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JP4154024B2 - 耐溶損性に優れるAl又はAl合金溶湯用の鋳造用部材 - Google Patents
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JP4154024B2 - 耐溶損性に優れるAl又はAl合金溶湯用の鋳造用部材 - Google Patents

耐溶損性に優れるAl又はAl合金溶湯用の鋳造用部材 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属溶湯と接触する部分に使用される鋳造用部材(例えば、鋳型、プランジャースリーブ、プランジャーチップ、中子ピン、湯口等)に関するもので、特に、AlおよびAl合金溶湯に用いる耐溶損性に優れる鋳造用部材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ダイカスト法や重力鋳造法等において、金属溶湯(例えば、AlおよびAl合金溶湯)と接触して使用される鋳造用部材には熱間工具鋼(JIS SKD61等)が主に使用されている。このような、金属溶湯と接触する部分に用いられる鋳造用部材には、(イ)溶融金属との接触による溶損が発生しないこと、(ロ)高温摺動条件下で摩耗が発生しないこと、(ハ)加熱冷却の熱サイクルの条件下でヒートクラックが発生しないこと、等の特性が要求される。すなわち、鋳造用部材は、耐溶損性、高温摺動条件下での耐摩耗性および耐熱サイクル性に優れていることが必要である。特に、鋳造用部材の寿命に影響を与える耐溶損性に優れていることが要求される。
【0003】
この耐溶損性を改善するために、浸炭処理や窒化処理等の表面処理が行われており、最近ではコーティング法による表面処理が施されることが多くなっきた。コーティング法では、耐溶損性に優れたセラミックス膜を鋳造用部材の表面に成膜することができ、鋳造用部材の耐摩耗性も改善できるからである。
【0004】
浸炭処理や窒化処理において、さらに、耐溶損性改善する目的で、クロム含有鋼に浸炭処理後、窒化処理を行うこと(特開平8−144039号公報参照)が提案されている。この方法により、クロム含有鋼の表層部に炭化物を緻密に析出させるとともに、窒化クロムを成膜させることにより、さらに耐溶損性を改善するというものである。
【0005】
一方、コーティング法には、イオンプレーティング法、スパッタリング法等が用いられており、そのコーティング膜として、窒化チタン皮膜(特開昭64−44256号公報参照)、窒化チタンアルミ(TiAlN)皮膜(特開平7−112266号公報参照)、Cr−N皮膜(特開平8−226541号公報、特開平8−209331号公報参照)等のセラミックス膜を用いることが提案されている。
これらセラミックス膜を鋳造用部材の表面に設ける場合、耐溶損性とともに、コーティング膜の耐剥離性が要求されることとなる。すなわち、コーティング膜が剥離すると母材と溶湯が接触することとなり、耐溶損性を著しく低下させることとなるからである。
【0006】
Cr−N皮膜は耐剥離性、耐溶損性に優れていることが報告されている。
例えば、特開平8−226541号公報には、内燃機関用ピストンリングを対象にしているが、CrN2 型窒化クロムとCrN型窒化クロムの混合物からなるコーティング膜に気孔(気孔率:0.5〜20.0%)を設けたCr−N皮膜は、高温での摺動時の耐剥離性に優れていることが記載されている。
鋳造用部材のコーティング膜についても、高温摺動下でのコーティング膜の剥離は、耐溶損性を悪化させることとなるので、コーティング膜にある程度の気孔をもつことが望ましいこととなる。
また、特開平8−209331号公報には、鋳造用部材の表面にN量を30〜55原子%となるCr−N皮膜を成膜し、このCr−N皮膜を有する鋳造用部材が、従来の窒化処理した鋳造用部材よりも優れた耐溶損性を有することが報告されている。
