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JP4150418B2 - 磁気ディスク及びその製造方法 - Google Patents
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Description

本発明は、HDD(ハードディスクドライブ)等の情報を記録するための磁気ディスク装置に搭載する磁気ディスク及びその製造方法に関する。
今日、情報記録技術、特に磁気記録技術はIT産業の発達に伴い飛躍的な技術革新が要請されている。たとえば、HDD等の磁気ディスク装置に搭載する磁気ディスクでは、40Gbit/inch〜100Gbit/inch、更にはそれ以上の情報記録密度を達成できる技術が求められている。
従来、磁気ディスク装置においては、停止時には磁気ディスク上の接触摺動用の領域面に磁気ヘッドを接触させておき、起動時には磁気ヘッドをこの領域面に接触摺動させながら僅かに浮上させ、接触摺動用の領域面の外側或いは内側に位置する記録再生用の領域面で記録再生を開始するCSS(Contact Start and Stop)方式が採用されてきた。このCSS方式では、磁気ディスク上に、記録再生用領域とは別に接触摺動用領域を確保しておく必要がある。
また、CSS方式では、磁気ヘッドの接触摺動から磁気ディスクを保護するために、磁気ディスクの表面を保護層で被覆する等されてきた。例えば、下記特許文献1には、保護層をスパッタで形成するとともに、基板上に形成される層を洗浄液で洗浄する工程を設け、且つ、保護層を形成する面を乾燥させる工程を設けることにより、CSS耐久性等を向上させる磁気記録媒体の製造方法が開示されている。
特開平8−273154号公報
近年の高記録密度化の要請の中で、100Gbit/inch以上の高情報記録密度を達成するために様々なアプローチが為されている。その一つとして、スペーシングロスを改善してS/N比を向上させるために、磁気ディスクの磁性層と、磁気ヘッドの記録再生素子との間隙(磁気的スペーシング)を20nm以下にまで狭めることが求められている。
この磁気的スペーシングを達成する観点から、磁気ディスクの保護層膜厚は6nm以下の薄膜化が求められている。また、磁気ヘッドの浮上量は10nm以下の極狭浮上量とすることが求められている。さらに、最近の磁気ディスク装置では、従来から用いられてきたCSS方式に代わってLUL(LoadUnload:ロードアンロード)方式の磁気ディスク装置が導入されつつある。LUL方式では、停止時には、磁気ヘッドを磁気ディスクの外に位置するランプと呼ばれる傾斜台に退避させておき、起動動作時には磁気ディスクが回転開始した後に、磁気ヘッドをランプから磁気ディスク上に滑動させ、浮上飛行させて記録再生を行なう。停止動作時には磁気ヘッドを磁気ディスク外のランプに退避させたのち、磁気ディスクの回転を停止する。この一連の動作はLUL動作と呼ばれる。
LUL方式は磁気ディスク上にCSS領域(磁気ヘッドの接触摺動用領域)を設ける必要が無い為、CSS方式用磁気ディスクに比べて磁気ディスク面上の記録再生用領域を広く確保できる。従って高記録容量化に資することができるという利点がある。
また、LUL方式ではCSS方式と異なり、磁気ヘッドと磁気ディスク面とが接触することがないので、磁気ディスク面上に吸着防止用の凸凹形状を設ける必要が無く、磁気ディスク面上を極めて平滑化することが可能となる。よってLUL方式用磁気ディスクでは、CSS方式に比べて磁気ヘッド浮上量を一段と低下させることができるので、記録信号の高S/N比化を図ることができ、磁気ディスク装置の高記録容量化に資することができるという利点もある。
最近のLUL方式の導入に伴う、磁気ヘッド浮上量の一段の低下により、10nm以下の極狭な浮上量においても、磁気ディスクが安定して動作することが求められるようになってきた。しかしながら、このような極狭浮上量で磁気ディスク面上に磁気ヘッドを浮上飛行させると、フライスティクション障害やヘッド腐食障害などが頻発するという問題が発生した。
フライスティクション障害とは、磁気ヘッドが浮上飛行時に浮上姿勢や浮上量に変調をきたす障害であり、不規則な再生出力変動を伴うことが多い。場合によっては浮上飛行中に磁気ディスクと磁気ヘッドが接触し、ヘッドクラッシュ障害を起こして磁気ディスクを破壊する事がある。また、ヘッド腐食障害とは、磁気ヘッドの素子部が腐食して記録再生に支障をきたす障害であり、場合によっては記録再生が不可能となったり、腐食素子が膨大して、浮上飛行中に磁気ディスク表面にダメージを与えることがある。このような障害が発生すると、磁気ヘッドの浮上飛行時のHDI(Head DiskInterface)信頼性、例えばLUL耐久性を大幅に劣化させることになる。また、磁気ヘッドを浮上飛行中に磁気ディスク面上に墜落させ吸着させてしまう場合がある。
本発明は、上述の背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、第一に、フライスティクション障害の発生を防止し、LUL方式に好適な優れたLUL耐久性を備えた磁気ディスク及びその製造方法を提供することにある。第二に、フライスティクション障害の発生を防止し、磁気ヘッドの低浮上量化に好適な磁気ディスク及びその製造方法を提供することにある。
本発明者は、上記課題に関して鋭意研究したところ、LUL方式でフライスティクション障害が発生し易い原因は、磁気ヘッド表面に堆積したコンタミであることを突き止めた。そして、磁気ヘッド表面のコンタミ堆積は、従来のCSS方式に比べてLUL方式でより顕著に促進されてしまうことが判明した。即ち、従来のCSS方式では、磁気ヘッド表面に移着堆積したコンタミは、磁気ヘッドが磁気ディスク面上の接触摺動用領域を接触摺動するときにクリーニングされるが、LUL方式では、磁気ヘッドが磁気ディスク上を接触摺動しないために、このクリーニング作用が得られず、その結果、磁気ヘッド表面のコンタミが堆積され続けてしまうのである。
このように磁気ヘッド表面に移着堆積したコンタミは、磁気ヘッドの記録再生素子の腐食障害を引き起こす。ヘッド再生素子部の腐食現象が発生すると、再生信号の出力が低下することにより読み出しエラーが頻発し、場合によっては全く再生が不可能となる。また、コンタミ堆積によって磁気ヘッドの浮上姿勢が乱されるため、磁気ディスク装置の作動中に磁気ヘッドが突然磁気ディスク上に墜落するフライスティクション障害を発生させる場合がある。これらの障害は、LUL方式でより顕著に発生する。
