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JP4146124B2 - 肝炎ウイルスの増殖方法及び装置 - Google Patents
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JP4146124B2 - 肝炎ウイルスの増殖方法及び装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、C型肝炎ウイルス(HCV)の増殖方法に関する
【0002】
【従来の技術】
HCVは1989年にcDNAがクローニングされ、その後各種発現系を駆使してその構造及びプロセッシング機構が明らかにされてきた。その結果、非常に有効な診断系が開発され、我が国におけるHCVによる輸血後肝炎は現時点ではほぼ制圧された。
以上のように、HCVの全容は明らかになりつつあるが、遺伝子レベルの研究が先行し、未だにウイルスの複製、粒子形成、変異等の生物学及び発癌機構の解明などの基礎的な研究は進んでおらず、HCVのワクチン、プロテアーゼ阻害剤、アンチセンス等の薬剤による治療法の開発も進展していない。これは、生体外におけるHCVの増殖系が未だに存在しないことに起因する。HCVを培養肝細胞中で増殖させることは非常に困難なことであり、未だかつてこれに成功したという報告はない。従って、現在、上記の研究にはチンパンジーを用いるしか方法がない。しかし、これは非常に高価であり、個体差や再現性にも問題がある。また、動物愛護の点からもその利用には限界がある。このような背景から、臨床治験や動物実験に依存しない培養細胞を用いたHCV等の肝炎ウイルスの増殖系の確立が望まれている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、培養ヒト肝細胞を用いた、HCVの増殖方法を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋭意研究の結果、ヒト肝細胞を担持させた担体を収容した培養器に培養液を流通させるラジアルフロー型バイオリアクター内でヒト肝細胞を培養し、これにHCVを感染させ、ヒト肝細胞の培養を継続することによりHCVを増殖させることが可能であることを見出し本発明を完成した。
すなわち、本発明は、粒子状の多孔性担体上にヒト肝細胞を担持させたものを収容するバイオリアクター本体の周縁部から中心部に向けて培養液を流通させるラジアルフロー型肝細胞バイオリアクター中に維持された前記ヒト肝細胞にC型肝炎ウイルスを感染させ、引き続きバイオリアクター本体の周縁部から中心部に向けて培養液を流通させて前記ヒト肝細胞を培養し、それによって前記感染されたC型肝炎ウイルスを前記ヒト肝細胞中で増殖させることを含む、C型肝炎ウイルスの増殖方法であって、前記C型肝炎ウイルスの感染は、前記培養液中にC型肝炎ウイルスを添加することにより行われ、C型肝炎ウイルスを培養液に添加後、新鮮な培地を供給せずに、使用した培地を循環させ、次いで、培養液の流通を停止し、次いで、新鮮な培地を供給せずに、使用した培地を循環させて培養する工程をさらに含む、C型肝炎ウイルスの増殖方法に関する。また、本発明は、粒子状の多孔性担体上にヒト肝細胞を担持させたものを収容するバイオリアクター本体の周縁部から中心部に向けて培養液を流通させるラジアルフロー型肝細胞バイオリアクター中に維持された前記ヒト肝細胞にC型肝炎ウイルスを感染させ、引き続きバイオリアクター本体の周縁部から中心部に向けて培養液を流通させて前記ヒト肝細胞を培養し、それによって前記感染されたC型肝炎ウイルスを前記ヒト肝細胞中で増殖させることを含む、C型肝炎ウイルスの増殖方法であって、前記C型肝炎ウイルスの感染は、前記培養液中にC型肝炎ウイルスを添加することにより行なわれ、C型肝炎ウイルスを培養液に添加する前に、新鮮な培地の供給速度及び酸素供給速度をそれまでの速度よりも大きくする、C型肝炎ウイルスの増殖方法に関する。
【0006】
発明の方法によれば、排出される培養液中に増殖されたHCVを得ることができる。このように、本発明は、培養細胞を用いて、生体外でHCVを効率良く増殖させる方法を初めて提供するものである。
従って、本発明は、従来治療に用いられてきたインターフェロンの効果予測はもちろん、HCVワクチンの開発、抗HCV抗体の調製、プロテアーゼ阻害剤、ポリメラーゼ阻害剤やアンチセンス薬剤等のHCVの治療薬の開発等に大いに貢献するものである。
【0008】
本発明で用いられる培養装置、ラジアルフロー型バイオリアクターである。本発明の好ましいラジアルフロー型バイオリアクターの一例を図面に基づいて説明する。
図1には、本発明の好ましいラジアルフロー型バイオリアクターの一例が模式的に示されている。図1の上側の図はラジアルフロー型バイオリアクターの縦断面図であり、下側の図はラジアルフロー型バイオリアクターの横断面図である。ラジアルフロー型バイオリアクター10は、円筒状のバイオリアクター本体(培養器)12を含む。バイオリアクター本体12の外周壁は多数の貫通孔を有する多孔性材料から成り、これらの貫通孔を通して培養液がバイオリアクター本体の外側から内側に流通できるようになっている。貫通孔の直径は、後述する担体粒子よりも小さく、かつ、バイオリアクター本体12内に培養液を十分に供給できる大きさであり、通常20〜80μm程度が好ましい。断面がバイオリアクター本体12と同心円状となるようにバイオリアクター本体12のさらに外側を囲包する、円筒状のケーシング14が設けられており、バイオリアクター本体12の外周壁と、該ケーシング14との間には、環状の培養液供給路16が形成される。培養液供給路16は、その底部において、培養液供給管18と連通している。バイオリアクター本体12の中心部には、培養液排出管20が設けられている。培養液排出管20の外周壁も、バイオリアクター本体12と同様な大きさの貫通孔を多数有する多孔性材料から成り、培養液は流通できるが、担体は通過できない。
【0009】
