JP4146118B2 - クラッチの制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はクラッチの制御方法に係り、特に車両の動力伝達系に設けられた湿式摩擦クラッチを断接制御する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
本発明者らは、エンジンと変速機との間に、ロックアップ可能な流体継手(トルクコンバータを含む)と湿式摩擦クラッチとを直列に設け、変速時に湿式摩擦クラッチを自動的に断接する車両の動力伝達装置を新たに開発した。この場合、車両停止中にギヤイン操作されると、この後クラッチが自動接続され、クリープが発生する。この点通常のAT車と同様である。
【0003】
クラッチの接続は、早すぎるとクラッチ接続ショック(所謂ガレージショック等)が生じ、遅すぎるとギヤイン操作からクリープ発生までに時間がかかり、ドライバがいつアクセルを踏み込んでよいのか分からなくなる(タイムラグ大)。そこでこのようなクラッチ接続ショックと接続時間短縮との両立を図るため、クラッチがつながり始めるまでの遊び領域はクラッチを急接し、クラッチがつながり始めたら接続速度を切り換えてゆっくりつなぐ、という制御が行われている。
【0004】
より具体的には、クラッチを断接駆動するための作動流体圧を、電子コントロールユニットから出力されるデューティパルスに応じて変化させ、クラッチを断状態から接続するとき、最初にクラッチがつながり始めの位置付近まで大きく接されるような所定の開始デューティを電子コントロールユニットから出力し(これを従来の一発接制御という)、その後クラッチが緩接されるような所定の緩接デューティを所定時間毎に電子コントロールユニットから出力している。
【0005】
クラッチのつながり始めの位置、言い換えれば最初に所定トルクを伝達することができるトルク伝達開始点をトルク点と称し、このトルク点をコントロールユニットに学習して接続速度切換のポイントに利用するなどしている。トルク点を学習値とするのは、クラッチに製造誤差等に起因するバラツキないし個体差があり、クラッチ毎にトルク点が異なるからである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来の一発接制御では、クラッチがトルク点を超えて繋がってしまうのを確実に防止するため、開始デューティをトルク点手前の値に設定し、且つ、クラッチピストンの初期無効ストローク及びクラッチ圧力上昇遅れを待つ必要があるため、一定の待ち時間の間開始デューティの出力状態を保持していた。
【0007】
しかし、この方法では、待ち時間経過時にクラッチがトルク点手前の位置に必ず止まりクラッチの繋がり過ぎが確実に防止されるものの、その待ち時間の間待つ必要があり、クラッチ接続時間の一層の短縮が図れなかった。
【0008】
そこで、以上の問題に鑑みて本発明は創案され、その目的はクラッチ接続時間の一層の短縮を図ることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、湿式摩擦クラッチを断接駆動するための作動流体圧を電子コントロールユニットから出力されるデューティパルスに応じて変化させることによりクラッチを断接制御する方法であって、電子コントロールユニットにクラッチのトルク点に到達する作動流体圧に相当するトルク点デューティを学習させ、クラッチを断状態から接続するとき、最初に、上記トルク点デューティよりクラッチの接側の値である所定の開始デューティを、クラッチがトルク点手前の所定位置に達するように設定された出力時間の間、電子コントロールユニットから出力し、その後、クラッチが緩接されるような所定の緩接デューティを所定時間毎に電子コントロールユニットから出力するものである。
【0010】
これによれば、開始デューティの値が従来より接側となるため、クラッチの作動速度が速くなる。一方、開始デューティの出力時間即ち待ち時間は、開始デューティの値に対応して最適なものを実機試験により決定する。これにより従来と同じ一発接の態様を従来より短時間で実現でき、クラッチ接続時間の一層の短縮を図ることができる。
【0011】
ここで、上記開始デューティの値が、クラッチの完接相当又はその付近の値であるのが好ましい。
【0012】
