JP4159719B2 - 電力用真空遮断器の接点材料の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、すぐれた遮断特性と再点弧抑制特性とを備えた真空バルブ等からなる電力用真空遮断器の接点材料の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
真空中でのアーク拡散性を利用して、高真空中で電流遮断を行わせる真空バルブの接点は、対向する固定、可動の2つの接点から構成されている。
【0003】
真空遮断器には、大電流断性能、耐電圧性能、耐溶着性能の基本的3要件の他に再点弧現象の発生の抑制が重要な要件となっている。
【0004】
しかしながら、これらの要件の中には相反するものがある関係上、単一の金属種によって総ての要件を満足させることは不可能である。この為実用されている多くの接点材料に於いては、不足する性能を相互に補るような2種以上の元素を組合せることによって、例えば大電流用、高耐圧用などのように特定の用途に合った接点材料の選択採用が行われ、それなりに優れた特性を持つ真空バルブが開発されているが、さらに強まる要求を充分満足する真空バルブは未だ得られていないのが実情である。
【0005】
例えば、大電流遮断性を目的とした接点として、Crを50wt%程度含有させたCu−Cr合金(特公昭45−35101号)が知られている。この合金は、Cr自体がCuと略同等の蒸気圧特性を保持しかつ強力なガスのゲッタ作用を示す等の効果で高電圧大電流断性を実現し、高耐圧特性と大容量遮断とを両立させ得る接点として多用されている。
【0006】
この合金は、活性度の高いCrを使用していることから、原料粉の選択、不純物の混入、雰囲気の管理などに十分に配慮しながら接点素材を製造(焼結工程など)したり、接点素材から接点片へと加工に配慮しながら接点製品としている。
【0007】
しかし再点弧の発生が引金となって遮断性能を低下させる場合が見られ、その改善が望まれている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
CuCr接点は、両者の高温度での蒸気圧特性が近似していることなどが主因となって、電流遮断後でも接点表面は比較的平滑な損傷特性を示し、安定した電気特性(安定した接触抵抗特性、優れた遮断特性、再点弧抑制など)を発揮している。しかし近年では一層の大電流遮断やより高電圧が印加される可能性のある回路への適応が日常的に行われる結果、接点として加工した新品時の表面状態、電流遮断後の接点表面の損傷状態などによっては、再点弧の誘発が見られるようになってきた。すなわち加工時の表面状態や、電流遮断によって異常的に損傷・消耗した接点表面では、次の定常電流の開閉時の接触抵抗の異常上昇や温度の異常上昇を引起こす原因となったり、耐電圧不良を示し、再点弧発生の一因となっている。
【0009】
研究によれば、CuCr合金の再点弧特性と遮断特性は、合金中のCr量の変動、Cr粒子の粒度分布、Cr粒子の偏析の程度、合金中に存在する空孔の程度などに依存することが判明した。また、CuCr合金の再点弧特性と遮断特性は、合金中のCu相の特に遮断前と遮断後との表面状態の変化状況にも依存することが判明した。
【0010】
しかしその最適化を進めているにも拘らず、上述した近年の適応状況では、まだばらつきが見られ、両特性を兼備した真空バルブが必要となって来た。
【0011】
この発明は、このような点に鑑み為されたもので、その目的は、CuCr合金の再点弧特性を安定化させ電流遮断特性の優れた電力用真空遮断器の接点材料の製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記発明の目的を達成する為に、請求項1に記載の本発明は、Cu又はCuを主成分とするCu合金で構成されるCu相より成る導電性成分と、Crより成る耐弧性成分とで構成された10〜90重量%Cuを含有するCu−Cr合金からなる電力用真空遮断器の接点材料の製造方法に於いて、先ず、前記Cu−Cr合金をCu相の持つ融解温度の直下温度の1030℃〜1080℃に加熱し、これを常温にまで冷却したときの、前記Cu−Cr合金中のCr粒子のマイクロビッカース硬さ値Hrを求めておき、次いで、粒径が0.1〜150μmのCr粉と粒径が44〜62μmのCu粉とを所定比率で混合して所定値で加圧後、所定温度で焼結、若しくは所定量の前記Cr粉を所定値で加圧し、800〜1400℃で焼結後、1100〜1400℃でCu塊を溶浸し、常温にまで所定速度で冷却したときの、前記Cu−Cr合金中のCr粒子のマイクロビッカース硬さ値をHsとしたとき、[Hs/Hr]比が1.0〜1.6の範囲になるように、前記加圧時の圧力、前記焼結時の温度および前記冷却時の速度の1つ以上を調整したことを特徴とする電力用真空遮断器の接点材料の製造方法である。
【0013】
ここで、上記接点材料製造時(焼結工程後若しくは焼結・溶浸工程後)のCr粒子の硬度値Hsは、原料Crの内容や焼結、溶浸時に選択した熱処理条件や接点材料加工時の残存歪みの程度などが互いに関連し合って決定され、例えばHsのビッカース硬さは200近傍の値を示す。
【0014】
ところで、この接点材料を真空バルブとして組み込み実際に稼働させると、定常電流開閉時や事故電流遮断時にアーク熱を受け、接点面は次第に変化(軟化)し最後には一定の硬度値HBを示す様になり、その間に最初のビッカース硬さ200近傍の硬度値Hsから大きく低下する。実際に真空バルブを稼働させた後最後に一定となった時の硬度値HBと、上記Cu相の融解温度の直下温度T1に加熱した後、常温にまで冷却した時のCr粒子の硬度値Hrとを対比すると、両者(HB、Hr)はほぼ近似の硬度値を示していることが判った。
【0015】
ところでHBの測定には真空バルブを製造すること、実際に電流の遮断や開閉の作業を要することなどで経済的、時間的負担が大きく不利の為、HBとHrとがほぼ近似した値となる前記性質を利用して、HrによってHBを代用すること、すなわち測定の困難なHBに代わって、測定の容易なHrによって、定常電流開閉時や事故電流遮断時の接点面の軟化の状況をおきかえることが可能であり有益である。
【0016】
また上記接点材料製造時のCr粒子の硬度値Hsが大で、常温にまで冷却した時の硬度値Hrとの差が大きい程(すなわち[Hs/Hr]比が大)、再点弧の発生頻度が大の傾向になることも判った。[Hs/Hr]比として1.6を越えた接点を選択すると、Cu−Cr合金中のCr粒子とCu相との硬度の差が大となり、接点の機械的仕上げ加工に際し硬さの差によって安定した加工表面状態が得られず、目標とする低再点弧化に対して好ましくない。
【0018】
ここで、Cu相の持つ融解温度の直下温度T1より低い温度(l030℃より低い温度)で熱処理した時のCrの硬さ値と、電流遮断・開閉経過後のCrの硬さ値HBとが一致しない。その為、T1より低い温度で熱処理した時のCrの硬さ値を使用すると、[Hs/Hr]比と再点弧発生頻度との間の関係は、十分には対応が取れず製品の管理が出来なくなる。
【0026】
また、Cu−Cr合金中のCu相の量が10重量%未満では、電流遮断特性が大幅に低下する。Cu相の量が90重量%を越えると、1.6以下の[Hs/Hr]比を確保することが困難となり、再点弧発生頻度が増大する。
【0035】
