JP4174293B2 - 基材への含浸方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、基材の片面からワニスを浸透させることによって基材にワニスを含浸させる方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
積層板の製造に用いられるプリプレグは、基材にワニスを含浸させて乾燥、半硬化させることによって製造することができる。このような基材としては一般に長尺の連続基材が用いられており、この基材を連続して送りながらワニスを含浸させ、さらにワニスを含浸した基材を連続して送りながら加熱炉を通過させることによって、プリプレグを一連の連続した工程で製造することができる。
【0003】
そしてプリプレグのような成形品の製造に関連して、従来においては連続して走行する繊維(基材)にレジン液(ワニス)を含浸させる装置が提供されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開平4−148905号公報(第1図)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、基材として、例えばガラスクロスを用いる場合、すなわちガラス糸(フィラメント、単繊維)を撚って作った織り糸(ヤーン、繊維束)を縦糸と横糸として織った布(クロス)を用いる場合、従来のような含浸装置にあっては、ヤーン間の空隙にはワニスを満たすことはできるが、各ヤーン内の空隙(つまりフィラメント間の空隙)には十分な量のワニスを満たすことができないものであり、製造されたプリプレグにおいて未含浸部の残存率が高くなるという問題があった。昨今はプリプレグに対して従来よりも高い品質が求められており、この要求に応えるためにはヤーンを構成するフィラメント間の空隙にもワニスを十分に浸透させる必要がある。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、ヤーン間の空隙だけではなくフィラメント間の空隙にも十分な量のワニスを浸透させることができる基材への含浸方法を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係る基材への含浸方法は、基材1の片面からワニス2を浸透させることによって基材1にワニス2を含浸させるにあたって、基材1の温度をワニス2の温度よりも低く設定することを特徴とするものである。
また請求項1の発明は、基材1に冷風を吹き付けて基材1の温度を下げた後にワニス2を基材1に含浸させることを特徴とするものである。
また請求項1の発明は、基材1の温度を3〜5℃にした後にワニス2を基材1に含浸させることを特徴とするものである。
本発明の請求項2に係る基材への含浸方法は、基材1の片面からワニス2を浸透させることによって基材1にワニス2を含浸させるにあたって、基材1の温度をワニス2の温度よりも低く設定することを特徴とするものである。
また請求項2の発明は、基材1を冷却ロール3に通すことによって基材1の温度を下げた後にワニス2を基材1に含浸させることを特徴とするものである。
また請求項2の発明は、基材1の温度を3〜5℃にした後にワニス2を基材1に含浸させることを特徴とするものである。
【0009】
また請求項3の発明は、請求項1又は2において、基材1とワニス2の温度差を25〜30℃にした後にワニス2を基材1に含浸させることを特徴とするものである。
【0012】
また請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかにおいて、基材1を除湿した後にワニス2を基材1に含浸させることを特徴とするものである。
【0013】
また請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれかにおいて、基材1を水平に搬送しながら基材1の下面にワニス2を接触させることによってワニス2を基材1に含浸させることを特徴とするものである。
【0014】
また請求項6の発明は、請求項5において、基材1の下方からワニス2を上方に向けて噴き上げることによって基材1の下面にワニス2を接触させることを特徴とするものである。
【0015】
また請求項7の発明は、請求項1乃至4のいずれかにおいて、基材1を所定の角度で傾斜させて搬送しながら基材1が傾斜している領域においてワニス2を基材1の傾斜に沿って流下させつつ基材1に含浸させることを特徴とするものである。
【0016】
また請求項8の発明は、請求項1乃至4のいずれかにおいて、基材1を垂直に搬送しながら基材1の片面にワニス2を供給して接触させることによってワニス2を基材1に含浸させることを特徴とするものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