【0007】
また、近年、前述のSKD61に代表されるダイス鋼に代わって、金属溶湯の保温性を向上させるために、Ti−6Al−4V等のTi合金も使用されるようになってきた。Ti合金はダイス鋼に比べて熱伝導率が小さいという特性を利用するもので、このTi合金に前述のCr−N皮膜を成膜した鋳造用部材も優れた耐溶損性を有することが報告されている(特開平8−209331号公報参照)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
特開平8−209331号公報に記載されているように、SKD61やTi合金(Ti−6Al−4V)の表面上にCr−N皮膜を成膜した鋳造用部材は優れた耐溶損性を示している。そして、これら鋳造用部材に成膜されたCr−N皮膜には、気孔が存在していていることが多く、前述の高温摺動下での耐剥離性の向上にも効果があるものと考えられる。
しかしながら、このような、鋳造用部材でも、溶湯と接触時間が長くなると、鋳造用部材に溶損を生じる場合がでてきた。さらに、鋳造温度の上昇、加圧鋳造時の加圧力の上昇、溶湯の組成によっては、これら鋳造用部材に溶損を生じる場合がある。このため、溶損が生じた鋳造用部材の交換を余儀なくされ、鋳造工程での生産性が低下する問題がある。
【0009】
また、特開平8−144039号公報に記載のクロム含有鋼の表層部に炭化物とともに窒化クロムを成膜する方法では、含有クロム量に限界(25%)があり、クロム含有鋼の表層部には、熱的安定性および耐溶損性に劣るFe窒化物、炭化物も形成されることとなり、かならずしも、満足な耐溶損性を得られない場合がある。
さらに、この方法は、900〜1000℃で浸炭および窒化処理を行うので、熱歪みによる寸法精度の問題も生ずる。さらに、この処理温度では、保温性に優れたTi又はTi合金を母材に用いることができない問題がある。すなわち、Ti又はTi合金のβ変態点が800〜950℃程度の温度領域にあり、熱歪みの発生とともに母材の強度を著しく低下させることとなる。
【0010】
そこで、本発明は、Al又はAl合金溶湯と接触する部分に使用される鋳造用部材の耐溶損性をさらに改善するとともに、保温性にも優れた鋳造用部材を提供することを目的とするものである
【0011】
【課題を解決するための手段】
前述した目的を達成するために、発明者らは、金属溶湯と接触する部分に用いられる鋳造部材の耐溶損性をさらに改善するために鋭意検討を行った。例として、Al溶湯とCr−N皮膜との界面反応を詳細に調査した結果を説明する。Cr−N皮膜がAl溶湯と接したとき、Cr−N皮膜中へAlが拡散し、それに伴い窒化クロムとAlが反応して、Cr −N皮膜が消費されて溶損が生じることが判明した。このとき、Cr−N皮膜の溶損速度(反応速度)はCr−N皮膜中へのAlの拡散速度の増加とともに速くなる。
【0012】
このCr−N皮膜中のAlの拡散速度は、Cr−N皮膜の密度が低いほど、速くなることが判明した。この現象は、Al溶湯がCr−N皮膜中に存在する気孔等の空隙が、Al元素の侵入経路となり、Cr−N皮膜中へのAlの拡散速度が速くなるものと考えられる。さらには、この気孔にAl溶湯が侵入して、Al溶湯とCr−N皮膜との接触面積が増加してCr−N皮膜中へのAlの拡散速度が速くなるものと考えられる。
これに加えて、前記気孔に侵入したAl溶湯がCr−N皮膜直下の母材を溶損するメカニズムも考えられる。
従来、Cr−N皮膜中に気孔が存在していていることが多く、前述したように高温摺動下での耐剥離性の向上には気孔が効果あるものと考えられており、Cr−N皮膜中に気孔が存在することは容認されていた。特開平8−209331号公報に記載のCr−N皮膜についても、同様に、気孔が存在する可能性が高く、密度の低いCr−N皮膜が用いられていた。