また、請求項2に記載の本発明は、Cu又はCuを主成分とするCu合金で構成されるCu相より成る導電性成分と、Crより成る耐弧性成分とで構成された10〜90重量%Cuを含有するCu−Cr合金からなる電力用真空遮断器の接点材料の製造方法に於いて、先ず、前記Cu−Cr合金をCu相の持つ融解温度の直下温度の1030℃〜1080℃に加熱し、これを常温にまで冷却したときの、前記Cu−Cr合金中のCu相のマイクロビッカース硬さ値Hoを求めておき、次いで、粒径が0.1〜150μmのCr粉と粒径が44〜62μmのCu粉とを所定比率で混合して所定値で加圧後、所定温度で焼結、若しくは所定量の前記Cr粉を所定値で加圧し、800〜1400℃で焼結後、1100〜1400℃でCu塊を溶浸し、常温にまで所定速度で冷却したときの、前記Cu−Cr合金中のCu相のマイクロビッカース硬さ値をHmとしたとき、[Hm/Ho]比が1.0〜2.0の範囲になるように、前記加圧時の圧力、前記焼結時の温度および前記冷却時の速度の1つ以上を調整したことを特徴とする電力用真空遮断器の接点材料の製造方法である。
【0036】
ここで、上記接点材料製造時(焼結工程後若しくは焼結・溶浸工程後)のCu相の硬度値Hmは、焼結、溶浸時に選択した熱処理条件(例えば冷却速度など)や接点加工時の残存歪みの程度などが互いに関連し合って決定され、Hmのビッカース硬さは100近傍の値である。
【0037】
ところで、この接点材料を真空バルブとして組み込み実際に稼働させると、定常電流の開閉時や事故電流の遮断時のアーク熱により、接点面は次第に変化(軟化)し、最後には一定の硬度値Hbを示すようになり、その間に初期のビッカース硬さ100近傍の硬度値Hmから大きく変化(低下)する。実際に真空バルブを稼働させて最後に一定となった時の硬度値Hbと、上記Cu相の融解温度の直下温度T1に加熱した後、常温にまで冷却した時のCu相の硬度値Hoとを対比すると、両者(Hb、Ho)は、ほぼ近似の硬度値を示していることが判った。
【0038】
ところでHbの測定には,真空バルブを製造しなければならないこと、実際の電流の遮断や開閉作業をしなければならないことなどで経済的、時間的負担が大きく不利の為、HbとHoとがほぼ近似した値となる前記性質を利用して、HoによってHbを代用すること、すなわち測定の困難なHbに代わって、測定の容易なHoによって、定常電流開閉時や事故電流遮断時の接点面の軟化の状況をおきかえることが可能であり有益である。
【0039】
また上記接点材料の焼結・溶浸後のCu相の硬度値Hmが大で、常温にまで冷却した時のCu相の硬度値Hoとの差(すなわちHm/Ho]比)が大きい程、再点弧の発生頻度が大の傾向になることも判った。[Hm/Ho]比として2.0を越えた接点を選択すると、Cu−Cr合金中のCu相とCr粒子との硬度の差が大となり、接点の機械的仕上げ加工に際し硬さの差によって安定した加工表面状態が得られず、目標とする低再点弧化に対して好ましくない。
【0041】
ここで、Cu相の持つ融解温度の直下温度T1より低い温度(1030℃より低い温度)で熱処理した時のCu相の硬さ値と、電流遮断・開閉経過後のCu相の硬さ値Hbとが一致しない。その為、T1より低い温度で熱処理した時のCu相の硬さ値を使用すると、[Hm/Ho]比と再点弧発生頻度との間の関係は、十分には対応が取れず製品の品質管理が出来なくなる。
【0049】
また、Cu−Cr合金中のCu相の量が10重量%未満では、電流遮断特性が大幅に低下する。Cu相の量が90重量%を越えると、接点表面の消耗が大となり再点弧発生頻度が増大する。
【0058】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0059】
Cu−Cr接点の材料状態と再点弧発生について、発明者らの観察では、遮断前後の材料特性と、再点弧のバラツキ発生との間の関連性について、以下の様な知見を得た。
▲1▼Cu−Cr接点は、研磨、研削や切削手段によって仕上げ加工するのが一般である。しかしCu−Crの諸内容(製造条件や加工条件など)を一定としても、なお再点弧の発生にバラツキが見られる。発明者らの観察の結果、接点表面にはCr粒子の脱落、Cu相部分の脱落、流れ(CuがCr粒子上にまでかぶる)や剥離、Cr粒子端部の欠け、引っかき状の傷など種々存在していた。その一因として接点面上の特にミクロ領域での加工性の差異、すなわち再点弧発生のバラツキとミクロ領域での硬度の均一度の違いとの間に相関性を認めた。この傾向は、接点素材の製造ロット間で、および1枚の接点のミクロ領域中でも観察された。
▲2▼更に、定常電流開閉動作や事故電流遮断動作の経過によって、次第に再点弧発生頻度は、ほぼ一定値に安定してゆく場合が認められた。この状況はアーク熱を受け接点面が次第に変化(軟化)し最後には一定の硬度値となる現象を示していると考えられる。
【0060】
そこで、実際の真空バルブに対して、事故電流遮断動作を多数回与えてほぼ一定値となった接点のCr粒子の硬度値HB、及びCu相の硬度値Hbを測定した。その接点のCu相部分の融解温度の直下温度を選択し、その温度で十分加熱した後、常温にまで冷却した時の、同接点中のCr粒子の硬度値Hr及びCu相の硬度値Hoとそれぞれ対比すると、両者は、それぞれ、ほぼ近似の値(HB=Hr、Hb=Ho)を示していることが判った。
▲3▼更に、Cr粒子の硬度値については、焼結工程後若しくは焼結・溶浸工程後の、Cu−Cr合金中のCr粒子の硬度値(マイクロビッカース硬さ値)をHsとして、Cu−Cr合金中のCu相の融解温度の直下温度に加熱し、これを常温にまで冷却した時の、Cu−Cr合金中のCr粒子の硬度値(マイクロビッカース硬さ値)をHrとした時、Hsが大で、Hrとの差が大きい程(すなわち[Hs/Hr]比が大の程)、再点弧の発生頻度が大の傾向にあることを認めた。[Hs/Hr]比として1.6を越えた接点を選択すると、Cu−Cr合金中のCr粒子とCu相との硬度の差が大となり、接点の機械的仕上げ加工の際に好ましい加工表面状態が得られず、目標とする低再点弧化に対して好ましくない。これに対して、[Hs/Hr]比として1.6以下好ましくは1.3以下の接点を選択すると、Cr粒子とCu相との硬度の差が小となり、接点の機械的仕上げ加工に際し、好ましい加工表面状態が得られ、常に一定の安定した表面状態を得て、アークの停滞、集中が低減化される結果、接点面の局部的異常蒸発現象の阻止や表面荒れの軽減化などによって、低再点弧化の利益と共に遮断特性の向上に寄与する。
【0061】
また、Cu相の硬度値についても、焼結工程後若しくは焼結・溶浸工程直後の、Cu−Cr合金中のCu相の硬度値(マイクロビッカース硬さ値)をHmとして、Cu−Cr合金中のCu相の融解温度の直下温度に加熱し、これを常温にまで冷却した時の、Cu−Cr合金中のCu相の硬度値(マイクロビッカース硬さ値)をHoとした時、Hmが大で、Hoとの差が大きい程(すなわち[Hm/Ho]比が大の程)、再点弧の発生頻度が大の傾向にあることを認めた。[Hm/Ho]比として2.0を越えた接点を選択すると、Cr粒子とCu相との硬度の差が大となり、接点の機械的仕上げ加工の際に好ましい加工表面状態が得られず、目標とする低再点弧化に対して好ましくない。これに対して、[Hm/Ho]比として2.0以下好ましくは1.3以下の接点を選択すると、Cr粒子とCu相との硬度の差が小となり、接点の機械的仕上げ加工に際し、好ましい加工表面状態が得られ、常に一定の安定した表面状態を得て、アークの停滞、集中が低減化される結果、接点面のCu相部分の局部的な異常蒸発現象を阻止、表面荒れの軽減化などによって、低再点弧化の利益と共に遮断特性の向上に寄与する。
▲4▼このような接点に外部磁界(例えば縦磁界)を与えると、遮断により発生したアークは、接点面上に一様に拡がり移動拡散し、電流遮断特性を向上させることが出来る。観察によれば、一定値以上の電流値を遮断すると、アークは予測出来ない一点もしくは複数点の場所で停滞する傾向を示すが、〔Hs/Hr]比が1.6以下の接点の方が、1.6を越えた接点よりもその程度は低く優れている傾向にあり、また[Hm/Ho]比が2.0以下の接点の方が、2.0を越えた接点よりもその程度は低く優れている傾向にある。最終的には接点の一部分を異常融解させ遮断限界に至る。また異常融解によって瞬時的爆発的な蒸発によって発生した金属蒸気は、開極過程にあった真空遮断器の絶縁回復性を著しく阻害し、遮断限界の一層の劣化を招く。さらに異常融解は、巨大な融滴を作り接点面の荒れを招き耐電圧特性の低下、再点弧発生率の増加、材料の異常な消耗をも招く。これらの現象の一因となるアークが、接点面上のどこで停滞するかは全く予測出来ない以上、発生したアークが停滞させることなく移動拡散できるような表面条件と移動拡散を促進させる手段とを接点に与えることが望ましい。本発明では、その望ましい条件として、Cu−Cr合金中のCr粒子に関する[Hs/Hr]比、またはCu−Cr合金中のCu相に関する[Hm/Ho]比が重要となる。
