JP4135437B2 - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
この発明は、電動パワーステアリング装置に関し、特にそのモータの出力を制御する電子制御回路の発熱状態等を監視する温度検出回路の異常を検出できる電動パワーステアリング装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
車両用の電動パワーステアリング装置は、操向ハンドルの操作によりステアリングシヤフトに発生する操舵トルクと車速を検出し、その検出信号に基づいてモータを駆動して操向ハンドルの操舵力を補助するものである。このような電動式パワーステアリング装置の制御は電子制御回路で実行されるが、その制御の概要は、トルクセンサで検出された操舵トルクと車速センサで検出された車速に基づいてモータに供給する電流の制御目標値である電流指令値を演算し、その演算結果に基づいてモータに供給する電流を制御する。
【0003】
即ち、電子制御回路は、操向ハンドルが操作されて操舵トルクが発生しているときに、検出された車速が零あるいは低速の場合は大きな操舵補助力を供給し、検出された車速が速い場合は小さな操舵補助力を供給するように操向ハンドルの操舵力と車速に応じてモータに供給する電流を制御することで、走行状態に応じた最適の操舵補助力を与えることができる。
【0004】
このような電子制御回路は、モータに供給する電流の制御目標値である電流指令値を演算するCPUで構成される制御回路部と、その演算結果に基づいてモータに供給する電流を制御する複数の半導体素子から構成されるモータ駆動回路部とから構成され、両者を1枚の回路基板(プリント基板)上に配置して構成されたものがある。
【0005】
また、電動パワーステアリング装置では、モータの過熱焼損を未然に防止するため、モータにサーミスタ等の温度検出素子を取付けて温度を検出し、所定の限界温度を越えたとき、モータの過熱焼損の危険があるとしてモータに供給する電流を制限するモータ電流制限手段を備えたものがある(一例として特開平7−112666号公報参照)。
【0006】
しかし上記した温度検出素子が故障すると、モータの過熱状態を検出できないためモータ電流を適切に制限できず、モータを焼損させてしまう不都合が発生する。この対策として、モータに2個の温度検出素子を取付け、2つの温度検出素子の出力を比較して故障を判定する方法などが提案されているが、製造コストを上昇させるほか、モータ側の温度検出素子と電子制御回路との間に信号線を設ける必要があり、これも製造コストを上昇させるので、モータに温度検出素子を設けることなく、モータ電流値からモータ温度を推定するものがある。
【0007】
このほか、回路基板はモータ駆動回路部を構成する半導体スイッチング素子に流れるモータ電流に基づいて発熱するから、過大なモータ電流が流れると半導体スイッチング素子付近の回路基板が過熱して焼損するおそれがある。この対策として回路基板の半導体スイッチング素子の近傍にサーミスタ等の温度検出素子を取付けて温度を検出し、検出温度を電子制御回路において処理して、モータ電流を制限して回路基板の過熱焼損を未然に防止するものがある。
【0008】
しかし、温度検出素子が故障すると回路基板の温度を検出することができず、過熱焼損するおそれがある。そこで、回路基板上のモータ駆動回路部の半導体スイッチング素子に流れるモータ電流値に基づいて回路基板上の発熱部の温度(モータ温度にも関連する)を推定し、所定の時点における温度から一定温度以上変化したか否かを判定する。そして前記発熱部の温度が所定温度以上の変化を示したにも拘らず、前記した温度検出素子で検出した回路基板の温度が所定温度以上の変化を示さないとき、温度検出素子が故障であると判定する手法が提案されている(特開2001−130432号公報参照)。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記した温度検出素子の故障判定手法では、温度検出素子が完全に故障している場合には、温度検出素子からは変化のない一定値の検出信号しか出力されないから、温度検出素子の故障を正確に判定することができる。
【0010】
しかしながら、温度検出素子自体にクラック等が生じて抵抗値が増大した場合や、温度検出素子と信号線との接続部の接触不良による抵抗値の増大や、接続部がショートして抵抗値が減少するなどの異常(以下、中途故障という)が生じた場合は、温度検出素子から出力された検出信号は、温度検出素子が正常な状態で出力された検出信号か、或いは中途故障した温度検出素子から出力された検出信号かを識別することができない。このため、実際の温度とは異なる温度が回路基板温度として認識され、回路基板やモータが焼損するおそれがある。
