JP4147765B2 - 不揮発性半導体メモリ装置およびその電荷注入方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば高効率のソースサイド注入や高速消去に好適な不純物配置構造を有した不揮発半導体性半導体メモリ装置と、その電荷注入方法とに関する。
【0002】
【従来の技術】
フラッシュEEPROMでは、電荷蓄積手段が単一の導電層からFG(Floating Gate)型と、電荷蓄積手段が平面的に離散化されたMONOS(Metal-Oxide-Nitride-Oxide-Semiconductor)型、MNOS(Metal-Nitride-Oxide-Nitride-Oxide)型などが知られている。
【0003】
たとえばMONOS型メモリ素子では、トランジスタチャネルを形成する半導体基板の上に、ONO(Oxide-Nitride-Oxide)膜とゲート電極とを積層させ、その積層パターンの両側の基板表面領域に、チャネルと逆導電型のソース・ドレイン不純物領域が形成されている。
そして、この電荷保持能力を有する誘電体膜(ONO膜)に対し、基板側から電荷を注入して書き込みを行う。また、消去では、保持電荷を基板側に抜き取るか、保持電荷を打ち消す逆極性の電荷を上記誘電体膜内に注入する。
【0004】
電荷の注入は、誘電体膜内での電荷のトンネル現象を利用するほか、いわゆるCHE(Channel-Hot-Electron)注入など、ONO膜の最下層の酸化膜の絶縁障壁を乗り越えられる程度にまで電荷をエネルギー的に励起する方法がある。
【0005】
CHE注入方法の一種として、ソースサイド注入方法が知られている。
ソースサイド注入方法を実現するには、ドレイン側チャネルを制御する電極と、ソース側チャネルを制御する電極とを分離して設ける必要がある。電荷注入時に、ドレイン側チャネルを強反転状態にし、ソース側チャネルを弱反転状態とするためである。このとき、両者の境界付近に高電界が発生し、ソース側から供給された電荷がこの高電界で励起され、ドレイン側チャネルを制御する電極下の電荷蓄積手段にソース側から注入される。その注入効率は、通常のCHE注入より1桁程度改善される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
素子の微細化、消費電力の低減要求に応じて、動作の低電圧化が進んでいる。しかし、上記したCHE注入では、たとえばMONOS型メモリトランジスタの場合、電荷の注入効率がおおよそ1×10-6と悪いことが知られている。
また、FG型の電荷注入効率は、MONOS型のそれより高いとされるが、そのレベルが十分とは言えない。ソースサイド注入方法を用いると、さらに電荷の注入効率が向上するが、現状のソースサイド注入方法では電荷注入効率の向上に限界がある。
【0007】
本発明は、高効率のソースサイド注入や高速消去に適したチャネル構造を新たに提案し、それを用いた不揮発性半導体メモリ装置と、電荷注入方法とを提供することを目的とする。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係る不揮発性半導体メモリ装置は、チャネル形成領域と、上記チャネル形成領域を挟む第1導電型半導体からなる2つのソース・ドレイン領域と、電荷蓄積能力を有する積層膜を介して上記チャネル形成領域の一部と重なるゲート電極と、を有し、上記チャネル形成領域が、第2導電型半導体からなり、反転層によりチャネルが形成される反転層形成領域と、第1導電型半導体からなり、多数キャリアの蓄積層によりチャネルが形成される蓄積層形成領域と、を備え、上記ゲート電極が上記積層膜を介して重なる、チャネル形成領域部分の全域に上記蓄積層形成領域が形成されている。
上記蓄積層形成領域を構成する第1導電型半導体の不純物濃度が、好適に、上記ソース・ドレイン領域を構成する第1導電型半導体の不純物濃度より低い。
【0009】
本発明では、好適に、上記蓄積層形成領域の上に電荷蓄積能力を有する積層膜を介して第1ゲート電極が形成され、上記反転層形成領域の上に電荷蓄積能力を有しない単層の誘電体膜を介して第2ゲート電極が形成され、上記第1ゲート電極と第2ゲート電極が互いに絶縁分離されている。
上記電荷蓄積能力を有する積層膜は、好適に、上記蓄積層形成領域の上から上記反転層形成領域の端部上に延在している。
【0010】
あるいは、上記蓄積層形成領域上に電荷蓄積能力を有する積層膜が形成され、上記反転層形成領域上に電荷蓄積能力を有しない単層の誘電体膜が形成され、当該単層の誘電体膜と上記積層膜の上に単一のゲート電極が形成されている。
【0011】
蓄積層形成領域は電荷注入時のドレイン側に配置されるが、本発明で2ビット/セル記憶とするには、反転層形成領域の両側に蓄積層形成領域を配置するとよい。この場合、好適に、上記反転層形成領域と一方の上記ソース・ドレイン領域間、上記反転層形成領域と他方の上記ソース・ドレイン領域間それぞれに、上記蓄積層形成領域が設けられ、各蓄積層形成領域の上方にそれぞれに、上記電荷蓄積能力を有する上記積層膜を介して上記第1ゲート電極が配置されている。
【0012】
このような構成の不揮発性半導体メモリ装置では、たとえばn型チャネルの場合、チャネル形成領域が、反転層を形成するp型不純物領域(反転層形成領域)と、蓄積層を形成するn型不純物領域(蓄積層形成領域)とから構成されている。したがって、これら不純物濃度等の調整により、n型不純物領域に接したp型不純物領域の端部で高電界を発生させることができる。
このような第1ゲート電極のソース側端部に高電界を発生させることを、従来のソースサイド注入では、第1ゲート電極と第2ゲート電極との印加電圧の制御のみで行っていた。しかし、第1ゲート電極と第2ゲート電極の印加電圧はチャネルの反転状態をも制御する必要から、その印加電圧の自由度が制限され、第1ゲート電極のソース側端部に発生させる電界を高めるのに限界があった。
本発明では、第1ゲート電極と第2ゲート電極との印加電圧のほかに、反転層形成領域と蓄積層形成領域の濃度差など、他のパラメータを付加し、これによって、より高い電界の発生が容易となる。また、第1ゲート電極と第2ゲート電極との印加電圧を同じとすることも可能であり、その場合、ゲート電極を2つに分離する必要性がなく、ソースサイド注入型メモリトランジスタの構造を簡素化できる。
【0013】
