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JP4150564B2 - 繊維強化プラスチックの劣化度評価方法および繊維強化プラスチックの強度測定装置 - Google Patents
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JP4150564B2 - 繊維強化プラスチックの劣化度評価方法および繊維強化プラスチックの強度測定装置 - Google Patents

繊維強化プラスチックの劣化度評価方法および繊維強化プラスチックの強度測定装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、非破壊検査に関し、詳しくは、簡便かつ正確に繊維強化プラスチックの劣化の程度を評価し得る方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
繊維強化プラスチックを検査する従来技術として、アルミ繊維や炭素繊維のような導電性材料を埋め込み、電位差を測定する方法(例えば、特許文献1参照)、光ファイバーを埋め込み赤外線や可視光線で評価する方法(例えば、特許文献2参照)がある。しかし、これらの方法は特殊なファイバーを別途埋め込む必要があり、既に使用されている貯槽など既設の設備には適用しがたい。
【0003】
また他の検査方法としてアコースティックエミッションを用いる方法(ASTM E1067-96)、超音波強度の減衰による方法(例えば、特許文献3、非特許文献1参照)がある。しかし、前者は液の増減を繰り返す必要があることから使用中の設備についての検査が不可能なこと、および検査費用が高価であること、後者は超音波の発信、受信手段の接触状態に測定結果が左右されやすいことなどの問題がある。このため繊維強化プラスチック製耐食貯槽の検査は未だに目視点検によるところが主であり、劣化状態の判断は推測によるところが多い。
【0004】
このような状況の下、有機材料の劣化を目視によらず非破壊的に検査・判断する手法として、超音波発振手段と超音波受信手段とを有機高分子製物品の表面に設置し、超音波発振手段から発振された超音波が有機高分子製物品中を伝搬して超音波受信手段にて受信されるまでに要する伝搬時間を測定し、伝搬時間の経時的変化から有機高分子製品の劣化度を診断する方法が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開昭60-044857号公報
【特許文献2】
特開2001-116687号公報
【特許文献3】
特開平7-301624号公報
【特許文献4】
特開平11-337532号公報
【非特許文献1】
プラスチックス, Vol. 41, No.11
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記特許文献4(特開平11-337532号公報)に記載の方法では、使用する超音波の種類を規定していない。しかし、波動の種類および周波数によっては、被検体の劣化している部位を超音波が透過しない可能性があるため、劣化を確実に推定できない可能性がある。また、繊維強化プラスチックの場合、内部に様々な方向で繊維が混在しており、波動の伝播や反射が不規則になり、波動の種類、周波数によっては、波動を検出しても劣化の程度を反映しない。
【0007】
本発明は、上記の問題点を解決し、簡便に精度よく繊維強化プラスチックの劣化度を評価することを課題とする。
【0008】
また、本発明は、繊維強化プラスチック製の薬液貯槽など使用中の既存設備において好適に用いることができる、繊維強化プラスチックの劣化度評価方法およびそのための装置を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明者らは鋭意研究を進めたところ、低周波数帯域での板波S0モードの伝播速度が繊維強化プラスチックの強度と相関性があるなどの知見を見出し、さらに貯槽などの設備において上記板波を測定するに足る程度にまで強く励起させる簡便な機構を考案し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、次の通りである。
【0010】
