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JP4151065B2 - 無機酸含有超臨界水環境下での耐応力腐食割れ性に優れたNi基合金 - Google Patents
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JP4151065B2 - 無機酸含有超臨界水環境下での耐応力腐食割れ性に優れたNi基合金 - Google Patents

無機酸含有超臨界水環境下での耐応力腐食割れ性に優れたNi基合金 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、無機酸含有超臨界水環境下において優れた耐応力腐食割れ性を有するNi基合金およびこのNi基合金からなる超臨界水プロセス反応装置用部材に関するものであり、特に、VXガス、GB(サリン)ガス、マスタードガスなど化学兵器などに用いられた有機系有害物質を分解・酸化することによって生じる硫酸、燐酸、フッ酸などの塩素を含まない無機酸を含む超臨界水に対して優れた耐応力腐食割れ性を有するNi基合金およびこのNi基合金からなる超臨界水プロセス反応装置用部材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
臨界点を越える温度/圧力下にある水(具体的には374℃/22.1MPaを越える温度/圧力下にある水)を超臨界水と呼んでおり、超臨界水は多様な物質を溶解する特性があり、この超臨界状態の水は非凝縮性の高密度ガス状態となり、常温では極めて溶解度が小さい無極性あるいは弱極性の物質(炭化水素化合物や気体)でも完全に溶解し、さらに酸素を加えることで、溶解した物質を酸化・分解させることができると言われている。
【0003】
化学兵器等に使用される有機系有害物質も例外ではなく、超臨界水に完全に溶解し、さらに加えられた溶存酸素とこれら化学兵器等に使用される有機系有害物質が超臨界水中で反応することにより、二酸化炭素、水のほかに硫酸、燐酸などの無害物質に酸化分解される。例えば、VXガスが酸化分解されると硫酸とリン酸が生成し、GBガスが酸化分解されるとフッ酸や燐酸が生成する。そのため、近年、米国では、VXガス、GB(サリン)ガス、マスタードガスなどを使用した化学兵器を廃棄するのに、超臨界水を使用して、これら難分解性のVXガス、GB(サリン)ガス、マスタードガスなどの有機系有害物質を分解・酸化して無害化する試みがなされている。この超臨界水によるVXガス、GB(サリン)ガス、マスタードガスなどの有機系有害物質を分解・酸化して無害化する方法が確立されると、従来の焼却による処理方法と比べて、超臨界水および酸化剤は環境への悪影響がなく、超臨界水は高い反応性を持つところからVXガス、GB(サリン)ガス、マスタードガスなどの有機系有害物質を短時間で分解・酸化して無害化することができ、さらに閉鎖系内で分解処理が可能なために排出物による環境汚染の恐れがなくなる。
【0004】
かかる超臨界水を反応溶媒として利用してVXガス、GB(サリン)ガス、マスタードガスなどの有機系有害物質を分解・酸化して無害化するには、高温・高圧(400〜650℃、22.1〜80MPa)の超臨界水中において酸化分解後に生成された硫酸、燐酸、フッ酸など無機酸と高濃度の酸素が共存する環境となるところから、有機系有害物質を無害化する装置におけるプロセス反応容器の材料にはこうした無機酸含有超臨界水下での耐食性が必要となる。
【0005】
そのため、超臨界水を使用したプロセス反応装置の反応容器に使用される金属材料には、高耐食性で知られるNi基合金が装置のプロセス反応容器材料として候補にあげられている。例えば、インコネル(商品名)625(ASTM UNS N06625で規定されており、その成分組成は、例えば、質量%でCr:21.0%、Mo:8.4%、Nb+Ta:3.6%、Fe:3.8%、Co:0.6%、Ti:0.2%、Mn:0.2%を含有し、残部:Ni+不可避不純物からなる)やハステロイ(商品名)C−276(ASTM UNS N10276で規定されており、その成分組成は、例えば、Cr:15.5%、Mo:16.1%、W:3.7%、Fe:5.7%、Co:0.5%、Mn:0.5%を含有し、残部:Ni+不可避不純物からなる)などのNi基耐食合金が使用されている。
