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JP4111141B2 - 多段ポンプシステム - Google Patents
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JP4111141B2 - 多段ポンプシステム - Google Patents

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Description

本発明は、低圧側ポンプの吐出圧力を利用してブースタで生成した高圧を高圧側ポンプの吐出側に供給するようにした多段ポンプシステムに関する。
従来、こうした多段ポンプシステムとしては、例えば特許文献1に示すようなものが存在する。即ち、燃料タンクからインジェクタに対して高圧燃料を供給するための圧力経路には、その上流側に低圧側ポンプが、そして下流側に高圧側ポンプが直列配置されている。この圧力経路には、低圧側ポンプの吐出圧力を利用した可動隔壁の変位によって高圧側ポンプの吐出側に高圧を供給するブースタが設けられている。この高圧供給によって、システム始動時等、高圧側ポンプの吐出圧力不足時におけるインジェクタ噴射圧の上昇速度の向上が図られる。
特開平5−321787号公報
しかしながらこうした多段ポンプシステムにおいては、前述したインジェクタ噴射圧の上昇速度向上は見込まれるものの、圧力上昇後等、定常運転時において圧力経路の高圧側ポンプ吐出側に生じる圧力脈動によって噴射量がばらつく虞があり、この点において改善の余地を残すものとなっていた。
本発明はこうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、始動時における高圧側ポンプの吐出側の圧力上昇速度向上を図り得るとともに、定常運転時において高圧側ポンプの吐出側に生じる圧力脈動を抑制可能な多段ポンプシステムを提供することにある。
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
先ず、請求項1に係る発明は、吸入側から吐出側への圧力経路において直列に多段配置された複数のポンプと、前記ポンプのうちの低圧側ポンプの吐出圧力を受圧可能な可動隔壁を内蔵し、前記吐出圧力を受けて前記可動隔壁が変位することで前記吐出圧力よりも高圧なブースト圧力を生成可能であるとともに同ブースト圧力を前記圧力経路における高圧側ポンプの吐出側に供給可能なブースタとを備えた多段ポンプシステムにおいて、前記圧力経路の通過断面積を変更すべく開度制御される制御弁を設け、前記高圧側ポンプの吐出側の圧力に基づき前記可動隔壁に作用する押圧力と、前記低圧側ポンプの吐出圧力に基づき前記可動隔壁に作用する押圧力とのバランスを前記制御弁の開度制御に基づき変更することで、前記ブースタの機能を、前記高圧側ポンプの吐出側へのブースト圧力導入を行うブースト機能と、前記高圧側ポンプの吐出側の圧力変動に伴って前記可動隔壁が変位することで前記圧力変動を抑制する圧力変動抑制機能とで切り替えるようにしたことをその要旨とする。
この発明においてブースタは、高圧側ポンプの吐出側への高圧導入(ブースト圧力導入)を行うブースト機能と、高圧側ポンプの吐出側の圧力変動を抑制する圧力変動抑制機能との両機能を有し、これら両機能は、制御弁の開度制御を通じて切り替えられる。即ち本発明によれば、前述したブースタの両機能を例えば圧力経路の圧力状況等に応じて使い分けることができ、その結果、圧力経路における高圧側ポンプの吐出側の圧力上昇速度を向上させつつ、定常運転時等における同吐出側の圧力脈動等を好適に抑制することができるようになる。
また、このように押圧力のバランスを変更する際の具体的な態様としては、請求項2に記載の発明によるように、請求項1に記載の発明において、前記押圧力のバランス変更は、前記可動隔壁に作用する前記両圧力の比率が前記開度制御に基づき変更されることで行われる、といった構成を採用することができる。
また、請求項3に記載の発明によるように、請求項1又は2に記載の発明において、前記押圧力のバランス変更は、前記可動隔壁に対する前記各圧力の作用面積の比率が前記開度制御に基づき変更されることで行われる、といった構成を採用することができる。
そして、このように各圧力の作用面積の比率を変更する際の具体的な態様としては、請求項4に記載の発明によるように、請求項3に記載の発明において、前記可動隔壁は、前記高圧側ポンプの吐出側の圧力が導入される圧力室の内壁面を構成する高圧側受圧面と、前記低圧側ポンプの吐出圧力が導入される圧力室の内壁面を構成する低圧側受圧面とを有し、前記両圧力室の少なくとも一方は、同圧力室に対応する前記受圧面を内壁面とする複数の分室に区画され、前記作用面積の比率変更は、同圧力室において前記圧力の導入がなされる前記分室の数が前記開度制御に基づき変更されることで行われる、といった構成を採用することができる。
こうした開度制御を行う制御弁の態様としては、請求項5に記載の発明によるように、請求項1〜4のいずれか一項に記載の発明において、前記制御弁は、前記高圧側ポンプの吐出側の圧力に基づく外部からの指令信号によって他律的に開度変更可能な他律制御弁である、といった構成を採用することができる。
また、請求項6に記載の発明によるように、請求項1〜5のいずれか一項に記載の発明において、前記制御弁は、前記高圧側ポンプの吐出側の圧力に応じて機械的且つ自律的に開度変更可能な自律制御弁である、といった構成を採用することができる。
これら請求項5,6に記載の発明によれば、ブースタの上記各機能及びこれら機能の切替を、高圧側ポンプの吐出側の圧力に応じた好適なものとすることができる。更に、請求項6に記載の発明においては、高圧側ポンプの吐出側の圧力を検出するためにセンサを用いたり、同センサによる検出結果に基づいて演算を行うCPU等の制御装置を用いたりして他律的に制御弁の開度制御を行うようにした態様と比較して、こうしたセンサや制御装置を設ける必要がなくなるため構成が簡素となる。
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の発明において、前記可動隔壁において前記高圧側ポンプの吐出側の圧力を受圧する高圧側受圧面と前記低圧側ポンプの吐出圧力を受圧する低圧側受圧面とを連通するリリーフ通路と、同通路を開閉可能な弁体とを備え、前記リリーフ通路を介した圧力抜きを通じて前記高圧側ポンプの吐出側の圧力上昇を抑制可能な高圧リリーフ弁機構を更に設けたことをその要旨とする。