さらに、バイオリアクター本体12の内部には、粒子状の多孔性担体22が多数収容されている。多孔性担体の材料としては、特に限定されないが、好ましい例として球状の多孔性ガラスビーズを挙げることができる。多孔性担体の直径は、特に限定されないが0.1mm〜6mm程度が好ましく、特には0.3mm〜1.2mm程度が好ましい。また、担体中の孔径は特に限定されないが10〜300μm程度が好ましく、特には20〜120μm程度が好ましい。また、担体粒子内の空隙率は、特に限定されないが30〜70%程度が好ましく、特には40〜60%程度が好ましい。このような多孔質ガラスビーズは、ドイツ国ショットグラスベック社(Schott Glasswerk Co.Ltd.)からシラン(Siran)の商品名で市販されており、この市販品を好ましく用いることができる。また、バイオリアクター本体12内に収容される担体粒子の密度は、特に限定されないが、バイオリアクター本体内に粒子を重力下でできるだけ多量に注ぎ込むことが好ましい。
上記のラジアルフロー型バイオリアクターのサイズは特に限定されず、バイオリアクター本体12内の容積は、通常、5ml〜数十リットル程度であるがこの範囲外でも差し支えない。
【0010】
次に上記のようなラジアルフロー型バイオリアクターを用いた肝細胞の培養方法について説明する。培養液の流れは図1において矢印で示されている。すなわち、培養液は培養液供給管18を通じてバイオリアクター本体12の外周部にある培養液供給路16に底部から供給される。培養液は、培養液供給路16を上方に向かって流通するが、バイオリアクター本体12の外壁に設けられている多数の貫通孔からバイオリアクター本体12の内部に進入する。そして、バイオリアクター本体12内を中心に向かって流れ、培養液排出管20に設けられた多数の貫通孔から培養液排出管20内に入り、培養液排出管20内を上方に向かって移動し、培養液排出管20の頂部からバイオリアクター本体12の外部に排出される。なお、図1に示されるラジアルフロー型バイオリアクターでは、培養液は底部から供給されるが、バイオリアクター本体12の外周部から中心部に向かって培養液が流れればよいので、培養液を培養液供給路16の頂部から供給する構成としてもよい。また、排出された培養液の一部は再度循環させて培養液として供給することが好ましい。すなわち、培養液としては、新鮮な培養液と、リサイクルされた培養液の混合物を用いることが好ましい。これらの混合割合は、一日のグルコース消費量(g/日)/酸素消費量(g/日)比率が0.5〜15、特には3〜10程度になるように自動制御することが好ましい。
【0011】
ここで使用される培養液は、肝細胞を培養し増殖させることができるものであればどのような組成のものでもよく、無機質、糖、アミノ酸、ペプチド、ビタミン類、有機酸、核酸、pH調整剤、酸素などの細胞の培養に必要な成分を含有するものであればよい。例えば、無機質としては、NaCl、KCl、MgCl、MgSO、NaHPO、FeSO−7HO、ZnSO−7HO、CuSO−5HOなどが挙げられ、アミノ酸、ペプチドとしては、L−アスパラギン塩酸塩、L−アラニン、アラニル−L−グルタミン、L−アスパラギン酸、L−グルタメート、グリシン、グリシル−L−グルタミン、L−イソロイシン、L−リジン、L−フェニルアラニン、L−セリン、L−オルニチン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−チロシン、L−バリン、インシュリンなどが挙げられ、糖としては、糖や糖アルコール、配糖体などが挙げられ、例えばD−グルコース、D−マンノース、D−ガラクトース、イノシトールなどが挙げられる。有機酸としては、遊離の酸又はエステルなどの有機酸誘導体が挙げられ、例えばコハク酸、コリン二酒石酸(choline bitartrate)、葉酸、ピルビン酸ナトリウム、グリセロリン酸などが挙げられる。ビタミン類としては、塩酸ピリドキサール、リボフラビンなどが挙げられる。核酸としては、ウリジンなどが挙げられる。pH調整剤としては、NaOH、炭酸ガス、NaHCOなどが挙げられる。
【0012】
培養液としては、市販の培養液を用いることもできる。また、これに1〜3%程度の、ウシ胎児血清等の血清を添加したものも好ましく用いることができる。培養液中の酸素濃度及びpHを調整することが好ましい。培養液中の酸素濃度は排出培養液中の酸素濃度が、1ppm以上となるように調整することが好ましい。すなわち、バイオリアクター本体(培養器)の容積1ml当たり、酸素供給量は0.025〜0.75ml/分、特には0.05〜0.5ml/分程度が好ましい。また、新鮮な培養液の供給速度は、特に限定されないが、バイオリアクター本体(培養器)の容積1ml当たり、通常、0.25〜100ml/日程度、好ましくは0.5〜50ml/日程度である。また、培養液の循環速度は、特に限定されないが、バイオリアクター本体(培養器)の容積1ml当たり、通常、0.25〜2.0L/日、好ましくは0.5〜1.0L/日程度である。培養液のpHは、水酸化ナトリウム溶液や二酸化炭素等を用いて約7.0に調整することが好ましい。さらに、培養液の温度は、約37℃又はそれ以下に調整することが好ましい。
【0013】
肝細胞は、上記した多孔性担体の表面及び多孔性担体中の孔の内部表面に付着して増殖する。増殖した肝細胞は、多孔性担体の表面及び孔の内部表面に担持され、さらに多孔性担体間の空隙にも充填される。肝細胞の多孔性担体への付着及び増殖は、培養液中に肝細胞を添加した、肝細胞浮遊液を上記培養液としてラジアルフロー型バイオリアクター内に供給することにより達成することができる。肝細胞浮遊液を培養液として供給すると、培養液が多孔性担体と接触しながら流通していく間に肝細胞が多孔性担体の表面又はその孔の内部表面に付着し、そこで増殖する。
培養開始時に培養液に添加する肝細胞の密度は、特に限定されないが、通常10〜10細胞/ml程度、好ましくは10〜10細胞/ml程度であり、また、培養液に添加する肝細胞の総数は、バイオリアクター本体の容積に応じて適宜選択されるが、例えばバイオリアクター本体12内の容積が200mlの場合には通常10〜1010個程度、好ましくは10〜10個程度が適当である。なお、肝細胞を添加した培養液がバイオリアクター本体内に行き渡った後、3時間〜12時間程度は、培養液の流通を止め、肝細胞のバイオリアクター本体からの流出を防いで肝細胞の担体上への付着を促進することが好ましい。
【0014】
