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JP4112866B2 - 被膜性能の優れる無方向性電磁鋼板 - Google Patents
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JP4112866B2 - 被膜性能の優れる無方向性電磁鋼板 - Google Patents

被膜性能の優れる無方向性電磁鋼板 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は無方向性電磁鋼板の製造において、高速ラインにおける塗れ性が極めて優れると共に、焼付け後の絶縁被膜の性状として、打ち抜き性、溶接性、密着性、占積率、外観等被膜特性の優れる有機−無機系絶縁被膜剤とそれを用いた絶縁被膜の形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
周知のごとく、無方向性電磁鋼板をモーターやトランスの鉄心に使用する場合には、所定の形状に打ち抜いた後、所定枚数積み重ね、溶接、かしめ或いは接着等により鉄心とされる。また、この際、必要に応じて歪焼鈍が施される。通常、この無方向性電磁鋼板表面には絶縁被膜処理が施される。
【0003】
この絶縁被膜としては、絶縁性の他に打ち抜き性、溶接性、耐食性、密着性、占積率等が重要で、さらにコア打ち抜き後に歪み取り焼鈍工程を必要とする場合には、歪み取り焼鈍後の密着性、絶縁性、耐食性等も重要となる。
【0004】
従来、絶縁被膜剤としては、無機系、有機系、有機−無機混合系被膜が使用条件や目的に応じて適用されてきた。一般に、無機系被膜は耐熱性や溶接性は優れるが打ち抜き性が劣る。一方、有機被膜の場合には打ち抜き性、密着性は優れるが耐熱性が悪く、溶接性が劣る欠点がある。
【0005】
このような両者の欠点を解決すべく、中間的な特性が得られる有機−無機系被膜が用いられるようになった。有機−無機系被膜としては、特開昭52−33846号公報には、燐酸系、クロム酸系の1種又は2種以上と有機樹脂の混合被膜を形成するに際し、処理液中に有機樹脂粒子を添加して表面粗さを2〜10μHmaxとする打ち抜き性と溶接性の優れた絶縁被膜形成法が提案されている。
【0006】
特開平3−240970号公報には、歪取り焼鈍後の被膜特性が優れた無方向性電磁鋼板の製造法として、CrO3100質量部、Al,Mg,Ca,Znから選ばれる酸化物の1種又は2種以上20〜40質量部、粒子径0.2〜0.5μmに調整したアクリル、スチレン、酢ビ及び又はこれらの共重合体からなる樹脂の1種又は2種以上の微粒子エマルジョン溶液10〜60質量部、粒子径を1〜50μmに調整したメチルメタアクリレート、ポリアクリルニトリル、ポリスチレン、セルローズ、シリコン、メラミン、フェノール、ポバール樹脂及び/又はこれらの共重合体、架橋体の1種又は2種以上を2〜30質量部からなるものが開示され、これにより、打ち抜き性、溶接性が良好で且つ、歪取り後の潤滑性、絶縁性、耐蝕性が著しく改善されることが述べられている。
【0007】
特開平4−176873号公報には、 電磁鋼板の表面にクロム酸系の1種又は2種以上とクロム酸金属塩(CrO3に換算して)1質量部に対して、水分散性エマルジョン0.1〜5質量部、粒径が2〜50μmの球状有機樹脂粒子0.1〜1.0質量部を主成分とする水溶液を焼き付けて表面粗さが0.5〜1.5μmの被膜を形成する溶接性と密着性に優れた電磁鋼板の電気絶縁被膜処理方法が提案されている。
【0008】