そして、この特開平8−209331号公報は、Cr−N皮膜のN量を限定することにより耐溶損性を改善するもので、Cr−N皮膜の密度を高めることにより、耐溶損性を改善するという認識をもっていなかった。
【0013】
発明者らは、逆に、Cr−N皮膜の密度を高めること、すなわち、Cr−N皮膜を緻密化して、Cr−N皮膜中の気孔等の空隙を減少させることにより、このCr−N皮膜を有する鋳造用部材の耐溶損性をさらに改善できるという知見を得て、本発明を完成した。
本発明は、金属溶湯と接触する部分に使用される鋳造用部材の母材表面上に成膜するCr−N皮膜の密度を高めることにより、このCr−N皮膜の金属溶湯に対する保護膜の効果をさらに改善して、Alをはじめとし、Zn、Cu又はこれらの合金等の金属溶湯から溶損をさらに抑制できるものである。
このCr−N皮膜の密度を高めるために、AIP法を用い、成膜時の印加電圧(バイアス電圧)を負電圧側に高めることにより可能であるという知見も得た。
【0014】
本発明のうちで請求項1記載の発明は、Al又はAl合金溶湯と接触する部分に使用される鋳造用部材であって、前記鋳造用部材が母材とこの母材表面にカソード放電型AIP法(アークイオンプレーティング法)により成膜されたCr−N皮膜からなり、このCr−N皮膜の密度が6.40〜6.80g/cm 3 であり、このCr−N皮膜中のN量が30〜55原子%であることを特徴とする耐溶損性に優れるAl又はAl合金溶湯用の鋳造用部材である。
Cr−N皮膜の密度を6.40〜6.80g/cm 3 にすることにより、金属溶湯を構成する元素(Al、Zn、Cu等)のCr−N皮膜中への拡散を抑制でき、このCr−N皮膜を有する鋳造用部材の耐溶損性をさらに改善できる
Cr−N皮膜の密度の上限を6.80g/cm 3 としたのは、Cr−N皮膜の密度は高いほど、耐溶損性に優れるが、6.80g/cm3 を越える密度のCr−N皮膜を成膜することは、成膜コストが高くなるととともに、技術的にも困難であるからである。
また、前記Cr−N皮膜中のN量を30〜55原子%にすることによって、化学的安定性を有する岩塩構造の結晶であるCrN単相のCr−N皮膜にすることができ、耐溶損性を改善することができる。さらに、Cr−N皮膜中のN量を40原子%以上にすることにより、Al溶湯に対する耐溶損性をさらに改善し、Cr−N皮膜の硬度を高め耐摩耗性を向上させるので好ましい。
また、Cr−N皮膜をカソード放電型AIP法で成膜することにより、以下の作用効果が奏される。すなわち、カソード放電型AIP法は、ターゲットと対極の間に電場を印加することによってアークを発生してターゲット(蒸発源)から蒸発を行うと共に、雰囲気を形成する反応ガス(N 2 ガス)によって、基板に蒸着させるものである。大電流のアークによりターゲットを蒸発、イオン化させるのでイオン化効率が高く、緻密で、密着性(耐剥離性)に優れたCr−N皮膜を得ることができる。さらに、反応ガスの圧力調整によって皮膜中のNの調整が容易に達成できる。これに加えて、成膜温度が300〜500℃程度であるので、TiまたはTi合金のβ変態点(800〜950℃程度)より低いので、TiまたはTi合金を母材に用いても熱歪みの発生がなく、母材の強度が低下することもない。また、固体蒸発源を使用することから、ターゲットの配置が自由であり、3次元形状の部品への成膜が容易となる。
そして、Al又はAl合金溶湯用の鋳造用部材として用いることにより、耐溶損性の改善がより発揮できる。Al又はAl合金溶湯に対しては、Al又はAl合金溶湯とCr−N皮膜との界面にAlN層が形成され、これが保護膜となって、さらに、鋳造用部材の耐溶損性を向上することができる。
【0015】
Cr−N皮膜の密度測定は、Cr−N皮膜の成膜前後における母材の重量増加と成膜した皮膜の膜厚より算出する。すなわち、Cr−N皮膜の密度は、
Cr−N皮膜の密度(g/cm3 )=重量増加分(g)/膜厚(cm)/コーティング面積(cm2 )...(1)
で求める。