最近では、Cr含有量のさらに高いNi基合金が無機酸含有超臨界水に対して一層耐食性が優れているという報告もあり、このCr含有量のさらに高いNi基合金としてハステロイ(商品名)G−30(ASTM UNS N06030(成分組成は、例えば、Cr:28.7%、Mo:5.0%、Mn:1.1%、Fe:14.6%、Cu:1.8%、W:2.6、Co:1.87%を含有し、残部:Ni+不可避不純物からなる)といったNi-高Cr型合金が注目されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
これら従来のNi基合金は、板または管に成形して加工素材を作製し、この加工素材にさらに圧延または曲げなどの成形加工を施してしてプロセス反応装置の反応容器または配管に仕上げられる。このようにして仕上げられた反応容器または配管は成形加工により作製されるために内部応力および内部歪の残留は避けられない。
ところが、従来のNi基耐食合金のうちインコネル625やハステロイC-276は、硫酸、燐酸、フッ酸等の塩素を含まない無機酸を含む超臨界水に接触させると応力腐食割れが発生し、そのためにこの従来のNi基耐食合金のうちインコネル625やハステロイC-276を有機系有害物質を無害化する装置における反応容器および配管の素材として使用すると長期間操業が困難であった。
また、ハステロイ(商品名)G−30は、操業初期の硫酸、燐酸、フッ酸等の酸を含む超臨界水下での耐応力腐食割れ性は十分であっても、相安定性が不十分であるために、使用温度(400〜650℃)において相変態が徐々に進行し、この相変態が進行した状態で高温・高圧の超臨界水中環境下のような応力場が発生すると応力腐食割れが発生し、長期間使用するプロセス反応装置の素材としては適当ではない。
【0007】
【課題を解決する手段】
そこで、本発明者らは、無機酸含有超臨界水環境下でも応力腐食割れが発生することなく、さらに使用温度(400〜650℃)で長時間保持しても相安定性が優れるために相変態の進行が抑制されて無機酸含有超臨界水環境下において十分な耐応力腐食割れ性を示すNi基合金を開発し、このNi基合金を使用して無機酸含有超臨界水環境下でも長期間操業することができる超臨界水プロセス反応装置用部材を得るべく鋭意研究を行った。その結果、
(イ)質量%(以下、%は質量%を示す)で、Cr:36超〜42%未満、W:0.01超〜0.5%未満、Mg:0.001〜0.05%、N:0.001〜0.04%、Mn:0.05〜0.5%を含有し、残部がNiおよび不可避不純物からなり、不可避不純物として含まれるC量を0.05%以下に調整した組成を有するNi基合金は、無機酸含有超臨界水環境、特に硫酸、燐酸、フッ酸などの塩素を含まない無機酸含有超臨界水環境下において耐応力腐食割れ性に優れ、かつ相安定性に優れているところから使用温度(400〜650℃)に長時間保持しても相変態の進行が抑制されて応力腐食割れがなく、このNi基合金を超臨界水を使用した有機系有害物質を無害化する装置における反応容器材に使用すると一層の長期操業が可能となる、
(ロ)前記(イ)記載の組成を有するNi基合金に、さらにNb:1.0超〜6%を添加すると耐応力腐食割れ性が一層向上する、
(ハ)前記(イ)記載の組成を有するNi基合金に、さらに、Mo:0.01〜0.5%未満、Hf:0.01〜0.1%の1種または2種を添加すると、耐応力腐食割れ性が一層向上する、
(ニ)前記(イ)記載の組成を有するNi基合金に、さらに、Fe:0.1〜10%、Si:0.01〜0.1%の1種または2種を添加すると、強度が一層向上する、などの研究結果が得られたのである。
【0008】
この発明は、かかる研究結果に基づいてなされたものであって、
(1)Cr:36超〜42%未満、W:0.01超〜0.5%未満、Mg:0.001〜0.05%、N:0.001〜0.04%、Mn:0.05〜0.5%を含有し、残部がNiおよび不可避不純物からなり、不可避不純物として含まれるC量を0.05%以下に調整した組成を有する無機酸含有超臨界水環境下での耐応力腐食割れ性に優れたNi基合金、
