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JP4155779B2 - 糖鎖硫酸化剤 - Google Patents
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JP4155779B2 - 糖鎖硫酸化剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、酵素活性を有する融合タンパク質に関し、より詳細にはコンドロイチン硫酸の基本骨格中に存在するN-アセチルガラクトサミン4硫酸残基の6位に硫酸基を転移する活性を有する融合タンパク質に関する。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献】
特開平13−57882号公報
【非特許文献】
J. Biol. Chem. 275, 34728-34736(2000)
【0003】
従来、コンドロイチン硫酸の基本骨格中に存在するN-アセチルガラクトサミン4硫酸残基の6位に硫酸基を転移する活性を有する酵素(GalNAc4S-6ST)としてはイカ軟骨から抽出した酵素が特許文献及び非特許文献に開示されている。しかし、イカ軟骨から抽出して得られた上記酵素は、糖鎖硫酸化剤として使用するだけの量の確保が困難であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
糖鎖硫酸化剤として酵素を使用するためには、遺伝子組換技術によって酵素の大量調製が必須となる。また遺伝子治療に当該遺伝子を利用する場合にも、当該遺伝子の解明が不可欠である。にもかかわらず、上記GalNAc4S-6STの遺伝子はこれまでに得られていなかったため、GalNAc4S-6STの大量調製は不可能だった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記課題を鑑み、鋭意検討した結果、イカ軟骨由来のGalNAc4S-6STの部分アミノ酸配列を基に、イカのGalNAc4S-6STのcDNAを見つけだし、更にその塩基配列を基に遺伝子データベースを検索し、ヒトのGalNAc4S-6STのcDNAを得て、これを融合タンパク質として発現するように組換えることによりヒトのGalNAc4S-6STの大量合成を可能として、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1) 配列番号14記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドと、識別ペプチドとが融合してなることを特徴とする融合タンパク質。
(2) コンドロイチン硫酸の基本骨格中に存在するN-アセチルガラクトサミン4硫酸残基の6位に硫酸基を転移する活性を有することを特徴とする(1)記載の融合タンパク質。
(3) クジラ軟骨由来のコンドロイチン硫酸には硫酸基供与体から硫酸基を転移する活性を有するが、ヘパラン硫酸及び完全脱硫酸化N再硫酸化ヘパリンには実質的に硫酸基を転移する活性を有しないことを特徴とする(1)又は(2)記載の融合タンパク質。
(4) 識別ペプチドがシグナルペプチド、プロテインキナーゼA、プロテインA、グルタチオンS転移酵素、Hisタグ、mycタグ、FLAGタンパク質、T7タグ、Sタグ、HSVタグ、pelB、HAタグ、Trxタグ、CBPタグ、CBDタグ、CBRタグ、β-lac/blu、β-gal、luc、HP-Thio、HSP、Lnγ、Fn、GFP、YFP、CFP、BFP、DsRed、DsRed2、MBP、LacZ、IgG、アビジン、及びプロテインGからなる群から選択されるいずれか一のペプチドであることを特徴とする(1)乃至(3)いずれか記載の融合タンパク質。
(5) (1)乃至(4)いずれか記載の融合タンパク質をコードするDNA。
(6) (5)記載のDNAを含むベクター。
(7) (6)記載のベクターが宿主細胞に導入されてなる形質転換体。
(8) (7)記載の形質転換体を生育させ、生育物から単離、精製することを特徴とする(1)乃至(4)いずれか記載の融合タンパク質の製造方法。
(9) 配列番号14記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含み、コンドロイチン硫酸の基本骨格中に存在するN−アセチルガラクトサミン4硫酸残基の6位に硫酸基を転移する活性を有する糖鎖硫酸化剤。
(10) 配列番号14記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドと識別ポリペプチドとの融合タンパク質を含むことを特徴とする糖鎖硫酸化剤。
(11) コンドロイチン硫酸の基本骨格中に存在するN-アセチルガラクトサミン4硫酸残基の6位へ、硫酸基供与体から硫酸基を転移して、N-アセチルガラクトサミン4,6硫酸を基本骨格に含むコンドロイチン硫酸を製造するための、(9)又は(10)記載の糖鎖硫酸化剤の使用。
(12) (9)又は(10)記載の糖鎖硫酸化剤を用いて、コンドロイチン硫酸の基本骨格中に存在するN-アセチルガラクトサミン4硫酸残基の6位へ、硫酸基供与体から硫酸基を転移することを特徴とする、N-アセチルガラクトサミン4,6硫酸を基本骨格に含むコンドロイチン硫酸の製造方法。
(13) 基本骨格中の4,6硫酸化されているN-アセチルガラクトサミン残基の含量が、N-アセチルガラクトサミン残基の全量に対して50%以上であることを特徴とするコンドロイチン硫酸。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、発明の実施の形態により本発明を詳説する。
(1)本発明物質
本発明物質は配列番号14記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドと、識別ペプチドとが融合してなり、コンドロイチン硫酸の基本骨格中に存在するN-アセチルガラクトサミン4硫酸残基の6位に硫酸基を転移する酵素活性を有することを特徴とする融合タンパク質である。
【0008】