【0062】
[1][Hs/Hr]比を調整する実施例
上述のように、CuCr合金の接点特性の安定化には、合金中のCr量の変動、Cr粒子の粒度、粒度分布、Crの偏析の程度、合金中に存在する空孔の程度などに依存することを認めたが、特に再点弧特性のより一層の安定化には、上記に加えてCuCr合金中のCr粒子の挙動が極めて重要であることが判った。すなわち真空バルブの再点弧の発生頻度は、遮断前後の合金中のCrの硬度の変化について注目する必要があることが判った。
【0063】
そこで、まずCu−Cr合金中のCr粒子に関する[Hs/Hr]比を調整して接点材料を製造する実施例及び比較例について説明する。なお、実施例及び比較例の試作の条件を図1及び図2に、またこれらの実施例及び比較例の評価結果を図3及び図4に示す。
【0064】
(遮断特性の評価)
表面粗さを5μmに仕上げたフラット接点と、同じ表面粗さを持つ曲率半径100Rの凸状接点とを対向させ、両接点を、開閉機構を持つ真空度10-3Pa.以下に排気した着脱可能な真空遮断実験装置に取り付け、荷重40kg、7.2kV−20kA〜31.5kAで投入・遮断を10回操り返し、溶着や再点弧の発生が軽微の時を「合格」とし、投入・遮断を10回繰り返し、溶着や再点弧の発生多発の時を「不合格」とした。
【0065】
(再点弧特性の評価)
6kV×500Aの回路を1000回遮断させた時の再点弧発生頻度を6台の真空バルブについて測定した。発生率(×10-3(%))が0.3以下を評価S、0.3〜1の範囲を評価A、1〜3の範囲を評価B、3〜10の範囲を評価C、10〜100の範囲を評価Y、100以上を評価Zとした。
【0066】
(硬さの測定)
Cu相部分、Cr粒子を個別にマイクロビッカース硬度計を用いて荷重10〜25gr.にて測定した。
【0067】
([Hs/Hr]比の調整)
接点は固相焼結法、固相・溶浸法のいずれでも製造は可能であるが、ここではCrスケルトンを製造し、その空隙にCuを溶浸させる方法で製造した例について示す。粒子直径が44〜62μmの範囲にあるCu粉(全Cu粉中に95〜99%占める)を用意した。粒子直径が0.1〜150μmの範囲にあるCr粉(全Cr粉中に95〜99%占める)の中から、これと近似した粒子直径を持つCuを用意した。
【0068】
焼結工程後若しくは焼結・溶浸工程後の、前記Cu−Cr合金中のCr粒子の硬度値(マイクロビッカース硬さ値)をHs、該Cu−Cr合金中のCu相の持つ融解温度の直下温度に加熱し、これを常温にまで冷却した時の、Cu−Cr合金中のCr粒子の硬度値(マイクロビッカース硬さ値)をHrとした時の[Hs/Hr]比は、次のようにして調整した。
▲1▼Cr粉を成形する時にCr粉に与える加圧力を、0〜8トン/cm2(Crを容器にいれそのまま焼結した時を加圧力0とする)の範囲で調整する。例えば同比率を大とする時には、高加圧力値を選択する。
▲2▼Crスケルトンを製造する時の焼結温度を、800〜1400℃の範囲で調整する。例えば同比率を大とする時には、この温度範囲の中から低めの温度を選択する。
▲3▼Crスケルトン中にCuを溶浸する時の温度を、1100〜1400℃の範囲で調整する。例えば同比率を大とする時には、溶浸温度は低目を選択する。
▲4▼溶浸後の常温にまで冷却する時の冷却速度を、0.1〜10℃/分の範囲に調整する。例えば同比率を大とする時には、小さい冷却速度を選択する。
▲5▼焼結、焼結・溶浸後の接点に対して、再加熱処理を追加し、その温度を、500〜1070℃の範囲で調整する。例えば同比率を大とする時には、例えば低めの650〜750℃での再加熱処理温度を選択する。
▲6▼焼結、焼結・溶浸後の接点に対して、再加圧処理を追加し、再加圧力を4〜10トン/cm2の範囲で調整する。例えば同比率を大とする時には、再加圧処理前の相対密度が大となるよう、高めの再加圧力を選択する。
▲7▼[Hs/Hr]比を更に微調整する際には、Cu相に対してはCr,Ti,V,B,Nb,Taより選ばれた1つを適宜量添加する。
▲8▼Cr粒子に対してTi,V,Nb,Taより選ばれた1つ、または第1の補助成分としてのAl,Siの少なくとも一方を適宜量添加することによって、前記比率の微調整は可能である。
【0069】
これら▲1▼▲2▼▲3▼▲4▼▲5▼▲6▼▲7▼▲8▼などを適宜組合わせることによって[Hs/Hr]比を調整した接点を得た。
【0070】
(実施例1〜3、比較例1〜2)
上述のように用意したCu粉とCr粉とを用いて、固相・溶浸法によって所定の[Hs/Hr]比を有する75%Cu−残部Cr合金を製造した(実施例1〜3、比較例1〜2)。[Hs/Hr]比を調整する為に、接点製造に際しては上記▲1▼〜▲8▼の適宜選択又は組み合わせによって、1.0〜1.6(実施例1〜3)、1.9〜2.3(比較例1〜2)の[Hs/Hr]比を有する接点を選出した。
【0071】
これらの接点を評価用真空パルプに搭載し、前記所定条件で再点弧発生頻度(×10-3%で示した数値)と遮断特性とを測定した。[Hs/Hr]比=1.0の場合では、6台のバルブを評価したところ、再点弧発生頻度は、評価(S〜A)を示し良好な特性を発揮した。遮断特性は、31.5kAの10回遮断に成功し遮断特性も「合格」である。評価前の接点加工表面の観察によれば、Cr粒子部分、Cu相部分の区別なくほぼ均一に切削研磨された状況が見られ、極めて安定した接点表面状態を示し、Cr粒子の脱落、研磨傷などによる表面荒れは見られていない。評価後の接点の最表面層の顕微鏡的観察でも、最表面層領域からのCr粒子の脱落もなかった(実施例1)。
【0072】
また、[Hs/Hr]比=1.3の場合では、再点弧発生頻度は、評価(A〜B)を示し良好な特性を発揮した。遮断特性は、24kAの10回遮断に成功し遮断特性も「合格」である。Cr粒子部分、Cu相部分の区別なくほぼ均一に切削研磨された状況が見られ、極めて安定した接点表面の加工状態を示し、Cr粒子の脱落、研磨傷などによる表面荒れは見られていない(実施例2)。
【0073】
更に、[Hs/Hr]比=1.6の場合でも、再点弧発生頻度は、評価(C)を示し良好な特性を発揮した。遮断特性は、20kAの10回遮断に成功し遮断特性も「合格」である。Cr粒子部分、Cu相部分の区別なくほぼ均一に切削研磨された状況が見られ、Cr粒子の脱落、研磨傷などによる表面荒れはなく、極めて安定した接点表面状態を示している(実施例3)。
【0074】
これに対して、[Hs/Hr]比=1.9の場合では、再点弧発生頻度は、評価(C〜Y)を示し再点弧特性に大幅な劣化が見られると共に大きなバラツキも示し好ましくない。遮断特性も、20kAの遮断テストに於いて多数の遮断不能を示し「不合格」である。遮断前の加工表面にはCr粒子の脱落跡が観察されている。遮断後の接点面には局所的な荒れが存在している(比較例1)。
【0075】
また、[Hs/Hr]比=2.3の場合では、再点弧発生頻度は、評価(Z)を示し再点弧特性に大幅な劣化が見られる。遮断特性も、20kAの遮断テストに於いて多数の遮断不能を示し「不合格」である。加工面の静耐圧値に大きなバラツキが見られている(比較例2)。
【0076】
以上から、再点弧特性と遮断特性との両立に対して、[Hs/Hr]比の管理が極めて重要であると共に、同比率を1.0〜1.6の範囲を選択する時に目的を達する。