〔1〕 被検体である繊維強化プラスチックでの板波S0モードの群速度を測定し、予め求めておいた板波S0モードの群速度と繊維強化プラスチックの強度との相関関係と照合し、被検体の強度から被検体の劣化度を評価する方法であり、前記板波S 0 モードの群速度の測定は、実質的に前記被検体の板厚および前記板波S 0 モードの周波数に依存せず前記被検体の弾性率および密度に依存する低周波数帯域における板波S 0 モードの群速度を測定することを特徴とする、繊維強化プラスチックの劣化度評価方法
〔2〕 易折導電体を圧折して被検体である繊維強化プラスチックに板波を励起すると共に、易折導電体の圧折によりスイッチがオフとなる電気回路の電気的変化を検知して板波の励起時点(T1)を特定し、
励起された板波を受信子で受信して、板波励起時点(T1)から受信子に最初に振動が受信された板波受信時点(T2)までに要した時間(T)を求め、板波の励起源から受信子までの距離(L)を時間(T)で除して、被検体での板波S0モードの群速度を算出し、算出された被検体での板波S0モードの群速度を、予め求めておいた板波S0モードの群速度と繊維強化プラスチックの強度との相関関係と照合し、被検体の強度から被検体の劣化度を評価する、繊維強化プラスチックの劣化度評価方法。
〔3〕 易折導電体が、黒鉛を主成分とする棒状の導電体である、上記〔2〕に記載の繊維強化プラスチックの劣化度評価方法。
〔4〕 易折導電体が、シャープペンシルの芯である、上記〔2〕に記載の繊維強化プラスチックの劣化度評価方法。
〔5〕 被検体である繊維強化プラスチックでの板波S0モードの群速度を測定し、予め求めておいた板波S0モードの群速度と繊維強化プラスチックの強度との相関関係と照合し、被検体の強度を求める方法であり、前記板波S 0 モードの群速度の測定は、実質的に前記被検体の板厚および前記板波S 0 モードの周波数に実質的に依存せず前記被検体の弾性率および密度に依存する低周波数帯域における板波S 0 モードの群速度を測定することを特徴とする、繊維強化プラスチックの強度測方法
〔6〕 易折導電体を圧折して被検体である繊維強化プラスチックに板波を励起すると共に、易折導電体の圧折によりスイッチがオフとなる電気回路の電気的変化を検知して板波の励起時点(T1)を特定し、
励起された板波を受信子で受信して、板波励起時点(T1)から受信子に最初に振動が受信された板波受信時点(T2)までに要した時間(T)を求め、板波の励起源から受信子までの距離(L)を時間(T)で除して、被検体での板波S0モードの群速度を算出し、算出された被検体での板波S0モードの群速度を、予め求めておいた板波S0モードの群速度と繊維強化プラスチックの強度との相関関係と照合し、被検体の強度を求める、繊維強化プラスチックの強度測定方法。
〔7〕 繊維強化プラスチックの被検体に板波を励起すると共に板波が励起した時点で電気回路をオフにする励起スイッチ手段と、前記励起スイッチ手段からの板波を受信する受信子と、演算処理を行う演算装置と、演算結果を表示する表示手段と、板波S0モードの群速度と繊維強化プラスチックの強度との相関データが記憶された記憶手段と、を備え、前記励起スイッチ手段は、易折導電体と、易折導電体および被検体に接触する介在導電体とを有する電気回路を形成しており、易折導電体が圧折することにより、前記介在導電体を介して被検体に板波が励起されると共に、易折導電体が介在導電体から離れて当該電気回路のスイッチをオフにし、当該電気回路の電気的変化により板波励起時点(T1)が検知され、
前記演算装置で、板波の励起時点(T1)および板波が最初に受信子に到達した時点である受信時点(T2)から、板波が励起源から受信子まで到達するのに要した時間(T)が算出され、さらに時間(T)と板波の励起源から受信子までの距離(L)とから、励起源から受信子まで伝達した板波のS0モードの群速度を算出し、記憶手段内の相関データに照合して被検体の強度を算出する、
繊維強化プラスチックの強度測定装置。
〔8〕 前記演算装置が、算出された被検体の強度を、予め定められた所定の基準値と比較して、被検体の劣化度を求める算出手段を有する、上記〔7〕に記載の繊維強化プラスチックの強度測定装置。