ここで、識別ペプチドとは、融合タンパク質を遺伝子組み換えによって調製する場合に、該ペプチドを目的タンパク質に連結して発現させることにより、形質転換体の生育物から融合タンパク質の分泌、分離、精製、又は検出を容易にすることが可能なペプチドであり、例えばシグナルペプチド(多くのタンパク質のN末端に存在し、細胞内の膜透過機構においてタンパク質の選別のために細胞内では機能している15〜30アミノ酸残基からなるペプチド:例えばOmpA、OmpT、Dsb等)、プロテインキナーゼA、プロテインA(黄色ブドウ球菌細胞壁の構成成分で分子量約42,000のタンパク質)、グルタチオンS転移酵素、Hisタグ(ヒスチジン残基を6乃至10個並べて配した配列)、mycタグ(cMycタンパク質由来の13アミノ酸配列)、FLAGペプチド(8アミノ酸配列からなる分析用マーカー)、T7タグ(gene10タンパク質の最初の11アミノ酸配列)、Sタグ(膵臓RNaseA由来の15アミノ酸配列)、HSVタグ、pelB(大腸菌外膜タンパク質pelBの22アミノ酸配列)、HAタグ(ヘマグルチニン由来の10アミノ酸配列)、Trxタグ(チオレドキシン配列)、CBPタグ(カルモジュリン結合ペプチド)、CBDタグ(セルロース結合ドメイン)、CBRタグ(コラーゲン結合ドメイン)、β-lac/blu(βラクタマーゼ)、β-gal(βガラクトシダーゼ)、luc(ルシフェラーゼ)、HP-Thio(His-patchチオレドキシン)、HSP(熱ショックペプチド)、Lnγ(ラミニンγペプチド)、Fn(フィブロネクチン部分ペプチド)、GFP(緑色蛍光ペプチド)、YFP(黄色蛍光ペプチド)、CFP(シアン蛍光ペプチド)、BFP(青色蛍光ペプチド)、DsRed、DsRed2(赤色蛍光ペプチド)、MBP(マルトース結合ペプチド)、LacZ(ラクトースオペレーター)、IgG(免疫グロブリンG)、アビジン、プロテインGからなる群から選択されるいずれかのペプチドを指称し、何れの識別ペプチドであっても使用することが可能である。その中でも特にシグナルペプチド、プロテインキナーゼA、プロテインA、グルタチオンS転移酵素、Hisタグ、mycタグ、FLAGペプチド、T7タグ、Sタグ、HSVタグ、pelB又はHAタグが、遺伝子工学的手法による本発明物質の発現、精製がより容易となることから好ましい。
【0009】
本発明物質中での配列番号14記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドと識別ペプチドとの配置は、識別ペプチドが配列番号14記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドのC末端側につながっていても或いはN末端側につながっていても、本発明物質がコンドロイチン硫酸の基本骨格中に存在するN-アセチルガラクトサミン4硫酸残基の6位に硫酸基を転移する活性(以下、「GalNAc4S-6ST活性」とも記載する)を有する限りにおいて制限はされない。
【0010】
ここで、GalNAc4S-6ST活性は、例えばJ. Biol. Chem. 275 (2000), 34728-34736に記載の方法にならって、基質として例えばクジラ軟骨由来のコンドロイチン硫酸(生化学工業株式会社製:主な構成二糖単位がD-グルクロン酸1−3ガラクトサミン4硫酸であるコンドロイチン硫酸:コンドロイチン硫酸Aとも呼ばれている)を用いることにより検出することが可能である。
【0011】
尚、一般に、酵素タンパク質のアミノ酸配列のうち、1又は数個(通常は2以上10以下)の構成アミノ酸が置換、欠失、挿入、或いは転位しても酵素活性が維持されることが知られ、同一酵素のバリアントであるということができるが、本発明物質においても配列番号14記載のアミノ酸配列に一又は数個(2以上10以下)の構成アミノ酸の置換、欠失、挿入、或いは転位が起こっていても融合タンパク質がGlcNAc4S-6ST活性を保持している限りにおいて、本発明物質と実質的に同一の物質であるということができる(このような配列番号14記載のアミノ酸配列からなるタンパク質に部分的な変異を有するタンパク質を便宜的に「修飾タンパク質」と記載する)。このような修飾タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号14に示されるアミノ酸配列と95%以上、好ましくは96%以上、さらに好ましくは97%以上の相同性を有することが好ましい。アミノ酸配列の相同性は、FASTAのような周知のコンピュータソフトウェアを用いて容易に算出することができ、このようなソフトウェアはインターネットによっても利用に供されている。
【0012】
このような本発明物質は、グリコサミノグリカンの基本骨格中、「4位ヒドロキシル基に硫酸基が置換し、6位ヒドロキシル基に硫酸基が置換していないガラクトサミン残基」(N−アセチルガラクトサミン4硫酸残基)に対して、当該6位ヒドロキシル基に硫酸基を転移する活性を有した融合タンパク質であり、後述の本発明糖鎖硫酸化剤に利用することができる。
【0013】
尚、本発明物質はヘパラン硫酸及び完全脱硫酸化N再硫酸化ヘパリンには実質的に硫酸基を転移する活性を実質的に有しないことが好ましく、具体的にはそのような活性は1pmol/分/ml未満、より好ましくは0.1pmol/分/ml未満、最も好ましくは検出されない。このような硫酸基転移活性の確認は、例えば実施例1<5>に記載された方法に従って行うことができる。
【0014】
(2)本発明物質の調製法
本発明物質の調製は、配列番号14記載のアミノ酸配列をコードするDNAと識別ペプチドをコードするDNAを同一読み出し領域に配置してなり、且つ配列番号14記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドと識別ペプチドとが発現しうるようなプロモーター領域を有するベクターを、適当な宿主細胞に組み込んで組換体とし、これを生育させることで、生育物として調製を行うことが可能である。尚、ここで宿主細胞とは原核細胞(例えば大腸菌等)又は真核細胞(例えば酵母、哺乳動物由来の細胞又は昆虫由来の細胞等)を指す。特に配列番号14記載のアミノ酸配列を有するタンパク質は本来真核細胞中で発現しているタンパク質であることから真核細胞が宿主細胞として好ましく、特に通常本発明物質の酵素活性を有する酵素は哺乳類で発現している点から哺乳類細胞が好ましく、また本発明物質の大量合成に極めて適する点から昆虫細胞も好ましい。
【0015】
ここで、宿主細胞の生育とは、宿主細胞を培養することの他、宿主細胞を生体などに投与し、その生体内で宿主細胞を生育させることも含む概念である。また、生育物とは、培養された宿主細胞、培養上清の他、宿主細胞を生体内で生育させた場合には、その生体の排泄物、分泌物なども含む概念である。
【0016】