用いる肝細胞は、ヒト肝細胞であり、剖検等によりヒトの肝臓から採取したものを公知の平板培養法等により培養して増殖させたものであってもよいが、長期間にわたって確実にバイオリアクター内での増殖、維持を達成するためにヒト肝細胞の樹立細胞株を用いることが好ましい。ヒト肝細胞の樹立細胞株自体は公知であり、いずれの細胞株をも用いることができる。好ましい細胞株の例として、FLC−4(米国特許第5,804,441号、FERM BP−5165の受託番号で生命工学工業技術研究所に寄託)、HepG2(ATCCより入手可能)、Huh7(Japanese Cancer Research Resources Bank(JCRB)より入手可能)、FLC−1、FLC−2、FLC−3、FLC−5、FLC−6及びFLC−7(これらFLCシリーズの株細胞は、K.Fujise,S.Nagamori,H.Kameda et al.,HEPATOLOGY,8:1425,1988;永森静志,他、HUMAN CELL1(1):106,115−118,120,123,1988;永森静志ほか、カレントテラピー16:158−162,1998;Kawada,M.et al.,In Vitro Cell.Dev.Biol.,34:109−115,1998:及び、蓮村哲ほか.人工血液,5,33−37、1997等を参照)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。本発明者が、複数種類の肝細胞株について、HCVの増殖性を比較検討したところ、FLC−4細胞中でHCVが最も良く増殖したので、FLC−4細胞を用いることが好ましい。FLC−4細胞中には、HCVのミニジーンRNAを特異的に安定化させ翻訳効率を上昇させる何らかの宿主因子が存在すると考えられる。
【0015】
肝細胞を供給後、通常5〜15日間培養すると、肝細胞が十分に増殖して肝炎ウイルスを感染させるのに好ましい状態となる。肝細胞は、バイオリアクター本体内で約10細胞/ml以上にまで増殖する。バイオリアクター本体12内の容積が200mlの場合に、肝細胞は総数で約2.9×1010まで増殖する。
肝細胞を増殖後、C型肝炎ウイルスを感染させる。本発明の方法によれば、異なる株系の複数のウイルスを同時に増殖させることも可能である。C型肝炎ウイルスの感染は、例えば慢性肝炎患者の血清を供給培養液中に含めて培養液として供給することにより行うことができる。C型肝炎ウイルスを含む培養液を、バイオリアクター本体内の肝細胞に直接添加することにより感染の可能性をより高めることができる。供給する肝炎患者血清の量としては、特に限定されないが、バイオリアクター本体の容積の1/50〜1/10程度が適当である。あるいは、C型肝炎ウイルスを肝細胞内で構築することができる、C型肝炎ウイルスの感染性cDNAクローンを注入することもできる。従って、本発明において「C型肝炎ウイルスを感染させる」ことには、完全なC型肝炎ウイルス粒子を感染させることのみならず、肝細胞内でC型肝炎ウイルスを構築できる核酸を発現する、感染性を有する組換えベクターを感染させることも包含される。なお、C型肝炎ウイルス含有培養液を供給した後、好ましくは2時間〜24時間程度、さらに好ましくは2〜10時間程度は、新たな培養液の供給及び培養液の循環を停止し、さらにその後好ましくは2時間〜48時間程度、さらに好ましくは6〜48時間程度は新たな培養液の供給を行わずにバイオリアクター本体12の頂部から排出された培養液を再度バイオリアクター本体12に培養液として供給することが好ましい。このようにすることによりC型肝炎ウイルスが感染する可能性を高めることができる。また、C型肝炎ウイルスを感染させる直前15分間〜4時間程度、さらに好ましくは30分間〜2時間程度、それまでの新鮮培地供給速度及び酸素供給速度を1.5倍〜4倍程度、さらに好ましくは1.5倍〜2.5倍程度に増加させて培養することが好ましい。このようにすることによりC型肝炎ウイルスが感染する可能性を高め、かつ細胞の状態を良好に保つことができる。また、肝細胞の培養開始後、酸素消費量がバイオリアクター本体の容積の半分のppm±30%(例えば、バイオリアクター本体内の容積が30mlの場合には15ppm±30%)程度になった時点で培養温度を徐々に下げ、酸素消費量が安定した後上記のようにウイルスを感染させることがウイルス感染の確率を高める上で好ましい。この際、培養温度は28℃〜34℃が好ましく、さらに好ましくは29℃〜32℃程度である。また、ウイルス感染後の培養も、このような低温下で行うことが、ウイルス感染を持続し、細胞の状態を良好に保つ上で好ましい。
【0016】
上記のC型肝炎ウイルス感染処理後、上記した条件で肝細胞の培養を続けることにより、C型肝炎ウイルスが肝細胞内で増殖し、感染後2〜3週間程度で培養液排出管20から排出される培養液中にC型肝炎ウイルスが含まれるようになる。従って、排出される培養液からC型肝炎ウイルスを回収することによりC型肝炎ウイルスを分離することができる。培養液からのC型肝炎ウイルスの分離は、限外ろ過膜を用いたろ過や、遠心分離、ゲルろ過クロマトグラフィー等の常法により行うことができる
発明の方法により増殖されたウイルスは、ワクチンの開発や、抗肝炎ウイルス抗体を誘導するための免疫原として利用することができる。また、上記した培養肝細胞中でのC型肝炎ウイルスの増殖系は、C型肝炎ウイルスの回収のみならず、プロテアーゼ阻害剤やアンチセンスRNA若しくはアンチセンスDNA等の肝炎治療薬の開発に利用することも可能である。
【0017】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0018】
実施例1
(1) ラジアルフロー型バイオリアクター 図1に示す構造を有するラジアルフロー型バイオリアクターを準備した。バイオリアクター本体12及び培養液排出管20は、直径約40μmの貫通孔を有する多孔性の金属焼結材料から成るものであった。バイオリアクター本体12内の容積は30mlであった。バイオリアクター本体12内に充填した多孔性担体は、多孔性ガラスビーズ(商品名Siran,ドイツ国Schott Glasswerk Co.Ltd.)であった。このガラスビーズの直径は0.6mm、内部は蜂巣状に孔が空いており、空隙率は50%、表面積は90m/L−matrix、孔径は20〜120μmであった。このようなガラスビーズをバイオリアクター本体12内に18g充填した。従って、細胞接着面積は1500cm/g−matrixであった。
【0019】