〔9〕 易折導電体がシャープペンシルの芯であり、介在導電体が導電箔である、上記〔7〕または〔8〕に記載の繊維強化プラスチックの強度測定装置。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の繊維強化プラスチック(以下「FRP」という)の劣化度評価方法は、被検体に板波を励起し、低周波数帯域での板波S0モードの群速度Ceを測定し、求められた群速度Ceと被検体の強度との相関関係から被検体の劣化の程度を評価する。本発明により、FRPの劣化度評価方法、FRPの強度測定方法、板波S0モードの群速度Ceを測定する方法、およびこれらに用いられる装置が提供される。
【0012】
図1は板波の説明図である。板波は板状の弾性体中を伝播する弾性波動であって、図1に示すようにSモードすなわち対称モードと、Aモードすなわち非対称モードの二つに大別でき、さらにそれぞれが無数の高次モードを有する。また、図2は、アルミニウムについて板波の群速度を計算した計算結果であり、板波の群速度の周波数および板厚に対する依存性を示すものである。
【0013】
板波は、それぞれのモードが弾性率、密度、板厚、周波数に依存した群速度を示す。しかし、図2に示すように、板波S0モードの群速度は、低周波数帯域において板厚、周波数によらずほぼ一定の群速度Ceとなり(図2中Ceの線上を楕円で印した部分)、材料の弾性率および密度のみに依存して速度が変わる。すなわち、この振動は、材料表面のみならず材料内部の弾性率や密度を反映して伝播し、かつ周波数によらずほぼ一定の群速度を示すという性質を有する。薬液貯槽などにおけるFRPの劣化は、例えば薬液など腐食性物質による樹脂の加水分解などによって生じる。FRPの劣化は、破壊強さの低下とともに弾性率の低下を招き、この結果板波S0モードの群速度も低下する。したがって、低周波数帯域での板波S0モードの群速度を測定することにより、周波数や被検体の厚さの影響を最小限に抑え、より正確に被検体であるFRPの強度を推定することができる。本発明においては、弾性率などの強度を表す指標としては、好ましくは曲げ強さ(試験方法:JIS K7055)などが用いられる。曲げ強さは、FRPの強度を表す指標とし得るものであり、また試験片が反っていても試験可能であり、例えば円筒状貯槽などのように側筒部が平坦ではないものからも試験片を容易に調製することができる。
【0014】
予め様々な強度を有するFRP試験片を用いて、低周波数帯域での板波S0モードの群速度と、曲げ強さなどで表される強度との相関関係を求めておくことにより、被検体についての上記群速度を測定して、被検体の強度を求めることができる。より具体的には、例えば、新品の試験片や意図的に劣化させた試験片、または使用済みのFRP製貯槽などから切り出した試験片などの繊維強化プラスチックの曲げ強さおよび低周波数帯域における板波S0モードの群速度の相関を求めておく。そして、被検体での低周波数帯域における板波S0モードの群速度を求め、先にも求めた相関関係から被検体の曲げ強さが求められる。さらに、被検体の曲げ強さを、本来要求される所定の曲げ強さまたは新品の曲げ強さなどと比べることにより、被検体の劣化の程度、すなわち劣化度を推定することができる。
【0015】
本発明のFRP劣化度評価方法は、FRP製の耐食貯槽などの劣化度評価に好適に用いることができる。FRP材料の劣化は主に薬液に接触する貯槽の内表面から生じる。したがって、例えば、表面波を測定した場合、表面波は表面の弾性率、密度のみに依存するため、板波の励起、検出は劣化した内表面で行わなければ劣化を充分に推定することができない。すなわち、この場合には、貯槽内に試験者が入らなければならないことになるのが殆どである。また、縦波超音波を用いるとFRPのような複合材料の場合には、内部の層界面で反射が生じ、受信波の判別が難しい。
【0016】
これに対して、本発明は低周波数帯域における板波S0モードを用いており、この弾性波は材料の厚さ方向全てに伝播するため、板波の励起、検出は材料の内外表面のいずれで行ってもよい。すなわち、貯槽で試験を行う場合、貯槽の外表面で板波の励起・受信を行って測定しても貯槽を構成するFRPの劣化度を的確に把握することができる。したがって、本発明の方法によれば、劣化度評価試験を行うために、貯槽の内容物を抜き出し内部に試験者が入って試験を行わずとも、貯槽の外側から測定作業をして劣化度評価を的確に行うことができる。
【0017】