本発明者らは、実施例記載の方法によりGenBank受け入れ番号AB11170のcDNAが、ヒトのGalNAc4S-6STをコードするDNAであることを明らかとしたため、当該cDNAを基に本発明物質を調製することも可能である。
本発明物質の識別ペプチドとして例えばFLAGペプチドを使用し、宿主細胞として哺乳動物由来の細胞を使用する場合には、例えばpFLAG-CMV-2ベクター(米コダック社製)などを発現ベクターとして使用することができる。
【0017】
pBluescriptIIプラスミドに挿入されている上記cDNA(AB11170)をpFLAG-CMV-2ベクターに挿入するためには、pBluescriptIIプラスミドベクターから適当な制限酵素を用いてcDNAを切り出して、必要に応じてcDNAの粘着末端を平滑化して、pFLAG-CMV-2ベクターに挿入するために適当な制限末端を連結させて、適当な制限酵素で処理したpFLAG-CMV-2ベクターに挿入することもできる。また、pBluescriptIIプラスミドに挿入されたcDNAを例えば配列番号15の5'プライマー及び配列番号16の3'プライマーを用いてPCR法により増幅することで5'末端にEcoRI制限領域を、3'末端にHindIII制限領域を有するヒト由来のGalNAc4S-6SのcDNAが増幅されるため、このPCR産物をHindIII及びEcoRIで消化した後、HindIII及びEcoRIで消化したpFLAG-CMV-2ベクターに常法により連結させることが可能である。
【0018】
このようにして調製したpFLAG-CMV-2ベクター(pFLAGGalNAc4S-6ST)を、例えばpFLAG-CMV-2ベクターの宿主細胞として機能するCOS-1細胞やCOS-7細胞等の哺乳類由来の細胞にエレクトロポレーション法などの常法を用いて導入して形質転換体を得ることができる。
【0019】
形質転換体を、それが生育するのに適した条件下で生育させて、本発明物質をコードするDNAを発現させてその生育物から本発明物質を調製することができる。例えばCOS-7細胞を宿主細胞として選択した場合には、in vitroで形質転換体を培養し、その培養物(培養後の形質転換体及び培養上清)から本発明物質を精製することが可能である。上記pFLAG-CMV-2ベクターを用いた場合には本発明物質はFLAGペプチドを含むことになるので、本発明物質は例えば抗FLAG抗体を用いて、例えばアフィニティー精製などの方法で本発明物質を単離、精製することが可能である。単離、精製の方法は、本発明物質における識別ペプチドによって適宜、適当な方法を常套的に選択することが可能である。
【0020】
(3)本発明糖鎖硫酸化剤
本発明糖鎖硫酸化剤は、配列番号14記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含み、コンドロイチン硫酸の基本骨格中に存在するN−アセチルガラクトサミン4硫酸残基の6位に硫酸基を転移する活性を有する。
【0021】
本発明糖鎖硫酸化剤は、配列番号14記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドと識別ポリペプチドとの融合タンパク質であることが好ましく、前記本発明物質によってなる。
【0022】
本発明糖鎖硫酸化剤は、コンドロイチン硫酸の基本骨格に存在するN−アセチルガラクトサミン4硫酸残基に対して硫酸基を転移して過硫酸化コンドロイチン硫酸を合成する酵素剤として使用することが可能である。また、本発明糖鎖硫酸化剤を構成する目的酵素活性を有する部分である配列番号14記載のアミノ酸配列がヒト由来のアミノ酸配列であるため、ヒトへの投与を行ったとしても抗原性が低いことが期待され、また培養軟骨などを本発明糖鎖硫酸化剤で修飾した後に生体に対して移植したとしても、本発明糖鎖硫酸化剤に起因する抗原抗体反応、炎症は惹起されないことが期待される。
【0023】
特に、基本骨格中にN−アセチルガラクトサミン4硫酸残基を有するコンドロイチン硫酸に対して、本発明糖鎖硫酸化剤を作用させて硫酸基供与体から硫酸基を転移させることで、N−アセチルガラクトサミン4,6硫酸残基を基本骨格中に有する過硫酸化コンドロイチン硫酸(いわゆるうコンドロイチン硫酸E)が得られる。本発明糖鎖硫酸化剤は、非還元末端のN−アセチルガラクトサミン4硫酸残基に主に硫酸基を転移する働きを有するが、高濃度(0.1%(w/v)以上、好ましくは0.3%(w/v)以上)の活性硫酸(以下「PAPS」とも記載する)共存下においては、基本骨格の非還元末端以外のN−アセチルガラクトサミン4硫酸残基に対しても硫酸基を転移する性質も併せて有し(後述実施例2<2>参照)、このような性質を利用して、基本骨格中のN−アセチルガラクトサミン残基のうちの50%以上、好ましくは60%以上が、4,6硫酸化N−アセチルガラクトサミン(コンドロイチン硫酸E構造)であるコンドロイチン硫酸の合成に使用することができる。なお、コンドロイチン硫酸E構造はミッドカインに対する強い親和性を示すことが知られており(J. Biol. Chem., 275, 37407-37413(2000))、上記の通りコンドロイチン硫酸を本発明糖鎖硫酸化剤で処理した後の反応生成物を、例えばミッドカインを結合したカラムを用いたアフィニティークロマトグラフィーなどの方法により、上記コンドロイチン硫酸E構造が多く含まれるコンドロイチン硫酸を含む画分を容易に得ることが可能である。
【0024】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
参考例:硫酸基転移酵素反応の測定
GalNAc4S-6STの酵素活性の測定はJ. Biol. Chem. 275, 34728-34736の方法を改変して行った。標準反応液は50μl中に、2.5μmolのイミダゾール-HCl(pH6.8)、0.5μmolのCaCl2、1μmolの還元型グルタチオン、ガラクトサミン換算で25nmolのコンドロイチン硫酸(クジラ軟骨由来:生化学工業株式会社製:コンドロイチン硫酸A)、50pmolの[35S]PAPS(約5.0×105cpm:Anal. Biochem., 148(1985), 303-310に従って調製した)、及び酵素を含む。反応液を37℃で20分間インキュベートし、反応の停止は1分間反応チューブを沸騰水中で加熱して行った。反応停止後、35Sでラベルされたグリコサミノグリカンをエタノールで沈殿させ、J. Biol. Chem. 268, 21968-21974に記載された方法で高速脱塩カラムを用いたゲルクロマトグラフィーを行って放射能を測定した。
