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JP4129546B2 - ウシの軟骨異形成性矮小体躯症の遺伝子診断法 - Google Patents
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JP4129546B2 - ウシの軟骨異形成性矮小体躯症の遺伝子診断法 - Google Patents

ウシの軟骨異形成性矮小体躯症の遺伝子診断法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ウシの軟骨異形成性矮小体躯症の遺伝子診断法に関する。
【0002】
【発明に関わる語句の定義】
本明細書において、「LIMBIN」はLIMBIN遺伝子が転写され翻訳されて生成するタンパク質を意味し、「LIMBIN遺伝子」はLIMBINをコードしている翻訳領域及び非翻訳領域を含むエクソンと、それらに介在するイントロンとを含む転写領域、及びこの転写領域の発現の制御に関わる制御領域を含むDNAの領域を意味する。軟骨異形成性矮小体躯症とは、LIMBIN遺伝子に変異があることからくる表現型の異常を意味する。「変異遺伝子」とは、変異を起こした対立遺伝子のことを意味する。「ポリメラーゼ連鎖反応」又は「PCR」とは、一般的に、米国特許第4683195号明細書に記載されたような方法を指し、目的のヌクレオチド配列をインビトロで酵素的に増幅するための方法を指している。即ち、PCR法は、鋳型核酸と優先的にハイブリダイズすることのできる2個のオリゴヌクレオチドプライマーを使用して、プライマー伸長合成を行う過程を繰り返し行うことを含む。
【0003】
【背景となる技術】
軟骨異形成性矮小体躯症は、褐毛和種牛において1983年以降発生が認められており、軟骨形成不全を主な症状とする常染色体性劣性遺伝病である。すなわち、原因となる変異遺伝子のホモ接合体のウシにおいて、生後0〜6カ月で四肢短小が観察されるが、その変異遺伝子のヘテロ接合体のウシは、外見的な異常がなく、軟骨異形成性矮小体躯症の遺伝的キャリアとして生存する。したがって、外見上は異常の認められないウシ同士を交配させた場合でも、ヘテロ接合体同士の交配であれば25%の確率で、生まれてくる子牛に異常が現れるため、本疾患の発生を予防する上での問題点となっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ウシの軟骨異形成性矮小体躯症を予防する手段の一つとして、変異遺伝子のヘテロ接合体同士の交配を避けるという方法が考えられる。そのためにはウシの軟骨異形成性矮小体躯症の診断を遺伝子レベルで行い、原因となる変異遺伝子のヘテロ接合体を見つけだす必要がある。つまり、軟骨異形成性矮小体躯症の原因である遺伝子を同定し、軟骨異形成性矮小体躯症のウシにおいて、その遺伝子がどのように変異しているかを明らかにすれば、その変異を容易に検出できる手段を得ることができ、軟骨異形成性矮小体躯症の遺伝子診断法を確立することができる。
【0005】
本発明の目的は、このような原理の基に、ウシの軟骨異形成性矮小体躯症の遺伝子診断法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するために研究を重ねた結果、軟骨異形成性矮小体躯症と密接に関連するLIMBIN遺伝子を同定することに成功した。さらに、本発明者らは、軟骨異形成性矮小体躯症の個体から得られたLIMBIN遺伝子の翻訳領域に変異を検出した。そして、これらの変異のため、LIMBINの正常な機能が損なわれたことが本疾患の原因であることを見出した。従って、LIMBIN遺伝子に変異が起き、LIMBINの正常な機能が損なわれると、軟骨異形成性矮小体躯症を発症するようになることが明らかになった。
【0007】
そこで、本発明の遺伝子診断法は、ウシの核酸試料を得るステップと、ウシLIMBIN遺伝子内の配列番号:1に示される塩基配列中にあって、ウシの軟骨異形成性矮小体躯症の原因である塩基を含む核酸断片を、該核酸試料から遺伝子増幅反応によって得るステップと、該塩基における変異の有無を調べるステップと、を含むことを特徴とする。これにより、LIMBIN遺伝子の翻訳領域内に変異を起こしたLIMBIN変異遺伝子を持つ個体を検出することができ、軟骨異形成性矮小体躯症の遺伝的キャリアを見つけることができるようになる。
