JP4156412B2 - 電流センサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、検出部に空心コイルを用いた電流センサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の電流センサとして、非特許文献1に記載されている電流センサがある。この電流センサは、電流検出部としてロゴスキーコイル(空心コイルの一例)を用いている。ロゴスキーコイルとは、巻心として鉄心の代わりに絶縁物を用い、その巻心の上に二次巻線を巻いたものである。更に、A/D変換器を介して、ロゴスキーコイルから得られる一次電流の時間変化に比例した出力電圧を一次電流に比例した信号に戻すために、DCオフセット除去回路と不完全積分器をデジタル演算にて行う構成を採用している。なお、この不完全積分の放電時定数は1秒である。
【0003】
また、一次電流の値が最大値(位相90度)の時、空心コイル出力は0となり、これ以降出力の符号が反転する。これを積分することで一次電流波形を復元している。
【0004】
【非特許文献1】
三菱電機技報、Vol.75、No.8、2001年(第31〜36頁)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
通常、積分器の入力信号にDC成分が含まれると、この成分が積分器にて連続的に加算されるため、積分器内の値は単調増加若しくは単調減少し、積分器が飽和するため正確な電流計測を行うことができなくなる。なお、ここでいうDC成分には2種類あり、入力信号のDC成分と、一次電流のON/OFFや位相変化などに伴い積分器内に累積されるDC成分である。
【0006】
入力信号のDC成分とは、電源回路の影響、周辺機器等の影響、空芯コイル出力からA/D変換器までのアナログ回路の影響などにより、入力信号のグランド電位にズレが発生することに起因している。
【0007】
積分器内に累積されるDC成分とは、一次電流の位相が急激に変化した場合などに生じる。例えば、容量の大きな負荷の入り切り時に瞬間的に一次電流の位相が急激に変化する。一例として、一次電流が最大値となるとき積分器内の値は最大値となるが、この状態で一次電流の位相が180度変化して最小値となった場合について述べる。
【0008】
本来空心コイル出力の符号が反転し、減算することで積分器内の値は0を中心として変動するはずが、測定対象の電流位相が変化することにより、空心コイル出力の符号は反転せず、積分器内の値は増加する。すなわち、一次電流の位相が変化した時の積分器内の値を基準とした変動となる。これは、積分器内にDC成分が累積するのと同等であり、飽和するまでのマージン(積分器のレンジとDC成分の差)が小さくなり、一次電流の値によっては飽和することがある。
【0009】
従来技術では、DC成分に対処するため、DCオフセット除去回路を用いて入力信号に含まれるDC成分を除去している。しかし、入力信号のDC成分が変化した場合、DCオフセット回路が収束するまでの間は、DC成分がDCオフセット回路を通過して、不完全積分回路に入力されてしまう。このDC成分を除去するために、従来技術では、不完全積分を行い、入力された信号が時間と共に減衰し、1秒後には0となるように設計されている。以上のように積分器の飽和対策として2段階の処理回路が必要である。
【0010】
また、積分器が時定数を持って放電するため(不完全積分であるため)、正確に積分処理を施すことができず、精度良く一次電流に比例した信号を得ることができない。A/D変換器からの出力を連続的にデジタル積分した出力波形は、一次電流に対して位相が進むが、上記従来技術では、一切の対策が施されていない。
【0011】
この発明は以上のような問題を解決するためになされたもので、一次電流の変化に迅速に追従できる電流センサを得ることを目的とする。また、一次電流に対する位相ズレが少ない電流センサを得ることを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る電流センサは、
測定対象電流を検出する空心コイル、該空心コイルの出力信号を量子化するA/D変換器、該A/D変換器の量子化データを積分する積分器、該積分器の出力データの高域周波数成分のみを通過させ、測定対象電流に比例した電気量を出力する高域通過フィルタ、該高域通過フィルタの入力信号と出力信号から、両信号の差分値を取り出す差分検出手段、該差分検出手段で得られた上記差分値を一定係数倍する係数倍手段、及び該係数倍手段の出力を、上記積分器の入力側に加算する加算手段を備えたものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る電流センサの構成を示すもので、測定対象である一次電流を検出し、その時間的な変化量に比例する電圧を出力する空心コイル1の出力信号を、A/D変換器2でサンプリングにより量子化し、量子化したデータをデジタル処理するデジタル処理部20に加える。