この発明によれば、前述したブースタの圧力変動抑制機能に加えて、更なる圧力上昇の抑制効果が得られるようになる。また例えば、ブースタにおいて可動隔壁を収容するハウジングに通路を設け、同通路を介して高圧側ポンプの吐出側の圧力を低圧側ポンプ側に導入することで高圧側ポンプの吐出側の圧力上昇を抑制するようにした構成と比較して、ハウジングの小型化が容易となる。
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の発明において、前記ポンプには、回転式のものが用いられていることをその要旨とする。
この発明によれば、例えば、往復動式のポンプが用いられた態様に比較して、圧力脈動を小とすることができる。
また、上記した発明の具体的な態様としては、請求項9記載の発明によるように、請求項1〜8のいずれか一項に記載の発明において、前記圧力経路の吐出口には燃料供給用のインジェクタが接続されている、といった構成を採用することができる。即ち本発明の多段ポンプシステムは燃料供給に用いられる。
(第1実施形態)
以下、本発明を車載用内燃機関の燃料供給に用いられる多段ポンプシステムとして具体化した一実施形態について、図1〜図4を参照して説明する。
図1に示すように、この多段ポンプシステムは、吸入側の燃料タンク11から吐出側のインジェクタ12に向けて燃料を供給するための燃料供給路13を備えている。この燃料供給路13の途中には、低圧側ポンプ14及び高圧側ポンプ15が直列に、即ち多段配置されている。両ポンプ14,15はそれぞれ共通の回転軸16を介して、駆動源であるとともに燃料供給先でもある内燃機関17に作動連結されている。本実施形態ではこれらポンプ14,15に、回転式のものが用いられている。内燃機関17からの駆動力によって両ポンプ14,15が駆動されることで、低圧側ポンプ14を介して燃料タンク11の燃料が高圧側ポンプ15側に圧送され、同圧送された燃料が高圧側ポンプ15を介して更に昇圧されてインジェクタ12側に送られる。
燃料供給路13において低圧側ポンプ14と高圧側ポンプ15との間には、プレッシャレギュレータ18が配設されている。プレッシャレギュレータ18は、燃料供給路13における低圧側ポンプ14と高圧側ポンプ15との間の部分の燃料圧力が所定圧以上となったときに同燃料供給路13の燃料をリターン経路19を介して燃料タンク11に戻すことで、燃料供給路13における上記部分の燃料圧力を所定圧未満に保持する。
また、燃料供給路13において、インジェクタ12が接続される吐出口20と高圧側ポンプ15との間には、高圧リザーバ21が配設されている。高圧側ポンプ15から吐出された燃料は高圧リザーバ21に一旦蓄積された後にインジェクタ12から噴射される。なお燃料供給路13において高圧側ポンプ15と高圧リザーバ21との間の部分には、同部分を開閉可能な制御弁30Cが設けられている。
なお、こうした多段ポンプシステムでは、その始動直後において低圧側ポンプ14の吐出圧力は比較的早期に所望の圧力まで上昇されるものの、高圧側ポンプ15の吐出圧力は上記圧力よりも高い圧力を目標とされることもあって、その目標に達するまでに比較的時間を要するものとなっている。
本実施形態においては、こうした不都合を解消すべく、低圧側ポンプ14の吐出燃料の圧力を利用して、同圧力よりも高圧なブースト圧力を高圧リザーバ21に供給可能なブースタ40が設けられている。ブースタ40は、燃料供給路13におけるプレッシャレギュレータ18と高圧側ポンプ15との間の部分と、高圧リザーバ21とを接続するブースタ経路41の途中に設けられている。このブースタ経路41のうち、前述の燃料供給路13におけるプレッシャレギュレータ18と高圧側ポンプ15との間の部分とブースタ40とを接続する第1ブースタ経路41aは、低圧側ポンプ14の吐出燃料(即ち同吐出燃料の圧力)をブースタ40に導入可能とする。また、ブースタ経路41のうち、ブースタ40と高圧リザーバ21とを接続する第2ブースタ経路41bは、同ブースタ40によって昇圧された吐出燃料(即ち同吐出燃料の圧力)を高圧リザーバ21に導入可能とする。
第1ブースタ経路41aには、同経路41aを開閉可能な制御弁30Aが設けられている。同経路41aにおける制御弁30Aとブースタ40との間の部分は、圧力調整経路42を介してリターン経路19と接続されている。この圧力調整経路42には、同経路42を開閉可能な制御弁30Dが設けられている。また、第2ブースタ経路41bには、同経路41bを開閉可能な制御弁30Bが設けられている。なお、ブースタ40とリターン経路19とはドレーン経路43を介して接続されており、同ドレーン経路43を介したブースタ40からリターン経路19へのドレーン排出がなされるようになっている。
本実施形態では、上記した燃料供給路13、ブースタ経路41、圧力調整経路42、ドレーン経路43、及びリターン経路19が、吸入側から吐出側への圧力経路を構成している。
各制御弁30A〜30Dは、ECU(電子制御装置)31からの指令信号による他律的な通電制御を通じてその開度制御が行われる電磁弁であり、この開度制御に基づいて、それぞれが設けられた圧力経路(燃料供給路13、ブースタ経路41、圧力調整経路42)を開閉(即ち通過断面積を変更)するようになっている。
ECU31は、内燃機関17の運転状態等に基づき、これら制御弁30A〜30Dの開度制御を行う。ECU31には、内燃機関17の排気内酸素濃度を検出する酸素センサ32、クランク角度センサ33、及びイグニッションスイッチ34の各検出結果が入力されるようになっている。ECU31は、これら検出結果を取り込み、排気内の酸素濃度、機関回転速度、及びイグニッションのオン/オフ状況を検出する。
またECU31は、上記圧力経路において各所に配設された複数の圧力センサ35の検出結果を取り込み、各所の圧力を検出するようになっている。これら複数の圧力センサ35のうち圧力センサ35a,35bは、燃料供給路13においてそれぞれ同順に、低圧側ポンプ14の吸入側、同ポンプ14とプレッシャレギュレータ18との間の部分の圧力を検出する。また圧力センサ35c,35d,35gは、同じく燃料供給路13においてそれぞれ同順に、プレッシャレギュレータ18と高圧側ポンプ15との間、同ポンプ15と制御弁30Cとの間、高圧リザーバ21と吐出口20との間の部分の圧力を検出する。更に、圧力センサ35eは第1ブースタ経路41aにおける制御弁30Aとブースタ40との間の部分、そして圧力センサ35fは第2ブースタ経路41bにおけるブースタ40と制御弁30Bとの間の部分の圧力を検出する。
図2に示すように、ブースタ40のハウジング51には燃料の導入される圧力室52が形成され、同圧力室52には可動隔壁53が往復摺動可能に即ち変位可能に収容されている。可動隔壁53が収容されることで圧力室52はそれぞれ互いに圧力的に隔絶された分室52a,52b,52cに区画される。分室52aには上記した第1ブースタ経路41aが接続されており、分室52cには第2ブースタ経路41bが接続されている。また、分室52bにはドレーン経路43が接続されている。
