JP4135422B2 - ボールねじ部を備えるシャフトの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ボールねじを転造する技術に関するものである。特に、ボールねじの有効ねじ長さを長く確保する技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図1は、自動車のパワーステアリング装置に用いられるシャフトを例示している。シャフトには、図1の左から右に向かって順に、小径円柱部A、ボールねじ部B、ラック歯部Cが形成されている。シャフトのラック歯部Cは、コラムシャフト下端に設けられたピニオン噛み合わされ、ラック・ピニオン機構を構成する。ボールねじ部Bは、モータによって回転されるボールねじナットに収容される。運転者がハンドルを操作するとコラムシャフトが回転し、ラック・ピニオン機構によってシャフトが軸方向に往復動する。シャフトが往復動すると、車輪が操舵される。モータがボールねじナットを回転させると、ボールねじナットがボールねじ部Bに軸方向の力を加え、これによってシャフトの往復動がアシストされる。
この種のシャフトは、限られた長さの中で、ボールねじ部の有効ねじ長さを長く確保することが求められる。
【0003】
シャフトを製造する場合、小径円柱部Aと、小径円柱部Aよりも大径なボールねじ転造用の円柱部と、ラック歯部Cが形成された中間素材を製造する。この場合、ラック歯部Cは転造を施さない非転造部である。そして、中間素材のボールねじ転造用円柱部を小径円柱部A側からラック歯部C側に向けてスルーフィード転造し、ボールねじ部Bを完成させる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
図2を参照しながら説明する。ボールねじ転造用円柱部をスルーフィード転造してボールねじを転造するロールダイスは、軸方向に所定の長さを有している。ロールダイスがボールねじ転造用円柱部を図2の左から右に向かって転造する場合、ロールダイスをラック歯部Cと干渉しない位置で停止させなければならない。ロールダイスをラック歯部Cと干渉しない位置で停止させると、ボールねじ転造用円柱部のラック歯Cに近い部分は、ロールダイスの右側の一部によってしか転造されておらず、完全に塑性変形していない。このため、ラック歯部Cに極近い位置までを完全なねじ形状に形成することは困難であり、ラック歯部Cに隣接する側(転造終了側)で長さg1の不完全ねじ部(または、未加工領域)が形成されてしまう。なぜなら、ボールねじ転造用円柱部はロールダイスを後退させると弾性変形から解放され、外径部が大きく膨らんでしまうからである。従って、ボールねじの有効長さ(完全ねじ部の長さ)はD1に留まり、シャフトの長さを十分に活用していないという問題がある。
【0005】
そこで、ボールねじBの転造終了側に形成されるのが避けられない不完全ねじ部の長さを、極力短くする転造技術が必要とされている。不完全ねじ部の長さをg2まで短くすることができれば、ボールねじの有効長さがD2まで伸びる。ボールねじの有効長さが伸びると、シャフトの軸方向長さを短縮でき、パワーステアリング装置を小型化することができる。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、ボールねじ部とラック歯部との間に残る不完全ねじ部の長さをより短くできる転造技術を実現することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段および作用と効果】
請求項1に記載の発明は、ボールねじ転造用円柱部と非転造部とが連続し、ボールねじ転造用円柱部の非転造部と所定距離だけ離れた位置に、ボールねじのねじ底よりは大径でボールねじ転造用円柱部よりは小径の小径部を有する中間素材を、円柱部とその円柱部の一端に連続して外向きに径が減少する食いつき側円錐台部を有するロールダイス間でスルーフィード転造するボールねじ部を備えるシャフトの製造方法である。この製造方法では、中間素材をボールねじ転造用円柱部の非転造部と連続していない側から転造を開始する。そして、ロールダイスの食いつき側円錐台部と円柱部との境界が、小径部を通過してから非転造部に干渉するまでの位置にあり、ロールダイスの円柱部が、非転造部に隣接するボールねじ転造用円柱部と小径部の両者に接触し、小径部の全域が完全ねじ部に成形された時点で転造を終了する。