【0025】
他のグリコサミノグリカンに対する硫酸基転移活性を測定するためにはコンドロイチン硫酸Aに代えて25nmolの他のグリコサミノグリカン又はそのオリゴ糖[コンドロイチン硫酸C(サメ軟骨由来のコンドロイチン硫酸:生化学工業株式会社製)及びデルマタン硫酸(ブタ皮由来:生化学工業株式会社製)、4硫酸化コンドロイチンオリゴ糖(三糖及び五糖:何れも生化学工業株式会社製のクジラ軟骨由来のコンドロイチン硫酸をJ. Biol. Chem. 275(2000), 34728-34736の記載に従ってウシ睾丸由来のヒアルロニダーゼ及びβ−グルクロニダーゼによって消化して調製した)、非硫酸化コンドロイチンオリゴ糖(三糖及び五糖:何れも生化学工業株式会社製のクジラ軟骨由来のコンドロイチン硫酸をBiochem. J., 226(1985), 705-714の記載に従ってウシ睾丸由来のヒアルロニダーゼ及びβ−グルクロニダーゼによって消化して調製した)の量はガラクトサミン量に換算;ヘパラン硫酸(ウシ腎臓由来:生化学工業株式会社製)、CDSNSヘパリン及びケラタン硫酸(ウシ角膜由来:生化学工業株式会社製)の量はグルコサミン量に換算]を用いた。コンドロイチン硫酸A又はデルマタン硫酸への硫酸基転移部位を調べるために、35SでラベルされたグリコサミノグリカンをコンドロイチナーゼACII、コンドロイチナーゼABC、コンドロイチナーゼACIIとコンドロ-6-スルファターゼ、又はコンドロイチナーゼABCとコンドロ-6-スルファターゼ(何れも生化学工業株式会社製)を使用してJ. Biol. Chem. 275, 34728-34736に記載された方法で測定を行った。酵素による消化で生じた放射能を有する消化産物を、Whatman Partisil-10 SAXカラムで分離し(Whatman Partisil-10 SAXカラム(4.6×25cm)を10mmol/lのKH2PO4で平衡化し、10mmol/lのKH2PO4で10分間展開した後、KH2PH4濃度を10〜450mmol/lへ変化させる濃度勾配溶出を行った)、35Sの放射能を測定した。オリゴ糖を硫酸基の受容体として使用した際は、反応液を直接Superdex30カラムに通筒(Superdex 30 16/60カラムを0.2mol/lのNH4HCO3で平衡化し、流速2ml/分で1mlずつの画分を回収した)し、35Sでラベルされたオリゴ糖を35SO4 2-及び[35S]PAPSと分離した。
【0026】
実施例1
<1>イカGalNAc4S-6STの調製及びプライマーの調製
J. Biol. Chem. 275, 34728-34736記載の方法に従ってイカ軟骨からGalNAc4S-6STを精製した。その後タンパク質量で10ngのイカGalNAc4S-6STを10%のゲルを用いたメルカプトエタノールによる還元条件下でのSDS-PAGE(ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動)をLaemmliらの方法(Nature 227, 680-685)によって行った。クマシーブリリアントブルーで泳動後のゲルを染色した結果、63kDaのタンパク質のバンドが検出された。
【0027】
このバンドを泳動ゲルごと切り出し、プロテイナーゼ Lys-Cで限定消化後に逆相HPLC分析してペプチドの断片を分離し、アミノ末端のアミノ酸配列の分析を行い、5種類のアミノ酸配列を特定した(表1)。
【0028】
【表1】
表1
Figure 0004155779
【0029】
ペプチド4及び5のアミノ酸配列に基づき配列番号6乃至9記載のプライマー(4a-1(アンチセンスプライマー):配列番号6、4a-2(アンチセンスプライマー):配列番号7、5s-1(センスプライマー):配列番号8、5s-2(センスプライマー):配列番号9)を常法に従って調製した(図1)。
【0030】
<2>イカのポリ(A)+RNAの調製
イカの頭蓋軟骨を取り出し、コットンを用いて軟組織を取り除き、軟骨を液体窒素により凍結させた。凍結した軟骨を液体窒素中ですり潰して粉末状にし、この軟骨粉を10倍量のグアニジンチオシアナート溶液に入れ、ポリトロンホモジナイザーを用いてすり潰し、その後100,000×gで30分間超遠心分離を行った。遠心上清を分離し、グアニジンチオシアナート/塩化セシウム法(Current Protocols in Molecular Biology, Vol.1, Suppl.36, pp.4.2.3-4.2.9, John Wiley & Sons, New York)による全RNA(ポリ(A)+RNA)の調製を行った。
【0031】
<3>イカGalNAc4S-6STcDNAの調製
全RNA(ポリ(A)+RNA)を鋳型としてオリゴdT又はランダムプライマーを使用して逆転写反応を行って調製した一次cDNAを作成し、これを使用してPCR法によりイカGalNAc4S-6STcDNAを調製した。すなわち、2μgのポリ(A)+RNA、0.5μgのオリゴdT及びランダムプライマー、10mmol/lのジチオスレイトール、0.5mMの各塩基を含むデオキシヌクレオチド三リン酸、30UのRNase阻害剤(宝酒造株式会社)、及び400Uの逆転写酵素(SuperscriptII、ライフテクノロジーズ社製)を含む20μlの水溶液で逆転写反応を行った。反応は42℃で50分間行った。反応後、反応液を70℃で15分間加熱することで反応を停止させ、0.5UのRNaseH(ライフテクノロジーズ社製)を加え、37℃で20分間反応させて、ポリ(A)+RNAを分解した。PCR反応は各々25pmolの5s-1及び4a-2オリゴヌクレオチドプライマー、1μlの逆転写反応後の反応液、各々0.2mMの4種類の塩基を含むデオキシヌクレオチド三リン酸、及び1.5UのTaqポリメラーゼ(キアゲン社製)を含む終量25μlの水溶液を使用して行った。増幅反応は熱変性反応(94℃で45秒)、アニーリング反応(45秒の反応であって3サイクルごとに48℃から28℃まで4℃ずつ低下させ、28℃まで低下した後はその温度で行った)及び伸長反応(72℃で1分)の3反応を40回繰り返して行った。更にこのPCR産物を使用して、上記と同様のPCR法(二次PCR)をプライマー5s-2(配列番号9)及び4a-1(配列番号6)を用いて行った。二次PCRの産物をアガロースゲル電気泳動して分離した(図2)。増幅されたDNAのバンドを常法に従って切り出し、センスプライマー5s-2及びアンチセンスプライマー4a-1をシークエンスプライマーとして用い、塩基配列をデオキシチェインターミネーション法によってDNAシークエンサー(モデル373A:アプライドバイオシステム社製)で解析した(配列番号10)。