【0077】
(実施例4〜6、比較例3〜4)
前記実施例では、Cu−Cr合金中のCuの量を75%に一定とした時の、[Hs/Hr]比を変動させた場合の再点弧特性と遮断特性に及ぼす効果を示したが、本発明技術はCu量75%に限ることなく、Cuの量が90〜10%(実施例4〜6)に於いても効果を発揮する。
【0078】
すなわち、[Hs/Hr]比=1.4に一定とした時、Cu量が90%の場合では、再点弧発生頻度は、評価(C)を示し良好な特性を発揮した。遮断特性も、20kAの10回遮断に成功し遮断特性も「合格」である(実施例4)。
【0079】
Cu量が50%の場合でも、再点弧発生頻度は、評価(B〜C)を示し良好な特性を発揮した。遮断特性も、24kAの10回遮断に成功し遮断特性も「合格」である(実施例5)。
【0080】
Cu量が10%の場合でも、再点弧発生頻度は、評価(A〜B)を示し良好な特性を発揮した。遮断特性も、20kAの10回遮断に成功し遮断特性も「合格」である(実施例6)。
【0081】
これに対して、Cu量が95%の場合では、再点弧発生頻度は、評価(C〜Y)を示し、再点弧特性に大福な劣化が見られると共に大きなバラツキも示し好ましくない。但し遮断特性は、20kAの遮断に成功し遮断特性では「合格」であったが、総合的には目的達成に対して好ましくない(比較例3)。
【0082】
一方、Cu量が5%の場合では、再点弧発生頻度は、評価(Y〜Z)を示し再点弧特性に大福な劣化が見られる共に大きなバラツキも示し好ましくない。遮断特性も、20kAの遮断テストに於いて多数の遮断不能を示し「不合格」である。遮断特性が著しく低下していると共に遮断テスト中の温度上昇特性、遮断テスト後の接触抵抗特性共に低下が顕著に示された(比較例4)。
【0083】
(実施例7〜12)
前記実施例1〜6では、Cu−Cr合金中のCu相中には、0.01%のCr成分を含有したCuを使用した例についてその効果を示したが、本発明技術はCu相中の成分は、0.01%のCrに限ることなく効果を発揮する。
【0084】
すなわち、Cu−Cr合金中のCuの量を75%に一定とした時、Cu相中に、0.2%のCr成分を含有した75%Cu接点では、再点弧発生頻度は、評価(S〜A)を示し極めて良好な特性を発揮した。遮断特性も、31.5kAの10回遮断に成功し遮断特性も「合格」である(実施例7)。
【0085】
Cu相中に、0.5%のTiを含有させた接点では、再点弧発生頻度は、評価(B〜C)を示し良好な特性を発揮した。遮断特性も、20kAの10回遮断に成功し遮断特性も「合格」である(実施例8)。
【0086】
Cu相中に、1.0%のVを含有させた接点では、再点弧発生頻度は、評価(B〜C)を示し良好な特性を発揮した。遮断特性も、20kAの10回遮断に成功し遮断特性も「合格」である(実施例9)。
【0087】
Cu相中に、1.0%のBを含有させた接点では、再点弧発生頻度は、評価(B〜C)を示し良好な特性を発揮した。遮断特性も、20kAの10回遮断に成功し遮断特性も「合格」である(実施例10)。
【0088】
Cu相中に、10%のNbを含有させた接点では、再点弧発生頻度は、評価(B)を示し良好な特性を発揮した。遮断特性も、24kAの10回遮断に成功し遮断特性も「合格」である(実施例10)。
【0089】
Cu相中に、20%のTaを含有させた接点では、再点弧発生頻度は、評価(B)を示し良好な特性を発揮した。遮断特性も、24kAの10回遮断に成功し遮断特性も「合格」である(実施例12)。
【0090】
(実施例13〜16)
Cu−Cr合金中のCr粒子中の成分として、Ti,V,Nb,Taを含有したCrを使用した場合には、再点弧特性、遮断特性の安定化に有益である。
【0091】
すなわち、Cr粒子中1.0%のTiを含有させた接点では、再点弧発生頻度は、評価(S〜A)を示し極めて良好な特性を発揮した。遮断特性も、31.5kAの10回遮断に成功し遮断特性も「合格」である(実施例13)。
【0092】
Cr粒子中2.0%のVを含有させた接点では、再点弧発生頻度は、評価(B)を示し良好な特性を発揮した。遮断特性も、24kAの10回遮断に成功し遮断特性も「合格」である(実施例14)。
【0093】
Cr粒子中25%のNbを含有させた接点では、再点弧発生頻度は、評価(A〜B)を示し良好な特性を発揮した。遮断特性も、24kAの10回遮断に成功し遮断特性も「合格」である(実施例15)。
【0094】
Cr粒子中50%のTaを含有させた接点では、再点弧発生頻度は、評価(B)を示し良好な特性を発揮した。遮断特性も、24kAの10回遮断に成功し遮断特性も「合格」である(実施例16)。
【0095】
(実施例17〜18、比較例5)
前記実施例1〜16では、0.1〜150μmの平均粒子直径を有するCr粒子が全Cr粒子の95%(容積%)以上を占める例についてその効果を示したが、本発明技術では全Cr粒子中に占める0.1〜150μmの平均粒子直径を有するCr粒子は95%以上の場合に限ることなく効果を発揮する。
【0096】
すなわち、全Cr粒子中に占める平均粒子直径0.1〜150μmのCrの比率が85%(容積%)のCrを使用した接点では、再点弧発生頻度は、評価(B)を示し良好な特性を発揮した。遮断特性も、24kAの10回遮断に成功し遮断特性も「合格」である(実施例17)。
【0097】
全Cr粒子中に占める平均粒子直径0.1〜150μmのCrの比率が75%(容積%)のCrを使用した接点では、再点弧発生頻度は、評価(B〜C)を示し良好な特性を発揮した。遮断特性も、20kAの10回遮断に成功し遮断特性も「合格」である(実施例18)。
【0098】
これに対して、全Cr粒子中に占める平均粒子直径0.1〜150μmのCrの比率必50%(容積%)のCrを使用した接点では、再点弧発生頻度は、評価(B〜Z)を示し再点弧特性に大幅な劣化が見られると共に大きなバラツキも示し好ましくない。遮断特性も、20kAの遮断に成功と20kAの遮断に失敗とが存在しバラツキが大で遮断特性は「不合格」である(比較例5)。
【0099】
(実施例19〜23、比較例6)
Cu−Cr合金中のCr粒子中の第1の補助成分として、1.0%以下のAl,Siを含有したCrを使用した場合には、再点弧特性、遮断特性の安定化に有益である。
【0100】
すなわち、Cr粒子中に1.0%のAlを含有させた接点では、再点弧発生頻度は、評価(A〜B)を示し良好な特性を発揮した。遮断特性も、24kAの10回遮断に成功し遮断特性も「合格」である(実施例19)。
【0101】
Cr粒子中に0.1%のAlを含有させた接点では、再点弧発生頻度は、評価(S〜A)を示し良好な特性を発揮した。遮断特性も、31.5kAの10回遮断に成功し遮断特性も「合格」である(実施例20)。
【0102】
Cr粒子中に0.01%のAlを含有させた接点では、再点弧発生頻度は、評価(S〜A)を示し極めて良好な特性を発揮した。遮断特性も、31.5kAの10回遮断に成功し遮断特性も「合格」である(実施例21)。
【0103】
Cr粒子中に0.001%のAlを含有させた接点では、再点弧発生頻度は、評価(S〜A)を示し極めて良好な特性を発揮した。遮断特性も、31.5kAの10回遮断に成功し遮断特性も「合格」である(実施例22)。
【0104】
Cr粒子中に0.01%のSiを含有させた接点では、再点弧発生頻度は、評価(S〜A)を示し極めて良好な特性を発揮した。遮断特性も、31.5kAの10回遮断に成功し遮断特性も「合格」である(実施例23)。
【0105】
これに対して、Cr粒子中に1.5%のAlを含有させた接点では、再点弧発生頻度は、評価(Y〜Z)を示し好ましくない。遮断特性も、31.5kAの遮断テストに於いて10回中8回再点弧発生したバルブがあり「不合格」である(比較例6)。
【0106】
(実施例24〜29、比較例7〜8)