分室52aには、可動隔壁53の変位に係る圧力の作用する同可動隔壁53の低圧側受圧面53aが曝されている。分室52cには、可動隔壁53の変位に係る圧力の作用する同可動隔壁53の高圧側受圧面53cが曝されている。また、分室52bには、可動隔壁53の変位に係る圧力の作用する同可動隔壁53のドレーン受圧面53bが曝されている。即ちこれら各受圧面53a,53b,53cは、それぞれ同順に分室52a,52b,52cの内壁面を構成する。各受圧面53a,53b,53cの上記変位方向の投影面積をそれぞれ同順にSa,Sb,Scとすると、これらの関係は次の式1に示す通りとなっている。
Sa=Sb+Sc … (式1)
また、分室52a,52bには、例えば全受圧面53a〜53cに燃料タンク11内と同等の圧力が作用したときに可動隔壁53をハウジング51内において最も第1ブースタ経路41a側の位置(本実施形態ではこの位置を原位置という)に保持するための保持圧縮バネ54,55が収容されている。図2(a)は可動隔壁53がこの原位置に配置された状態を示している。ハウジング51内には第1ブースタ経路41a側(図面左側)への可動隔壁53の移動を規制するための当接規制部材(図示なし)が設けられており、例えば上記した全受圧面53a〜53cに燃料タンク11内と同等の圧力が作用した状態では、可動隔壁53は当接規制部材に対して押圧力が殆ど生じない状態で接触されるようになっている。
例えば、この状態から、低圧側受圧面53aに作用する分室52aの圧力上昇によって、可動隔壁53が保持圧縮バネ55の力に抗して第2ブースタ経路41b側に変位されたとき、受圧する面積Saが面積Scより大きい分、分室52cの圧力は分室52aの圧力上昇分よりも大きく上昇される。即ちこのとき、可動隔壁53の上記変位によって、低圧側ポンプ14の吐出圧力よりも高圧なブースト圧力が分室52c内に生成されて第2ブースタ経路41bに供給されることとなる。ちなみにこうした可動隔壁53の変位時には、ドレーン経路43を介して分室52b内の燃料が排出される。
本実施形態では、可動隔壁53に作用する圧力バランス、即ち低圧側受圧面53aに作用する圧力と高圧側受圧面53cに作用する圧力との比率がECU31による各制御弁30A〜30Dの開度制御を通じて変更されることで、上記変位に係る可動隔壁53への押圧力バランスが変更され得るようになっている。
図2(b)、図2(c)は、上記圧力バランス及びこれに基づく押圧力バランスが、図2(a)の状態と比較して分室52aの方が高圧となる側に偏った状態を示している。図2(b)は、可動隔壁53がハウジング51内において最も第2ブースタ経路41b側の位置(本実施形態ではこの位置をブースト位置という)にある状態を示している。
図2(c)は、可動隔壁53が上記原位置と上記ブースト位置との中間位置(本実施形態ではこの位置をリリーフ中立位置という)にある状態を示している。このリリーフ中立位置にある状態の維持は、可動隔壁53が上記ブースト位置にある状態よりも上記した圧力バランス(及び押圧力バランス)の偏りが小さいときに実現される。この状態の維持は、ブースタ40に設けられた図示しない中立位置センサの検出結果に基づきECU31によって継続的に実行される制御弁30A〜30Dの開度のフィードバック制御を通じて実現され得るようになっている。
また図2(a)〜図2(d)に示すように、可動隔壁53には、低圧側受圧面53aと高圧側受圧面53cとを連通するリリーフ通路53dが形成されており、同リリーフ通路53d内には、同通路53dを開閉可能な弁体としてのボール弁53eが配設されている。ボール弁53eは、リリーフ通路53d内に配設された圧縮バネ53fによって、同通路53d内に形成された弁座に向けて押圧されている。ボール弁53eに作用する分室52c側の圧力が分室52a側の圧力よりも高くなり、両圧力の差が、圧縮バネ53fの力に抗してボール弁53eを弁座から離間させるほどのものとなったとき、リリーフ通路53dを介して分室52cの圧力(燃料)が分室52aに導入される、即ち圧力抜きが行われる(図2(d)の状態)。図2(a)の状態での両室52a,52cの圧力バランスが、分室52cの方が高圧となる側に偏ると、上記当接規制部材に対する可動隔壁53の押圧力が増大されることとなる。そして、上記ボール弁53eの開弁(弁座からの離間)は、こうした圧力バランスの偏りが所定よりも大きくなることで生じる。
リリーフ通路53d、ボール弁53e、及び圧縮バネ53fは、同リリーフ通路53dを介した高圧側受圧面53c側から低圧側受圧面53a側への圧力導入(圧力抜き)を通じて高圧側ポンプ15の吐出側の圧力上昇を抑制可能な高圧リリーフ弁機構を構成する。
次に、ECU31による各制御弁30A〜30Dの開度制御に基づく上記圧力経路の圧力制御態様を、図3に示す制御マトリクスM101を用いて以下に説明する。なお同図において、「制御弁開閉状態」欄の「A」〜「D」はそれぞれ同順に制御弁30A〜30Dに相当し、「圧力センサ検出結果」欄の「a」〜「g」はそれぞれ同順に圧力センサ35a〜35gに相当する。
先ず機関始動前においては全制御弁30A〜30Dが非通電とされて「閉(本実施形態では全閉状態)」とされる。この状態では全圧力センサ35a〜35gの検出結果が燃料タンク11内と同等の圧力(この圧力を便宜的に「0」ということにする)となる。このときブースタ40の可動隔壁53は上記原位置に配置された状態となっている。可動隔壁53がこの原位置にある状態においては、分室52cの体積が最大となるため同分室52cにおける燃料の蓄積量は最大となる。
この状態からイグニッションスイッチ34がオンされると、機関始動用のスタータモータの回転に伴い両ポンプ14,15が駆動開始されるとともに、ECU31はこのオンを検出したことに基づき制御弁30A,30Bのみ「開(本実施形態では全開状態)」とする(始動時1)。この状態では、低圧側ポンプ14の駆動開始とともに圧力センサ35b,35c,35eの検出結果が低圧側ポンプ14の吐出圧力と同等(以下、この圧力を「低」ということとする)となる。なお低圧側ポンプ14の吐出圧力は、こうした駆動開始直後であっても定常運転時とほぼ同等の圧力まで上昇されているものとする。