【0008】
また、前記塩基が、前記LIMBIN遺伝子の塩基配列中、配列番号:1に示される塩基配列に含まれることを特徴としてもよい。これにより、LIMBIN遺伝子の翻訳領域内での変異を遺伝子診断の対象とすることができる。
【0009】
また、前記遺伝子増幅反応が、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)を含むことを特徴としてもよい。これにより、遺伝子増幅反応を簡便に行うことができるようになる。
【0010】
また、前記軟骨異形成性矮小体躯症の原因である塩基の変異の有無を調べるステップが、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)を含むことを特徴としてもよい。これにより、簡便に塩基の変異を検出できるようになる。
【0011】
また、前記核酸試料が、ゲノムDNA、cDNA、またはmRNAを含む試料であることを特徴としてもよい。これにより、遺伝情報を実際に担っている分子を扱うことができるようになる。
【0012】
さらに、配列番号:1に示された塩基配列に含まれる連続した塩基配列を有する第1のオリゴヌクレオチドと、配列番号:1に示された塩基配列と相補的な塩基配列に含まれる連続した塩基配列を有する第2のオリゴヌクレオチドと、を含み、配列番号:1に示された塩基配列において、前記第1のオリゴヌクレオチドの有する塩基配列の3’末端の塩基が、前記第2のオリゴヌクレオチドの有する塩基配列に相補的な塩基配列の5’末端の塩基より、5’末端側に存在することを特徴とする、軟骨異形成性矮小体躯症を検出するためのキットとしてもよい。これにより、LIMBIN遺伝子に変異を起こした核酸を持つ個体を検出する際、各試薬を別々に調整する手間を省くことができる。
【0013】
また、前記第1のオリゴヌクレオチド及び前記第2のオリゴヌクレオチドが、15〜35ヌクレオチドからなることを特徴としてもよい。これにより、遺伝子増幅反応、特にPCRの効率が良くなる。
【0014】
前記第1のオリゴヌクレオチドが、配列番号:10,11,12のオリゴヌクレオチドのうちのいずれかであることを特徴としてもよく、前記第2のオリゴヌクレオチドが、配列番号:8,9,13のオリゴヌクレオチドのうちのいずれかであることを特徴としてもよい。これにより、遺伝子増幅反応、特にPCRの効率がさらに良くなる。
【0015】
以下の(a)〜(c)の塩基配列を持つヌクレオチドを用いても良い。
(a)配列番号:1で示された塩基配列全体、またはその一部。
(b)配列番号:1で示されている塩基配列と相補的な塩基配列全体、またはその一部。
(c)(a)及び(b)のヌクレオチドにおいて、1若しくは数個のヌクレオチドが欠失、置換、または付加されたヌクレオチドであって、LIMBIN遺伝子が有する塩基配列全体、またはその一部。
これにより、LIMBIN遺伝子における翻訳領域内での変異を遺伝子診断の対象とすることができる。
【0016】
また、前記ヌクレオチド配列を持つヌクレオチドが、ゲノムDNA、cDNA、RNA、合成ヌクレオチド、または半合成ヌクレオチドのいずれかであることを特徴としてもよい。これにより、遺伝情報を実際に担うもしくは伝える分子を扱うことができるようになる。
【0017】
また、以下の(a)〜(c)の塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを用いてもよい。
(a)配列番号:1に示された塩基配列をもつヌクレオチド配列に含まれる連続したヌクレオチド配列。
(b)配列番号:1に示された塩基配列と相補的な塩基配列をもつヌクレオチド配列に含まれる連続したヌクレオチド配列。
(c)(a)及び(b)のヌクレオチド配列において、1若しくは数個のヌクレオチドが欠失、置換、または付加されたヌクレオチド配列からなり、かつLIMBIN遺伝子の遺伝子増幅反応に使用可能なヌクレオチド。
