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JP4132366B2 - 遊離砥粒研磨スラリー組成物 - Google Patents
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JP4132366B2 - 遊離砥粒研磨スラリー組成物 - Google Patents

遊離砥粒研磨スラリー組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、硬度の異なる複数の異硬度材料から構成される複合材料間における研磨量の差、即ち選択研磨を生じることなく均一に削る加工工程で使用するのに適した遊離砥粒研磨スラリー組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、光学部品、電子部品や精密機器部品などに対して、ますます高機能化、高性能化が要求されてきており、使われている材料も、金属結晶材料、セラミックス、ガラス、プラスチックと非常に多岐にわたっている。そのため硬度の異なる複数の材料から構成される部品の研磨用途が多くなってきている。このような複合材料の研磨加工の一例として、電子部品に関してはLSIの多層配線工程における配線金属と層間絶縁膜との均一加工や光学部品では光ファイバーコネクタの端面研磨などが挙げられる。
【0003】
またコンピューターの記録媒体であるハードディスクドライブは年々その記録密度の向上が計られており、高記録密度を達成する一つの手段として、ハードディスクと磁気ヘッドの浮上隙間を狭め、ディスク/ヘッド間のスペーシングを低減させる、所謂ヘッドの低浮上化が試みられている。
ハードディスクドライブに搭載されている磁気ヘッドは薄膜型磁気ヘッドが主流であり、アルティック(Al23−TiC)などの基材となるセラミックスとパーマロイ(Fe−Ni)、センダスト(Fe−Al−Si)などの磁性材料である金属膜等による複合材料で構成されている(図2)。
【0004】
また現在浮上型磁気へッドは一般的に以下のような工程で製造されている:
1.バーの切り出し工程(このバーは図1に示すように多数の磁気交換素子がマトリックス状に形成されたウエハを切断したものであり、複数のスライダーが列状に配列されている。)、2.バーを加工治具に接着する工程(図3参照)、3.バーのラッピング処理(図4参照、ラッピング処理とは、図4に示すように錫等を主材料とした定盤を回転させこの上に被研磨物をおいて、遊離砥粒研磨スラリー組成物等を供給しながら行う、スライダーのABSの研磨加工をいう。)、4.加工治具からバーを剥離する工程、5.レールエッチング工程、及び6.バーをスライダーに切断分離する工程。
これらの工程の中で、この発明は3.バーのラッピング処理における研磨に関する。
【0005】
従来の遊離砥粒研磨スラリー組成物を用いて、セラミックスと金属膜との複合材料である薄膜磁気ヘッドのABSの研磨加工を行う場合、材料間の硬度の違いにより、磁極部に使用されている軟質材料であるパーマロイやセンダストなどの金属膜が選択的に加工され、段差が発生するものがほとんどであった。このパーマロイやセンダストなどの金属膜によって構成されている磁極部材料の選択研磨は、セラミックスからなるABSより磁極部などの金属膜を後退させることになり、記録媒体との磁気間隔を増大させる所謂ポールチップリセッション(Pole Tip Recession:PTR)が発生し、実質的なへッドの浮上量を増大させてしまうものである。
【0006】
従来、異硬度材料が混在する複合材料を研磨するために潤滑剤が用いられてきたが、この潤滑剤は被研磨物に対する潤滑効果の作用機構から一般的に1)ステアリン酸、オレイン酸などの脂肪酸である油性剤、2)リン酸エステル、Zn-DTPなどの耐摩耗剤、3)有機Mo化合物などの極圧添加剤の3つに大別されている。
このうち、耐摩耗剤は、油性剤では潤滑効果が消失する様な過酷な研磨条件においても、その効果が維持するために摩擦を低減する。低〜高荷重、高温条件では摩擦表面とのトライボケミカル反応による潤滑膜を形成して摩擦を低減する(広中清一郎;潤滑油添加剤の作用機構、塑性加工シンポジウム、33-43、1994、R.J.ハートレイら;耐摩耗剤・極圧剤、トライボロジスト、326-331、1995)。
【0007】