上記開始デューティの値及び出力時間の一方又は両方が、上記作動流体の温度に基づき補正されるのが好ましい。
【0013】
上記湿式摩擦クラッチが、エンジンと変速機との間であってロックアップ可能な流体継手の下流側に直列に設けられたものであってもよい。
【0014】
一方、本発明は、湿式摩擦クラッチを断接駆動するための作動流体圧を電子コントロールユニットから出力されるデューティパルスに応じて変化させることによりクラッチを断接制御する装置であって、電子コントロールユニットにクラッチのトルク点に到達する作動流体圧に相当するトルク点デューティを学習させ、クラッチを断状態から接続するとき、最初に、上記トルク点デューティよりクラッチの接側の値である所定の開始デューティを、クラッチがトルク点手前の所定位置に達するように設定された出力時間の間、電子コントロールユニットから出力し、その後、クラッチが緩接されるような所定の緩接デューティを所定時間毎に電子コントロールユニットから出力するものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適実施形態を添付図面に基いて説明する。
【0016】
図1は本実施形態における車両の動力伝達装置を示す。図示するように、エンジンEと変速機T/Mとの間にクラッチ機構1が設けられ、クラッチ機構1は動力伝達方向上流側に設けられた流体継手(フルードカップリング)2と、その下流側に直列に設けられた湿式摩擦クラッチとしての湿式多板クラッチ3とからなっている。なおここでいう流体継手とはトルクコンバータを含む広い概念であり、現に本実施形態においてもトルクコンバータを用いている。本装置が適用される車両はトラック等の比較的大型の車両である。エンジンEはディーゼルエンジンである。
【0017】
流体継手2は、エンジンの出力軸(クランク軸)に接続されたポンプ4と、ポンプ4に対向されクラッチ3の入力側に接続されたタービン5と、タービン5とポンプ4との間に介設されたステータ6とを有する。そして流体継手2と並列してロックアップクラッチ7が設けられ、これはポンプ4とタービン5との断接を行って流体継手2をロックアップ可能とする。湿式多板クラッチ3は、その入力側が入力軸3aを介してタービン5に接続され、出力側が変速機T/Mのインプットシャフト8に接続され、流体継手2と変速機T/Mとの間を断接する。
【0018】
変速機T/Mは、インプットシャフト8と、これと同軸に配置されたアウトプットシャフト9と、これらに平行に配置されたカウンタシャフト10とを有する。インプットシャフト8には、入力主ギヤ11が設けられている。アウトプットシャフト9には、1速主ギヤM1と、2速主ギヤM2と、3速主ギヤM3と、4速主ギヤM4と、リバース主ギヤMRとが夫々軸支されていると共に、6速主ギヤM6が固設されている。カウンタシャフト10には、入力主ギヤ11に噛合する入力副ギヤ12と、1速主ギヤM1に噛合する1速副ギヤC1と、2速主ギヤM2に噛合する2速副ギヤC2と、3速主ギヤM3に噛合する3速副ギヤC3と、4速主ギヤM4に噛合する4速副ギヤC4と、リバース主ギヤMRにアイドルギヤIRを介して噛合するリバース副ギヤCRとが固設されていると共に、6速主ギヤM6に噛合する6速副ギヤC6が軸支されている。
【0019】
この変速機T/Mによれば、アウトプットシャフト9に固定されたハブH/R1にスプライン噛合されたスリーブS/R1を、リバース主ギヤMRのドグDRにスプライン噛合すると、アウトプットシャフト9がリバース回転し、上記スリーブS/R1を1速主ギヤM1のドグD1にスプライン噛合すると、アウトプットシャフト9が1速相当で回転する。そして、アウトプットシャフト9に固定されたハブH/23にスプライン噛合されたスリーブS/23を、2速主ギヤM2のドグD2にスプライン噛合すると、アウトプットシャフト9が2速相当で回転し、上記スリーブS/23を3速主ギヤM3のドグD3にスプライン噛合すると、アウトプットシャフト9が3速相当で回転する。
【0020】