これらの従来技術おいては、何れも打ち抜き性向上の目的で添加される有機樹脂の溶接性劣化を緩和するために、極めて粗い粒子状物質を添加して表面粗度の粗さを得て溶接性向上効果を得ている。このため、占積率の低下の弊害は否めず、塗れ性、液安定性、外観やコストアップをもたらす問題がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上述したような従来の有機−無機成分を基本とするコーティング剤やその処理方法においては、被膜成分の鋼板への塗れ性や液の安定性、外観が十分でなく、更には、近年の高速の塗布・焼付け処理ラインにおける液の塗れ性、塗布性問題から生じる打ち抜き性、溶接性や外観不良の問題は根強く更なる改善が望まれている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、有機−無機成分を基本とする絶縁皮膜剤の塗れ性向上と、これによる打ち抜き性、溶接性、密着性、外観の改善をすべく考案されたものである。これにより、従来の半有機被覆の欠点を改善するための塗れ性の優れた絶縁被覆剤よる表面均一性、皮膜性能の優れた無方向性電磁鋼を提供することを目的とし、以下の構成を要旨とする。
(1)絶縁被膜が、クロム酸として100質量部に対し、粒子径0.04〜0.19μmの超微粒樹脂を含む樹脂エマルジョンを固形分として5〜50質量部含有し、樹脂中の粒子径0.04〜0.19μmの超微粒樹脂が、質量で、樹脂固形分の30%以上の樹脂であり、クロム酸を主体とする絶縁被膜剤により処理され、絶縁被膜成分中の有機物成分を有機Cとして2.5〜25.0%を含有し、膜厚0.5〜10.0μmの絶縁被膜を有することを特徴とする被膜性能の優れる無方向性電磁鋼板。
(2)前記樹脂中の粒子径0.04〜0.19μmの超微粒樹脂の残部が、粒子径0.35〜0.50μmの樹脂であることを特徴とする(1)に記載の被膜性能の優れる無方向性電磁鋼板。
(3)前記樹脂が、Tg:20〜100のアクリル、スチレン、酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリカーボネート、メラミン、ポリウレタン、アルキド、イソシアネート、エポキシ樹脂の1種又は2種以上からなることを特徴とする(1)又は(2)に記載の被膜性能の優れる無方向性電磁鋼板。
(4)前記絶縁被膜の表面粗度Ra値が0.1〜1.0μm、光沢度が70以上であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の被膜性能の優れる無方向性電磁鋼板。
【0011】
ただし、光沢度:L方向、光源入射角(θ):45度で測定。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明者等は、クロム酸、硼酸を無機成分の主成分とし、樹脂エマルジョンを有機成分の主成分とする半有機系絶縁被膜における、被膜の処理工程と被膜特性上の欠点であった、高速塗布・焼付けラインにおける塗れ性不良と、それによりもたらされる打ち抜き性や溶接性不良の問題を解決すべく、液組成や焼付け条件の改善に取り組んだ。
【0013】
即ち、従来の絶縁被膜技術では、特に150m/分以上のような高速ラインにおいて、液の塗れ性が十分でなくなり、均一塗布が困難になり、安定した塗布膜が得られなくなるため、生産性を阻害するような低速通板や、塗れ性向上のため塗布量を増やす等を行う必要が生じる。しかしながら、このような条件変更を行っても、本質的な液塗れ性不良の性質から、塗布前の鋼板性状などの要因によっては、安定して均一な膜厚を有する製品が得られない問題が残る。
【0014】
このような不均一被膜が形成されると、打ち抜き時にポンチに不均一な欠けをもたらす。また膜厚が増加すると、有機成分の絶対量増加により、溶接時において分解ガスによる溶接不良が生じやすい。
【0015】
本発明者等はこのような問題を解決すべく溶液成分や処理条件の研究を行った。その結果、粒子径を超微粒とした樹脂エマルジョンを用い、クロム酸系化合物、硼酸系化合物の適正な配合条件の処理液とすることにより、超微細粒子による鋼板表面への被覆効果と吸着効果、及び超微細粒子を覆う界面活性剤による塗れ性向上効果により、処理液の塗れ性が極めて改善し、外観が優れる均一な膜厚を得ると共に、優れた打ち抜き性、溶接性、密着性、耐食性等、の被膜性能が得られる絶縁被膜剤溶液と絶縁被膜形成技術の開発に成功した。
【0016】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明においては、先ず、その絶縁被膜組成に特徴があり、その絶縁被膜剤により得られる美麗で均一な被膜を有する無方向性電磁鋼板が基本となる。