【0011】
図8は、温度検出素子としてサーミスタを使用した温度検出回路の一例で、サーミスタSRは抵抗Rと直列に接続されて電源に接続され、サーミスタSRに一定の電流を流してサーミスタSRの両端間の電圧降下を検出回路DCで検出し、検出されたサーミスタSRの抵抗値を温度データに変換している。
【0012】
このとき、サーミスタSR或いは周辺回路に上記した中途故障が生じて抵抗値が増大、或いは減少した場合は、サーミスタSRが正常な状態における抵抗値に基づく温度データであるか、或いは中途故障したサーミスタSRの抵抗値に基づく温度データであるかを識別することができない。
【0013】
この発明は、上記課題を解決することを目的とし、温度検出素子を備えた温度検出回路の中途故障を正確に判定し、回路基板やモータの焼損を未然に防止できる電動パワーステアリング装置を提供するものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
この発明は上記課題を解決するもので、請求項1の発明は、車両の操舵力に応じた電流をモータに供給して補助トルクを発生させる電動パワーステアリング装置において、少なくとも操舵トルク信号に基づいて電流指令値を演算する電流指令値演算手段と、前記電流指令値に基づいてモータ電流を制御するモータ駆動手段と、モータの温度を推定するモータ温度推定手段と、前記モータ温度推定手段で推定されたモータ温度が所定温度を越えたときモータ電流を制限する電流制限機能を備えたモータ電流制限手段と、前記温度検出回路の異常を判定する温度検出回路異常判定手段とを備えた電子制御回路と、前記電子制御回路の発熱部分付近に配置され、発熱部分付近の温度を抵抗値として検出する温度検出素子を備えた温度検出回路とを備え、前記温度検出回路異常判定手段は、前記温度検出素子が温度の上昇に応じて抵抗値が減少する負特性の素子であるときは、以下の条件式(1)及び(2)が同時に満されたとき温度検出回路が異常であると判定すること
R<Ra ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)
ΔT>(Tmax −Ta )・・・・・・・・・・・・(2)
但し、R:温度を検出したときの温度検出回路の抵抗値、
Ra :電子制御回路の過熱保護のため電流制限する限界温度に相当する温度検出回路の抵抗値、
ΔT:モータ温度の温度上昇推定値、
Tmax :モータ温度の最高限界温度、
Ta :電子制御回路の過熱保護のため電流制限する限界温度、
を特徴とする電動パワーステアリング装置である。
【0015】
請求項2の発明は、車両の操舵力に応じた電流をモータに供給して補助トルクを発生させる電動パワーステアリング装置において、少なくとも操舵トルク信号に基づいて電流指令値を演算する電流指令値演算手段と、前記電流指令値に基づいてモータ電流を制御するモータ駆動手段と、モータの温度を推定するモータ温度推定手段と、前記モータ温度推定手段で推定されたモータ温度が所定温度を越えたときモータ電流を制限する電流制限機能を備えたモータ電流制限手段と、前記温度検出回路の異常を判定する温度検出回路異常判定手段とを備えた電子制御回路と、前記電子制御回路の発熱部分付近に配置され、発熱部分付近の温度を抵抗値として検出する温度検出素子を備えた温度検出回路とを備え、前記温度検出回路異常判定手段は、前記温度検出素子が温度の上昇に応じて抵抗値が増加する正特性の素子であるときは、以下の条件式(3)及び(4)が同時に満されたとき温度検出回路が異常であると判定すること
R>Ra ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3)
ΔT>(Tmax −Ta )・・・・・・・・・・・・(4)
但し、R:温度を検出したときの温度検出回路の抵抗値、
Ra :電子制御回路の過熱保護のため電流制限する限界温度に相当する温度検出回路の抵抗値、
ΔT:モータ温度の温度上昇推定値、
Tmax :モータ温度の最高限界温度、
Ta :電子制御回路の過熱保護のため電流制限する限界温度、
を特徴とする電動パワーステアリング装置である。
【0016】
そして、前記電子制御回路は、前記温度検出回路異常判定手段により温度検出回路の異常が判定されたときは、前記モータ電流制限手段を作動させてモータに供給する電流指令値を制限する。
【0017】
また、前記電子制御回路は、前記温度検出回路異常判定手段により温度検出回路の異常が判定されたときは、前記モータ電流制限手段を作動させてモータに供給する電流指令値の出力を遮断するようにしてもよい。