従来のCSS方式の下では、磁気ヘッドのコンタミ移着があっても、前述のクリーング作用により、重大なフライスティクション障害を引き起こすことが無かったため、このような課題があることは認識されていなかった。ところが、LUL方式の導入により、フライスティクション障害が発生するに至り、その原因として磁気ヘッド表面のコンタミ堆積があることが判明し、フライスティクション障害が新たな課題として浮上した。
本発明者は、磁気ヘッドのコンタミ移着について更に検討を進めた結果、浮上飛行する磁気ヘッドからの干渉を緩和するために磁気ディスク表面に設けられる潤滑層は、磁気ヘッドの低浮上量化により、磁気ディスク表面から磁気ヘッド側に移着し易くなっており、磁気ヘッド表面のコンタミになり易いことが判明した。そして、潤滑剤の種類、潤滑層の膜厚、或いは潤滑層の密着性などとの因果関係についても検討したところ、磁気ヘッドのコンタミ移着は、主に潤滑層の密着性に起因していることも判明した。
従来、磁気ディスクの潤滑層は、一般に含フッ素アルキルポリエーテル系潤滑剤をハイドロフルオロカーボン等の溶媒に分散溶解させた溶液中に、保護層まで形成された磁気ディスクを浸漬して塗布、乾燥するディップ法により形成されていた。炭素系保護層に対する潤滑層の密着性が悪いと、潤滑物質が磁気ヘッド表面に移着するおそれがあるが、従来のCSS方式では、潤滑層に起因する磁気ヘッドのコンタミ移着があっても、重大なフライスティクション障害を引き起こすまでに至らなかったため、潤滑層の密着性が問題として認識されていなかった。しかし、磁気ヘッドの低浮上量化、特に浮上量が10nm以下では、潤滑層の密着性が悪いと、磁気ディスク表面から潤滑物質が磁気ヘッド側に移着し易くなり、磁気ヘッドの腐食障害やフライスティクション障害を発生させ易くなる。前述したように、特に、LUL方式では、CSS方式で得られる磁気ヘッド表面の移着堆積コンタミのクリーニング作用が得られないので、これらの障害が加速的に発生してしまうおそれがある。
本発明者は、更に研究を進めた結果、磁気ディスク基板上の各層の少なくとも成膜時に、炭素系保護層と潤滑層との間にアルコール系カップリング層を介在させることにより、潤滑層の密着性が向上し、磁気ヘッドの浮上量が10nm以下になっても、磁気ディスク表面から磁気ヘッド側への潤滑層の移着を好適に防止できることが判明した。従って、潤滑層移着を起因とする磁気ヘッドの腐食障害やフライスティクション障害を防止でき、特にLUL方式にとっては好適であることが判った。
本発明者は、上記知見に基づいて、特に、磁気ヘッドの低浮上量化、LUL方式で顕著となり易いフライスティクション障害等を解決するために、以下の構成を有する発明を完成した。
勿論、CSS方式用磁気ディスクに採用することも好適である。
(構成1)ディスク基板上に、磁性層、窒素を含有する炭素系保護層、蒸着成膜法により成膜されたアルコール系カップリング層、水酸基又はカルボキシル基変性された化合物を含む潤滑層が順次成膜されてなることを特徴とする磁気ディスク。
(構成2)ディスク基板上に、磁性層、窒素を含有する炭素系保護層、アルコールと水酸基又はカルボキシル基変性された化合物とを含む層が順次成膜されてなることを特徴とする磁気ディスク。
(構成3)前記水酸基変性された化合物は、末端に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル化合物であることを特徴とする構成1又は2に記載の磁気ディスク。
(構成4)前記アルコール系カップリング層又はアルコールの主たる成分は低級アルコールであることを特徴とする構成1乃至3の何れかに記載の磁気ディスク。
(構成5)前記炭素系保護層は、水素を含有することを特徴とする構成1乃至4の何れかに記載の磁気ディスク。
(構成6)ディスク基板上に、磁性層、窒素を含有する炭素系保護層、蒸着成膜法により成膜された低級アルコールを含む層、水酸基又はカルボキシル基変性された化合物を含む潤滑層が順次成膜されてなることを特徴とする磁気ディスク。
(構成7)前記炭素系保護層は、プラズマCVD法により成膜された保護層であることを特徴とする構成1乃至6の何れかに記載の磁気ディスク。
(構成8)ロードアンロード方式の磁気ディスク装置に搭載される磁気ディスクであることを特徴とする構成1乃至7の何れかに記載の磁気ディスク。
(構成9)ディスク基板上に、磁性層と窒素を含有する炭素系保護層を順次成膜した後、該炭素系保護層の上に蒸着成膜法によりアルコール系カップリング層を成膜し、次いで、その上に水酸基又はカルボキシル基変性された化合物を含む潤滑層を成膜することを特徴とする磁気ディスクの製造方法。
(構成10)ディスク基板上に、磁性層と炭素系保護層を順次成膜した後、前記アルコール系カップリング層を成膜する前に、該アルコール系カップリング層を成膜する面をアルコールに接触させ、次いで前記アルコール系カップリング層を成膜することを特徴とする構成9に記載の磁気ディスクの製造方法。
(構成11)前記アルコール系カップリング層成膜後の膜表面の水に対する接触角が50度以下となるようにアルコール系カップリング層を成膜することを特徴とする構成9又は10に記載の磁気ディスクの製造方法。
(構成12)ディスク基板上に、磁性層と窒素を含有する炭素系保護層を順次成膜した後、該炭素系保護層の上に蒸着成膜法により低級アルコールを含む層を成膜し、次いで、その上に水酸基又はカルボキシル基変性された化合物を含む潤滑層を成膜することを特徴とする磁気ディスクの製造方法。
(構成13)前記水酸基又はカルボキシル基変性された化合物を含む潤滑層を成膜した後に、ディスクを加熱することを特徴とする構成9乃至12の何れかに記載の磁気ディスクの製造方法。
(構成14)前記炭素系保護層をプラズマCVD法により成膜することを特徴とする構成9乃至13の何れかに記載の磁気ディスクの製造方法。
(構成15)ロードアンロード方式の磁気ディスク装置に搭載される磁気ディスクであることを特徴とする構成9乃至14の何れかに記載の磁気ディスクの製造方法。