【0018】
即ち、粒子径0.04〜0.19μmの超微粒樹脂を有機成分として含有し、クロム酸を主体とする被膜剤により処理され、被膜中の有機成分を有機Cとして2.5〜25質量%含有し、膜厚0.5〜10.0μmを有する無方向性電磁鋼板に特徴がある。
【0019】
絶縁被膜に配合される樹脂の粒子径は、まず鋼板表面への塗れ性に影響する。超微粒樹脂を用いることは高速塗布ラインにおいて10μm以下、特に1μm以下の薄い膜厚を得るのに重要である。粒子径は小さいほど高速ラインでの塗れ性、塗膜の均一性が向上する。飛躍的な塗れ性改善効果を得るためには超微粒樹脂の粒子径が0.19μm以下であることが重要である。特に、粒子径0.14μm以下では飛躍的に塗れ性の向上が得られる。このような超微粒樹脂エマルジョンを主成分とする絶縁被膜剤を塗布すると、被膜欠陥がなく表面外観が均一で且つ、均一な膜厚を有する製品が得られる。
【0020】
超微粒子樹脂の粒子径の下限は0.04μmとした。安定なエマルジョンとするためには、比表面積に応じた界面活性剤の使用が必要であるが、粒子径が0.04μm未満と小さ過ぎると、界面活性剤の必要量が増し、塗布作業工程での泡立ち性が増して塗布行程の作業を困難にする。又、樹脂製造コスト面においても好ましくない。一方、超微粒樹脂の粒子径が0.19μm超になると、鋼板への塗れ性向上効果が十分でなく、塗布工程における作業条件の影響を受けやすいことから制限される。
【0021】
樹脂は粒子径0.04〜0.19μmの超微粒樹脂を含むものを5〜50質量部配合する。5質量部未満の場合、塗れ性向上効果が弱まるほか、密着性、打ち抜き性が低下するため制限される。50質量部超の場合には、塗れ性の向上は優れるが、溶接性、耐熱性を低下するため制限される。5〜50質量部の範囲であれば、塗れ性、打ち抜き性、溶接性、耐蝕性、耐熱性等の優れる絶縁被膜が得られる。
【0022】
超微粒樹脂エマルジョンの使用においては、塗れ性、被覆性向上のためには必ずしも樹脂分の100%を占める必要はなく、溶接性や滑り性等の他の被膜性能向上の目的で、粒子径0.2〜0.5μmの中粒或いは粗粒エマルジョンと併用しても良い。本発明の超微粒樹脂エマルジョンに通常のエマルジョンを複合して使用する場合は、超微粒樹脂を全樹脂の少なくとも30質量%以上とし、残部は粒子径0.35〜0.50μmの粗粒子樹脂を配合して使用する。超微粒樹脂が30質量%未満では塗れ性向上効果が低下する。
【0023】
この場合にも超微粒樹脂によって塗れ性の向上効果が得られ、外観、占積率低下の影響を最小限として溶接性、滑り性が改善される。超微粒樹脂エマルジョンを用いた本発明においては、その溶液の表面接触角が15度以下(20℃、10Be)と、従来の処理液より低下することにより、塗れ性の劇的な向上効果が得られる。
【0024】
超微粒樹脂と併用して配合される粗粒子の粒子径は0.35〜0.50μmである。0.35μm未満では複合による滑り性や溶接性向上効果が弱い。一方0.50μm超の場合、エマルジョンそのものの沈降性が大きくなって溶液安定性が悪く、工業生産に適さない。
【0025】
又、絶縁被膜中の有機分としては有機C量で2.5〜25%とすることが重要である。有機C量は樹脂成分添加量と焼付け条件により制御することができる。特に、焼付け温度は重要で、樹脂の炭化を起こさないように焼付け焼鈍温度サイクルを制御するのが重要である。有機C量が2.5%未満では打ち抜き性、耐蝕性、絶縁性等が低下する。一方、25.0%超と被膜中に占める割合が多くなりすぎると溶接性を低下するため制限される。
【0026】
絶縁被膜の膜厚は0.5〜10μmである。本発明の塗れ性の優れるエマルジョンを用いた場合には、高速ライン塗布においても膜厚0.5μm程度までの均一な薄塗りが可能である。膜厚が0.5μm未満では、鋼板の表面状態によっては耐蝕性、絶縁性、打ち抜き性に影響する。一方、10μm超の場合には、本発明の超微粒樹脂エマルジョンを用いても、高速ラインでは、均一な塗膜が得られ難く、高速ラインでは焼付け時の突沸現象と呼ぶ被膜形成での脱水時に生じるクレーター状欠陥が抑制できなくなるため制限される。