そして、アウトプットシャフト9に固定されたハブH/45にスプライン噛合されたスリーブS/45を、4速主ギヤM4のドグD4にスプライン噛合すると、アウトプットシャフト9が4速相当で回転し、上記スリーブS/45を入力主ギヤ11のドグD5にスプライン噛合すると、アウトプットシャフト9が5速相当(直結)で回転する。そして、カウンタシャフト10に固定されたハブH6にスプライン噛合されたスリーブS6を、6速副ギヤC6のドグD6にスプライン噛合すると、アウトプットシャフト9が6速相当で回転する。上記各スリーブは、図示しないシフトフォークおよびシフトロッドを介して、運転室内のシフトレバーによってマニュアル操作される。つまり変速機T/Mはマニュアル式である。
【0021】
湿式多板クラッチ3は通常の構成である。即ち、図示省略するが、オイルが満たされたクラッチケーシング内で、入力側と出力側とにそれぞれ複数枚ずつ互い違いにクラッチプレートがスプライン噛合され、これらクラッチプレート同士をクラッチピストンにより押し付け合い、或いは解放して、クラッチの接続・分断を行うものである。図2を参照して、クラッチピストン27はクラッチスプリング28により常に断側に付勢されると共に、これを上回る油圧がクラッチピストン27に付加されたときクラッチ3が締結される。クラッチ締結力ないしクラッチのトルク容量は与えられる油圧に応じて増大される。
【0022】
次に、湿式多板クラッチ3に作動油圧を供給するための油圧供給装置について説明する。図2に示すように、オイルタンク13のオイルがろ過器14を介して油圧ポンプOPにより吸引吐出されると共に、その吐出圧がリリーフバルブ15により調整され、一定のライン圧PLが作られる。このライン圧PLのオイルを圧力(減圧)制御してクラッチ3に送り込むわけだが、このためクラッチコントロールバルブCCVとクラッチソレノイドバルブCSVという二つのバルブを用いている。即ち、メインの油圧ラインに接続されたクラッチコントロールバルブCCVを、クラッチソレノイドバルブCSVから送られてくるパイロット油圧Ppに応じて開閉させるという、パイロット操作型油圧制御方式を採用している。そしてパイロット油圧Ppの大きさが、電子コントロールユニット(以下ECUという)16から出力されるディーティパルスに応じて変化される。
【0023】
即ち、クラッチソレノイドバルブCSVは電磁ソレノイドを有した電磁弁であり、ECU16から出力されるディーティパルスのON/OFFに応じて開閉すると共に、常にライン圧PLが供給されている。そしてディーティパルスのデューティ(デューティ比)Dに応じたパイロット油圧Ppを出力する。
【0024】
クラッチコントロールバルブCCVは、パイロット油圧Ppに基づき無段階で制御されるスプール弁であり、これ自体は電子制御されない。即ちパイロット油圧Ppの大きさに応じて内蔵スプールを開放側にストロークさせ、これによりライン圧PLを適宜調整しクラッチ圧Pcとしてクラッチ3に送り込む。こうして、結果的に、クラッチ3に供給される油圧がECU16によりデューティ制御されることとなる。
【0025】
なお、クラッチソレノイドバルブCSVとクラッチコントロールバルブCCVとを結ぶ経路の途中にアキュムレータ17が設けられる。
【0026】
図3に油圧供給装置の特性線図を示す。横軸は、ECU16から出力されるディーティパルスのデューティDであり、より詳しくは基本の制御周期(本実施形態では20msec)におけるソレノイドON時間の割合を示すONデューティである。本実施形態では、デューティDが0()のときクラッチが完接されるようにしてある。これは電気系統の故障等でクラッチソレノイドバルブCSVに何等通電されなくなったようなとき(所謂OFFスタックの状態)にも、クラッチを接続状態として、なんとか車両の走行を維持できるようにするためである。
【0027】
図示するように、デューティDが大ほど断、小ほど接である。デューティDの値が小さくなるにつれ、クラッチコントロールバルブCCVから出力されるパイロット油圧Ppの値が比例的に増加し、これに伴ってクラッチに供給される油圧即ちクラッチ圧Pcと、クラッチ3のトルク容量Tcとが比例的に増加する傾向を示す。なおクラッチコントロールバルブCCVのバルブ開度Vは図示上は3ポジションであるが、実際上は全開、全閉以外の中間開度(図示上のバルブ開度0mm)でスプール弁が微小ストロークし、クラッチ圧Pcを連続的に変更できるものである。
【0028】
本実施形態にはロックアップクラッチ7の制御系も存在するが、ここでは本発明に直接関係ないため説明を省略する。その油圧制御系の構成は湿式多板クラッチ3の油圧制御系と大略同様である。