このヌクレオチドをLIMBIN遺伝子増幅の鋳型とすることにより、LIMBIN遺伝子翻訳領域特異的に、遺伝子増幅反応を行わせることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
<正常ウシ及び軟骨異形成性矮小体躯症発症ウシのLIMBIN遺伝子の解析>
本発明者らは、まず、本疾患牛を含む家系のゲノム連鎖解析を行い、ポジショナルクローニング法を用いてウシLIMBIN遺伝子を単離した。LIMBIN遺伝子が単離された例は、どの生物種においても、これまで報告されていない。遺伝子の変異と本疾患との関連を調べるために、正常ウシのLIMBINをコードするcDNAを単離し、その塩基配列を明らかにした。得られた正常ウシのLIMBINをコードするcDNAの全塩基配列を配列表の配列番号:1に示す。
【0019】
次に、軟骨異形成性矮小体躯症の原因となる遺伝子の変異を、正常ウシ及び発症ウシのLIMBIN遺伝子のcDNAの塩基配列を比較することによって明らかにした。すなわち、正常ウシの場合と同様に発症ウシのLIMBIN遺伝子cDNAの塩基配列を調べ、これを正常ウシ遺伝子のものと比較することにより、本疾患の原因である変異を特定した。軟骨異形成性矮小体躯症ウシのLIMBIN遺伝子においては、翻訳領域の塩基配列中、1356位のCからTへの変異、あるいは2054〜2055位のCAからGへの変異を見出した。これらは新たな停止コドンをもたらす変異であった(図1)。そこで、これらの変異が、軟骨異形成性矮小体躯症の原因となる遺伝子における変異であると結論した。
【0020】
以下、実験例により、さらに詳細に説明する。以下の記載では、特に説明がない場合には、D. M. Glover & B. D. Hames (Ed.), DNA Cloning 1, Core Techniques (2nd edition), A Practical Approach, Oxford University Press, Oxford (1995); J. Sambrook, E. F. Fritsch & T. Maniatis (Ed.), Molecular cloning, a laboratory manual (2nd edition), Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York (1989); M. A. Innis, D. M. Gelfaud, J. J. Snindky & T. J. White (Ed.), PCR protocols: a guide to methods and applications, Academic Press, Inc., New York (1990); M. J. McPherson, P. Quirke & G. R. Taylor (Ed.), PCR: a practical approach, IRL Press, Oxford (1991)に記載の方法、あるいはそれを修飾したり、改変した方法が用いられている。また、市販の試薬キットや測定装置を用いている場合には、特に説明が無い場合、それらに添付のプロトコールが用いられている。
【0021】
[実験例]
(1)正常ウシLIMBIN遺伝子の塩基配列の決定
軟骨異形成性矮小体躯症の疾患牛(119頭)及びそれらの両親牛からなる家系について、多型性DNAマーカーを用いて軟骨異形成性矮小体躯症と連鎖するウシ染色体の領域を第6番染色体のテロメア部と決定した[文献 K. Yoneda et al., Mammalian Genome, 10, 597-600(1999年)]。軟骨異形成性矮小体躯症の原因遺伝子が存在すると考えられる領域を、多数の多型性DNAマーカーを用いてさらに狭めた。狭められた領域に存在し、実際に発現している遺伝子(EST)が、EST検索によって同定できたので、この遺伝子が、軟骨異形成性矮小体躯症の原因遺伝子の候補と考えられた。そのcDNAをクローニングするため、その配列AW345074から配列番号:2、3のPCRプライマーを合成した。
LIMBIN-1: GAGAGAGGGTGATATTCTCTGG [配列番号:2]