【0027】
本発明の絶縁被膜を用いた製品の表面粗度はRa値で0.1〜0.45とするのが好ましい。超微粒樹脂エマルジョンを用いた場合には、超微粒樹脂効果により均一で、滑らか且つ、光沢の優れる絶縁被膜を形成する。しかしながら被膜表面のRaが0.1μm未満では、溶接性、滑り性等が低下する。一方、粗粒樹脂を混合した場合にはRaは大きくなるが、0.45μm超では占積率が低下するため制限される。特に本発明の超微粒樹脂のみを樹脂として用いた場合の鋼板の表面粗度は、Raで0.10〜0.25μmとすることができる。
【0028】
また光沢度はL方向入射角45度の測定条件において70以上である。光沢度は絶縁被膜のスムース性の一つの目安となる。光沢度の測定は一定角度から光線を当てその反射率を測定することによって得られるもので、市販の光沢度計により測定する。本発明では、光源の入射角45度(鋼板L方向)で測定した値で評価した。本発明に規定する範囲で超微粒樹脂エマルジョンを使用する場合、粗粒子エマルジョンとの複合した場合でも光沢度70以上の、平滑で光沢の優れる絶縁被膜が得られる。
【0029】
次に本発明の絶縁被膜剤について説明する。
【0030】
本発明の超微粒樹脂エマルジョンを有機成分とする絶縁被膜剤は、次のような組成で溶液が調整される。即ち、無機成分としてクロム酸をCrO3として100質量部に対し、硼酸又は硼酸塩の1種又は2種以上を10〜45質量部、MgO,ZnO,CaO,Al23の1種又は2種以上を10〜35質量部、還元剤としてグリセリン、アジピン酸、コハク酸等の中から選ばれる1種又は2種以上を10〜30質量部配合し、さらに、粒子径0.04〜0.19μmの超微粒樹脂を含むエマルジョンを5〜50質量部配合される。
【0031】
以上の組成からなる絶縁被膜は、溶液の鋼板面での塗れ性が極めて向上し、均一な塗膜が得られる。
【0032】
クロム酸に配合されるMgO,ZnO,CaO,Al23の等の酸化物は、重クロム酸塩を生成するモル比以下に抑え、良好な絶縁被膜を得るのに適している。クロム酸及び酸化物成分は絶縁被膜の耐熱性、緻密性、絶縁性、耐蝕性等の向上に寄与する。
【0033】
配合される酸化物はMgO,ZnO,CaO,Al23の1種又は2種以上を、CrO3100質量当り15〜35質量部である。15質量部未満ではフリーのクロム酸が増加して、焼付け条件の厳密なコントロールが必要で、被膜のベタツキ、ステイッキング性等を劣化する場合があるため制限される。45質量部超の場合、酸化物の種類によっては未溶解の酸化物が生じたり、析出物による塗れ性や被膜性能の低下が生じるため制限される。好ましくはCrO3と酸化物による重クロム酸塩を形成するモル比以下である。
【0034】
硼酸或いは硼酸塩は絶縁被膜の外観と耐熱性向上に寄与する。CrO3:100質量当り、硼酸硼酸塩が10質量部未満では耐熱性と外観の向上効果が十分でない。一方、30部超では溶液での溶解性が低くなり析出が生じて均一な塗膜が得られなかったり、析出物による塗れ性不良が生じる場合があるので制限される。
【0035】
還元剤であるグリセリン、アジピン酸、コハク酸は被膜焼付け過程のCrO3の還元に作用し、被膜生成温度の低下、短時間化を実現するのに重要である。還元剤の配合量がCrO3:100質量当り、5質量部未満の場合、焼付け条件が狭まり、樹脂成分を安定に保つために不利であり制限される。一方、20質量部超の場合にも同様に焼付け温度に敏感になりすぎる問題がある。還元剤としては本発明外の有機化合物を用いても良いが、安価に、安定した効果が得られるのはグリセリン、アジピン酸、コハク酸等である。
【0036】
本発明における樹脂としては、アクリル、スチレン、酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリカーボネート、メラミン、ポリウレタン、アルキド、イソシアネート、エポキシ樹脂の1種又は2種以上、及び/又はこれらの共重合体、架橋体が用いられる。これらの樹脂成分であれば安価で、被膜性能の優れた絶縁被膜が得られる。
