JP4136048B2 - 工業用抗菌組成物および抗菌方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、紙パルプ工業用分野における抄紙工程中の細菌・真菌をはじめとする微生物に由来するスライムの付着を防止するため、また塗料、ラテックス、デンプンスラリー液紙用コーティングカラー、洗浄水、冷却水、接着剤、金属加工油等の水をベースに作成されている工業用水系組成物が微生物汚染による腐敗、変色、物性劣化を受けることを防止するための抗菌組成物及び抗菌方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
紙パルプ工業分野における抄紙工程では、紙を生産するために大量の水を使用しており、その水には紙を生産するために必要な各種有機物が分散・溶解しているため、細菌、真菌等の微生物の栄養源となりやすい。製紙工程中で細菌・真菌等の微生物がそれら栄養源を元にして繁殖し、粘液状の代謝産物を産出し、パルプ、填料など製紙工程中に分散している製紙原料を取り込んで、水流の淀んだチェスト内の壁面やフローボックス等にスライムを形成する。形成されたスライムは、徐々に増大しやがて離脱しパルプ等の製紙原料と共に紙に抄き込まれ紙上の異物となってあらわれ、品質の低下をまねく。また最近では、紙をかなり高速で抄くため、最悪の場合断紙となり、生産性の低下を引き起こす。
【0003】
また、塗料、ラテックス、デンプンスラリー液等水をベースに作成されている工業用水系組成物についても、細菌に汚染されることによって腐敗が生じ、臭気の発生や粘度低下、pH変動等の物性劣化を引き起こしたり、真菌(糸状菌)が繁殖することによってストレーナーの目詰まり、着色、異物混入等を引き起こす。
【0004】
抄紙工程における微生物要因によるスライムの発生防止するために抗菌剤として各種の薬剤が使用されてきた。またそれは各種水系組成物の腐敗防止を目的とした抗菌剤においても同様である。たとえば抄紙工程においては、殺菌力の非常に強い2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミドをはじめ4,5−ジクロロ−1,2−ジチオール−3−オンや静菌力にすぐれたメチレンビスチオシアネート、1,4−ビス(ブロモアセトキシ)−2−ブテン又は1,2−ビス(ブロモアセトキシ)エタンなどがよく使用されている。水系組成物の腐敗防止には防腐という性格上、静菌力のすぐれ、水系組成物中での安定性にすぐれた5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオールなどがよく使用されている。
【0005】
しかし単一薬剤の長期に渡る連続使用は、耐性菌の出現を招きやすいため、過去に種々の2成分又は3成分の組み合わせによる抗菌剤が使用されてきた。たとえば、2成分の組み合わせには、特公平7−45366における4,5−ジクロロ−1,2−ジチオール−3−オンと5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの組み合わせ、特公平1−20121における2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミドと4,5−ジクロロ−1,2−ジチオール−3−オンの組み合わせなど多数開示されている。3成分の組み合わせには、特開平7−187920における2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミドと4,5−ジクロロ−1,2−ジチオール−3−オンと5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの組み合わせ、特開平7−25708における2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミドとメチレンビスチオシアネートと2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノールの組み合わせなどが開示されている。これらの組み合わせは単一薬剤が長期にわたって使用されていた製紙工程及び水系組成物に対して良好な効力をもっているが、2成分、3成分の組み合わせの薬剤が微生物を制御する手段として一般的になり、組み合わせ配合でも長期使用による耐性菌が出現し始めてきたため、さらなる殺菌、静菌効力をもった低濃度で有効な薬剤が望まれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記のような要望に応えるため、従来の組み合わせでは不充分であった強力な殺菌力又は静菌力をもった、広範囲の微生物に対して有効な薬剤を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、課題を解決するために各種成分の組み合わせにおける効力の確認を行い、鋭意研究を重ねた結果、(A)ハロシアノアセトアミド化合物と(B)ハロゲン化脂肪族ニトロアルコール誘導体及び(C)4,5−ジクロロ−1,2−ジチオール−3−オンの3種の有効成分を含有する工業用抗菌組成物が低濃度でも良好な殺菌力、静菌力を併せ持つ非常に優れた抗菌組成物であることを見いだした。すなわち本発明は(A)下記一般式
(式中のXはハロゲン原子、Yは水素原子又はハロゲン原子、R1 は水素原子又は低級アルキル基を示す)で表されるハロシアノアセトアミド化合物、(B)下記一般式
