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JP4116540B2 - 還元型補酵素q10を水溶液中から結晶化する方法 - Google Patents
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JP4116540B2 - 還元型補酵素q10を水溶液中から結晶化する方法 - Google Patents

還元型補酵素q10を水溶液中から結晶化する方法 Download PDF

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Description

技術分野
本発明は、還元型補酵素Q10の結晶化方法に関する。還元型補酵素Q10は、酸化型補酵素Q10に比べて高い経口吸収性を示し、優れた食品、栄養機能食品、特定保健用食品、栄養補助剤、栄養剤、飲料、飼料、動物薬、化粧品、医薬品、治療薬、予防薬等として有用な化合物である。
背景技術
還元型補酵素Q10は、例えば、合成、発酵、天然物からの抽出等の従来公知の方法により補酵素Q10を得た後、クロマトグラフィーにより流出液中の還元型補酵素Q10区分を濃縮する方法等により得られることが知られている(特開平10−109933号公報)。この場合には、上記還元型補酵素Q10中に含まれる酸化型補酵素Q10を、水素化ホウ素ナトリウム、亜ジチオン酸ナトリウム(次亜硫酸ナトリウム)等の還元剤を用いて還元した後、クロマトグラフィーによる濃縮を行っても良いこと、また、還元型補酵素Q10は、既存の高純度補酵素Q10(酸化型)に上記還元剤を作用させる方法によっても得られることも、当該公報中に記載されている。
しかしながら、このようにして得られる還元型補酵素Q10は、好適に結晶化させるのが必ずしも容易ではなく、酸化型補酵素Q10をはじめとする不純物を含有する低純度結晶、半固体状や油状物で得られやすい。また、なんとか結晶化できたとしても、スラリー性状等が悪いために、スラリーの流動性が悪くて撹拌しにくい、晶析缶から払い出しにくい、濾過性が悪い、収率が必ずしも高くないといった問題があった。
加えて、大量の有機溶媒を用いて結晶化する場合は、非常に不経済である。また、これら有機溶媒は製品に持ち込まれ、人が摂取する製品に対して好ましくない特性を付与しやすい。製品中の有機溶媒の残存量を痕跡量以下に減じるためには、有機溶媒の除去、乾燥等のための過度の時間や高価な製造装置を必要とする。
発明の要約
本発明は、上記に鑑み、還元型補酵素Q10結晶を得るための工業的規模での生産に適した優れた結晶化方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意研究した結果、還元型補酵素Q10の溶解性や流動性は、水を用いることにより好適に制御できること、及び、還元型補酵素Q10を水溶液中で結晶化させることにより、スラリー性状や収率等を改善して、良好品質の還元型補酵素Q10結晶を得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、還元型補酵素Q10を水溶液中で結晶化させることを特徴とする還元型補酵素Q10の結晶化方法に関する。
発明の詳細な開示
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に使用しうる還元型補酵素Q10は、例えば、合成、発酵、天然物からの抽出等の従来公知の方法により得ることができる。好ましくは、既存の高純度補酵素Q10等の酸化型補酵素Q10、あるいは、酸化型補酵素Q10と還元型補酵素Q10の混合物を、一般的な還元剤を用いて還元することにより得ることができる。
まずは、酸化型補酵素Q10を還元する方法について説明する。還元型補酵素Q10は、分子酸素によって酸化されて酸化型補酵素Q10を副生しやすいため、還元工程の溶媒として、酸化防護効果の高い溶媒を用いるのが好ましい。このような溶媒としては、炭化水素類、脂肪酸エステル類、エーテル類、及び、ニトリル類から選ばれる少なくとも1種を用いるのが好ましく、最も好ましくは炭化水素類である。
炭化水素類としては、特に制限されないが、例えば、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素等を挙げることができる。脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素が好ましく、脂肪族炭化水素がより好ましい。
脂肪族炭化水素としては、環状、非環状を問わず、又、飽和、不飽和を問わず、特に制限されないが、通常、炭素数3〜20、好ましくは、炭素数5〜12のものが用いられる。
具体例としては、例えば、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、2−メチルブタン、シクロペンタン、2−ペンテン、ヘキサン、2−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、1−ヘキセン、シクロヘキセン、ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2,3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、メチルシクロヘキサン、1−ヘプテン、オクタン、2,2,3−トリメチルペンタン、イソオクタン、エチルシクロヘキサン、1−オクテン、ノナン、2,2,5−トリメチルヘキサン、1−ノネン、デカン、1−デセン、p−メンタン、ウンデカン、ドデカン等を挙げることができる。
中でも、炭素数5〜8の飽和脂肪族炭化水素がより好ましく、炭素数5のペンタン、2−メチルブタン、シクロペンタン(ペンタン類と称す);炭素数6のヘキサン、2−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン(ヘキサン類と称す);炭素数7のヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2,3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン)、メチルシクロヘキサン、(ヘプタン類と称す);炭素数8のオクタン、2,2,3−トリメチルペンタン、イソオクタン、エチルシクロヘキサン(オクタン類と称す);及びこれらの混合物が好ましく用いられる。とりわけ、上記ヘプタン類は酸化からの防護効果が特に高い傾向がありさらに好ましく、ヘプタンが最も好ましい。