(2)Cr:36超〜42%未満、W:0.01超〜0.5%未満、Mg:0.001〜0.05%、N:0.001〜0.04%、Mn:0.05〜0.5%を含有し、さらに、Nb:1.0超〜6%を含有し、残部がNiおよび不可避不純物からなり、不可避不純物として含まれるC量を0.05%以下に調整した組成を有する無機酸含有超臨界水環境下での耐応力腐食割れ性に優れたNi基合金、
(3)Cr:36超〜42%未満、W:0.01超〜0.5%未満、Mg:0.001〜0.05%、N:0.001〜0.04%、Mn:0.05〜0.5%を含有し、さらに、Mo:0.01〜0.5%未満およびHf:0.01〜0.1%の内の1種または2種を含有し、残部がNiおよび不可避不純物からなり、不可避不純物として含まれるC量を0.05%以下に調整した組成を有する無機酸含有超臨界水環境下での耐応力腐食割れ性に優れたNi基合金、
(4)Cr:36超〜42%未満、W:0.01超〜0.5%未満、Mg:0.001〜0.05%、N:0.001〜0.04%、Mn:0.05〜0.5%を含有し、さらにFe:0.1〜10%およびSi:0.01〜0.1%の内の1種または2種を含有し、残部がNiおよび不可避不純物からなり、不可避不純物として含まれるC量を0.05%以下に調整した組成を有する無機酸含有超臨界水環境下での耐応力腐食割れ性に優れたNi基合金、
(5)Cr:36超〜42%未満、W:0.01超〜0.5%未満、Mg:0.001〜0.05%、N:0.001〜0.04%、Mn:0.05〜0.5%を含有し、さらにNb:1.0超〜6%を含有し、さらにMo:0.01〜0.5%未満およびHf:0.01〜0.1%の内の1種または2種を含有し、残部がNiおよび不可避不純物からなり、不可避不純物として含まれるC量を0.05%以下に調整した組成を有する無機酸含有超臨界水環境下での耐応力腐食割れ性に優れたNi基合金、
(6)Cr:36超〜42%未満、W:0.01超〜0.5%未満、Mg:0.001〜0.05%、N:0.001〜0.04%、Mn:0.05〜0.5%を含有し、さらにNb:1.0超〜6%を含有し、さらにFe:0.1〜10%およびSi:0.01〜0.1%の内の1種または2種を含有し、残部がNiおよび不可避不純物からなり、不可避不純物として含まれるC量を0.05%以下に調整した組成を有する無機酸含有超臨界水環境下での耐応力腐食割れ性に優れたNi基合金、
(7)Cr:36超〜42%未満、W:0.01超〜0.5%未満、Mg:0.001〜0.05%、N:0.001〜0.04%、Mn:0.05〜0.5%を含有し、さらにMo:0.01〜0.5%未満およびHf:0.01〜0.1%の内の1種または2種を含有し、さらにFe:0.1〜10%およびSi:0.01〜0.1%の内の1種または2種を含有し、残部がNiおよび不可避不純物からなり、不可避不純物として含まれるC量を0.05%以下に調整した組成を有する無機酸含有超臨界水環境下での耐応力腐食割れ性に優れたNi基合金、(8)Cr:36超〜42%未満、W:0.01超〜0.5%未満、Mg:0.001〜0.05%、N:0.001〜0.04%、Mn:0.05〜0.5%を含有し、さらにNb:1.0超〜6%を含有し、さらにMo:0.01〜0.5%未満およびHf:0.01〜0.1%の内の1種または2種を含有し、さらにFe:0.1〜10%およびSi:0.01〜0.1%の内の1種または2種を含有し、残部がNiおよび不可避不純物からなり、不可避不純物として含まれるC量を0.05%以下に調整した組成を有する無機酸含有超臨界水環境下での耐応力腐食割れ性に優れたNi基合金、
(9)前記(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)または(8)記載の組成を有するNi基合金からなる超臨界水プロセス反応装置用部材、に特徴を有するものである。
【0009】
次に、この発明のNi基合金の合金組成における各元素の限定理由について詳述する.