LIMBIN-2: GATAAAGAGCTTTTCACCCGTG [配列番号:3]
【0022】
ところで、原因遺伝子の異常による表現型の異常が軟骨に現れるため、原因遺伝子は軟骨で発現していることが予想された。そこで、正常ウシより採取した新鮮な長骨の骨端を材料とし、RNA調製用試薬であるトリゾール(商品名、Gibco-BRL社製)を使用して全RNAを調製した。この全RNAを鋳型に用い、スーパースクリプトcDNA合成キット(商品名、Gibco-BRL社製)を使用してcDNAを合成した。配列番号:2と3のプライマーを用い、合成したcDNAを鋳型としてPCRを行い、プライマー間の断片を増幅した。生成物についてBigDye Terminator Cycle Sequencing 試薬(商品名、PEバイオシステムズ社製)により、3700蛍光DNAシークエンサー(PEバイオシステムズ社製)を用いて塩基配列を決定した。この塩基配列は、ウシの上記ESTの塩基配列及びそれと対応するヒトのESTの塩基配列と高い相同性を示したので、目的であるウシのLIMBINcDNAの一部であると結論した。
【0023】
そこで、この断片をプローブに用いて、今度は、正常ウシ腎臓および長骨cDNAライブラリーをスクリーニングし、より長いウシLIMBINcDNAクローンを単離した。また、上記のウシEST配列は、カリフォルニア大学ヒトゲノムプロジェクトがインターネット上で公開しているWorking Draft Genome Browser v5における予測遺伝子配列C4000113とC4000114 (と、上記染色体領域に位置するウシRPCI-42細菌人工染色体162M16および232M6クローンの塩基配列に高い相同性が認められたため、正常ウシ全RNAから作成したcDNAを鋳型として配列番号:4、5、6、7のPCRプライマーで増幅させ、cDNAクローンを得た。
【0024】
これらcDNAの塩基配列を決定し、繋ぎ合わせて、全翻訳領域を含むLIMBINcDNAの塩基配列を決定した。得られた塩基配列のうち翻訳領域の配列を配列表の配列番号:1に示す。
LIMBIN-3: GGAAGTATCTGGCCCATTTTGCC [配列番号:4]
LIMBIN-4: CTCCAGCGAGGCTGTGTAGCTGAC [配列番号:5]
LIMBIN-5: GGCTTTCAGGAAGAAGTTTCTGC [配列番号:6]
LIMBIN-6: CTCCAGGAGCTTCTGACCCTTGC [配列番号:7]
【0025】
(2)LIMBIN遺伝子の発現
mRNA抽出用キット、FastTrack 2.0 (商品名、Invitrogen社製)を使用して、正常ウシの新鮮な組織からmRNAを調製し、スーパースクリプトcDNA合成キット(商品名、Gibco-BRL社製)を使用してcDNAを合成し、LIMBIN遺伝子の発現について調べた。各組織のcDNAを鋳型とするPCRを行ったところ、骨端、腎臓、肺、心臓、脾臓、脳など調べた組織すべてで発現しており、正常ウシと該疾患牛の骨端でほぼ同程度の強度で発現していることが明らかとなった。
【0026】
(3)軟骨異形成性矮小体躯症ウシLIMBIN遺伝子の塩基配列の決定
実験例(2)に述べたように、軟骨異形成性矮小体躯症ウシでもLIMBIN遺伝子の転写が認められることから、異常は塩基配列自身にあるのではないかと予想されたため、その塩基配列を決定し、正常ウシのLIMBIN遺伝子の塩基配列と比較した。その結果、2カ所に変異を検出した。変異1は1356位のCをTへ変異するという潜在的スプライシングドナーサイトの形成による新たな停止コドンをもたらし、変異2は2054〜2055位の塩基配列がCAからGへの変異による新たな停止コドンをもたらす。従って、軟骨異形成性矮小体躯症牛では、これらの変異のため、LIMBINの機能が損なわれ、軟骨異形成性矮小体躯症が発症すると考えられた。
【0027】
(4)ウシのゲノムDNA上のLIMBIN遺伝子の変異の検出
LIMBIN遺伝子の変異と軟骨異形成性矮小体躯症発症の相関を調べるため、正常ウシ、軟骨異形成性矮小体躯症ウシ、及びその両親ウシにおけるLIMBIN遺伝子の変異1型部位及び変異2型部位の塩基を調べた。