芳香族炭化水素としては、特に制限されないが、通常、炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜12、より好ましくは炭素数7〜10のものが用いられる。具体例としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、クメン、メシチレン、テトラリン、ブチルベンゼン、p−シメン、シクロヘキシルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、ジペンチルベンゼン、ドデシルベンゼン、スチレン等を挙げることができる。好ましくは、トルエン、キシレン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、クメン、メシチレン、テトラリン、ブチルベンゼン、p−シメン、シクロヘキシルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼンである。より好ましくは、トルエン、キシレン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、クメン、テトラリンであり、最も好ましくは、クメンである。
ハロゲン化炭化水素としては、環状、非環状を問わず、又、飽和、不飽和を問わず、特に制限されないが、非環状のものが好ましく用いられる。塩素化炭化水素、フッ素化炭化水素がより好ましく、塩素化炭化水素がさらに好ましい。また、炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜4、より好ましくは炭素数1〜2のものが用いられる。
具体例としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1,2−テトラクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、ヘキサクロロエタン、1,1−ジクロロエチレン、1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、1,2−ジクロロプロパン、1,2,3−トリクロロプロパン、クロロベンゼン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン等を挙げることができる。
好ましくは、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1−ジクロロエチレン、1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、1,1,1,2−テトラフルオロエタンである。より好ましくは、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、1,1,1,2−テトラフルオロエタンである。
脂肪酸エステル類としては、特に制限されないが、例えば、プロピオン酸エステル、酢酸エステル、ギ酸エステル等を挙げることができる。酢酸エステル、ギ酸エステルが好ましく、酢酸エステルがより好ましい。エステル基としては、特に制限されないが、炭素数1〜8のアルキルエステル、炭素数1〜8のアラルキルエステル、好ましくは炭素数1〜6のアルキルエステル、より好ましくは炭素数1〜4のアルキルエステルが用いられる。
プロピオン酸エステルとしては、例えば、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソペンチル等を挙げることができる。好ましくはプロピオン酸エチルである。
酢酸エステルとしては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、酢酸sec−ヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸ベンジル等を挙げることができる。好ましくは、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、酢酸sec−ヘキシル、酢酸シクロヘキシルである。より好ましくは、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルであり、最も好ましくは、酢酸エチルである。
ギ酸エステルとしては、例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸イソプロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸sec−ブチル、ギ酸ペンチル等を挙げることができる。好ましくは、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸ペンチルであり、最も好ましくは、ギ酸エチルである。
エーテル類としては、環状、非環状を問わず、又、飽和、不飽和を問わず、特に制限されないが、飽和のものが好ましく用いられる。通常、炭素数3〜20、好ましくは炭素数4〜12、より好ましくは炭素数4〜8のものが用いられる。
具体例としては、例えば、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、アニソール、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、メトキシトルエン、ジオキサン、フラン、2−メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等を挙げることができる。
好ましくは、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アニソール、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、メトキシトルエン、ジオキサン、2−メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルである。より好ましくは、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、アニソール、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルである。さらに好ましくは、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、アニソール等であり、最も好ましくは、メチルtert−ブチルエーテルである。