【0010】
Cr、W:
Cr:36%を越えかつW:0.01%を越えて含有することにより硫酸、燐酸、フッ酸などの塩素を含まない無機酸が混入する超臨界水環境下での耐応力腐食割れ性が著しく向上するが、Crが42%以上含有するとWとの組合せにおいて耐全面腐食性が低下することとなるのでCr含有量を36超〜42%未満に定めた。一層好ましくは、38超〜41.5%である。
同様にWは0.5%以上含有するとCrとの組合せにおいて加工性が低下することとなるので好ましくない。したがって、Wの含有量を0.01超〜0.5%未満(一層好ましくは0.1〜0.45%)に定めた。
【0011】
N、MnおよびMg:
N、MnおよびMgを共存させることにより、相安定性を向上させることができる。すなわち、N、MnおよびMgは母相であるNi-fcc相を安定化させ、第2層を析出しにくくする効果がある。しかし、Nの含有量が0.001%未満では相安定化の効果はなく、一方、0.04%を超えて含有すると窒化物を形成し超臨界水環境下での耐食性が劣化するためNの含有量を0.001〜0.04%(一層好ましくは、0.005〜0.03%)とした。
同様に、Mnの含有量が0.05%未満では相安定化の効果はなく、一方、0.5%を超えて含有すると無機酸含有超臨界水環境における耐応力腐食割れ性が劣化するため、Mnの含有量を0.05〜0.5%(一層好ましくは、0.1〜0.4%)とした。
同様にMgも相安定性を向上させる成分であるが、その含有量が0.001%未満では相安定化の効果はなく、一方、0.05%を超えて含有すると無機酸含有超臨界水環境における耐応力腐食割れ性が劣化するため、Mgの含有量を0.001〜0.05%(一層好ましくは、0.010%〜0.040%)とした。
【0012】
Nb:
Nbは、Cr:36%を越えかつW:0.01%を越えて含有するNi基合金に添加することにより塩素を含まない酸素含有超臨界水環境下で耐全面腐食性を一層向上させる効果があるので必要に応じて添加するが、その場合、1.0%を越えて含有することで効果を示すが、6%を超えて含有すると相安定性が劣化する。従って、この発明のNi基合金に含まれるNbは1.0超〜6%に定めた。一層好ましくは1.1〜3.0%未満である。
【0013】
MoおよびHf:
MoおよびHfは、Cr:36%を越えかつW:0.01%を越えて含有するNi基合金に添加することにより塩素を含まない酸素含有超臨界水環境下で耐応力腐食割れ性を一層向上させる効果があるので必要に応じて添加するが、その場合、Moは0.01%を越えて含有することで効果を示すものの、0.5%以上含有すると相安定性が劣化するために無機酸含有超臨界水環境における耐応力腐食割れ性が劣化するので好ましくない。したがって、Moの含有量を0.01超〜0.5%未満(一層好ましくは、0.1超〜0.5%未満)とした。
同様にHfは0.01%以上含有することで効果を示すものの、0.1%を超えて含有すると無機酸含有超臨界水環境における耐応力腐食割れ性が劣化するので好ましくない。したがって、Hfの含有量を0.01%〜0.1%(一層好ましくは、0.02〜0.05%)とした。
【0014】
FeおよびSi:
FeおよびSiは強度を向上させる効果があるので必要に応じて添加するが、Feは0.1%以上含有することで効果を示すものの、10%を超えて含有すると無機酸含有超臨界水環境における全面腐食に対する耐食性が劣化するので好ましくない。したがって、Feの含有量を0.1%〜10%(一層好ましくは、0.5〜4%)とした。
同様にSiは0.01%以上含有することで効果を示すものの、0.1%を超えて含有すると相安定性が劣化するために無機酸含有超臨界水環境における耐応力腐食割れ性が劣化するので好ましくない。したがって、Siの含有量を0.01%〜0.1%(一層好ましくは、0.02〜0.05%)とした。
