JP4150441B2 - 切り花用鮮度保持剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な切り花などの切り花用鮮度保持剤およびその施用方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、切り花などの収穫植物の鮮度を保持したいという要望は強いものがあり、チオ硫酸銀、硫酸銅、硫酸アルミニウム、硫酸パラジウム、ハイドロオキシキノリンクエン酸塩、ホルマリンなどが鮮度保持剤として用いられてきており、特開平1−301601号公報ではブラシノイド類と公知の鮮度保持剤とを併用する技術が開示されており、特開平1−313401号公報では、ブラシノステロイドを用いる技術が開示されており、特開平4−21616号公報では、松や杉の葉などの植物から分離抽出した芳香物質(ガス体)をゼオライトに吸着させたものを用いる技術が開示されており、特開平4−145002号公報ではシスオレフィンのスルホン酸やスルフィン酸あるいはこれらの塩類やエステル類を用いる技術が開示されており、特開平4−360802号公報では、アゾール置換シクロペンタノール誘導体と2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオールとを併用する技術が開示されている。
【0003】
しかしながら、チオ硫酸銀とブラシノイド類を併用しても、その効果はカーネーションなど一部の植物に限られるものであり、また重金属の銀は環境汚染のおそれもある。
【0004】
ブラシノステロイドは、構造が複雑な物質であって、製造コストがかさみ、ステロイドの存在が人体にどのように影響するかも充分解明されていない。
【0005】
植物から分離抽出した芳香物質をゼオライトに吸着させたものは、公害や人体への影響を心配することはないが、その使用形態に著るしい制約が伴う。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の目的は、切り花の切り口に施用される切り花用鮮度保持剤およびその施用方法を提供する点にある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の第一は、下記式で示されるジヒドロジャスモン酸プロピルのみを有効成分として含有することを特徴とする切り花の切り口に施用される切り花用鮮度保持剤に関する。
【化3】
【0008】
本発明の第二は、下記式で示されるジヒドロジャスモン酸プロピルのみを有効成分として含有する切り花用鮮度保持剤を切り花の切り口に施用することを特徴とする切り花の鮮度保持方法に関する。
【化4】
【0009】
前記ジヒドロジャスモン酸プロピルは、常法に従い製造することができる。例えば2−ペンチルシクロペンテン−1−オンとマロン酸のプロピルエステルとをマイケル付加させた後、脱炭酸させることにより容易に得ることができる。
【0010】
本発明の化合物は、本出願前新規な化合物であり、出願人は先に特願平9−327141号(特開平11−140022号)として出願している。
【0011】
本発明においては、各種栄養剤、たとえばブドウ糖、庶糖などの糖類、リン酸塩や硝酸塩のような肥料分との併用、ベンジルアデニンなどの成長抑制剤との併用、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオールなどの抗菌剤、腐敗防止剤との併用気孔開閉調節剤、pH調節剤などの併用も必要に応じて適宜行うことができる。
【0012】
本発明の鮮度保持剤の適用対象物としては、つぎのようなものを挙げることができる。
切り花:バラ、キク、ブバルディア、カーネーション、スイートピー、カスミソウ、ガーベラ、ユリ、リンドウ、ラン、グラジオラス、トルコキキョウ、チューリップ、ストック、スターチス。
【0013】
本発明の切り花用鮮度保持剤は、通常、固体担体、液体担体および分散剤から選ばれる少なくとも1種と組み合わせて水溶液、乳剤、有機溶剤溶液、水和剤、錠剤、粉剤、フロアブル剤、エアゾール剤などの形で用いることができる。
【0014】
固体担体の好ましい具体例としては、カオリナイト群、モンモリナイト群、アタパルジャイト群、ジークライトなどで代表されるクレー群、タルク、雲母、葉ロウ石、軽石、バーミキュライト、石こう、炭酸カルシウム、ドロマイト、けいそう土、マグネシウム、石灰、リン石灰、ゼオライト、無水ケイ酸、合成ケイ酸カルシウムなどの無機物質;大豆粉、タバコ粉、クルミ粉、小麦粉、木粉、でんぷん、結晶セルロース、エステルガム、コーパルガム、ダンマルガムなどの植物性有機物質;クマロン樹脂、石油樹脂、アルキド樹脂、ポリ塩化ビニル、ケトン樹脂などの合成高分子化合物;カルナバロウ、密ロウなどのワックス類;尿素類などが挙げられる。これらの固体担体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0015】