ニトリル類としては、環状、非環状を問わず、又、飽和、不飽和を問わず、特に制限されないが、飽和のものが好ましく用いられる。通常、炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜12、より好ましくは炭素数2〜8のものが用いられる。
具体例としては、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、マロノニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、スクシノニトリル、バレロニトリル、グルタロニトリル、ヘキサンニトリル、ヘプチルシアニド、オクチルシアニド、ウンデカンニトリル、ドデカンニトリル、トリデカンニトリル、ペンタデカンニトリル、ステアロニトリル、クロロアセトニトリル、ブロモアセトニトリル、クロロプロピオニトリル、ブロモプロピオニトリル、メトキシアセトニトリル、シアノ酢酸メチル、シアノ酢酸エチル、トルニトリル、ベンゾニトリル、クロロベンゾニトリル、ブロモベンゾニトリル、シアノ安息香酸、ニトロベンゾニトリル、アニソニトリル、フタロニトリル、ブロモトルニトリル、メチルシアノベンゾエート、メトキシベンゾニトリル、アセチルベンゾニトリル、ナフトニトリル、ビフェニルカルボニトリル、フェニルプロピオニトリル、フェニルブチロニトリル、メチルフェニルアセトニトリル、ジフェニルアセトニトリル、ナフチルアセトニトリル、ニトロフェニルアセトニトリル、クロロベンジルシアニド、シクロプロパンカルボニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル、シクロヘプタンカルボニトリル、フェニルシクロヘキサンカルボニトリル、トリルシクロヘキサンカルボニトリル等を挙げることができる。
好ましくは、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、スクシノニトリル、バレロニトリル、クロロプロピオニトリル、シアノ酢酸メチル、シアノ酢酸エチル、トルニトリル、ベンゾニトリルである。より好ましくは、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリルであり、最も好ましくは、アセトニトリルである。
上記溶媒の中でも、例えば、溶解度を高めるための適度な加温ができ、且つ、湿体からの溶剤の乾燥除去や結晶化濾液等からの溶剤回収の行いやすい沸点(1気圧下、約30〜150℃)、室温での取り扱い時でも室温以下に冷却した時でも固化しにくい融点(約20℃以下、好ましくは約10℃以下、より好ましくは約0℃以下)を持ち、粘性が低い(20℃において約10cp以下等)等の、沸点、粘性等の性質を考慮して選定するのが好ましい。工業的な作業上の観点から、常温で揮発し難いものが好ましく、例えば、沸点が約80℃以上のものが好ましく、約90℃以上のものがより好ましい。
上記還元反応の溶媒のうち、水と相溶性の低い溶媒を用いるのが特に好ましく、これにより、後述する還元剤や還元剤に由来する不純物を水相に抽出、除去し、還元型補酵素Q10を効率的に精製、取得するのを助成する。水と相溶性の低い溶媒としては、上記溶媒のうち、例えば上記炭化水素類や脂肪酸エステル類等が挙げられる。
還元型補酵素Q10は高濃度の溶液ほど酸化されにくい傾向にある。上記溶媒に対して還元型補酵素Q10は高い溶解性を示し、上記溶媒はこの点でも酸化防護に好適である。還元型補酵素Q10の酸化を防護するために好ましい濃度は、溶媒の種類等により一律に規定できないが、上記溶媒に対する還元型補酵素Q10の濃度として、通常1w/w%以上、好ましくは2w/w%以上である。上限は、特に制限されないが、実際的な操作性という観点から、400w/w%以下、好ましくは200w/w%以下、より好ましくは100w/w%以下、さらに好ましくは50w/w%以下である。
このように、上記溶媒の使用によって、望ましくない酸素の副反応は、還元工程を通して最小化される。
また、結晶化に用いる還元型補酵素Q10は、酸化型補酵素Q10の油状物を水溶液中で還元することによっても得ることができる。この方法においては、有機溶媒を用いなくても還元型補酵素Q10を合成することができ、有機相への抽出、濃縮等の付加的な操作を必要とせず、操作時間を短縮し、酸化型補酵素Q10の副生を最小化することができる。
還元反応は、上記の溶媒中、水素化金属化合物、鉄(金属又は塩としての鉄)、亜鉛(金属としての亜鉛)、次亜硫酸類、アスコルビン酸類等を還元剤として用いて実施することができる。
水素化金属化合物としては、特に制限されないが、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化リチウムアルミニウム等を挙げることができる。上記水素化金属化合物の使用量は、水素化金属化合物の種類により異なり、一律に規定できないが、通常、理論水素当量の1〜3倍量で好適に実施できる。
鉄又は亜鉛を用いる還元は、通常、酸を使用して実施される。使用する酸としては、特に制限されないが、例えば、酢酸等の脂肪酸、メタンスルホン酸等のスルホン酸、塩酸や硫酸等の無機酸等を挙げることができる。好ましくは無機酸であり、より好ましくは硫酸である。
鉄の使用量は、特に制限されないが、酸化型補酵素Q10の仕込み重量に対して、例えば、約1/5重量以上で好適に実施できる。上限は特に制限されないが、経済性の観点等から、約2倍重量以下である。なお、鉄は、金属鉄のみならず、硫酸鉄(II)等の塩の形態でも使用できる。
亜鉛の使用量は、特に制限されないが、酸化型補酵素Q10の仕込み重量に対して、例えば、約1/10重量以上で好適に実施できる。上限は特に制限されないが、経済性の観点等から、約2倍重量以下である。