第2の補助成分として、1.0%以下のBi,Sbを含有したCu−Cr合金を使用した場合には、再点弧特性、遮断特性の安定化に有益である。また他の第2の補助成分として、5.0%以下のTe,Se,Pbを含有したCu−Cr合金を使用した場合にも、再点弧特性、遮断特性の安定化に有益である。
【0107】
すなわち、Cu−Cr合金中の第2の補助成分として、0.1%のBiを含有させた接点では、再点弧発生頻度は、評価(B)を示し良好な特性を発揮した。遮断特性も、24kAの10回遮断に成功し遮断特性も「合格」である(実施例24)。
【0108】
Cu−Cr合金中の第2の補助成分として1.0%のBiを含有させた接点では、再点弧発生頻度は、評価(B〜C)を示し良好な特性を発揮した。遮断特性も、20kAの10回遮断に成功し遮断特性も「合格」である(実施例25)。
【0109】
Cu−Cr合金中の第2の補助成分として、0.2%のSbを含有させた接点では、再点弧発生頻度は、評価(B〜C)を示し良好な特性を発揮した。遮断特性も、20kAの10回遮断に成功し遮断特性も「合格」である(実施例26)。
【0110】
Cu−Cr合金中の第2の補助成分として、2.5%のTeを含有させた接点では、再点弧発生頻度は、評価(B〜C)を示し良好な特性を発揮した。遮断特性も、20kAの10回遮断に成功し遮断特性も「合格」である(実施例27)。
【0111】
Cu−Cr合金中の第2の補助成分として、5.0%のTeを含有させた接点では、再点弧発生頻度は、評価(C)を示し良好な特性を発揮した。遮断特性も、20kAの10回遮断に成功し遮断特性も「合格」である(実施例28)。
【0112】
Cu−Cr合金中の第2の補助成分として、2.5%のSeを含有させた接点では、再点弧発生頻度は、評価(B〜C)を示し良好な特性を発揮した。遮断特性も、20kAの10回遮断に成功し遮断特性も「合格」である(実施例29)。
【0113】
また、第2の補助成分として、0.2%のPbを含有させた接点でも同等の再点弧発生頻度および遮断特性を発揮し「合格」である。
【0114】
Cu−Cr合金中の第2の補助成分として、3.0%のBiを含有させた接点では、再点弧発生頻度は、評価(Y〜Z)を示し再点弧特性に大幅な劣化が見られ好ましくない。遮断特性も、20kA以下の遮断で再点弧が多発し遮断特性は「不合格」である(比較例7)。遮断テスト後の接点表面には著しい荒れが見られる。接触抵抗にもバラツキが見られた。
【0115】
Cu−Cr合金中の第2の補助成分として、8.0%のTeを含有させた接点では、再点弧発生頻度は、評価(Y〜Z)を示し再点弧特性に大福な劣化が見られると共に大きなバラツキも示し好ましくない。遮断特性も、20kAの遮断に成功と20kAの遮断に失敗とが存在しバラツキが大で遮断特性は「不合格」である(比較例8)。遮断テスト後の接点表面には著しい荒れが見られる。接触抵抗にもバラツキが見られた。
【0116】
(その他の実施例)
焼結工程後若しくは焼結・溶浸工程後のCu−Crを、非酸化性雰囲気中で、Cu−Cr合金中のCu相の融解温度以下の温度またはCu相の融解温度以上の温度で加熱し、これを常温にまで冷却することとし、この場合も焼結工程後若しくは焼結・溶浸工程後の、Cu−Cr合金中のCr粒子の硬度値(マイクロビッカース硬さ値)をHs、非酸化性雰囲気中で、Cu−Cr合金中のCu相の融解温度以下の温度またはCu相の融解温度以上の温度で加熱し、これを常温にまで冷却した時の、Cu−Cr合金中のCr粒子の硬度値(マイクロビッカース硬さ値)をHrとした時の[Hs/Hr]比を、1.0〜1.6の範囲に調整することとしてもよい。
【0117】
このように、Cu−Cr接点材料の製造雰囲気として、非酸化性雰囲気を選択することにより、特に再点弧発生頻度の低減化を図ることができる。
【0118】
[2][Hm/Ho]比を調整する実施例
また、上述のように、CuCr合金の接点特性の安定化には、合金中のCu相の状態(表面荒れ、空孔の程度)、Cu相の大きさ(粒度、粒度分布析の程度)などに依存することを認めたが、特に再点弧特性のより一層の安定化には、上記に加えてCu−Cr合金中のCu相の挙動が極めて重要であることが判った。すなわち真空バルブの再点弧の発生頻度は、遮断前後の合金中のCuの硬度の変化について注目する必要があることが判った。
【0119】
そこで、Cu−Cr合金中のCu相に関する[Hm/Ho]比を調整して接点材料を製造する実施例及び比較例について説明する。なお、実施例及び比較例の試作の条件を図5及び図6に、またこれらの実施例及び比較例の評価結果を図7及び図8に示す。
【0120】
(遮断特性の評価)
この[Hm/Ho]比を調整する実施例の場合も、[Hs/Hr]比を調整する実施例の場合と同様に、表面粗さを5μmに仕上げたフラット接点と、同じ表面粗さを持つ曲率半径100Rの凸状接点とを対向させ、両接点を開閉機構を持つ真空度10-3Pa.以下に排気した着脱可能な真空遮断実験装置に取り付け、荷重40kg、7.2kV−20kA〜31.5kAで投入・遮断を10回繰り返し、溶着や再点弧の発生が軽徴の時を「合格」とした。投入・遮断を10回繰り返し、再点弧や溶着の発生多発の時を「不合格」とした。
【0121】
(再点弧特性の評価)
6kV×500Aの回路を1000回遮断させた時の再点弧発生頻度を6台の真空バルブについて測定した。発生率(×10-3(%))が0.3以下を評価S、0.3から〜1の範囲を評価A、1〜3の範囲を評価B、3〜10の範囲を評価C、10〜100の範囲を評価Y、100以上を評価Zとした。
【0122】
(硬さの測定)
Cu相部分を、マイクロビッカース硬度計を用いて荷重10〜25gr.にて測定した。
【0123】
([Hm/Ho]の調整)
接点は固相焼結法、焼結・溶浸法のいずれでも製造は可能である。焼結工程後若しくは焼結・溶浸工程後のCu−Cr合金中のCu相の硬度値(マイクロビッカース硬さ値)をHm、Cu−Cr合金中のCu相の持つ融解温度の直下温度に加熱し、これを常温にまで冷却した時の、Cu−Cr合金中のCu相の硬度値(マイクロビッカース硬さ値)をHoとした時の所定の[Hm/Ho]比を持つ接点は、次のようにして調整した。
(1)前者の固相焼結法を採用した製造では、粒子直径が0.1〜150μmの範囲にあるCr粉(全Cr粉中に95〜99%占める)を用意し、これと近似した粒子直径を持つCuとして、44〜62μmの範囲にあるCu粉(全Cu粉中に95〜99%占める)を用意する。所定比率のCuとCrとを混合、成型した後、例えば1030℃で固相焼結してCu−Cr合金を製造する。なおCu−Cr合金中のCu量が5〜95%の総ての範囲の合金に対して採用可能であるが、主としてCu量が60〜95%、5〜45%の範囲の合金に対して適用した。
【0124】
A)Cu−Cr混合粉を成形する時に混合粉に与える加圧力を、0〜8トン/cm2(Crを容器に入れそのまま焼結した時を加圧力0とする)の範囲で[Hm/Ho]比を小さく調整する。
【0125】
B)固相焼結後の常温にまで冷却する時の冷却速度を、0.1〜10℃/分の範囲に調整する。例えば冷却速度をより小さく選択すると、Cu相の硬度値Hmは小となり、[Hm/Ho]比率を小とするのに有益である。
【0126】
C)固相焼結後の接点に対して、再加圧力が4〜10トン/cm2の範囲の再加圧処理を追加し、[Hm/Ho]比を小さく調整する。
【0127】
D)[Hm/Ho]比を更に微調整する際には、Cu相に対してはCr,Ti,V,B,Nb,Taより選ばれた1つを適宜量添加することによって、または第1の補助成分としてのAl,Siの少なくとも一方を適宜量添加することによって、前記比率の微調整は可能である。これらA)B)C)D)などを適宜組合わせることによって[Hm/Ho]比を調整した接点を得た。