(式中のXはハロゲン原子、R2 はハロゲン原子又はアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示す)で表されるハロゲン化脂肪族ニトロアルコール誘導体及び(C)4,5−ジクロロ−1,2−ジチオール−3−オンを含有することを特徴とする工業用抗菌組成物であり、またこれらの有効成分を製紙工程白水又は工業用水系組成物に1〜20000ppm添加する抗菌方法である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の(A)成分としては、
一般式
(式中のXはハロゲン原子、Yは水素原子又はハロゲン原子、R1 は水素原子又は低級アルキル基を示す)で表されるハロシアノアセトアミド化合物が用いられ、たとえば2−クロロ−3−ニトリロプロピオンアミド、2−ブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド、2,2−ジクロロ−3−ニトリロプロピオンアミド、2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミドなどが含まれる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせても良い。
【0009】
本発明の(B)成分としては、
一般式
(式中のXはハロゲン原子、R2 はハロゲン原子又はアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示す)で表されるハロゲン化脂肪族ニトロアルコール誘導体が用いられ、たとえば2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール又は2,2−ジブロモ−2−ニトロ−1−エタノールなどが含まれる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせても良い。
【0010】
(A)ハロシアノアセトアミド化合物は比較的殺菌効力に優れ、(B)ハロゲン化脂肪族ニトロアルコール誘導体は比較的静菌効力に優れ、(C)4,5−ジクロロ−1,2−ジチオール−3−オンは比較的殺菌効力に優れており、それぞれの有効成分の効果が異なるので、本発明の3種成分の内1種又は2種の配合量が極端に低いとその効果が期待できないため、成分(A)を1重量部に対して、成分(B)が0.01〜10重量部好ましくは0.1〜1重量部で、成分(A)と成分(B)の合計量を1重量部とした時、成分(C)0.01〜10重量部好ましくは0.05〜0.3重量部を含む含有割合が望ましい。また各々の有効成分を混ぜることによる効力の相乗作用の点からもこの含有割合が望ましい。
【0011】
抗菌方法としては、上記3種の有効成分を含有した抗菌組成物を添加してもよいし、上記3種の有効成分をそれぞれ別々に添加しても良い。添加量は製紙工程白水又は工業用水系組成物に1〜20000ppm添加するのが好ましい。
【0012】
本発明の有効成分の抄紙工程中又は水系組成物への添加方法は、各々別々でも、製剤化した混合物でもよい。製剤化に際して用いられる溶媒、界面活性剤などは特に限定しない。しかし、微生物の増殖を引き起こす抄紙工程水や水系組成物などの薬剤添加対象物が水を主とした組成であるため、溶媒は比較的親水性のものが望ましい。
【0013】
溶媒としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコールなどのグリコール系溶剤、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤やプロピレンカーボネートなどが使用できる。これらはこれらは単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせも良く、有効成分の3種を溶解できる添加量があれば良い。
【0014】
界面活性剤としては非イオン系界面活性剤、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、両イオン系界面活性剤などが使用できる。
【0015】
【実施例】
次に本発明の実施例および比較例をあげて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。下表に示した配合比率はすべて重量%である。
また、各実施例の抗菌組成物は各実施例に示す各成分をそれぞれ示す割合で常温において通常の撹拌によって調製した。
【0016】
実施例1〜6
表1に示す抗菌剤組成物を調製し、試験例1、試験例2、試験例3、試験例4により、その性能を調べた。なお表中の有効成分の表示は以下の略語にて表す。
【0017】
2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド :DBNPA(A成分)
2,2−ジブロモ−2−ニトロ−1−エタノール :DBNE(B成分)
4,5−ジクロロ−1,2−ジチオール−3−オン :DCDT(C成分)
【0018】
【表1】
【0019】
比較例1〜4
表2に示す抗菌剤組成物を調製し、試験例1、試験例2、試験例3により、その性能を調べた。
【0020】
【表2】
【0021】
試験例1.製紙工程白水に対する殺菌力評価
「試験方法」実施例及び比較例の製剤品を所定濃度添加した下記対象試料を培養し、菌数の経時変化を変性ワックスマン寒天平板混釈法(試料を滅菌水で希釈し、この一定量を滅菌シャーレにとり、溶解した変性ワックスマン寒天培地を注入し、混釈した後固化させる。30℃の恒温室内で2日間培養後形成されたコロニー数をカウントする。)にて測定した。
対象試料:製紙工程白水、上質紙抄造、pH7.1、生菌数2.3×107 CFU/ml