【0029】
次に、動力伝達装置を電子制御するための電子制御装置を図4を用いて説明する。前述のECU16にはクラッチソレノイドバルブCSVの他、本装置を電子制御するために様々なスイッチやセンサが接続されている。これにはエンジン回転数を検出するためのエンジン回転センサ18、クラッチ3の入力側の回転数即ちタービン5の回転数を検出するためのタービン回転センサ19、変速機T/Mの回転数、代表的には入力副ギヤ12の回転数を検出するための変速機回転センサ20、及び車速を検出するための車速センサ21が含まれる。これらのセンサは図1にも示される。特にECU16は変速機回転センサ20の出力と、入力主ギヤ11及び入力副ギヤ12のギヤ比とから、インプットシャフト8の回転数を計算し、これをクラッチ3の出力側回転数とする。即ちクラッチ出力側回転数を検出するための手段が変速機回転センサ20となる。
【0030】
また、ECU16には、パーキングブレーキが作動中か否かを検出するためのパーキングブレーキスイッチ22、フットブレーキが作動中か否かを検出するためのフットブレーキスイッチ23、及び変速機のギヤポジションを検出するためのギヤポジションセンサ24も接続される。
【0031】
そしてECU16にはノブスイッチ25も接続されている。即ち、本実施形態ではドライバーによる変速操作の開始時期を検出するため、或いはクラッチ断を開始するタイミングを決定するため、運転室のシフトレバーにおいて、レバーに対しシフトノブが僅かにシフト方向に揺動可能に取り付けられており、これらレバーとシフトノブとの間にノブスイッチ25が設けられている。そしてドライバーによる変速操作時、レバーの動作に先立ってシフトノブが揺動すると、ノブスイッチ25がONとなり、これを合図にクラッチ断を開始するようになっている。具体的構成は特開平11−236931号公報に示されたものと同様である。
【0032】
また、本実施形態の動力伝達装置には、同公報に示されたような坂道発進補助装置(HSA;Hill Start Aid)が設けられており、その装置の手動ON/OFFを行うため運転室にHSAスイッチ26が設けられ、HSAスイッチ26がECU16に接続されている。
【0033】
次に、本実施形態に係る動力伝達装置の作動及び制御方法を説明する。
【0034】
この動力伝達装置では、エンジンEの動力を流体継手2、湿式多板クラッチ3、変速機T/Mという順で伝達する。ロックアップクラッチ7は原則として発進後は常にON(接)され、停車時及び発進時にOFF(断)される。従って発進時はAT車のように流体継手2のクリープを利用でき、摩擦クラッチを電子的に発進制御するものに比べ制御が簡単になると共に、走行中は流体継手2がロックアップされるのでスリップによるロスを防止できる。湿式多板クラッチ3は変速の度毎に断接される。これは通常のMT車と同様である。
【0035】
ここでロックアップクラッチ7の断接制御について詳しく述べると、ロックアップクラッチ7は比較的低車速である所定速度(本実施形態では約10km/h)以上で接とされる。正確には、ロックアップクラッチ接は、各ギヤ段においてインプットシャフト回転数が所定回転数(本実施形態では一律900rpm)以上に達すると接とされる。発進段(例えば多用される発進段である2速)で発進し、インプットシャフト回転数がその所定回転数(900rpm)に達すると、ロックアップクラッチが接とされ、このときの車速が低車速(約10km/h)である。
【0036】
まず、車両発進時の作動、即ちガレージシフトの場合を説明する。車両がギヤニュートラル且つブレーキ(フットブレーキ及びパーキングブレーキのいずれをも含む)作動状態で停止中、ドライバーが発進しようとしてシフトレバーを発進段に操作しようとしたとする。するとシフトレバーにおいて、レバーの動作に先立ってシフトノブが揺動することによりノブスイッチ25がONされ、これを合図にクラッチ3が分断される。そして引き続きシフトレバーが操作されることによって変速機T/Mが発進段にギヤインされ、これがギヤポジションセンサ24によって検出されるとクラッチ3が接続される。この接続によってタービン5が駆動輪側から止められるので、タービン5に対しポンプ4が滑動し、クリープ力が発生するようになる。従って後はブレーキを離したりアクセルを踏み込んだりすれば車両が動き出すのである。