また、図2に示されるように、低周波数帯域での板波S0モードの群速度Ceは、板波の中で最も伝播速度が速い。したがって、最初に受信された波動(以下、「初動波」という場合がある)をCeと判定してよく、複数の波動の中から容易に目的の波動を検出できる。
【0018】
上記のように、本発明のFRP劣化度評価方法では、低周波帯域での板波S0モードの群速度Ceを測定する。板波S0モードは比較的振幅の小さい弾性波動であり、励起には強力な励起手段が必要である。一般的に超音波などの弾性波動を発生させる手段としては圧電素子による方法があるが、圧電素子では、本発明の測定方法に適用できるほど充分な振幅で板波S0モードを励起することは容易ではない。
【0019】
そこで、本発明の群速度測定方法では、易折導電体を被検体に押しつけて圧折し、被検体に対して板波を励起する。易折導電体とは、試験者が被検体に押しつけることによって折れる程度の強度を持つ導電体のことである。易折導電体として好ましくは、黒鉛を主成分とする棒状体または針状体などが挙げられ、特に好ましくは、シャープペンシルの芯などが挙げられる。シャープペンシルの芯は上記のように圧折することにより板波を励起することができるものであり、かつ製品として入手が容易で品質の安定性もある。また、針状体またはシャープペンシルの芯であれば音源の入力点が小さいので板波の群速度を測定において誤差を小さくすることができる。
【0020】
さらに、本発明における群速度測定方法では、上記のように板波を励起させると共に板波の励起時点を検知するために、易折導電体が圧折されることによりスイッチがオフとなる電気回路を備える励起スイッチ手段が用いられる。励起スイッチ手段は、易折導電体と、易折導電体および被検体に接触する介在導電体とを有する電気回路で構成される。介在導電体としてはアルミ箔などの金属泊を好適に用いることができる。アルミ箔などのような導電箔は薄いため、易折導電体が折れた際に生じる衝撃を被検体に十分に伝えることができる。
【0021】
易折導電体を圧折することにより、前記介在導電体を介して被検体に板波が励起されると共に、易折導電体が介在導電体から離れて電気回路のスイッチがオフになり、その電気的変化を検知して、板波の励起時点(T1)が特定される。電気的な変化の検知は、電気回路がオフにされたことを検知できる指標であれば特に限定されず、電圧、電流などを測定する手段を設けることにより容易に検知できる。すなわち、上記のような、励起スイッチ手段を用いることにより、簡便に板波を発生させることができ、またその励起時点の特定も容易にかつ正確に行うことができる。
【0022】
励起された板波は受信子で受信する。上記のとおり、板波のうち低周波数帯域のS0モード波の伝播速度が最も速い。したがって、受信子に最初に振動が受信された板波を低周波数帯域として検知する。そして、板波の発生時点(T1)から受信時点(T2)までの時間(T)と、板波の励起源から受信子までの距離(L)とを求める。より具体的には、易折導電体と介在伝導体の接触点が板波の励起源であり、励起源から受信子の中心までの距離を(L)とする。以下の式(I)により低周波数帯域における板波S0モードの群速度Ceが求められる。
Ce=L/T ・・・(I)
【0023】
被検体での板波S0モードの群速度を、予め求めておいた板波S0モードの群速度と繊維強化プラスチックの強度との相関関係と照合し、被検体の強度から被検体の劣化度を評価する。
【0024】
本発明のFRP劣化度評価方法が好ましく適用される繊維強化プラスチックとしては、例えば、ビスフェノール型ビニルエステル樹脂、ノボラック型ビニルエステル樹脂、イソフタル酸ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、フラン樹脂などが挙げられる。また、FRPに用いられる強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維などが例示される。さらに、FRPの製造方法としては、フィラメントワインディング法、ハンドレイアップ法などが例示される。
【0025】
次に、本発明の一実施形態について図面を参照しつつより具体的に説明する。図3は、板波S0モードの検知装置を示す図である。図3に示す板波S0モードの検知装置は、アルミ箔2、棒状黒鉛3、直流電源5、抵抗6、A/Dコンバーター7、受信子8、波形表示装置10からなり、繊維強化プラスチック材料1が被検体のFRP板である。