(2) 培養システム 前記(1)のラジアルフロー型バイオリアクターを含む培養システムの概要を図2に模式的に示す。図2に示すシステムにおいて、新鮮な培養液は新鮮培養液貯蔵容器24内に蓄えられており、ポンプ26により培養液調整槽28内に移送される。培養液調整槽28には撹拌機30が備えられており、ここで培養液の酸素濃度、二酸化炭素濃度及びpHが調整される。なお、培養液調整槽28を載せている台31には加熱手段が設けられており、培養液の温度を調整することができる。NaOH貯蔵容器32内には1N NaOH溶液が蓄えられており、必要に応じてポンプ34により培養液調整槽28内に移送され、培養液のpHが調整される。一方、酸素ボンベ36及び二酸化炭素ボンベ38が流量コントローラー40を介して培養液調整槽28に接続されている。酸素ボンベ36及び二酸化炭素ボンベ38から、それぞれ酸素及び二酸化炭素が必要量だけ培養液調整槽28に供給される。流量コントローラー40はマイクロコンピューター42に接続されており、該マイクロコンピュターにより、流量が20分に一度の割合でチェックされ、制御される。培養液調整槽28内で酸素濃度、二酸化炭素濃度及びpHが調整された培養液は、ポンプ44によりラジアルフロー型バイオリアクター10に底部から供給される。供給された培養液は、図1に基づいて説明したように、ラジアルフロー型バイオリアクター10の培養液排出管の頂部から排出される。排出された培養液はポンプ46により排出培養液貯蔵容器48に蓄えられる。なお、図2に示す培養システムでは、排出された培養液を培地調整槽28に戻す経路も設けられており、排出培養液の全部又は一部を、必要に応じて培養液として再度供給することも可能な構成となっている。なお、図示してはいないが、マイクロコンピューター42は、各ポンプと接続され、また、バイオリアクター本体に供給される培養液を測定する図示しない酸素濃度計及び排出された培養液の酸素濃度を測定する図示しない酸素濃度計とも接続され、さらに培養液調整槽28内に備えられた図示しないpHメーター及び温度計とも接続されており、培養液の酸素濃度、pH、温度、培養液の供給量はマイクロコンピューター42により自動制御される。
【0020】
(3) 肝細胞の播種及び培養 樹立肝細胞株である上記FLC−4株を2×10個までフラスコ内で継代培養した。培養液をバイオリアクター本体内に流通させた後、フラスコ内で培養したFLC−4細胞を培養液に加え、バイオリアクター本体内に供給することにより肝細胞の播種を行った。播種後6時間は、ポンプ44及び46を停止して細胞のバイオリアクター本体内からの流出を防いだ。その後は、25ml/日の流量で新鮮な培養液を供給した。また、培養液の循環速度は10〜40L/日であった。培養液のpHは7.0、温度は37℃、酸素濃度は排出培養液中の酸素濃度が1〜6ppmとなるようにコンピューターにより自動制御した。
培養液は市販の次の組成(単位は全てmg/L)を有するものである。
NaCl 6000、 KCl 400、
MgCl 100、 MgSO 98、
NaHPO 125、 FeSO−7HO 0.8、
ZnSO−7HO 0.01、 CuSO−5HO 0.001、
D−グルコース 2000、 D−マンノース 500、
L−アスパラギン塩酸塩 200、 D−ガラクトース 200、
L−アラニン 20、 アラニル−L−グルタミン 500、
L−アスパラギン酸 20、 L−グルタメート 20、
グリシン 30、 グリシル−L−グルタミン 500、
L−イソロイシン 105、 L−リジン 146、
L−フェニルアラニン 67、 L−セリン 80、
L−オルニチン 100、 L−スレオニン 95、
L−トリプトファン 25、 L−チロシン 64、
L−バリン 94、 コハク酸 106、
ウリジン 5、 コリン二酒石酸 20、
葉酸 4、 イノシトール 20、
塩酸ピリドキサール 4、 リボフラビン 0.4、
ピルビン酸ナトリウム 110、 グリセロリン酸 1500、
HEPES 1200、 NaHCO 1800、
ヒトトランスフェリン 5、 インシュリン 5、
フェノールレッド 5。
これにウシ胎児血清を2%添加したものを用いた。培養液中の酸素やグルコース消費量の増加により、細胞の活動性が確認され、順調に酸素消費量の増大が認められた。なお、ここで、酸素消費量は、バイオリアクター本体12に供給される培養液中の酸素濃度と、バイオリアクター本体12の頂部から排出される培養液中の酸素濃度との差から求めた。また、グルコース消費量は、排出された培養液中のグルコース濃度を市販のグルコース濃度測定キットを用いて測定し、この濃度と供給培養液中のグルコース濃度との差から求めた。
【0021】
(4) HCVの感染 リアクターによる培養開始7日目に酸素消費量が15ppmに達し、この時点で培養温度を徐々に32℃に下げた。細胞の酸素消費量が安定した培養開始9日目にHCVの感染を行った。HCVの感染を行う前に培養液供給量び酸素供給量を2倍に増加させて1時間培養した。その後、HCVの感染を行った。HCVの感染は、慢性C型肝炎患者の血清(チンパンジーに対する感染価が5.5CID50/ml)1mlを10mlの培養液に溶解したものを培養液として、バイオリアクター本体頂部直後の培養液循環チューブから分枝し、バイオリアクター本体内に連通する図示しない管からバイオリアクター本体内に供給することにより行った。その後6時間にわたりポンプを停止した。次いで、循環ポンプ44を起動させたが、バイオリアクター10の頂部から排出された培養液の全量を培養液調製槽28に戻し、新たな培地の供給を行うことなく24時間培養した。その後、上記と同様にして(ただし、培養温度は29〜32℃)培養を継続した。
【0022】
(5) 排出培養液中のHCVの検出 HCV感染処理後、上記した通常の条件で培養を再開してから毎日排出培養液中のHCVを常法であるRT−PCRにより検出した。
ここで、逆転写に用いたプライマーの塩基配列は、
AACACTACTCGGCTAGCAGTであり、
また、PCRに用いたプライマーの塩基配列は、第1回目が
CTGTGAGGAACTACTGTCTT、及び
AACACTACTCGGCTAGCAGTであり、第2回目が、
TTCACGCAGAAAGCGTCTAG、及び
GTGATCCAAGAAAGGACCCであった。