【0037】
樹脂のガラス転移点Tgを20〜100℃としたのは、20℃未満の場合、絶縁被膜が低温で融着するブロッキング現象がおきやすく、被膜硬度が弱いために絶縁被膜が鉄心加工工程で傷がつき易いためである。また、極端な場合、スリッター等で発粉現象が生じやすくなり、好ましくない。一方、Tgが100℃超では造膜性が低下して、焼付け条件によっては被膜の緻密さや滑らかさが低下して、外観として特に光沢が減少し、被膜性能に影響する。
【0038】
Tgは主に樹脂の種類によって決まるが、例えばアクリル樹脂のように複数種類の樹脂からなる場合には、メチルメタアクリレート、ブチルアクリレート、エチルアクリレート等の、Tgの異なるアクリル樹脂の配合割合を変更することで調整できる。
【0039】
本発明の樹脂エマルジョンを製造する際は、界面活性剤としてポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル、ドデシルベンゼルスルホン酸Na、ポリオキシエチレンオレールエーテルサルフェートNa、ポリオキシエチレンノニエルフェノールエーテルサルフェートNH4、スルホコハク酸ジナトリウムのエトキシ化アルコール、スルホコハク酸ジナトリウムのエトキシ化ノニルフェノール半エステル、モノドデシルジフェニルオキシドジスルホン酸Na、ジドデシルジフェニルオキシドジスルホン酸Na、アセチレンジオールのEO付加物の1種又は2種以上が用いられる。
【0040】
界面活性剤は粒子径に応じて適量用いられるのが通常である。本発明の超微粒樹脂エマルジョンにおいては、これらの界面活性剤を適量用いることにより、樹脂粒子の安定性と良好な塗れ性が得られる。本発明の樹脂粒子径では、好ましくは質量で樹脂固形分の0.5〜8.0%が配合される。0.5%未満ではエマルジョン粒子の安定性と塗れ性が得られない。一方、8.0%超になると発砲性により塗布作業性を困難にし、泡による被膜表面欠陥を生じる場合がある。
【0041】
樹脂はあらかじめ界面活性剤と配合してエマルジョンとした後、他の被膜組成物と配合して絶縁被膜とする。これにより、絶縁被膜中で樹脂が凝集せず、均一な分散状態を得ることができる。なお、被膜処理剤配合工程でさらに界面活性剤を添加して使用してもよい。特に、塗布条件(ロール条件、鋼板表面性状等)が劣る場合には若干の補助効果を発揮する。
【0042】
以上の組成からなる本発明の絶縁被膜の特徴としては、表面接触角が15度以下である。表面接触角は鋼板に高速塗布する場合の重要な条件の一つであり、小さいほど優れた塗れ性が得られる。表面接触角は固体と液体間の接触角(塗れ)を測定した値で、市販の接触角計(例:協和界面科学製CA−S150型)で測定した値である。本発明の超微粒樹脂を利用する場合、界面活性剤の添加なしで15度以下の接触角が達成される。特に、粒子径0.14未満のエマルジョンの適用においては表面接触角10度以下のような極めて小さい値が得られる。
【0043】
次に本発明の絶縁被膜処理法方について説明する。
【0044】
本発明の絶縁被膜を用いて絶縁被膜焼付け処理を行う場合は、連続焼鈍とコーティングを行うラインにおいて、最終板厚の冷延コイルを洗浄と仕上げ焼鈍を行った後、前記絶縁被膜を希釈溶液としてゴムロール等で塗布し焼付け処理が行われる。焼付け処理は180℃〜400℃である。180℃未満では造膜が十分でなく、ベタツキ、耐蝕性やスティッキング性を低下する。一方、400℃超では有機分の分解や焼失が生じて、外観、打ち抜き性を阻害するのみならず、本発明の目的とする有機成分を有機Cとして2.5〜25.0%含有する絶縁被膜の製品が得られない。好ましい焼付け温度は250〜350℃である。なお焼付け時間は特に限定しないが、所望の被膜状態び有機C量となるよう、適宜決定される。
【0045】
【実施例】
(実施例1)