本発明の第2の観点に係る不揮発性半導体メモリ装置の電荷注入方法は、チャネル形成領域と、上記チャネル形成領域を挟む第1導電型半導体からなる2つのソース・ドレイン領域と、電荷蓄積能力を有する積層膜を介して上記チャネル形成領域の一部と重なる第1ゲート電極と、電荷蓄積能力を有しない単層の誘電体膜を介して上記チャネル形成領域の他の一部と重なる第2ゲート電極と、を有し、上記チャネル形成領域が、第2導電型半導体からなり、反転層によりチャネルが形成される反転層形成領域と、第1導電型半導体からなり、多数キャリアの蓄積層によりチャネルが形成される蓄積層形成領域と、を備え、上記第1ゲート電極が上記積層膜を介して重なるチャネル形成領域部分の全域に上記蓄積層形成領域が形成されている不揮発性半導体メモリ装置の電荷注入方法であって、書き込みまたは消去時に、上記2つのソース・ドレイン領域間に所定の電圧を印加するステップと、上記蓄積層形成領域との境界近傍の反転層形成領域でエネルギー的に励起された電荷が上記第1ゲート電極下の上記積層膜内にソース側から注入されるように、上記第1ゲート電極に第1電圧を、上記第2ゲート電極に上記第1電圧より低い第2電圧を印加するステップと、を含む。
【0014】
また、本発明の第3の観点に係る不揮発性半導体メモリ装置の電荷注入方法は、チャネル形成領域と、上記チャネル形成領域を挟む第1導電型半導体からなる2つのソース・ドレイン領域と、電荷蓄積能力を有する積層膜を介して上記チャネル形成領域の一部と重なる第1ゲート電極と、電荷蓄積能力を有しない単層の誘電体膜を介して上記チャネル形成領域の他の一部と重なる第2ゲート電極と、を有し、上記チャネル形成領域が、第2導電型半導体からなり、反転層によりチャネルが形成される反転層形成領域と、第1導電型半導体からなり、多数キャリアの蓄積層によりチャネルが形成される蓄積層形成領域と、を備え、上記第1ゲート電極が上記積層膜を介して重なるチャネル形成領域部分の全域に上記蓄積層形成領域が形成されている不揮発性半導体メモリ装置の電荷注入方法であって、書き込みまたは消去時に、上記2つのソース・ドレイン領域の一方に基準電圧、他方に所定の正電圧を印加するステップと、上記チャネル形成領域を走行するキャリアを加速し、発生した高エネルギー電荷をドレイン端で衝突させ、この衝突時の電離によって電子、正孔対が発生し、発生した正孔が上記ドレイン側の上記積層膜に注入されるように、上記第1ゲート電極と上記第2ゲート電極とにそれぞれ所定の電圧を印加するステップと、を含む。
【0015】
好適に、上記第2導電型半導体に基準電圧を印加するステップをさらに含む。
あるいは、好適に、上記書き込みまたは消去時に、上記第2導電型半導体を電気的にオープン状態で保持するステップをさらに含む。
あるいは、好適に、書き込みまたは消去時に、上記2つのソース・ドレイン領域の一方を電気的にオープンとした状態で、他方のソース・ドレイン領域の表面に形成された空乏層内のバンド間トンネリングにより電子、正孔対が発生し、発生した正孔が上記積層膜内に注入されるように、上記2つのソース・ドレイン領域、上記第1および第2ゲート電極にそれぞれ正電圧または基準電圧を印加するステップを、含む。
【0016】
これらの電荷注入方法では、たとえば、書き込み時に電子をCHE注入し、消去時に電離衝突またはバンド間トンネリングにより生成されたホールを注入する。
反転層形成領域と蓄積層形成領域との不純物濃度分布を最適化した上で、書き込み時に、上記した第1,第2ゲート電極に印加する電圧(第1,第2電圧)の値を最適化する。蓄積層形成領域に接する反転層形成領域の端部付近で発生する電界が、従来より大きくなる。ソース側から反転層に供給され、加速されてきた電荷が蓄積層形成領域に入る直前で急激に高いエネルギーを得る。そして、その多くは蓄積層に入りエネルギーを失うが、その一部が第1ゲート電極による電界に引き寄せられて、積層膜内の電荷蓄積層に注入される。
消去時に、第2導電型半導体を基準電位またはオープン状態で保持した状態で、上記第1、第2ゲート電極に印加する電圧(第1、第2電圧)の値を最適化する。これにより、電離衝突またはバンド間トンネリングによりホールが発生し、垂直方向の電解に加速されてホットホールとなり、電荷蓄積能力を有する積層膜内に注入される。このとき、FNトンネリングを利用した消去方法に比べ高エネルギー電荷の発生効率が高いため、極めて短い時間で必要な量のホールが積層膜内に注入され、すでに注入されている電子を打ち消して閾値電圧を消去レベルに変化させる。
【0017】
【発明の実施の形態】
第1実施形態
図1および図2は、本発明の実施形態に係る不揮発性メモリセルの等価回路図である。
【0018】
これらのメモリセルは、メモリトランジスタ、MOS型のトランジスタ、メモリトランジスタが2つのビット線BLa,BLb間に直列に接続した3トランジスタ構成となる。
図1に示すメモリセルMでは、2つのメモリトランジスタのゲートは、ワード線WLにより制御され、中央のMOS型トランジスタのゲートはビット線BLa,BLbと平行な制御線CLにより制御される。
図2に示すメモリセルMでは、中央のMOS型トランジスタのゲートがワード線WLにより制御され、その右側のメモリトランジスタのゲートが制御線CLaに制御され、左側のメモリトランジスタのゲートが制御線CLbにより制御される。制御線CLa,CLbは、2つのビット線BLa,BLb間を並行に配置されている。
【0019】
図3(A)は、図1に示すメモリセルのワード線に沿った行方向の概略断面図、図3(B)は、その平面図である。
図3(A)に示すメモリセルにおいて、符号SUBは、たとえば珪素などの半導体材料からなり半導体素子を形成する基体(p型半導体基板、pウエル、p型のSOI層など、以下、基板という)を示す。基板SUB内の表面領域に、n型不純物が高濃度に導入されて出来た2つのソース・ドレイン領域S/Dが互いに離れて形成されている。ソース・ドレイン領域S/Dは、図3(B)に示すように、列方向に長く互いに平行に配置されている。2つのソース・ドレイン領域S/D間の基板表面領域が、動作時にメモリトランジスタのチャネルが形成されるチャネル形成領域となる。チャネル形成領域は、そのほぼ中央に形成された内側チャネル領域CH1と、内側チャネル領域CH1とソース・ドレイン領域S/Dとの間の2つの外側チャネル領域CH2a,CH2bとからなる。
内側チャネル領域CH1は、基板SUBの表面領域でありp型の導電型を有する。この内側チャネル領域CH1は、反転層によりチャネルが形成されることから、以下、反転層形成領域という。