また、PCRは、全量を50μlとし、変性工程を94℃、45秒間、アニーリング工程を55℃、45秒間、伸長工程を70℃、60秒間として35サイクル行った。
その結果、感染処理後1〜2日は、HCVが検出されたが、その後検出されなくなり、16日目から再度検出されるようになり、感染後19日目に10〜10コピー/mlと最大となった。
HCV RNAは、感染後100日間に至るまでずっと検出された。感染処理後1〜2日にHCVが検出されたのは、添加したHCVが流出してきたものが検出されたと考えられる。感染処理後3日目から検出されなくなったのは、添加したHCVの流出が終了したものと考えられる。そして、16日目以降に再度検出されるようになったのは、肝細胞に感染したHCVが肝細胞中で増殖し、この増殖したHCVが培養液中に放出されたものと考えられる。
【0023】
(6) HCVの塩基配列 感染後23日目に検出されたウイルスのHVR(超可変領域、hyper variableregion)の塩基配列を調べたところ(次の表1参照)、バイオリアクターで95%と大部分を占めたクローンはもともと患者血清中で55〜60%とメジャーなクローンAlと同一であった。
結果を表1に、輸血例及びチンパンジーの例と比較できるようにして示す。表1中の「RFB(Radial Flow Bioreactor)」が前記実験の結果を示している。なお、配列はアミノ酸の1文字表記の配列で示されている。
表1中の「クローン数」は、ドナー、チンパンジー、及びレシピエントの血清から回収もの、及びRADから回収されたクローン数を示す。血液提供者及びチンパンジーの血清から回収されたクローン数はアイザキらのデータによっている。
表1中の「W」は輸血後の週数を示し、「D」は感染後の日数を示す。表1中のアミノ酸配列の上の数字は、HCVのタンパク質におけるアミノ酸の位置を示し、ハイフンは最上段に記載されているアミノ酸と同じであることを示す。
【0024】
【表1】
Figure 0004146124
【0025】
実施例2
実施例1と条件を変えて同様な実験を行った。
(1) 血清添加培養液での培養系 バイオリアクターは実施例1と同じものを用いた。フラスコにて培養した1×10個のFLC4細胞を培地制御槽に播種した。2%血清添加培地(培養液)50ml/日を用いて培養したところ、バイオリアクター内のFLC4細胞の酸素消費量は徐々に増加を始め、30日目には25ppmに(図3(A)参照)、105日目には35ppmに達した。経過中、バイオリアクター後方の溶存酸素濃度が1.0ppm未満にならないように、培養温度を37℃より徐々に低下させ(図3(A)参照)、105日目には30℃まで下げた。培養液中のアルブミン量は、低温培養でも経過中75μg/ml以上であり、細胞の活動性は維持されていた。
培養における、温度(℃)、酸素濃度(ppm)及びアルブミン濃度(μg/ml)の推移を図3(A)に示す。図3(A)の白丸印(○)は温度(℃)を示し、黒丸印(●)は酸素濃度(ppm)を示し、白四角印(□)はアルブミン濃度(μg/ml)を示す。温度(℃)、及び酸素濃度(ppm)は左側の目盛りで示され、アルブミン濃度(μg/ml)は右側の目盛りで示されている。横軸は日数を示している。数値は図3(C)に示されているとおりである。
前記した実施例1(5)と同様の方法により、排出培養液中のHCVの検出を行った。
その結果を図3(B)に示す。図3(B)の白丸印(○)はRNA力価(titer)を示し、白四角印(□)はHCV−コア蛋白質が陰性であることを示し、黒四角印(■)はHCV−コア蛋白質が陽性であることを示す。図3(B)の縦軸はRNA力価(log10コピー数/ml)であり、横軸は培養日数である。
図3(C)は、培養液中のGPT(IU/l)、GOT(IU/l)、及びLDH(IU/l)の推移を示す。図3(C)の黒丸印(●)はGPT(IU/l)を示し、白丸印(○)はGOT(IU/l))を示し、白四角印(□)はLDH(IU/l)を示す。GPT(IU/l)、及びGOT(IU/l)は左側の目盛りで示され、LDH(IU/l)は右側の目盛りで示されている。横軸は日数を示している。
【0026】
(2) 無血清培養液での培養系 無血清培地(培養液)50ml/日を用いてFLC4細胞をバイオリアクターで培養した。
結果を図4及び図5に示す。図5は、タイプ1aの感染性クローンRNAをバイオリアクターにトランスフェクションした場合(下記の(4)参照)のものである。
培養における、温度(℃)、酸素濃度(ppm)及びアルブミン濃度(μg/ml)の推移を図4(A)及び図5(A)に示す。但し、図4(A)にはアルブミン濃度(μg/ml)は示されていない。図4(A)及び図5(A)の白丸印(○)は温度(℃)を示し、黒丸印(●)は酸素濃度(ppm)を示し、図5(A)の白四角印(□)はアルブミン濃度(μg/ml)を示す。温度(℃)、及び酸素濃度(ppm)は左側の目盛りで示され、アルブミン濃度(μg/ml)は右側の目盛りで示されている。横軸は日数を示している。数値は図4(C)又は図5(C)に示されているとおりである。
前記した実施例1(5)と同様の方法により、各排出培養液中のHCVの検出を行った。
その結果を図4(B)及び図5(B)に示す。図4(B)及び図5(B)の白丸印(○)はRNA力価(titer)を示し、白四角印(□)はHCV−コア蛋白質が陰性であることを示し、黒四角印(■)はHCV−コア蛋白質が陽性であることを示す。図4(B)及び図5(B)の縦軸はRNA力価(log10コピー数/ml)であり、横軸は培養日数である。
図4(C)及び図5(C)は、培養液中のGPT(IU/l)、GOT(IU/l)、及びLDH(IU/l)の推移を示す。図4(C)及び図5(C)の黒丸印(●)はGPT(IU/l)を示し、白丸印(○)はGOT(IU/l))を示し、白四角印(□)はLDH(IU/l)を示す。GPT(IU/l)、及びGOT(IU/l)は左側の目盛りで示され、LDH(IU/l)は右側の目盛りで示されている。横軸は日数を示している。
この培養系においては、培養温度は培養開始5日目に35℃に下げて培養し、100日以上の長期にわたり継代することなしに培養することができた(図5(A)参照)。その間、細胞の酸素消費量は15〜20ppmで安定していた(図5(A)参照)。