即ちブースタ40の分室52aの圧力が「0」から「低」に上昇されることで可動隔壁53が上記原位置からブースト位置に変位され分室52cから第2ブースタ経路41bを介して高圧リザーバ21に高圧燃料(上記ブースト圧力まで昇圧された燃料)が供給される。この高圧燃料は機関始動を好適に行うために充分な圧力の燃料であり、この燃料圧力と同等の圧力を以下では「高」ということとする。これにより圧力センサ35f,35gの検出結果は「高」となる。なおこの時点では駆動開始から間もないため高圧側ポンプ15による圧力上昇は未だ皆無に等しく、圧力センサ35dの検出結果は低圧側ポンプ14による昇圧分にとどまり「低」を示す。即ち可動隔壁53の変位によってインジェクタ12の噴射圧が、高圧側ポンプ15の吐出圧力の上昇速度を上回る速度で迅速に上昇される。
次にECU31は、圧力センサ35dが所定圧(本実施形態では「低」)に達したことを検出したことに基づき、制御弁30Aを「閉」とするとともに、制御弁30B,30C,30Dを「開」とする(始動時2)。よって圧力センサ35eの検出結果が示すように分室52aの圧力は、圧力調整経路42を介した圧力抜きがなされることで「0」に低下される。また高圧側ポンプ15の吐出圧力の上昇に伴い圧力センサ35dの検出結果は「高」となる。従って制御弁30Cが「開」とされることで高圧側ポンプ15からの高圧燃料が高圧リザーバ21及び分室52cに導入され、その結果可動隔壁53に作用する押圧力バランスが逆転して同可動隔壁53は上記ブースト位置から原位置に戻される。
そしてECU31は、各制御弁30A〜30Dの開閉状態を上記した「始動時2」の状態としてからの経過時間が所定時間に達したことに基づき制御弁30A,30B,30Dを「閉」とするとともに、制御弁30Cを「開」とする(始動時3)。これにより、ブースタ40の分室52a,52cは燃料供給路13及びリターン経路19と圧力的に隔絶され、全分室52a〜52cの圧力が「0」となることで可動隔壁53が上記原位置に保持される。そして、高圧側ポンプ15によるインジェクタ12への高圧燃料供給が継続されることとなる。なお、上記したように可動隔壁53を上記原位置からブースト位置に変位させた後に原位置に戻すようにしたことで、機関始動を完遂できなかった場合等に再度ブースタ40によるインジェクタ12の噴射圧上昇を図ることができるようになる。
次にECU31は、クランク角度センサ33の検出結果に基づく機関回転速度が所定の回転速度に達したことにより内燃機関17が定常運転状態に移行したと判断すると、例えば制御弁30A,30B,30Dの開度調節を行うことで可動隔壁53を上記原位置からリリーフ中立位置に変位させ同位置に保持する。なおECU31によるこの開度調節は、ブースタ40に設けた上記中立位置センサからの検出結果に基づき可動隔壁53の位置を検出しながらフィードバック制御することで行われる。
本実施形態においてECU31は、各制御弁30A〜30Dの開度制御に基づき、可動隔壁53に作用する圧力の比率を変更することで、ブースタ40の機能を上記したようなインジェクタ12側への高圧導入を行うための機能(ブースト機能)とインジェクタ12側の圧力変動を抑制するための機能(圧力変動抑制機能)とで切り替える。
即ち、ECU31は機関定常運転時において、上記のように可動隔壁53をリリーフ中立位置に保持するとともに、圧力センサ35gの検出結果に基づいて制御弁30A〜30Dの開度制御を行うことで、可動隔壁53の変位を通じてインジェクタ12の噴射圧を好適に維持するように機能する。例えば各ポンプ14,15の吐出圧力の脈動等の影響によりインジェクタ12側の圧力が上記の「高」よりも高くなったと判断するとECU31は、制御弁30Aを「閉」とするとともに制御弁30B〜30Dを「開」とする(定常運転時1)。これにより分室52aの圧力が「0」となり、これに伴う圧力バランスの変動によって可動隔壁53はリリーフ中立位置から原位置に向けて変位される。そしてこの変位に伴って分室52c即ちインジェクタ12側の圧力上昇が抑制される。
なおこのときの分室52cの圧力上昇が上記の可動隔壁53の変位によって吸収しきれないほど大きい場合には、ボール弁53eが開弁され(弁座から離間され)リリーフ通路53dが連通状態となって分室52cの圧力が同通路53dを介して分室52aに導入されることで、分室52cの過度な圧力上昇が回避されることとなる。
一方、インジェクタ12側の圧力が上記の「高」よりも低くなったと判断するとECU31は、制御弁30Dを「閉」とするとともに制御弁30A〜30Cを「開」とする(定常運転時2)。これにより分室52aの圧力が「低」に上昇され、これに伴う圧力バランスの変動によって可動隔壁53はリリーフ中立位置からブースト位置側に変位される。そしてこの変位に伴って分室52c即ちインジェクタ12側の圧力低下が抑制される。ECU31によるこうした開度制御によって、インジェクタ12側における圧力脈動が抑制されるようになる(圧力変動抑制機能)。
イグニッションスイッチ34がオフされると、両ポンプ14,15が停止されるとともに、ECU31はこのオフを検出したことに基づき、先ず、制御弁30A,30Dを「閉」とするとともに制御弁30B,30Cを「開」とする(停止時1)。この直後においては、ブースタ40の分室52aの圧力が「0」となる一方、分室52cの圧力は高圧リザーバ21の残存圧力の影響により「高」のままとなる。そしてこうした圧力バランスの変動により可動隔壁53は迅速に原位置に戻され得ることとなる。
そしてECU31は、圧力センサ35gの検出結果が「0」となったことを検出すると、インジェクタ12からの燃料噴射に伴い高圧リザーバ21の圧力が燃料タンク11内と同等の圧力まで低下したものとみなし、全制御弁30A〜30Dへの通電を停止して「閉」とする(停止時2)。そして、ブースタ40の全分室52a〜52cの圧力が「0」となり、可動隔壁53は原位置に保持される。
なお定常運転時において内燃機関17がストールした場合、ECU31は、このストールの発生を酸素センサ32の検出結果に基づき検出すると、上述の「停止時1」そして「停止時2」と同様の開度制御を行うようになっている。
以上、こうしたブースタ40のブースト機能及び圧力変動抑制機能により、機関回転速度とインジェクタ12の噴射圧との関係は、例えば図4に示すようなものとなる。同図において示す線図401は、内燃機関17にとって最適とされる上記関係を表すものである。また線図402は制御弁30A,30Bを「閉」に維持するなどしてブースタ40を機能させなかった場合を示し、線図403はブースタ40を上述したように機能させた場合を示している。
線図401における低回転速度域に現れているピークPは、内燃機関17の始動時において高回転速度域と同等の噴射圧が望ましいことを示唆している。線図402に示されるようにブースタ40が機能していない状態では、その低回転速度域において噴射圧が不足し、高回転速度域においては逆に過大となっている。そして線図403に示されるように、ブースタ40が機能されることでその低回転速度域における噴射圧は線図401に近接するように引き上げられており、高回転速度域における噴射圧は同じく線図401に近接するように抑制されている。