【0037】
次に、車両走行中の変速時の作動、即ちシフトアップ又はダウンの場合を説明する。車両が所定ギヤ段で走行中、ドライバーが変速しようとしてシフトレバーを次の変速段に操作しようとしたとする。するとレバーの動作に先立ってシフトノブが揺動し、ノブスイッチ25がONされ、これを合図にクラッチ3が分断される。そして引き続きシフトレバーが操作されることによって変速機T/Mが次の変速段にギヤインされ、これがギヤポジションセンサ24によって検出されるとクラッチ3が接続される。これによって変速が完了する。この変速中ロックアップクラッチ7はONのままで、エンジン動力がそのままクラッチ3に伝達される。この走行中のクラッチ制御方法を図5及び図6を用いて詳述する。図5はシフトアップの場合、図6はシフトダウンの場合である。まずシフトアップの場合について説明する。
【0038】
図5に示すように、ノブスイッチON(t1)によりクラッチが完断され、シフトレバー操作により次の変速段にギヤインされるとクラッチ接続が開始される(t2)。
【0039】
まず最初は一発接制御が実行される。特に本発明に係る一発接制御は従来と異なる。即ち、クラッチ3がトルク点を越えて完接位置まで大きく接されるような開始デューティ(一発接デューティ)Dstが、従来より短時間である待ち時間Δtstの間、ECU16から出力される。ここでの開始デューティDst=0(%)、待ち時間Δtst=0.1secである。
【0040】
従来の一発接制御は開始デューティDst=約60(%)、待ち時間Δtst=0.5secであった。開始デューティDstを約60(%)とするのは、後述するトルク点デューティが50%程度であり、クラッチをトルク点手前に確実に止める必要があるためであり、待ち時間Δtstを0.5secとするのは、上記開始デューティでクラッチの初期無効ストロークとクラッチ圧上昇とを終えるためにはこの程度の時間が必要だからである。
【0041】
一方、本発明に係る一発接制御は従来より接側の開始デューティを従来より短時間出力する。こうするとデューティの値が接側なので、クラッチに与える油量が増大しクラッチをより速く接続できる。一方、クラッチ自体は従来同様にトルク点手前で止める必要があるため、そうなるような待ち時間Δtstが実機試験により設定される。これにより、従来と同じ一発接の態様を従来より短時間で実現でき、クラッチ接ショックを防止しつつ、クラッチ接続時間を一層短縮できるようになる。
【0042】
特に本実施形態のように、開始デューティDstを最も接側の値(完接相当値)=0(%)とするのが好ましい。最高速のクラッチ接続速度を得られるからである。同様に、その付近の値(例えば10(%))とするのも好ましい。ただし、従来より接側の値であれば開始デューティDstの値は任意に選択できる。車両運転状態に基づき開始デューティDstの値をマップ等から決定するようにしても良い。待ち時間Δtstも機種に応じて設定されるため0.1secに限らない。この値も任意の値をとることが可能である。
【0043】
なお、一発接制御についてはオープンループ制御となる。クラッチのトルク点は学習値であり、デューティの値をもってECU16に記憶される。例えば、図3に示すように、トルク容量Tcm=約200(Nm)を示すデューティD=50()がトルク点学習値である。クラッチ等のバラツキにより破線の如くトルク容量線図がずれると、これに応じてトルク点学習値も変化する。
【0044】
さて、クラッチ一発接制御の後はクラッチ緩接制御に移行する(t3)。即ち、クラッチ3が緩接されるような緩接デューティDkを所定時間毎にECU16から出力する。ここでいう所定時間は本実施形態では制御周期Δt=20msecと等しい。但し、複数回分の制御周期nΔtと等しくしても良い。以下この所定時間を緩接周期という。
【0045】
この緩接制御では、緩接周期毎の各回の緩接デューティの値が、クラッチの入出力側の回転差に基づいて決定される。クラッチ入力側回転数としてはエンジン回転センサ18で検出されるエンジン回転数の値Neを用いる。これは走行中はロックアップクラッチ接であり、クラッチ入力側回転数=エンジン回転数とみなせるからである。クラッチ出力側回転数としては、上述のように変速機回転センサ20の出力とギヤ比とから計算されたインプットシャフト回転数の値Niを用いる。