この様な耐摩耗剤のうち、分子鎖に硫黄を含む化合物は摩擦面で発生する摩擦熱によって分解し、被研磨物との間に硫化物から成る無機質の被膜を形成し、潤滑特性を維持する。
同様に分子鎖にリンを含む耐摩耗剤は摩擦面で発生する摩擦熱によって分解して被研磨物との間にリン化物またはリン酸化物から成る無機質の被膜を形成する。リンを含む化合物の中でも、亜リン酸エステル系は摩擦熱によって加水分解し、無機質の被膜を形成すると考えられている。(大森俊英ら;リン系極圧添加剤の鉄表面における吸着と反応(第2報)、トライボロジスト、188-194、1990)。
【0008】
硫黄及びリンを両方含む化合物もそれぞれ単独に含有する化合物と同様な効果がある(益子正文;潤滑剤の化学と物理、トライボロジーにおける基礎と応用、15-34、1996)。
これらの無機質の被膜は被研磨物と化学吸着しているために、有機分子の物理吸着に比べて吸着力が強く高温まで安定に存在する。無機質の被膜を除去するには大きなエネルギーが必要であるために、無機質の被膜を除去する程の過酷な研磨条件でない限り、被研磨物に対する潤滑効果が維持されることが知られている(桜井俊男;潤滑と摩耗の化学、潤滑、635-642、1982)。
【0009】
また耐摩耗剤として含硫有機モリブデンが研究されており(P.C.H. Mitchell“Oil Soluble Mo-S Compounds as Lubricant additive”Wear, 100 (1984) 281-300、岡部平八朗編“石油製品添加剤の開発と最新技術”シーエムシー(1998)p99〜106等)、含硫有機モリブデンは異硬度材料が混在する複合材料を研磨するための潤滑剤として検討されている(特願平10−255022)。
この様に耐摩耗剤の効果は広く一般に知られているが、これらの耐摩耗剤は従来、機械部品、例えば、ギヤやタービン等のしゅう動面の摩擦を低減させる用途に用いられている。従来、異硬度材料から構成される薄膜型磁気ヘッド等の複合材料の研磨に加わる荷重はギアなどのしゅう動面に加わる荷重よりもはるかに低い。従って、耐磨耗剤を用いなくとも、複合材料の研磨面を加工することが可能であったが、均一加工は出来なかった。従って、本発明の様に耐摩耗剤を遊離砥粒スラリー組成物に添加し、異硬度材料から構成される複合材料の選択研磨防止に成功裏に応用されていない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、異硬度材料が混在する複合材料を、異硬度材料間における研磨量の差、即ち選択研磨を生じることなく均一に削る加工工程で使用するのに適した遊離砥粒研磨スラリー組成物を提供することである。また薄膜型磁気ヘッドの研磨加工において薄膜型磁気ヘッドのABS面をスクラッチを発生することなく均一に加工する遊離砥粒研磨スラリー組成物及びそれを用いた研磨方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の主題は、異硬度材料が混在する複合材料を研磨するための遊離砥粒研磨スラリー組成物であって、研磨剤粒子、耐摩耗剤及び分散媒を含む遊離砥粒研磨スラリー組成物、更に界面活性剤、高分子系表面改質剤及びカップリング剤から成る群から選択される少なくとも一種を含む前記組成物、前記耐摩耗剤がその分子鎖中にイオウ又はリンを含有する前記組成物、並びに前記耐摩耗剤の添加量が0.1重量%以上である前記組成物である。
ここに使用される耐磨耗剤は、その分子鎖中にイオウ又はリンを含有する、式
【化1】
Figure 0004132366
で表されるリン酸エステル、式
【化2】
Figure 0004132366
で表されるリン酸トリクレジル( TCP )、式
【化3】
Figure 0004132366
で表されるリン酸トリアリル、式
【化4】
Figure 0004132366
で表されるジチオリン酸亜鉛( Zn-DTP )、式
【化5】
Figure 0004132366
で表されるリン硫化ポリオレフィン、式
【化6】
Figure 0004132366
で表されるバリウムチオピロホスフェート、式
【化7】
Figure 0004132366
で表されるニッケルチオホスフェート、式
【化8】
Figure 0004132366
で表される硫化脂肪酸エステル
から選ばれる。