【0032】
このように解析して得られたイカGalNAc4S-6STcDNAの塩基配列を使用して、インターネット上でFASTA検索を行い、該DNAと高い相同性を有しヒト脳細胞の第10染色体から得られたcDNAクローン(受け入れ番号AB011170:DNA Res. 5, 31-39:配列番号11)及びそれに高い相同性を有するクローン(受け入れ番号AF026477:ヒトのB細胞RAG関連遺伝子(hBRAG)として報告されている(Eur. J. Immunol. 28, 2839-2853):配列番号12)を選択した。前者のcDNAクローンは増幅されたイカGalNAc4S-6STcDNAと塩基配列レベルで最大40%、アミノ酸配列レベルで最大61%の相同性を有していた(図3)。このクローンは一の読み出し領域(配列番号13)を有しており、塩基配列から561アミノ酸からなるタンパク質(配列番号14)をコードしていることが示唆された。アミノ酸配列を解析した結果、このタンパク質は一の膜貫通領域を有するタイプIIの膜タンパク質であり、活性硫酸(PAPS)結合領域を有しており、新たな硫酸基転移酵素をコードしていることが示唆された。尚、この解析によって明らかとなったヒトのGalNAc4S-6STのcDNAの塩基配列は、B(D)J組換に重要な役割を示す(Annu. Rev. Immunol., 10(1992), 359-383)B細胞RAG関連遺伝子のコード領域の塩基配列と高い相同性(99%)を有しているため、GalNAc4S-6STは免疫系の働きに何らかの関与をしている可能性が示された。
【0033】
<4>ヒトGalNAc4S-6STcDNAの調製及びヒトGalNAc4S-6STcDNAの発現
GenBank受け入れ番号AB11170のcDNAを含むpBluescriptIIプラスミド(かずさDNA研究所より恵与)をEcoRIで切断し、2258bpの断片をpcDNA3.1(インビトロゲン社製)のEcoRI領域に常法に従って挿入、連結して、pcDNAGalNAc4S-6STを得た。
【0034】
宿主細胞としてはCOS-7細胞を用いて、これにpcDNAGalNAc4S-6STをDEAE-デキストラン法(Current Protocols in Molecular Biology, Vol.3, Suppl.43,pp.16.13.1-16.13.7, John Wiley & Sons, New York、J. Biol. Chem. 270, 18575-18580)により形質転換して、組換体を得た。
【0035】
組換体は67時間培養した後、0.15mol/l NaCl、10mmol/l Tris-HCl(pH7.2)、10mmol/l MgCl2、2mmol/l CaCl2、0.5% Triton X-100(商標名:ICN社製)、及び20%グリセロール中で30分間ロータリーシェーカーを使用して撹拌することで組換体を溶解し、10,000×gで10分間遠心分離し、この上清を抽出液とした。抽出液の硫酸基転移酵素活性をコンドロイチン硫酸A(クジラ軟骨由来:生化学工業株式会社製)及び4硫酸化三糖(生化学工業株式会社製のクジラ由来のコンドロイチン硫酸AをJ. Biol. Chem. 275(2000), 34728-34736に従ってウシ睾丸由来のヒアルロニダーゼ及びβ−グルクロニダーゼによって消化して調製)を硫酸基受容体として使用して各々測定した(図4)。ヒトのcDNAを含むプラスミドを導入したCOS-7の抽出液を用いて基質として4硫酸化三糖を使用した酵素活性を測定した場合には、陰性対照のpcDNA3を導入したCOS-7の抽出液と比して5倍以上に酵素活性が上昇したが、コンドロイチン硫酸Aに対する酵素活性は2倍にしか増加しなかった。コンドロイチン硫酸Aよりも4硫酸化三糖の方が酵素活性が高かったことから、この酵素は非還元末端のN−アセチルガラクトサミン4硫酸残基に特異的に硫酸基を転移する酵素であることが示唆された。
【0036】
<5>ヒトGalNAc4S-6ST-FLAGペプチド融合タンパク質の基質特異性の検討
ヒトGalNAc4S-6STの基質特異性を調べるために、発現したヒトGalNAc4S-6ST-FLAGペプチド融合タンパク質の精製を行った。すなわち、アフィニティーカラムを用いた精製を容易とするために、GalNAc4S-6STをFLAGペプチドとの融合タンパク質として発現するベクターpFLAGGalNAc4S-6STを構築して、このベクターをCOS-7細胞に導入した。pFLAGGalNAc4S-6STを構築は、かずさDNA研究所より恵与されたcDNA(受け入れ番号AB011170:遺伝子番号KIAA0598)を鋳型として使用し、5'プライマーとして配列番号15、3'プライマーとして配列番号16のプライマーを各々用いて上述と同様の手法でPCR法を行ってPCR産物を得た。センスプライマー(5'プライマー)の末端にはHindIII認識配列が設けられており、アンチセンスプライマー(3'プライマー)の末端にはEcoRI認識配列が設けられているため、PCR産物をHindIII及びEcoRIで消化してpFLAG-CMV-2プラスミド(米コダック社製)に常法に従って挿入した。
【0037】
このプラスミドベクターを導入したCOS-7細胞を67時間培養し、上記と同様に抽出液を得た。この上清を抗FLAGモノクローナル抗体結合アガロースカラム(0.5ml:シグマ社製)に通筒した。カラムへの吸着画分は、説明書に記載された条件下でFLAGペプチドを含む緩衝液1.5mlを使用してヒトGalNAc4S-6ST-FLAGペプチド融合タンパク質(以下「本発明物質1」とも記載する)を溶出させた。
【0038】