液体担体の好ましい具体例としては、ケロシン、鉱油、スピンドル油、ホワイトオイル、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン、メチルナフタレンなどのパラフィン系、ナフテン系もしくは芳香族系炭化水素類;四塩化炭素、クロロホルム、トリクロルエチレン、モノクロルベンゼン、o−クロルトルエンなどの塩素系炭化水素類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、イソホロンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸アミル、エチレングリコールアセテート、ジエチレングリコールアセテート、マレイン酸ジブチル、コハク酸ジエチルなどのエステル類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリンなどのアルコール類;エチレングリコールフェニルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテルなどのエーテルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどおよび水などが挙げられる。これらの中でも、炭化水素類、ケトン類、アルコール類、水などが特に好ましく、特にアルコール類や水が最も好ましい。これらの液体担体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
分散剤としては、通常の農薬分野で使用されているものを用いることができ、一般的には界面活性剤が用いられる。界面活性剤としては、非イオン性、陽イオン性、陰イオン性及び両イオン性のいずれでもよいが、好適には、非イオン性界面活性剤が用いられる。
【0017】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、オキシエチレンオキシプロピレンブロックポリマーなどの2種以上のアルキレンオキシドのブロック縮重合体;ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコールなど高級アルコール、オクチルフェノール、イソオクチルフェノール、ノニルフェノールなどのアルキルフェノール及びブチルナフトール、オクチルナフトールなどのアルキルナフトールなどにアルキレンオキシドを重合付加させたポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコール(C12〜C14)エーテルなどのポリオキシアルキレンエーテル系化合物;ラウリル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸などの高級脂肪酸などにアルキレンオキシドを重合付加させたポリオキシエチレングリコールモノラウレート、ポリオキシエチレングリコールモノパルミテート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリエチレングリコールモノオレエートなどのポリオキシアルキレングリコール脂肪酸エステル系化合物;グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、マンニタン、ヘキシタン、およびこれらの重縮合物などの分子内に水酸基を3個以上有する多価アルコールと高級脂肪酸とのエステル化合物であるグリセリルモノステアレート、グリセリルモノオレエート、ソルビトールモノラウレート、ソルビトールモノパルミテート、ソルビトールモノステアレート、ソルビトールジステアレート、ソルビトールトリステアレート、ソルビトールモノオレエート、、ソルビトールジオレエート、ソルビトールトリオレエート、ソルビトールテトラオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンジオレエート、マンニタンモノラウレート、マンニタンモノステアレート、マンニタンジステアレート、マンニタンモノオレエート、ヘキシタンモノラウレート、ヘキシタンモノパルミテート、ヘキシタンモノステアレート、ヘキシタンジステアレート、ヘキシタントリステアレート、ヘキシタンモノオレエート、ヘキシタンジオレエートなどの多価アルコール系脂