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JP4119959B2 - 有色皮膜上への透明保護膜の形成方法 - Google Patents
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有色皮膜上への透明保護膜の形成方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は紫色ないし黒色等の新規な有色皮膜上への透明保護膜の形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
貴金属装身具業界では、消費者ニーズに対応した新商品の開発が急務となっている。現在、装飾用貴金属素材は、本物志向の高まりから金、プラチナ等を使用する機会が多くなっているが、これらの素材は、有色金属としてK18の黄金色、プラチナの白色に限られているので、個性化、差別化が進んでいる状況の中でデザイン的に限界がきている。
【0003】
したがって、素材の特性を生かし、貴金属としての品位を損なうことなく、新しい有色皮膜の形成ができればオリジナル商品の開発が可能となる。その1例として、特開昭60−5872号公報に示されたような、金製品にアルミニウムを蒸着させ、600℃の熱拡散により紫色であるAuAl2を生成する手段が開発されている。
【0004】
しかしながら、上記従来例では素材が金製品に限られることや、金およびアルミニウムの熱拡散では、紫色のAuAl2以外のAuAl、Au2Al等の金属間化合物の生成により、有色皮膜の色合いが抑えられるという欠点があった。
【0005】
さらに上記蒸着皮膜は耐久性に問題があり、いまだに実用化されておらず、製品となっていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明者等は密着性に優れ、硬い皮膜の形成が可能なイオンプレーティング法により有色皮膜の形成技術について鋭意研究を進めてきた。
【0007】
そして、金アルミニウム合金を蒸発材料として種々の実験を行なってきた結果、紫色を呈する皮膜の再現性のある形成条件を得ることができるようになってきたが、上記高周波イオンプレーティング法による紫色皮膜からなる有色皮膜は、人口汗試験で1時間以内に変色してしまうという問題点があった。
【0008】
一方、眼鏡レンズやカメラレンズ等の光学用の透明保護膜として種々の材料が用いられている。しかしながら、装身具用の皮膜としては高い硬度を持ちながら変色しない、いわゆる耐久性が不可欠である。その点で、上記光学用に通常使用されている約1μm未満の反射防止膜程度の膜厚の透明保護膜では、装身具として使用したときに、汗等によって紫色の有色皮膜に変色が起きてしまうという欠点があった。
【0009】
そこでこの発明の有色皮膜上への透明保護膜の形成方法は、金アルミニウム合金を蒸発用金属として使用して、鮮やかな紫色の有色皮膜を有する製品を得ることができ、さらに使用中に皮膜が剥げたり、変色したりするといった欠点のない、商品価値において非常に優れた貴金属装身具を提供しようとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
すなわちこの発明の有色皮膜上への透明保護膜の形成方法は、金アルミニウム合金からなる紫色の有色皮膜の耐食性を高めるため、イオンプレーティング法により第1層に膜厚を約2〜4μmとした酸化アルミニウム(Al23)、第2層に膜厚を約1〜1.6μmとしたシリカ(SiO2)の2層構造からなる透明保護膜を順次形成したことを特徴とするものである。
【0011】
この発明で好適に使用できる金アルミニウム合金としては、金約80%、アルミニウム約20%の金を主成分とする合金であることが望ましい。
【0012】
この発明の有色皮膜上への透明保護膜の形成方法は以上のように構成したので、得た有色皮膜を形成した貴金属装身具は鮮やかな紫色を呈しており、新規で装飾性の高い貴金属装身具を提供することが可能となった。
【0013】
またこの発明の有色皮膜上への透明保護膜の形成方法は以上のように構成したので、実用上充分な耐久性のある皮膜を得ることができた。しかも得た皮膜は平滑で緻密な構造を有するとともに、肌荒れやピンホールといった欠点のない、商品価値において非常に優れた製品を得ることができるようになった。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の有色皮膜上への透明保護膜の形成方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0015】
【実施例】
図1はこの発明で得ようとする有色皮膜を形成した貴金属装身具の例で、2色の色調を配した指輪を示すものである。そして指輪1表面の薄い色の部分2は金を示し、濃い色の部分3は本発明で得た紫色の皮膜を形成した貴金属を示している。
【0016】
以下に皮膜形成のための蒸着条件を示す。
(蒸着条件)
蒸発金属 Au99.99%,Al99.99%
基板温度 250℃
温調時間 30min
治具回転数 10rpm
RF 250W
バイアス 2000V
アルゴン圧 2×10-2Pa
