステップS1,S2)を行わない構成でもよい。
また、上述した図2(b)の処理では、規定時間内に規定個数のθのデータが採取できない場合には、ステップS18が実行されない内容となっているが、このようなことが確実に起きないように、例えば発車後最初に必ずレーダの調整を行うような処理内容としてもよい。
【0029】
また、上記実施の態様では、本発明の移動量(ずれ角度θなど)を求めるための対象を停止物に限定しているが、これに限られない。停止物でない場合には、VyとVが等しくないため、前述した式(4)に相当する式が若干複雑になるが、同様の処理で調整が可能である。
また、ヨーレートセンサの走行時の調整については、図2(b)の処理によらないで別途行う構成(図2(b)においては、ステップS19が削除された構成)もあり得る。例えば、レーダ1の観測結果によって自車両が直線走行状態であると判定されたときに、ステップS2と同様の調整(ゼロ点補正)をヨーレートセンサについて行う処理ルーチンを別途実行するようにしてもよい。
【0030】
また、本発明の前方物体検知手段は、レーザ光を用いたレーダのみならず、例えば電波や音波を用いたレーダでもよい。また、レーダに限定されず、例えばテレビカメラ等によって前方物体の位置等を検知するものでもよい。
また、本発明の横方向挙動検知手段も、車両のなんらかの横方向挙動情報(操舵角情報含む)が得られるセンサであれば、ヨーレートセンサに限定されない。また、前記形態例では、レーダ(前方物体検知手段)の軸調整を自動で行っているが、例えば図2(a)のステップS18において自動で軸調整する処理を実行する代わりに、ずれ角度θの値を許容値と比較し、許容値を越えている場合には軸ずれエラー表示等を行って、運転者等に軸ずれの発生を単に報知するだけでもよい。この場合運転者等は、この報知によって軸ずれの発生を知り、自分で調整したり、修理工場に車両を持っていって調整することで、レーダの情報が不正確な状態を改善できる。
【0031】
【発明の効果】
本発明の車両用検知装置は、車両の走行中に、各検知手段(前方物体検知手段、横方向挙動検知手段と、車速検知手段)により検知された情報に基づいて、少なくとも横方向挙動検知手段のドリフト調整処理を実行する走行中調整手段を備える。
即ち、前方物体検知手段を含む検知手段による情報によって、少なくとも横方向挙動検知手段のドリフト調整処理を、車両の走行中に実行する。前方物体検知手段を含む各検知手段による車両の走行中の情報によれば、前述した実施の形態のように主に横方向挙動検知手段のドリフト成分に相当する値が正確に求められる。このため、他の高価なセンサを使用することなく、走行中に特に横方向挙動検知手段のドリフト調整が正確に実現でき、特に横方向挙動検知手段の情報をより正確に維持できる。
【0032】
また、前記横方向挙動検知手段が、車両のヨーレートを検知するためのヨーレートセンサであり、車両の停止中に、このヨーレートセンサのドリフト調整処理(例えば、前述のステップS2の処理)を実行する停止中調整手段を備える場合には、前方物体検知手段の情報の不正確さの影響を受けないで、車両が停止する度に確実にヨーレートセンサのゼロ点を正確に調整できる。ちなみに、このような停止中の調整を行わない構成であると、まんがいち前方物体検知手段の情報が不正確になった場合(例えば、レーダの軸ずれが発生したとき)には、上述した横方向挙動検知手段(この場合、ヨーレートセンサ)の走行中の調整が不正確になり、横方向挙動検知手段の情報が長期間不正確なままとなる恐れがあるが、ヨーレートセンサを停止中にも調整する構成とすれば、このような不具合を回避できる。既述したように、車両停止中のヨーレートセンサの調整は、他のセンサ(特に前方物体検知手段)の情報を利用することなく、容易かつ正確に行えるからである。
【0033】
また、前記走行中調整手段が、車両が停止状態から走行を開始した時点からの経時時間が規定時間内である場合に、前記検知手段のうち経時ドリフトのない検知手段(一般的には、前方物体検知手段、例えばレーダ)のドリフト調整処理を実行し、経時時間が規定時間を越えている場合に、前記検知手段のうち経時ドリフトのある検知手段(一般的には、横方向挙動検知手段、例えばヨーレートセンサ)のドリフト調整処理を実行するものである場合には、以下のような利点がある。
即ち、経時ドリフトのある検知手段の情報が経時ドリフトによって不正確になる前に、この経時ドリフトのある検知手段を含む各検知手段の情報に基づいて経時ドリフトのない検知手段の情報がより正確に調整され、その後、正確に調整された経時ドリフトのない検知手段を含む各検知手段の情報に基づいて経時ドリフトのある検知手段の情報がより効果的に調整される。このため、何れの検知手段についても全体として常により正確な状態に維持されるようになる。