【0028】
まず、軟骨異形成性矮小体躯症ウシに認められた変異1型部位を含むDNA断片を増幅するためのプライマーを合成した。LIMBIN-R1は正常な塩基配列に特異的に結合するアンチセンスプライマーであり、LIMBIN-R2は変異1型塩基配列に特異的に結合するアンチセンスプライマーである。これらのプライマーによるPCR生成物の長さに違いを持たせるため、LIMBIN-R2の5’末端に4個のイノシンを付加した。また、非特異的アニーリングを抑える目的で、アンチセンスプライマーは本来の配列とは異なる塩基を1つ有する。LIMBIN-F1は正常と変異2型に共通な塩基配列に結合するセンスプライマーで5’末端に蛍光色素FAMを付加した。
【0029】
配列表の配列番号:8、9、10にプライマーの塩基配列を示す。Iはイノシンを示す。
LIMBIN-R1: TTGCTGCCTCTGGCTTCAGCTGG [配列番号:8]
LIMBIN-R2: IIIITTGCTGCCTCTGGCTTCAGGTCA [配列番号:9]
LIMBIN-F1: [FAM]- TGTGTGCTCACATGTTGCGTGC [配列番号:10]
【0030】
次に、軟骨異形成性矮小体躯症ウシに認められた変異2型部位を含むDNA断片を増幅するためのプライマーを合成した。LIMBIN- F2は正常な塩基配列に特異的に結合するセンスプライマーであり、LIMBIN- F3は変異2型塩基配列に特異的に結合するセンスプライマーである。これらのプライマーによるPCR生成物の長さに違いを持たせるために、5’末端を1塩基削った。また、LIMBIN-R3は正常と変異2型に共通な塩基配列に結合するアンチセンスプライマーで5’末端に蛍光色素FAMを付加した。
【0031】
配列表の配列番号:11、12、13にぞれぞれプライマーの塩基配列を示す。
LIMBIN-F2: GAGCACAGCAGGGACCTGGCA [配列番号:11]
LIMBIN-F3: AGCACAGCAGGGACCTGGG [配列番号:12]
LIMBIN-R3: [FAM]- CGTGAAGATCAAGTGCTCCCAGTG [配列番号:13]
【0032】
一方、正常ウシ、軟骨異形成性矮小体躯症ウシ、及びその両親ウシの血液(抗擬固剤としてEDTA、ヘパリンを含む)より、自動核酸分離装置NA-1000(商品名、クラボウ社製)を用いてゲノムDNAを調製した。これらのゲノムDNAを鋳型とし、変異1型検出用のプライマーを用いたPCR ( Taq DNA polymeraseを使用、94 ℃で20秒間、67 ℃で20秒間、72 ℃で30秒間からなる工程を1サイクルとし、27サイクル反応させた)及び、変異2型検出用のプライマーを用いたPCR ( Taq DNA polymerase を使用、94 ℃で20秒間、65 ℃で20秒間、72 ℃で30秒間からなる工程を1サイクルとし、28サイクル反応させた)を行った。これらの反応液0.5マイクロリットルを3700蛍光DNAシークエンサー(商品名、PEバイオシステムズ社製)を用いて電気泳動し、増幅DNA断片のサイズを、GENESCANとGenotyper software(商品名、PEバイオシステムズ社製)を用いて測定した。図2に示すように、変異1型検出用のプライマーでPCRを行った場合、正常型では291 bpのDNA断片が生成するが、変異1型では295 bpのDNA断片が生成する。また、変異2型検出用のプライマーでPCRを行った場合、正常型では168 bpのDNA断片が生成するが、変異2型では166 bpのDNA断片が生成する。
【0033】
このようにして、軟骨異形成性矮小体躯症発症とLIMBIN遺伝子の変異との相関関係を調べた結果、図2に示すように、軟骨異形成性矮小体躯症発症がLIMBIN遺伝子の変異に因ることが明らかとなった。
【0034】
<ウシの軟骨異形成性矮小体躯症の遺伝子診断法の確立>
以上のように、ウシの軟骨異形成性矮小体躯症の原因となる遺伝子上の変異が解明されたので(図1)、この変異を利用して該疾患の検出を行うことができる。以下、具体的なウシの軟骨異形成性矮小体躯症の遺伝子診断法の一例を詳細に述べる。