【0015】
C:
Cは不可避不純物として含まれるが、Cが大量に含まれると結晶粒界近傍でCrと炭化物を形成し、全面腐食に対する耐食性が劣化するので好ましくない。そのため、Cの含有量は少ないほど好ましく、不可避不純物に含まれるCの含有量の上限を0.05%と定めた。
【0016】
【発明の実施の形態】
通常の高周波溶解炉を用いて溶解し鋳造して、表1〜4に示される成分組成を有し、厚さ:12mmを有するインゴットを作製した。このインゴットに1230℃で10時間保持の均質化熱処理を施し、1000〜1230℃の範囲内に保持しながら、1回の熱間圧延で1mmの厚さを減少させつつ、最終的に5mm厚とし、さらに1200℃で30分間保持し水焼入れすることにより固溶化処理を施したのち、表面をエメリー紙#600で研磨することにより、本発明Ni基合金板1〜42、比較Ni基合金板1〜11および従来Ni基合金板1〜3を作製した。
これら本発明Ni基合金板1〜42、比較Ni基合金板1〜11および従来Ni基合金板1〜3に内部応力および内部歪を付与するために30%の圧下率で冷間圧延し、それぞれ3.5mm厚さの板を作製した。この板を切断して縦:4mm、横:4mm、高さ:3.5mmの寸法を有する直方体形状を有する固溶化材試験片を作製した。
さらに、無機酸含有超臨界水環境下での耐応力腐食割れ性に及ぼす相安定性の影響を評価するために、前記本発明Ni基合金板1〜42、比較Ni基合金板1〜11および従来Ni基合金板1〜3を450℃に10000時間保持の時効処理を施したのち、エメリー紙#600で研磨し、内部応力および内部歪を付与するために30%の圧下率で冷間圧延してそれぞれ3.5mm厚さの板を作製し、この板を切断して縦:4mm、横:4mm、高さ:3.5mmの寸法を有する直方体形状を有する時効材試験片を作製した。
【0017】
次に、チタンを内側にハステロイC-276を外側にしたチタン/ハステロイC-276の2重管をオートクレーブとした流通型の腐食試験装置を用意した。この流通型の腐食試験装置は、チタン/ハステロイC-276の2重管の一端から高圧ポンプにより試験溶液を圧入し、管端に設けられたヒーターにより試験溶液を加熱することにより所定の腐食試験条件を形成し、もう一端から出た試験溶液は減圧弁を経てリザーバータンクに回収されるようになっている。
【0018】
さらに、流体温度:500℃、圧力:60MPa、溶存酸素量:800ppm(過酸化水素として添加)の超臨界水に硫酸:0.2mol/kg、リン酸:0.2mol/kgを混合した超臨界水を試験溶液として用意した。
この硫酸およびリン酸を混合した超臨界水は、VXガスを超臨界水で分解・酸化したときに生成されると予想される超臨界水溶液であり、以下、この硫酸およびリン酸を含有した超臨界水溶液をVXガス分解模擬液という。
【0019】
さらに、流体温度:500℃、圧力:60MPa、溶存酸素量:800ppm(過酸化水素として添加)の超臨界水にリン酸:0.4mol/kg、フッ酸:0.14mol/kgを混合した超臨界水を試験溶液として用意した。
このリン酸およびフッ酸を混合した超臨界水は、GB(サリン)ガスを超臨界水で分解・酸化したときに生成されると予想される超臨界水溶液であり、以下、このリン酸およびフッ酸を含有した超臨界水溶液をGBガス分解模擬液という。
【0020】
前記VXガス分解模擬液およびGBガス分解模擬液を先に用意した流通型の腐食試験装置におけるチタン/ハステロイC-276の2重管に圧入し、この2重管内部のPCBまたはダイオキシン分解模擬液が流量:6g/minで流れるように制御して無機酸含有超臨界水環境を形成し、この環境下において前記本発明Ni基合金板1〜42、比較Ni基合金板1〜11および従来Ni基合金板1〜3からなる固溶化材試験片を100時間保持することにより試験片の表面における応力腐食割れの有無を確認し、そこ結果を表5〜6に示した。