質量でSi:0.35%、Al:0.002%、Mn:0.25%を含有する板厚0.5mmの無方向性電磁鋼板冷延コイルを連続焼鈍ラインで焼鈍後、同ラインにて表1に示すような粒子径を変更した樹脂エマルジョンを用いた絶縁被膜剤を乾燥後の質量で1.0g/m2(片面あたり)塗布し、到達板温330℃で焼き付け処理を行った。この際のラインスピードは180m/min.であった。
【0046】
この後、製品からサンプルを切り出し被膜性能について調査した。ここで、TIG溶接性は、120A,Th−W(1.5mmφ),Ar流量6l/Min.、締め付け:12.3MPa,スピ−ド;60cm/分の条件で溶接したときの溶接部外観を判断した。また打ち抜き性は、スチ−ルダイスによる打ち抜きで、かえり高さ50μmに達するまでの打ち抜き回数を測定した。結果を表2に示す。
【0047】
【表1】
Figure 0004112866
【0048】
【表2】
Figure 0004112866
【0049】
この試験の結果、本発明の絶縁被膜を塗布した材料は高速コーティング試験において、何れも非常に良好な塗れ性を示し、極めて光沢の優れる均一な絶縁被膜を形成した。被膜特性においても、良好な耐食性、溶接性、打ち抜き性が得られ、特に、粒子径0.14μm以下のエマルジョンを用いた場合には良好であった。
【0050】
一方、比較例の樹脂エマルジョンの粒子径が0.25,0.50μmの場合は、エッジ部に斑点の発生が多く見られ、絶縁被膜の均一性、光沢度等の外観が本発明に比しかなり劣る結果となり、打ち抜き性においても不均一塗布の影響を受けて本発明に比しやや劣る結果となった。
【0051】
ここで、図2に本発明で0.1μmの超微粒樹脂エマルジョンを用いた本発明3と、0.25μmの樹脂エマルジョンを用いた比較例の顕微鏡写真を示す。本発明の場合には,極めて微細な粒子が分散している様子が見られる。
【0052】
又、この試験における絶縁被膜中の有機C量を定量したところ、7.5〜12.0%であった。
(実施例2)
実施例1と同一の鋼板を用い、連続焼鈍ラインにおいて同様にして処理し、表3に示すように粒子径の異なる樹脂エマルジョンを複合、或いは単独使用した絶縁被膜剤を乾燥後質量で1.5g/m2塗布し、330℃で焼付け処理を行った。
【0053】
この後、このコイルからサンプルを切り出し、実施例1と同様に被膜性能の評価を行った。結果を表4に示す。
【0054】
【表3】
Figure 0004112866
【0055】
【表4】
Figure 0004112866
【0056】
この試験の結果、本発明の絶縁被膜を塗布した材料は高速コーティング試験において、何れも非常に良好な塗れ性を示し、極めて光沢の優れる均一な絶縁被膜を形成した。被膜特性においても、良好な耐食性、溶接性、打ち抜き性が得られ、特に、粒子径0.10μmの樹脂を全樹脂中の50質量%以上用いた場合には塗れ性、耐蝕性が極めて良好であった。又、超微粒樹脂に粗粒子エマルジョンを複合した場合、溶接性が改善される傾向で極めて良好な結果が得られた。
【0057】
占積率に付いても本発明の複合エマルジョンでは、従来の粗粒子樹脂エマルジョンに比較して遜色なく良好であった。一方、比較例の粗粒子エマルジョンの場合は、エッジ部に斑点の発生が多く見られ、絶縁被膜の均一性、光沢度等の外観が本発明に比しかなり劣る結果となった。
(実施例3)
実施例1と同一の鋼板を用い、連続焼鈍ラインにおいて同様にして処理し、表5に示すように樹脂の粒子径とTgを変更した絶縁被膜剤を乾燥後質量で1.0g/m2塗布し、330℃で焼付け処理を行った。この試験においては本発明1,2と比較例1の溶液については均一な塗布条件を得られる限界の付着量とラインスピードの関係を調査した。
【0058】
この後、このコイルからサンプルを切り出し、被膜性能の評価を行った。ここで、スティッキング性は、3×4cmに切断した鋼板を図1(a)に示すように積層し、締め付け圧3.9MPaで締め付け、750℃×2Hr,N2中で焼鈍の後,図1(b)の方法で剥離力を測定した。またブロッキング性は、スティッキング試験と同様にサンプル切り出し、積層、締め付けの後、100℃×24Hr,大気中で加熱し、スティッキング試験と同様に剥離力を測定した。結果を表6に示す。