なお、本願発明のCr−N皮膜の密度(6.40〜6.80g/cm3 )は、CrNの理論密度(6.2g/cm3 )よりも大きくなっている。
この理由として、AIP法の場合に、ターゲットを電流密度の非常に高いアークにより蒸発させるため、ターゲット表面にクロムイオンと共に中性のドロップレットと呼ばれる溶融したクロムの液滴が形成される。このドロップレットが窒素と反応することなく、ほぼ金属状態のままでCr−N皮膜中に取り込まれることが考えられる。金属クロムの密度は7.2g/cm3 でCrNの理論密度(6.2g/cm3 )よりも大きいために、Cr−N皮膜全体の密度を測定した場合、CrNの理論密度より大きくなったと考えられる。
このCr−N皮膜中に取り込まれたドロップレットの正確な量の定量は困難であり、少なくともAIP法で膜を成膜する限り、窒化クロムと金属粒子を分離して密度を測定することはほとんど不可能であるので、本発明では、Cr−N皮膜の密度は(1) 式により求めている。
このときのCrドロプレットのCr−N皮膜中の存在形態は、SEM,EPMA等の観察から皮膜中に埋没した形態であった。
【0017】
また請求項記載の発明は、請求項記載の発明の構成に、前記母材をTiまたはTi合金製にするものである。母材をTiまたはTi合金製にすることによって、鋳造部材の保温性及び耐熱サイクル性を改善できる。
【0018】
コーティング膜が成膜される母材の種類については、特に限定されるものではないが、母材を従来、用いられているダイス鋼からTiまたはTi合金にすることにより、鋳造部材の保温性および耐熱サイクル性をさらに向上させることができる。
【0019】
すなわち、SKD61の熱伝導率は28.9W/m・Kであるのに対し、Ti−6Al−4Vの熱伝導率は7.1W/m・KとSKD61の1/4以下であり、母材にTi合金を適用することによって、従来のダイス鋼を用いた場合に比べて保温性が良好になるのである。
【0020】
また、Ti合金は熱膨張率がSKD61等のFe基合金と比べて、CrNの熱膨張率に近く、例えば、Ti−6Al−4V、SKD61およびCrNの各々の熱膨張率は、各々8.8×10-6/K、11.3×10-6/Kおよび2.39×10-6/Kである。したがって、母材にTi合金を適用することによって、熱サイクル下で使用しても、コーティング膜と母材の熱膨張率の差に起因する熱応力はSKD等を用いた場合に比べて小さくなり、コーティング膜に亀裂が発生しにくくなるのである。
【0023】
【発明の実施の形態】
(第1実施例)
本発明の第1実施例を表1により説明する。表1は本発明の鋳造用部材の製造方法と、鋳造用部材の試験結果を示すものである。
JIS SKD61(調質後HRC46)を母材として用い、この母材の表面上にAIP法およびスパッタリング法によりCr−N皮膜を成膜して供試材とした。さらに、AIP法によりTiN皮膜と、プラズマ浸炭+イオン窒化処理による皮膜を前記母材の表面上に形成した。
表1の備考に示すように、AIP法によりCr−N皮膜を成膜して供試材
(No.4〜7)が本発明例であり、他は比較例である。
このときの母材の形状は、密度測定用は50×50×1mm、耐溶損性評価は765℃の純アルミニューム溶湯中において調査した。耐溶損性調査用供試材は60×15×5mmである。
【0024】
本発明例のAIP法によるCr−N皮膜の成膜は、Crをターゲットにして、基板(SKD61)温度:400℃、窒素ガス圧:20mtorr、成膜厚さ:約10μm、基板へのバイアス電圧(印加電圧):0〜−100Vの成膜条件で行った。
次に、比較例の皮膜の成膜方法を説明する。
スパッタリング法によるCr−N皮膜の成膜は、AIP法と同じ基板温度、基板へのバイアス電圧である。Ar−N2 混合ガス(Ar:N2 比が5:1で、混合ガスが圧力3mtorr)中で、Crターゲットをスパッタリングして、母材の表面上にCr−N皮膜を約10μm成膜した。
そして、AIP法によるTiN皮膜の成膜は、Tiのターゲットを用いて、バイアス電圧:−50Vとしたことである。