本発明の磁気ディスクは、構成1にあるように、ディスク基板上に、磁性層、炭素系保護層、アルコール系カップリング層、水酸基又はカルボキシル基変性された化合物を含む潤滑層が順次成膜されてなる。
すなわち、上記炭素系保護層と水酸基又はカルボキシル基変性された化合物を含む潤滑層との間にアルコール系カップリング層が成膜されている。ここで、水酸基又はカルボキシル基変性された化合物とは、例えば、アルコール変性されたパーフルオロポリエーテル化合物であり、一般に磁気ディスク表面の潤滑物質として用いられる。このような潤滑物質を含む層、つまり潤滑層と炭素系保護層との間に、アルコールを主成分として含むアルコール系カップリング層を介在させることにより、潤滑層の密着性を向上させることができ、磁気ヘッドの浮上量が10nm以下の極狭な浮上量になっても、磁気ディスク表面から磁気ヘッド側への潤滑層の移着を好適に防止することができる。これにより、潤滑層移着を起因とする磁気ヘッドの腐食障害やフライスティクション障害を防止することができる。
潤滑層と炭素系保護層との間にアルコール系カップリング層を介在させることにより、潤滑層の密着性が向上する理由については、本発明者の考察によれば、次のように考えられる。
従来は、保護層上に直接パーフルオロポリエーテル系潤滑剤を塗布して潤滑層を成膜していたが、潤滑層と保護層とは分子間力で結合しているだけで、その結合力は非常に弱く、そのため潤滑層の密着性は十分でなかったものと考えられる。本発明では、保護層上に成膜されるアルコール系カップリング層に含まれるアルコールは水酸基を有しており、保護層上にアルコール系カップリング層が成膜されることで、保護層表面に十分な水酸基が存在することになる。そして、このアルコール系カップリング層上に成膜される潤滑層に含まれる化合物は、末端に水酸基又はカルボキシル基を有しているため、保護層表面の水酸基との間で水素結合による結合(カップリング)力が生じるので、保護層と潤滑層とが単に分子間力で結合しているだけでなく、水素結合による結合力が加わる。これにより、保護層と潤滑層との密着性が向上するものと考えられる。
上記アルコール系カップリング層を構成するアルコールは、炭化水素の水素原子が水酸基(−OH)で置き換わった物質であり、本発明では、アルコール系カップリング層の主たる成分として特に低級アルコールが好適に用いられる。なおここで言う低級アルコールとは、1分子当たりの炭素数が1〜6のアルコールのことである。低級アルコールを用いることが好ましい理由は、炭素数が増えるにしたがって、ガスとして気化させて成膜装置に供給することが困難となるからである。低級アルコールであれば、直鎖状でも分岐状のものでも好適に用いられる。直鎖状の低級アルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、n−アミル(ペンチル)アルコール、n−ヘキシルアルコール等が挙げられる。分岐状の低級アルコールとしては、例えば、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソアミルアルコール等が挙げられる。また、ビニルアルコール等の不飽和アルコールや、1分子に2個以上の水酸基を持った、エチレングリコール、グリセリン等の多価アルコールなどを用いることも出来る。これらアルコールは何れかを単独で用いてもよいが、2種以上を併用してもよい。本発明では、中でも、イソプロピルアルコールを用いるのが好ましい。イソプロピルアルコールは沸点が82℃と比較的低く、後述のベーパー方式による成膜に好適である。したがって、本発明において、アルコール系カップリング層は、上述の低級アルコールを含む層であることが好適である。
上記アルコール系カップリング層の膜厚は、本発明の作用を損わない限りにおいては特に制約される必要は無いが、通常0.5〜2.0オングストローム程度の範囲が適当である。アルコール系カップリング層の膜厚が薄過ぎると、潤滑物質との水素結合に寄与する水酸基が表面に十分に存在しないため、潤滑層との密着性を向上させる作用が得られ難くなる。一方、アルコール系カップリング層の膜厚が厚過ぎると、アルコール系カップリング層の保護層に対する密着性が低下するため、その結果、保護層と潤滑層の十分な密着性が得られ難くなる。
なお、上記の膜厚は、アルコール系カップリング層の成膜時の膜厚である。アルコール系カップリング層成膜後、その上に潤滑層を成膜すると、経時的にはアルコール系カップリング層と潤滑層との界面で拡散領域が形成され、アルコール系カップリング層と潤滑層との界面が明瞭でなくなる場合が生じ得る。或いは、経時的にアルコール系カップリング層は隣接する潤滑層と渾然一体化して、見かけ上はアルコール系カップリング層が単独では存在せず検出が困難となる場合も生じ得る。
なお、アルコール系カップリング層の成膜時の膜厚は、例えばフーリエ変換型赤外分光光度計(FTIR)により検出されるOH伸縮振動のピーク強度に基づいて算出することが可能である。さらに、製造された本発明の磁気ディスクにおけるアルコール系カップリング層の検出は、例えばTOF-SIMS(Time Of FlightSecondary Ion Mass Spectrometer:飛行時間型二次イオン質量分析装置)法を用いて行うことも可能である。
本発明のアルコール系カップリング層の成膜方法は、従来よく知られているスピンコート方式やディップ方式などを用いることも可能であるが、本発明では蒸着による成膜法が好ましく、特にベーパー法を用いるのが好ましい。本発明のアルコール系カップリング層の主成分は好ましくは低級アルコールであるが、低級アルコールはその炭素数にもよるが、沸点が比較的低く、容易に気化して分子状態となり、この分子状態で成膜することが可能であるため、ベーパー法、即ち、蒸着成膜法によれば、上述の0.5〜2.0オングストローム程度の非常に薄い膜厚を均一に形成するのに好適である。また、膜厚は成膜時間に依存するため、成膜時間を制御することにより、アルコール系カップリング層の膜厚を容易に制御できる利点もある。