その際、金アルミニウム合金の金含有量を変えた種々の蒸発材料により実験した。
(基板試料)
真ちゅう版(6・4黄銅)の50×100×0.2mmをバフ研磨したもの
表面粗さRa=0.03μm
ガラス版の40×100×2mm
をそれぞれ超音波洗浄によるアルカリ脱脂と同洗浄によるアセトン脱脂を行ない、乾燥して用いた。
(蒸発材料)
A:AuAl2(78%Au)
B:Au75/Al25
C:Au78/Al22
D:Au80/Al20
E:Au85/Al15
F:Au90/Al10
上記条件において5分間の蒸着を行ない、形成した皮膜を分光反射率(ICP発光分光分析装置ICPS−1000II 株式会社島津製作所製による)と色調座標による測定を行なった。結果を図2のグラフに示す。
【0017】
公知の紫色の金アルミニウム合金素材Aは550nm付近に光の吸収があり、表面が紫色となっている。一方の金アルミニウム合金の組成変化による皮膜は、金含有量が80%(D)から85%(E)において550nm付近に吸収があり、公知の紫色の金アルミニウム合金素材Aの紫色に近い色調となっていた。金75%(B)、78%(C)ではアルミニウムに近い白い表面となり、金90%(F)では、金色に近い黄色の皮膜となった。
(蒸発時間による皮膜変化)上記皮膜の厚さは0.1μm未満と実用上としては薄い。そこで蒸発時間の経過による皮膜の変化を見ることとした。
【0018】
a: 1min
b: 8min
c:13min
d:20min
時間変化によって形成した皮膜を分光反射率と色調座標による測定を行なった。結果を図3のグラフに示す。
【0019】
このように蒸着時間が1分、8分、13分、20分と経過するにしたがい(膜厚が増加)、表面の色は変化し、白色から紫色、そして灰色系へと変化した。これは蒸発の進行により、表面の金含有量が高くなったことによるものである。すなわち、ガラス板上に蒸着した皮膜の金アルミニウムの組成をICPにより分析したところ、金含有量は42%(a)、68%(b)、73.6%(c)、79.7%(d)となった。以上の結果、合金材料の蒸着は、蒸着時間が皮膜形成に大きく影響するため十分考慮する必要がある。したがってこの合金の蒸着時間は、8分(b)〜13分(c)が紫色の色が鮮やかとなったことから、約13分とした。
(バイアス電圧)皮膜形成の蒸発条件には、試料溶解のための電子ビーム電流、バイアス電圧、高周波出力等がファクターとしてあげられる。金アルミニウム合金の溶解用の電子ビーム電流は、200mAから試料の溶解が始まり、400mAでは電子ビームの出力が高く高温となりすぎ、試料の突沸が激しいため350mAで行なうことにした。高周波タイプのイオンプレーティングは、構造上バイアス電圧を印加し、または高周波出力を変化することにより、基板電流への影響が考えられる。そこで蒸発材料に金80%合金を蒸着したときの高周波出力とバイアス電圧および電流との関係を調べた。その結果を図4に示す。
【0020】
高周波出力(150〜300W)、バイアス電圧(500〜2000V)を増加することによりバイアス電流が増加している。この結果から高周波出力、バイアス電圧を増加することにより、イオン化した粒子が基板上に強く叩きつけられ、より緻密な皮膜が形成されるものと考えられる。
【0021】
上記結果からみて、バイアス電圧を増加することにより、皮膜がより緻密になる可能性があるためバイアス電圧を変化させ、皮膜への影響を調べた。すなわち、上記蒸発条件でバイアス電圧を1000Vから2000Vに印加し、13分間の蒸着皮膜を形成させ、皮膜の分光反射率の測定を行なった。その結果を図5に示す。
【0022】
X:1000V
Y:1500V
Z:2000V
このようにバイアス電圧を増加することにより色調の変化は見られないが、反射率が向上し、色の鮮やかさが増している。
(高周波出力)上記蒸発条件で、高周波出力を150W、250Wと変化させ、13分間の蒸着における皮膜について分光反射率の測定を行なった。その結果を図6に示す。
【0023】
1:250W
2:150W
このように出力を250W(A1)に高めることにより、紫色皮膜の色調の変化は見られないが反射率が150W(A2)に比べて向上していた。
(透明保護膜の形成)
有色皮膜の形成が終了した後、アルミニウムを蒸発材料とし、イオン化用の反応ガスとして酸素ガスを使用して、反応性イオンプレーティング法により、酸化アルミニウム(Al23 アルミナ)の透明保護膜を形成し,同様にしてシリカ(SiO2)の透明保護膜を形成した。
【0024】
上記酸化アルミニウムおよびシリカの透明保護膜を形成する条件等は下記の条件で行なった。
(蒸着条件)
蒸着材料 酸化アルミニウム(Al23
シリカ(SiO2
基板材料 光学用ガラス(BK7)
基板温度 200℃
高周波電力 0W,150W,300W
バイアス電圧 0V,−500W
ガス圧(O2) 8×10-2Pa
蒸着速度 100nm/min
皮膜の形成は、図7に示す高周波イオンプレーティング装置を使用した。蒸発材料は酸化アルミニウム(Al23)およびシリカ(SiO2)を使用し、基板材料は光学用ガラス(BK7)を用いた。耐食性評価は、ガラス基板に金アルミニウム合金素材からなる膜を形成し、その上に透明膜を成膜した試料を下記人口汗試験溶液に浸漬して行なった。
(人口汗試験溶液)