更に本発明の主題は、薄膜磁気へッドの製造における薄膜磁気ヘッドのエアベアリング面となる面の研磨加工において、前記研磨加工が前記遊離砥粒研磨スラリー組成物を用いる薄膜磁気へッドの研磨方法である。
【0012】
このような遊離砥粒研磨スラリー組成物を使用することにより、異硬度材料が混在する複合材料を研磨する段階で、固体接触が発生している部分の比率を低下させ、選択的に硬度の低い被研磨物表面の摩擦係数を下げることになる。つまり加工除去されやすい硬度の低い材質の除去量を小さくすることにより、異硬度材料間における研磨量の差を生じることなく均一に加工することが可能になる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明のスラリーは、研磨剤粒子、耐摩耗剤及び分散媒を含む遊離砥粒研磨スラリー組成物である。各成分について以下説明する。
耐摩耗剤は遊離砥粒スラリーの研磨性能を向上させる効果を有し、特に、硫黄及びリン単独若しくは両方を含有する耐摩耗剤は境界潤滑における摩擦特性を改善する。具体的には、低〜中荷重、高温条件で摩擦表面とのトライボケミカル反応による潤滑膜を形成し、摩擦を低減する。
【0014】
この耐摩耗剤にはリン酸エステル、金属ジチオリン酸塩、リン酸エステルアミン塩及び硫黄系化合物がある。リン酸エステルとしては、式
【化1】
Figure 0004132366
で表されるリン酸エステル、式
【化2】
Figure 0004132366
で表されるリン酸トリクレジル(TCP)、亜リン酸トリクレジル(TCPi)、リン酸トリフェニル(TPP)、リン酸ジフェニル(DPP)、亜リン酸トリフェニル(TPPi)、亜リン酸ジフェニル(DPPi)、リン酸クレジルジフェニル(CDP)、式
【化3】
Figure 0004132366
で表されるリン酸トリアリル、リン酸トリオレイル、モリブテンリン酸エステルがあり、リン酸エステル(上式のRはアルキル基)、リン酸トリクレジル及びリン酸トリアリルが好ましい。
【0015】
金属ジチオリン酸塩としては、式
【化4】
Figure 0004132366
で表されるジチオリン酸亜鉛(Zn-DTP)、式
【化5】
Figure 0004132366
で表されるリン硫化ポリオレフィン、式
【化6】
Figure 0004132366
で表されるバリウムチオピロホスフェート、式
【化7】
Figure 0004132366
で表されるニッケルチオホスフェート、ジチオリン酸ニッケル(Ni-DTP)、ジチオリン酸コバルト(Co-DTP)などがあり、ジチオリン酸亜鉛(Zn-DTP)、リン硫化ポリオレフィン、バリウムチオピロホスフェート、ニッケルチオホスフェートが好ましい。
【0016】
硫黄系化合物としては式
【化8】
Figure 0004132366
で表される硫化脂肪酸エステル、硫化イソブチレン、硫化スパーム油、硫化テルペン、硫化抹香油、ジフェニルモノサルファイド(DPMS)、ジフェニルジサルファイド(DPDS)などがあり、硫化脂肪酸エステルが好ましい。
これら耐摩耗剤の中で、リン酸エステル及び金属ジチオリン酸塩が好ましく、特にジチオリン酸亜鉛、リン酸エステル(上式のRはアルキル基)、リン酸トリクレジル及びリン酸トリアリルがより好ましい。
【0017】
これらの耐摩耗剤は被研磨物との間に無機質の被膜を形成するために、高荷重、高温条件下でも摩耗や焼付きを防ぐ効果がある。これらの耐摩耗剤は、所望の研磨特性に合わせて単体でも、2種以上の混合でも使用することが出来る。
耐摩耗剤の濃度は0.1wt%以上、好ましくは0.5wt%以上、より好ましくは1.0wt%以上である。0.1wt%より低濃度では被研磨物に作用する添加剤が少なく、複数の異硬度材料を均一に研磨することは難しい。
【0018】
本発明で用いる分散媒は、耐摩耗剤を溶解する溶媒であれば限定されないが、薄膜型磁気ヘッドに用いる場合には構成材料であるパーマロイ及びセンダストなどの金属膜が一般的に水に対して弱く腐食や錆を発生するので分散媒として非水系溶媒を用いることが望ましく、更に極性の弱い非極性溶媒を用いることが望ましい。
ここで、分散媒の極性とは普通に使用される意味で溶媒分子内の原子とその結合の種類、原子配列とその位置などによって分子内に生じる双極子に基づく性質である。この極性の大きさは相互作用する分子の極性によって相対的に決まるものである。