【0026】
まず、板波S0モードの検知対象とする被検体である繊維強化プラスチック材料1に対し、アルミ箔2を密着させる。棒状黒鉛3をアルミ箔に接触させ、棒状黒鉛3、箔2、直流電源5および抵抗6からなる回路を形成する。抵抗6の両端に作用する電圧V1をA/Dコンバーター7で測定する。箔の上で棒状黒鉛3を圧折し、板波を発生させる。板波発生点である棒状黒鉛3の先端から任意の距離Lだけ離れた地点に設置した受信子8により板波を電圧値V2として検出し、A/Dコンバーター7で測定する。A/Dコンバーター7を介して得られたV1、V2は波形表示装置10に表示される。
【0027】
図4は、波形表示装置に表示される板波の励起、受信信号を示す図である。棒状黒鉛3を圧折すると、図3に示す繊維強化プラスチック材料1に板波が生じると共に、回路2−3−6−5が切断されるため、電圧V1が降下する。したがって、電圧V1が降下しはじめる時間T1は、棒状黒鉛3が圧折し、板波が励起された時間であると判断できる。
【0028】
棒状黒鉛3の圧折で様々なモードの板波が発生する。板波はそれぞれのモードにおいて、材料の弾性率、厚さおよび周波数に依存する群速度を示すが、このうち低周波数帯域におけるS0モードは板波として最も速く、かつ厚さ、周波数によらず材料の弾性率のみに依存するほぼ一定の群速度Ceを示す。したがって、板波S0モードの低周波数成分が受信子8に最初に速度Ceで到達する。
【0029】
すなわち、図4中、受信子8から発生した信号V2の電圧が変化しはじめる時間であるT2は、板波S0モードの低周波数成分が受信子8に到達する時間であると判断できる。したがって、棒状黒鉛3の先端と受信子8の中心との間の距離をLとすると、板波S0モードの低周波数成分の群速度Ceは次式(I')より求められる。
Ce=L/(T2−T1) ・・・・・・・(I')
波形表示装置10のモニターには、T1、T2、T、L、Ceの各データが表示される。
【0030】
図5に示す装置は、本発明のFRPの強度測定装置であり、図3の検知装置と異なる点を中心に説明する。図5の装置では、板波の励起手段として、シャープペンシル4が用いられ、シャープペンシルの芯41を圧折して板波を励起させる。また、図5の装置では、演算装置9、記憶装置11、表示モニター12を備える。A/Dコンバーター7からの信号は演算装置9に入力され、群速度Ceが算出される。さらに演算装置9では、算出された群速度Ceが、記憶装置11に記憶されているFRPの曲げ強度と群速度Ceとの相関関係と照合され、被検体1の曲げ強度が算出される。また、演算装置9では、予め、望ましい曲げ強度または新品のFRP試験片の曲げ強度などを基準値として記憶装置11に入力しておき、これと実測から求められた被検体1の曲げ強度を対比して、被検体1の劣化度を求めることができる。所定の基準値以下、例えば新品のFRP試験片の50%以下の強度しかないものは交換する必要があるというように、判定手段を設けることもできる。演算の結果、劣化度などのデータは表示モニター12に表示される。
【0031】
図3および図5に例示されるように、本発明の装置は、簡便なものであり、携帯が容易である。したがって、屋外での測定などにも好適に用いることができる。
【0032】
次に、群速度CeからFRPの劣化度を判定する基準の設定方法について、FRP製耐食貯槽を具体例として挙げて説明する。本発明者は、使用済みである繊維強化プラスチック製耐食貯槽から切り抜いた試験片および新規に作成した繊維強化プラスチック製試験片など、複数の繊維強化プラスチック製の試験片1〜21を用意し、図5に示した装置を用い、これら試験片における群速度Ceを測定した。表1中、試験片9〜21については貯槽に貯められていた内容物を示す。また、表1中、「液相」とあるのは貯槽の液相部位から試験片を採取し、気相とあるのは貯槽の気相部位から採取したことを示す。
【0033】
次に、上記試験片から短冊状に切り抜いた試験片に対しJIS K7055に基づき曲げ試験を実施し、曲げ強さσbを得た。ここで、繊維強化プラスチックは異方性材料であるので、強度、弾性率は繊維の配向方向の影響を受け、またこの影響により群速度Ceも波動伝播方向により異なる。本試験では、板波の伝播方向、および曲げ試験片の長手方向を貯槽の側胴部の周方向となるようにした。表1には各種の試験片の種類と実験により得られたCe、σbを示す。また表1に示した結果の群速度Ceと曲げ強さσbをグラフに示した結果を図6に示す。