【0035】
[実施例]
ウシの核酸試料を得るステップとして、ウシの血液(抗擬固剤としてEDTA、ヘパリンを含む)より、自動核酸分離装置NA-1000(商品名、クラボウ社製)を用いてゲノムDNAを調製する。
【0036】
変異1型及び変異2型が含まれ得る塩基を含む核酸断片を、遺伝子増幅反応によって得るステップとして、調整したゲノムDNAを鋳型とし、変異1型検出用のプライマーを用いたPCR ( Taq DNA polymerase を使用、94 ℃で20秒間、67 ℃で20秒間、72 ℃で30秒間からなる工程を1サイクルとした27サイクル反応)及び、変異2型検出用のプライマーを用いたPCR ( Taq DNA polymerase を使用、94 ℃で20秒間、65 ℃で20秒間、72 ℃で30秒間からなる工程を1サイクルとした28サイクル反応)を行い、変異が含まれると考えられる遺伝子断片を増幅させる。PCR法は、M. A. Innis, D. M. Gelfaud, J. J. Snindky, & T. J. White (Ed.), PCR protocols: a guide to methods and applications, Academic Press, Inc., New York (1990); M. J. McPherson, P. Quirke & G. R. Taylor (Ed.), PCR: a practical approach, IRL Press, Oxford (1991); R. K. Saiki et al., Science, 239, 487-491 (1988); M. A. Frohman et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85, 8998-9002 (1988)などに記載の方法、あるいはそれを修飾したり、改変した方法により行うことができる。また、PCR法は、それに適した市販のキットを用いて行うことができ、キット製造業者あるいはキット販売業者により推奨されているプロトコールに従って実施することもできる。プライマーは、Agnew. Chem. Int. Ed. Engl., Vol. 28, p. 716-734 (1989)に記載されているような既知の方法、例えば、トリエステル法、ホスファイト法、ホスホアミダイト法、ホスホネート法などの方法により化学合成されることができる。通常合成は、修飾された固体支持体上で合成を便利に行うことができることが知られている。例えば、合成反応は自動化された合成装置を用いて行うことができ、そのような装置は市販されている。
【0037】
変異1型、あるいは変異2型の有無を調べるステップとして、これらの反応液0.5マイクロリットルを3700蛍光DNAシークエンサー(商品名、PEバイオシステムズ社製)を用いて電気泳動し、増幅DNA断片のサイズを、GENESCANとGenotyper software(商品名、PEバイオシステムズ社製)を用いて測定する。
【0038】
結果の判定方法を表に示す。
【表1】
Figure 0004129546
【0039】
変異1型検出用のプライマーでPCRを行った場合、291 bpのDNA断片のみが検出されれば正常ウシであり、291 bpと295 bpの両方のDNA断片が検出されれば変異1型のヘテロ接合ウシであり、291 bpのDNA断片のみが検出されれば変異1型による軟骨異形成性矮小体躯症ウシである。
【0040】
変異2型検出用のプライマーでPCRを行った場合、168 bpのDNA断片のみが検出されれば正常ウシであり、166 bpと168 bpの両方のDNA断片が検出されれば変異2型のヘテロ接合ウシであり、166 bpのDNA断片のみが検出されれば変異2型による軟骨異形成性矮小体躯症ウシである。
【0041】
[その他の実施例]