図1は本発明の実施の形態の一例を示すものである。含浸槽4は上面を開口して形成してあって、この含浸槽4の上方には回転駆動する一対の対向する搬送ロール5,6が所定の間隔をあけて、かつこれらの搬送ロール5,6の最下部が同じ高さとなるように配置してある。一方、塗工槽7も上面を開口して形成してあって、この塗工槽7内には回転駆動するディップロール8が配置してあり、その上方には回転駆動する一対の対向するスクイズロール9,10が配置してある。さらにスクイズロール9,10の上方には乾燥機(図示省略)が設けられている。含浸槽4と塗工槽7はいずれもワニス2を貯えており、ディップロール8はこのワニス2に浸漬されるようにして塗工槽7内に配置されている。
【0019】
ここで、ワニス2としては、積層板の製造に使用されるものであれば特に限定されることなく使用することができる。例えばワニス2は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、ラジカル重合型熱硬化性樹脂等の樹脂原料の他に硬化剤、硬化促進剤、反応性希釈剤、可撓性付与剤等を適宜選択して混合した後、加熱還流させながら一定の反応をさせることによって、調製することができる。
【0020】
一方、上記ワニス2を含浸させる基材1としては、積層板の製造に使用されるものであれば特に限定されることなく使用することができる。例えば、ガラス繊維、セラミック繊維等の無機繊維や、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリアクリル繊維、ポリイミド繊維等の有機繊維や、セルロース繊維、木綿等の天然繊維を用いたクロス、ペーパー、マット等を用いることができるが、不織布は含まれない。また基材1は長尺帯状に形成されており、長手方向に常に所定の一定速度で送るようにしてある。
【0021】
そして、基材1にワニス2を含浸させてプリプレグを製造するにあたっては、以下のようにして行うことができる。まず、基材1をガイドロール11に通して下方に送り、一対の搬送ロール5,6のうち一方の搬送ロール5の下側に接触させてから他方の搬送ロール6の下側に接触させた後に上方に送る。既述のように一対の搬送ロール5,6の最下部は同じ高さであるから、一方の搬送ロール5から他方の搬送ロール6に至るまで基材1は水平に搬送されることとなる。この間、基材1の片面(下面)のみをワニス2の液面に接触させて基材1にワニス2を含浸させるようにしてある。一方、基材1のワニス2と接触する側と反対側の片面(上面)は、雰囲気の気体(通常は空気)にのみ接触しているだけであり、実質的に他の物に接触しないフリーな状態にある。従って、このように基材1の下面からワニス2を浸透させると、このワニス2が基材1の内部に存在する気泡を押し上げてフリーな上面から外部へ追い出すことができるものである。しかし基材1の両面がワニス2に接触していると、つまり基材1がワニス2に浸かっていると、基材1の両面からワニス2が浸透してこのワニス2によって基材1の内部に気泡が閉じ込められてしまうので、含浸槽4におけるワニス2の液面は基材1の下面のみに接触させる必要がある。そのためには一対の搬送ロール5,6の位置を調整したり、含浸槽4に貯えるワニス2の量を増減させてワニス2の液面の高さを調整したりすればよい。
【0022】
ここで、基材1の下面からワニス2を浸透させることによって押し出される気泡は、主として基材1を構成するヤーン間に存在する気泡であり、ヤーンを構成するフィラメント間に存在する気泡までも押し出すのは困難である。しかし、基材1にワニス2を浸透させる前に、基材1の温度をワニス2の温度よりも低く設定しておくと、逆に言えばワニス2の温度を基材1の温度よりも高く設定しておくと、ヤーン間の空隙だけではなくフィラメント間の空隙にも十分な量のワニス2を浸透させることが可能となり、ヤーン間に存在する気泡に加えてフィラメント間に存在する気泡をも容易に基材1の外部へ押し出すことができるものである。
【0023】
このように基材1の温度をワニス2の温度よりも低く設定することによって上記のような効果が得られる理由は、次のように説明することができる。各ヤーンには、図9に示すようにフィラメント14,14間の空隙(クリアランス、隙間)が狭い箇所(▲1▼)や広い箇所(▲2▼)が混在している。▲1▼のようにフィラメント14,14間の空隙が狭いと、毛細管現象によるワニス2の浸透速度は初期において速くなる反面、浸透するワニス2の量が少ないために、ワニス2から基材1への熱移動によりワニス2が冷やされやすく、ワニス2の粘度が上昇しやすくなる。よって、ワニス2の浸透速度は徐々に低下するものである。