(2)後者の溶浸法を採用した製造では、粒子直径が0.1〜150μmの範囲にあるCr粉(全Cr粉中に95〜99%占める)を用意する。溶浸用のCu塊を用意する。このCrを用いて例えば1200℃でCrスケルトンを製造した後、その空隙にCuを溶浸させCu−Cr合金を製造する。なおCu−Cr合金中のCu量が45〜60%の範囲の合金に対して適用した。
▲1▼Cr粉を成形する時にCr粉に与える加圧力を、0〜8トン/cm2(Crを容器にいれそのまま焼結した時を加圧力0とする)の範囲で調整する。例えば同比率を大とする時には、高加圧力値を選択する。
▲2▼Crスケルトン中にCuを溶浸する時の温度を、1100〜1400℃の範囲で調整する。
▲3▼溶浸後の常温にまで冷却する時の冷却速度を、0.1〜10℃/分の範囲に調整する。例えば冷却速度をより小さく選択すると、Cu相の硬度Hmは小となり、[Hm/Ho]比を小とするのに有益である。
▲4▼溶浸後の接点に対して、再加熱処理を追加し、その温度を、500〜1070℃の範囲、実質的には650〜750℃での再加熱処理温度を選択し、[Hm/Ho]比を小さく謂整する。
▲5▼溶浸後の接点に対して、再加圧力が4〜10トン/cm2の範囲の再加圧処理を追加し、[Hm/Ho]比を小さく調整する。
▲6▼[Hm/Ho]比を更に微調整する際には、Cu相に対してはCr,Ti,V,B,Nb,Taより選ばれた1つを適宜量添加することによって、または第1の補助成分としてのAl,Siの少なくとも一方を適宜量添加することによって、前記比率の微調整は可能である。これら▲1▼▲2▼▲3▼▲4▼▲5▼▲6▼などを適宜組合わせることによって[Hm/Ho]比を調整した接点を得た。
【0128】
(実施例30〜32、比較例9〜10)
上述のように用意したCu粉とCr粉とを用いて、固相焼結法によって所定の[Hm/Ho]比を有する75%Cu−残部Cr合金を製造した(実施例30〜32、比較例9〜10)。
【0129】
[Hm/Ho]比を調整する為に、接点製造に際しては上記A)B)C)D)の適宜選択又は組み合わせによって、1.0〜2.0(実施例30〜32)、2.6〜3.0(比較例9〜10)の[Hm/Ho]比を有する接点を選出した。
【0130】
これらの接点を評価用真空バルブに搭載し、前記所定条件で再点弧発生頻度(×10-3%で示した数値)と遮断特性とを測定した。[Hm/Ho]比=1.0の場合では、6台のバルブを評価したところ、再点弧発生頻度は、評価(S)を示し極めて良好な特性を発揮した。遮断特性も、24.kAの10回遮断に成功し遮断特性も「合格」である。評価前の接点加工表面の観察によれば、Cu相部分は完全に均一に切削研磨された状況が見られ、極めて安定した接点表面状態を示し、Cu相の脱落、研磨傷などによる表面荒れは見られていない。評価後の接点の最表面層の顕微鏡的観察でも、最表面層領域からのCu相の脱落はなかった(実施例30)。なお[Hm/Ho]比が1.0未満の合金でも特性的には同等の良好な性能を発揮する。
【0131】
また、[Hm/Ho]比=1.3とした場合では、再点弧発生頻度は、評価(A〜B)を示し良好な特性を発揮した。遮断特性も24kAの10回遮断に成功し「合格」である。Cu相部分はほぼ均一に切削研磨された状況が見られ、極めて安定した接点表面の加工状態を示し、Cu相の脱落、研磨傷などによる表面荒れは見られていない。評価後の接点の最表面層の顕微鏡的観察でも、最表面層領域からのCu相の脱落はなかった(実施例31)。
【0132】
更に、[Hm/Ho]比=2.0とした場合でも、再点弧発生頻度は、評価(C)を示し良好な特性を発揮した。遮断特性も20kAの10回遮断に成功し遮断特性も「合格」である。Cu相部分はほぼ均一に切削研磨された状況が見られ、Cu相の脱落、研磨傷などによる表面荒れはなく、極めて安定した接点表面状態を示している(実施例32)。
【0133】
これに対して、[Hm/Ho]比=2.6の場合では、再点弧発生頻度は、評価(Y〜Z)を示し再点弧特性に大幅な劣化が見られると共に大きなバラツキも示し好ましくない。遮断特性も、20kAの遮断テストに於いて多数の遮断不能を示し「不合格」である。遮断前の加工表面にはCu相の脱落跡が観察されている。遮断後の接点面には局所的な荒れが存在している(比較例9)。
【0134】
また、[Hm/Ho]比=3.0の場合でも、再点弧発生頻度は、評価(Z)を示し再点弧特性に大幅な劣化が見られる。遮断特性も、20kAの遮断テストに於いて多数の遮断不能を示し「不合格」である。加工面の静耐圧値に大きなバラツキが見られている(比較例10)。
【0135】
以上から、再点弧特性と遮断特性との両立に対して、[Hm/Ho]比の管理が極めて重要であると共に、[Hm/Ho]比を2.0以下の範囲を選択する時に目的を達する。
【0136】
(実施例33〜35、比較例11〜12)
前記実施例では、Cu−Cr合金中のCuの量を75%に一定とした時の、[Hm/Ho]比を変動させた場合の、[Hm/Ho]比が再点弧特性と遮断特性に及ぼす効果を示したが、本発明技術ではCu量は75%に限ることなく、Cuの量が90〜10%(実施例33〜35)に於いても効果を発揮する。
【0137】
すなわち、[Hm/Ho]比=1.2〜1.4に一定とした時,Cu量が90%の場合では、再点弧発生頻度は、評価(B〜C)を示し良好な特性を発揮した。遮断特性も、24kAの10回遮断に成功し遮断特性も「合格」である(実施例33)。最表面層の顕微鏡的観察では、加工面からのCu相の脱落や加工傷も無く、評価後の接点面からもCu相の脱落はなかった。
【0138】
Cu量が60%の場合でも、再点弧発生頻度は、評価(B)を示し良好な特性を発揮した。遮断特性も、20kAの10回遮断に成功し遮断特性も「合格」である(実施例34)。
【0139】
Cu量が10%の場合でも、再点弧発生頻度は、評価(A〜B)を示し良好な特性を発揮した。遮断特性も、20kAの10回遮断に成功し遮断特性も「合格」である(実施例35)。最表面層の顕微鏡的観察では、加工面からのCu相の脱落や加工傷も無く、評価後の接点面からのCu相の脱落もなかった。
【0140】
これに対して、Cu量が95%の場合では、再点弧発生頻度は、評価(C〜Y)を示し再点弧特性に大幅な劣化が見られると共に大幅なバラツキも示し好ましくない。但し遮断特性は、20kAの遮断に成功し遮断特性では「合格」であったが、一部に溶着の発生が見られ総合的には目的達成に対して好ましくない(比較例11)。
【0141】
一方、Cu量が5%の場合では、再点弧発生頻度は、評価(Y〜Z)を示し再点弧特性に大幅な劣化が見られる共に大福なバラツキも示し好ましくない。遮断特性も、20kAの遮断テストに於いて多数の遮断不能を示し「不合格」である。遮断特性の著しく低下していると共に遮断テスト中の温度上昇特性、遮断テスト後の接触抵抗特性の安定性に乏しい(比較例12)。最表面層の顕微鏡的観察では、加工面上には著しい加工傷が見られた。この加工傷が原因となって静耐圧値が低下している。また加工時の機械的衝撃によってCu相部分の一部に脱落が見られた。遮断評価後の接点面からもCu相の脱落が認められた。
【0142】
以上から、Cu−Cr合金中のCu相に関する[Hm/Ho]比を所定量に管理する本発明技術は、Cu−Cr合金中のCu相の量が90〜10%の時にその効果を発揮する。
【0143】
(実施例36〜41)
前記実施例30〜35では、Cu−Cr合金中のCu相中に存在する成分については、注目していなかったが、Cu−Cr合金中のCu相に関する[Hm/Ho]比を管理する本発明技術は、Cu相中への所定量のCr,Ti,B,V,Nb,Taを含有したCuを使用したCu(Cr,Ti,B,V,Nb,Taのいずれか1つ)−Cr合金に対しても、再点弧特性、遮断特性が安定化する。
【0144】
すなわち、Cu−Cr合金中のCuの量を75%に一定とした時、Cu相中に、0.1%のCr成分を含有した75%Cu接点では、再点弧発生頻度は、評価(A)を示し良好な特性を発揮した。遮断特性も、24.kAの10回遮断に成功し遮断特性も「合格」である(実施例36)。