本発明に用いられる核酸試料の由来は、血液に限らず、例えばそれ以外の適当な細胞又は組織由来でもよい。核酸としては、ゲノムDNAに限らず、例えばmRNA等でもよい。mRNAの場合は、逆転写酵素によって、cDNAが合成され、その塩基配列が調べられることが好ましいが、mRNAの塩基配列が直接解析されてもよい。ウシの核酸試料の調整は、例えばMolecular cloning, a laboratory manual (2nd edition)(J. Sambrook, E. F. Fritsch & T. Maniatis (Ed.), Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York (1989))に記載の方法により行うことができる。
【0042】
ウシLIMBIN遺伝子中で変異部位を含むと考えられる領域が増幅される際、遺伝子増幅反応としてPCR法を用いたが、それに限らず、例えばRNAポリメラーゼを利用した核酸増幅法や鎖置換増幅法のような核酸増幅法を利用してもよい。
【0043】
増幅の対象となる領域としては、ウシLIMBIN遺伝子の塩基配列のうち、ウシの軟骨異形成性矮小体躯症の原因となる変異を含んでいる領域であれば特に限定されず、例えば、配列表の配列番号:1に示される塩基配列の中の全体でも構わない。
【0044】
検出する変異として、1356位のCからTへの変異あるいは2054〜2055位のCAからGへの変異を対象としたが、軟骨異形成性矮小体躯症を引きおこす変異であれば、これらに限らない。
【0045】
PCR法で用いるプライマーとしては、上記のプライマーに限定されず、(a)配列表の配列番号:1に示された塩基配列のうちの連続した塩基配列を有するオリゴヌクレオチド及び(b)配列表の配列番号:1に示された塩基配列のうちの連続した相補塩基配列を有するオリゴヌクレオチドで、配列番号:1に示された塩基配列において、aのオリゴヌクレオチドに対応する塩基配列の3’末端の塩基が、bのオリゴヌクレオチドに相補的な配列に対応する塩基配列の5’末端の塩基より、5’末端側に存在すれば使用することができる。(a)配列表の配列番号:1に示された塩基配列のうちの5’端に近い領域に相当する塩基配列を有するオリゴヌクレオチド及び(2)配列表の配列番号:1に示された塩基配列のうちの3’端に近い領域に対する相補塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを使用してもよい。プライマーの長さは、好ましくは10〜50個のヌクレオチドであり、より好ましくは15〜35個のヌクレオチドであるのがよい。また、オリゴヌクレオチドは、一つ又はそれ以上の修飾された塩基を含有していてもよく、例えば、イノシンなどの天然には存在しない塩基あるいはトリチル化された塩基などを含有していてもよい。
【0046】
PCRの反応条件は上記の条件に限定されず、上記した文献の記載を参考に反応条件を選択することができる。PCRにおいては、DNA鎖の熱変性、プライマーのアニーリング及びポリメラーゼによる相補鎖の合成からなる一つのサイクルが、例えば、10〜50回、好ましくは20〜35回、より好ましくは25〜30回繰り返して行われる。
【0047】
軟骨異形成性矮小体躯症の原因となる変異の存在の検出方法としては、PCR法により得られたDNA断片長を調べることにより検出されるとしたが、ハイブリダイゼーションや塩基配列の決定やRFLP(restriction fragment length polymorphism)などによって検出してもよい。DNA断片の塩基配列の決定は、化学分解法(Maxam & Gilbert法)、チェーンターミネーター法(Sangerジデオキシ法)などにより行うことができる。また、軟骨異形成性矮小体躯症の原因となる塩基を含む遺伝子断片を一旦PCRで増幅した後、別のプライマーを用いてPCRを行うことにより、変異の有無を検出してもよい。
【0048】
プライマーのラベル成分は、分光学的手段、光学的手段、生化学的手段、免疫学的手段、酵素化学的手段、放射化学的手段などにより検出できるものであってもよい。例えば、ペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼなどの酵素、32Pなどの放射性ラベル、アイソトープ、ビオチン、ディゴキシジェニン、蛍光色素、発光物質、発色物質などが挙げられる。
【0049】