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態によれば、各制御弁30A〜30Dの開度制御を通じて、ブースタ40の可動隔壁53における高圧側受圧面53cに作用する圧力と、低圧側受圧面53aに作用する圧力との比率が変更されることで、同可動隔壁53に作用する押圧力バランスが変更される。そしてこの押圧力バランスの変更に基づき、ブースタ40におけるブースト機能と圧力変動抑制機能との両機能の使い分けが可能となる。従って、これら両機能を、例えば燃料供給路13の吐出口20での圧力状況等に応じて使い分けることで、インジェクタ12の燃料噴射圧の上昇速度を向上させつつ、内燃機関17の定常運転時等における同燃料噴射圧の脈動等を好適に抑制することができるようになる。
(2)ブースタ40には、可動隔壁53に設けたリリーフ通路53dを介して高圧な分室52cから低圧な分室52aへの圧力抜きを行うことのできる高圧リリーフ弁機構が設けられている。従って、前述したブースタ40の圧力変動抑制機能に加えて、高圧側ポンプ15の吐出側において更なる圧力上昇の抑制効果が得られるようになる。
また、例えば、ブースタ40のハウジング51に通路を設け、同通路を介して高圧側ポンプ15の吐出側の圧力を低圧側ポンプ14側に導入することで高圧側ポンプ15の吐出側の圧力上昇を抑制するようにした構成と比較して、ハウジング51の小型化が容易となる。
(3)両ポンプ14,15には、回転式のものが用いられている。従って、例えば、往復動式のポンプが用いられた態様に比較して、圧力脈動を小とすることができる。
(第2実施形態)
この第2実施形態は、前記第1実施形態と異なり、ECU31からの指令に基づいて他律的に制御される制御弁によってではなく、圧力経路の圧力状況に応じて機械的かつ自律的に開度変更を行う制御弁によって同圧力経路の圧力調整を行うものとされている。本実施形態においては、第1実施形態と共通する構成部分については図面上に同一符号を付して重複した説明を省略する。
図5に示すように、本実施形態の多段ポンプシステムにおいては、上記第1実施形態で各所に設けられていた圧力センサ35a〜35f、酸素センサ32、クランク角度センサ33、イグニッションスイッチ34や、ECU31によって開閉制御されていた制御弁30A〜30Dが省略されている。
本実施形態では、燃料供給路13におけるプレッシャレギュレータ18と高圧側ポンプ15との間の部分と、高圧リザーバ21とを接続するブースタ経路61の途中に、ブースタ60が設けられている。このブースタ60は上記第1実施形態のブースタ40と同様に、低圧側ポンプ14の吐出圧力を利用して、同圧力よりも高圧なブースト圧力を高圧リザーバ21に供給し得るものである。
ブースタ経路61のうち、燃料供給路13におけるプレッシャレギュレータ18と高圧側ポンプ15との間の部分とブースタ60とを接続する第1ブースタ経路61aは、低圧側ポンプ14の吐出圧力をブースタ60に導入可能とする。また、ブースタ経路61のうち、ブースタ60と高圧リザーバ21とを接続する第2ブースタ経路61bは、同ブースタ60によって昇圧された、ブースト圧力を高圧リザーバ21に導入可能とする。
また、ブースタ60には、第1ブースタ経路61aの途中から分岐されるとともに、これと並行して低圧側ポンプ14の吐出圧力を同ブースタ60に導入可能とする圧力制御経路62が接続されている。この圧力制御経路62には、同経路62を開閉可能な制御弁70が設けられている。
制御弁70は、例えばダイヤフラム等の感圧機構を内蔵し、検圧経路63を介して同感圧機構に作用される圧力に応じてその開度を機械的かつ自律的に制御する、所謂自律制御弁である。検圧経路63は燃料供給路13における高圧側ポンプ15と高圧リザーバ21との間の検圧部Sに接続されており、制御弁70はこの検圧部Sの圧力、即ち高圧側ポンプ15の吐出側の圧力に応じて開度制御を行うようになっている。制御弁70は、検圧部Sの圧力が低圧側ポンプ14の吐出圧力と同等の圧力(即ち前述の「低」と同等の圧力)よりも大であるときに開度を全開状態(即ち前述の「開」と同様)とし、上記圧力以下であるときに開度を全閉状態(即ち前述の「閉」と同様)とする。制御弁70は、こうした開度制御に基づき圧力制御経路62を開閉するようになっている。
なお、ブースタ60はドレーン経路64を介してリターン経路19と接続されており、同ドレーン経路64を介したブースタ60からリターン経路19へのドレーン排出がなされるようになっている。本実施形態では、上記した燃料供給路13、ブースタ経路61、圧力制御経路62、ドレーン経路64、及びリターン経路19が、吸入側から吐出側への圧力経路を構成している。
図6に示すように、ブースタ60のハウジング81には燃料の導入される圧力室82が形成され、同圧力室82には可動隔壁83が往復摺動可能に即ち変位可能に収容されている。可動隔壁83が収容されることで圧力室82はそれぞれ互いに圧力的に隔絶された分室82a,82b,82c,82dに区画される。分室82aには上記した第1ブースタ経路61aが接続されており、分室82dには第2ブースタ経路61bが接続されている。また、分室82bには圧力制御経路62が接続され、分室82cにはドレーン経路64が接続されている。
ともに低圧側ポンプ14の吐出圧力が導入される分室82a,82bには、可動隔壁83の変位に係る上記圧力の作用する同可動隔壁83の第1低圧側受圧面83a及び第2低圧側受圧面83bが曝されている。即ち、本実施形態では、可動隔壁83において低圧側ポンプ14の吐出圧力を受圧する低圧側受圧面が、上記吐出圧力が導入される複数の圧力室(分室82a,82b)の内壁面の一部をなす二つの受圧面83a,83bによって構成されている。
また、高圧側ポンプ15の吐出側の圧力が導入される分室82dには、可動隔壁83の変位に係る上記圧力の作用する同可動隔壁83の高圧側受圧面83dが曝されている。また、分室82cには、可動隔壁83の変位に係る圧力の作用する同可動隔壁83のドレーン受圧面83cが曝されている。これら各受圧面83c,83dは、それぞれ同順に分室82c,82dの内壁面を構成する。各受圧面83a,83b,83c,83dの上記変位方向の投影面積をそれぞれ同順にAa,Ab,Ac,Adとすると、これらの関係は次の式2及び式3に示す通りとなっている。
Aa+Ab=Ac+Ad … (式2)
Aa>Ad … (式3)