【0034】
【表1】
Figure 0004150564
【0035】
ここで、表1に示したFRP製試験片は、樹脂の種類、ガラス繊維の積層方法(ガラス繊維の配向方向)、FRPの作成方法などが異なるものが含まれるが、図6よりCeとσbはほぼ線形の関係、すなわち次式(II)で表される関係となることが明らかとなった。
σb=αCe+β ・・・・・(II)
【0036】
ここで、式(II)のα、βは実験結果から求められる任意の常数である。例えば、表1に示した結果より最小二乗法にてα、βを求めた結果、α=0.1725、β=−485.05であり、式(II)は次式(III)の関係となる。
σb=0.1725Ce − 485.05 ・・・・・(III)
【0037】
劣化度について判断するための基準値を定めるには、例えば、薬液等の影響で強度が低下した場合の許容曲げ強さσbcを任意に定め、式(II)よりσbcに対応するCeの許容値Cecを求める。具体的には、許容曲げ強さσbcを表1に示した新品の試験片1の半分である210.9MPaと定めると、式(III)より、Cec=4037.1 m/sとなる。
【0038】
図6に示されるように、FRPの種類、薬液槽内の内容物の種類などが異なっていても、Ceとσbとの相関関係は薬液貯槽の劣化度評価に十分対応し得る。なお、図6は例示であり、さらにデータの集積を重ねることにより、より精度の高い劣化度評価が可能である。
【0039】
次に、稼働中である繊維強化プラスチック製耐食貯槽の劣化判定方法を説明する。図7に示すように、貯槽に図5の装置2、3、4、8で示した板波の群速度測定装置を設置する。ここで、群速度測定装置は貯槽の内表面、外表面のいずれに設置してもよいが、貯槽の外表面に設置すれば貯槽の在液時でも評価が可能である。また群速度測定装置の設置場所は、貯槽の在液時に液圧の影響により最も応力が集中するマンホールやノズル周辺が望ましい。
【0040】
被検体である繊維強化プラスチック製耐食貯槽に設置された群速度測定装置より求められた群速度Ceが、判定基準Cecを上回る場合は継続使用可能、また下回る場合は継続使用不可と判断する。
【0041】
【発明の効果】
本発明により、繊維強化プラスチックの劣化を、簡便かつ正確に評価することができる。また、本発明の方法及び装置は、繊維強化プラスチック製の耐食貯槽などの使用中の設備についての劣化度評価に極めて好適に用いることができる。また、本発明により、低周波数帯域の板波S0モードの群速度を、簡便かつ正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】板波についての簡単な説明図である。
【図2】アルミニウムを例として、板波の群速度の周波数および板厚に対する依存性を示す図である。
【図3】板波S0モードの検知装置を示す図である。
【図4】板波励起手段と受信子から得られた信号を示す図である。
【図5】FRPの強度測定装置を示す図である。
【図6】繊維強化プラスチック製試験片の板波群速度Ce(音速)と曲げ強度σbの相関を示す図である。
【図7】本発明を、被検体である繊維強化プラスチック製耐食貯槽について実施する様子を示す図である。
【符号の説明】
1 繊維強化プラスチックからなる被検体
2 導電性を有する箔(アルミ箔 )
3 棒状黒鉛
4 シャープペンシル
41 板波発生手段であるシャープペンシルの芯
5 直流電源
6 抵抗
7 A/Dコンバーター
8 板波受信子
9 演算装置
10 波形表示装置
11 記憶装置
12 表示モニター
15 薬液貯槽
Ce 板波S0モードの低周波数帯域における群速度
L 板波が伝播する距離であるシャープペンシルの芯41の先端と受信子の中心間の距離
1 抵抗6間に作用する電圧
2 板波受信子8が発生する電圧
T 板波S0モードの伝播時間
1 板波S0モードが発生するシャープペンシルの芯41が圧折した時刻
2 板波S0モードが板波受信子8に到達した時刻

Claims (9)

  1. 被検体である繊維強化プラスチックでの板波S0モードの群速度を測定し、予め求めておいた板波S0モードの群速度と繊維強化プラスチックの強度との相関関係と照合し、被検体の強度から被検体の劣化度を評価する方法であり、
