JP4122664B2 - 音響振動板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、スピーカー装置等に用いられる音響振動板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
スピーカー等に使用される音響振動板として、体積密度が小さく弾性率が大きい等の優れた特性を有することから、金属チタンが普及している。ところで近年、音響振動板の音響特性をさらに向上させるために、金属チタンよりも優れた特性を有する酸化チタンを金属チタンの表面に被膜してなる音響振動板が提案されている。
【0003】
例えば、特開昭51−12130号公報に示されるように、金属チタンの表面に、酸素を含むアルゴン雰囲気中にて酸化チタン(TiO2)層を形成したスピーカ用振動板が提案されている。また、特開平2−152399号公報に示されるように、陽極酸化法にて、金属チタンの表面に酸化チタン層を20nm〜200nm又は1μm以上の膜厚に形成したスピーカの振動板が提案されている。上述のような、金属チタンの表面に酸化チタン層が形成されてなる音響振動板は、金属チタンのみからなる音響振動板と比較して、さらに剛性が大きく、優れた音響特性を有するものとなる。
【0004】
また、金属チタン以外に、SiC等のセラミックを用いた音響振動板が提案されている。SiC等のセラミックからなる音響振動板は、金属チタンと同様に、剛性が大きく優れた音響特性を有している。このような振動板を作製する方法として、CVD法等にてSiC等のセラミックを振動板形状に堆積させる方法、黒鉛と樹脂とを混合して振動板形状に成型後焼結させることにより全体をセラミック化する方法等が考案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のような、金属チタンの表面に酸化チタン層を形成されてなる振動板は、基材である金属チタンの厚さに比較すると、酸化チタン層の厚さが非常に薄く構成されている。このため、酸化チタン本来の優れた特性から予想されるほど、振動板の音響特性は向上していなかった。
【0006】
また、SiC等のセラミックを堆積させることにより振動板を作製する手法は、CVD装置等の高価な薄膜作製装置を必要とする。このような薄膜作製装置は、大量の振動板を一度に処理できないため、生産性に劣り、振動板の製造コストを上昇させてしまう。また、黒鉛と樹脂とを混合してセラミック化させて振動板を作製する手法は、複雑な形状の振動板を作製することが困難であった。
【0007】
そこで本発明はこのような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、例えばスピーカに用いたときに高音域の再生特性が良好な音響振動板を、低コストにて、且つ複雑な形状に作製することが可能な音響振動板の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、本発明にかかる音響振動板の製造方法は、金属チタンを音響振動板形状に成型してチタン振動板を得る成型工程と、上記成型されたチタン振動板を酸素を含む気体中で熱処理して、上記チタン振動板の全体が酸化チタンとなるようにセラミック化するセラミック化工程とを有し、全体が酸化チタンからなる音響振動板を得ることを特徴とする。
【0009】
上述したような本発明にかかる音響振動板の製造方法では、成型工程にて加工性に優れた金属チタンを音響振動板形状とし、チタン振動板を作製する。次に、セラミック化工程にて熱処理を行うことにより、チタン振動板全体が酸化チタンとされるため、体積密度が小さく弾性率の大きい音響振動板を所望の形状に作製することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかる音響振動板の製造方法の具体的な実施の形態について説明する。
【0011】