以上のように、ラジアルフロー型バイオリアクターを用いて30〜35℃の低温で培養することで、無血清培地または2%血清添加培地で、肝細胞癌由来細胞株を100日以上の長期にわたり、継代することなしに培養することができ、その間、酸素消費量、グルコース消費量、アルブミン量等で示される肝細胞の活動性は保たれていた。
【0027】
(3) 慢性肝炎患者血清による感染実験 実施例1の(4)と同様にして慢性肝炎患者血清を感染させ、実施例1(5)と同様にして排出培養液中のHCVを検出した。その結果、感染後3日目にウイルスRNAは一度陰性になったが、その後再び陽性化し、感染後10日目に10〜10コピー/mlと最大となった(図4(B)参照)。
このように、実施例1の場合と同様、接種後一度HCVRNAは陰性になってから再び陽性化し増えてくることから、ウイルスが感染増殖しているものと考えられた。なお、実施例1及び2のいずれの感染実験でも、経過中GOT、GPT、LDH等肝障害の指標の上昇は認められなかった(図4(C)及び図5(C)参照)。
【0028】
(4) 感染性クローンによるトランスフェクション実験 タイプ1aの感染性クローンRNAをバイオリアクターにトランスフェクションしたところ(図5参照)、ウイルスRNAはトランスフェクション直後から徐々に減少し、44日目には10コピー/ml未満にまでなったものの、その後57日目に再び10コピー/mlまで増加し(図5(B)参照)、100日目まで約10〜10コピー/mlと持続していた。なお、トランスフェクションは、感染性クローンH77(Yanagi et al.,1998,Proc Natl Acad Sci U S A.Aug 5;94(16):8738−43)の10μgを、リポフェクチン法により、上記した患者血清の場合と同様に、一時的に循環を止めてトランスフェクションした。なお、リポフェクチン法によるトランスフェクションは具体的には次のように行った。
前述のH77よりインビトロでRNAを合成した10ugをOptiMEM1mlにリポフェクチン150ulとともに混合し15分間室温に放置した。その後、リアクター内をOptiMEMで十分満たした後、RNAを注入した。
また、培養上清中のコア蛋白も徐々に増加し、44日目に最大になった(図5(B)参照)。コア蛋白は、免疫測定により定量した。より具体的に記載すると、沈殿試薬により培養液中のウイルス粒子を沈殿分画として収集後、それを分散試薬に分散させる。抗体試薬、および中和試薬で処理した後、HCVコア蛋白質がチューブ上の抗HCVコア蛋白質モノクローナル抗体に結合して、複合体を形成する。未反応物質を洗浄除去した後、ペルオキシダーゼ標識抗HCVコア蛋白質モノクローナル抗体を加えると、前述のチューブ上の複合体に結合する。未反応物質を洗浄除去した後、HPPA気質液を添加するとチューブ上に結合したペルオキシダーゼ酵素により蛍光物質が生成され、これを323nmの励起光を照射し、生じた蛍光を410nmで測定する。これをあらかじめ標準液より作製された検量線から濃度を算定する さらに、コア蛋白質の存在を確認するために、トランスフェクション後96日目の培養液を200倍に濃縮し、10〜60%(W/W)蔗糖勾配法にて分画して、それぞれの分画のHCV RNAとHCVのコア蛋白質を測定した。
結果を図6に示す。図6の下段のグラフの白丸印(○)はHCV RNAの力価(log10コピー数/ml)を示し、黒丸印(●)はHCVコア蛋白質の濃度(pg/ml)を示し、図6の上段のグラフの黒四角印(■)はコア蛋白質の密度(g/ml)を示す。
この結果、密度勾配が約1.07及び1.18g/mlの2箇所でコア蛋白質の極大が測定され、コア蛋白質が2峰性の曲線であることがわかった。このことは、培養液中にウイルス粒子が存在していることを示すものである。
また、トランスフェクション後8、44日目の培養液をRNase処理した後にnest−RT PCRでHCVのRNAが検出できたことから、ウイルス粒子内に保護されたHCV RNAの存在が示唆された(図7参照)。なお、このnest−RT PCRで用いたプライマーの塩基配列は、フォワード側がCTGTGAGGAACTACTGTCTT,TTCACGCAGAAAGCGTCTAG、リバース側が,AACACTACTCGGCTAGCAGT、GTGATCCAAGAAAGGACCCであった。
結果を図7として示す。図7は左側から、培養前日(−1日)の培養液、培養8日目の培養液、培養44日目の培養液、対照としての血清、対照としてのRNAであり、各々、RNase処理無し(RNase−)でnest−RT PCR無し(RT−)、RNase処理無し(RNase−)でnest−RT PCR有り(RT+)、及びRNase処理有り(RNase+)でnest−RT PCR有り(RT+)の3つのレーンで構成されている。図7の上段の数字は培養日数を示し、+−の表示の上の段はnest−RT PCR処理の有無を有り(+)、無し(−)で示し、下の段はRNase処理の有無を有り(+)、無し(−)で示している。図7の縦方向の数値は塩基数(mer)を示す。
さらに、トランスフェクション後110日目の細胞内にタグを用いたRT PCR法でマイナス鎖RNAを検出できたことから、細胞内にウイルス複製中間体の存在が示唆された(図8参照)。このRT PCRは、具体的には次のように行った。このRT PCRで用いたプライマーの塩基配列は、逆転写反応に、TCTTGGTGGCGAATAAGCCATGGCGTTAGTAT,PCR反応にフォワード側が、TCATGGTGGCGAATAA,リバース側が、CGCGGCAACAAGTAAAであった。
結果を図8に示す。図8のMはマーカーを示し、レーン1のNは細胞(−)で、ネガティブストランドRNA(negative strand RNA)及びポジティブストランドRNA(positive strand RNA)も存在していないコントロールを示し、レーン2の(−)RNAはネガティブストランドRNA(negative strand RNA)を加えた場合を、レーン3の(+)RNAはポジティブストランドRNA(positive strand RNA)を加えた場合をそれぞれ示し、レーン4の細胞(Cell)はRFBで培養したHCV感染細胞の場合を示す。図8の縦方向の数値は分子量を示す。この結果、培養された感染細胞中にネガティブストランドRNA(negative strand RNA)の存在が認められた。