また、上記アルコール系カップリング層を成膜する前に、このアルコール系カップリング層を成膜する面をアルコールに接触させるようにしてもよい。つまり、ディスク基板上に磁性層と炭素系保護層を順次成膜した後、アルコール系カップリング層を成膜する前に、このアルコール系カップリング層を成膜する面をアルコールに接触させてから、アルコール系カップリング層を成膜する。アルコール系カップリング層は炭素系保護層上に成膜されるため、アルコール系カップリング層を成膜する面とは、保護層の主表面である。このように、アルコール系カップリング層を成膜する前に、その成膜する面を予めアルコールに接触させることで、その成膜面のアルコール親和性を高め、その上に成膜されるアルコール系カップリング層による潤滑層の密着性向上作用が一段と高められる。また、アルコール系カップリング層を成膜する面を予めアルコールに接触させることにより、その成膜面に付着した異物や有機物等を除去して清浄化する洗浄作用も同時に得られるので、本発明の作用が促進される。なお、アルコール系カップリング層を成膜する面を接触させるアルコールは、アルコール系カップリング層の主成分のアルコールと同一のものを用いてもよいし、異なるものを用いてもよい。ただし、この場合、成膜されるアルコール系カップリング層と同一の低級アルコールを用いた方が、親和性の点ではより好ましい。
このようにアルコール系カップリング層を成膜する面を予めアルコールに接触させる方法としては、例えば、ディスク基板上に保護層まで形成したディスクをアルコール中に浸漬させる方法(ディップ方式)や、上記ディスクを回転させながら保護層表面にアルコールを供給する方法(スピン方式)などが挙げられる。この場合のアルコールの液温は、そのアルコールの沸点よりも低い適当な温度とすればよい。
また、アルコール系カップリング層を成膜する面を予め水洗浄しても良い。水洗浄することで、アルコール系カップリング層を成膜する面を清浄化することができる。洗浄方法としては、ディップ方式による洗浄でも、スピン方式による洗浄でもよい。この場合、例えば70℃以上の温純水を使用することが洗浄作用の点で好ましい。
なお、アルコール系カップリング層を成膜する面の水洗浄工程と、上述のアルコールに接触させる工程を併用してもよい。この場合、アルコール系カップリング層を成膜する保護層表面を水洗浄し、次いでアルコールに接触させるプロセスが好ましい。これにより、アルコール系カップリング層を成膜する面の高い清浄化作用が得られると同時に、アルコール系カップリング層による潤滑層の密着性向上作用を高める効果が得られ、本発明の作用が促進される。
本発明では、前記アルコール系カップリング層成膜後の膜表面の水に対する接触角が50度以下であることが好ましい。保護層表面にアルコール系カップリング層を成膜すると、その表面が水酸基で覆われ、水に対する親水性が高まる。それ故、このアルコール系カップリング層上に水酸基又はカルボキシル基変性された化合物を含む層(潤滑層)を成膜すると、この化合物との水素結合による結合力が生じるものと考えられ、この化合物を含む潤滑層の密着性が向上する。本発明者の検討の結果、特にアルコール系カップリング層成膜後の膜表面の水に対する接触角が50度以下となる場合、アルコール系カップリング層による潤滑層の密着性を向上させる作用が高められることが判明した。特に、この接触角が35度以下であることが好ましい。一方、この接触角が50度よりも大きくなる場合、潤滑層の密着性を向上させる作用が十分に得られない。
本発明のアルコール系カップリング層の上に成膜される潤滑層に含まれる水酸基又はカルボキシル基変性された化合物としては、例えば、アルコール変性され末端に水酸基を導入したパーフルオロポリエーテル化合物、カルボキシル基変性され末端にカルボキシル基(−COOH)を導入したパーフルオロポリエーテル化合物などが好適である。このような末端に水酸基やカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテル化合物は、直鎖構造を備え、磁気ディスク用に適度な潤滑性能を発揮するため潤滑物質として好適に用いられ、且つ、本発明のアルコール系カップリング層との間で生じる水素結合に寄与でき、潤滑層の密着性向上に資する。特に、分子の両末端に、つまりパーフルオロポリエーテル主鎖の両末端に水酸基又はカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテル化合物は、本発明の作用が促進されるので好適である。
本発明で好ましく用いられる末端に水酸基を導入したパーフルオロポリエーテル化合物は、市販品としては、例えば、ソルベイソレクシス社製のフォンブリンゼットテトラオール(商品名)、同じくソルベイソレクシス社製のフォンブリンゼットドール(商品名)などが挙げられる。また、末端にカルボキシル基を導入したパーフルオロポリエーテル化合物は、市販品として、例えば、ソルベイソレクシス社製のフォンブリンゼットディアック(DIAC)(商品名)などが挙げられる。これらの化合物を単独で用いてもよいが、2種以上を混合して用いてもよい。
上記水酸基又はカルボキシル基変性された化合物を含む潤滑層の成膜方法としては、従来よく知られているディップ法やスピンコート法を任意に用いればよい。
なお、潤滑層の成膜時の膜厚は、7〜20オングストローム程度の範囲であることが望ましい。潤滑層の膜厚が薄いと均一な層の形成が難しく、良好な潤滑特性が得られ難くなる。また、潤滑層の膜厚が厚過ぎると、本発明のアルコール系カップリング層との界面に近い領域では密着性が高いが、潤滑層の表面では密着性が低くなり、磁気ヘッドへの移着が起こり易くなる。
また、成膜された潤滑層の被覆率は、85%以上であることが好ましく、特に好ましくは90%以上である。潤滑層の被覆率が低いと、潤滑層の厚さが不均一で、ディスク表面が潤滑層で均一に覆われないため、良好な潤滑特性が得られない。なお、本発明では、炭素系保護層と潤滑層の間にアルコール系カップリング層を介在させたことにより、その上に成膜される潤滑層は良好な被覆率が得られる。アルコール系カップリング層は、潤滑層の下地層としての機能も有しているものと考えられる。
また、潤滑層の密着率は、好ましくは70%以上であり、特に好ましくは75%以上である。潤滑層の密着率が70%以上であると、LUL方式においてフライスティクション障害の発生を有効に防止することが出来る。本発明では、成膜時に炭素系保護層と潤滑層の間にアルコール系カップリング層を介在させたことにより、上記の好ましい潤滑層の密着率が得られる。また、前述のアルコール系カップリング層成膜後の膜表面の水に対する接触角が50度以下となるようにアルコール系カップリング層が成膜された場合、特に好ましい潤滑層の密着率が得られる。なお、ここでの潤滑層の密着率とは、詳しくは後述の実施例で述べるように、磁気ディスクを所定の溶媒中に浸漬させ、浸漬前後での潤滑層の膜厚比より求めた値である。