これに対し、外側チャネル領域CH2a,CH2bは、ソース・ドレイン領域S/Dより濃度が低いn型不純物領域ACLa,ACLbからなる。これらのn型不純物領域ACLa,ACLbでは、その表面に多数キャリアが蓄積することによりチャネルが形成されることから、以下、蓄積層形成領域という。蓄積層形成領域ACLa,ACLbは、ソース・ドレインS/Dに沿って互いに並行に配置されている。
【0020】
反転層形成領域CH1上に、たとえば1nm〜10nm程度の厚さの二酸化珪素からなる単層のゲート誘電体膜GD0が形成されている。このゲート誘電体膜GD0は、単層であり、かつ膜中のキャリアトラップは比較的に少なく電荷保持能力を有しない。
ゲート誘電体膜GD0上に、たとえば不純物が添加された多結晶珪素または非晶質珪素からなる制御ゲートCLが形成されている。制御ゲートCLは、図3(B)に示すように、ソース・ドレイン領域S/Dの離間スペース内で、ソース・ドレイン領域S/Dと平行に列方向に長く配線されている。制御ゲートCLの幅(ゲート長)に限定はないが、たとえば50nm以下と超微細化すると、チャネル内のキャリアが準バリスティックに走行し、好ましい。すなわち、電界条件にもよるが、このようにゲート長を極微細化すると、ソースから供給されたキャリアがチャネル内を移動する際に、不純物による細かな小角散乱は受けるが軌道を大きく曲げるような大角散乱を受けることなく、キャリアが弾道的に走行するようになる。
【0021】
ゲート誘電体膜GD0と制御ゲートCLの積層パターンの表面、蓄積層形成領域ACLa,ACLbCの表面およびソース・ドレイン領域S/Dの表面を覆って、複数の誘電体膜を積層させてなり電荷蓄積能力を有するゲート誘電体膜GDが形成されている。
ゲート誘電体膜GDは、下層から順に、ボトム誘電体膜BTM,主に電荷蓄積を担う誘電体膜(主電荷蓄積膜)CHS,トップ誘電体膜TOPから構成されている。
【0022】
ボトム誘電体膜BTMは、たとえば、熱酸化法により形成した二酸化珪素膜、二酸化珪素を窒化処理した膜などを用いる。ボトム誘電体膜BTMの膜厚は、たとえば2.5nm〜6.0nm程度である。
主電荷蓄積膜CHSは、たとえば3.0nm〜20nm程度の窒化珪素膜から構成されている。この主電荷蓄積膜CHSは、たとえば減圧CVD(LP−CVD)により作製され、膜中に電荷トラップが多く含まれている。
トップ誘電体膜TOPは、主電荷蓄積膜CHSとの界面近傍に深い電荷トラップを高密度に形成する必要があり、このため、例えば成膜後の主電荷蓄積膜を熱酸化して形成される。トップ誘電体膜TOPをHTO(High-Temperature-chemical-vapor-deposited-Oxide)膜としてもよい。トップ誘電体膜TOPがCVDで形成された場合は熱処理によりこのトラップが形成される。トップ誘電体膜TOPの膜厚は、ゲート電極(ワード線WL)からのホールの注入を有効に阻止してデータ書き換え可能な回数の低下防止を図るために、最低でも3.0nm、好ましくは3.5nm以上が必要である。
【0023】
このゲート誘電体膜GD上に、制御ゲートCLと交差しメモリトランジスタのゲート電極を兼ねるワード線WLが形成されている。ワード線WLは、たとえば不純物が添加された多結晶珪素または非晶質珪素からなる。
【0024】
図4(A)は、図2に示すメモリセルのワード線に沿った行方向の概略断面図、図4(B)は、その平面図である。
このメモリセルは、図3(A),(B)と同様に、ソース・ドレインS/Dおよび蓄積層形成領域ACLa,ACLbが基板SUBの表面領域に形成されている。蓄積層形成領域ACLa,ACLb間の基板SUBの表面領域が、反転層形成領域CH1となる。
【0025】
反転層形成領域CH1上に、単層のゲート誘電体膜GD0を介在させてワードゲート電極WGが形成されている。ワードゲート電極WGは、ワード線WLと同じ幅で分断され、メモリセルごとに孤立パターンにて形成されている。
【0026】
ワードゲート電極WGの側面と、蓄積層形成領域ACLa,ACLbおよびソース・ドレイン領域S/D上に、電荷蓄積能力を有した3層構造のゲート誘電体膜GDが形成されている。ゲート誘電体膜GDを構成する各層BTM,CHS,TOPの厚さ,材料および形成法は、図3(A),(B)の場合と同じである。
【0027】
ワードゲート電極WGの側面側のゲート誘電体膜GDに接し、蓄積層形成領域ACLa,ACLbの上方に位置する領域に、たとえばサイドウォール形状の制御線CLa,CLbが形成されている。制御線CLa,CLbは、不純物が添加された多結晶珪素または非晶質珪素からなる。制御線CLa,CLbは、層間絶縁層INT内に埋め込まれている。
層間絶縁層INT上には、ワードゲート電極WGの上面に電気的に接続したワード線WLが形成されている。
【0028】
図1〜図4(B)に示す2つのメモリセルにおいて、中央のMOS型トランジスタは、メモリトランジスタの動作(書き込み、読み出し、消去)時に特性向上のために補助的に動作する。また、MOS型トランジスタの存在により、電荷を注入する領域が限定される。すなわち、電荷を注入する領域(以下、記憶部という)は、蓄積層形成領域ACLa,ACLb上のゲート誘電体膜GD部分に限定され、その間の単層のゲート誘電体膜GD0は、電荷蓄積能力を有しないためデータ記憶に寄与できない。さらに、MOS型トランジスタの存在により、その両側に注入された電荷同士が干渉しないので、2ビット記憶を確実に行うことができる。
【0029】
つぎに、メモリセルの動作を説明する。
図5(A)は、ソースサイド注入を用いて記憶部1に電子を注入するときの動作の説明図である。
【0030】
書き込み時に、ソースとなる図の左側のソース・ドレイン領域S/Dに基準電圧Vs,ドレインとなる図の右側のソース・ドレイン領域S/Dにドレイン電圧Vdたとえば、5.0Vを印加する。また、制御ゲートCGに所定の正電圧Vcgたとえば、 1.0V、メモリゲートMGa,MGbに所定の正電圧Vmgたとえば、7.0Vを印加する。なお、図1では制御線CL、図2ではワード線WLが、制御ゲートCGに相当する。また、図1ではワード線WL、図2では制御線CLaまたはCLbが、メモリゲートMGa,MGbに相当する。
この条件下、反転層形成領域CH1に反転層が形成され、その両側の蓄積層形成領域ACLa,ACLbの表面に蓄積層が形成される。ソース側の蓄積層から供給された電子が反転層内を加速され、その一部がドレイン側で、ゲート誘電体膜GDのボトム誘電体膜BTMを構成する二酸化珪素膜のエネルギー障壁ΦSiO2を越える高エネルギー電子(ホットエレクトロン)となる。ホットエレクトロンの一部は、ある確率で記憶部1に注入される。