【0021】
さらに、無機酸含有超臨界水環境下での耐応力腐食割れ性に及ぼす相安定性の影響を評価するために、前記本発明Ni基合金板1〜42、比較Ni基合金板1〜11および従来Ni基合金板1〜3からなる時効材試験片を上述の無機酸含有超臨界水環境に100時間保持することにより時効材試験片の表面における応力腐食割れの有無を確認し、そこ結果を表5〜6に示した。
【0022】
【表1】
Figure 0004151065
【0023】
【表2】
Figure 0004151065
【0024】
【表3】
Figure 0004151065
【0025】
【表4】
Figure 0004151065
【0026】
【表5】
Figure 0004151065
【0027】
【表6】
Figure 0004151065
【0028】
表1〜6に示された結果から、本発明Ni基合金板1〜42は、固溶化材試験片も時効材試験片も、従来Ni基合金板1および2に見られるような応力腐食割れの発生がなく、したがって耐応力腐食割れ性が優れていることが分かる。しかし、この発明から外れた成分組成を有する比較Ni基合金板1〜11の固溶化材試験片および時効材試験片の少なくともいずれかに応力腐食割れが発生したり、著しい全面腐食が発生するなどして好ましくないことが分かる。
【0029】
【発明の効果】
上述のように、この発明のNi基合金は、硫酸およびリン酸、またはリン酸およびフッ酸を含む超臨界水環境下において耐応力腐食割れ性に優れているところから長期間の使用が可能となり、VXガスまたはGBガスの無害化処分などの環境産業上優れた効果をもたらすものである。
なお、この発明のNi基合金は、上述の如く、硫酸、燐酸、フッ酸など塩素を含まない無機酸を含む超臨界水環境下で使用することが最も有効であるが、これに限定されるものではなく、塩酸、硝酸を含む超臨界水環境や塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム等塩化物塩を含む超臨界水環境、アンモニアを含む超臨界水環境でも使用可能であり、従って、宇宙関連廃棄物、原子力関連廃棄物、電子力関連廃棄物、一般産業廃棄物の処分用の超臨界水装置材料にも適用できる。
また、この発明のNi基合金を装置本体の反応チャンバーとして使用する際、外側をステンレス鋼等の強度用材料とし、内面にこの発明のNi基合金をクラッドやライニングしてもよい。

Claims (9)

  1. 質量%で、Cr:36超〜42%未満、W:0.01超〜0.5%未満、Mg:0.001〜0.05%、N:0.001〜0.04%、Mn:0.05〜0.5%を含有し、残部がNiおよび不可避不純物からなり、不可避不純物として含まれるC量を0.05%以下に調整した組成を有することを特徴とする無機酸含有超臨界水環境下での耐応力腐食割れ性に優れたNi基合金。
  2. 質量%で、Cr:36超〜42%未満、W:0.01超〜0.5%未満、Mg:0.001〜0.05%、N:0.001〜0.04%、Mn:0.05〜0.5%を含有し、
    さらに、Nb:1.0超〜6%を含有し、
    残部がNiおよび不可避不純物からなり、不可避不純物として含まれるC量を0.05%以下に調整した組成を有することを特徴とする無機酸含有超臨界水環境下での耐応力腐食割れ性に優れたNi基合金。
  3. 質量%で、Cr:36超〜42%未満、W:0.01超〜0.5%未満、Mg:0.001〜0.05%、N:0.001〜0.04%、Mn:0.05〜0.5%を含有し、