また、以上のようにアルコール系カップリング層と、水酸基又はカルボキシル基変性された化合物を含む潤滑層とは別々に調製して成膜する場合を説明したが、アルコールと水酸基又はカルボキシル基変性された化合物とを混合して含む層を炭素系保護層上に成膜することによっても、本発明の作用が得られる。この場合、混合方法などの調製法は任意であるが、均一な分散体が得られるよう適当な溶媒を用いてもよい。アルコールと水酸基又はカルボキシル基変性された化合物との混合比は、アルコール/変性化合物(重量比)=1/99〜30/70程度の範囲が適当である。アルコールが少ないと潤滑層の密着性を向上させる作用が得られにくい。また、上記変性化合物が少ないと良好な潤滑特性が得られない。成膜方法としては、ディップ法やスピンコート法が適当である。また、膜厚は、アルコール系カップリング層と上記変性化合物を含む潤滑層とを順次成膜する場合の合計膜厚と同程度とすればよい。
本発明では、アルコール系カップリング層と水酸基又はカルボキシル基変性された化合物を含む潤滑層を順次成膜した後に、ディスクを加熱することが好ましい。本発明は、成膜時に炭素系保護層と潤滑層との間にアルコール系カップリング層を介在させることにより、保護層と潤滑層の密着性を向上させているが、上記加熱処理を施すことで、本発明の作用を促進させ、よりいっそうの密着性向上が可能になる。加熱処理の温度は、本発明の作用を促進させる上で、好ましくは80〜150℃、さらに好ましくは80〜110℃の範囲が好適である。また、この温度範囲内で温度を一定にして加熱してもよいし、或いは、この温度範囲内で連続的又は段階的に温度を変えながら加熱してもよい。また、加熱処理の時間は、上記の温度範囲内では5〜60分程度が適当である。
本発明において、前記炭素系保護層は、水素を含むダイヤモンドライク炭素(水素化ダイヤモンドライク炭素)の保護層とすることができる。水素を含むことで、保護層の緻密性が向上し、硬度も向上させることができる。なお、保護層の炭素に対する水素の含有量が多過ぎると、ポリマー状の炭素成分が増大して、磁性層に対する保護層の付着性能が低下する場合があり、LUL起動時に保護層が剥がれる場合があるので好ましくない。
また、炭素系保護層に窒素を含有させることにより、潤滑層との密着性を更に向上させることができる。これは、炭素系保護層に窒素を含有させると、C(炭素)とN(窒素)とが3重結合して、保護層の表面にN+が現れるからであると考えられる。N+は、アルコール系カップリング層を構成するアルコール物質の末端基(水酸基)と親和性が高いので、このアルコール系カップリング層を介して潤滑層と保護層との密着性を更に向上させるものと考えられる。
炭素系保護層の膜厚は、0.5nm以上であることが好ましい。膜厚が0.5nm未満では、この保護層の被覆率が低下し、良好な保護特性が得られない場合がある。なお、この保護層の膜厚に特に上限を設ける必要はないが、磁気的スペーシングの改善を阻害しないよう、実用上は6nm以下とするのが好ましい。
本発明においては、炭素系保護層はプラズマCVD法で成膜することが好ましい。プラズマCVD法で成膜された炭素系保護層は、緻密なのでLUL耐久性に優れているからである。また、保護層の膜厚が6nm以下である薄膜保護層であっても優れた耐久性を発揮できる。さらに、プラズマCVD法で成膜された炭素系保護層は、アルコール系カップリング層、低級アルコールを含む層に対して結合性が優れているという特徴も備える。
炭素系保護層をプラズマCVD法で成膜する場合にあっては、窒素を含有する炭素系保護層として形成することが特に好ましい。この場合、アルコール系カップリング層、アルコールを含む層に対して結合性が優れるからである。
また、プラズマCVD法で炭素系保護層を成膜する場合は、材料ガスを低級炭化水素ガスとすることが好ましい。特に、低級不飽和炭化水素ガスを用いることが好適である。このような材料ガスとしては、例えばアセチレンガスやエチレンガスを例示することができる。
本発明においては、6nm以下の極めて薄膜化された保護層であっても、磁気ヘッドの腐食障害やフライスティクション障害を防止することができるため、磁気的スペーシングの改善を図れる。
本発明においては、磁性層を構成する元素は特に限定されないが、コバルト(Co)合金系磁性層であることが好ましい。Co合金系磁性層は保磁力が高く耐食性があるため高記録密度化にとって好適である。
本発明に好適なCo系合金として具体的には、CoPt系合金、CoCr系合金、CoCrPt系合金等が挙げられる。中でも、CoCrPt系合金からなる磁性層は、磁性グレインを微細化でき、かつグレインの磁気異方性定数を向上させることができるので、高記録密度化に特に好適である。
本発明において、基板としてはガラス基板を使用するのが好ましい。ガラス基板は、平滑性が高く高剛性が得られるので、高記録密度化に伴う磁気ヘッドの低浮上量化の要求を満たすことが可能である。ガラス基板の材質としては、例えば、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ソーダアルミノシリケートガラス、アルミノボロシリケートガラス、ボロシリケートガラス、石英ガラス、チェーンシリケートガラス、又は結晶化ガラス等のガラスセラミックス等が挙げられる。中でも、アルミノシリケートガラスは、耐衝撃性や耐振動性に優れるため特に好ましい。
このようなアルミノシリケートガラスは、化学強化することによって、ガラス基板表面に圧縮応力層を設けることができ、抗折強度や、剛性、耐衝撃性、耐振動性、耐熱性に優れ、高温環境下にあってもNaの析出がないとともに、平坦性を維持し、ヌープ硬度にも優れる。
また、ガラス基板の厚さは、0.1mm〜1.5mm程度が好ましい。
基板上に、少なくとも上述の磁性層、炭素系保護層、アルコール系カップリング層、及び水酸基又はカルボキシル基変性された化合物を含む潤滑層を順次形成することにより、本発明の磁気ディスクが得られる。具体的な実施形態としては、基板上に、シード層、下地層、磁性層、炭素系保護層、アルコール系カップリング層、潤滑層を設けた磁気ディスクとするのが好適である。
