JP4147657B2 - 積層セラミックコンデンサーの内部電極ペースト用ニッケル粉 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は積層セラミックコンデンサーの内部電極材料のペースト用として用いられるニッケル粉に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在、電子機器の小型化に伴い電子部品の小型化が急速に進められたおり、このような状況において積層セラミックコンデンサー(MLCC)が小型・高容量のコンデンサーとして大量に使用されている。このような積層セラミックコンデンサーの内部電極材料には従来、パラジウム、白金などの貴金属が主として使用されていた。
しかしコンデンサーの高容量化のために積層数が増加し、前述のような貴金属粉末を使用したのではコストが高くなるという問題があり、最近ではコスト低減のために内部電極材料としてニッケル粉が多用されている。
【0003】
内部電極材料として使用されるニッケル粉はバインダー中に分散させてペーストとし、このペーストを基板上に印刷塗布し、多層積み重ねて圧着し、還元雰囲気中で約1300℃で焼成して電極を形成させ、コンデンサーとしての特性を発揮させる。
通常この内部電極の厚みは、焼成後で2〜3μmであるが近年、コンデンサーの高容量化・小型化の進展に伴いより薄い電極を形成する必要が生じてきた。
しかしながらニッケル塗膜中のニッケル粉の充填密度は粉末冶金における成形体の充填密度に比べてはるかに低く、しかも基板となるセラミックスグリーンシー卜の焼結に伴う収縮量がニッケル電極膜の収縮に比べて小さいために、焼結の進行に伴ってニッケル膜が島状に途切れるという問題が発生した。このようにニッケル電極が途切れた場合は、コンデンサーとして機能しなくなるため、コンデンサーの小型・大容量化のためには、焼結時の収縮をできるだけ小さく抑えながら、緻密で薄い電極を形成することが不可欠である。
【0004】
また、電極を薄層化したときの他の問題点は、絶縁破壊による信頼性の低下である。これはニッケル電極の突起部分の層間距離が短くなることによって発生する場合が多く、薄層化が進むほど、誘電体層の厚みは薄くなるためニッケル電極表面の突起の影響を受け易くなるからである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は積層セラミックコンデンサーの製造工程において、ニッケル電極厚みを薄くしたときに生じる電極途切れによるコンデンサーとしての機能停止や、ニッケル電極表面に突起が生成することによる寿命・信頼性の低下を防止するために有効な積層セラミックコンデンサーの内部電極ペースト用ニッケル粉を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本発明は、TiまたはSiのうち少なくとも1種を、少なくともその表面に0.02〜1質量%含有したニッケル粉であって、
1)前記ニッケル粉は、空気中400℃で2時間保持したときの酸化重量増加率が15%未満であり、
2)前記ニッケル粉は、XRD法により求めた結晶子サイズが300オングストローム以上であり、
3)前記ニッケル粉の粉末の真比重が8.5以上であり、且つ、
4)前記ニッケル粉のSEM写真観察において、その平均粒径の2倍以上の粒径を有する粒子が、全体の100分の1以下、
であることを特徴とするものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
つぎに本発明を具体的に説明する。
本発明では以下の構成を有することを特徴とする。
(1)空気中で2時間保持したときの酸化重量増加率が15%未満であること;
ニッケル粉はバインダーとなる樹脂と混合してペースト化され、誘電体シート上に塗工され、乾燥される。この後該シートは積層され、焼成工程に入るが、焼成の初期段階においてバインダー成分を除去する工程が組み込まれる。脱バインダーの方式は殆どの場合、酸化雰囲気で400℃以下で加熱し、樹脂を分解・揮発させる方式が取られるが、この際ニッケル粉までが酸化されてしまう。
酸化されたニッケル粉表面は続く還元雰囲気下での焼結工程で再度還元されるが、その際に0.1μm以下の極めて微細なニッケル粉を生じる。このような微細なニッケル粉は焼結の開始温度を低下させる働きがあり、その結果焼結時に電極と誘電体層との収縮の間に大きな時間差が発生して、これに起因するクラックなど構造欠陥が発生し易くなる。
【0008】
本発明者らはニッケル粉の耐酸化性の指標として空気中400℃で2時間保持したときの酸化重量増加率を用いて、この値が15%以上になる酸化雰囲気での脱バインダー工程ではクラックが発生し易くなり、一方15%未満、好ましくは13%を下回る酸化雰囲気ではクラックの発生が極めて少なくなること、および前記酸化重量増加率はニッケル粉のX線回折(XRD)法により求めた結晶子サイズと密接に関連し、該サイズを300オングストローム以上とすると酸化重量増加率が15%未満となることを見出した。