肪酸エステル化合物;該多価アルコール系脂肪酸エステル化合物にアルキレンオキシドを重合付加させるか、または多価アルコールにアルキレンオキシドを重合付加させた後に、上記高級脂肪酸でエステル化して得られるポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンジステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンマンニタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンマンニタンモノステアレート、ポリオキシエチレンマンニタンモノオレエート、ポリオキシエチレンヘキシタンモノラウレート、ポリオキシエチレンヘキシタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート、などのポリオキシアルキレン多価アルコール系脂肪酸エステル化合物;ポリオキシエチレンアルキルアミンなどのポリオキシアルキレンアルキルアミン化合物;アルキルアルカノールアミド化合物;などが挙げられる。これらの中でも、アルキレンオキシドが2種以上のブロック縮重合体、ポリオキシアルキレンエーテル系化合物、ポリオキシアルキレングリコール脂肪酸エステル系化合物、ポリオキシアルキレン多価アルコール系脂肪酸エステル化合物およびポリオキシアルキレンアルキルアミン化合物などのアルキレンオキシド重合付加体であるポリオキシアルキレン系化合物が好ましく、ポリオキシアルキレンエーテル系化合物、ポリオキシアルキレングリコール脂肪酸エステル系化合物、ポリオキシアルキレン多価アルコール系脂肪酸エステル化合物などが特に好ましい。
【0018】
これらの分散剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。分散剤の使用量は、鮮度保持剤全重量中の通常0.5〜80重量%、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜40重量%の範囲である。
【0019】
本発明の切り花用鮮度保持剤の調製方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法が使用される。例えば、前記ジヒドロジャスモン酸プロピル、液体担体および分散剤を水に希釈混合して使用することができる。
【0020】
本発明のジヒドロジャスモン酸プロピルの濃度は、対象となる作物の種類、施用形態、施用方法、施用時期などに応じて適宜選択されるが、通常、0.0001〜1,000ppm、好ましくは0.001〜500ppm、より好ましくは0.1〜300ppm、最も好ましくは1〜100ppmの範囲である。
【0021】
本発明の切り花用鮮度保持剤を、植物に施用することにより収穫後の植物の鮮度を保持することができる。
本発明の切花用鮮度保持剤は、対象植物の茎葉や茎等の切り口に施用する。
【0022】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれにより何等限定されるものではない。
【0023】
実施例1(バラへの適用)
供試材料は、バラ園においてハウス栽培されたバラ〔Rosa hybrida品種:ローテローズ〕である。採花し、前処理はせずに乾式輸送されたものを2日後より実験に用いた。バラは上位より3節の葉を残し、切り花長45cmとなるように水中で切り戻しを行った。その後、ジヒドロジャスモン酸プロピル〔Propyl Dihydro Jasmonate:PDJ〕水溶液500mlを入れたフラスコに、つぼみ状態の花について5本ずつ生けた。ジヒドロジャスモン酸プロピル処理区のためのPDJ水溶液のPDJ濃度は、(i)0.01ppm、(ii)0.1ppm、(iii)1ppm、(iv)10ppmとした。対照区としては純水を用いた。調査は6日間にわたり、毎日午後5時に秤量法で切り花の生体重および吸水量について測定した。なお、調査中の切り戻し、生け水の交換、補充は行わなかった。なお、いずれの実験(対照例を含む)においても展着剤として3ppmのポリオキシエチレンソルビタンのオレイン酸エステルを添加した。その結果を表1〜表2に示す。
【0024】
また、バラ切り花の鮮度保持を考える上で最も致命的な障害であるベントネック(花首が萎れて垂れ下る現象)の発生率におよぼすPDJの効果について観察した。供試材料および処理方法は上記に準じた。
ベントネックは毎日一回測定し、花首に花を支える力が無くなり、45度に傾いた時点でカウントした。結果を表3に示した。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】