シード層としては、例えば、Al系合金、Cr系合金、NiAl系合金、NiAlB系合金、AlRu系合金、AlRuB系合金、AlCo系合金、FeAl系合金等のbccまたはB2結晶構造型合金等を用いることにより、磁性粒子の微細化を図ることができる。特に、AlRu系合金、中でもAl:30〜70at%、残部がRuの配合量の合金であれば、磁性粒子の微細化作用に優れているので好ましい。
下地層としては、Cr系合金、CrMo系合金、CrV系合金、CrW系合金、CrTi系合金、Ti系合金等の磁性層の配向性を調整する層を設けることができる。特に、CrW系合金、中でも、W:5〜40at%、残部がCrの配合量の合金は、磁性粒子の配向を整える作用に優れているので好ましい。
その他の、磁性層、炭素系保護層、アルコール系カップリング層及び潤滑層についての詳細はすでに説明したとおりである。
本発明において、アルコール系カップリング層及び潤滑層の形成方法はすでに説明したとおりであるが、その他の各層を成膜する方法については、公知の技術を用いることができ、たとえばスパッタリング法(DCマグネトロンスパッタ、RFスパッタ等)、プラズマCVD法等を採用できる。
本発明において、磁気ディスク表面の表面粗さは、Rmaxで6nm以下であることが好ましい。6nmを超えると、磁気的スペーシング低減を阻害する場合があるので好ましくない。なお、ここで言う表面粗さとは、日本工業規格(JIS)B0601に定めるものである。
本発明の磁気ディスクは、LUL耐久性に優れ、LUL方式の磁気ディスク装置に搭載する磁気ディスクに好適である。
以下に実施例を挙げて、本発明の実施の形態についてさらに具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
本実施例の磁気ディスク10は、図1に示すように、ガラス基板1上に、シード層2aと下地層2bとからなる非磁性金属層2、磁性層3、炭素系保護層4、アルコール系カップリング層5、潤滑層6を順次積層してなる。上記磁性層3以外は全て非磁性体である。なお、図1は少なくとも成膜直後の状態を示すもので、アルコール系カップリング層5と潤滑層6との界面は、経時的には相互拡散等により明瞭でなくなる場合も生じる。
次に、本実施例の磁気ディスク10の製造方法を説明する。
本実施例では、まず、溶融ガラスから上型、下型、胴型を用いたダイレクトプレスにより直径66mmφ、厚さ1.5mmの円盤状のアルミノシリケートガラスからなるガラス基板を得、これに研削、精密研磨、端面研磨、精密洗浄、化学強化を施すことにより、磁気ディスク用ガラス基板1を製造した。
上記工程を経て得られたガラス基板1の表面粗さを原子間力顕微鏡(AFM)にて測定したところ、Rmax=4.37nm、Ra=0.38nmと平滑な表面を持つ磁気ディスク用ガラス基板であることを確認した。なお、得られたガラス基板1は、外径は65mm、内径は20mm、板厚は0.635mmの2.5インチ型磁気ディスク用基板であった。
次に、静止対向型成膜装置を用いて、上記ガラス基板1上に、DCマグネトロンスパッタリングにより、シード層2a、下地層2b、及び磁性層3を順次形成した。
即ち、まずスパッタリングターゲットとしてAlRu(Al:50at%、Ru:50at%)合金を用い、膜厚30nmのAlRu合金からなるシード層2aを成膜した。次に、スパッタリングターゲットとしてCrMo(Cr:80at%、Mo:20at%)合金を用い、シード層2a上に、膜厚20nmのCrMo合金からなる下地層2bを成膜した。次いで、スパッタリングターゲットとしてCoCrPtB(Cr:20at%、Pt:12at%、B:5at%、残部Co)合金を用い、下地層2b上に、膜厚15nmのCoCrPtB合金からなる磁性層3を成膜した。
次に、上記磁性層3上に、プラズマCVD法を用いて炭素系保護層4を形成した。具体的には、反応性ガスとしてアセチレンに窒素ガスを加え、窒素ガス含有量を3%とした混合ガス雰囲気下で、膜厚3.0nmのアモルファス状の窒素化ダイヤモンドライク炭素からなる保護層が形成されるように成膜を行った。この際、周波数27MHzの高周波電力を電極に印加しプラズマを発生させた。
なお、このとき、プラズマに電圧を印加するなどして、IBD(Ion BeamDeposition)としてプラズマCVD成膜を行ってもよい。
次に、上記炭素系保護層4までを形成したディスクを、70℃の純水中で400秒間浸漬洗浄した後、更に25℃のイソプロピルアルコール中で400秒間浸漬洗浄した。
次に、上述の洗浄後の炭素系保護層4上に、ベーパー法、即ち、蒸着成膜法を用いてイソプロピルアルコール(以下、IPAと称する)からなるアルコール系カップリング層5を成膜した。成膜時間は20秒とした。成膜されたアルコール系カップリング層の膜厚を以下のようにして測定した。
アルコール系カップリング層の膜厚は、FTIR(フーリエ変換型赤外分光光度計)により、OH伸縮振動のピーク強度に基づいて算出した。具体的には、予め数水準のIPA層膜厚の試料群を準備し、この試料群の光学法(エリプソメーター)に基づく膜厚と、FTIRにて3600〜3650cm−1に見られるOH伸縮振動のピーク強度との相関関係を求めておく。そして、本実施例の上記ディスクにおけるアルコール系カップリング層のFTIRのOH伸縮振動ピーク強度を測定し、上述の相関関係に基づいて、当該アルコール系カップリング層の膜厚を算出する。このFTIRを用いた方法により、アルコール系カップリング層の膜厚を精密に求めることが出来る。本実施例のIPAからなるアルコール系カップリング層の膜厚は0.8オングストローム(Å)であった。
また、上記アルコール系カップリング層成膜後の表面の水に対する接触角を光学顕微鏡で観察して測定した。シリンジに純水を充填し、アルコール系カップリング層表面に0.5μlの純水を滴下後、その接触角を測定した。接触角の測定環境は、温度25℃、クリーンルーム内(クラス1000)とした。本実施例のIPA成膜後の接触角は35度であった。
次に、上記アルコール系カップリング層5の上に、ディップ法を用いて、PFPE(パーフルオロポリエーテル)化合物からなる潤滑層6を形成した。具体的には、主鎖の両末端に官能基として水酸基を有するアルコール変性パーフルオロポリエーテルを用いた。溶剤には、三井ディポンフロロケミカル社製のバートレルXF(商品名)を用いた。