【0145】
Cu相中に、0.3%のTiを含有させた接点では、再点弧発生頻度は、評価(A〜B)を示し良好な特性を発揮した。遮断特性も、20kAの10回遮断に成功し遮断特性も「合格」である(実施例37)。
【0146】
Cu相中に、0.5%のBを含有させた接点では、再点弧発生頻度は、評価(A〜B)を示し良好な特性を発揮した。遮断特性も、24kAの10回遮断に成功し遮断特性も「合格」である(実施例38)。
【0147】
Cu相中に、1.5%のVを含有させた接点では、再点弧発生頻度は、評価(B)を示し良好な特性を発揮した。遮断特性も、20kAの10回遮断に成功し遮断特性も「合格」である(実施例39)。
【0148】
Cu相中に、10%のNbを含有させた接点では、再点弧発生頻度は、評価(B〜C)を示し良好な特性を発揮した。遮断特性も、24kAの10回遮断に成功し遮断特性も「合格」である(実施例40)。
【0149】
Cu相中に、20%のTaを含有させた接点では、再点弧発生頻度は、評価(B〜C)を示し良好な特性を発揮した。遮断特性も、24kAの10回遮断に成功し遮断特性も「合格」である(実施例41)。
【0150】
実施例36〜41で示したように、Cu相中への所定量のCr,Ti,B,V,Nb,Taの添加は、Cu相の脱落を抑制し再点弧特性の安定化に寄与する。
【0151】
以上から、Cu−Cr合金中のCu相に関する[Hm/Ho]比を所定量に管理する本発明技術は、Cu相中に所定量のCr,Ti,B,V,Nb,Taのいずれか1つを含有したCuを採用したCu−Cr合金に対しても有効に発揮される。
【0152】
(実施例42〜45)
Cu−Cr合金中のCu相に関する[Hm/Ho]比を管理する本発明技術は、Cr粒子中に所定量のTi,V,Nb,Taを含有したCrを使用したCu−Cr(Ti,V,Nb,Taのいずれか1つ)合金に対しても、再点弧特性、遮断特性が安定化する。
【0153】
すなわち、[Hm/Ho]比を1.2〜1.4に一定とした上で、Cr粒子中に0.5%のTiを含有させた接点では、再点弧発生頻度は、評価(A〜B)を示し良好な特性を発揮した。遮断特性も、24.kAの10回遮断に成功し遮断特性も「合格」である(実施例42)。
【0154】
Cr粒子中に2.0%のVを含有させた接点では、再点弧発生頻度は、評価(B)を示し良好な特性を発揮した。遮断特性も、20kAの10回遮断に成功し遮断特性も「合格」である(実施例43)。
【0155】
Cr粒子中に25%のNbを含有させた接点では、再点弧発生頻度は、評価(B)を示し良好な特性を発揮した。遮断特性も、24kAの10回遮断に成功し遮断特性も「合格」である(実施例44)。
【0156】
Cr粒子中に50%のTaを含有させた接点では、再点弧発生頻度は、評価(B)を示し良好な特性を発揮した。遮断特性も、24kAの10回遮断に成功し遮断特性も「合格」である(実施例45)。
【0157】
Cr粒子中での所定量のTi,V,Nb,Taの存在効果は、Cu相とCr粒子との界面に作用し合金全体としての耐消耗性や耐電圧特性を改善し、[Hm/Ho]比を所定量に管理する本発明技術との相乗的効果によって、再点弧発生頻度のバラツキ幅を圧縮し接点特性の安定化に寄与している。
【0158】
以上から、Cu−Cr合金中のCu相に関する[Hm/Ho]比を所定量に管理する本発明技術は、Cr粒子中に所定量のTi,V,Nb,Taを含有したCrを採用したCu−Cr(Ti,V,Nb,Taのいずれか1つ)合金に対しても有効に発揮される。
【0159】
(実施例46〜47、比較例13)
前記実施例30〜45では、0.1〜150μmの平均粒子直径を有するCr粒子が、全Cr粒子の95%(容積%)以上(0.95〜0.99)を占める例についてその効果を示したが、本発明技術では、全Cr粒子中に占める0.1〜150μmの平均粒子直径を有するCr粒子は、95%(容積%)以上のCu−Cr合金の場合に限ることなく適応が可能である。
【0160】
すなわち、全Cr粒子中に占める平均粒子直径が、0.1〜150μmのCrの比率が85%(容積%)のCrを使用したCu−Cr接点では、再点弧発生頻度は、評価(B)を示し良好な特性を発揮した。遮断特性も、20kAの10回遮断に成功し遮断特性も「合格」である(実施例46)。
【0161】
全Cr粒子中に占める平均粒子直径が、0.1〜150μmのCrの比率が75%(容積%)のCrを使用した接点では、再点弧発生頻度は、評価(B〜C)を示し良好な特性を発揮した。遮断特性も、20kAの10回遮断に成功し遮断特性も「合格」である(実施例47)。
【0162】
これに対して、全Cr粒子中に占める平均粒子直径が、0.1〜150μmのCrの比率が50%(容積%)のCrを使用した接点では、再点弧発生頻度は、評価(C〜Z)を示し再点弧特性に大幅な劣化が見られると共に大幅なバラツキも示し好ましくない。遮断特性も、評価したバルブのうちの1本のみ20kAの遮断に成功しているが、他の5本の総てのバルブでは20kAの遮断不能多発し、バラツキが大で遮断特性は「不合格」である(比較例13)。
【0163】
以上から、Cu−Cr合金中のCu相に関する[Hm/Ho]比を所定量に管理する本発明技術は、全Cr粒子中に占める平均粒子直径の比率が75%(容積%)以上のCr粒子を採用したCu−Cr合金に於いて有効に発揮される。
【0164】
(実施例48〜52、比較例14)
Cu−Cr合金中のCr粒子中の第1の補助成分として、1.0%以下のAl,Siを含有したCrを使用した場合には、再点弧特性、遮断特性の安定化に有益である。
【0165】
すなわち、Cr粒子中に1.0%のAlを含有させた接点では、再点弧発生頻度は、評価(C)を示し良好な特性を発揮した。遮断特性も、20kAの10回遮断に成功し遮断特性も「合格」である(実施例48)。
【0166】
Cr粒子中に0.1%のAlを含有させた接点では、再点弧発生頻度は、評価(B)を示し良好な特性を発揮した。遮断特性も、20kAの10回遮断に成功し遮断特性も「合格」である(実施例49)。
【0167】
Cr粒子中に0.01%のAlを含有させた接点では、再点弧発生頻度は、評価(S〜A)を示し極めて良好な特性を発揮した。遮断特性も、31.5kAの10回遮断に成功し遮断特性も「合格」である(実施例50)。
【0168】
Cr粒子中に0.001%のAlを含有させた接点では、再点弧発生頻度は、評価(A)を示し極めて良好な特性を発揮した。遮断特性も、20kAの10回遮断に成功し遮断特性も「合格」である(実施例51)。
【0169】
Cr粒子中に0.01%のSiを含有させた接点では、再点弧発生頻度は、評価(S〜A)を示し極めて良好な特性を発揮した。遮断特性も、31.5kAの10回遮断に成功し遮断特性も「合格」である(実施例52)。
【0170】
いずれもCu相の脱落や剥離がなく安定した接点面となっている。
【0171】
これに対して、Cu−Cr合金中のCr粒子中の第1の補助成分として、1.5%のAlを含有したCrを使用した場合には、再点弧発生頻度は、評価(Z)を示し再点弧特性に大幅な劣化が見られ好ましくない。遮断特性も、10回の24kA遮断中に8回、20kA遮断中に2回の再点弧発生を記録し、遮断不能が多発し遮断特性は「不合格」である(比較例14)。加工直後の接点面にはすでにCu相の脱落が見られ、これが最初の再点弧発生の引き金となっている。
【0172】
以上から、Cu−Cr合金中のCu相に関する[Hm/Ho]比を所定量に管理する本発明技術は、Cr粒子中の第1の補助成分として、1.0%以下のAl,Siを含有したCr粒子を採用したCu−Cr合金に対しても適用が可能である。
【0173】
(実施例53〜58、比較例15〜16)