【表3】
【0028】
[結果]
〈生体重について〉
対照区は処理2日後から生体重が減少するのに対して、PDJ処理区では処理4日後まで生体重が増加し、その後の減少も少なかった。特に、PDJ10ppm区で生体重の減少が抑えられた。処理5日後についてみると、実験開始時点に比べて対照区の生体重は96%であったが、PDJ10ppm区では108%を示した。
【0029】
〈吸水量について〉
対照区に比べ処理区0.01ppmから10ppmすべての濃度において吸水量は高い水準で推移した。特に、1ppm区と10ppm区でその効果は大きかった。処理5日後についてみると、1日の1個体当たりの吸水量は対照区で6.9mlであるのに対してPDJ1ppm区では11.8ml、PDJ10ppm区では12.8mlであった。
【0030】
(ベントネック発生率について)
表3からPDJ区では対照区と比べてベントネックの発生が抑えられた。特にPDJ10ppm区でベントネックの発生が抑えられたことが分かる。
以上の結果、ジヒドロジャスモン酸プロピルによって、つぼみ状態のバラの切り花の日持ちが向上したことが確認された。
【0031】
実施例2(キクへの適用)
供試材料は、スプレーギク(品種:アイファインシャン)である。下葉を除去し切り花長40cmとなるように水中で切り戻しを行った後、ジヒドロジャスモン酸プロピル〔Propyl Dihydro Jasmonate:PDJ〕水溶液500mlを入れたフラスコに、4本ずつ生けた。ジヒドロジャスモン酸プロピル物処理区のためのPDJ水溶液のPDJ濃度は、(i)0.01ppm、(ii)0.1ppm、(iii)1ppm、(iv)10ppmとした。対照区としてはPDJを全く含まない純水500mlをフラスコに入れたケースを設けた。いずれのケースも展着剤としてポリオキシエチレンソルビタンのオレイン酸エステルを3ppm添加した。
調査は8日間にわたり、毎日午後8時に秤量法で切り花生体重および吸水量について測定した。なお、調査中の切り戻し、生け水の交換、補充は行わなかった。
【0032】
【表4】
【0033】
【表5】
【0034】
[結果]
キクでは、対照区に比べジヒドロジャスモン酸プロピル処理区において、生体重の減少が抑制された。また、対照区に比べジヒドロジャスモン酸プロピル区において、吸水量の増大が認められた。
日持ちへの影響に関しては、PDJ1ppm処理区において明らかに向上することが確認された。
【0035】
実施例3
供試材料は、生花市場で購入したブバルディアである。下葉20cmを除去し切り花長50cmとなるように水中で切り戻しを行った後、処理液を500ml入れたフラスコに、3本ずつ生けた。処理液は、対照区としての純水、PDJ(Propyl Dihydro Jasmonate)処理区としてPDJの0.01、0.1、1および10ppmの水溶液である。またいずれのケースにも展着剤として3ppmのポリオキシエチレンソルビタンのオレイン酸エステルを添加した。
調査は5日間にわたり、毎日午後8時に秤量法で切り花生体重および吸水量について測定した。なお、調査中の切り戻し、生け水の交換、補充は行わなかった。
結果を表6、表7に示す。
【0036】
【表6】
【0037】
【表7】
【0038】
[結果]
ブバルディアでは、対照区に比べPDJ処理区において、生体重の減少が抑制された。また、対照区に比べPDJ0.01、0.1および1ppm区において、吸水量の増大が認められた。
日持ちへの影響に関しては、対照区では3日後に完全にしおれてしまったのに対し、PDJ1ppm処理区では、4〜5日後まで新鮮な状態を保っていた。
【0039】
【効果】
本発明の切り花用鮮度保持剤の使用により、切り花の萎凋、落下、首垂れ、花弁の開きすぎの防止;花持ち日数の延長、開花遅延などの効果を挙げることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】 つぼみのバラの生体重変化に対するPDJ量の影響を示すグラフである。
【図2】 つぼみのバラの毎日吸水量変化に対するPDJ量の影響を示すグラフである。
【図3】 キクの生体重変化に対するPDJ量の影響を示すグラフである。
【図4】 キクの毎日吸水量変化に対するPDJ量の影響を示すグラフである。
【図5】 ブバルディアの生体重変化に対するPDJ量の影響を示すグラフである。
【図6】 ブバルディアの毎日吸水量変化に対するPDJ量の影響を示すグラフである。
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