【0031】
このときのチャネル方向の水平位置Pxと、チャネル電位Vおよび水平方向のチャネル電界Exとの関係を、図5(B)に示す。
ドレイン電圧Vdとソース電圧(基準電圧)Vsの電位差が、主に制御線CLと、ドレイン側のメモリゲートMGaとの間のスペース直下のチャネル領域に加わる。その結果、このスペース直下のチャネル領域に高電界が生じる。
【0032】
このチャネル方向の高電界が反転層チャネル内の電子を急加速し、その電子を高エネルギー電子にすることによって、記憶部1に電子が注入される。この注入効率を向上させるために、チャネル垂直方向の電界が集中している領域と同じ領域にチャネル方向の電界が集中するように、制御線CLとメモリゲートMGa(ワード線WL)に印加する電圧を制御する。
【0033】
本実施形態では、蓄積層形成領域ACLaで蓄積層を形成して、その抵抗を下げる。このとき、制御線CLとドレイン側のメモリゲートMGaとの間のスペース直下のチャネル領域の抵抗が相対的に高くなる。したがって、ドレイン電圧Vdとソース電圧Vsの電位差が、このスペース直下の領域で局部的に集中して印加されるようになる。このことを利用して、記憶部1のソース側端部の近くの領域でチャネル方向の電界を上げ、かつメモリゲートMGaとドレイン間の電位差により、この領域の垂直方向電界を上げる。
【0034】
ソースサイド注入法では、電子がボトム誘電体膜BTMの電位障壁を越えるために必要な活性化エネルギーを、この記憶部1のソース側端部の近くの領域におけるチャネル方向の電界から得る。また、注入に必要なチャネルに垂直な方向の電界も、同じ領域で得られる。このため、通常のCHE注入より電荷注入効率が向上する。
とくに、本実施形態のように蓄積層形成領域を設けた場合、反転層が形成されるチャネル不純物濃度と、蓄積層形成領域ACLaの濃度および深さとを最適化することにより、制御線CLとメモリゲートMGaそれぞれに対する印加電圧範囲の自由度が上がり、電荷注入効率の向上が容易であるという利益が得られる。
【0035】
一方、もう一方の記憶部2に対し書き込みを行う場合は、2つのソース・ドレイン領域S/D間の電圧関係を入れ替えることにより、同様な原理で電子が記憶部2に効率よく注入される。
このようにして、1メモリセルに2ビットの情報を独立に書き込みできる。
【0036】
図6から図8は、蓄積層形成領域ACLの有無、およびその濃度と電界強度との関係を調べたデバイスシミュレーション結果を示すグラフである。
このデバイスシミュレーションでは、制御ゲート長を0.18μm、メモリゲート長を0.09μm、電荷蓄積能力を有したゲート誘電体膜GDの厚みを15nm、制御ゲート下の誘電体膜GD0の厚みを10nmとして計算を行っている。また、図6から図8は、メモリゲートMGaに5V、制御ゲートCLに1.5V、ドレインに3.3Vの各電圧を印加した場合の計算結果である。
各グラフ中の横軸はチャネル水平方向における計算位置のスケールを示しており、セルの中心を原点とし、左右対称になっている。各グラフの左側の縦軸は電界強度のスケールを示す。図中において負に大きなピークをもつ破線がチャネル水平方向の電界Exの強度、正にピークをもつ二点破線がチャネル垂直方向の電界Eyの強度を表している。一方、各グラフの右側の縦軸は電子密度のスケールを示している。グラフ中に実線で示す電子密度Deは、ソース・ドレイン領域S/Dが5×1020/cm3程度と最も高く、蓄積層形成領域ACLa,ACLbが8×1018/cm3程度と次ぎに高く、その間の反転層形成領域では、ドレイン側ほど低くなるようになだらかに変化している。
図6から図8の何れのグラフにおいても、チャネル水平方向電界Exは、ドレインからソースに向かう方向が負符号となるため、電子の水平方向加速電界は負極性をもつ。また、チャネル垂直方向電界Eyは、チャネル表面から誘電体膜およびゲート電極に向かう方向が負符号となるため、電界Eyの強度が強い箇所ほど電子の注入をアシストする垂直方向電界が強くなる。ここで、0.09μm≦Px≦0.105μmが、ドレイン側のメモリゲートMGaと制御ゲートCLとのゲート間ギャップである。
【0037】
図6は、ドレイン側の蓄積層形成領域ACLaを省略した場合を示す。
この場合、基板SUBにp型を用いているため、制御ゲート直下、メモリゲート直下ともにp型半導体である。
図7および図8は、本実施形態に係るメモリセルを想定し、メモリゲート直下が制御ゲート直下と逆極性の半導体となっている。すなわち、制御ゲート直下がp型半導体であるのに対し、蓄積層形成領域ACLa,ACLbを想定してメモリゲート直下をn化している。図7の計算モデルを作成する際のイオン注入条件は、ドーズが7×1012cm-2、加速エネルギーが7keVとし、この条件で2回のイオン注入を行った場合に相当する。また、図8ではメモリゲート直下のn型不純物濃度を、図7のそれより低くしている。具体的には、図8では、ドーズが3.5×1012cm-2、加速エネルギーが7keVとし、この条件で2回のイオン注入を行った場合に相当する。
【0038】
これらの計算結果を比較する上で、まず、チャネル水平方向の電界Exに着目する。図6においては、図7および図8と比較すると、明らかに電界Exの集中が出来ておらず、また電界強度も低くなっている。このことから、図6の従来型メモリセル構造に対応したモデルでは、電子をエネルギー的に励起する電界Exが不足してホットエレクトロンの発生確率が図7,図8の場合より低いと考えられる。
次に電子密度Deに関しては、図6の構造ではメモリゲート直下がp型半導体であるため、図7および図8と比較すると若干、電子密度が低くなっている。これに対し、図7および図8の構造では、チャネル水平方向電界Exの電子加速強度が最大となっている点の付近で、ほぼ1×1016cm-3と等しくなっている。最後にチャネル垂直方向の電界Eyに着目すると、図6においてはメモリゲート直下がp型半導体であり、メモリゲートが正バイアスであるため、基板表面(誘電体膜GDと基板SUBとの界面)に空乏層が広がり、チャネル垂直方向の電界Ey強度が強くなっている。一方、図7および図8においては、チャネル垂直方向の電界Ey強度が図6より低くなっている。
【0039】
効率よく電子をゲート誘電体膜GD内に注入するには、十分なチャネル水平方向の電界Exによって、より多くのホットエレクトロンを発生させ、ある程度高いチャネル垂直方向の電界Eyによって、発生したホットエレクトロンを誘電体膜側に誘導する必要がある。このとき、チャネル水平方向の電界Exの集中が最も強いところにおける電子密度が高くないと、ホットエレクトロンの発生確率が高くても注入電荷量としては小さくなる。