【0014】
デジタル処理部20は、DC成分を除去する高域通過フィルタ3、信号を連続的に積分する積分器4、高域通過フィルタ3の入力信号と出力信号の差分を計算する機能を有する差分検出手段5、該差分検出手段5の出力である前記の差分値を一定係数倍する機能を有する係数倍手段6、および、前記の差分計算結果を前記積分器4の入力に加算する機能を有する加算手段7とから構成されている。
【0015】
上記構成により、具体的には、一次電流の変化量を空心コイル1にて検出する。この空心コイル1からのアナログ電圧信号をA/D変換器2に入力することでデジタル値に変換する。変換したデジタルデータをデジタル処理部20で処理し、上記測定対象である一次電流に比例した電気量を出力として得る。
【0016】
A/D変換器2以降は、ソフトウェアによるデジタル処理である。処理の流れを図2を参照して説明する。空心コイル1により一次電流に比例した電気量を検出し(S1)、A/D変換器2でアナログ信号をサンプリングにより量子化しデジタル信号に変換する(S2)。このとき、アナログ信号出力にDC成分が重畳されていた場合、そのまま単純に連続積分すると積分器4で扱えるレンジをオーバー(飽和)して、正確な信号を得ることができなくなる。このDC成分を積分器4内から除去するために、高域通過フィルタ3の入力信号と出力信号の差分値を帰還する処理を施す(S6)。帰還する差分値の初期値は0とし、この値とA/D変換器2からの信号を加算手段7にて加算する(S3)。
【0017】
次に、高域通過フィルタ3の入力信号と出力信号の差分値を一定係数倍する処理を係数倍手段6にて行う。これによって積分器4内のDC成分を徐々に除去して、DC成分を0に収束させる。
【0018】
次に、積分器4にて連続的に積分処理を行う(S4)。具体的には、積分器の初期値を0とし、サンプリングごとに入力データ(計測データ+差分データ)を順次加算して出力を得る。
【0019】
次に、積分器4の出力を保持しておき、上記出力と高域通過フィルタ3の出力との差分を計算する(S6)。
【0020】
次に、高域通過フィルタ3を施すことで、積分器4の出力(積分結果)からDC成分を除去する(S5)。
【0021】
次に、高域通過フィルタ3を通して得た結果から前記した積分器4の出力として保持した値を差し引く。この差分結果を一定係数倍した(S7)値を前記した加算処理機能7にて、前段のA/D変換器2の出力に加算する(S3)。
【0022】
ただし、前記の差分値に掛ける一定係数は、1よりも小さい値を設定する。好ましくは0.5以下の値を用いるのがよい。係数に1以下の数値を用いることで、積分器4内のDC成分は、徐々に0に収束する。
【0023】
この係数が小さい場合、積分器4内のDC成分が0に収束するまでに時間が掛かる。逆に、1に近い場合、早く収束するが、あまり大きすぎると(1にごく近い数字だと)、積分器4内のDC成分は0に収束せずに発振する。
【0024】
本発明における電流センサ出力は、積分器4の出力に高域通過フィルタ3を施したもの、もしくは、なんらかの処理を施した値である。
【0025】
本実施の形態1で示す本発明は、A/D変換器2の後段の全処理をデジタル処理部20によりデジタル処理で行うことを特徴とするものであるが、これ以外に全ての機能をアナログ回路にて処理することも考えられる。また、A/D変換器2を挿入する位置を変更して、A/D変換器2までの前処理をアナログ回路で、A/D変換器2の後段の処理をデジタル処理することも考えられる。
【0026】
高域通過フィルタ3は、DC成分を除去する機能を有すれば、どのような構成であってもよい。
【0027】
本発明により、従来技術で必要であった積分器4の前段の高域通過フィルタを除去することができるが、もちろん、積分器4の前段に高域通過フィルタを設置してもなんら問題ない。
【0028】
本実施の形態では、空心コイル1の出力を直接A/D変換器に入力しているが、間にサージ対策用の低域通過フィルタなどを挿入してもよい。すなわち、本実施の形態1は本発明の範囲を限定するものではなく、検出部に空心コイル1を用いることと、上記のA/D変換器2以降の機能を有すること以外、各種変形が考えられる。
【0029】
実施の形態2.