第2の補助成分として、1.0%以下のBi,Sbを含有したCu−Cr合金を使用した場合には、再点粉特性、遮断特性の安定化に有益である。また他の第2の補助成分として、5.0%以下のTe,Se,Pbを含有したCu−Cr合金を使用した場合にも、再点弧特性、遮断特性の安定化に有益である。
【0174】
すなわち、Cu−Cr合金中の第2の補助成分として、0.1%のBiを含有させた接点では、再点弧発生頻度は、評価(B)を示し良好な特性を発揮した。遮断特性も、24kAの10回遮断に成功し遮断特性も「合格」である(実施例53)。
【0175】
Cu−Cr合金中の第2の補助成分として1.0%のBiを含有させた接点では、再点弧発生頻度は、評価(B〜C)を示し良好な特性を発揮した。遮断特性も、20kAの10回遮断に成功し遮断特性も「合格」である(実施例54)。
【0176】
Cu−Cr合金中の第2の補助成分として、0.2%のSbを含有させた接点では、再点弧発生頻度は、評価(B〜C)を示し良好な特性を発揮した。遮断特性も、20kAの10回遮断に成功し遮断特性も「合格」である(実施例55)。
【0177】
Cu−Cr合金中の第2の補助成分として、2.5%のTeを含有させた接点では、再点弧発生頻度は、評価(B〜C)を示し良好な特性を発揮した。遮断特性も、20kAの10回遮断に成功し遮断特性も「合格」である(実施例56)。
【0178】
Cu−Cr合金中の第2の補助成分として、5.0%のTeを含有させた接点では、再点弧発生頻度は、評価(C)を示し良好な特性を発揮した。遮断特性も、20kAの10回遮断に成功し遮断特性も「合格」である(実施例57)。
【0179】
Cu−Cr合金中の第2の補助成分として、2.5%のSeを含有させた接点では、再点弧発生頻度は、評価(C)を示し良好な特性を発揮した。遮断特性も、20kAの10回遮断に成功し遮断特性も「合格」である(実施例58)。
【0180】
また、Cu−Cr合金中の第2の補助成分として、0.2%のPbを含有させた接点でも同等の再点弧発生頻度および遮断特性を発揮し「合格」である。
【0181】
いずれもCu相の脱落や剥離がなく安定した接点面となっている。
【0182】
これに対して、Cu−Cr合金中の第2の補助成分として、3.0%のBiを含有させた接点では、再点弧発生頻度は、評価(Y〜Z)を示し再点弧特性に大幅な劣化が見られ好ましくない。遮断特性も、20kA以下の遮断で再点弧が多発し遮断特性は「不合格」である(比較例15)。遮断テスト後の接点表面には著しい荒れが見られる。接触抵抗にもバラツキが見られた。
【0183】
Cu−Cr合金中の第2の補助成分として、8.0%のTeを含有させた接点では、再点弧発生頻度は、評価(Z)を示し再点弧特性に大幅な劣化が見られれ好ましくない。遮断特性も、20kAの遮断に成功と20kAの遮断失敗が多発し遮断特性は「不合格」である(比較例16)。遮断テスト後の接点表面には著しい荒れが見られる。接触抵抗にもバラツキが見られた。
【0184】
以上から、Cu−Cr合金中のCu相に関する[Hm/Ho]比を所定量に管理する本発明技術は、Cr粒子中の第2の補助成分として、1.0%以下のBi,Sbを含有したCu−Cr合金、または他の第2の補助成分として、5.0%以下のTe,Se,Pbを含有したCu−Cr合金に対しても適用が可能である。
【0185】
(その他の実施例)
焼結工程後若しくは焼結・溶浸工程後のCu−Crを、非酸化性雰囲気中で、Cu−Cr合金中のCu相の融解温度以下の温度またはCu相の融解温度以上の温度で加熱し、これを常温にまで冷却することとし、この場合も焼結工程後若しくは焼結・溶浸工程後の、Cu−Cr合金中のCu相の硬度値(マイクロビッカース硬さ値)をHm、非酸化性雰囲気中で、Cu−Cr合金中のCu相の融解温度以下の温度またはCu相の融解温度以上の温度で加熱し、これを常温にまで冷却した時の、Cu−Cr合金中のCu相の硬度値(マイクロビッカース硬さ値)をHoとした時の[Hm/Ho]比を、1.0〜2.0の範囲に調整することとしてもよい。
【0186】
このように、Cu−Cr接点材料の製造雰囲気として、非酸化性雰囲気を選択することにより、特に再点弧発生頻度の低減化を図ることができる。
【0187】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、CuCr合金の再点弧特性を安定化させ電流遮断特性の優れた電力用真空遮断器の接点材料の製造方法を提供することができるので、その工業的価値は大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る電力用真空遮断器の接点材料の実施例1〜16及び比較例1〜4の評価条件を示す表図。
【図2】 本発明に係る電力用真空遮断器の接点材料の実施例17〜29及び比較例5〜8の評価条件を示す表図。
【図3】 本発明に係る電力用真空遮断器の接点材料の実施例1〜16及び比較例1〜4の評価結果を示す表図。
【図4】 本発明に係る電力用真空遮断器の接点材料の実施例17〜29及び比較例5〜8の評価結果を示す表図。
【図5】 本発明に係る電力用真空遮断器の接点材料の実施例30〜45及び比較例9〜12の評価条件を示す表図。
【図6】 本発明に係る電力用真空遮断器の接点材料の実施例46〜58及び比較例13〜16の評価条件を示す表図。
【図7】 本発明に係る電力用真空遮断器の接点材料の実施例30〜45及び比較例9〜12の評価結果を示す表図。
【図8】 本発明に係る電力用真空遮断器の接点材料の実施例46〜58及び比較例13〜16の評価結果を示す表図。
Claims (2)
- Cu又はCuを主成分とするCu合金で構成されるCu相より成る導電性成分と、Crより成る耐弧性成分とで構成された10〜90重量%Cuを含有するCu−Cr合金からなる電力用真空遮断器の接点材料の製造方法に於いて、
先ず、前記Cu−Cr合金をCu相の持つ融解温度の直下温度の1030℃〜1080℃に加熱し、これを常温にまで冷却したときの、前記Cu−Cr合金中のCr粒子のマイクロビッカース硬さ値Hrを求めておき、
次いで、粒径が0.1〜150μmのCr粉と粒径が44〜62μmのCu粉とを所定比率で混合して所定値で加圧後、所定温度で焼結、若しくは所定量の前記Cr粉を所定値で加圧し、800〜1400℃で焼結後、1100〜1400℃でCu塊を溶浸し、常温にまで所定速度で冷却したときの、前記Cu−Cr合金中のCr粒子のマイクロビッカース硬さ値をHsとしたとき、
[Hs/Hr]比が1.0〜1.6の範囲になるように、前記加圧時の圧力、前記焼結時の温度および前記冷却時の速度の1つ以上を調整したことを特徴とする電力用真空遮断器の接点材料の製造方法。 - Cu又はCuを主成分とするCu合金で構成されるCu相より成る導電性成分と、Crより成る耐弧性成分とで構成された10〜90重量%Cuを含有するCu−Cr合金からなる電力用真空遮断器の接点材料の製造方法に於いて、
先ず、前記Cu−Cr合金をCu相の持つ融解温度の直下温度の1030℃〜1080℃に加熱し、これを常温にまで冷却したときの、前記Cu−Cr合金中のCu相のマイクロビッカース硬さ値Hoを求めておき、
次いで、粒径が0.1〜150μmのCr粉と粒径が44〜62μmのCu粉とを所定比率で混合して所定値で加圧後、所定温度で焼結、若しくは所定量の前記Cr粉を所定値で加圧し、800〜1400℃で焼結後、1100〜1400℃でCu塊を溶浸し、常温にまで所定速度で冷却したときの、前記Cu−Cr合金中のCu相のマイクロビッカース硬さ値をHmとしたとき、
[Hm/Ho]比が1.0〜2.0の範囲になるように、前記加圧時の圧力、前記焼結時の温度および前記冷却時の速度の1つ以上を調整したことを特徴とする電力用真空遮断器の接点材料の製造方法。
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