上記の製造方法に用いる中間素材は、ボールねじ転造用円柱部の非転造部と所定距離だけ離れた位置に、ボールねじのねじ底よりは大径でボールねじ転造用円柱部よりは小径の小径部を有している。この小径部は、ボールねじ転造用円柱部より小径であるため、ロールダイスにより転造を行う際、ロールダイスが中間素材に噛み込む量が浅く、中間素材からの反力が小さくなっている。すなわち中間素材は転造により塑性変形しやすい状態にあるので、ロールダイスが非転造部と干渉しない範囲で転造を終了し、ロールダイスを後退させても、小径部は塑性変形させられボールねじとして機能するボール転動面が形成される。また、小径部がボールねじのねじ底よりは大径であるため、ロールダイスによる転造にて確実にボールねじのねじ底が形成される。よって、ロールダイスが非転造部と干渉しない範囲で転造を終了しても、非転造部に極近いところまで完全ねじが形成され、ボールねじの有効長さを長く確保することができる。
ここで、非転造部とは、シャフトのボールねじを転造しない部分を意味し、転造不可能な部分、及び性能上転造できない部分を含み、例えば、ラック歯部が相当する。また完全ねじとは、ボールねじとして機能できるねじ形状を意味する。
【0008】
上記したボールねじ部を備えるシャフトの製造方法では、ロールダイスの食いつき側円錐台部と円柱部との境界が、中間素材の小径部を通過してから非転造部と干渉するまでの位置にあり、ロールダイスの円柱部が、非転造部に隣接するボールねじ転造用円柱部と小径部の両者に接触し、小径部の全域が完全ねじ部に成形された時点で転造を終了する。
このように転造を終了すると、小径部の全域を完全ねじ部にして、ボールねじの有効長さを長くすることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
図3は、中間素材18にロールダイス10でスルーフィード転造加工を施し、ボールねじを完成させる工程を模式的に図示している。中間素材18は、図3の左から右へ順に、小径円柱部Aと、この小径円柱部Aよりも大径のボールねじ転造用円柱部2と、転造するボールねじのねじ底よりは大径でボールねじ転造用円柱部2よりは小径な小径部6と、ラック歯部Cが連続している。この構成により、ボールねじ転造用円柱部2のラック歯部C近傍に小径部6が設けられている。ボールねじ転造用円柱部2と、小径部6との間には、これらの間を繋ぐテーパ部4が形成されている。小径部6とラック歯部Cとの間には、これらの間を繋ぐテーパ部8が形成されている。
【0013】
ロールダイス10は、中間素材18の両側に一対存在するが、図3では一方のロールダイス10のみを図示している。ロールダイス10は、円柱部14と、その円柱部14の両端に連続して外向きに径が縮小する円錐台部12、16を備えている。ロールダイス10の外周には、ボールねじを転造するための螺旋状の突条(図示省略)が形成されている。
ロールダイス10は、駆動機構(図示省略)に駆動され、その軸回りに回転する。ロールダイス10の軸方向位置は固定されている。中間素材18の両側に配置されているロールダイス10の内の一方は、軸直角方向に固定されているのに対して、他方のロールダイス10は、軸直角方向に移動可能とされている。
【0014】
スルーフィード転造の一連の動作について、図面を参照しながら説明する。
図4に示されているように、スルーフィード転造の最初の動作S10(以下、「動作」を省略し、単にS10のように記載する)では、中間素材18が転造装置の所定位置に投入される。S10に続くS12では、一対のロールダイス10(図4の説明においては、以下「ロールダイスR、L」と言う)が駆動され、その回転が開始される。ロールダイスRは軸直角方向に移動可能であり、ロールダイスLは軸直角方向に固定されている。S14では、ロールダイスRが中間素材18に対してロールダイスの軸直角方向に前進を開始する。ロールダイスRが前進を開始すると、ロールダイスRとロールダイスLとの間の距離が接近する。そして、S16では、ロールダイスRとロールダイスLの間に中間素材18が挟まれ、ボールねじの転造が開始される。ボールねじの転造が開始されると、中間素材18は転造されながら回転し、軸方向に送り出される。
【0015】
S18では、ロールダイスRが前進端位置まで前進する。ロールダイスRが前進端位置まで進むことにより、ロールダイスRとロールダイスLとは所定の距離を保つように配置される。この状態で、中間素材18の転造が続けられる。S20では、中間素材18が所定位置(後述する、ロールダイス10がラック歯部Cとの干渉を避けるために中間素材18から離反する位置)まで送られたことが検知される。この検知には、例えば、光センサが用いられる。中間素材18が所定位置まで送られたことが検知されると、S22でロールダイスRの後退が開始される。ロールダイスRが後退すると、ロールダイスRは中間素材18から離れる。S24では、ロールダイスRが後退端位置まで退く。そして、S26でロールダイスR、Lの回転が停止される。