【0018】
そして、前記モータ温度推定手段は、モータに流れる電流値に基づいてモータ温度を推定するモータ温度推定手段である。
【0019】
さらに、前記温度検出回路異常判定手段は、温度検出回路の異常が判定されたときはその事実を記憶する記憶手段を備えるとよい。
【0020】
そして、前記温度検出素子にはサーミスタを使用する。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態について説明する。図1は、この発明を実施するに適した電動パワーステアリング装置の構成の概略を説明する図で、操向ハンドル1の軸2は減速ギア4、ユニバーサルジョイント5a、5b、ピニオンラツク機構7を経て操向車輪のタイロツド8に結合されている。軸2には操向ハンドル1の操舵トルクを検出するトルクセンサ3が設けられており、また、操舵力を補助するモータ10がクラッチ9、減速ギア4を介して軸2に結合している。
【0022】
パワーステアリング装置を制御する電子制御回路13は、バッテリ14からイグニッションキー11を経て電力が供給される。電子制御回路13は、トルクセンサ3で検出された操舵トルクと車速センサ12で検出された車速に基づいて電流指令演算を行い、演算された電流指令値に基づいてモータ10に供給する電流を制御する。
【0023】
クラッチ9は電子制御回路13により制御される。クラッチ9は通常の動作状態では結合しており、電子制御回路13によりパワーステアリング装置の故障と判断された時、及び電源がOFFとなっている時に切離される。
【0024】
図2は、電子制御回路13のブロツク図である。電子制御回路13は制御CPUからなる演算制御部21とモータ駆動回路41から構成されている。なお、演算制御部21の各構成要素は制御CPUで実行される機能を示すもので、例えば電流指令値演算部22は制御CPUで実行される演算機能を示している。
【0025】
以下、電子制御回路13の構成と動作を説明する。電流指令値演算手段を構成する電流指令値演算部22は、トルクセンサ3から入力された操舵トルク信号、及び車速センサ12から入力された車速信号に基づいて、操舵補助力を発生させるモータ10に供給する電流の大きさを指示する電流指令値Iを演算する。
【0026】
モータ電流制限手段を構成するモータ電流制限部23は、演算された電流指令値Iの大きさを制限するもので、正常な状態では電流指令値演算部22で演算された電流指令値Iは制限されることなく、後述する変換部27及びFETゲート駆動回路28を経てモータ駆動回路41に出力されるが、モータ10や電子制御回路13に過大な電流が流れて焼損の危険性が検出されたときは、電流指令値Iを制限又は遮断して、モータ10やモータ駆動回路41及び電子制御回路13の焼損を未然に防止するものである。
【0027】
モータ電流制限部23による電流指令値Iの制限処理は、後述する異常判定部25から出力される異常判定信号に応答して電流指令値Iを時間経過と共に徐々に減少させてモータ電流を減少させる処理、或いは電流指令値Iを零としてモータ電流を遮断する処理であり、これらの電流指令値Iの制限処理は公知の手法によるものとする。
【0028】
モータ電流制限部23で制限され或いは制限されなかった電流指令値Iは、変換部27に入力され、PWM信号と電流方向信号とに分離変換される。PWM信号(パルス幅変調信号)はHブリツジ接続されたFET1 〜FET2 のゲートを駆動する信号で、電流指令値Iの絶対値によりPWM信号のデユーテイ比(FETのゲートをON/OFFする時間比)が決定される。電流方向信号はモータ電流の方向、即ちモータ10の回転方向を指示する信号で、電流指令値Iの符号(正負)により決定される。
【0029】
モータ駆動手段を構成するモータ駆動回路41は、半導体スイッチング素子FET1 〜FET4 から構成される。FET1 とFET2 は前記したPWM信号のデユーテイ比に基づいてゲートがON/OFFされるスイッチング素子で、モータ10に流れる電流の大きさを制御するためのスイッチング素子である。また、FET3 とFET4 は前記した電流方向信号に基づいてゲートがON或いはOFFされる(一方がONの時、他方はOFFとなる)スイッチング素子で、モータ10に流れる電流の方向、即ちモータ10の回転方向を切換えるスイッチング素子である。
【0030】
FET3 が導通状態にあるときは、電流はFET1 、モータ10、FET3 、抵抗R1 を経て流れ、モータ10に正方向の電流が流れる。また、FET4 が導通状態にあるときは、電流はFET2 、モータ10、FET4 、抵抗R2 を経て流れ、モータ10に負方向の電流が流れる。