【0009】
従来より、耐酸化性の高いニッケル粉としては気相法により得られた粒子径の大きいものが好適であることが知られており、該気相法により得られたニッケル粉ではXRD法により求めた結晶子サイズが1000オングストローム以上である。そしてこの方法で得られた大きな結晶子サイズを有するニッケル粉は、結晶粒界が少なく、酸素の粒界拡散による内部酸化の進行が遅いために耐酸化性が高いといわれていたが、粒子の表面積が広いため空気中400℃で2時間保持したときの酸化重量増加率は15%以上となり、脱バインダー時の酸素分圧によってはクラックが発生し易いという問題は解消されずにそのまま残っている。
【0010】
一方通常の水酸化ニッケルの湿式還元法で得られるニッケル粉の結晶子サイズは平均粒径により変動するものの、XRD法で求めたサイズは100〜500オングストロームと小さく本来本発明で使用するニッケル粉として好適でないと考えられていた。しかし湿式還元法で得られるニッケル粉の結晶子サイズが300オングストロームに満たない場合は、加熱保持による結晶成長や、好ましくは特願平10−268160号記載の方法を実施することにより、結晶子サイズを300オングストローム以上とすることができるので、これにより耐酸化性向上効果をより確実に実現できることが判明した。
なお、結晶成長はTiおよび/またはSiの添加処理後に、非酸化性雰囲気中400〜600℃で加熱保持することによっても実現できる。
【0011】
(2)Ti、Siのうちいずれか一方、または両方を0.02質量%〜1質量%含有すること;
結晶子サイズは300オングストローム以上であれば、大きいほど好ましいが、大きい結晶子サイズのニッケル粉でも粒子表面の耐酸化性を高めなければ上記問題は克服することができない。本発明者らはニッケル粒子表面にTiあるいはSiのうちいずれか一方、または両方を0.02質量%〜1質量%を存在させる
ことによりニッケル粉粒子表面の耐酸化性が向上することを見出した。
Tiおよび/またはSiを添加することによる耐酸化性の向上効果は、粒子表面付近にこれら元素が存在することでTi、Siを含む酸化ニッケル層が粒子表面に形成され、これにより内部まで酸化が進行することを抑制できるものと推定される。
これら元素の添加方法は、ニッケル粉を水溶液に懸濁させ、Siを含む有機化合物もしくはTiを含む有機化合物を加え撹拌混合することによって、ニッケル粉の表面に前記元素を吸着させた後、濾過乾燥することにより得られる。
【0012】
TiまたはSiの添加量が、それぞれ単独もしくは合計で0.02質量%未満では、前記効果が得られず、一方1質量%を超えて添加するとニッケル焼結を阻害する可能性があるので好ましくない。特にTiの量が多い場合は、相手となるチタン酸バリウムの誘電体の組成を変えてしまう恐れがあり、設計通りの誘電率が得られないこととなる。
【0013】
(3)粉末の真比重が8.2以上であること;
ニッケル粉の真比重が8.2を上回った時点で焼結時の収縮が小さくなり1μmの電極でも途切れが発生し難いことを見出した。そしてニッケル粉の真密度は高いほど有利である。
(4)SEM写真観察において平均粒径の2倍以上の粒径を有する粒子の割合が100分の1以下であること;
【0014】
真密度の高いニッケル粉としては気相法による結晶子サイズの大きいニッケル粉が知られている。しかしこのニッケル粉はそのプロセス上の特徴により平均粒子径の2倍以上の大きさを持つ粒子の混入を避けることができない。
そして電極を薄層化した場合には、これら粗大粒子が電極の突起の原因となり、この電極の突起部分はそのまま層間距離が短くなるため絶縁破壊を起こし易く、コンデンサーの寿命、信頼性を低下させるため好ましくない。また薄層化が進むほど、誘電体厚みは薄くなるため電極の突起に対して敏感となる。問題となる粗大粒子の大きさは、一般的には設計電極厚みを超えなければよいとされているが、実際にはそれ以下の大きさであっても平均粒径の粒子の大きさとの差が大きい粒子が多く存在した場合には突起の原因になる場合が多い。本発明者らは検討の結果、ニッケル粉に含まれる粒子のうち平均粒径の2倍以上の粒径を有する粒子が多く存在するものは電極突起の原因となり易いこと、換言すると平均粒径の2倍以上の粒子粒径を有する粒子を全体の100分の1以下とすると電極における絶縁破壊を防止できることを見出した。
【0015】
実用的には、電極の厚みは焼成後で2〜3μmであるので、SEM写真観察による平均粒径が1μm以下であり、その2倍である2μm以上の粒径を有する粒子量を極力抑えること、具体的には100分の1以下とすることでこの問題は解決できることが分かった。
【0016】
【実施例】
[実施例1]
結晶子サイズが800オングストロームであるニッケル粉(住友金属鉱山(株)製)を水溶液中に懸濁させてチタネート系カップリング剤(味の素(株)製 KR−ET:商品名)を添加し、pH7、室温で撹拌保持し、Tiを吸着させてTiの含有量が500ppmであるニッケル粉を得た。