実施の形態2は、実施の形態1に示す電流センサにおいて、サンプリング方法を工夫することにより、積分器4による積分結果と一次電流波形の位相を一致させる技術である。
【0030】
図3は実施の形態2に係る電流センサの要部を示すもので、一次電流の変化量に比例したアナログ電圧信号を量子化するA/D変換器2と、量子化したデータから希望するタイミングのデータのみを選択するか若しくは希望するタイミングのデータを計算する機能を有する選択処理手段8と、A/D変換器2にて行ったサンプリングの周期から、近似等の処理を行うことで所望のサンプリング周期に変更する機能を有するダウンサンプリング手段9を有する。図3では、本発明による効果が得られる最小機能を示している。実際にはA/D変換器2の前段には空芯コイル1が接続され、ダウンサンプリング手段9の後段にはデジタル処理部20が接続される。なお、デジタル処理部はA/D変換器と選択処理手段の間でもよい。
【0031】
図4を参照して具体的に説明すると、測定対象である一次電流信号Iの変化量に比例する電圧信号Vを積分器4にてオイラー積分した場合、積分結果Rの波形は一次電流信号Iの波形に対して位相が進む。この位相が進む量Dは、サンプリング周期に依存しており、常に1/2サンプリング周期分進む。この位相の進む量を補正することで測定精度を向上させる。
【0032】
まず、A/D変換器2におけるサンプリングを、電流センサ出力に要求されるサンプリング周期の2倍以上のサンプリング周期でいわゆるオーバーサンプリングを行う。サンプリングされたデータから、選択処理手段8を用いて希望するタイミングのデータを選択する。積分の結果のデータは、一次電流と比較して、1/2サンプリング周期分の位相が進んだデータであるので、抽出するデータは、所望するサンプリングから1/2サンプリング分遅延させたものを採用する。ダウンサンプリング手段9によって、先に選択したデータのみを抽出し、電流センサ出力のサンプリング周期と同一のタイミングでデータを次の機能へ渡す。
【0033】
A/D変換器2のサンプリング周波数が電流センサ出力周波数の2N倍(Nは整数)であった場合は、単純に、1/2サンプリング後のデータが存在するため、これを選択する。
【0034】
A/D変換器2のサンプリング周波数が電流センサ出力周波数の2N倍以外である場合、直線補間等の近似もしくは、一次電圧波形関数によるフィッティングなどを行い、電流センサ出力の1/2サンプリング分遅延したタイミングの出力を計算し、これを抽出する。
【0035】
ダウンサンプリング手段9によって、先に選択したデータのみを抽出し、電流センサ出力の周期と同一のタイミングでデータを次の機能へ渡す。
【0036】
上記の処理は、サンプリングするタイミングを、電流センサの1/2サンプリング周期分遅延させたのと同等である。
【0037】
本実施の形態では、A/D変換器2のサンプリング周波数を電流センサ出力の2倍以上としたが、それ以下でも同様に位相を補正し、高精度計測を行うことが可能である。ただし、A/D変換器2のサンプリング周波数が2倍以下であった場合、ダウンサンプリングにより高周波成分が劣化し、この高周波領域の測定精度は逆に低下する。
【0038】
上記のサンプリング波形を遅延させることで、積分器の出力波形の位相を測定対象の電流波形の位相に一致させることができ、より精度の高い電流センサが構成できる。
【0039】
実施の形態3.