【0031】
モータ電流検出回路42は、抵抗R1 の両端における電圧降下に基づいて正方向電流の大きさを検出し、また、抵抗R2 の両端における電圧降下に基づいて負方向電流の大きさを検出する。検出された実際のモータ電流値iは電流指令値演算部22にフィードバックされる。
【0032】
モータ駆動回路41を構成するスイッチング素子FET1 〜FET4 の付近には、温度検出回路として、温度検出素子であるサーミスタ31aを備えたサーミスタ処理回路31が配置されている。温度により変化するサーミスタ31aの抵抗値Rはサーミスタ処理回路31で電圧値に変換され、演算制御部21の温度検出部26で読み取られて温度データに変換され、電子制御回路13の温度Ae として異常判定部25に入力される。
【0033】
スイッチング素子FET1 〜FET4 はその内部を流れるモータ電流により発熱するから、前記検出された温度Ae は、電子制御回路13の発熱部分(スイッチング素子FET1 〜FET4 )の温度であると共に、モータ10の温度に強い相関のある温度として認識することができる。
【0034】
モータ温度推定手段を構成するモータ温度推定部24は、モータ電流検出回路42で検出されたモータ電流値iを積分し、電流積分値に温度変換係数kを乗算してモータ温度の温度上昇推定値ΔTを演算する。モータ温度の温度上昇推定値ΔTは制御CPUによる制御動作が継続する間は、一定時間毎に常に更新されてゆく。なお、温度変換係数kは、多様な走行モードでの走行を繰り返す実験に基づいて予め決定しておくものとする。
【0035】
温度検出回路異常判定手段を構成する異常判定部25は、サーミスタ処理回路31で検出された電子制御回路13の温度Ae が、予め設定されている電子制御回路13の許容限界温度Tlmt (例えば100℃)を越えている(Ae >Tlmt )か否かを判定し、電子制御回路13の温度Ae が許容限界温度Tlmt を越えている場合は、電子制御回路13は過熱状態にあると判定し、異常判定信号をモータ電流制限部23に出力し、モータ電流制限部23に電流制限機能を設定する。即ち、電流制限機能スイッチをONにする(制御CPUのプログラム処理においてはフラグを立てる)。
【0036】
さらに異常判定部25では、モータ電流制限部23に電流制限機能が設定されていないときは、サーミスタ31aを備えたサーミスタ処理回路31が異常(中途故障を含む)か否かを判定する。その異常判定手法は後で詳細に説明する。サーミスタ処理回路31が異常であると判定されたときは異常判定信号がモータ電流制限部23に出力され、電流指令値Iの大きさが制限される。またサーミスタ処理回路31が異常でないと判定されたときは電流指令値Iは制限されない。
【0037】
次に、この発明によるサーミスタ処理回路31の異常検出及び検出結果に基づく電流指令値Iの制限処理について説明する。
【0038】
まず、サーミスタの中途故障について説明する。温度検出素子であるサーミスタには温度が上昇すると抵抗値が低下する負の温度特性を有するものと、温度が上昇すると抵抗値が高くなる正の温度特性を有するものとがある。
【0039】
図3は負の温度特性のサーミスタ特性曲線の一例で、横軸は温度、縦軸は抵抗値であり、サーミスタが正常な場合は特性曲線Aに示すように温度の変化に対して抵抗値が変化する。また、図5に示すように、サーミスタ31aを備えたサーミスタ処理回路31を構成した場合で、例えばサーミスタ31aに中途故障が発生して抵抗値が減少すると、正常な場合の特性曲線Aが下側にオフセットし、線Bに示すような特性曲線になる。
【0040】
図3において、サーミスタ31aが正常な場合に、電子制御回路13の過熱保護のために電流指令値Iを制限する限界温度は特性曲線Aの上の温度Ta に設定され、このときの抵抗値はRa であるとする。サーミスタ31aに中途故障が発生して特性曲線Bに示すような特性に変化した場合は、サーミスタ31aを備えたサーミスタ処理回路31で抵抗値Ra が検出され、サーミスタ処理回路31では抵抗値Ra に対応する温度Te として認識される。また、サーミスタ31aが正常であってもサーミスタ31aの周辺のサーミスタ処理回路31に異常(中途故障)が発生した場合は、サーミスタ31aの特性が変化した場合と同様に、サーミスタ処理回路31では温度Te として認識されてしまう。
【0041】
即ち、サーミスタ31aの中途故障を含むサーミスタ処理回路31に異常が発生すると、電子制御回路13の発熱部の温度が、実際には温度Ta であるにも拘らずこれよりも低い温度Te であると誤って認識されてしまい、電子制御回路13の過熱を検出できないという危険性がある。