    前記板波S 0 モードの群速度の測定は、実質的に前記被検体の板厚および前記板波S 0 モードの周波数に依存せず前記被検体の弾性率および密度に依存する低周波数帯域における板波S 0 モードの群速度を測定することを特徴とする、繊維強化プラスチックの劣化度評価方法。
  2. 易折導電体を圧折して被検体である繊維強化プラスチックに板波を励起すると共に、易折導電体の圧折によりスイッチがオフとなる電気回路の電気的変化を検知して板波の励起時点(T1)を特定し、
    励起された板波を受信子で受信して、板波励起時点(T1)から受信子に最初に振動が受信された板波受信時点(T2)までに要した時間(T)を求め、板波の励起源から受信子までの距離(L)を時間(T)で除して、被検体での板波S0モードの群速度を算出し、算出された被検体での板波S0モードの群速度を、予め求めておいた板波S0モードの群速度と繊維強化プラスチックの強度との相関関係と照合し、被検体の強度から被検体の劣化度を評価する、繊維強化プラスチックの劣化度評価方法。
  3. 易折導電体が、黒鉛を主成分とする棒状の導電体である、請求項2に記載の繊維強化プラスチックの劣化度評価方法。
  4. 易折導電体が、シャープペンシルの芯である、請求項2に記載の繊維強化プラスチックの劣化度評価方法。
  5. 被検体である繊維強化プラスチックでの板波S0モードの群速度を測定し、予め求めておいた板波S0モードの群速度と繊維強化プラスチックの強度との相関関係と照合し、被検体の強度を求める方法であり、
    前記板波S 0 モードの群速度の測定は、実質的に前記被検体の板厚および前記板波S 0 モードの周波数に実質的に依存せず前記被検体の弾性率および密度に依存する低周波数帯域における板波S 0 モードの群速度を測定することを特徴とする、繊維強化プラスチックの強度測方法。
  6. 易折導電体を圧折して被検体である繊維強化プラスチックに板波を励起すると共に、易折導電体の圧折によりスイッチがオフとなる電気回路の電気的変化を検知して板波の励起時点(T1)を特定し、
    励起された板波を受信子で受信して、板波励起時点(T1)から受信子に最初に振動が受信された板波受信時点(T2)までに要した時間(T)を求め、板波の励起源から受信子までの距離(L)を時間(T)で除して、被検体での板波S0モードの群速度を算出し、算出された被検体での板波S0モードの群速度を、予め求めておいた板波S0モードの群速度と繊維強化プラスチックの強度との相関関係と照合し、被検体の強度を求める、繊維強化プラスチックの強度測定方法。
  7. 繊維強化プラスチックの被検体に板波を励起すると共に板波が励起した時点で電気回路をオフにする励起スイッチ手段と、前記励起スイッチ手段からの板波を受信する受信子と、演算処理を行う演算装置と、演算結果を表示する表示手段と、板波S0モードの群速度と繊維強化プラスチックの強度との相関データが記憶された記憶手段と、を備え、
    前記励起スイッチ手段は、易折導電体と、易折導電体および被検体に接触する介在導電体とを有する電気回路を形成しており、易折導電体が圧折することにより、前記介在導電体を介して被検体に板波が励起されると共に、易折導電体が介在導電体から離れて当該電気回路のスイッチをオフにし、当該電気回路の電気的変化により板波励起時点(T1)が検知され、
    前記演算装置で、板波の励起時点(T1)および板波が最初に受信子に到達した時点である受信時点(T2)から、板波が励起源から受信子まで到達するのに要した時間(T)が算出され、さらに時間(T)と板波の励起源から受信子までの距離(L)とから、励起源から受信子まで伝達した板波のS0モードの群速度を算出し、記憶手段内の相関データに照合して被検体の強度を算出する、
    繊維強化プラスチックの強度測定装置。
  8. 前記演算装置が、算出された被検体の強度を、予め定められた所定の基準値と比較して、被検体の劣化度を求める算出手段を有する、請求項7に記載の繊維強化プラスチックの強度測定装置。
  9. 易折導電体がシャープペンシルの芯であり、介在導電体が導電箔である、請求項7または8に記載の繊維強化プラスチックの強度測定装置。
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