このようにして潤滑層6を形成後、オーブン中で、ディスクを110℃、60分間の加熱処理を行った。なお、形成した潤滑層5の膜厚は、上述のFTIRによるOH伸縮振動のピーク強度に基づく方法を用いて測定したところ、13Åであった。
以上のようにして本実施例の磁気ディスク10を製造した。
得られた磁気ディスク10の表面粗さを原子間力顕微鏡(AFM)にて測定したところ、Rmax=4.40nm、Ra=0.39nmの平滑な表面であることを確認した。
また、得られた磁気ディスク10のグライドハイトを測定したところ、4.5nmであった。磁気ヘッドの浮上量を安定的に10nm以下とする場合、磁気ディスクのグライドハイトは5nm以下とすることが望ましい。
さらに、得られた磁気ディスク10について、以下の各種性能試験を行った。
〔潤滑層被覆率測定〕
潤滑層の被覆率は、特開平7−192255号公報に記載されたX線光電子分光法を用いた潤滑層の平均膜厚測定方法に基づき算出した。本実施例の磁気ディスクにおける潤滑層の被覆率は93%であった。
〔潤滑層密着性試験〕
得られた磁気ディスクの潤滑層膜厚をFTIR(フーリエ変換型赤外分光光度計)で評価した。次に、上記磁気ディスクをフッ素系溶媒(前出のバートレルXF)に1分間浸漬させた。フッ素系溶媒に浸漬させることで、付着力の弱い潤滑層部分は溶媒に溶解してしまうが、付着力の強い部分は保護層上に残留することができる。次に、磁気ディスクを溶媒中から6cm/分で引き上げ、再び、FTIRで潤滑層膜厚を測定した。溶媒浸漬前の潤滑層膜厚に対する溶媒浸漬後の潤滑層膜厚の比率を潤滑層密着率(ボンデット率)と呼び、ボンデット率が高ければ、保護層に対する潤滑層の密着性が高いことを示す。具体的には、ボンデット率は70%以上、特に75%以上であることが好ましい。本実施例の磁気ディスクでは、ボンデット率は85%であった。
〔LUL耐久性試験〕
LUL耐久性試験は、磁気記録装置に、上記磁気ディスクと、巨大磁気抵抗効果型再生素子(GMR素子)を備えた磁気ヘッドとを装着して行った。磁気ディスクの回転数は5400rpmとし、磁気ヘッドのスライダーはNPAB(負圧型)スライダーを用い、磁気ヘッド浮上時の浮上量を10nmとし、磁気記録装置内の環境を70℃、80%RHの高温高湿環境下で、磁気ヘッドのロード・アンロード動作を連続繰り返し行った。磁気記録装置が故障することなく耐久したLUL回数を測定することにより、LUL耐久性を評価した。
本実施例の磁気ディスクでは、LUL回数は故障なく100万回を超えることができた。通常、LUL耐久性試験では、LUL回数が故障なく連続して60万回を超えることが必要とされる。通常のHDDの使用環境では、LUL回数が60万回を超えるには15年程度の使用が必要であると言われており、本実施例の磁気ディスクは、合格基準をはるかに越える高信頼性を保障できることがわかる。
〔フライスティクション試験〕
本実施例の磁気ディスクを100枚製造し、浮上量6nmのグライドヘッドを用いてグライド試験を行うことで、フライスティクション障害の発生状況を検査した。本実施例の磁気ディスクのグライドハイトは前記のように4.5nmであるので、このように試験を行うことでフライスティクション障害の検査を行うことができる。具体的には、フライスティクション障害が発生すると、グライドヘッドの浮上姿勢が突然不安定となるので、グライドヘッドに接着された圧電素子の信号をモニタすることで、フライスティクション障害の発生を感知することができる。また、フライスティクション障害が発生した場合、グライド検査の通過率が激減するので、フライスティクションの発生傾向は、グライド検査の通過率によって判断できる。なお、フライスティクション試験の通過率(歩留り)は、高ければ高いほど望ましく、最低でも70%以上、好ましくは90%以上である。
本実施例の磁気ディスクは、フライスティクション試験の歩留りが98%と高かった。
なお、本実施例の磁気ディスクについての以上各種性能試験結果は纏めて後記表1にも示した。
(実施例2)
本実施例の磁気ディスクは、実施例1の磁気ディスクにおいて、アルコール系カップリング層の膜厚を1.5Åとした点以外は、実施例1の磁気ディスクと同様に製造した。
得られた本実施例の磁気ディスクの表面粗さ及びグライドハイトは実施例1の磁気ディスクと同様であった。
本実施例の磁気ディスクについて実施例1と同様に各種性能評価試験を行ない、その結果を後記表1に示した。
(実施例3)
本実施例の磁気ディスクは、実施例1の磁気ディスクにおいて、アルコール系カップリング層の膜厚を2.0Åとした点以外は、実施例1の磁気ディスクと同様に製造した。
得られた本実施例の磁気ディスクの表面粗さ及びグライドハイトは実施例1の磁気ディスクと同様であった。
本実施例の磁気ディスクについて実施例1と同様に各種性能評価試験を行ない、その結果を後記表1に示した。
(実施例4)
本実施例の磁気ディスクは、実施例1の磁気ディスクにおいて、潤滑層の膜厚を10Åとした点以外は、実施例1の磁気ディスクと同様に製造した。
得られた本実施例の磁気ディスクの表面粗さ及びグライドハイトは実施例1の磁気ディスクと同様であった。
本実施例の磁気ディスクについて実施例1と同様に各種性能評価試験を行ない、その結果を後記表1に示した。
(比較例1)
本比較例では、実施例1の磁気ディスクにおいて、アルコール系カップリング層の成膜は行わず、保護層上に直接潤滑層を成膜した点以外は、実施例1と同様に磁気ディスクを製造した。
得られた本比較例の磁気ディスクの表面粗さ及びグライドハイトは実施例1の磁気ディスクと同様であった。
また、本比較例の磁気ディスクについて実施例1と同様に各種性能評価試験を行ない、その結果を後記表1に示した。なお、本比較例では、アルコール系カップリング層を設けていないので、表1中の「接触角」は、保護層成膜後の表面の水に対する接触角の値である。
(実施例5)
本実施例の磁気ディスクは、実施例1の磁気ディスクにおいて、アルコールと潤滑物質を混合して含む層を保護層上に成膜した点以外は、実施例1の磁気ディスクと同様に製造した。
具体的には、実施例1の潤滑層と同じ組成の潤滑剤塗布液中にIPAを2%(重量比)の割合で添加し、ディップ法により保護層上に13Åの膜厚となるように成膜した。