溶媒の極性は、定性的に、Hildebrandの溶解性パラメーター(sp値)δ値で表される。この値δが大きい程極性が大きく、小さいものほど極性は小さい。このδ値は、更に分散、極性による配向及び水素結合などの分子間相互作用によっていくつかに分けられるが、これらの値は、その溶媒がどのような化合物を良く溶かすかという、化合物に対する溶解の選択性を決定するものである。
【0019】
本発明の遊離砥粒研磨スラリー研磨液の分散媒に適した有機溶媒は、このδ値が低いものが望ましい。これは、極性成分が増加することにより分散媒の臭気が問題になったり、分散媒自体が人体や被研磨物に対して悪影響を与えるからである。さらに本発明では、研磨加工中の研磨スラリーの蒸発を無くし、安定な研磨加工を行うために分散媒の蒸発速度が遅い溶媒が適している。これは、蒸発速度の速い分散媒は研磨作業中に分散媒が蒸発してしまい、安定な研磨加工が困難になるからである。
これらのことから、本発明に用いる分散媒は溶解性パラメーターsp値が10.0以下、好ましくは8.0以下、相対速度が5.0以下、より好ましくは2.0以下のものが適している。これらの分散媒としては例えば、エクソン化学(株)製、無臭イソパラフィン系溶媒:アイソパーシリーズや低臭ナフテン系溶媒:EXXSOLシリーズ、モービル化学製n−パラフィン系溶媒:ホワイトレックスシリーズおよび工業用脂肪族系溶媒であるペガソール、ペガホオワイト、サートレックスなどがある。
【0020】
本発明に用いられる研磨材粒子は、研磨加工一般に用いられるものであれば特に限定されることなく使用することが出来る。具体的には、ダイヤモンド、アルミナ、シリコーンカーバイド、酸化セリウム、酸化ケイ素、酸化鉄などが挙げられる。研磨材粒子は、被研磨物の硬度や複合材料種、研磨除去量および研磨仕上げ面精度などによって任意に設定することが可能であるが、薄膜磁気ヘッドのラッピング加工の場合、呼称粒度が0〜1/10μm、0〜1/8μmおよび0〜1/4μmなど1μm以下、より好ましくは0.5μm以下のダイヤモンド微粒子研磨材が一般的に使用されている。また、研磨材粒子のスラリー組成物中における濃度は0.01〜1.0重量%程度、好ましくは0.05〜0.4重量%程度が一般的であり、研磨能率や研磨精度を考慮し調製させる必要がある。
【0021】
粉体の状態から安定な分散系を作るには、固/液界面でのぬれ性が良くなければならない。ここでぬれ性とは、液体が固体表面から気体を押しのける現象を言うが、乾燥した粉体の表面には空気が強く吸着しているため、これを液体で置換する必要がある。また、ぬれ性を良くするには、固/液の化学的親和性を強めればよく、親和性は両者の極性や化学構造が近いものほど大きくなる。
研磨材粒子に用いられる粒子表面には、表面水酸基などの極性官能基が存在するため親水性を示し水のようなδ値の高い極性溶媒中ではぬれ性が良いため容易に分散させることが可能である。しかし、本発明で用いる分散媒は、非極性溶媒であるため、親水性粒子である研磨材を非極性溶媒中に均一に分散させるには、粒子表面と分散媒との親和性を高めなければならず、疎水化処理を施す必要がある。
【0022】
粒子表面を疎水化処理するために、本発明の遊離砥粒研磨スラリー組成物に界面活性剤、高分子系表面改質剤、カップリング剤などの表面改質剤を添加してもよい。
界面活性剤を用いる方法は、界面活性剤が分子中に疎水性の長い炭化水素鎖と末端に強い極性基(=親水基)を持つ両親媒性物質であることを利用している。親水性である粒子表面と界面活性剤の極性基との相互作用により疎水性である炭化水素鎖を外側に向けて吸着するため、全体的に見ると粒子の表面性は親水性から疎水性に変化し、非極性溶媒中で沈降することなく安定に存在することが可能となる。
【0023】
本発明に界面活性剤を使用する場合は、その界面活性剤は非極性溶媒に溶解するものでなければならず、そのような界面活性剤は、その分子骨格中に二重結合や三重結合を有するか、又は分岐が存在するものが一般的である。磁気ヘッドの磁性部に対して腐食などを引き起こしうるイオン性界面活性剤を用いるより、好ましくは非イオン性界面活性剤を用いることが望ましい。