【0042】
図4は正の温度特性のサーミスタ特性曲線の一例で、横軸は温度、縦軸は抵抗値であり、サーミスタ31が正常な場合は特性曲線Cに示すように温度の変化に対して抵抗値が変化する。また、図5に示すように、サーミスタ31aを備えたサーミスタ処理回路31を構成した場合で、例えばサーミスタ31aに中途故障が発生して抵抗値が増加すると、正常な場合の特性曲線Cが上側にオフセットし、線Dに示すような特性曲線になる。
【0043】
図4において、サーミスタ31が正常な場合に、電子制御回路13の過熱保護のために電流指令値Iを制限する限界温度は特性曲線Cの上の温度Ta に設定され、このときの抵抗値はRa であるとすると、サーミスタ31が中途故障して特性曲線Dに示すような特性に変化した場合は、サーミスタ31aを備えたサーミスタ処理回路31で抵抗値Ra が検出され、サーミスタ処理回路31では抵抗値Ra に対応する温度Te として認識される。また、サーミスタ31aが正常であってもサーミスタ31aの周辺のサーミスタ処理回路31に異常(中途故障)が発生した場合は、サーミスタ31aの特性が変化した場合と同様に、サーミスタ処理回路31では温度Te として認識されてしまう。
【0044】
即ち、サーミスタ31aの中途故障を含むサーミスタ処理回路31に異常が発生すると、電子制御回路13の発熱部の温度が、実際には温度Ta であるにも拘らずこれよりも低い温度Te であると誤って認識されてしまい、電子制御回路13の過熱を検出できないという危険性がある。
【0045】
そこで、この実施の形態では、図5に示すような、サーミスタ31aを備えたサーミスタ処理回路31の抵抗値Rと、モータ10の温度の温度上昇推定値ΔTとに基づいてサーミスタ処理回路31の異常を判定するようにした。
【0046】
以下の説明では、サーミスタ処理回路31にはサーミスタ31aが含まれ、サーミスタ処理回路31の異常にはサーミスタ31aの中途故障とその周辺のサーミスタ処理回路31の中途故障が含まれるものとする。
【0047】
温度検出素子として[負の温度特性]を有するサーミスタ31aを使用する場合は、以下の条件式(1)及び(2)を同時に満たしたとき、サーミスタ処理回路31が異常であると判定する。
【0048】
R<Ra ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)
ΔT>(Tmax −Ta )・・・・・・・・・・・・(2)
但し、R:温度検出したときのサーミスタ処理回路の抵抗値、
Ra :電子制御回路の過熱保護のため電流制限する限界温度に相当するサーミスタ処理回路の抵抗値、
ΔT:モータ温度の温度上昇推定値、
Tmax :モータ温度の最高限界温度、
Ta :電子制御回路の過熱保護のため電流制限する限界温度。
【0049】
条件式(1)が成立するのは、温度検出したときのサーミスタ処理回路31の抵抗値Rが電子制御回路の過熱保護のための限界温度に相当する抵抗値Ra よりも小さい場合である。この場合、電子制御回路の過熱保護のために、モータ最大電流を制限したとしても、サーミスタ31aが中途故障して、電子制御回路の過熱保護のためモータ最大電流を制限する限界温度に相当するサーミスタ処理回路の抵抗値Ra が、前記特性曲線A(図3参照)の上の温度Ta ではなく特性曲線B上の温度Te (Ta >Te )として認識されるから、温度Ta とTe との差分の温度(Ta −Te )の分だけ電子制御回路は温度が上昇、即ち過熱してしまい、焼損の可能性がある。
【0050】
そこで、更に条件式(2)を付加し、モータ温度の温度上昇推定値ΔTがモータ温度の最高限界温度Tmax と電流制限する限界温度Ta との差より大きい条件(ΔT>(Tmax −Ta ))を満たされることを条件とし、温度(Ta −Te )の分だけ電子制御回路の温度上昇を抑制し、過熱を防止する。
【0051】
即ち、条件式(1)及び(2)が同時に成立するとき、電子制御回路13の過熱保護のために、電流指令値Iを制限してモータ最大電流を制限する。
【0052】
温度検出素子として[正の温度特性]を有するサーミスタを使用する場合は、以下の条件式(3)及び(4)を同時に満たしたとき、サーミスタ処理回路が異常であると判定する。
【0053】
R>Ra ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3)
ΔT>(Tmax −Ta )・・・・・・・・・・・・(4)
但し、R:温度検出したときのサーミスタ処理回路の抵抗値、