「試験結果」各製剤品を添加後30分、60分後の菌数値を測定し、薬剤無添加試料の菌数値と製剤品添加試料の菌数値の増減値差を表3に示した。
増減値差:
所定時間後の薬剤無添加試料の菌数の対数値−製剤品添加試料の菌数の対数値
値が大きい方が殺菌効力が大きい。
「考察」表3に示したように比較例1〜3の単独の有効成分の製剤品、比較例4〜6の2種の有効成分の製剤品の増減値差に比べて、実施例1〜3の3種の有効成分の製剤品の増減値差は明らかに大きい値を示し、有効成分各々単独又は2種混合の製剤品に比べて3種混合の製剤品は製紙工程白水に対して顕著な殺菌力を示すことが確認された。
【0022】
【表3】
【0023】
試験例2.製紙工程白水に対する静菌力評価
「試験方法」実施例及び比較例の製剤品を下記対象試料を無菌濾過したものに所定濃度添加後、10倍濃度変性ワックスマン液体培地を1%添加、対象試料を接種用としてそのまま1%添加した。比濁法による濁度の変化を経時的に記録した微生物増殖曲線によって、静菌力を測定した。
対象試料:製紙工程白水、上質紙抄造、pH7.1、生菌数2.3×107 CFU/ml
「試験結果」薬剤無添加試料の微生物増殖曲線の立ち上がり時間と各製剤品添加試料の微生物増殖曲線の立ち上がり時間との差を表4に示した。
差:各製剤品添加試料の立ち上がり時間−薬剤無添加試料の立ち上がり時間
差の値が大きい程、静菌効力が大きい。
「考察」表4に示したように比較例1〜3の単独の有効成分の製剤品、比較例4〜6の2種の有効成分の製剤品の薬剤無添加試料との立ち上がり時間の差に比べて、実施例1〜3の3種の有効成分の製剤品の立ち上がり時間の差は明らかに大きい値を示し、有効成分各々単独又は2種混合の製剤品に比べて3種混合の製剤品は製紙工程白水に対して顕著な静菌力を示すことが確認された。
【0024】
【表4】
【0025】
試験例3.デンプンスラリーの防腐評価
「試験方法」カチオン化タピオカデンプンの10%スラリー(pH6.3)を調製し、滅菌ポリプロピレン瓶に30g分注し薬剤を所定量添加した後、あらかじめ腐敗させたデンプンスラリー(菌数:4.5×107 )を1%接種した。これを密閉静置条件で30℃で培養し、TGC寒天平板混釈法によって経時的な生菌数を測定し、防腐効果を判定した。また、生菌数測定後、腐敗品を1週間毎に、1%接種した。
「試験結果」下記の判定基準をもって判定し、試験結果を表5に示した。
「考察」表5に示したように比較例1〜3の単独の有効成分の製剤品、比較例4〜6の2種の有効成分の製剤品の28日目の評価結果は+++〜++++であるのに対して、実施例1〜3の3種の有効成分の評価結果は+〜++で、有効成分各々単独又は2種混合の製剤品に比べて3種混合の製剤品はデンプンスラリーに対して顕著な防腐効力を示すことが確認された。
【0026】
【表5】
【0027】
【発明の効果】
以上のように本発明を適用した場合、従来の単独又は2種混合の組み合わせでは不充分であった強力な殺菌力、長時間にわたる静菌力、長期間にわたる防腐効力を合わせ持った抗菌組成物または抗菌方法の提供が可能である。
Claims (2)
- 2,2−ジブロモ−3−ニトロプロピオンアミド1重量部に対して、2,2−ジブロモ−2−ニトロ−1−エタノール0.1〜1重量部で、2,2−ジブロモ−3−ニトロプロピオンアミドと2,2−ジブロモ−2−ニトロ−1−エタノールの合計量を1重量部とした時、4,5−ジクロロ−1,2−ジチオール−3−オンを0.05〜0.3重量部含むことを特徴とする工業用抗菌組成物。
- 請求項1記載の工業用抗菌組成物を工業用水系組成物に1〜20000ppm添加することを特徴とする抗菌方法。
Priority Applications (1)
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| JP03800398A JP4136048B2 (ja) | 1998-02-03 | 1998-02-03 | 工業用抗菌組成物および抗菌方法 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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| JP03800398A JP4136048B2 (ja) | 1998-02-03 | 1998-02-03 | 工業用抗菌組成物および抗菌方法 |
Publications (2)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JPH11222404A JPH11222404A (ja) | 1999-08-17 |
| JP4136048B2 true JP4136048B2 (ja) | 2008-08-20 |
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| JP03800398A Expired - Fee Related JP4136048B2 (ja) | 1998-02-03 | 1998-02-03 | 工業用抗菌組成物および抗菌方法 |
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1998
- 1998-02-03 JP JP03800398A patent/JP4136048B2/ja not_active Expired - Fee Related
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