次亜硫酸類としては特に制限されず、通常、次亜硫酸の塩である。次亜硫酸の塩としては特に制限されず、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等が好ましく、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩がより好ましく、ナトリウム塩が最も好ましい。上記次亜硫酸類の使用量は、特に制限されないが、通常、酸化型補酵素Q10の仕込み重量に対して、約1/5重量以上、好ましくは約2/5重量以上、より好ましくは約3/5重量以上である。多くても特に支障はないが、経済的な観点から、通常、約2倍重量以下、好ましくは同重量以下で用いられる。よって、約2/5重量〜約同重量の範囲でより好適に実施できる。
アスコルビン酸類としては、特に制限されず、例えば、アスコルビン酸のみならず、rhamno−アスコルビン酸、arabo−アスコルビン酸、gluco−アスコルビン酸、fuco−アスコルビン酸、glucohepto−アスコルビン酸、xylo−アスコルビン酸、galacto−アスコルビン酸、gulo−アスコルビン酸、allo−アスコルビン酸、erythro−アスコルビン酸、6−デスオキシアスコルビン酸等のアスコルビン酸に類するものが挙げられ、また、それらのエステル体や塩であってもかまわない。さらに、これらはL体、D体、或いは、ラセミ体であっても良い。より具体的には、例えば、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸パルミテート、L−アスコルビン酸ステアレート、D−arabo−アスコルビン酸等を挙げることができる。還元型補酵素Q10の製造において、上記アスコルビン酸類をいずれも好適に使用しうるが、生成した還元型補酵素Q10との分離のしやすさ等を考慮すると、上記のアスコルビン酸類のうち、特に水溶性のものが好適に用いられ、最も好ましくは、入手容易性、価格等の観点から、L−アスコルビン酸、D−arabo−アスコルビン酸等のフリー体である。
上記のアスコルビン酸類の使用量は、特に制限されず、酸化型補酵素Q10を還元型補酵素Q10に変換しうる有効量であればよく、酸化型補酵素Q10に対して、通常1倍モル量以上、好ましくは1.2倍モル量以上である。上限は特に制限されないが、経済性を考慮して、通常10倍モル量以下、好ましくは5倍モル量以下、より好ましくは3倍モル量以下である。
上記還元剤のうち、還元能力、収率、品質といった観点から、亜鉛、次亜硫酸類、アスコルビン酸類が好ましく、なかでも、還元型補酵素Q10結晶に、還元剤や還元剤に由来する不純物を痕跡量以下しか持ち込ませないという観点からは、次亜硫酸類(具体的には、次亜硫酸塩)、アスコルビン酸類(特に、フリー体や塩)がより好ましい。
還元反応においては、後述するアルコール類及び/又は水を好適に併用することができる。水は、特に還元剤として鉄、亜鉛、次亜硫酸類を用いる場合に好適である。還元剤として水素化金属化合物やアスコルビン酸類を用いる場合には、アルコール類を併用することができる。水、アルコール類の併用は、これら水、アルコール類の特性が発揮され、反応速度の向上や反応収率の向上等に寄与する。
以下に好ましい還元方法について詳細に述べる。
上記次亜硫酸類を用いる還元は、水を併用して、上記の炭化水素類、脂肪酸エステル類、エーテル類、及び、ニトリル類から選ばれる少なくとも1種の有機溶媒と水との混合溶媒系で実施するのが好ましい。その際、反応時のpHは、収率等の観点から、通常pH7以下、好ましくはpH3〜7、より好ましくはpH3〜6で実施される。上記pHは、酸(例えば、塩酸や硫酸等の無機酸)や塩基(例えば、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物)を用いて、調整することができる。
上記次亜硫酸類を用いる還元において、水の使用量は、特に制限されず、還元剤である次亜硫酸類を適度に溶解する量であれば良く、例えば、上記次亜硫酸類の水に対する重量が、通常30w/w%以下、好ましくは20w/w%以下になるように調整するのが良い。又、生産性等の観点から、通常1w/w%以上、好ましくは5w/w%以上、より好ましくは10w/w%以上であるのが良い。
上記アスコルビン酸類を用いる還元も、上記の炭化水素類、脂肪酸エステル類、エーテル類、及び、ニトリル類のうち、特に水と相溶性の高い溶媒、なかでも水と相溶性の高いエーテル類及びニトリル類、具体的には、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル等を用いて実施することができるが、後述するアルコール類及び/又はケトン類(好ましくは、水と相溶性の高いアルコール類及び/又はケトン類(具体的には、アルコール類としては、炭素数1〜5、好ましくは炭素数1〜4、より好ましくは炭素数1〜3の1価又は2価(好ましくは1価)のアルコール、ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン等))を使用するのが特に好ましい。すなわち、アスコルビン酸類を用いる還元においては、アルコール類及び/又は水溶性有機溶媒(例えば、上記水と相溶性の高いエーテル類、ニトリル類、ケトン類等)を用いるのが好ましい。
又、アスコルビン酸類を用いる還元においては、反応促進の観点から(例えば、反応温度の低下、反応時間の短縮等)、塩基性物質や亜硫酸水素塩等の反応促進効果を有する添加剤を共存させて実施することができる。
上記塩基性物質としては、特に制限されず、例えば、無機化合物、有機化合物を問わず使用しうる。上記無機化合物としては、特に制限されないが、例えば、金属(好ましくは、アルカリ金属、アルカリ土類金属等)の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩やアンモニア等を挙げることができる。その代表的なものとして、例えば、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩、炭酸マグネシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩等を挙げることができる。上記有機化合物としては、特に制限されないが、例えば、トリエチルアミン等のアミン等を挙げることができる。上記の塩基性物質のうち、金属(好ましくは、アルカリ金属、アルカリ土類金属等)の炭酸塩、炭酸水素塩、アンモニア等の無機化合物;トリエチルアミン等のアミン等の有機化合物といった弱い塩基性物質(弱塩基又は弱アルカリ)を好ましく使用できる。より好ましくは上記の弱塩基性の無機化合物である。