Ra :電子制御回路の過熱保護のため電流制限する限界温度に相当するサーミスタ処理回路の抵抗値、
ΔT:モータ温度の温度上昇推定値、
Tmax :モータ温度の最高限界温度、
Ta :電子制御回路の過熱保護のため電流制限する限界温度。
【0054】
条件式(3)が成立するのは、温度検出したときのサーミスタ処理回路31の抵抗値Rが電子制御回路の過熱保護のための限界温度に相当する抵抗値Ra よりも大きい場合である。この場合、電子制御回路の過熱保護のために、モータ最大電流を制限したとしても、サーミスタ31aが中途故障して、電子制御回路の過熱保護のためモータ最大電流を制限する限界温度に相当するサーミスタ処理回路の抵抗値Ra が、前記特性曲線C(図4参照)の上の温度Ta ではなく特性曲線D上の温度Te (Ta >Te )として認識されるから、温度Ta とTe との差分の温度(Ta −Te )の分だけ電子制御回路は温度が上昇、即ち過熱してしまい、焼損の可能性がある。
【0055】
そこで、更に条件式(4)を付加し、モータ温度の温度上昇推定値ΔTがモータ温度の最高限界温度Tmax と電流制限する限界温度Ta との差より大きい条件(ΔT>(Tmax −Ta ))を満たされることを条件とし、温度(Ta −Te )の分だけ電子制御回路の温度上昇を抑制し、過熱を防止する。
【0056】
即ち、条件式(3)及び(4)が同時に成立するとき、電子制御回路13の過熱保護のために、電流指令値Iを制限してモータ最大電流を制限する。
【0057】
次に、電子制御回路13の制御CPUで実行される制御動作の概略と、サーミスタ処理回路31の異常検出、及びモータへ供給される電流の制限処理について説明する。図6は電子制御回路の制御CPUで実行される制御動作の概略を説明するフローチャート、図7は、図6のフローチャートの中の電流制限機能スイッチ処理の詳細を説明するフローチャートである。
【0058】
図6のフローチャートを参照して制御動作の概略を説明する。まず、イグニッションキー11のONを確認し(ステップP1)、制御CPUの自己診断を行う(ステップP2)。制御CPUが正常か否かを判定し(ステップP3)、正常でないときはステップP19に移り、異常時の処理を実行して処理を終了する。
【0059】
ステップP3の判定で正常の場合は、サーミスタ処理回路31で検出された温度Ae を取り込み(ステップP4)、電子制御回路13の温度の初期値A0 としてサーミスタ処理回路31で検出された温度初期値Ae を設定(A0 =Ae )する(ステップP5)。
【0060】
温度上昇推定値メモリの内容ΔTを零(0)にリセットし(ステップP6)、電流制限機能スイッチをOFFにリセットする(ステップP7)。
【0061】
トルクセンサ3で検出された操舵トルク及び車速センサ12で検出された車速に基づいて操舵補助力を発生させるモータ10に供給する電流の大きさを指示する電流指令値Iを演算する(ステップP8)。
【0062】
電流制限機能スイッチの処理を実行し(ステップP9)、電流制限機能スイッチがONか否かを判定する(ステップP10)。機能スイッチがONであれば電流指令値の制限処理を実行し(ステップP11)、電流指令値Iを制限値に抑える。また、機能スイッチがOFFであれば電流指令値Iの制限処理は実行しない。ステップP12に移り、制限され或いは制限されない電流指令値Iをモータ駆動回路41に出力し(テップP12)、モータ10の駆動を実行する。
【0063】
以上の処理のうち、ステップP8からステップP12までは制御CPUの演算速度その他の要因で決定される所定の時間間隔で繰り返し実行されるものであるから、所定時間の経過を待ち(テップP13)、ステップP8に移る。
【0064】
次に、図6のフローチャートのステップP9で示した電流制限機能スイッチの処理について、図7のフローチャートを参照して説明する。なお、図7のフローチャートは温度特性が負特性のサーミスタを使用した場合についての処理である。温度特性が正特性のサーミスタを使用した場合は、ステップP24の判定の内容(R<Ra )を(R>Ra )に変更したものとなる。
【0065】
まず、サーミスタ処理回路31で検出された電子制御回路13の温度Ae を取り込む(ステップP21)。検出されたモータ電流値iに基づいて温度上昇推定値ΔTを演算する(ステップP22)。温度上昇推定値ΔTは、モータ電流値iの積分値に多様な走行モードでの走行を繰り返す実験結果に基づいて予め決定した温度変換係数kを乗算して求める。
【0066】