そのような界面活性剤としては、例えばソルビタン脂肪酸エステル系であるモノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、グリセリンエステル系としてはペンタオレイン酸デカグリセリル、ペンタインステアリン酸デカグリセリル、トリオレイン酸デカグリセリル、ペンタオレイン酸ヘキサグリセリル、モノイソステアリン酸グリセリル、モノイソステアリン酸ジグリセリルなど、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル系であるテトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル系であるモノオレイン酸ポリエチレングリコール2EO、6EO、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系であるPOE(2)オレイルエーテル、POE(3)2級アルキルエーテルなどがある。
【0024】
本発明に使用される界面活性剤濃度は、粒子に飽和吸着を起こす濃度以上であれば良く、使用する研磨材粒子の表面性および界面活性剤により変化するが、0.01重量%以上が好ましい。また一般的に50重量%以下で用いられる。これは、非極性溶媒中では水系に比べ、一層目での界面活性剤の吸着量は小さいため、界面活性剤同士が疎水−疎水相互作用を利用し二層吸着することは困難となり、水系のように界面活性剤の添加濃度とともに表面性が変化することがないためである。
【0025】
高分子系表面改質剤には、ポリマーの一端が界面に強く吸着し、その他の部分が溶媒中に伸長する、ポリ(2−ビニルピリジン)-ポリスチレン(PVPy-PS)やポリ(2−ビニルピリジン)-ポリイソプレン(PVPy-PIS)等のポリマーブラシが挙げられる。これらは粒子表面に吸着し厚い吸着層を形成する。この厚い吸着層によって、粒子同士の接近を立体障害的に防止することを利用している。
【0026】
またカップリング剤には、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-(メタクリロキシプロピル9トリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート(味の素株式会社製プレンアクトKR138S)、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オエチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミドエチルアミノエチル)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート等のチタネート系カップリング剤、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート(味の素株式会社製プレンアクトAl-M)や、アセトアルコキシジイソプロピレート、イソブチロキシド、2-オクタデシロキシド、2−エチルヘキシルイソプロポキシド等の有機アルミニウム系カップリング剤などが挙げられる。
本発明に使用される高分子系表面改質剤やカップリング剤の濃度は、使用する研磨材粒子の表面性等により変化するが、0.01重量%以上が好ましい。また一般的に50重量%以下で用いられる。
これらを用いる方法では、粒子表面にある表面官能基と表面改質剤を化学反応により結合させ粒子の表面性を親水性から疎水性へと変化させることを利用している。疎水化処理は上記の方法に限定されることはなく、親水性である研磨剤粒子を非極性溶媒中に均一に分散させる疎水化処理であるならいかなる処理でも用いてもよい。
【0027】
本発明の遊離砥粒研磨スラリー組成物の製造方法は、一般的な遊離砥粒研磨スラリー組成物の製造方法が適用出来る。即ち、分散媒に界面活性剤を適量溶解し研磨材粒子を適量混合する。この状態では研磨材粒子は親水性であるために非極性溶媒中では凝集状態で存在している。そこで、凝集した研磨材粒子を一次粒子に解砕するために粒子の分散を実施する。分散工程では一般的な分散方法および分散装置を用いることが出来る。具体的には、例えば超音波分散機、各種ビーズミル分散機、ニーダー、ボールミルなどが適用できる。
分散装置の使用によって、粒子が一次粒子まで解砕され現れた表面に界面活性剤が吸着しぬれ性を改善することにより凝集することなく分散安定性が良好なスラリーを調製することが可能となる。
【0028】