塩化ナトリウム 9.9g/l
硫化ナトリウム 0.8g/l
尿素 1.7g/l
乳酸 1.1ml/l
アンモニア水 0.28ml/l
pH 4〜6
温度40±1℃ 24時間浸漬
色調の測定は測色計、皮膜表面および断面の観察にはSEM、透明膜の構造解析および表面分析にはXRD、XPSを各々使用した。また皮膜の密着性は引っかき試験により評価した。
(試験結果)基板温度200℃で成膜した酸化アルミニウムとシリカは、いずれも非晶質で柱状構造の透明膜となった。シリカは膜厚増加にしたがい内部応力が発生し、1.7μmでクラックによる剥離が見られた。一方の酸化アルミニウムは、4.0μmの膜厚まで成膜しても剥離が認められなかった。
【0025】
なお、成膜時の基板温度は約200℃前後が望ましく、600〜800℃前後の高温での成膜では、装身具におけるロー付け箇所の溶解、変色、さらに温度変化による膨張係数の違いによって、内部応力の増加によるクラックの発生等の問題が考えられる。
【0026】
人口汗試験による耐食性は、図8の結果のとおり膜厚に依存し向上する。なお反射防止膜程度の膜厚(1μm未満)では、透明膜の耐食効果が少なく、酸化アルミニウムで3μm以上の膜厚が必要となった。
【0027】
透明膜の剥離強度は、成膜を図9の条件(高周波電力)で行なった場合、酸化アルミニウムで350g、シリカで400gとシリカが優れていた。
【0028】
金アルミニウム合金素材(AuAl2)膜上に一層目を酸化アルミニウム(3.6μm)、二層目にSiO2(0.9μm)を形成した試料の色調は、下記の通りである。
(透明保護膜の色調への影響)
膜の種類 x y Y
AuAl2 0.330 0.302 27.19
SiO2(0.9μm) 0.343 0.304 22.27
/Al23(3.6μm)
AuAl2膜に比べ、明度(Y)は低下するが、色度(x,y)は同等であった。また2層構造とすることによってAuAl2単層膜に比べ、密着性と耐食性が向上した。
【0029】
またSiO2の膜厚を1μmとし、Al23の膜厚を変化させたときの分光反射率特性および反射色の変化を図10に示す。同様にSiO2の膜厚を1μmとし、Al23の膜厚を変化させたときの耐食性の試験結果を図11に示す。その結果、第1のAl23層として約2μm以上、第2のSiO2層として約1μm以上とすることにより、装身具として価値の高い製品を得られることが分かった。
【0030】
上記実施例において得た紫色皮膜を形成した貴金属装身具は、明度はやや落ちるが鮮やかな紫色を呈していて色調の変化は少なく、しかも剥離強度にも優れていて通常の使用方法ではほとんど褪色等の経年変化が見られなかった。
【0031】
【発明の効果】
この発明の有色皮膜上への透明保護膜の形成方法は以上のように構成したので、得た有色皮膜上への透明保護膜の形成方法は鮮やかな紫色を呈しており、新規で装飾性の高い貴金属装身具を提供することが可能となった。
【0032】
またこの発明の有色皮膜上への透明保護膜の形成方法は以上のように構成したので、実用上充分な耐久性のある皮膜を得ることができた。しかも得た皮膜は平滑で緻密な構造を有するとともに、肌荒れやピンホールといった欠点のない、商品価値において非常に優れた製品を得ることができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明で得ようとする有色皮膜上への透明保護膜の形成方法の例を示す平面図である。
【図2】5分間の蒸着を行ない、形成した皮膜を分光反射率と色調座標による測定を行なった結果を示すグラフである。
【図3】時間変化によって形成した皮膜を分光反射率と色調座標による測定を行なった結果を示すグラフである。
【図4】蒸発材料に金80%合金を蒸着したときの高周波出力とバイアス電圧および電流との関係を調べた結果を示すグラフである。
【図5】バイアス電圧を1000Vから2000Vに印加し、13分間の蒸着皮膜を形成させ、皮膜の分光反射率の測定を行なった結果を示すグラフである。
【図6】高周波出力を150W、250Wと変化させ、13分間の蒸着における皮膜について分光反射率の測定を行なった結果を示すグラフである。
【図7】皮膜の形成を行なうための高周波イオンプレーティング装置を示す回路図である。
【図8】人口汗試験による耐食性を示すグラフである。
【図9】透明膜の剥離強度を示すグラフである。
【図10】またSiO2の膜厚を1μmとし、Al23の膜厚を変化させたときの分光反射率特性および反射色の変化を示すグラフである。
【図11】SiO2の膜厚を1μmとし、Al23の膜厚を変化させたときの耐食性の試験結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1 指輪
2 薄い色の部分
3 濃い色の部分

Claims (1)

  1. 金アルミニウム合金からなる紫色の有色皮膜の耐食性を高めるため、イオンプレーティング法により第1層に膜厚を2〜4μmとした酸化アルミニウム(Al23)、第2層に膜厚を1〜1.7μmとしたシリカ(SiO2)の2層構造からなる透明保護膜を順次形成したことを特徴とする有色皮膜上への透明保護膜の形成方法。
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