このニッケル粉は、真比重が8.5、SEM写真対角線法による平均粒径0.56μmであって1μm以上の粒子の存在が見られず、空気中400℃で2時間保持したときの酸化重量増加率が11%であった。
このニッケル粉を用いて熱機械分析(TMA)による1000℃における収縮挙動の調査および塗膜焼成後の電極状態を観察した。その結果を下記する表1に示す。
【0017】
[実施例2]
結晶子サイズが800オングストロームであるニッケル粉(住友金属鉱山(株)製)を水溶液中に懸濁させてシランカップリング剤の1種であるγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランのエタノール溶液を加え、pH10、70℃で撹拌保持し、Siを吸着させてSiの含有量が500ppmであるニッケル粉を得た。
このニッケル粉は、真比重が8.8、SEM写真対角線法による平均粒径0.56μmであって1μm以上の粒子の存在が見られず、空気中400℃で2時間保持したときの酸化重量増加率が8%であった。
このニッケル粉を用いてTMAによる1000℃における収縮挙動の調査および塗膜焼成後の電極状態を観察した。その結果を下記する表1に併せて示す。
【0018】
[実施例3]
結晶子サイズが150オングストロームであるニッケル粉を使用した以外は実施例1と同様にTiの含有量が500ppmであるニッケル粉を得た。このニッケル粉を水素2%、窒素98%の気流中、600℃で1時間加熱保持し、結晶子サイズを900オングストロームとした。このニッケル粉は、真比重が8.5、SEM写真対角線法による平均粒径0.58μmであって1μm以上の粒子の存在が見られず、空気中400℃で2時間保持したときの酸化重量増加率が13%であった。
このニッケル粉のTMAによる1000℃における収縮挙動の調査および塗膜焼成後の電極状態を観察した。その結果を下記する表1に併せて示す。
【0019】
[比較例1]
結晶子サイズが700オングストローム、真比重が7.9、SEM写真対角線法による平均粒径0.56μmであって1μm以上の粒子の存在が見られず、空気中400℃で2時間保持したときの酸化重量増加率が20%でTiおよびSiの含有量が10ppm未満であるニッケル粉(住友金属鉱山(株)製)を用いてTMAによる1000℃における収縮挙動の調査および塗膜焼成後の電極状態を観察した。その結果を下記する表1に併せて示す。
【0020】
[比較例2]
結晶子サイズが800オングストローム、真比重が8.5、SEM写真対角線法による一次粒子の平均粒径0.57μmであって1μm以上の二次凝集体を多く含み、空気中400℃で2時間保持したときの酸化重量増加率が11%で、Tiの含有量が500ppmであるニッケル粉(住友金属鉱山(株)製)を用いてTMAによる1000℃における収縮挙動の調査および塗膜焼成後の電極状態を観察した。その結果を下記する表1に併せて示す。
【0021】
[比較例3]
結晶子サイズが700オングストローム、真比重が8.5、SEM写真対角線法による平均粒径0.56μmであって1μm以上の粒子の存在が見られず、空気中400℃で2時間保持したときの酸化重量増加率が20%で、TiおよびSi含有量が10ppm未満であるニッケル粉(住友金属鉱山(株)製)を用いてTMAによる1000℃における収縮挙動の調査および塗膜焼成後の電極状態を観察した。その結果を下記する表1に併せて示す。
【0022】
【表1】
【0023】
表1から分かる通り、本発明の実施例では1000℃における収縮率は、いずれも15%以下でクラックの発生もなく、ニッケル電極の途切れもなかった。一方比較例1、2では収縮率が20%、25%と高くクラックが生じ、かつニッケル電極の途切れが発生し、また比較例3は収縮率は15%であったが、ニッケル電極の途切れが発生してしまった。
【0024】
【発明の効果】
以上述べた通り本発明によれば、積層セラミックコンデンサーの製造工程において、電極途切れによるコンデンサーとしての機能停止や、絶縁破壊による寿命・信頼性の低下を防止することができ、極めて有効な積層セラミックコンデンサーの内部電極ペースト用ニッケル粉を提供することができる。
Claims (1)
- TiまたはSiのうち少なくとも1種を、少なくともその表面に0.02〜1質量%含有したニッケル粉であって、
1)前記ニッケル粉は、空気中400℃で2時間保持したときの酸化重量増加率が15%未満であり、
2)前記ニッケル粉は、XRD法により求めた結晶子サイズが300オングストローム以上であり、
3)前記ニッケル粉の粉末の真比重が8.5以上であり、且つ、
4)前記ニッケル粉のSEM写真観察において、その平均粒径の2倍以上の粒径を有する粒子が、全体の100分の1以下、
であることを特徴とする積層セラミックコンデンサーの内部電極ペースト用ニッケル粉。
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