また、分室82b,82cには、例えば全受圧面83a〜83dに燃料タンク11内と同等の圧力(本実施形態においてもこの圧力を「0」という)が作用したときに可動隔壁83をその変位方向における圧力室82内での中間位置(本実施形態ではこの位置を原位置という)に保持するための保持圧縮バネ84,85が収容されている。図6(a)は可動隔壁83がこの原位置に配置された状態を示している。
例えば、この全受圧面83a〜83dに燃料タンク11内と同等の圧力が作用した状態から、低圧側ポンプ14が駆動開始されると、これに伴って、低圧側受圧面83aに作用する分室82aの圧力が上昇する。なお、本実施形態においても低圧側ポンプ14の吐出圧力を「低」とする。そしてこの圧力上昇によって可動隔壁83が保持圧縮バネ85の力に抗して第2ブースタ経路61b側に変位されたとき、受圧する面積Aaが面積Adより大きい分、分室82dの圧力は分室82aの圧力上昇分よりも大きく上昇される。即ちこのとき、可動隔壁83の上記変位によって、低圧側ポンプ14の吐出圧力よりも高圧なブースト圧力(本実施形態ではこの圧力を「中」とする)が分室82d内に生成されて第2ブースタ経路61bに供給されることとなる。なお、上記圧力「中」は、機関定常運転時におけるインジェクタ12の通常噴射圧(異常でない噴射圧。本実施形態ではこの圧力を「高」ということとする)よりは低いが、機関始動を良好に行い得る燃料圧力である。
図6(b)は、例えばこういったように、圧力室82内の圧力に基づいて可動隔壁83に作用するその変位方向の押圧力バランスが、図6(a)の状態と比較して、低圧側ポンプ14側(第1ブースタ経路61a及び圧力制御経路62側)の方が高圧側ポンプ15側(第2ブースタ経路61b側)よりも大となる側に偏った状態を示している。同図においては、可動隔壁83が圧力室82において最も第2ブースタ経路61b側の位置(本実施形態ではこの位置をブースト位置という)にある状態が示されている。
逆に図6(c)は、前述の押圧力バランスが、図6(a)の状態と比較して、高圧側ポンプ15側の方が低圧側ポンプ14側よりも大となる側に偏った状態を示している。同図においては、可動隔壁83が圧力室82において最も第1ブースタ経路61a側の位置(本実施形態ではこの位置をフェイルセーフ位置という)にある状態が示されている。
本実施形態においては、前述したように、分室82bの圧力が「0」(但し分室82cの圧力も「0」)である場合に分室82aの圧力が「低」、分室82dの圧力が「中」のとき、図6(b)に示すように可動隔壁83がブースト位置に配置される。一方、この状態から、内燃機関17が定常運転状態となり高圧側ポンプ15の吐出圧力が充分なものとなって分室82dの圧力が「高」に上昇すると、可動隔壁83は図6(c)に示すようにフェイルセーフ位置に配置される。
本実施形態では、こうした可動隔壁83に作用する変位方向の押圧力のバランスの変更を、前述したような分室82aと分室82dとの圧力関係によるものの他に、圧力制御経路62を介した分室82bへの圧力導入とその禁止とを制御弁70の開閉によって切り替えることで行うことができるようになっている。即ち、本実施形態では、圧力室82において低圧側ポンプ14の吐出圧力が導入される低圧側の二つの分室82a,82bのうち、分室82bに対して上記吐出圧力を導入するか否かが制御弁70の開度制御に基づき変更される、換言すれば、上記吐出圧力の導入がなされる分室の数が変更される。従って、この変更に伴って、可動隔壁83において、低圧側ポンプ14の吐出圧力が作用する面積と、高圧側ポンプ15の吐出側の圧力が作用する面積との比率(作用面積の比率)が変更されることとなり、前述の押圧力バランスが変更される。
そして、本実施形態においては、制御弁70が「開(本実施形態では全開状態)」とされて各受圧面83a,83bの双方に圧力「低」が作用し且つドレーン受圧面83cに圧力「0」、及び高圧側受圧面83dに圧力「高」が作用したとき、可動隔壁83が原位置に配置されるように上記各面積Aa〜Adが設定されている。但し、高圧側ポンプ15の吐出圧力が脈動を伴っている場合は、同吐出圧力の中心値において上記配置が成立するように設定されている。
また図2(a)〜図2(c)に示すように、可動隔壁83には、上記第1実施形態同様、高圧リリーフ弁機構を構成する、第1低圧側受圧面83aと高圧側受圧面83dとを連通するリリーフ通路83f、及び、ボール弁83g、圧縮バネ83hが設けられている。これにより、リリーフ通路83fを介した高圧側受圧面83d側から第1低圧側受圧面83a側への圧力導入(圧力抜き)を通じて高圧側ポンプ15の吐出側の圧力上昇を抑制することが可能となる。
次に、燃料供給路13における高圧側ポンプ15の吐出側の圧力に基づく制御弁70の機械的かつ自律的な開度制御を通じた圧力経路の自律的な圧力制御態様を、図7に示す制御マトリクスM201を用いて以下に説明する。なお同図において、「圧力状態」欄の「82a」〜「82d」、「S」はそれぞれ同順に分室82a〜82d、検圧部Sに相当し、「弁開閉状態」欄の「70」、「83g」はそれぞれ同順に制御弁70、ボール弁83gに相当する。
先ず機関始動前においては両ポンプ14、15とも駆動停止状態にあるため、分室82a〜82d、及び検圧部Sの圧力は「0」となる。このとき、検圧部Sの圧力が「0」であることから制御弁70は「閉(本実施形態では全閉状態)」とされている。また、ブースタ60においては、可動隔壁83が原位置に配置されているとともに、分室82aと分室82dとの圧力差がないためボール弁83gが「閉」となっている。
この状態から内燃機関17が始動されると(始動時1)、両ポンプ14,15が駆動開始されて、この駆動開始直後に分室82a,82d及び検圧部Sの圧力が「低」となる。なおこの時点で検圧部Sの圧力が「低」なのは、駆動開始から間もないため高圧側ポンプ15による圧力上昇が皆無に等しいためである。ここでは、分室82aの圧力が「低」に上昇したことによって、可動隔壁83のブースト位置への変位が開始される。
そしてこの可動隔壁83の変位に伴い分室82dの圧力が「中」(ブースト圧力)に上昇され、この圧力での燃料供給が高圧リザーバ21に対して行われる(始動時2)。即ち、可動隔壁83の変位によってインジェクタ12の噴射圧が、高圧側ポンプ15の吐出圧力の上昇速度を上回る速度で迅速に上昇される。この分室82dの圧力上昇に伴い検圧部Sの圧力が「中」に上昇される、即ち「低」よりも大となることから、制御弁70が「開」となる。