図6においては、チャネル水平方向の電界Ex強度が弱く、ホットエレクトロンの発生確率が低いため、注入効率は低いと考えられる。
図7においては、チャネル水平方向の電界Exが、これらの図の中では最も高いが、チャネル垂直方向の電界が必要量より低く、ホットエレクトロンの注入効率は余り高くないと考えられる。
最後に図8においては、チャネル水平方向の電界Exの集中性、垂直方向の電界Eyともに十分なレベルに達しており、その結果、最も注入効率が高いと予想できる。
【0040】
以上のデバイスシミュレーションの計算結果を踏まえてメモリセルを試作し、実際に書き込み特性を評価した。この評価結果を図9から図11に示す。
図9が従来型のメモリセル、すなわちメモリゲートおよび制御ゲートの直下が共にp型であるメモリセルの書き込み特性の測定結果である。この構造は、先のデバイスシミュレーションにおける図6のモデルに対応する。
図10および図11が、本実施形態のメモリセル、すなわちメモリゲート直下に、制御ゲート直下とは逆極性であるn型の蓄積層形成領域を有するメモリセルの書き込み特性の測定結果である。図10の測定に用いたメモリセルでは、先のデバイスシミュレーションにおける図7のモデルと同様に、ドーズが7×1012cm-2、加速エネルギーが7keVのイオン注入を2回行って蓄積層形成領域ACLa,ACLbを形成している。図11の測定に用いたメモリセルの構造では、メモリゲート直下の蓄積層形成領域ACLa,ACLbの不純物濃度が図10の場合よりやや低くなっており、図8のモデルに対応する。すなわち、蓄積層形成領域ACLa,ACLbを、ドーズが3.5×1012cm-2、加速エネルギーが7keVのイオン注入を2回行って形成している。
【0041】
図9,図10,図11は、その横軸に示すように、メモリゲートに印加する書き込みパルスの印加時間を、1×10-6s(1μs)から1×10-2s(10ms)の範囲で変化させ、この各点でのしきい値電圧Vthを縦軸にとってプロットしている。また、各グラフにおいて、メモリゲートに印加する書き込みパルスの電圧値を2.5Vから7.0Vまで0.5V刻みでパラメータとして振っており、各電圧値のしきい値電圧Vthを線で結んで、その推移を表している。これらの図において、書き込みパルスの電圧値が低く、かつパルスの印加時間が短い領域で、しきい値電圧変化量が大きいセルが、電荷注入効率が高く高速動作が可能なことを示している。
【0042】
図9においては、書き込みパルスの印加時間が最も短い1μsにおいて0.7Vのしきい値電圧変化が検出されており、また1.5Vのしきい値電圧変化を得るためには書き込みパルス電圧Vg=7Vが必要なことが分かる。
一方、図10においては、書き込みパルスの印加時間が1μsにおいて0.8Vのしきい値電圧変化が検出されており、Vg=7V,パルス印加時間1msの書き込みにおいては、1.8Vのしきい値電圧変化が検出されている。このことは、蓄積層形成領域ACLaを設けることにより、電荷注入効率が従来より高くなったことを示す。
図11においては、書き込みパルスの印加時間が1μsにおいて1.4Vと大きなしきい値電圧変化が検出されており、Vg=7V,パルス印加時間1msの書き込みにおいては、2.8Vまでしきい値電圧が変化する。この結果は、蓄積層形成領域ACLaの濃度を最適化すると、電荷注入効率が極めて高くなることを示唆している。
【0043】
これらの測定結果は、先のデバイスシミュレーションによる計算結果からの予測と一致し、従来型のメモリセルより、本実施形態のメモリセル構造のほうが電荷注入効率を高くして、高速かつ低電圧の動作が可能であることを示すものである。また、蓄積層形成領域の不純物濃度に関して、メモリセルの高速化,低電圧化を目的として電荷注入効率を向上させるには、その不純物濃度を、ソース・ドレイン領域S/Dの不純物濃度より低くし、その濃度に最適値が存在することを示している。
【0044】
消去では、保持電荷を引き抜くか、逆極性の電荷を注入する。
保持電荷を引き抜く場合は、トップ誘電膜TOPを通して電荷をメモリゲート側に引き抜く場合と、ボトム誘電体膜BTMを通して電荷を基板側に引き抜く場合がある。いずれにしても、引く抜く方向の所定電界を発生させるために、メモリゲート(図1ではワード線WL、図2では制御線CLa,CLb)とソース・ドレイン領域S/D(および基板SUB)との間に電圧を印加する。これにより、保持電荷が基板側またはメモリゲート側にFNトンネリング等により引き抜かれる。ゲート誘電体膜GD内から保持電荷が引き抜かれると、メモリトランジスタが消去状態に推移する。
【0045】
一方、保持電荷と逆極性の電荷を注入して消去を行う図12の場合、メモリゲートMGaに負電圧を印加し、消去対象の記憶部1側のソース・ドレイン領域S/Dに正電圧を印加する。
この条件下、蓄積層形成領域ACLaに反転層が形成され、かつ急峻なエネルギーバンドの曲がりによってアバランシェブレークダウンが生じる。このブレークダウンに至る過程で高エネルギーの電子,ホール対が生じ、ホットエレクトロンは正電圧に引き寄せられて蓄積層形成領域ACLaもしくはソース・ドレイン領域S/D内に吸収される。一方、ホットホールは、その多くが基板SUBに流れるが、その一部がメモリゲートMGaによる電界に引き寄せられてゲート誘電体膜GD(記憶部1)内に注入される。
この消去方法でも、反対側の記憶部2へホットホールを注入したいときは、同様な電界を記憶部2側で発生させる。この記憶部2の消去は、記憶部1と独立の行うことができ、2ビット同時消去も可能である。
【0046】
読み出しは、いわゆるリバースリードを用いる。すなわち、読み出し対象の記憶データが保持された記憶部側をソースとし、他の記憶部側がドレインとなるように、2つのS/D不純物領域2間に、たとえば1.5〜3V程度のドレイン電圧を印加し、制御ゲートCGと、ソース側のメモリゲートMGaまたはMGbとに、それぞれ所定の正電圧を印加する。その結果、読み出し対象のソース側記憶部内の電荷の有無または電荷量の違いに応じて、チャネルのオン/オフあるいは電流量の違いが生じ、その結果、ドレイン側の不純物領域に電位変化が現出する。この電位変化を図示しないセンスアンプにより読み出すことで、記憶データの論理判別が可能となる。
他の記憶部の読み出しは、ソースとドレインを入れ替えて同様に行う。これにより、2ビット記憶データが独立に読み出せる。
【0047】
第2実施形態