培養経過中のHVRの塩基配列をもとの感染性クローンと比較したところ、25、71、106日目にそれぞれ1、2、2個の塩基の変異が認められたが、この培養経過を通して特定の塩基配列への収束、変異の蓄積などは認められなかった。結果を次の表2に示す。結果は、表2中の「RFB(Radial Flow Bioreactor)」の欄に示されている。なお、配列はアミノ酸の1文字表記の配列で示されている。
表2中の「クローン数」は、培養液中から回収されたクローン数を示す。
表2中の「D」は感染後の日数を示す。
表2中のアミノ酸配列の上の数字は、HCVのタンパク質におけるアミノ酸の位置を示し、ハイフンは最上段に記載されているアミノ酸と同じであることを示す。
【0029】
【表2】
Figure 0004146124
【0030】
以上のように、タイプ1aの感染性クローンをバイオリアクターにトランスフェクションしたところ、1)ウイルスRNAの再増加、2)コア蛋白質の増加、3)粒子内ウイルスRNAの存在、4)細胞内ウイルス複製中間体の存在、5)塩基配列の変異、の5通りの方法でHCVの複製を確認することに成功した。ウイルス増殖に伴う肝障害については、経過中明らかなGOT、GPT、LDHの上昇などは認められなかった(図5(C)参照)。
【0031】
【発明の効果】
本発明は、生体外では培養が困難であるとされていた肝炎ウイルスの生体外での培養、増殖方法を初めて提供するものであり、肝炎ウイルスの研究のみならず、肝炎ウイルス感染症の治療、予防、及び機構を研究開発するための材料を提供するものである。より具体的には、ウイルス性肝炎の治療薬の研究開発に必須とされているウイルスを簡便な方法で提供することができる手段を提供するものである。
さらに、本発明の方法は、ウイルスの増殖の機構及び変異の機構を解明するためのウイルスの増殖方法を提供するものである。
このように本発明は、ウイルスの生態の研究のみならず、ウイルス感染症の治療、予防、処置の方法を研究開発ためのウイルスの必要な量を安定に供給する方法を提供するものである。
【0032】
【配列表】
SEQUENCE LISTING
<110> Seishi NAGAMORI
<120> Method for Proliferating Hepatitis Cirus and Apparatus Therefor
<130> JA904421
<150> JP 11-233647
<151> 1999-08-20
<160> 5
<210> 1
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<223> primer used for synthesizing cDNA of hepatitic C virus by reverse transcription
<400> 1
aacactactc ggctagcagt 20
<210> 2
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<223> primer used for amplifying by PCR hepatitic C virus cDNA
<400> 2
ctgtgaggaa ctactgtctt 20
<210> 3
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<223> primer used for amplifying by PCR hepatitic C virus cDNA
<400> 3
aacactactc ggctagcagt 20
<210> 4
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<223> primer used for amplifying by PCR hepatitic C virus cDNA
<400> 4
ttcacgcaga aagcgtctag 20
<210> 5
<211> 19
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<223> primer used for amplifying by PCR hepatitic C virus cDNA
<400> 5
gtgatccaag aaaggaccc 19
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明の方法に用いられる培養装置の例としてのラジアルフロー型バイオリアクターの縦断面及び横断面を示す図である。
【図2】 図2は、本発明の培養システムの例を模式的に示す図である。
【図3】 図3は、血清添加培養液を用いた培養系における、温度(℃)、酸素濃度(ppm)及びアルブミン濃度(μg/ml)の推移(図3(A))、排出培養液中のHCVの検出の結果(図3(B))、及び培養液中のGPT(IU/l)、GOT(IU/l)、及びLDH(IU/l)の推移(図3(C))を示したものである。
図3(A)の白丸印(○)は温度(℃)を示し、黒丸印(●)は酸素濃度(ppm)を示し、白四角印(□)はアルブミン濃度(μg/ml)を示す。温度(℃)、及び酸素濃度(ppm)は左側の目盛りで示され、アルブミン濃度(μg/ml)は右側の目盛りで示されている。横軸は日数を示している。
図3(B)の白丸印(○)はRNA力価(log10コピー数/ml)を示し、白四角印(□)はHCV−コア蛋白質が陰性であることを示し、黒四角印(■)はHCV−コア蛋白質が陽性であることを示し、横軸は培養日数である。
図3(C)の黒丸印(●)はGPT(IU/l)を示し、白丸印(○)はGOT(IU/l))を示し、白四角印(□)はLDH(IU/l)を示す。GPT(IU/l)、及びGOT(IU/l)は左側の目盛りで示され、LDH(IU/l)は右側の目盛りで示されている。横軸は日数を示している。
【図4】 図4は、無血清培養液を用いた培養系における、温度(℃)、及び酸素濃度(ppm)の推移(図4(A))、排出培養液中のHCVの検出の結果(図4(B))、及び培養液中のGPT(IU/l)、GOT(IU/l)、及びLDH(IU/l)の推移(図4(C))を示したものである。
図4(A)の白丸印(○)は温度(℃)を示し、黒丸印(●)は酸素濃度(ppm)を示す。横軸は日数を示している。