そして内燃機関17の駆動開始からの時間の経過に伴い高圧側ポンプ15の吐出圧力が前述の「高」に至ると、これに伴い分室82dの圧力が「高」となる(定常運転時1)。本実施形態では、仮に制御弁70が「閉」にあるとき(分室82bの圧力が「0」)、この分室82dの圧力が「高」で且つ分室82aの圧力が「低」である場合(但し分室82cの圧力は「0」)に、可動隔壁83がフェイルセーフ位置に配置される。しかしこの「定常運転時1」においては、前述した「始動時2」において制御弁70が「開」とされたことにより、分室82bの圧力が「低」とされる。従ってこの場合、可動隔壁83は、ブースト位置から、フェイルセーフ位置ではなく原位置に配置されることとなる。
この内燃機関17の定常運転時において可動隔壁83が原位置に配置された状態では、燃料供給路13において生じる高圧側ポンプ15の吐出側の圧力変動がブースタ60によって抑制されるようになっている(定常運転時2)。この圧力変動は、内燃機関17の回転速度の変動や両ポンプ14,15の吐出圧力の脈動等の影響により生じるものである。即ち、可動隔壁83は、これに作用する圧力室82内の圧力変動に伴って、圧力室82においてブースト位置とフェイルセーフ位置との間を移動(変位)することで、前述した高圧側ポンプ15の吐出側の圧力変動を抑制するように機能する。
例えば、可動隔壁83が原位置に静止した状態から、高圧側ポンプ15の吐出側即ち分室82dの圧力が低下方向に変動した場合、可動隔壁83に作用する変位方向の押圧力バランスが偏って同可動隔壁83がブースト位置側に変位することで分室82dでのそれ以上の圧力低下が抑制される。この圧力低下抑制は、可動隔壁83がブースト位置に至るまで行われ得る。
逆に、例えば、可動隔壁83が原位置に静止した状態から、高圧側ポンプ15の吐出側即ち分室82dの圧力が上昇方向に変動した場合、可動隔壁83に作用する変位方向の押圧力バランスが前述と逆向きに偏って同可動隔壁83がフェイルセーフ位置側に変位することで分室82dでのそれ以上の圧力上昇が抑制される。この可動隔壁83の変位に伴う圧力上昇抑制は、同可動隔壁83がフェイルセーフ位置に至るまで行われ得る。
即ち、ブースタ60は、こうした可動隔壁83の変位に基づいた、インジェクタ12側の圧力変動を抑制するための機能(圧力変動抑制機能)を有しているといえる。そして、制御弁70は、その機械的かつ自律的な開度制御に基づき可動隔壁83における上記作用面積の比率を変更することで、ブースタ60の機能を前述したようなインジェクタ12側への高圧導入を行うための機能(ブースト機能)と、上記圧力変動抑制機能とで切り替えるものである。
なお、前述の分室82dの圧力上昇が可動隔壁83の変位によって吸収しきれないほど大きい場合(このときの圧力を「超高」ということとする)には、ボール弁83gが開弁され(弁座から離間され)リリーフ通路83fが連通状態となって分室82dの圧力が同通路83fを介して分室82aに導入即ち圧力抜きされる(異常高圧時)。これにより、分室82dの過度な圧力上昇が回避されることとなる。
そして、内燃機関17が駆動停止され両ポンプ14,15が停止されたとき、本実施形態では、その停止直後においては、検圧部S及び分室82dの圧力が「高」を呈するとともに、分室82a,82bの圧力が「低」を呈する(停止時1)。こうした圧力状態となることで可動隔壁83は原位置に配置されることとなる。そして内燃機関17の駆動停止からの時間の経過に伴い圧力経路内の圧力は「0」となり、可動隔壁83は原位置に保持される(停止時2)。この圧力の低下時においては、検圧部Sの圧力が「低」以下となることで制御弁70が「閉」となる。
本実施形態では、上記第1実施形態と同様に、可動隔壁83に作用するその変位方向の押圧力バランスが変更されることで、ブースタ60におけるブースト機能と圧力変動抑制機能との両機能の使い分けが可能となる。従って、これら両機能を、例えば燃料供給路13の吐出口20での圧力状況等に応じて使い分けることで、インジェクタ12の燃料噴射圧の上昇速度を向上させつつ、内燃機関17の定常運転時等における同燃料噴射圧の脈動等を好適に抑制することができるようになる。
また、本実施形態では、上記の(2)及び(3)と同様の効果の他に、以下のような効果を得ることができる。
(4)制御弁70の開度制御に基づき、低圧側ポンプ14の吐出圧力が導入される分室(分室82a,82b)の数を変更することで、可動隔壁83に対する高圧側ポンプ15の吐出側の圧力と低圧側ポンプ14の吐出圧力との作用面積の比率を変更するようにした。これによれば、可動隔壁83の両圧力の作用面積の比率の変更に基づき押圧力バランスを変更させることができ、ブースタ60の両機能を切り替えることができるようになる。
(5)制御弁70は高圧側ポンプ15の吐出側の圧力に応じて機械的且つ自律的に開度変更可能な自律制御弁である。これによれば、ブースタ60の上記各機能及びこれら機能の切替を、高圧側ポンプ15の吐出側の圧力に応じた好適なものとすることができる。また、例えば、高圧側ポンプ15の吐出側の圧力を検出するためにセンサを用いたり、同センサによる検出結果に基づいて演算を行うCPU等の制御装置を用いたりして他律的に制御弁の開度制御を行うようにした、上記第1実施形態のような態様と比較して、こうしたセンサや制御装置を設ける必要がなくなるため構成が簡素となる。
なお、実施の形態は前記に限定されるものではなく、例えば、以下の様態としてもよい。
・第1実施形態においては、例えば、圧力センサ35d,35gを除いて、他の圧力センサ35を省略してもよい。圧力センサ35dによる検出結果は、前述の始動時2において、可動隔壁53を原位置に配置するための制御弁30A〜30Dの開度制御時に参照される。また、圧力センサ35gは、前述の定常運転時1,2において、インジェクタ12の噴射圧を好適に維持すべく可動隔壁53を変位させるための制御弁30A〜30Dの開度制御時に参照される。なお、前述の始動時2においては、圧力センサ35dの検出結果に基づき、可動隔壁53を原位置に配置するための制御弁30A〜30Dの開度制御が行われたが、これに代えて、例えば、圧力センサ35bや圧力センサ35cの検出結果に基づき同様の開度制御が行われるものとされてもよい。この場合、そうした検出結果の参照がなされる圧力センサ35b,35cに代えて圧力センサ35dを省略するようにしてもよい。
・第2実施形態において、圧力センサ35gを省略してもよい。
・第1及び第2実施形態において、高圧リリーフ弁機構を省略してもよい。
・第2実施形態では、制御弁70を所謂自律制御弁としたが、これに代えて、例えば、検圧部Sの圧力を検出する圧力センサを設けるとともに、同センサの検出結果に基づく電子制御装置からの指令によって他律的に開度制御される制御弁により圧力制御経路62を開閉するようにしてもよい。
・第2実施形態では、低圧側受圧面(第1及び第2低圧側受圧面83a,83b)において、低圧側ポンプ14の吐出圧力の作用面積を二段に切り替えるようにしたが、三段以上に切り替えるようにしてもよい。