第2実施形態は、負電圧を用いることなく消去時にホールを効率よく注入する電荷注入方法に関する。
図13は消去動作を示す図、図14は消去バイアス条件を示す表である。この消去動作は、電離衝突を利用した2つのモード(モード1−1、モード1−2)と、バンド間トンネリングを利用したモード2とがある。
【0048】
まず、モード1−1について説明する。
モード1−1の消去では、ソースとなる図の左側のソース・ドレイン領域S/Dに印加するソース電圧Vs、基板(第2導電型半導体)SUBに印加する基板電圧Vsub、およびメモリゲート(第1ゲート電極)MGaに印加する消去ゲート電圧Vmgをすべて基準電位Vss(たとえば0V)とする。この状態で、ドレインとなる図の右側のソース・ドレイン領域S/Dに所定の正電圧(ドレイン電圧Vd=3V)を印加し、制御ゲート電極(第1ゲート電極)CGに、反転層形成領域CH1にチャネルを形成するための制御ゲート電圧Vcgとして所定の正電圧Vcg=3〜5Vを印加する。
【0049】
このバイアス条件下、形成されたチャネルを走行する電子eが横方向の電界により加速され、その一部がホットエレクトロンとなる。ところが、ホットエレクトロンは第1実施形態と異なりメモリゲートが正電圧にバイアスされていないためゲート誘電体膜GDに殆ど注入されることなく更に加速されながら、その一部が、蓄積層が形成されていない状態の高抵抗な蓄積層形成領域ACLaを避けてその下方領域にも回り込み、残りが蓄積層形成領域ACLa内に入る。蓄積層形成領域ACLaの直下の空乏層内(あるいは蓄積層形成領域ACLa内部)に入った高エネルギー電子はシリコン格子に衝突し(あるいは散乱を受け)、高エネルギーのホールHHとエレクトロンHEの対を発生させる。このうち、ホットエレクトロンHEはn型のソース・ドレイン領域S/Dまたは蓄積層形成領域ACLaに吸収されるが、ホットホールHHはチャネル中央側にドリフトしながら、その一部が基板SUBと蓄積層形成領域ACLaとの境のポテンシャルの谷間に沿ってメモリゲートMGa側に向かう。このホットホールHHはボトム膜BTMの電位障壁を乗り越え、主電荷蓄積膜CHS中のキャリアトラップに捕獲される。この電荷の捕獲領域(記憶部1)は、ドレイン側の一部に限定される。
【0050】
図15は、モード1−1の電離衝突消去のシミュレーション結果を示す図である。このシミュレーションでは、ソースとなるソース・ドレイン領域S/D、基板SUB、メモリゲートMGaを設置し、ドレインとなるソース・ドレイン領域S/Dに7V、制御ゲート電極CGに5Vを印加した条件で、単位時間内の単位体積あたりのエネルギー分布を計算により求めたものである。図は、素子のドレイン側の一部をチャネル方向に切った断面を表し、その縦および横のスケール単位は0.1μmである。図中の数値は高エネルギー電荷密度を示す、べき乗値であり、たとえば数値26の内側は1×1026個/cm3以上の高エネルギー電荷が存在する。
これに対し、図16は、蓄積積層形成領域ACLaを設けていない場合に同じバイアス条件下の素子の高エネルギー電荷分布を示す。
この2つの図の比較から、蓄積積層形成領域ACLaを設けることにより高エネルギー電荷の発生確率が格段に、すなわち数万倍に高くなっていることが判る。また、図16の場合、比較的エネルギーが高い電荷の分布中心はドレインとなるソース・ドレイン領域S/Dの直前の基板表面側であるが、蓄積積層形成領域ACLaを設けた図15の場合、その分布中心が蓄積層形成領域ACLaの全域から、下方の基板深部にまで及んでいることが判る。これは、電離衝突が蓄積層形成領域ACLa内のみならず蓄積層形成領域ACLa下方の空乏層内でも起き、これにより、かなり多くの高エネルギー電荷が発生しているとの予測を裏付けるものである。
【0051】
このようなシミュレーション結果をもとに蓄積層形成領域ACLaの濃度および深さを決め素子を試作した。その後、素子のゲート誘電体膜GDの記憶部1に、所定の閾値変化が得られる量の電子をCHE注入により注入し、ドレイン電圧を印加するパルス時間(Pulse duration)を種々変えながら電離衝突により生成したホットホールHHをゲート誘電体膜GDに注入し、いわゆるリバースリード法により閾値変化を測定した。この測定の結果を図17に示す。この測定では、最初のパルス印加後の閾値測定で書き込み側の測定がうまく出来なかったが、図より、2μsの短時間消去で既に2V以上の閾値変化が得られており、電離衝突を利用すると非常に高速な消去が可能なことが判明した。
【0052】
参考として、従来のFNトンネリング消去特性を図18に示す。この図の測定で用いた試料(不揮発性メモリ装置)はスプリットゲート構造を有するが、本実施形態のように低濃度不純物領域(蓄積層形成領域ACLa)を有しない。消去時にメモリゲートMGa,MGbに−10Vに近い負電圧を印加してFNトンネリングにより蓄積電子を基板側に引き抜く。あるいは、制御ゲート電極に所定の電圧を印加した状態で、メモリゲートに負バイアスを印加する。これらの消去方法は第1実施形態と同じであり、ここでの詳細な説明は省略する。
図18の消去特性の測定においては、前者のFNトンネル消去を用いた。また、メモリゲートの印加電圧を−4.0Vから−9.0Vまで変化させて閾値のパルス印加時間依存性を調べた。図より、FNトンネリング消去では2μsの短時間消去で殆ど閾値が変化せず、2V以上の閾値変化を得ようとすると、ゲート印加電圧が−9Vの高電圧でも10ms以上を要し、本実施形態の電離衝突消去より桁違いに消去動作が遅い。
【0053】
本実施形態では、また、試作時に蓄積層形成領域ACLaの深さと高エネルギー電荷の発生確率との関係を調べる目的で、イオン注入時のエネルギーを種々変えた。このイオン注入エネルギーと消去特性との関係を図19に示す。図19では、イオン注入エネルギーとして7keV,15keV,25keVの試料の閾値のドレイン電圧依存性を示す。このうち、イオン注入エネルギーが15keVの素子の消去が最も速く、25keV、7keVの順で遅くなることが分かる。すなわち、蓄積層形成領域ACLaの深さに最適値があり、浅過ぎても深過ぎてもよくない。これは、蓄積層形成領域ACLaが浅過ぎると高エネルギー化した電子が注入されてしまい閾値低下を阻害し、逆に深過ぎるとホットエレクトロンの発生確率が低下するか、あるいはホットエレクトロンの発生源が基板表面から遠過ぎることが原因して有効にホール注入が進まないことを示唆している。
【0054】