【0046】
ここではシフトアップなので、図5(d)に示すようにエンジン回転数Neの方がインプットシャフト回転数Niより高い。よって回転差ΔNはエンジン回転数Neからインプットシャフト回転数Niを減じて計算される(ΔN=Ne−Ni)。
【0047】
図8に示すように、変速機の各ギヤ段毎に、回転差ΔNに対するステップデューティDsの値がマップ形式で設定されている。このステップデューティ算出マップはECU16に記憶される。
【0048】
具体的なクラッチ緩接制御の内容は以下の通りである。まず、時刻t3の緩接周期で、初期値としての緩接デューティDk3を出力する。この緩接デューティDk3の値はトルク点学習値より僅かに接側の値である。そしてこのときの回転差ΔN3を計算し、現在のギヤ段とΔN3の値とから図8のマップに従ってステップデューティDs3を決定する。そして次の制御回である時刻t4の緩接周期では、前回の緩接デューティDk3からステップデューティDs3を減じた値を今回の緩接デューティDk4とし、これをECU16から出力する。以下、同様に、時刻tn(n=4,5,6...)の緩接周期で回転差ΔNnを計算し、図8のマップに従ってステップデューティDsnを決定し、次の制御回である時刻tn+1の緩接周期では、前回の緩接デューティDknからステップデューティDsnを減じて今回の緩接デューティDkn+1とし、これをECU16から出力する。このような制御を繰り返すことで少しずつクラッチが接続され、回転差ΔNが徐々に少なくなっていく。
【0049】
なお、ステップデューティDsの計算周期と制御周期Δtとは必ずしも等しくしなくてよい。このときはステップデューティDsが計算される毎に緩接デューティDkを更新し、この更新周期が緩接周期となる。
【0050】
こうして、所定の緩接終了条件が整ったら緩接制御を終了し、クラッチ急接制御に移行する。本実施形態の緩接終了条件は、回転差ΔNが少ない値である150rpm以下になるか、ECU16から出力されるデューティがクラッチが十分接続されたとみなせる緩接終了デューティDeに達することである。クラッチ急接制御では、急接デューティ=0を所定時間=0.3sec出力する。そしてこの後クラッチ完接制御を行ってクラッチ接制御を終了する。クラッチ完接制御も同様に完接デューティ=0を所定時間=1sec出力するものである。
【0051】
次に、図6及び図9によりシフトダウンの場合を説明する。シフトダウンのときもシフトアップのときと大略同様である。異なるのは、シフトダウンのときは図6(d)に示すようにインプットシャフト回転数Niの方がエンジン回転数Neより高くなるので、回転差ΔNの計算も逆となり、回転差ΔNがインプットシャフト回転数Niからエンジン回転数Neを減じて計算される(ΔN=Ni−Ne)点である。また、ステップデューティDsの値がシフトアップの場合とは別個に設定され、具体的には図9に示すようなシフトダウン用のステップデューティ算出マップが別個に用意されている点である。このマップにおいてはマップ中の値がシフトダウンにより適したものとなっている。その他のクラッチ接制御の内容は前記同様であり、一発接制御も前記同様、開始デューティDst=0(%)を待ち時間Δtst=0.1sec出力する。
【0052】
次に、図7及び図10によりガレージシフトの場合を説明する。図7において、時刻t1前は発進前の停車状態であり、ギヤニュートラル、ブレーキ作動状態、エンジンアイドリング、湿式多板クラッチ3は接、ロックアップクラッチ7は断で、エンジンの出力が流体継手2、湿式多板クラッチ3を介して変速機T/Mのカウンタシャフト10及び主ギヤM1・・・まで伝達されている。これは、各副ギヤ12・・・の回転により変速機T/M内に貯留されたミッションオイルを攪拌し、昇温させるためである。このときエンジン回転数Ne、タービン回転数Nt、インプットシャフト回転数Niは全て等しい。
【0053】
この状態から運転手により変速操作がなされると、最初にノブスイッチがONとなってクラッチが完断され(t1)、これによりインプットシャフト回転数Niが落ち込み、発進段にギヤインされるとクラッチ接続が開始される(t2)。ギヤインと同時にインプットシャフト8は駆動輪側からブレーキで止められるのでその回転数はゼロとなる。
【0054】