本発明の目的、特徴、利点及びそのアイデアは、本明細書の記載により当業者には明らかであろう。以下の発明の実施の形態の項の記載及び具体的な実施例などの記載は、本発明の好ましい態様を示すものであり、説明のためにのみここにおいて示されているものであることは理解されるべきであり、本明細書で開示されている本発明の意図並びに範囲内で様々な改変並びに修飾が、それらの記載に基づいて当業者に容易に明らかになるであろう。
【0050】
【発明の効果】
本発明により軟骨異形成性矮小体躯症ウシおよびそのキャリアを簡便かつ迅速に検出し、診断することが可能となる。
【0051】
【配列表】
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【図面の簡単な説明】
【図1】軟骨異形成性矮小体躯症ウシ由来のウシLIMBIN遺伝子の1356位のCからTへの変異(変異1:1356位のCを四角形で囲んでいる)および2054〜2055位の塩基配列がCAからGへの変異(変異2:2054〜2055位のCAを四角形で囲んでいる)を示す図である。→は、変異を検出するためのPCRプライマーの位置を示す。
【図2】 LIMBIN遺伝子の変異1型および変異2型を検出するための検査法を示す。変異1型では、正常型は291 bpのPCR生成物が得られるが、変異型では295 bpのPCR生成物が得られる。また、変異2型では、正常型は168 bpのPCR生成物が得られるが、変異型では166 bpのPCR生成物が得られる。

Claims (7)

  1. ウシの核酸試料を得るステップと、
    配列番号:1に示される塩基配列において1356位に相当する塩基を含み、配列番号:1に示される塩基配列を有する核酸断片と2054位及び2055位に相当する塩基を含み、配列番号:1に示される塩基配列を有する核酸断片のうち、少なくとも一方の核酸断片を、該核酸試料から遺伝子増幅反応によって得るステップと、
    得られた前記核酸断片内の1356位に相当する塩基についてはCとTのいずれであるか、2054位及び2055位に相当する塩基についてはCAとGのいずれであるか、を調べるステップと、
    を含むことを特徴とする、ウシの軟骨形成性矮小体躯症の遺伝子診断法。
  2. 前記遺伝子増幅反応が、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)を含むことを特徴とする、請求項1に記載のウシの軟骨形成性矮小体躯症の遺伝子診断法。
  3. 該塩基における変異の有無を調べるステップが、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)を含むことを特徴とする、請求項1に記載のウシの軟骨形成性矮小体躯症の遺伝子診断法。
  4. 前記核酸試料が、ゲノムDNA、cDNA、またはmRNAを含む試料であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のウシの軟骨形成性矮小体躯症の遺伝子診断法。
  5. 配列番号:1に示される塩基配列において1356位に相当する塩基を含み、配列番号:1に示される塩基配列を有する核酸断片と2054位及び2055位に相当する塩基を含み、配列番号:1に示される塩基配列を有する核酸断片のうちの少なくとも一方を、ウシの核酸試料から遺伝子増幅反応によって得るためのプライマーとなる2つのオリゴヌクレオチドを含み、
    前記オリゴヌクレオチドの一方は、配列番号:1に示される塩基配列を有するポリヌクレオチドの相補鎖の一部からなる、
    請求項1に記載の遺伝子診断法を用いてウシ軟骨形成性矮小体躯症を検定するためのキット。
  6. 前記2つのオリゴヌクレオチドが、15〜35ヌクレオチドからなることを特徴とする、請求項5に記載のキット。
  7. 前記2つのオリゴヌクレオチドが、配列番号:10、11、12から選ばれるオリゴヌクレオチドと配列番号:8、9、13から選ばれるオリゴヌクレオチドであることを特徴とする請求項6に記載のキット。
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