得られた本実施例の磁気ディスクの表面粗さ及びグライドハイトは実施例1の磁気ディスクと同様であった。
本実施例の磁気ディスクについて実施例1と同様に各種性能評価試験を行ない、その結果を下記表1に示した。
Figure 0004150418
上記表1の結果を参照して次のことがわかる。
すなわち、本発明の実施例はいずれも、保護層と潤滑層との間にアルコール系カップリング層を成膜したことにより、潤滑層の密着性が向上し、フライスティクション試験の歩留りが90%以上と高く、LUL方式で10nmの極狭浮上量としてもフライスティクション障害の発生を有効に防止できることがわかる。また、LUL耐久性が非常に優れ、LUL方式に好適であることがわかる。なお、保護層上にアルコール系カップリング層を成膜しその上に潤滑層を成膜する場合だけでなく、実施例5のようにアルコールと潤滑物質を混合した層を保護層上に成膜しても同様に本発明の効果が得られる。これに対し、従来通り、保護層上にアルコール系カップリング層は成膜せずに、直接潤滑層を成膜した比較例1では、保護層と潤滑層との密着性が劣り、ボンデット率も低く、磁気ヘッドのコンタミ移着に起因するフライスティクション障害の発生を十分に防止することが出来ない。さらに、LUL耐久性にも劣り実用レベルに達していない。
また、本発明においては、前述の実施例のとおり、炭素系保護層4はプラズマCVD法で成膜することが好ましい。プラズマCVD法で成膜された炭素系保護層4は、緻密なのでLUL耐久性に優れている。また、炭素系保護層4の膜厚が6nm以下である薄膜保護層であっても優れた耐久性を発揮できる。さらに、プラズマCVD法で成膜された炭素系保護層4は、アルコール系カップリング層に対して結合性が優れている。
また、実施例1と同様の炭素系保護層をスパッタリング法で3.0nmの膜厚に成膜した磁気ディスクを製造し、LUL耐久性を試験したところ、70万回耐久した。試験後の磁気ヘッドの表面を分析したところ、Co(コバルト)が検出された。実施例1のLUL耐久性試験を終えた磁気ヘッド表面からはCoは検出されなかった。実施例1の炭素系保護層はプラズマCVD法で成膜されたので、スパッタリング法で成膜された炭素系保護層に比べて緻密である。従って、磁性層の構成元素であるCoが炭素系保護層に浸潤し、磁気ディスク表面に浸出することを好適に防止しているものと考えられる。また炭素系保護層が緻密であるので、LUL耐久性が向上しているものと考えられる。さらに、緻密な炭素系保護層であるので、アルコール系カップリング層、低級アルコール層との親和性に優れ、本発明の作用効果を好適に発揮させているものと考えられる。
(発明の効果)
以上詳細に説明したように、本発明の磁気ディスクによれば、LUL方式により低浮上量としても、フライスティクション障害の発生を防止できる。そのため、磁気ヘッドの低浮上量化に好適で、高記録密度化を実現できる。さらに、本発明の磁気ディスクは、LUL耐久性が非常に優れるので、LUL方式の磁気ディスク装置に好適であり、磁気ディスク装置の高容量化を可能とする。
実施例の磁気ディスクの層構成を模式的に示す断面図である。
符号の説明
1 ガラス基板
2 非磁性金属層
2a シード層
2b 下地層
3 磁性層
4 炭素系保護層
5 アルコール系カップリング層
6 潤滑層
10 磁気ディスク

Claims (8)

  1. ロードアンロード方式の磁気ディスク装置に搭載される磁気ディスク基板上に、磁性層保護層に対する潤滑層のボンデッド率が70%以上となるように、プラズマCVD法により成膜され、かつ窒素を含有する炭素系保護層、蒸着成膜法により成膜されたアルコール系カップリング層、末端が水酸基又はカルボキシル基変性されたパーフルオロポリエーテル化合物を含む潤滑層が順次成膜されてなることを特徴とする磁気ディスク。
  2. ロードアンロード方式の磁気ディスク装置に搭載される磁気ディスク基板上に、磁性層保護層に対する潤滑層のボンデッド率が70%以上となるように、プラズマCVD法により成膜され、かつ窒素を含有する炭素系保護層、アルコールと末端が水酸基又はカルボキシル基変性されたパーフルオロポリエーテル化合物とを含む潤滑層が順次成膜されてなることを特徴とする磁気ディスク。
  3. 前記アルコール系カップリング層又はアルコールの主たる成分は低級アルコールであることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気ディスク。
  4. 前記炭素系保護層は、水素を含有することを特徴とする請求項1乃至の何れかに記載の磁気ディスク。
  5. ロードアンロード方式の磁気ディスク装置に搭載される磁気ディスク基板上に、磁性層とプラズマCVD法により成膜され、かつ窒素を含有する炭素系保護層を順次成膜した後、該炭素系保護層の上にアルコール系カップリング層を成膜する前に、該アルコール系カップリング層を成膜する面をアルコールで洗浄させ、次いで前記アルコール系カップリング層を蒸着成膜法により成膜し、次いで、その上に末端が水酸基又はカルボキシル基変性されたパーフルオロポリエーテル化合物を含む潤滑層を成膜することを特徴とする磁気ディスクの製造方法。
  6. 前記アルコール系カップリング層成膜後の膜表面の水に対する接触角が50度以下となるようにアルコール系カップリング層を成膜することを特徴とする請求項に記載の磁気ディスクの製造方法。
  7. ロードアンロード方式の磁気ディスク装置に搭載される磁気ディスク基板上に、磁性層とプラズマCVD法により成膜され、かつ窒素を含有する炭素系保護層を順次成膜した後、該炭素系保護層の上に低級アルコールを含む層を成膜する前に、該低級アルコールを含む層を成膜する面をアルコールで洗浄させ、次いで前記低級アルコールを含む層を蒸着成膜法により成膜し、次いで、その上に末端が水酸基又はカルボキシル基変性されたパーフルオロポリエーテル化合物を含む潤滑層を成膜することを特徴とする磁気ディスクの製造方法。
  8. 前記末端が水酸基又はカルボキシル基変性されたパーフルオロポリエーテル化合物を含む潤滑層を成膜した後に、ディスクを加熱することを特徴とする請求項5乃至7の何れかに記載の磁気ディスクの製造方法。
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