この発明の被研磨物は、主にHv硬度が26〜360の軟材料とHv硬度が700〜4000の異硬度材料が混在する複合材料である。ここに含まれる軟材料と硬材料はそれぞれ一種類又は複数であってもよい。この軟材料は特に金属であり、例えばTi(Hv硬度:60),Pb(Hv硬度:37),Ag(Hv硬度:26),W(Hv硬度:360),V(Hv硬度:55),Nb(Hv硬度:80),Ta(Hv硬度:355),Pd(Hv硬度:38),Cr(Hv硬度:130),Ru(Hv硬度:350),Cu(Hv硬度:117),Pt(Hv硬度:39),Mo(Hv硬度:160),Th(Hv硬度:38),Ni(Hv硬度:60),センダスト(Fe−Al−Si、Hv硬度:600)、パーマロイ(Fe−Ni、Hv硬度:200)、アルミニウム(Hv硬度:200)が挙げられる。硬材料はセラミックス、ガラス等であり、例えば、石英ガラス(Hv硬度:620)、アルティック(Al23−TiC、Hv硬度: 2500)、TiC(Hv硬度:3200),AlN(Hv硬度:1370),Si34(Hv硬度:2160),ZrO2(Hv硬度:700),cBN(Hv硬度:4000),SiO2(Hv硬度:620),SiC(Hv硬度:2400),hBN(Hv硬度:4700),AlTiC(Hv硬度:2500),Al23(Hv硬度:2000),Si34(Hv硬度:2160),AlN(Hv硬度:1370),MgO(Hv硬度:920),B4C(Hv硬度:3200),TaN(Hv硬度:1080)が挙げられる。
また特に、被研磨物が薄膜磁気ヘッドの場合には、この被研磨物は例えば図2に示すようなアルティック、センダスト、パーマロイ、アルミナ等の異硬度材料が混在する構造になる。
【0029】
ハードビッカース硬度(Hv硬度)の測定法はJIS Z2251に規定されている。具体的には、対面角が136°のダイヤモンド正四角錐圧子を用い、試験片にくぼみを付けた時の試験荷重とくぼみの対角線長さから求めた表面積とから、次式を用いて算出する。
【数1】
HV=0.102(F/S)=0.102・(2Fsinθ/2)/d2=0.18909F/d2
ここで、HVはHv硬度、Fは試験荷重(N)、Sはくぼみの表面積、Dはくぼみの対角線の長さの平均(mm)、θはダイヤモンド圧子の対面角を表わす。なお、Hv硬度の試験機はJIS B7725に、硬度の基準となる基準片は鋼製(JIS G4401, JIS G4805)、黄銅製(JIS H3100)、銅製(JIS H3100)とそれぞれ定められている。また、基準片の使用範囲の表面粗さはJIS B0601(表面粗さ)により0.1sの鏡面、基準片の表面および裏面の平行度はJIS B0621(形状および位置の精度の定義および表示)により、50mm当たり0.02mm以下と定められている。
【0030】
【実施例】
実施例1〜8、比較例1〜3
本実施例では、アルティック、センダスト及びパーマロイによって構成される薄膜型磁気ヘッドを研磨加工する際の潤滑剤の添加効果について検討した。
本実施例に用いた遊離砥粒研磨スラリー組成物の組成を表1に示す。分散媒として非極性溶媒であるアイソパーMを用い、界面活性剤として非イオン性界面活性剤であるモノオレイン酸ソルビタン(花王(株)製、SP-O10)を用いた。
【0031】
潤滑剤(耐摩耗剤)としてジチオリン酸亜鉛(旭電化工業、Z−112)、リン硫化ポリオレフィン(日本油脂、ADDITIN)、バリウムチオピロホスフェート(日本ルーブリゾール、LUBRIZOL)、ニッケルチオホスフェート(チバ・スペシャルティ・ケミカル、イルガルーブ)、リン酸トリクレジル(関東化学(試薬))、リン酸トリアリル(関東化学(試薬))、リン酸エステル(東邦化学工業、PHOSPHANOL)、硫化脂肪酸エステル(大日本インキ化学、Mobiladce DO)を用いた。
また比較のため、潤滑剤(耐摩耗剤)を使用していないスラリーと、潤滑剤として油性剤であるオレイン酸(和光純薬(試薬))及びマカデミアナッツ油(日光ケミカルス(試薬))を添加したスラリーについても同様の試験を行った。
【0032】
研磨実験には、日本エンギス(株)製、自動精密ラッピングマシンHYPEREZ EJ−3801N型を用いた。研磨条件はラップ盤に錫/鉛定盤、定盤回転速度60rpm、スラリー研磨液供給量を30秒間隔に3秒間噴霧、加工荷重1300g/cm2 、加工時間30分間とした。