プラズマ浸炭+イオン窒化処理による皮膜の形成は、SKD61をプラズマ浸炭(950℃−2時間)を行った後、イオン窒化(520℃−15時間)により行った。
【0025】
次に、上述した成膜条件により製造した供試材の皮膜の密度測定と耐溶損性評価結果を表1に示す。
皮膜の密度測定は成膜前後における母材の重量増加と成膜した皮膜の膜厚より、前述の(1) 式により算出した。
本実施例では、成膜前の母材を予め0.1mgの単位まで重量測定した。その後、母材の片面のみのコーティングを実施した。このとき、母材の他の片面は蒸着粒子を遮断する処置を行った。
次に、コーティング後の重量を測定し、このときの重量増加を計算した。今回、母材の側面へのコーティング量は全体重量の1/100以下程度となるので無視した。
重量測定後、成膜した皮膜の膜厚を測定した。この皮膜の膜厚の測定は母材を切断して、断面から顕微鏡観察により皮膜の膜厚を測定した。そして、(1) 式により皮膜の密度を算出した。
【0026】
【表1】
Figure 0004154024
【0027】
表1に示すように、AIP法で成膜したCr−N皮膜(供試材:No.1〜7)の密度は、スパッタリング法のCr−N皮膜(供試材:No.8〜14)比べて高くなるこが判明した。AIP法では、バイアス電圧を−30V以下にすることにより、皮膜の密度を6.40g/cm3 以上にすることができることが明らかとなった。
Cr−N皮膜の密度が6.40g/cm3 以上となる供試材(No.4〜8)は、この皮膜と母材との密着性が十分にあることを確認した。
一方、スパッタリング法ではCr−N皮膜の密度は、AIP法のように高くすることができず、6.2g/cm3 以下である。
スパッタリング法ではCr−N皮膜の密度が低いのは、AIP法に比較して、イオン化効率が低いため、基板へのバイアス電圧が有効に作用せず、バイアス電圧をAIP法と同程度あげても、緻密な皮膜が成膜されなかったためと考えられる。
【0028】
次に、耐溶損性評価結果を説明する。耐溶損性評価は765℃の純アルミニューム溶湯中に2時間浸漬して、浸漬試験後の皮膜の消失面積より各皮膜の耐溶損性を評価した。
AIP法で成膜したCr−N皮膜の場合、皮膜密度が6.40g/cm3 以上(No.4〜8)で耐溶損性に優れた結果を示した。この優れた耐溶損性の表面にはCr−N皮膜の剥離も観察されなかった。
一方、スパッタリング法で成膜したCr−N皮膜は、本耐溶損性評価の条件では、Cr−N皮膜が全部消失し、耐溶損性が劣ることは明らかとなった。
さらに、AIP法で成膜したTiN皮膜や、プラズマ浸炭+イオン窒化を行った皮膜も、全部消失し、耐溶損性が劣ることが判明した。
【0029】
(第2実施例)
次に、耐溶損性に及ぼすCr−N皮膜中のN量の影響を調査した。この結果を表2に示す。
Cr−N皮膜中のN量を変化させるために、第2実施例では、バイアス電圧を−5、−50V、窒素ガス圧力を1、5と20mtorrにして(他の条件は第1実施例と同じ)、AIP法によりSKD61表面上にCr−N皮膜を成膜した。製造した供試材のN量、密度測定および耐溶損性評価結果を表2に示す。密度測定および耐溶損性評価の方法は第1実施例と同じ条件である。
【0030】
【表2】
Figure 0004154024
【0031】
AIP法により、Cr−N皮膜中のN量を26〜54原子%に容易に調整することができた。
本実施例より、Cr−N皮膜の密度が6.40g/cm3 以上で、Cr−N皮膜中の窒素量が30〜55原子%の範囲となる供試材(No.21〜24)が、耐溶損性に優れていることを確認した。
【0032】
(第3実施例)
さらに、Cr−N皮膜を成膜した鋳造用部材熱サイクル性評価を行ったので、この結果を表3に示す。
【0033】
【表3】
Figure 0004154024
【0034】