電子制御回路13の温度Ae が、予め設定されている許容限界温度Tlmt (例えば100℃)を越えている(Ae >Tlmt )か否かを判定し(ステップP23)、許容限界温度Tlmt を越えている(Ae >Tlmt )の場合は電子制御回路13は過熱状態にあることを意味するから、ステップP26に移り、電流制限機能スイッチをONとして主ルーチンに戻る。
【0067】
ステップP23の判断で、電子制御回路13の温度Ae が許容限界温度Tlmt を越えていないと判定(否の判定)されたときは、前記した条件式(1)(2)が成立するか否かを判定する。即ち、温度検出したときのサーミスタ処理回路31の抵抗値Rが、電子制御回路13の過熱保護のため電流制限する限界温度に相当するサーミスタ抵抗値Ra よりも小さいか否か(R<Ra )を判定し(ステップP24)、(R<Ra )が成立する場合は、さらにモータ温度上昇推定値ΔTが、モータ温度の最高限界温度Tmax から電子制御回路の過熱保護のため電流制限する限界温度Ta を差し引いた値(Tmax −Ta )よりも大きいか否か(ΔT>(Tmax −Ta ))を判定する(ステップP25)。
【0068】
ステップP25の判定が成立するときは、条件式(1)(2)が共に成立したことになり、電子制御回路13の過熱及びモータ10の過熱を意味するから、電流制限機能スイッチをONとし、モータに供給する電流の制限を実行する(ステップP26)。
【0069】
ステップP24の判定で(R<Ra )が成立しない場合、及びステップP25の判定で(ΔT>(Tmax −Ta ))が成立しない場合は、電子制御回路13は過熱状態になく、モータ10も過熱状態にないことを意味するから電流制限機能スイッチをOFFとする(ステップP27)。
【0070】
なお、前記ステップP25の判定が成立したとき(YESのとき)、直ちに電流制限機能スイッチをONとし、モータ10に供給する電流の制限を実行することなく、ステップP25の判定が複数回、例えば10回成立したとき、電流制限機能スイッチをONとし、モータ10に供給する電流の制限を実行するようにすれば、電子制御回路13の過熱とモータ10の過熱を確実に検出することができる。
【0071】
また、ステップP25の判定が成立したときは、サーミスタ処理回路31が異常(中途故障)していると推定されるから、ステップP25の判定が成立した事実を制御CPUの特定の記憶領域に記憶させておけば、車両点検の際に記憶領域をチェックすることでサーミスタ処理回路31の異常を容易に探知することができる。
【0072】
【発明の効果】
以上説明したとおり、この発明の電動パワーステアリング装置によれば、電子制御回路の回路基板の温度を検出する温度検出素子(サーミスタ)にクラック等が生じて抵抗値が増大した場合や、温度検出回路と信号線との接続部に緩みが生じる等の接触不良による抵抗値の増大や、接続部のショートによる抵抗値が減少する等の温度検出回路に異常(中途故障)が生じても、電子制御回路とモータの過熱焼損を発生させることのないように異常を未然に検出することができる。
【0073】
また、この発明によれば、電子制御回路の回路基板の温度の検出を1個の温度検出素子を使用して行い、温度検出回路に異常(中途故障)が発生した場合でもその異常発生により懸念される電子制御回路とモータの過熱焼損を防止できるから、過熱焼損に対する信頼性を維持しながら、製造コストを低減することができる。
【0074】
さらに、温度検出素子の異常発生の事実を記憶装置に記憶しておけば、保守点検の際に電子制御回路の点検をするとき、容易に温度検出素子の異常を知ることができ、保守点検作業を効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】電動パワーステアリング装置の構成の概略を説明する図。
【図2】電子制御回路13のブロツク図。
【図3】負の温度特性のサーミスタ特性曲線の一例を示す図。
【図4】正の温度特性のサーミスタ特性曲線の一例を示す図。
【図5】サーミスタ処理回路の一例を説明する図。
【図6】電子制御回路の制御CPUで実行される制御動作の概略を説明するフローチャート。
【図7】電流制限機能スイッチ処理を説明するフローチャート。
【図8】サーミスタ処理回路と異常の状態を説明する図。
【符号の説明】
3 トルクセンサ
10 モータ
11 イグニッションキー
12 車速センサ
13 電子制御回路
14 バッテリ
21 演算制御部
22 電流指令値演算部
23 モータ電流制限部
24 モータ温度推定部
25 異常判定部
26 温度検出部
31 サーミスタ処理回路
31a サーミスタ(温度検出素子)
41 モータ駆動回路
42 モータ電流検出回路
Claims (7)