特に、経時ドリフトのある検知手段であるヨーレートセンサが、前述したように停止中にも調整される態様の場合には、走行開始直後のヨーレートセンサの情報は極めて正確であるため、経時ドリフトのない検知手段である例えばレーダの情報は、ヨーレートセンサのこの正確な情報に基づく前記規定時間内の調整により走行開始初期において極めて正確なものに調整される。またその後、経時ドリフトによって不正確になる恐れのあるヨーレートセンサの情報は、こうして極めて正確に調整された例えばレーダを含む各検知手段の情報に基づいて適宜正確に調整され、常に極めて正確な状態に維持されるようになり、結局、何れのセンサの情報も常に極めて正確なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】レーダやヨーレートセンサを含む車両用検知装置を説明する図である。
【図2】車両用検知装置のドリフト調整処理を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
1 レーザレーダ(前方物体検知装置)
17 制御回路(走行中調整手段、停止中調整手段)
21 ヨーレートセンサ(横方向挙動検知手段)
31 車速センサ(車速検知手段)
Claims (6)
- 車両前方にある物体の少なくとも位置情報を検知するための前方物体検知手段と、車両の横方向の挙動情報を検知するための横方向挙動検知手段と、車両の走行速度を検知するための車速検知手段とを有する車両用検知装置であって、
車両の走行中に、各検知手段により検知された情報に基づいて、少なくとも前記横方向挙動検知手段のドリフト調整処理を実行する走行中調整手段を備え、
前記走行中調整手段は、
前記前方物体検知手段により検知される物体までの距離、前記物体の横方向の相対速度、及び前記物体の前後方向の相対速度と、前記車速検知手段により検知される車速と、前記横方向挙動検知手段により検知される車両の横方向の挙動情報とから、各検知手段のドリフト成分の合成値に相当する移動量を求め、求めた移動量の値だけ前記前方物体検知手段又は横方向挙動検知手段の情報の値を修正するように設定することによって、前記ドリフト調整処理を実現することを特徴とする車両用検知装置。 - 車両前方にある物体の少なくとも位置情報を検知するための前方物体検知手段と、車両の横方向の挙動情報を検知するための横方向挙動検知手段と、車両の走行速度を検知するための車速検知手段とを有する車両用検知装置であって、
車両の走行中に、各検知手段により検知された情報に基づいて、少なくとも前記横方向挙動検知手段のドリフト調整処理を実行する走行中調整手段を備え、
前記走行中調整手段は、
前記前方物体検知手段及び車速検知手段により検知された情報に基づいて、車両前方に停止物体の存在が認識された場合に、
前記前方物体検知手段により検知される前記停止物体までの距離、及び前記停止物の横方向の相対速度と、前記車速検知手段により検知される車速と、前記横方向挙動検知手段により検知される車両の横方向の挙動情報とから、各検知手段のドリフト成分の合成値に相当する移動量を求め、求めた移動量の値だけ前記前方物体検知手段又は横方向挙動検知手段の情報の値を修正するように設定することによって、前記ドリフト調整処理を実現することを特徴とする車両用検知装置。 - 前記横方向挙動検知手段が、前記挙動情報として車両のヨーレートを検知するためのヨーレートセンサであることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用検知装置。
- 車両の停止中に、前記ヨーレートセンサのドリフト調整処理を実行する停止中調整手段を備えることを特徴とする請求項3に記載の車両用検知装置。
- 前記走行中調整手段は、車両が停止状態から走行を開始した時点からの経時時間が規定時間内である場合には、前記前方物体検知手段のドリフト調整処理を実行し、前記経時時間が規定時間を越えている場合には、前記ヨーレートセンサのドリフト調整処理を実行することを特徴とする請求項4に記載の車両用検知装置。
- 前記走行中調整手段は、車両が停止状態から走行を開始した時点からの経時時間が規定時間内である場合には、前記検知手段のうち経時ドリフトのない検知手段のドリフト調整処理を実行し、前記経時時間が規定時間を越えている場合には、前記検知手段のうち経時ドリフトのある検知手段のドリフト調整処理を実行することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用検知装置。
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