また、亜硫酸水素塩としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム等のアルカリ金属亜硫酸水素塩等を好適なものとして挙げることができる。
上記添加剤の量は、期待する程度の反応促進効果を発揮しうる量(有効量)であればよく、特に制限されないが、経済性も考慮して、アスコルビン酸類に対して、通常20倍モル量以下、好ましくは10倍モル量以下、より好ましくは5倍モル量以下、さらに好ましくは2倍モル量以下である。下限は、特に制限されないが、通常0.01倍モル量以上、好ましくは0.05倍モル量以上、より好ましくは0.1倍モル量以上、さらに好ましくは0.2倍モル量以上である。
還元反応は、強制流動下に実施するのが好ましい。単位容積当たりの撹拌所要動力として、通常約0.01kW/m以上、好ましくは約0.1kW/m以上、より好ましくは約0.3kW/m以上の流動が好ましい。上記の強制流動は、通常、撹拌翼の回転により与えられるが、上記流動が得られれば必ずしも撹拌翼を用いる必要はなく、例えば、液の循環による方法等を利用しても良い。
還元温度は、還元剤の種類や量によって異なり、一律に規定できない。例えば、次亜硫酸類を用いる還元においては、通常100℃以下、好ましくは80℃以下、より好ましくは60℃以下で実施される。下限は、系の固化温度である。よって、還元は、通常0〜100℃程度、好ましくは0〜80℃程度、より好ましくは0〜60℃程度で好適に実施できる。また、アスコルビン酸類を用いる還元においては、通常30℃以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上で実施される。上限は系の沸点である。よって、還元は、通常30〜150℃程度、好ましくは40〜120℃程度、より好ましくは50〜100℃程度で好適に実施できる。酸化型補酵素Q10の油状物を還元する場合は、その純度等にもよるが、通常45℃以上、好ましくは48℃以上、より好ましくは50℃以上で実施され、これにより還元型補酵素Q10の油状物を得ることができる。
反応濃度は、特に制限はないが、溶媒の重量に対する酸化型補酵素Q10の重量として、通常約1w/w%以上、好ましくは3w/w%以上、より好ましくは10w/w%以上、さらに好ましくは15w/w%以上である。上限は、特に制限されないが、通常約60w/w%以下、好ましくは50w/w%以下、より好ましくは40w/w%以下、さらに好ましくは30w/w%以下である。よって、反応濃度は、通常約1〜60w/w%、好ましくは約3〜50w/w%、より好ましくは約10〜40w/w%で好適に実施できる。
還元反応は、還元剤の種類や量によって異なり、一律に規定できないが、通常、48時間以内、好ましくは24時間以内、より好ましくは10時間以内、さらに好ましくは5時間以内に完了させることができる。
還元反応後は、生成した還元型補酵素Q10を含有する有機相、或いは、還元型補酵素Q10の油状物を採取(例えば、分液、抽出、濃縮等により採取)し、必要に応じて(好ましくは)、さらに該有機相を、例えば水や食塩水等で繰り返し水洗して、夾雑物を除去した後、そのまま、又は、所望の他の溶媒に溶解又は置換して、結晶化に用いることができる。
他の溶媒としては、例えば、前述した、あるいは後述する、炭化水素類、脂肪酸エステル類、エーテル類、アルコール類、脂肪酸類、ケトン類、窒素化合物類(ニトリル類、アミド類を含む)、硫黄化合物類等を挙げることができる。
なお、以上の還元反応〜後処理の一連の工程は、脱酸素雰囲気下で実施するのが極めて好ましく、特に次亜硫酸類を用いた還元反応では、還元反応収率向上や還元剤量の削減に大きく寄与することも見い出した。脱酸素雰囲気は、不活性ガスによる置換、減圧、沸騰やこれらを組み合わせることにより達成できる。少なくとも、不活性ガスによる置換、即ち、不活性ガス雰囲気を用いるのが好適である。上記不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、水素ガス、炭酸ガス等を挙げることができ、好ましくは窒素ガスである。
次に、本発明の還元型補酵素Q10の結晶化について説明する。
結晶化に用いる還元型補酵素Q10は、例えば、合成、発酵、天然物からの抽出等の従来公知の方法により得ることができる。好ましくは、酸化型補酵素Q10を還元することにより得られたものであり、より好ましくは、前記の本発明の還元反応を用いて得られた還元型補酵素Q10の溶液又は油状物である。さらに好ましくは、酸化型補酵素Q10の油状物を次亜硫酸類を用いて水溶液中で還元することにより得られたもの、又は、酸化型補酵素Q10をアルコール類及び/又は水溶性有機溶媒を用いて還元することにより得られたものである。
本発明の結晶化法は、酸化型補酵素Q10を比較的多く含有するものについても適用できるが、上記の還元方法等により調製された高純度の還元型補酵素Q10に対して特に有効である。
本発明においては、還元型補酵素Q10の結晶化を水溶液中で実施する。水の使用は、経済性はもちろんのこと、工業的な作業上の安全性や製品安全性に寄与する。また、上記水の使用は、還元型補酵素Q10のスラリー性状や収率の改善にも寄与すると共に、還元反応で用いる還元剤や還元剤に由来する不純物を母液に残存させ、還元型補酵素Q10を効率的に単離するのを助成しうる。さらに、上記水の使用、好ましくは塩類を含む水の使用は、還元型補酵素Q10が分子酸素によって酸化されるのを好適に防護しうる。
上記塩類としては、特に制限されないが、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属等と、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子;硫酸等の無機酸や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等の有機酸からプロトンを除いた残基とから構成される塩類等が挙げられる。なかでも無機塩類が好ましく、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等がより好ましい。
上記塩類の濃度としては、高塩濃度であるのが好ましく、通常3w/w%以上、好ましくは5w/w%以上、より好ましくは10w/w%以上、さらに好ましくは、飽和もしくは飽和に近い濃度で水に溶解させるのが良い。