最初の一発接制御は前記同様である。即ち、開始デューティDst=0(%)を一定の待ち時間Δtst=0.1sec出力する。次いで前記同様の緩接制御を実行する。緩接制御では図10に示すガレージシフト専用のマップからステップデューティDsを読み込む。この緩接制御において、クラッチ接続に従い、タービン5が駆動輪側から徐々に制動されていくので、タービン回転数Ntが徐々に落ち込んでいく。
【0055】
そこで、エンジン回転数Neとタービン回転数Ntとの回転差ΔNet(=Ne−Nt)が所定値Nm(本実施形態では300rpm)以上に達したら、クラッチが実質的にほぼ接続されたとみなし、緩接制御を終了し、この後前記同様のクラッチ急接制御、クラッチ完接制御を行って接続制御を終了する。
【0056】
ところで、上記の各接続制御はクラッチオイルが常温のときのものである。これに対し、クラッチオイルが低温のときは、開始デューティDst及び待ち時間Δtstの一方又は両方を補正するのが好ましい。
【0057】
即ち、湿式多板クラッチ3は、クラッチオイルの油温が低いと繋がりやすくなる。これは、油温が低いとクラッチピストン27に与えられるクラッチ圧が高くなること、クラッチプレート間のオイル粘度が高くなりトルクがより伝達されること、クラッチコントロールバルブCCVやクラッチソレノイドバルブCSVといった油圧回路構成部品において内部リークが少なくなり、その分クラッチへの油量が多くなること、などの理由による。なお、本実施形態では、流体継手2、ロックアップクラッチ7及び湿式多板クラッチ3の作動用及び制御用オイルは共通とされ、トルコンオイルが用いられると共に、この油温を検出するセンサ(図示せず)が具備される。このオイルと変速機のミッションオイルとは別々のものが使用される。
【0058】
前記の例では、油温が常温であることを前提に開始デューティDstを0(%)、待ち時間Δtstを0.1secと決めている。しかし、低温時にも同じ値を使用すると、一発接の終了時にクラッチがつながり過ぎて接ショックが発生してしまう。
【0059】
そこで、油温が低温のときは開始デューティDst及び待ち時間Δtstの一方又は両方を補正するのが好ましい。図11にガレージシフトの例を示し、この図示例では待ち時間Δtstを同一(0.1sec)とし、開始デューティDstのみをより断側の値である60(%)に補正している。これによりクラッチに与えられる油量が減じられ、クラッチが繋がりやすい分クラッチの制御速度を落とし、接ショックを防止しつつ、前記同様の短時間で一発接を終えられる。これにより特に寒冷時の始動直後の発進等において好適なクラッチ接続フィーリングが得られる。クラッチ油温が0℃以下の場合に湿式多板クラッチ3のクラッチ特性が大きく変化することから、補正は油温が0℃以下の場合に行い、油温が0℃を越える場合は補正を行わず開始デューティDstを0(%)とする。なお一発接後の緩接デューティの初期値Dk3は前記同様にトルク点学習値より僅かに接側の値である。シフトアップ、シフトダウンの場合も同様の補正が可能である。
【0060】
補正の方法はこの他にも様々な方法がある。例えば、開始デューティDstを同一とし、待ち時間Δtstをより短時間に補正することも可能である。また開始デューティDstと待ち時間Δtstとの両方をバランスさせて補正することも可能である。補正の油温しきい値も0℃以外の値を採用することが可能である。検出されたクラッチ油温に応じて、マップ等に従い、開始デューティDst及び待ち時間Δtstの一方又は両方を補正することも可能である。
【0061】
以上述べたように、本発明によれば、クラッチ一発接制御に際しクラッチがトルク点を越えるような従来より接側の開始デューティを従来より短時間与えるので、接ショックを防止しつつ、一発接制御の時間を短縮でき、全体としてクラッチ接続時間を一層短縮することができる。また、クラッチ油温に基づいて開始デューティ及び待ち時間の一方又は両方を補正するので、寒冷時における油温低温時にも常温時と同様のクラッチ接続状態を得られ、常に最適なクラッチ接続フィーリングを得られる。
【0062】