このようにして得た本発明物質1の酵素活性をコンドロイチン(生化学工業株式会社製)、コンドロイチン硫酸A(CS−A:クジラ軟骨由来コンドロイチン硫酸:生化学工業株式会社製)、コンドロイチン硫酸C(CS−C:サメ軟骨由来コンドロイチン硫酸:生化学工業株式会社製)、コンドロイチン硫酸E(CS−E:イカ軟骨由来コンドロイチン硫酸:生化学工業株式会社製)、デルマタン硫酸(DS:ブタ皮由来:生化学工業株式会社製)、ケラタン硫酸(生化学工業株式会社製)、ヘパラン硫酸(生化学工業株式会社製)、完全脱硫酸化N再硫酸化ヘパリン(CDSNSヘパリン:生化学工業株式会社製)、4硫酸化コンドロイチン三糖(4硫酸化三糖)、4硫酸化コンドロイチン五糖(4硫酸化五糖)(何れも生化学工業株式会社製のクジラ軟骨由来のコンドロイチン硫酸をJ. Biol. Chem. 275(2000), 34728-34736に従ってウシ睾丸由来のヒアルロニダーゼ及びβ−グルクロニダーゼによって消化して調製)、非硫酸化コンドロイチン三糖(非硫酸化三糖)、非硫酸化コンドロイチン五糖(非硫酸化五糖)(何れも生化学工業株式会社製のクジラ軟骨由来のコンドロイチン硫酸をBiochem. J., 226(1985), 705-714に従ってウシ睾丸由来のヒアルロニダーゼ及びβ−グルクロニダーゼによって消化して調製)を使用して観察した。その結果、コンドロイチン硫酸A、デルマタン硫酸は硫酸基の転移が盛んになされる基質として適した糖鎖であって、コンドロイチン硫酸C及びコンドロイチン硫酸Eに対しては弱い硫酸基転移酵素活性を有し、ヘパラン硫酸及びCDSNSヘパリンは、ほとんど硫酸基を転移せず、基質としては働かないことが明らかとなった。尚、ベクターのみを導入した陰性対照のCOS-7細胞の培養液は何れの硫酸基受容体を用いても0.6pmol/分/ml未満の値しか得られなかった。
【0039】
【表2】
表2
Figure 0004155779
【0040】
また、35Sでラベルされたコンドロイチン硫酸Aを参考例に記載された方法でPartisil-10 SAXカラムを用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析した。その結果、35Sでラベルしたコンドロイチン硫酸AをコンドロイチナーゼACIIで消化した際に、放射能がGalNAc(4,6-bisSO4)及びΔDi-diSEに観察された(図5A)。尚、図5及び図7中、矢印は以下の物質の溶出点を示しており、略語は明細書中で使用するものと共通である。
【0041】
1:ΔDi-0S(2-アセトアミド-2-デオキシ-3-O-(β-D-グルコ-4-エノピラノシルウロン酸)-D-ガラクトース)
2:N−アセチルガラクトサミン6硫酸(GalNAc(6SO4)とも記載する)
3:N−アセチルガラクトサミン4硫酸(GalNAc(4SO4)とも記載する)
4:ΔDi-6S(2-アセトアミド-2-デオキシ-3-O-(β-D-グルコ-4-エノピラノシルウロン酸)-6-O-スルホ-D-ガラクトース)
5:ΔDi-4S(2-アセトアミド-2-デオキシ-3-O-(β-D-グルコ-4-エノピラノシルウロン酸)-4-O-スルホ-D-ガラクトース)
6:N−アセチルガラクトサミン4,6硫酸(GalNAc(4,6-bisSO4)とも記載する)
7:硫酸イオン(SO4 2-
8:ΔDi-diSD(2-アセトアミド-2-デオキシ-3-O-(2-O-スルホ-β-D-グルコ-4-エノピラノシルウロン酸)-6-O-スルホ-D-ガラクトース)
9:ΔDi-diSE(2-アセトアミド-2-デオキシ-3-O-(β-D-グルコ-4-エノピラノシルウロン酸)-4,6-bis-O-スルホ-D-ガラクトース)
【0042】
35Sでラベルしたコンドロイチン硫酸Aの4位と6位の硫酸基の何れが放射能を有しているかを調べるために、コンドロイチナーゼACIIによる消化産物を、さらにコンドロ-6-スルファターゼで消化し、SAXカラムを用いてHPLCで分析した(図5B)。その結果、GalNAc(4,6-bisSO4)の放射能ピークは消失し、放射能は無機硫酸の画分に移行した。このことから35SO4 2-は非還元末端と糖鎖の内部に存在するGlcNAc(4SO4)の双方に同様な割合でその6位に転移されていたことが明らかとなった。
【0043】
35Sでラベルしたデルマタン硫酸をコンドロイチナーゼABCで消化した場合、放射能はGalNAc(4,6-bisSO4)に検出され、ΔDi-diSEには小さなピークが現れただけであった(図5C)。35Sでラベルしたコンドロイチン硫酸Aと同様に36Sでラベルしたデルマタン硫酸をコンドロ-6-スルファターゼで消化した場合には、ほとんどの放射能は無機硫酸の画分に移行した(図5D)。GlcNAc(4,6-bisSO4)に残っていた若干の放射能も、さらなるコンドロ-6-スルファターゼによる消化で消失したため、デルマタン硫酸は主にイズロン酸に隣接した非還元末端のGalNAc(4SO4)の6位に硫酸基が結合することが明らかとなった。コンドロイチンを硫酸基受容体として使用した場合、コンドロイチン中にはほとんどない構造であるにもかかわらず非還元末端と内部のGalNAc(4SO4)残基への硫酸基の転移が観察された。
【0044】
デルマタン硫酸がコンドロイチン硫酸Aと比してより硫酸基の受容体として弱くしか働かない理由は、非還元末端のGalNAc(4SO4)残基が少ないことに起因することを明らかとするために、内部のGalNAc(4SO4)残基と非還元末端のGalNAc(4SO4)残基のモル比をSAX-HPLCを使用してJ. Biol. Chem. 275, 34728-34736の方法で分析した。GalNAc(4SO4)に相当するピークはコンドロイチン硫酸A及びデルマタン硫酸の何れを分解した際にも観察された(図6B及びCの矢印)。非還元末端のGalNAc(4SO4)残基と内部のGalNAc(4SO4)残基とのモル比の計算値は、コンドロイチン硫酸Aで0.011、デルマタン硫酸で0.021となった。コンドロイチン硫酸CをコンドロイチナーゼACIIで消化して同様に分析した場合、GalNAc(4SO4)のピークは同条件のクロマトグラフィーでは検出されなかった。
【0045】
J. Biol. Chem.275, 34728-34726によると、コンドロイチン硫酸Aとデルマタン硫酸を不飽和二糖に分解した場合、ΔDi-4Sは全体の不飽和二糖のうちの0.74(コンドロイチン硫酸A)と0.90(デルマタン硫酸)となる。従ってGalNAc(4SO4)残基は計算上ではコンドロイチン硫酸Aでは0.008、デルマタン硫酸では0.019となり、非還元末端と内部のGalNAc(4SO4)は何れもデルマタン硫酸の方が多いはずであるが、コンドロイチン硫酸Aの方が高い硫酸基受容体としての働きを示したということは、デルマタン硫酸に含まれるイズロン酸がヒトのGalNAc4S-6STの活性を阻害したということを示唆している。
【0046】