上記還元型補酵素Q10の結晶化方法としては、冷却による結晶化、濃縮による結晶化、溶媒置換による結晶化等の一般的な結晶化法をさらに用いることができ、好ましくは冷却による結晶化を用いる又は併用するものである。特に好ましい実施態様として、以下の2つの方法を挙げることができる。
(1)還元型補酵素Q10を含有する有機溶媒の溶液(例えば反応液や抽出液等)から、水に置換する(水の組成比を高める)ことにより結晶化させる方法。
(2)還元型補酵素Q10の油状物を水溶液中で結晶化する方法。
なお、上記2つの方法においても、冷却による結晶化を用いる又は併用することがより好ましい。
まず、(1)の方法について説明する。
還元型補酵素Q10を含有する有機溶媒としては、特に制限されないが、例えば、炭化水素類、脂肪酸エステル類、エーテル類、アルコール類、脂肪酸類、ケトン類、窒素化合物類(ニトリル類、アミド類を含む)、硫黄化合物類等を挙げることができる。
炭化水素類、脂肪酸エステル類、エーテル類、及び、ニトリル類としては、前述の酸化型補酵素Q10の還元についての説明で、反応溶媒として例示したものを好適に使用することができる。
アルコール類としては、環状、非環状を問わず、又、飽和、不飽和を問わず、特に制限されないが、飽和のものが好ましく用いられる。通常、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜6のものである。さらに好ましくは、炭素数1〜5の1価アルコール、炭素数2〜5の2価アルコール、炭素数3の3価アルコールである。
1価アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、イソペンチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、3−メチル−2−ブタノール、ネオペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−ノナノール、1−デカノール、1−ウンデカノール、1−ドデカノール、アリルアルコール、プロパルギルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、1−メチルシクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノール、4−メチルシクロヘキサノール等を挙げることができる。
好ましくは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、イソペンチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、3−メチル−2−ブタノール、ネオペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、シクロヘキサノールである。より好ましくは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、イソペンチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、3−メチル−2−ブタノール、ネオペンチルアルコールである。さらに好ましくは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、2−メチル−1−ブタノール、イソペンチルアルコールであり、最も好ましくは、エタノールである。
2価アルコールとしては、例えば、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール等を挙げることができる。好ましくは、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオールであり、最も好ましくは、1,2−エタンジオールである。
3価アルコールとしては、例えばグリセリン等を好適に用いることができる。
脂肪酸類としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等を挙げることができる。好ましくは、ギ酸、酢酸であり、最も好ましくは酢酸である。
ケトン類としては、特に制限されず、通常炭素数3〜6のものが好適に用いられる。具体例としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン等を挙げることができる。好ましくは、アセトン、メチルエチルケトンであり、最も好ましくは、アセトンである。
ニトリル類を除く窒素化合物類としては、例えば、ニトロメタン、トリエチルアミン、ピリジン、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を挙げることができる。
硫黄化合物類としては、例えば、ジメチルスルホキシド、スルホラン等を挙げることができる。
上記溶媒の中でも、沸点、粘性等の性質(例えば、溶解度を高めるための適度な加温ができ、且つ、湿体からの溶剤の乾燥除去や結晶化濾液等からの溶剤回収の行いやすい沸点(1気圧下、約30〜150℃)、室温での取り扱い時及び室温以下に冷却した時も固化しにくい融点(約20℃以下、好ましくは約10℃以下、より好ましくは約0℃以下)を持ち、粘性が低い(20℃において約10cp以下等))を考慮して選定するのが特に好ましい。工業的な作業上の観点から、常温で揮発し難いものが好ましい。
上記溶媒のうち、特に、前述の還元型補酵素Q10の酸化防護の観点からは、炭化水素類、脂肪酸エステル類、エーテル類、及び、ニトリル類を好ましく用いることができ、また、還元型補酵素Q10の溶解性を好適に減じて高い収率を得る観点からは、アルコール類、脂肪酸類、エーテル類、ケトン類、及び、ニトリル類を好ましく用いることができる。工業的な利用上の観点からは、例えば、炭化水素類、アルコール類を好ましく用いることができる。
上記(1)の方法において、還元型補酵素Q10を含有する有機溶媒の溶液から、水に置換する方法としては、例えば、有機溶媒を濃縮・除去しつつ水の比率を高める方法等を挙げることができる。さらに、必要に応じ、後述する冷却、種晶添加等の操作を適宜組み合わせることができる。
次に、(2)の方法、即ち、還元型補酵素Q10の油状物を水溶液中で結晶化する方法について説明する。この方法によれば、大粒径の還元型補酵素Q10結晶を得ることができ、濾過性を格段に向上させうる。