    さらに、Mo:0.01〜0.5%未満およびHf:0.01〜0.1%の内の1種または2種を含有し、
    残部がNiおよび不可避不純物からなり、不可避不純物として含まれるC量を0.05%以下に調整した組成を有することを特徴とする無機酸含有超臨界水環境下での耐応力腐食割れ性に優れたNi基合金。
  4. 質量%で、Cr:36超〜42%未満、W:0.01超〜0.5%未満、Mg:0.001〜0.05%、N:0.001〜0.04%、Mn:0.05〜0.5%を含有し、
    さらに、Fe:0.1〜10%およびSi:0.01〜0.1%の内の1種または2種を含有し、
    残部がNiおよび不可避不純物からなり、不可避不純物として含まれるC量を0.05%以下に調整した組成を有することを特徴とする無機酸含有超臨界水環境下での耐応力腐食割れ性に優れたNi基合金。
  5. 質量%で、Cr:36超〜42%未満、W:0.01超〜0.5%未満、Mg:0.001〜0.05%、N:0.001〜0.04%、Mn:0.05〜0.5%を含有し、
    さらに、Nb:1.0超〜6%を含有し、
    さらに、Mo:0.01〜0.5%未満およびHf:0.01〜0.1%の内の1種または2種を含有し、
    残部がNiおよび不可避不純物からなり、不可避不純物として含まれるC量を0.05%以下に調整した組成を有することを特徴とする無機酸含有超臨界水環境下での耐応力腐食割れ性に優れたNi基合金。
  6. 質量%で、Cr:36超〜42%未満、W:0.01超〜0.5%未満、Mg:0.001〜0.05%、N:0.001〜0.04%、Mn:0.05〜0.5%を含有し、
    さらに、Nb:1.0超〜6%を含有し、
    さらに、Fe:0.1〜10%およびSi:0.01〜0.1%の内の1種または2種を含有し、
    残部がNiおよび不可避不純物からなり、不可避不純物として含まれるC量を0.05%以下に調整した組成を有することを特徴とする無機酸含有超臨界水環境下での耐応力腐食割れ性に優れたNi基合金。
  7. 質量%で、Cr:36超〜42%未満、W:0.01超〜0.5%未満、Mg:0.001〜0.05%、N:0.001〜0.04%、Mn:0.05〜0.5%を含有し、
    さらに、Mo:0.01〜0.5%未満およびHf:0.01〜0.1%の内の1種または2種を含有し、
    さらに、Fe:0.1〜10%およびSi:0.01〜0.1%の内の1種または2種を含有し、
    残部がNiおよび不可避不純物からなり、不可避不純物として含まれるC量を0.05%以下に調整した組成を有することを特徴とする無機酸含有超臨界水環境下での耐応力腐食割れ性に優れたNi基合金。
  8. 質量%で、Cr:36超〜42%未満、W:0.01超〜0.5%未満、Mg:0.001〜0.05%、N:0.001〜0.04%、Mn:0.05〜0.5%を含有し、
    さらに、Nb:1.0超〜6%を含有し、
    さらに、Mo:0.01〜0.5%未満およびHf:0.01〜0.1%の内の1種または2種を含有し、
    さらに、Fe:0.1〜10%およびSi:0.01〜0.1%の内の1種または2種を含有し、
    残部がNiおよび不可避不純物からなり、不可避不純物として含まれるC量を0.05%以下に調整した組成を有することを特徴とする無機酸含有超臨界水環境下での耐応力腐食割れ性に優れたNi基合金。
  9. 請求項1、2、3、4、5、6,7または8記載の組成を有するNi基合金からなることを特徴とする超臨界水プロセス反応装置用部材。
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