【0016】
図3の10Aは、ロールダイス間距離が接近を開始するときのロールダイス10の位置を示している。図3の10Bは、転造をほぼ終了し、ロールダイス10間距離が離反し始めるときのロールダイス位置を示している。10Bの位置からロールダイス間距離を離反させると、ロールダイス10とラック歯部Cが干渉することがない。
ボールねじ転造用円柱部2の小径部6側の端部と小径部6は、ロールダイス10がラック歯部Cとの干渉を避けるために中間素材18から離反するので、ロールダイス10の円柱部14の一部によってしか転造されない。しかしながら、小径部6は、ボールねじ転造用円柱部2よりも小径であるので、ロールダイス10が中間素材18に噛み込む量が浅く、中間素材18からの反力が小さくなっている。このため、中間素材18は転造により塑性変形しやすく、小径部6は塑性変形してボールねじとして機能するボール転動面が形成される。また、小径部6がボールねじのねじ底よりは大径であるため、確実にボールねじのねじ底が形成される。このように転造が行われると、完全ねじ部の製造限界をラック歯部C側にシフトすることができ、不完全ねじ部の長さをg2に抑えることができる。従って、ボールねじの有効長さを、従来の技術では限界であったD1からD2に伸ばすことができる。
【0017】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
従って、例えば下記に記載するように構成することもできる。
【0018】
(1)中間素材18の小径部6は、図3に示した形状に限られない。例えば、図5に示すように、段を設けても良い。図6に示すように、全体としてテーパ状であってもよい。図7に示すように、湾曲した形状であってもよい。
【0019】
(2)図8に示されているように、中間素材18のボールねじ転造用円柱部2、小径部6、非転造部Cを連続させず、ボールねじ転造用円柱部2と非転造部Cを連続させ、ボールねじ転造用円柱部2の非転造部Cと所定距離離れた位置に小径部6を設けても良い。そして、スルーフィード転造を行う際には、ロールダイス10の円柱部と円錐台部16の境界が小径部6を完全に通過した位置で、ロールダイス10間を離反させて転造を終了する。
このようにしてスルーフィード転造を行うと、小径部の全域が完全ねじ部になり、ボールねじの有効長さをより長くできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が好適に用いられるシャフトの一例を例示する。
【図2】シャフトのボールねじ寸法を説明する図。
【図3】中間素材に対するロールダイスの位置関係とボールねじ寸法を示す。
【図4】スルーフィード転造の一連の動作を示す。
【図5】小径部の変形例。
【図6】同上。
【図7】同上。
【図8】中間素材に対するロールダイスの位置関係とボールねじ寸法を示す。
【符号の説明】
A:小径円柱部
B:ボールねじ部
C:ラック歯部
D1、D2:ボールねじの有効長さ
g1、g2:不完全ねじ部の長さ
2:ボールねじ転造用円柱部
4:テーパ部
6:小径部
8:テーパ部
10:ロールダイス
12:円錐台部
14:円柱部
16:円錐台部
18:中間素材
Claims (1)
- ボールねじ転造用円柱部と非転造部とが連続し、ボールねじ転造用円柱部の非転造部と所定距離だけ離れた位置に、ボールねじのねじ底よりは大径でボールねじ転造用円柱部よりは小径の小径部を有する中間素材を、円柱部とその円柱部の一端に連続して外向きに径が減少する食いつき側円錐台部を有するロールダイス間でスルーフィード転造するボールねじ部を備えるシャフトの製造方法であって、
中間素材をボールねじ転造用円柱部の非転造部と連続していない側から転造を開始し、ロールダイスの食いつき側円錐台部と円柱部との境界が、小径部を通過してから非転造部に干渉するまでの位置にあり、ロールダイスの円柱部が、非転造部に隣接するボールねじ転造用円柱部と小径部の両者に接触し、小径部の全域が完全ねじ部に成形された時点で転造を終了することを特徴とするボールねじ部を備えるシャフトの製造方法。
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