結晶化は、例えば、還元型補酵素Q10の油状物に水を添加して行ってもよく、反対に、水に還元型補酵素Q10の油状物を添加して行ってもよい。また、還元型補酵素Q10の油状物と水との混合物を冷却することにより結晶化させても良い。より好ましくは、還元型補酵素Q10を含有する有機溶媒と水との混合溶媒の溶液から、還元型補酵素Q10又は還元型補酵素Q10を主成分とする濃縮物の融解温度以上の温度で有機溶媒を留去することにより、系中で油状物とし、これを冷却して、結晶化する方法である。
上記の融解温度以上の温度は、還元型補酵素Q10の純度等にもよるが、通常45℃以上、好ましくは48℃以上、より好ましくは50℃以上である。上限は特に制限されないが、通常、100℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましく、60℃以下がさらに好ましい。
以上のような本発明の結晶化方法において、還元型補酵素Q10の結晶化温度(結晶化時の冷却温度)は、還元型補酵素Q10の純度にもより、一律に規定することは難しいが、収率等の観点より、通常48℃以下、好ましくは45℃以下、より好ましくは40℃以下、さらに好ましくは30℃以下で実施される。下限は、系の固化温度である。よって、結晶化温度0〜30℃程度で、特に好適に結晶化を実施できる。
結晶化時の単位時間当たりの結晶化量、つまり結晶化速度を制御するのが好ましい。好ましい単位時間当たりの結晶化量は、例えば、単位時間当たり全結晶化量の約50%量が結晶化する速度以下(即ち、最大で50%量/時間)であり、好ましくは、単位時間当たり全結晶化量の約25%量が結晶化する速度以下(即ち、最大で25%量/時間)である。
尚、冷却による結晶化の場合、冷却速度は、通常、約40℃/時間以下、好ましくは約20℃/時間以下である。
過飽和の形成を抑制してスムースに核化・結晶成長を行うためや、粒径の整った結晶を得るため、又、高品質化の観点から、上記結晶化は強制流動下に実施するのが好ましい。単位容積当たりの撹拌所要動力として、通常約0.01kW/m以上、好ましくは約0.1kW/m以上、より好ましくは約0.3kW/m以上の流動が好ましい。上記の強制流動は、通常、撹拌翼の回転により与えられるが、上記流動が得られれば必ずしも撹拌翼を用いる必要はなく、例えば、液の循環による方法等を利用しても良い。
結晶化に際しては、過飽和の形成を抑制し、スムースに核化・結晶成長を行うために、種晶を添加することも好ましく行われる。
結晶化濃度は、結晶化終了時の濃度、つまり、結晶化終了時の全溶媒の重量に対する還元型補酵素Q10の重量として、約15w/w%以下、好ましくは約13w/w%以下、より好ましくは約10w/w%以下である。生産性の観点から、通常、濃度の下限は約1w/w%以上であり、好ましくは約2w/w%以上である。
このようにして得られる還元型補酵素Q10の結晶は、例えば、遠心分離、加圧濾過、減圧濾過等による固液分離、さらに、必要に応じてケーキ洗浄を行い、湿体として取得することができる。また、さらに内部を不活性ガスに置換した減圧乾燥器(真空乾燥器)に湿体を仕込み、減圧下、乾燥し、乾体として取得することができるし、乾体として取得するのが好ましい。
本発明の結晶化方法は、脱酸素雰囲気下で実施することにより、酸化防止効果を高めることができる。脱酸素雰囲気は、不活性ガスによる置換、減圧、沸騰やこれらを組み合わせることにより達成できる。少なくとも、不活性ガスによる置換、即ち、不活性ガス雰囲気を用いるのが好適である。上記不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、水素ガス、炭酸ガス等を挙げることができ、好ましくは窒素ガスである。
本発明により、高品質の還元型補酵素Q10結晶を作業性、経済性良く得ることができる。本発明により得られる還元型補酵素Q10結晶は、極めて高品質であり、還元型補酵素Q10/酸化型補酵素Q10の重量比は、96/4以上、好ましくは98/2以上、より好ましくは99/1以上が期待できる。
発明を実施するための最良の形態
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。また、実施例中の還元型補酵素Q10の純度、還元型補酵素Q10と酸化型補酵素Q10との重量比は下記HPLC分析により求めたが、得られた還元型補酵素Q10の純度は本発明における純度の限界値を規定するものではなく、また、同様に、還元型補酵素Q10と酸化型補酵素Q10との重量比も、その上限値を規定するものではない。
(HPLC分析条件)
カラム;SYMMETRY C18(Waters製),250mm(長さ),4.6mm(内径)、移動相;COH:CHOH=4:3(v:v)、検出波長;210nm、流速;1ml/min、還元型補酵素Q10の保持時間;9.1min、酸化型補酵素Q10の保持時間;13.3min。
(実施例1)
100gの酸化型補酵素Q10(純度99.4%)を撹拌しながら48℃で融解させた。この油状物に、撹拌(撹拌所要動力0.3kW/m)しながら、還元剤として次亜硫酸ナトリウム(純度75%以上)100gに1000mlの水を加えて溶解させた水溶液を、徐々に添加し、48℃、pH4〜6で還元反応を行った。油状物を含む反応液から水相を除去し、脱気した48℃の飽和食塩水1000gで油状物を6回洗浄した後、水相を除去することにより、還元型補酵素Q10の油状物を得た。この油状物に、脱気した48℃の水1500gを添加し、撹拌(撹拌所要動力0.3kW/m)しながら、2℃まで冷却して白色のスラリーを得た(スラリーの流動性は良好)。なお、以上すべての操作は窒素雰囲気下で実施した。得られたスラリーを減圧濾過し、湿結晶を、冷エタノール、冷水、冷エタノールで順に洗浄(洗浄に用いた冷溶媒の温度は2℃)して、さらに、湿結晶を減圧乾燥(20〜40℃、1〜30mmHg)することにより、白色の乾燥結晶97gを得た(有姿収率97モル%)。得られた結晶の還元型補酵素Q10/酸化型補酵素Q10の重量比は99.4/0.6、還元型補酵素Q10純度は99.2%であった。
(実施例2)