図4(B)の白丸印(○)はRNA力価(log10コピー数/ml)を示し、白四角印(□)はHCV−コア蛋白質が陰性であることを示し、黒四角印(■)はHCV−コア蛋白質が陽性であることを示し、横軸は培養日数である。
図4(C)の黒丸印(●)はGPT(IU/l)を示し、白丸印(○)はGOT(IU/l))を示し、白四角印(□)はLDH(IU/l)を示す。GPT(IU/l)、及びGOT(IU/l)は左側の目盛りで示され、LDH(IU/l)は右側の目盛りで示されている。横軸は日数を示している。
【図5】 図5は、無血清培養液を用いた培養系で、培養時にタイプ1aの感染性クローンRNAをバイオリアクターにトランスフェクションした場合における、温度(℃)、酸素濃度(ppm)及びアルブミン濃度(μg/ml)の推移(図5(A))、排出培養液中のHCVの検出の結果(図5(B))、及び培養液中のGPT(IU/l)、GOT(IU/l)、及びLDH(IU/l)の推移(図5(C))を示したものである。
図5(A)の白丸印(○)は温度(℃)を示し、黒丸印(●)は酸素濃度(ppm)を示し、白四角印(□)はアルブミン濃度(μg/ml)を示す。温度(℃)、及び酸素濃度(ppm)は左側の目盛りで示され、アルブミン濃度(μg/ml)は右側の目盛りで示されている。横軸は日数を示している。
図5(B)の白丸印(○)はRNA力価(log10コピー数/ml)を示し、白四角印(□)はHCV−コア蛋白質が陰性であることを示し、黒四角印(■)はHCV−コア蛋白質が陽性であることを示し、横軸は培養日数である。
図5(C)の黒丸印(●)はGPT(IU/l)を示し、白丸印(○)はGOT(IU/l))を示し、白四角印(□)はLDH(IU/l)を示す。GPT(IU/l)、及びGOT(IU/l)は左側の目盛りで示され、LDH(IU/l)は右側の目盛りで示されている。横軸は日数を示している。
【図6】 図6は、トランスフェクション後96日目の培養液を蔗糖勾配法にて分画して、それぞれの分画のHCV RNAとHCVのコア蛋白質を測定した結果を示す。図6の下段のグラフの白丸印(○)はHCV RNAの力価(log10コピー数/ml)を示し、黒丸印(●)はHCVコア蛋白質の濃度(pg/ml)を示し、図6の上段のグラフの黒四角印(■)はコア蛋白質の密度(g/ml)を示す。
【図7】 図7は、感染性クローンH77をトランスフェクション後8、44日目の培養液を、RNaseでの処理、及びnest−RT PCR法で検出した結果を示す図である。図7は左側から、培養前日(−1日)の培養液、培養8日目の培養液、培養44日目の培養液、対照としての血清、対照としてのRNAであり、各々、RNase処理無し(RNase−)でnest−RT PCR無し(RT−)、RNase処理無し(RNase−)でnest−RT PCR有り(RT+)、及びRNase処理有り(RNase+)でnest−RT PCR有り(RT+)の3つのレーンで構成されている。図7の上段の数字は培養日数を示し、+−の表示の上の段はnest−RT PCR処理の有無を有り(+)、無し(−)で示し、下の段はRNase処理の有無を有り(+)、無し(−)で示している。図7の縦方向の数値は塩基数(mer)を示す。
【図8】 図8は、感染性クローンH77をトランスフェクションした後110日目の細胞内にタグを用いたストランド特異的RT−PCR(Strand−specific RT−PCR)法でマイナス鎖RNAを検出した結果を示す図である。図8のMはマーカーを示し、レーン1のNは細胞(−)で、ネガティブストランドRNA(negative strand RNA)及びポジティブストランドRNA(positive strand RNA)も存在していないコントロールを示し、レーン2の(−)RNAはネガティブストランドRNA(negative strand RNA)を加えた場合を、レーン3の(+)RNAはポジティブストランドRNA(positive strand RNA)を加えた場合をそれぞれ示し、レーン4の細胞(Cell)はRFBで培養したHCV感染細胞の場合を示す。図8の縦方向の数値は分子量を示す。

Claims (5)

  1. 粒子状の多孔性担体上にヒト肝細胞を担持させたものを収容するバイオリアクター本体の周縁部から中心部に向けて培養液を流通させるラジアルフロー型肝細胞バイオリアクター中に維持された前記ヒト肝細胞にC型肝炎ウイルスを感染させ、引き続きバイオリアクター本体の周縁部から中心部に向けて培養液を流通させて前記ヒト肝細胞を培養し、それによって前記感染されたC型肝炎ウイルスを前記ヒト肝細胞中で増殖させることを含む、C型肝炎ウイルスの増殖方法であって、前記C型肝炎ウイルスの感染は、前記培養液中にC型肝炎ウイルスを添加することにより行われ、C型肝炎ウイルスを培養液に添加後、新鮮な培地を供給せずに、使用した培地を循環させ、次いで、培養液の流通を停止し、次いで、新鮮な培地を供給せずに、使用した培地を循環させて培養する工程をさらに含む、C型肝炎ウイルスの増殖方法。
  2. 粒子状の多孔性担体上にヒト肝細胞を担持させたものを収容するバイオリアクター本体の周縁部から中心部に向けて培養液を流通させるラジアルフロー型肝細胞バイオリアクター中に維持された前記ヒト肝細胞にC型肝炎ウイルスを感染させ、引き続きバイオリアクター本体の周縁部から中心部に向けて培養液を流通させて前記ヒト肝細胞を培養し、それによって前記感染されたC型肝炎ウイルスを前記ヒト肝細胞中で増殖させることを含む、C型肝炎ウイルスの増殖方法であって、前記C型肝炎ウイルスの感染は、前記培養液中にC型肝炎ウイルスを添加することにより行なわれ、C型肝炎ウイルスを培養液に添加する前に、新鮮な培地の供給速度及び酸素供給速度をそれまでの速度よりも大きくする、C型肝炎ウイルスの増殖方法。
  3. C型肝炎ウイルスを培養液に添加後、新鮮な培地を供給せずに、使用した培地を循環させ、次いで、培養液の流通を停止し、次いで、新鮮な培地を供給せずに、使用した培地を循環させて培養する工程をさらに含む、請求項2記載の方法。
  4. 前記ヒト肝細胞は樹立細胞株である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記樹立細胞株はFLC−4株(FERM BP−5165)である請求項4記載の方法。
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