この手法は、例えば図1に示すような、最外周に鍔を有する略円盤形状であり、全体が酸化チタン(TiO2)からなる音響振動板1を製造するものである。酸化チタンは、金属チタンよりもさらに体積密度が小さく弾性率が大きいという優れた特性を有している。
【0012】
そして、上記のような音響振動板1は、つぎに示すようにして製造される。
【0013】
先ず、金属チタンを所定の音響振動板形状に成型して、金属チタンからなるチタン振動板を形成する。
【0014】
金属チタンを音響振動板形状に成型する手法としては、例えばプレス加工等が挙げられる。金属チタンは優れた加工性を有するため、音響振動板として複雑な形状を要求される場合であっても、容易に所望の形状に成型することが可能である。なお、図1にて略円盤状であり、中央部がドーム状である音響振動板1を示したが、音響振動板の形状は、使用目的に応じて、例えば略矩形状、略楕円形状等、いかなる形状であっても構わない。
【0015】
次に、所望の形状に成型したチタン振動板(以下、単にチタン振動板という。)に熱処理を行うため、熱処理装置の炉内にチタン振動板を据え、熱処理条件を調整する。
【0016】
ところで、上記熱処理は、酸素を含む不活性ガス雰囲気中、酸素と水蒸気とを含む不活性ガス雰囲気中、酸素を含む窒素ガス雰囲気中、酸素と水蒸気とを含む窒素ガス雰囲気中、酸素雰囲気中、水蒸気を含む酸素雰囲気中、オゾンガス雰囲気中、水蒸気を含む不活性ガス雰囲気中、水蒸気を含む窒素ガス雰囲気中、大気中等の条件下で行うことができる。
【0017】
大気中条件とする場合には、例えば図2に示されるような、チタン振動板を入れる炉2と、炉2を加熱するヒータ3と、大気の出入りを行う通気口4とを有する構成の熱処理装置を用いることができる。このとき、炉2内は密閉されていても、外部と大気の出入りがあっても良い。
【0018】
また、酸素、酸素を含む不活性ガス、酸素を含む窒素ガス又はオゾンガス(以下、まとめて酸素を含む気体と称する。)雰囲気条件とする場合には、例えば図3に示されるような、チタン振動板を入れる炉2と、炉2を加熱するヒータ3と、酸素を含む気体を貯蔵するタンク5と、酸素を含む気体の供給量を調節するバルブ6と、酸素を含む気体を排気する排気口7とを有する構成の熱処理装置を用いることができる。
【0019】
このような熱処理装置の炉2内にチタン振動板を据えた後、バルブ6を解放し、タンク5内から炉2へ酸素を含む気体を供給し、炉2内の空気を酸素を含む気体にて置換する。なお、炉2内の空気を酸素を含む気体にて置換した後、酸素を含む気体を炉2内へ供給し続けても、止めても構わない。
【0020】
また、酸素と水蒸気とを含む不活性ガス、酸素と水蒸気とを含む窒素ガス、水蒸気を含む酸素、水蒸気を含む不活性ガス又は水蒸気を含む窒素ガス(以下、まとめて水蒸気を含む気体と称する。)雰囲気条件とする場合には、例えば図4に示されるような、チタン振動板を入れる炉2と、炉2を加熱するヒータ3と、気体を貯蔵するタンク5と、酸素を含む気体の供給量を調節するバルブ6と、タンク5から供給された気体を水蒸気を含む気体とするバブラー8と、水蒸気を含む気体を排気する排気口7とを有する構成の熱処理装置を用いることができる。この熱処理装置においては、タンク5に貯蔵された気体をバブラー8にて水中を通すことにより、これらの気体に容易に水蒸気を含ませることができる。
【0021】
このような熱処理装置の炉2内にチタン振動板を据えた後、バルブ6を解放し、タンク5からバブラー8を経て炉2へ水蒸気を含む気体を供給し、炉2内の空気を水蒸気を含む気体で置換する。なお、炉2内の空気を水蒸気を含む気体にて置換した後、水蒸気を含む気体を炉2内へ供給し続けても、止めても構わない。
【0022】
次に、ヒータ3を加熱し、炉2内の温度を熱処理に必要な温度まで上昇させる。炉2内の温度の昇温速度は、チタン振動板が歪んだり、破損しないように適宜調節することが好ましい。
【0023】
次に、炉2内を所定の温度で保持してチタン振動板に熱処理を行う。これにより、チタン振動板は全体がセラミック化され、酸化チタンとなる。