【0059】
【表5】
Figure 0004112866
【0060】
【表6】
Figure 0004112866
【0061】
この試験の結果、本発明の絶縁被膜を塗布した材料は高速コーティング試験において、何れも非常に良好な塗れ性を示し、極めて光沢の優れる均一な絶縁被膜を形成した。被膜特性においても、良好な耐食性、溶接性、打ち抜き性が得られた。しかしながら樹脂のTgが0℃と低い場合にはブロッキング性、スティッキング性がやや劣る傾向となった。一方、比較例のエマルジョン粒子径0.35μmの場合は、エッジ部に斑点の発生が多く見られ、絶縁被膜の均一性、光沢度等の外観が本発明に比しかなり劣る結果となった。
【0062】
又、本発明1,2と比較例1の溶液を用いて、ラインスピード180m/min.の条件で塗布性限界を調査した結果を図3に示す。本発明の超微粒樹脂エマルジョンでは付着量0.5g/m2程度の薄塗りでもほぼ均一に塗布が可能であった。これに対し、比較例の粒子径の大きい従来のエマルジョンの場合、付着量をかなり増加しないと外観の良い絶縁被膜が形成されなかった。この傾向はラインスピードを低下した場合には緩和される傾向であるものの、超微粒樹脂エマルジョンとの差異は歴然としており、工業生産での塗れ性の差異はカバーできるものでないことが確認された。又、活性剤を添加する方法も試みたが、抜本的な解決にはならなかった。
【0063】
【発明の効果】
本発明によれば、クロム酸、硼酸塩−有機樹脂エマルジョンによる半有機の絶縁被膜において、樹脂エマルジョンの粒子径を超微粒化することにより、鋼板へ塗布性の向上を得、高速ラインにおいて、均一で極めて優れた被膜性能を有する絶縁被膜を得る。これにより、薄塗り被膜での外観、耐食性、溶接性、打ち抜き性等の優れた無方向性電磁鋼板の製造が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】スティッキング性とブロッキング性の測定方法を示す図である。
【図2】本発明溶液として粒子径0.1μmの超微粒樹脂エマルジョンと比較例の0.25μmの粗粒樹脂エマルジョンを用いた場合の鋼板表面形状を顕微鏡観察した結果を示す図である。
【図3】本発明溶液と比較例溶液により、良好な塗れ性の得られる塗布量を調査した結果を示す図である。

Claims (4)

  1. 絶縁被膜が、クロム酸として100質量部に対し、粒子径0.04〜0.19μmの超微粒樹脂を含む樹脂エマルジョンを固形分として5〜50質量部含有し、樹脂中の粒子径0.04〜0.19μmの超微粒樹脂が、質量で、樹脂固形分の30%以上の樹脂であり、クロム酸を主体とする絶縁被膜剤により処理され、絶縁被膜成分中の有機物成分を有機Cとして2.5〜25.0%を含有し、膜厚0.5〜10.0μmの絶縁被膜を有することを特徴とする被膜性能の優れる無方向性電磁鋼板。
  2. 前記樹脂中の粒子径0.04〜0.19μmの超微粒樹脂残部が、粒子径0.35〜0.50μmの樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の被膜性能の優れる無方向性電磁鋼板。
  3. 前記樹脂が、Tg:20〜100℃のアクリル、スチレン、酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリカーボネート、メラミン、ポリウレタン、アルキド、イソシアネート、エポキシ樹脂の1種又は2種以上からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の被膜性能の優れる無方向性電磁鋼板。
  4. 前記絶縁被膜の表面粗度Ra値が0.1〜1.0μm、光沢度が70以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の被膜性能の優れる無方向性電磁鋼板。
    ただし、光沢度:L方向、光源入射角(θ):45度で測定。
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