- 車両の操舵力に応じた電流をモータに供給して補助トルクを発生させる電動パワーステアリング装置において、
少なくとも操舵トルク信号に基づいて電流指令値を演算する電流指令値演算手段と、前記電流指令値に基づいてモータ電流を制御するモータ駆動手段と、モータの温度を推定するモータ温度推定手段と、前記モータ温度推定手段で推定されたモータ温度が所定温度を越えたときモータ電流を制限する電流制限機能を備えたモータ電流制限手段と、前記温度検出回路の異常を判定する温度検出回路異常判定手段とを備えた電子制御回路と、
前記電子制御回路の発熱部分付近に配置され、発熱部分付近の温度を抵抗値として検出する温度検出素子を備えた温度検出回路とを備え、
前記温度検出回路異常判定手段は、前記温度検出素子が温度の上昇に応じて抵抗値が減少する負特性の素子であるときは、以下の条件式(1)及び(2)が同時に満されたとき温度検出回路が異常であると判定すること
R<Ra ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)
ΔT>(Tmax −Ta )・・・・・・・・・・・・(2)
但し、R:温度を検出したときの温度検出回路の抵抗値、
Ra :電子制御回路の過熱保護のため電流制限する限界温度に相当する温度検出回路の抵抗値、
ΔT:モータ温度の温度上昇推定値、
Tmax :モータ温度の最高限界温度、
Ta :電子制御回路の過熱保護のため電流制限する限界温度、
を特徴とする電動パワーステアリング装置。 - 車両の操舵力に応じた電流をモータに供給して補助トルクを発生させる電動パワーステアリング装置において、
少なくとも操舵トルク信号に基づいて電流指令値を演算する電流指令値演算手段と、前記電流指令値に基づいてモータ電流を制御するモータ駆動手段と、モータの温度を推定するモータ温度推定手段と、前記モータ温度推定手段で推定されたモータ温度が所定温度を越えたときモータ電流を制限する電流制限機能を備えたモータ電流制限手段と、前記温度検出回路の異常を判定する温度検出回路異常判定手段とを備えた電子制御回路と、
前記電子制御回路の発熱部分付近に配置され、発熱部分付近の温度を抵抗値として検出する温度検出素子を備えた温度検出回路とを備え、
前記温度検出回路異常判定手段は、前記温度検出素子が温度の上昇に応じて抵抗値が増加する正特性の素子であるときは、以下の条件式(3)及び(4)が同時に満されたとき温度検出回路が異常であると判定すること
R>Ra ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3)
ΔT>(Tmax −Ta )・・・・・・・・・・・・(4)
但し、R:温度を検出したときの温度検出回路の抵抗値、
Ra :電子制御回路の過熱保護のため電流制限する限界温度に相当する温度検出回路の抵抗値、
ΔT:モータ温度の温度上昇推定値、
Tmax :モータ温度の最高限界温度、
Ta :電子制御回路の過熱保護のため電流制限する限界温度、
を特徴とする電動パワーステアリング装置。 - 前記電子制御回路は、前記温度検出回路異常判定手段により温度検出回路の異常が判定されたときは、前記モータ電流制限手段を作動させてモータに供給する電流指令値を制限すること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電動パワーステアリング装置。 - 前記電子制御回路は、前記温度検出回路異常判定手段により温度検出回路の異常が判定されたときは、前記モータ電流制限手段を作動させてモータに供給する電流指令値の出力を遮断すること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電動パワーステアリング装置。 - 前記モータ温度推定手段は、モータに流れる電流値に基づいてモータ温度を推定するモータ温度推定手段であること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電動パワーステアリング装置。 - 前記温度検出回路異常判定手段は、温度検出回路の異常が判定されたときはその事実を記憶する記憶手段を備えていること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電動パワーステアリング装置。 - 前記温度検出素子は、サーミスタであること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電動パワーステアリング装置。
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