第3実施例は、母材をSKD61およびTi合金(Ti−6Al−4V)の表面上にAIP法によりCr−N皮膜を成膜したものである。成膜条件は、バイアス電圧:−50V、窒素ガス圧力:1、20mtorrで、他の成膜条件は第1実施例と同じ条件である。
耐熱サイクル性評価は、供試材(寸法:60×15×5mm)を大気中で650℃まで加熱後、水冷し、これを1サイクルとし、1000回まで熱サイクルを繰り返した。その後、Cr−N皮膜に発生したクラック数を、単位長さ当たりのクラック数として評価した。
【0035】
Ti合金の表面上に,密度が6.72g/cm3 、N量が0.54原子%のCr−N皮膜を成膜した供試材(No.28)は、密度、N量がほぼ同じCr−N皮膜をSKD61の表面上に成膜した供試材(No.26:本発明の範囲)に比べて、Cr−N皮膜に発生するクラックの数が半減しており、優れた耐熱サイクル性を示すことが判明した。
すなわち、Ti合金の表面上に成膜するCr−N皮膜の密度を6.40g/cm3 以上にし、Cr−N皮膜中のN量を30〜55原子%の範囲にすることにより、優れた耐熱サイクル性を得えることができる。
【0036】
本発明の耐溶損性に優れる鋳造用部材に適用されるCr−N皮膜はAIP法により成膜されるので、Cr−N皮膜の密度を6.40g/cm3 以上で、かつ、Cr−N皮膜中のN量を30〜55原子%の範囲に容易に調整することができ、このCr−N皮膜と母材との密着性も良好である。
この鋳造用部材を金属溶湯と接触する部分に使用することにより、前述の鋳造用部材に要求される特性、(イ)の耐溶損性だけでなく、(ロ)の高温摺動条件下での耐摩耗性、(ハ)の耐熱サイクル性をも満足できるものである。
このとき、耐溶損性評価試験後に表面に付着したAlを機械的に除去したが、皮膜の剥離が認められず、十分な密着性を有していることを確認した。
【0037】
なお、本発明の耐溶損性に優れる鋳造用部材は本実施例に限定されるものではない。すなわち、鋳造用部材の母材は、JIS SKD61、Ti合金に限定されず、他の金属材料、例えば、Cu基合金、Ni基合金等を用いることができる。
さらに、本発明の鋳造用部材は、Cr−N皮膜の密度を高めることにより、Cr−N皮膜が金属溶湯からの溶損に対しての保護皮膜の働きが強化されるものであり、Al溶湯だけでなく、他の金属溶湯、例えば、Cu、Zn溶湯等に対しても優れた耐溶損性を有する。
すなわち、他の金属溶湯においても、Cr−N皮膜の気孔部より溶湯が侵入して母材を溶損するメカニズムはAl溶湯と同様であり、皮膜の密度を高めることで、他の金属溶湯に対しても耐溶損性に優れた皮膜となる。
【0038】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明の鋳造用部材は、Cr−N皮膜の密度とCr−N皮膜の窒素量を限定することにより、耐溶損性に優れるAl又はAl合金溶湯用の鋳造用部材を得ることを可能とするものである。
また、AIP法によりCr−N皮膜を成膜することにより、皮膜中のN量の調整が容易に達成でき、緻密で、密着性に優れたCr−N皮膜を得ることを可能とするものである。
さらに、鋳造用部材の母材にTi合金を用いることにより、金属溶湯の保温性を高めるとともに、耐熱サイクル性に優れた鋳造用部材を得ることを可能とするものである。

Claims (2)

  1. Al又はAl合金溶湯と接触する部分に使用される鋳造用部材であって、前記鋳造用部材が母材とこの母材表面にカソード放電型AIP法(アークイオンプレーティング法)により成膜されたCr−N皮膜からなり、このCr−N皮膜の密度が6.40〜6.80g/cm 3 であり、このCr−N皮膜中のN量が30〜55原子%であることを特徴とする耐溶損性に優れるAl又はAl合金溶湯用の鋳造用部材。
  2. 前記母材がTi又はTi合金製である請求項記載の耐溶損性に優れるAl又はAl合金溶湯用の鋳造用部材。
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