【0024】
ここで、上記熱処理は、チタンの変態温度である880℃以上で行うことが好ましい。チタンの変態温度以上で熱処理を行うことにより、電子顕微鏡にて観察可能な大きさの、多数の空孔が形成された酸化チタンが生じる。このような酸化チタンは、体積密度が小さく弾性率が大きくなり、優れた剛性を有するものとなる。チタン振動板の熱処理温度を880℃未満すると、体積密度の低下及び弾性率の増大が不十分であり、酸化チタン本来の優れた剛性を示さない酸化チタンを生じる虞がある。
【0025】
最後に、熱処理終了後、炉2内を冷却し、全体が酸化チタンからなる音響振動板1が作製される。熱処理終了後の冷却は、音響振動板1が歪んだり、破損しなければ、自然冷却であっても冷却水等を用いた強制冷却であっても構わない。
【0026】
この音響振動板1は、全体が酸化チタンからなるため、酸化チタン本来の優れた特性が十分に現れ、例えばスピーカに用いたときに、特に高音域での再生特性に優れたものとなる。
【0027】
酸化チタンは、音響振動板材料として極めて優れた特性を有するが、複雑な形状を成型することが困難である。しかしながら、本手法では、加工性に優れた金属チタンを予め音響振動板形状に成型した後、これをセラミック化して、酸化チタンとする。ずなわち、全体が酸化チタンからなる複雑な形状の音響振動板1を容易に成型することが可能となる。また、CVD装置等の高価な薄膜形成装置を用いることなく、同時に大量のセラミック化が可能であるため、全体が酸化チタンからなる音響振動板1を低コストにて作製することが可能となる。
【0028】
【実施例】
本発明にかかる音響振動板の製造方法を用いて、音響振動板を作製した。
【0029】
サンプル1
先ず、金属チタンからなるチタン振動板として、厚さ20μmのものと厚さ30μmのものとの2種類を用意した。これらのチタン振動板は、熱処理工程後に所望の音響振動板形状となるように成型した。また、2種類のチタン振動板の他に、測定用に、厚さ20μmの短冊状の金属チタンを用意した。
【0030】
次に、これら2種類のチタン振動板及び短冊状金属チタンを、図2に示すような熱処理装置の炉内に据え、炉内の温度を上昇させた。このとき、炉内は密閉されていても、外部と大気の出入りがあっても良い。炉内の温度は、25℃から金属チタンの変態温度以上である900℃まで、1時間30分を要して昇温した。
【0031】
次に、チタン振動板の全体が酸化チタンとなるまで、炉内を900℃に保持し、チタン振動板に熱処理を行った。なお、厚さ20μmのチタン振動板は30分以上、厚さ30μmのチタン振動板は60分以上の保持時間を要した。
【0032】
最後に、炉を自然冷却させて、全体が酸化チタンからなるサンプル1の音響振動板及び短冊状酸化チタンを得た。
【0033】
得られた音響振動板及び短冊状酸化チタンの色は黄白色であった。また、音響振動板のX線回折の結果を図5に示す。熱処理により生じた物質は、観測された回折ピークより、ルチル型の酸化チタンであることがわかった。
【0034】
また、熱処理前のチタン振動板において、中心のドーム部にてSR14.7mm、内径17.5mmであったものが、熱処理後の音響振動板においては、内径が17.7mmに変化した。
【0035】
サンプル2
熱処理を行う際、図3に示すような熱処理装置を用い、炉内を酸素を含んだ気体雰囲気としたこと以外は、サンプル1と同様にして音響振動板及び短冊状酸化チタンを作製した。なお、得られた音響振動板及び短冊状酸化チタンの色は、サンプル1と同じく、黄白色であった。
【0036】
サンプル3
熱処理を行う際、図4に示すような熱処理装置を用い、炉内を水蒸気を含んだ気体雰囲気としたこと以外は、サンプル1と同様にして音響振動板及び短冊状酸化チタンを作製した。なお、得られた音響振動板及び短冊状酸化チタンの色は、サンプル1と同じく、黄白色であった。
【0037】
サンプル4