図14のモード1−2では、基板電圧Vsubをオープンとして電離衝突消去を行う。このとき、他のバイアス条件は、上記したモード1−1と同じとする。電離衝突消去では一度に多量のホットホールが生成され、その大部分は基板に流れる。したがって基板電流を抑制して周辺回路の電流負荷を低減するには、このように基板を電位的にフローティング状態とするのが望ましい。また、基板をオープンとすると、ホールにかかる電界をドレインとメモリゲート間の電界のみとするので、発生したホットホールを効率よく主電荷蓄積膜CHSに注入することができる。この場合、基板あるいはウエル電位が多少なりとも変動し消去速度にばらつきが生じるおそれがあるが、消去速度は極めて短時間であるため消去速度への影響は小さいと考えられ、消去時間を最適化することで対象セルすべてを十分に消去することが可能である。
【0055】
一方、モード2は、上記した他のモードと異なり、バンド間トンネル電流に起因して発生したホットホールを利用する。この消去原理は、第1実施形態で詳述したが、ここでは基準電位と正電圧のみ用い、負電圧は用いない。すなわち、ソースをオープンとし、基板電位Vsub,メモリゲートおよび制御ゲート電極の印加電圧Vmg,Vcgをすべて基準電位で保持した状態で、ドレインに8〜9Vの正電圧Vdを印加する。このドレインとメモリゲート間の電界によりドレインとして機能するソース・ドレイン領域S/Dおよび蓄積層形成領域ACLaの表面に深い空乏層が形成され、バンドの急峻な曲がりによりバンド間トンネル電流が発生する。これに起因してホットエレクトロンとホットホールの対が生じ、そのうちホットホールがゲート誘電体膜GD内の主電荷蓄積膜CHSに注入される。
【0056】
このようなバンド間トンネリングあるいは電離衝突に起因したホットホールを発生させる電界は、単純にチャネル内全面からFNトンネリングを利用して電子を引き抜くのに必要な電界と比較すると低い。また、なにより負電圧を用いないので、周辺回路が簡素化でき、またシステムLSIなどに混載されロジック回路とのプロセスの親和性が求められる不揮発性メモリに適している。
【0057】
本発明の実施形態では、種々の変更が可能である。
たとえば、図20に示すように、制御ゲートCGの片側にのみ蓄積層形成領域ACLを設けたメモリセル構造としてもよい。この場合は、当然、1ビット/セル記憶となるが、メモリセル面積は、上記した2ビット/セル記憶の場合より小さくなる。
また、ゲート誘電体膜GDの構造は、いわゆるMONOS型に限定されず、MNOS型であってもよい。また、小粒径半導体、たとえば多結晶珪素の微粒子を誘電体膜内に離散化して埋め込んだナノ結晶型、さらには、いわゆるFG型においても本発明の適用が可能である。
【0058】
先に説明した2ビット記憶可能なメモリセルM、あるいは図20に示すメモリセルにおいて、ゲート電極を単一にすることも可能である。本発明では蓄積層形成領域を有し、その濃度と深さを制御することによってメモリトランジスタと制御トランジスタのゲート印加電圧を等しくすることが可能だからである。この場合、素子構造が簡素になるという利点が得られる。
【0059】
【発明の効果】
本発明に係る不揮発性半導体メモリ装置と、その電荷注入方法によれば、ソースサイド注入に必要な高電界を容易に発生することができるチャネル構造を有するため、ソースサイド注入効率が従来より向上した。これにより、書き込みまたは消去の時間が短縮した。あるいは、書き込みまたは消去に必要な印加電圧および消費電力を低減することが可能となった。
上記電荷注入時と逆極性の電荷を注入する際に電離衝突あるいはバンド間トンネル電流を利用すると、負電圧を用いずに高エネルギー電荷を生成することができる。したがって、周辺回路を簡素化できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る不揮発性メモリセルの第1の構成例を示す等価回路図である。
【図2】本発明の実施形態に係る不揮発性メモリセルの第2の構成例を示す等価回路図である。
【図3】(A)は、図1のメモリセルのワード線に沿った行方向の概略断面図である。
(B)は、その平面図である。
【図4】(A)は、図2のメモリセルのワード線に沿った行方向の概略断面図である。
(B)は、その平面図である。
【図5】(A)は、ソースサイド注入を用いて記憶部1に電子を注入するときの動作の説明図である。(B)は、このときのチャネル方向の水平位置と、チャネル電位および水平方向のチャネル電界との関係を示す説明図である。
【図6】従来構造のメモリセルを想定し、ドレイン側の蓄積層形成領域ACLaを省略した場合の、水平方向位置と電子濃度および電界強度との関係を調べたデバイスシミュレーション結果を示すグラフである。
【図7】本発明の実施形態に係るメモリセルを想定し、メモリゲート直下が制御ゲート直下と逆極性の半導体となっている場合の、水平方向位置と電子濃度および電強度との関係を調べたデバイスシミュレーション結果を示すグラフである。
【図8】本発明の実施形態に係るメモリセルを想定し、メモリゲート直下が制御ゲート直下と逆極性で、かつ図7より低い濃度のn型半導体となっている場合の、水平方向位置と電子濃度および電界強度との関係を調べたデバイスシミュレーション結果を示すグラフである。
【図9】図6に示すモデルに対応した条件で試作したメモリセルの書き込み特性の評価結果を示すグラフである。
【図10】図7に示すモデルに対応した条件で試作したメモリセルの書き込み特性の評価結果を示すグラフである。
【図11】図8に示すモデルに対応した条件で試作したメモリセルの書き込み特性の評価結果を示すグラフである。
【図12】第1実施形態に係るメモリセルにおいて、保持電荷と逆極性の電荷をバンド間トンネル電流を利用して生成し注入して消去を行う場合の動作を示す図である。
【図13】第2実施形態に係るメモリセルにおいて、保持電荷と逆極性の電荷を2次離衝突により生成し注入して消去を行う場合の動作を示す図である。
【図14】第2実施形態に係るメモリセルの消去モードごとにバイアス印加条件を示す表である。
【図15】蓄積層形成領域がある素子構造のシミュレーションから得られた高エネルギー電荷の分布図である。
【図16】比較対象として、蓄積層形成領域がない素子構造で同じシミュレーションを行った結果から得られた高エネルギー電荷の分布図である。
【図17】第2実施形態に係るメモリセルの消去特性を示すグラフである。
【図18】従来型のFNトンネリングを利用した消去特性を示すグラフである。
【図19】第2実施形態において蓄積層形成領域の形成時のイオン注入エネルギーの大きさと消去速度の関係を調べた閾値のドレイン電圧依存性のグラフである。