表2より、4硫酸化コンドロイチンオリゴ糖(4硫酸化三糖及び4硫酸化五糖)に本発明物質1が硫酸基を転移しており、これらの何れの箇所に硫酸基を転移しているかを調べるために、35Sラベルした三糖及び五糖をコンドロイチナーゼACIIで消化し、上記と同様にSAX-HPLCカラムで分析した(図7)。何れのオリゴ糖も、放射能はGalNAc(4,6-bisSO4)に観察された(図7A、図7C)。35SO4 2-が転移された部位を特定するために、コンドロイチナーゼACIIで消化した後の35Sラベルされたオリゴ糖をコンドロ-6-スルファターゼで消化し、上記と同様にSAX-HPLCカラムで分析したところ、GalNAc(4,6-bisSO4)の放射能を有するピークは消滅し、放射能を有する無機硫酸のピークが生じた(図7B、図7D)。このことから、ヒトのGalNAc4S-6STが硫酸基を非還元末端のGalNAc(4SO4)残基の6位に転移し、還元末端のGalNAc(4SO4)や内部のGalNAc(4SO4)残基への硫酸基転移量は相対的に少ないことが示唆された。
【0047】
実施例2
<1>ヒトGalNAc4S-6ST-Hisタグ融合タンパク質の昆虫細胞系での発現
ヒトGalNAc4S-6ST-Hisタグ融合タンパク質の昆虫細胞系での大量発現を行なった。得られたヒトGalNAc4S-6ST-Hisタグ融合タンパク質はHisタグを有するため、アフィニティーカラムを用いて精製をするのに適する。ヒトGalNAc4S-6STをHisタグとの融合タンパク質として発現するベクターpVL1393GalNAc4S-6STを構築して、このベクターをSf-21細胞(J. Biochem., 119(1996), 1150-1156)に導入した。pVL1393GalNAc4S-6STの構築は、以下の手法に従って行った。すなわち、かずさDNA研究所より恵与されたcDNA(受け入れ番号AB011170:遺伝子番号KIAA0598)を鋳型として使用し、5'プライマーとして配列番号17、3'プライマーとして配列番号18のプライマーを各々用いて上述と同様の手法でPCR法を行ってPCR産物を得た。センスプライマー(5'プライマー)の末端にはBamHI認識配列が設けられており、アンチセンスプライマー(3'プライマー)の末端にはStuI認識配列が設けられているため、PCR産物をSpeI及びEcoRIで消化したpBluescript SKII(-)プラスミド(ストラタジーン社製)に、MK transferベクターからBiochem. Biophys. Res. Commun., 236, 66-70(1997)に従って単離したNheI/BamHIcDNA断片(メリチンシグナル配列、6個のHisからなるHisタグ、及びエンテロキナーゼ感受性配列をコードしている)と共に連結して挿入した。そしてこのプラスミドからXbaI及びEcoRVにより切り出した断片をXbaI及びSmaIで消化したバキュロウイルス用ベクターpVL1393(ファルミノゲン社製)に挿入した。
【0048】
このようにして得たpVL1393GalNAc4S-6STをJ. Biochem., 119, 1150-1156(1996)に従ってSf-21細胞にトランスフェクションして組換体を得た。組換体を培養し、600mlの培養上清に分泌されたヒトGalNAc4S-6ST-Hisタグ融合タンパク質(以下「本発明物質2」とも記載する)を、0.15mol/lでNaClを含む50mmol/lのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)で平衡化した1mlのヘパリンセファロースCl-6Bカラム(アマシャムファルマシアバイオテック社製)に通筒した。同じ緩衝液でカラムを洗浄した後、0.5mol/lでNaClを含む6mlの50mmol/lリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)で本発明物質2を溶出させた。更に精製するために、溶出液をHisTrapキレートHPカラム(アマシャムファルマシアバイオテック社製)に通筒し、40mmol/lのイミダゾール緩衝液で洗浄し、5mlの0.1mol/l及び0.2mol/lのイミダゾール緩衝液でカラムの説明書に従って溶出を行った。
【0049】
本発明物質2を0.2mol/lのイミダゾールで溶出し、SDS-PAGEで単一のバンドとなっていることを確認し、セントリコンYM-10(ミリポア社製)を使って本発明物質2を濃縮、脱塩した。600mlの培養液から150μgの本発明物質2が得られた。
【0050】
<2>本発明物質2を用いたコンドロイチン硫酸Eの合成
クジラ軟骨由来のコンドロイチン硫酸(コンドロイチン4硫酸構造を多く含む:生化学工業株式会社製)、チョウザメ軟骨由来のコンドロイチン硫酸(コンドロイチン4硫酸構造を多く含む:生化学工業株式会社製)を用いて本発明物質2で硫酸基の転移を行なった。
1mlの20mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4:10mmol/l CaCl2、20mmol/l 還元型グルタチオン、50mmol/l イミダゾールを含む)に250μgのコンドロイチン硫酸を74μgの本発明物質2及び500μgのPAPSを添加して37℃で12時間インキュベートした。反応後、ミッドカインが結合したアフィニティーカラムに通筒し、カラムに吸着した画分を0.15mol/l、0.3mol/l、0.5mol/l、及び0.7mol/lのNaCl水溶液で溶出させて回収した。
この各々の画分に含まれるコンドロイチン硫酸をJ. Biol. Chem., 270, 18575-18580(1995)に従ってコンドロイチナーゼABC(生化学工業株式会社製)で分解した後、二糖分析を行なった(表3)。
【表3】
表3
Figure 0004155779
単位:%
【0051】
その結果、クジラ軟骨由来のコンドロイチン硫酸もチョウザメ軟骨由来のコンドロイチン硫酸もΔDi-diSE構造が大幅に増加しており、コンドロイチン硫酸E構造を大量に含むコンドロイチン硫酸の合成に本発明物質2を使用することができることが明かとなった。このようにコンドロイチン硫酸E構造が大量に含まれるコンドロイチン硫酸が得られたことから、高濃度のPAPS共存下においては、本発明物質2はコンドロイチン骨格の非還元末端のN−アセチルガラクトサミン4硫酸残基のみではなく、非還元末端以外のN−アセチルガラクトサミン4硫酸残基に対しても硫酸基を転移している可能性が示唆された。