本実施の形態3は、実施の形態1記載の電流センサにおいて、積分手順を工夫することにより、積分器による積分結果と一次電流波形の位相を一致させる技術である。図5に示すように、一次電流の変化量に比例したアナログ電圧信号を量子化するA/D変換器2と、量子化したデータを台形積分する台形積分器10を持つ電流センサである。図5では、本発明による効果が得られる最小機能を示している。実際にはA/D変換器2の前段には空芯コイル1が接続され、台形積分器10の入力側には加算手段7が、また出力側には高域通過フィルタ等が接続される。
【0040】
実施の形態2にて述べたように、積分結果の波形は一次電流波形の波形と比較して常に1/2サンプリング周期分位相が進む。この位相を補正するために積分結果の波形を1/2サンプリング周期分位相を遅らせる台形積分器10を採用する。台形積分器10は、実施の形態1における積分器4と、保持データおよび平均化データとからなる。
【0041】
具体的な処理の流れを図6に示す。まず、保持データ▲1▼を0で初期化する(S10)。この保持データ▲1▼とは、A/D変換器2によるサンプリングデータを平均化するためのデータである。次に、A/D変換器2によってサンプリング(S11)したサンプリングデータを保持データ▲2▼に保存する(S12)。
【0042】
次に、サンプリングデータと保持データ▲1▼の和をとり、更に1/2(平均化)する(S13)。平均化したデータ(平均化データ)を台形積分器10内の積分器4にて順次加算する。ただし、積分器4の初期値は0とする。保持データ▲1▼に保持データ▲2▼をコピーする(S14)。以下、同様の手順を繰り返すことで台形積分を行う。
【0043】
本実施の形態では、保持データ▲1▼および保持データ▲2▼を区別しているが、保持データ▲2▼とは保持データ▲1▼にサンプリングデータを代入するための手段であり、その他の如何なる方法を用いてもよい。
【0044】
本実施の形態では、台形積分として積分器4の前で平均化処理を行っているが、積分器4後で平均化処理を施しても同様の効果が得られる。
【0045】
前サンプリングデータと現サンプリングデータを平均化すること、若しくは前積分器出力と現積分器出力を平均化することで、積分器出力波形と一次電流波形の位相を一致させることができ、より精度の高い電流センサが構成できる。
【0046】
実施の形態1〜3に示すように、検出部に空心コイルを用いた本発明の電流センサは、一次電流の飽和現象を防止でき、かつ、瞬時値を検出できるので、電流センサとして使用するのに適し、特に、電流と電圧の位相が影響する電力(無効電力、高調波電力などを含む)や電力量(無効電力量、高調波電力量などを含む)を演算する回路や機器に適する。
【0047】
【発明の効果】
この発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。
高域通過フィルタの入出力信号の差分値を一定係数倍した量を積分器に加算することにより緩やかに直流成分を取り去るので、空心コイルの出力信号に過大な直流成分を含む場合、一次電流がON/OFFする場合、一次電流の位相が変化する場合でも、飽和現象を回避し正確な電流計測ができる。
【0048】
また、本発明の構成は、基本構成(積分器と高域通過フィルタ)に高域通過フィルタの入出力信号の差分値を積分器にフィードバックする機能を追加するだけで実現できるので簡単な構成で飽和対策を実現できる。
【0049】
さらに、DC除去回路構成を単純化できるので、簡素でかつ安価な構成の空心コイルを検出部に持つ電流センサを構成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1に係る電流センサの構成を示す図である。
【図2】 実施の形態1の処理の流れを示す図である。
【図3】 この発明の実施の形態2に係る電流センサの要部の構成を示す図である。
【図4】 実施の形態2の一次電流位相と積分後の位相の関係を示す図である。
【図5】 この発明の実施の形態3に係る電流センサの要部の構成を示す図である。
【図6】 実施の形態3の処理の流れを示す図である。
【符号の説明】
1 空心コイル、 2 A/D変換器、
3 高域通過フィルタ、 4 積分器、
5 差分検出手段、 6 係数倍手段、
7 加算手段、 8 選択処理手段、
9 ダウンサンプリング手段、 10 台形積分器、
20 デジタル処理部。
Claims (3)
- 測定対象電流を検出する空心コイル、該空心コイルの出力信号を量子化するA/D変換器、該A/D変換器の量子化データを積分する積分器、該積分器の出力データの高域周波数成分のみを通過させ、測定対象電流に比例した電気量を出力する高域通過フィルタ、該高域通過フィルタの入力信号と出力信号から、両信号の差分値を取り出す差分検出手段、該差分検出手段で得られた上記差分値を一定係数倍する係数倍手段、及び該係数倍手段の出力を、上記積分器の入力側に加算する加算手段を備えた電流センサ。
- 請求項1に記載の電流センサにおいて、上記A/D変換器の後段に、上記A/D変換器によるオーバーサンプリングで量子化されたデータから希望するタイミングのデータのみを選択するか若しくは希望するタイミングのデータを計算する機能を有する選択処理手段と、該選択処理手段により選択されたデータのみを抽出し、上記オーバーサンプリングの周期から所望のサンプリング周期に変更するダウンサンプリング手段とを設け、上記選択処理手段及び上記ダウンサンプリング手段により、上記A/D変換器でオーバーサンプリングしたサンプリング結果に対して一定量遅延させてダウンサンプリングすることにより、測定対象電流と上記積分器の出力との位相を一致させるようにしたことを特徴とする電流センサ。
- 請求項1記載の電流センサにおいて、上記積分器は台形積分器であることを特徴とする電流センサ。
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