100gの酸化型補酵素Q10(純度99.4%)を25℃で1000gのヘプタンに溶解させた。撹拌(撹拌所要動力0.3kW/m)しながら、還元剤として次亜硫酸ナトリウム(純度75%以上)100gに1000mlの水を加えて溶解させた水溶液を、徐々に添加し、25℃、pH4〜6で還元反応を行った。2時間後、反応液から水相を除去し、脱気した飽和食塩水1000gでヘプタン相を6回水洗した。このヘプタン相に水1000gを添加し、撹拌(撹拌所要動力0.3kW/m)しながら、30℃にて減圧することによりヘプタンを留去して白色のスラリーを得た。このスラリーは流動性が良好であり、結晶化容器より容易に払い出しが可能であった。なお、以上すべての操作は窒素雰囲気下で実施した。得られたスラリーを減圧濾過し、湿結晶を冷エタノール、冷水、冷エタノールで順に洗浄(洗浄に用いた冷溶媒の温度は2℃)して、さらに、湿結晶を減圧乾燥(20〜40℃、1〜30mmHg)することにより、白色の乾燥結晶97gを得た(有姿収率97モル%)。得られた結晶の還元型補酵素Q10/酸化型補酵素Q10の重量比は99.5/0.5、還元型補酵素Q10純度は99.2%であった。
(実施例3)
1000gのエタノール中に、100gの酸化型補酵素Q10(純度99.4%)、60gのL−アスコルビン酸、30gの炭酸水素ナトリウムを加え、78℃にて撹拌し、還元反応を行った。3時間後、50℃まで冷却し、同温を保持しながらヘプタン1000gと脱気した水1000gを加えた。25℃まで冷却後、水相を除去し、さらに脱気した飽和食塩水1000gで6回水洗し、水相を除去した。このヘプタン溶液から48℃にてヘプタンを留去し、還元型補酵素Q10の油状物を得た。この油状物に脱気した48℃の水1500gを添加し、撹拌(撹拌所要動力0.3kW/m)しながら2℃まで冷却し、白色のスラリーを得た(実施例1と同じくスラリーの流動性は良好)。なお、以上すべての操作は窒素雰囲気下にて実施した。得られたスラリーを減圧濾過し、湿結晶を冷エタノール、冷水、冷エタノールで順に洗浄(洗浄に用いた冷溶媒の温度は2℃)して、さらに、湿結晶を減圧乾燥(20〜40℃、1〜30mmHg)することにより、白色の乾燥結晶97gを得た(有姿収率97モル%)。得られた結晶の還元型補酵素Q10/酸化型補酵素Q10の重量比は99.4/0.6、還元型補酵素Q10純度は99.2%であった。
(比較例1)
実施例2とまったく同様にして、脱気した飽和食塩水で洗浄後の還元型補酵素Q10のヘプタン相を得た。このヘプタン相を撹拌(撹拌所要動力0.3kw/m)しながら、2℃まで冷却して白色のスラリーを得た。このスラリーは流動性に乏しく、実施例1と比較して、結晶化容器より容易に払い出しが困難であった。なお、以上すべての操作は窒素雰囲気下で実施した。得られたスラリーを減圧濾過し、湿結晶を冷ヘプタン、冷エタノール、冷水、冷エタノール、冷ヘプタンで順に洗浄(洗浄に用いた冷溶媒の温度は2℃)して、さらに、湿結晶を減圧乾燥(20〜40℃、1〜30mmHg)することにより、白色の乾燥結晶93gを得た(有姿収率93モル%)。得られた結晶の還元型補酵素Q10/酸化型補酵素Q10の重量比は99.6/0.4、還元型補酵素Q10純度は99.3%であった。
(参考例1)
表1に示す各種溶媒20gに1gの還元型補酵素Q10(還元型補酵素Q10/酸化型補酵素Q10の重量比は99.6/0.4)を、25℃下で溶解した。大気中、25℃で24時間の撹拌後、液中の還元型補酵素Q10/酸化型補酵素Q10の重量比を測定した結果を表1に示す。
Figure 0004116540
(参考例2)
表2に示す各種溶媒100gに1gの還元型補酵素Q10(還元型補酵素Q10/酸化型補酵素Q10の重量比は99.6/0.4)を、35℃下で溶解した。大気中、35℃で24時間の撹拌後、液中の還元型補酵素Q10/酸化型補酵素Q10の重量比を測定した結果を表2に示す。
Figure 0004116540
産業上の利用可能性
本発明は、上述の構成よりなるので、工業的規模での作業性、経済性に優れた方法で、高品質の還元型補酵素Q10結晶を簡便且つ効率的に得ることができる。

Claims (15)

  1. 還元型補酵素Q10を水溶液中で結晶化させることを特徴とする還元型補酵素Q10の結晶化方法。
  2. 還元型補酵素Q10を含有する有機溶媒の溶液から、水に置換することにより、還元型補酵素Q10の結晶化を行う請求の範囲第1項記載の結晶化方法。
  3. 還元型補酵素Q10の油状物を水溶液中で結晶化させる請求の範囲第1項記載の結晶化方法。
  4. 結晶化は、還元型補酵素Q10の油状物と水との混合物を冷却することにより行う請求の範囲第3項記載の結晶化方法。
  5. 還元型補酵素Q10を含有する有機溶媒と水との混合溶媒の溶液から、還元型補酵素Q10又は還元型補酵素Q10を主成分とする濃縮物の融解温度以上の温度で有機溶媒を留去することにより、系中で還元型補酵素Q10の油状物とし、これを冷却して結晶化する請求の範囲第4項記載の結晶化方法。
  6. 冷却による結晶化を用いる又は併用する請求の範囲第1項〜5項のいずれかに記載の結晶化方法。
  7. 結晶化温度は48℃以下である請求の範囲第1項〜6項のいずれかに記載の結晶化方法。
  8. 結晶化は、単位容積当たりの撹拌所要動力として0.01kW/m以上の強制流動下に実施する請求の範囲第1項〜7項のいずれかに記載の結晶化方法。
  9. 結晶化に際して種晶を添加する請求の範囲第1項〜8項のいずれかに記載の結晶化方法。
  10. 結晶化速度は、単位時間当たり全結晶化量の50%量が結晶化する速度以下である請求の範囲第1項〜9項のいずれかに記載の結晶化方法。
  11. 結晶化を脱酸素雰囲気下で行う請求の範囲第1項〜10項のいずれかに記載の結晶化方法。
  12. 結晶化に用いる還元型補酵素Q10は、酸化型補酵素Q10を還元することにより得られたものである請求の範囲第1項〜11項のいずれかに記載の結晶化方法。
  13. 結晶化に用いる還元型補酵素Q10は、酸化型補酵素Q10の油状物を次亜硫酸類を用いて水溶液中で還元することにより得られたものである請求の範囲第1項〜12項のいずれかに記載の結晶化方法。
  14. 結晶化に用いる還元型補酵素Q10は、酸化型補酵素Q10をアルコール類及び/又は水溶性有機溶媒を用いて還元することにより得られたものである請求の範囲第1項〜12項のいずれかに記載の結晶化方法。
  15. 還元反応で用いる還元剤や還元剤に由来する不純物を、還元型補酵素Q10の結晶化の際に母液に除去する請求の範囲第1項〜14項のいずれかに記載の結晶化方法。
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