なお、通常のコンドロイチン硫酸Eと呼ばれる天然のコンドロイチン硫酸は、上記と同様な二糖分析を行なった場合にはΔDi-diSEが30%程度しか検出されず、また、J. Biol. Chem. 275, 34728-34736(2000)記載の方法で修飾されたコンドロイチン硫酸であってもΔdi-diSE構造は50%に満たないが、高濃度のPAPS共存下で本発明物質2を作用させることでΔDi-diSE構造が50%以上含まれるコンドロイチン硫酸の画分がはじめて得られた。
【0052】
実施例3
ヒト組織におけるGalNAc4S-6STの発現
(1)ドットブロットハイブリダイゼーション法
ヒト各組織の全RNAドットブロット膜を使用し、GlcNAc4S-6STの発現を、hGlcNAc4S-6STのコード領域の塩基配列部分(配列番号14)とのハイブリダイゼーション法(発現ハイブリダイゼーション法)により解析した(図8)。ブロット膜上の組織の配置は表4の通りである。その結果、何れの組織においてもGlcNAc4S-6STは発現しており、特に肺、脾臓、末梢血白血球、リンパ節、甲状腺、胎児脳、胎児脾臓でGlcNAc4S-6STは強く発現していることが明らかとなった。
【0053】
【表4】
表4
Figure 0004155779
【0054】
尚、ハイブリダイゼーションとオートラジオグラフィーは以下の条件で行った。ニトロセルロースフィルターを3×SSC溶液(1×SSC溶液:NaCl 0.15M、クエン酸ナトリウム(pH7.0) 0.015M)に浸し、65℃で30分間処理した。その後、1%SDS、5×SSC、1×デンハルト液(BSA フラクションV(シグマ社製) 0.2%、ポリビニルピロリドン 0.2%、Ficoll 400(ファルマシア社製) 0.2%))からなるプレハイブリダイゼーション液に浸し、65℃で2時間処理した。更にこのような処理をしたニトロセルロース膜をプラスチックバック中で、NaCl 0.75mol/l、Tris-HCl(pH8.0) 50mmol/l、EDTA 2mmol/l、1×デンハルト液、SDS 0.1%、変性サケ精子DNA 50μg/ml、変性させた[32P]標識hGlcNAc4S-6STコード領域DNA(106cpm/ml)からなるハイブリダイゼーション液を加え、65℃で1晩インキュベートした。ハイブリダイゼーション終了後、100mlの2×SSC、0.1%SDS溶液に浸し、室温で5分間軽く振盪し、次に溶液を0.2×SSC-0.1%SDS溶液に換え、65℃で30分間インキュベートし、更に同じ組成の溶液に換えて65℃で30分間インキュベートした。そしてニトロセルロース膜を2×SSCで軽くすすぎ、風乾後、両面をサランラップで覆って、オートラジオグラフィーを行った。
【0055】
(2)ノザンブロットハイブリダイゼーション
ヒトの心臓、脳、胎盤、肺、肝臓、骨格筋、腎臓、及び膵臓について、GlcNAc4S-6STのRNAの発現をノザンブロットハイブリダイゼーションによって解析した(図9:左のレーンから心臓、脳、胎盤、肺、肝臓、骨格筋、腎臓、膵臓と配置してある)。すなわち、アガロースゲル電気泳動により上記各組織から調製した全RNAを分画した後、泳動したRNAをニトロセルロース膜に転写し、この膜を乾熱乾燥させた後、(1)のドットブロットハイブリダイゼーションと同条件でハイブリダイゼーション処理を行った。
その結果、何れの組織においても5.2kbpのRNAのバンドに放射能が検出された。
【0056】
【発明の効果】
本発明によりヒト由来のGalNAc4S-6STの大量調製に必要となる、融合タンパク質が提供される。
【0057】
【配列表】
Figure 0004155779
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Figure 0004155779

【図面の簡単な説明】
【図1】 ペプチド4及びペプチド5のアミノ酸配列とPCR用プライマー(4a-1、4a-2、5s-1、及び5s-2)の構築を示す図。
【図2】 PCR法によって増幅されたイカ軟骨由来のGalNAc4S-6STのcDNA断片を示す図。
【図3】 PCR産物、ペプチド断片とヒト由来のGalNAc4S-6STのアミノ酸配列の関係を示す図。
【図4】 ヒト由来のGalNAc4S-6STのコンドロイチン硫酸A及び4硫酸化三糖への硫酸基転移酵素活性を示す図。
【図5】 ヒト由来のGalNAc4S-6STのコンドロイチン硫酸A及びデルマタン硫酸への硫酸基転移部位をSAX-HPLCを用いて分析した図。
【図6】 コンドロイチン硫酸とデルマタン硫酸の非還元末端のGalNAc(4ST)をSAX-HPLCカラムを用いて分析した図。
【図7】 ヒト由来のGalNAc4S-6STの4硫酸化オリゴ糖への硫酸基転移部位をSAX-HPLCを用いて分析した図。
【図8】 各組織におけるヒト由来のGalNAc4S-6STのDNAの転写量をドットブロット分析により分析した図。
【図9】 ヒトの心臓、脳、胎盤、肺、肝臓、骨格筋、腎臓、及び膵臓におけるGalNAc4S-6STのDNAの転写量をノザンブロット法により解析した図。

Claims (4)

  1. 配列番号14記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含み、コンドロイチン硫酸の基本骨格中に存在するN-アセチルガラクトサミン4硫酸残基の6位に硫酸基を転移する活性を有する糖鎖硫酸化剤。
  2. 配列番号14記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドと識別ポリペプチドとの融合タンパク質を含むことを特徴とする糖鎖硫酸化剤。
  3. コンドロイチン硫酸の基本骨格中に存在するN-アセチルガラクトサミン4硫酸残基の6位へ、硫酸基供与体から硫酸基を転移して、N-アセチルガラクトサミン4,6硫酸を基本骨格に含むコンドロイチン硫酸を製造するための、請求項又は記載の糖鎖硫酸化剤の使用。
  4. 請求項又は記載の糖鎖硫酸化剤を用いて、コンドロイチン硫酸の基本骨格中に存在するN-アセチルガラクトサミン4硫酸残基の6位へ、硫酸基供与体から硫酸基を転移することを特徴とする、N-アセチルガラクトサミン4,6硫酸を基本骨格に含むコンドロイチン硫酸の製造方法。
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