【図20】本発明の実施形態に係るメモリセル構造の変形例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
CH1,CH2a,CH2b…チャネル形成領域(CH1:反転層形成領域)、S/D…ソース・ドレイン領域、GD…ゲート誘電体膜(電荷蓄積能力を有した蓄積膜)、GD0…ゲート誘電体膜(電荷蓄積能力を有しない単層の誘電体膜)、BTM…ボトム誘電体膜(電位障壁層)、CHS…主電荷蓄積層(電荷捕獲準位を含む誘電体膜)、TOP…トップ誘電体膜(電位障壁層)、WL…ワード線(第1ゲート電極)、WG…ワードゲート電極(第2ゲート電極)、MGa,MGb…メモリゲート(第1ゲート電極)、CL,CLa,CLb…制御線(第1または第2ゲート電極)、CG…制御ゲート(第2ゲート電極)、ACL,ACLa,ACLb…蓄積層形成領域。
Claims (12)
- チャネル形成領域と、
上記チャネル形成領域を挟む第1導電型半導体からなる2つのソース・ドレイン領域と、
電荷蓄積能力を有する積層膜を介して上記チャネル形成領域の一部と重なるゲート電極と、
を有し、
上記チャネル形成領域が、
第2導電型半導体からなり、反転層によりチャネルが形成される反転層形成領域と、
第1導電型半導体からなり、多数キャリアの蓄積層によりチャネルが形成される蓄積層形成領域と、
を備え、
上記ゲート電極が上記積層膜を介して重なるチャネル形成領域部分の全域に上記蓄積層形成領域が形成されている
不揮発性半導体メモリ装置。 - 上記蓄積層形成領域を構成する第1導電型半導体の不純物濃度が、上記ソース・ドレイン領域を構成する第1導電型半導体の不純物濃度より低い
請求項1記載の不揮発性半導体メモリ装置。 - 上記蓄積層形成領域の上に電荷蓄積能力を有する積層膜を介して第1ゲート電極が形成され、
上記反転層形成領域の上に電荷蓄積能力を有しない単層の誘電体膜を介して第2ゲート電極が形成され、
上記第1ゲート電極と第2ゲート電極が互いに絶縁分離されている
請求項1記載の不揮発性半導体メモリ装置。 - 上記電荷蓄積能力を有する積層膜は、上記蓄積層形成領域の上から上記反転層形成領域の端部上に延在している
請求項3記載の不揮発性半導体メモリ装置。 - 上記反転層形成領域と一方の上記ソース・ドレイン領域間、上記反転層形成領域と他方の上記ソース・ドレイン領域間それぞれに、上記蓄積層形成領域が設けられ、
各蓄積層形成領域の上方にそれぞれに、上記電荷蓄積能力を有する上記積層膜を介して上記第1ゲート電極が配置されている
請求項3記載の不揮発性半導体メモリ装置。 - 上記蓄積層形成領域上に電荷蓄積能力を有する積層膜が形成され、
上記反転層形成領域上に電荷蓄積能力を有しない単層の誘電体膜が形成され、
当該単層の誘電体膜と上記積層膜の上に単一のゲート電極が形成されている
請求項1記載の不揮発性半導体メモリ装置。 - 上記積層膜が、離散化された電荷捕獲準位を含む誘電体膜を、電位障壁層として機能する2つの誘電体膜で厚さ方向両側から挟む3層構造を有する
請求項1記載の不揮発性半導体メモリ装置。 - チャネル形成領域と、上記チャネル形成領域を挟む第1導電型半導体からなる2つのソース・ドレイン領域と、電荷蓄積能力を有する積層膜を介して上記チャネル形成領域の一部と重なる第1ゲート電極と、電荷蓄積能力を有しない単層の誘電体膜を介して上記チャネル形成領域の他の一部と重なる第2ゲート電極と、を有し、上記チャネル形成領域が、第2導電型半導体からなり、反転層によりチャネルが形成される反転層形成領域と、第1導電型半導体からなり、多数キャリアの蓄積層によりチャネルが形成される蓄積層形成領域と、を備え、上記第1ゲート電極が上記積層膜を介して重なるチャネル形成領域部分の全域に上記蓄積層形成領域が形成されている不揮発性半導体メモリ装置の電荷注入方法であって、
書き込みまたは消去時に、
上記2つのソース・ドレイン領域間に所定の電圧を印加するステップと、
上記蓄積層形成領域との境界近傍の反転層形成領域でエネルギー的に励起された電荷が上記第1ゲート電極下の上記積層膜内にソース側から注入されるように、上記第1ゲート電極に第1電圧を、上記第2ゲート電極に上記第1電圧より低い第2電圧を印加するステップと、
を含む不揮発性半導体メモリ装置の電荷注入方法。 - チャネル形成領域と、上記チャネル形成領域を挟む第1導電型半導体からなる2つのソース・ドレイン領域と、電荷蓄積能力を有する積層膜を介して上記チャネル形成領域の一部と重なる第1ゲート電極と、電荷蓄積能力を有しない単層の誘電体膜を介して上記チャネル形成領域の他の一部と重なる第2ゲート電極と、を有し、上記チャネル形成領域が、第2導電型半導体からなり、反転層によりチャネルが形成される反転層形成領域と、第1導電型半導体からなり、多数キャリアの蓄積層によりチャネルが形成される蓄積層形成領域と、を備え、上記第1ゲート電極が上記積層膜を介して重なるチャネル形成領域部分の全域に上記蓄積層形成領域が形成されている不揮発性半導体メモリ装置の電荷注入方法であって、
書き込みまたは消去時に、
上記2つのソース・ドレイン領域の一方に基準電圧、他方に所定の正電圧を印加するステップと、
上記チャネル形成領域を走行するキャリアを加速し、発生した高エネルギー電荷をドレイン端で衝突させ、この衝突時の電離によって電子、正孔対が発生し、発生した正孔が上記ドレイン側の上記積層膜に注入されるように、上記第1ゲート電極と上記第2ゲート電極とにそれぞれ所定の電圧を印加するステップと、
を含む不揮発性半導体メモリ装置の電荷注入方法。 - 上記第2導電型半導体に基準電圧を印加するステップを
さらに含む請求項9記載の不揮発性半導体メモリ装置の電荷注入方法。 - 上記書き込みまたは消去時に、上記第2導電型半導体を電気的にオープン状態で保持するステップを
さらに含む請求項9記載の不揮発性半導体メモリ装置の電荷注入方法。 - 書き込みまたは消去時に、
上記2つのソース・ドレイン領域の一方を電気的にオープンとした状態で、他方のソース・ドレイン領域の表面に形成された空乏層内のバンド間トンネリングにより電子、正孔対が発生し、発生した正孔が上記積層膜内に注入されるように、上記2つのソース・ドレイン領域、上記第1および第2ゲート電極にそれぞれ正電圧または基準電圧を印加するステップを、
含む請求項9記載の不揮発性半導体メモリ装置の電荷注入方法。
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