研磨特性の評価は研磨加工後の薄膜磁気型ヘッドのアルミナチタンカーバイド/金属膜間の段差、つまりポールチップリセッション値(PTR値)を走査型プローブ顕微鏡(AFM)によって測定した。このPTR値は、要求性能によっても異なるが一般的に約10nm以下、特に5nm以下が良好と考えられている。また、スクラッチの評価は、AFMおよび微分干渉光学顕微鏡を用いた。試験結果を表1にまとめる。
【0033】
【表1】
Figure 0004132366
本実施例の結果から、硫黄及び/又はリンを含む耐摩耗剤を用いて研磨した薄膜型磁気ヘッドのPTR値はいずれも比較例であるオレイン酸、マカデミアナッツ及び無添加を用いたときよりも低くなり、硬度の異なる複合材料から構成される薄膜型磁気ヘッドをより均一に研磨できた。
【0034】
実施例9
本実施例は、遊離砥粒研磨スラリー組成物中の耐摩耗剤の有効添加量について評価した。耐摩耗剤としてジチオリン酸亜鉛を用いてその添加量を変化させた。磨耗試験についても実施例1と同様に行った。用いたスラリーの処方及び結果を表2に示す。
【0035】
【表2】
Figure 0004132366
【0036】
実施例の結果から、硫黄及びリンを両方含有する耐摩耗剤を0.075wt%添加することによって、PTR値が5nm以下になり良好であった。また、耐摩耗剤の添加量を0.1wt%以上にすることによってPTR値が安定した。このことから、添加量が0.1wt%以上であれば、異硬度材料から構成される複合材料を均一に加工することが出来た。
【0037】
【発明の効果】
これらの実施例の結果から、遊離砥粒スラリー組成物中に硫黄及びリンを単独若しくは両方含有する耐摩耗剤を0.1wt%以上添加することにより、硬度の異なる複合材料を材料間の硬度差によって発生する軟質材料の選択研磨を防止した均一な研磨加工が可能になった。
以上、本発明では主として異硬度材料からなる薄膜磁気ヘッドの研磨加工について述べたが、本発明の遊離砥粒研磨スラリー組成物の用途はこれにとどまるものでなく異なる硬度の材料で構成される複合材料の選択研磨の防止に広く応用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】被研磨物が磁気ヘッド素子の場合の、ウェハから切り出されたバーを示す。
【図2】磁気ヘッド素子の構成の一例を示す、図1のバーのA−A断面図である。
【図3】バーを加工治具に接着させた様子を示す斜視図である。
【図4】バーのラッピング処理の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 アルティック (Al2O3・TiC)
2、4、6、8、10 アルミナ (Al2O3)
3 センダスト (Fe-Al-Si)
5 MR素子
7、9 パーマロイ (Fe-Ni)
11 銅

Claims (4)

  1. 異硬度材料が混在する複合材料を研磨するための遊離砥粒研磨スラリー組成物であって、研磨剤粒子、耐磨耗剤及び非水系溶媒を含み、前記耐磨耗剤がその分子鎖中にイオウ又はリンを含有する、式
    Figure 0004132366
    で表されるリン酸エステル、式
    Figure 0004132366
    で表されるリン酸トリクレジル( TCP )、式
    Figure 0004132366
    で表されるリン酸トリアリル、式
    Figure 0004132366
    で表されるジチオリン酸亜鉛( Zn-DTP )、式
    Figure 0004132366
    で表されるリン硫化ポリオレフィン、式
    Figure 0004132366
    で表されるバリウムチオピロホスフェート、式
    Figure 0004132366
    で表されるニッケルチオホスフェート、式
    Figure 0004132366
    で表される硫化脂肪酸エステル
    から選ばれた遊離砥粒研磨スラリー組成物。
  2. 更に界面活性剤、高分子系表面改質剤及びカップリング剤からなる群から選択される少なくとも一種を含む請求項1に記載の組成物。
  3. 前記耐磨耗剤の添加量が0.1重量%以上である請求項1又は2に記載の組成物。
  4. 薄膜磁気ヘッドのエアベアリング面となる面の研磨加工を行う工程を含む薄膜磁気ヘッドの製造方法であって、前記研磨加工が請求項1〜のいずれか一項に記載の遊離砥粒研磨スラリー組成物を用いる薄膜磁気ヘッドの研磨方法。
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