熱処理を行う際、炉内の温度を850℃にて保持して熱処理を行ったこと以外は、サンプル1と同様にして音響振動板及び短冊状酸化チタンを作製した。なお、得られた音響振動板及び短冊状酸化チタンの色は灰色であった。
【0038】
<特性評価>
以上のようにして作製された音響振動板を用いてスピーカユニットを作製し、その音圧の周波数特性を測定した。比較として、熱処理前のチタン振動板を用いてスピーカユニットを作製し、その音圧の周波数特性を測定した結果を、図6(a)に示す。サンプル1の音響振動板を用いてスピーカユニットを作製し、その音圧の周波数特性を測定した結果を、図6(b)に示す。図6から明らかなように、熱処理後の音響振動板をスピーカユニットに用いることで、100kHzという高音域まで再生することが可能となったことがわかる。
【0039】
次に、得られたサンプル1〜サンプル4の短冊状酸化チタン及び熱処理前の短冊状金属チタンについて、厚さ、体積密度、弾性率及び縦弾性波の伝搬速度を評価した。測定した結果を、表1に示す。なお、サンプル2及びサンプル3の測定結果は、サンプル1の測定結果とほぼ同じであったため、表1への記載を省略する。
【0040】
【表1】
【0041】
表1からも明らかなように、サンプル1は、熱処理前サンプルと比較して、厚さは約2倍となったが、体積密度が小さくなり、弾性率が2倍以上大きくなり、且つ縦弾性波の伝搬速度も著しく向上した。このように、金属チタンの変態温度以上にて熱処理を行ったために、サンプル1は酸化チタン本来の優れた特性を示した。
【0042】
一方サンプル4は、体積密度、弾性率及び縦弾性波の伝搬速度の何れにおいても、サンプル1の特性と比較して劣っていた。すなわち、金属チタンの変態温度を下回る850℃にて熱処理を行ったために、サンプル4は酸化チタン本来の優れた特性を獲得できなかったことがわかる。
【0043】
なお、サンプル1〜サンプル3の中では、大気中にて熱処理を行ったサンプル1の音響振動板を、最も低コストにて作製することができた。
【0044】
【発明の効果】
以上の説明からも明らかなように、本発明によれば、優れた加工性を有する金属チタンの状態で音響振動板形状に成型するため、複雑な形状の音響振動板を容易に作製できる。また、体積密度が小さく弾性率が大きい等、優れた特性を有する酸化チタンからなる音響振動板を、高価な薄膜形成装置等を用いることなく低コストで製造することができる。
【0045】
また、全体が酸化チタンからなる音響振動板を用いたスピーカは高音域まで再生特性の良好なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる音響振動板の製造方法により製造される音響振動板の要部断面斜視図である。
【図2】熱処理装置の一例を示す模式図である。
【図3】熱処理装置の他の例を示す模式図である。
【図4】熱処理装置の他の例を示す模式図である。
【図5】本発明にかかる音響振動板の製造方法により製造された音響振動板の、X線回折パターンを示す図である。
【図6】(a)は、熱処理前のチタン振動板を用いて作製されたスピーカユニットの、音圧の周波数特性を示す特性図であり、(b)は、サンプル1の音響振動板を用いて作製されたスピーカユニットの、音圧の周波数特性を示す特性図である。
【符号の説明】
1 音響振動板
Claims (3)
- 金属チタンを音響振動板形状に成型してチタン振動板を得る成型工程と、
上記成型されたチタン振動板を酸素を含む気体中で熱処理して、上記チタン振動板の全体が酸化チタンとなるようにセラミック化するセラミック化工程とを有し、全体が酸化チタンからなる音響振動板を得ることを特徴とする音響振動板の製造方法。 - 上記セラミック化工程において、上記熱処理は880℃以上で行われることを特徴とする請求項1記載の音響振動板の製造方法。
- 全体が酸化チタンからなる音響振動板を用いたことを特徴とするスピーカ。
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