・第2実施形態では、低圧側受圧面(第1及び第2低圧側受圧面83a,83b)において低圧側ポンプ14の吐出圧力の作用面積を切り替えるようにしたが、これに代えて、高圧側受圧面において高圧側ポンプ15の吐出側の圧力の作用面積を切り替えるようにしてもよい。また、高圧側及び低圧側の双方の受圧面において各作用面積を切り替えるようにしてもよい。
・制御弁30A〜30D,70の開度制御において、これを全開と全閉とで切り替える構成に限らず、全開及び全閉以外の開度間で変更するように開度制御してもよい。
・高圧側受圧面53c,83dに作用する圧力と、低圧側受圧面53a,83a,83bに作用する圧力との比率変更を、制御弁の自律的な開度制御に基づき行うことで、可動隔壁53,83に作用する押圧力バランスを変更するようにしてもよい。この場合、例えば、第2実施形態において、制御弁70を、第1ブースタ経路61a上に移設し、この部分における第1ブースタ経路61aの通過断面積を変更制御するようにする。このとき、圧力制御経路62を省略するとともに分室82bを例えばハウジング81内において分室82aとのみ連通した状態とする。そして、検圧部Sの圧力に基づく制御弁70の自律的な開度制御によって上記第1ブースタ経路61aの通過断面積の変更が行われるようにする。なお、上記開度制御においては、制御弁70の開度が全開と全閉とで切り替えられてもよく、全開及び全閉以外の開度間で変更されてもよい。
・両ポンプには回転式のものが用いられたが、これに限らず、例えば、ピストン等を備えた往復動式のものが用いられてもよい。
・両ポンプ14,15の駆動源を内燃機関17以外のもの、例えば同内燃機関17と別個に設けられた電動モータ等としてもよい。
・第1及び第2実施形態では、低圧側ポンプ14及び高圧側ポンプ15といった二つのポンプを設けたが、これに限らず、三つ以上のポンプを圧力経路において直列に配置してもよい。この場合、例えば、圧力経路において最も低圧側に設けられるポンプ以外のポンプにおいてその吸入口と吐出口とをブースタ経路で連通してもよく、また、三つ以上のポンプのうち隣り合わないポンプの吐出口どうしをブースタ経路で連通するようにしてもよい。
・上記実施形態では、本発明を、内燃機関用の燃料噴射装置に適用したが、例えば他の燃料供給用として用いてもよく、燃料以外の流体供給用として用いてもよい。
第1実施形態の多段ポンプシステムの概要を示す構成図。 (a),(b),(c),(d)は、ブースタを示す断面図。 ECUによる制御弁の開閉制御を説明するための制御マトリクス。 機関回転速度とインジェクタの噴射圧との関係を示すグラフ。 第2実施形態の多段ポンプシステムの概要を示す構成図。 (a),(b),(c)は、ブースタを示す断面図。 制御弁の自律的な開閉制御を説明するための制御マトリクス。
符号の説明
12…インジェクタ、13…燃料供給路、14…低圧側ポンプ、15…高圧側ポンプ、19…リターン経路、20…吐出口、30A,30B,30C,30D,70…制御弁、40,60…ブースタ、41,61…ブースタ経路、42…圧力調整経路、43,64…ドレーン経路、52,82…圧力室、53,83…可動隔壁、53a…低圧側受圧面、53c,83d…高圧側受圧面、53d,83f…リリーフ通路、53e,83g…ボール弁、53f,83h…圧縮バネ、62…圧力制御経路、82a,82b…分室、83a…第1低圧側受圧面、83b…第2低圧側受圧面、Aa,Ab,Ad…投影面積。

Claims (9)

  1. 吸入側から吐出側への圧力経路において直列に多段配置された複数のポンプと、
    前記ポンプのうちの低圧側ポンプの吐出圧力を受圧可能な可動隔壁を内蔵し、前記吐出圧力を受けて前記可動隔壁が変位することで前記吐出圧力よりも高圧なブースト圧力を生成可能であるとともに同ブースト圧力を前記圧力経路における高圧側ポンプの吐出側に供給可能なブースタと
    を備えた多段ポンプシステムにおいて、
    前記圧力経路の通過断面積を変更すべく開度制御される制御弁を設け、
    前記高圧側ポンプの吐出側の圧力に基づき前記可動隔壁に作用する押圧力と、前記低圧側ポンプの吐出圧力に基づき前記可動隔壁に作用する押圧力とのバランスを前記制御弁の開度制御に基づき変更することで、前記ブースタの機能を、前記高圧側ポンプの吐出側へのブースト圧力導入を行うブースト機能と、前記高圧側ポンプの吐出側の圧力変動に伴って前記可動隔壁が変位することで前記圧力変動を抑制する圧力変動抑制機能とで切り替えるようにした
    ことを特徴とする多段ポンプシステム。
  2. 前記押圧力のバランス変更は、前記可動隔壁に作用する前記両圧力の比率が前記開度制御に基づき変更されることで行われる
    請求項1に記載の多段ポンプシステム。
  3. 前記押圧力のバランス変更は、前記可動隔壁に対する前記各圧力の作用面積の比率が前記開度制御に基づき変更されることで行われる
    請求項1又は2に記載の多段ポンプシステム。
  4. 前記可動隔壁は、前記高圧側ポンプの吐出側の圧力が導入される圧力室の内壁面を構成する高圧側受圧面と、前記低圧側ポンプの吐出圧力が導入される圧力室の内壁面を構成する低圧側受圧面とを有し、前記両圧力室の少なくとも一方は、同圧力室に対応する前記受圧面を内壁面とする複数の分室に区画され、前記作用面積の比率変更は、同圧力室において前記圧力の導入がなされる前記分室の数が前記開度制御に基づき変更されることで行われる
    請求項3に記載の多段ポンプシステム。
  5. 前記制御弁は、前記高圧側ポンプの吐出側の圧力に基づく外部からの指令信号によって他律的に開度変更可能な他律制御弁である
    請求項1〜4のいずれか一項に記載の多段ポンプシステム。
  6. 前記制御弁は、前記高圧側ポンプの吐出側の圧力に応じて機械的且つ自律的に開度変更可能な自律制御弁である
    請求項1〜4のいずれか一項に記載の多段ポンプシステム。
  7. 前記可動隔壁において前記高圧側ポンプの吐出側の圧力を受圧する高圧側受圧面と前記低圧側ポンプの吐出圧力を受圧する低圧側受圧面とを連通するリリーフ通路と、同通路を開閉可能な弁体とを備え、前記リリーフ通路を介した圧力抜きを通じて前記高圧側ポンプの吐出側の圧力上昇を抑制可能な高圧リリーフ弁機構を更に設けた
    請求項1〜6のいずれか一項に記載の多段ポンプシステム。
  8. 前記ポンプには、回転式のものが用いられている
    請求項1〜7のいずれか一項に記載の多段ポンプシステム。
  9. 前記圧力経路の吐出口には燃料供給用のインジェクタが接続されている
    請求項1〜8のいずれか一項に記載の多段ポンプシステム。
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