なお、本発明の実施形態は上述のものに限られない。上記実施形態ではデューティ減少方向をクラッチ接続方向としたが、これは逆でも構わない。本発明にいう湿式摩擦クラッチは上記実施形態では多板式であったが、例えば単板式でも構わない。また本発明にいう流体圧は上記実施形態では油圧であったが、例えば空圧等他の流体圧でも構わない。本発明にいう変速機は、上記実施形態では常時噛み合い式マニュアル変速機であったが、例えば常時噛み合い式自動変速機(オートシフターを備えたもの)や、AT車のような遊星歯車式自動変速機でも構わない。エンジンもディーゼル、ガソリン等の種別を問わない。本発明は流体継手を併用しない動力伝達装置にも適用可能である。
【0063】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、クラッチ接続時間の一層の短縮を図れるという、優れた効果が発揮される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る車両の動力伝達装置を示すスケルトン図である。
【図2】本発明の実施形態に係る油圧供給装置を示す油圧回路図である。
【図3】本発明の実施形態に係る油圧供給装置の特性線図である。
【図4】本発明の実施形態に係る電子制御装置を示す構成図である。
【図5】本発明の実施形態に係るクラッチ接続制御の内容を示すタイムチャートで、シフトアップの場合である。
【図6】本発明の実施形態に係るクラッチ接続制御の内容を示すタイムチャートで、シフトダウンの場合である。
【図7】本発明の実施形態に係るクラッチ接続制御の内容を示すタイムチャートで、ガレージシフトの場合である。
【図8】本発明の実施形態に係るシフトアップ時のステップデューティ算出マップである。
【図9】本発明の実施形態に係るシフトダウン時のステップデューティ算出マップである。
【図10】本発明の実施形態に係るガレージシフト時のステップデューティ算出マップである。
【図11】本発明の実施形態に係るクラッチ接続制御の内容を示すタイムチャートで、クラッチ油温低温時におけるガレージシフトの場合である。
【符号の説明】
2 流体継手
3 湿式多板クラッチ
7 ロックアップクラッチ
16 電子コントロールユニット(ECU)
E エンジン
T/M 変速機
CSV クラッチソレノイドバルブ
CCV クラッチコントロールバルブ
D デューティ
Dst 開始デューティ
Dk 緩接デューティ
Δt 制御時間
Δtst 待ち時間
Claims (5)
- 湿式摩擦クラッチを断接駆動するための作動流体圧を電子コントロールユニットから出力されるデューティパルスに応じて変化させることによりクラッチを断接制御する方法であって、電子コントロールユニットにクラッチのトルク点に到達する作動流体圧に相当するトルク点デューティを学習させ、クラッチを断状態から接続するとき、最初に、上記トルク点デューティよりクラッチの接側の値である所定の開始デューティを、クラッチがトルク点手前の所定位置に達するように設定された出力時間の間、電子コントロールユニットから出力し、その後、クラッチが緩接されるような所定の緩接デューティを所定時間毎に電子コントロールユニットから出力することを特徴とするクラッチの制御方法。
- 上記開始デューティの値が、クラッチの完接相当又はその付近の値である請求項1記載のクラッチの制御方法。
- 上記開始デューティの値及び出力時間の一方又は両方が、上記作動流体の温度に基づき補正される請求項1又は2記載のクラッチの制御方法。
- 上記湿式摩擦クラッチが、エンジンと変速機との間であってロックアップ可能な流体継手の下流側に直列に設けられたものである請求項1乃至3いずれかに記載のクラッチの制御方法。
- 湿式摩擦クラッチを断接駆動するための作動流体圧を電子コントロールユニットから出力されるデューティパルスに応じて変化させることによりクラッチを断接制御する装置であって、電子コントロールユニットにクラッチのトルク点に到達する作動流体圧に相当するトルク点デューティを学習させ、クラッチを断状態から接続するとき、最初に、上記トルク点デューティよりクラッチの接側の値である所定の開始デューティを、クラッチがトルク点手前の所定位置に達するように設定された出力時間の間、電子コントロールユニットから出力し、その後、クラッチが緩接されるような所定の緩接デューティを所定時間毎に電子コントロールユニットから出力することを特徴とするクラッチの制御装置。
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