逆に、▲2▼のようにフィラメント14,14間の空隙が広いと、毛細管現象によるワニス2の浸透速度は初期から遅い反面、浸透するワニス2の量が多いために、ワニス2から基材1への熱移動が起こってもワニス2は冷やされにくく、ワニス2の粘度は上昇しにくくなる。よって、ワニス2の浸透速度は初期における速度とあまり変わらないものである。以上から、基材1の温度がワニス2の温度よりも低ければ、ワニス2が浸透し始めてから一定時間経過後において、▲1▼におけるワニス2と▲2▼におけるワニス2が、フィラメント14,14間の気泡12aを同じ距離(図9の矢印で示す)まで押して運ぶようにバランスをとることができるものである。言い換えると、基材1の温度がワニス2の温度よりも低ければ、ワニス2がヤーン内を浸透して気泡12aを運ぶ距離はフィラメント14,14間の空隙の広狭には依存しなくなる。そうすると、基材1の片面のどの箇所からワニス2を浸透させても、一定時間経過後にはワニス2は基材1の厚み方向において同じ距離まで気泡12aを運ぶこととなり、基材1の片面のある箇所から浸透させたワニス2の浸透速度が遅いためにこの箇所の気泡12aが取り残されるというようなことがなくなるものである。しかし、基材1とワニス2の温度が同じである場合にはこの両者の間で上記のような熱移動が起こらず、また、基材1の温度がワニス2の温度よりも高い場合には基材1からワニス2への熱移動が起こるものであり、上記いずれの場合であっても既述のバランスが崩れてしまい、ワニス2が浸透し始めてから一定時間経過後において、▲1▼におけるワニス2と▲2▼におけるワニス2は、フィラメント14,14間の気泡12aを同じ距離まで押して運ぶことができなくなり、基材1の片面のある箇所から浸透させたワニス2の浸透速度が遅いためにこの箇所の気泡12aが取り残されてそのまま周囲のワニス2によって閉じ込められてしまうものである。
【0024】
もう少し具体的に説明すると、次のようになる。図10は、本発明において基材1とワニス2が接触している箇所を拡大したものであり、この箇所においてワニス2の液面からヤーン13が上向きに屈曲して突出している。ワニス2は、ヤーン13の左右(図10の左右と同じ)から同時に浸透し始め、ヤーン13内の気泡12a(つまりフィラメント14,14間の気泡12a)を図10の実線矢印の向きに押して集めながら浸透し続ける。やがて、ヤーン13の左右から浸透して上昇してきたワニス2により、気泡12aが図10のようにヤーン13の頂点15に集められる。引き続きこの気泡12aはワニス2により左右から押し付けられ、さらにヤーン13,13間を浸透して気泡12b(つまりヤーン13,13間の気泡12b)を押し上げてきたワニス2によっても下方から押し付けられるので、この気泡12a,12bは基材1の上面から図10の点線矢印の向きにスムーズに押し出されることとなり、ヤーン13,13間はもちろんヤーン13内にも取り残されにくくなるものである。しかし、基材1の温度をワニス2の温度よりも低く設定していないと、ワニス2がヤーン13内を浸透して気泡12aを運ぶ距離は、図9のようにはならず、フィラメント14,14間の空隙の広狭に依存するので、ヤーン13の左右から浸透するワニス2の浸透速度に差が生じるものである。そのためヤーン13の左右から浸透してきたワニス2が出会う箇所は、ヤーン13の頂点15ではなく、この頂点15から左右のいずれかに偏った箇所となるものであり、つまりフィラメント14,14間の気泡12aをヤーン13の頂点15にまで運ぶことができず、結局は気泡12aをヤーン13内に閉じ込めてしまうものである。
【0025】
なお、本発明において基材1にワニス2を浸透させる前に基材1の温度がワニス2の温度よりも低く設定しておきさえすれば、基材1の温度が10℃を超えていても、フィラメント14,14間の空隙に十分な量のワニス2を浸透させることはできるが、特に基材1の温度を10℃以下の低温にしておくと、上記の効果をさらに高く得ることができるものである。なお、基材1の温度の実質上の下限は3℃である。
【0026】
また、本発明において基材1にワニス2を浸透させる前に基材1の温度がワニス2の温度よりも低く設定しておきさえすれば、基材1とワニス2の温度差が15℃未満であっても、フィラメント14,14間の空隙に十分な量のワニス2を浸透させることはできるが、特に基材1とワニス2の温度差を15℃以上にしておくと、上記の効果をさらに高く得ることができるものである。なお、基材1とワニス2の温度差の実質上の上限は30℃である。
【0027】
基材1の温度をワニス2の温度よりも低く設定するにあたっては、一対の搬送ロール5,6のうち基材1が最初に接触することになる搬送ロール5の上方に冷却ユニット16を配置して、この冷却ユニット16で基材1を冷却することによって基材1の温度を下げることができる。
【0028】
すなわち請求項1の発明において冷却ユニット16としては、図2に示すように冷風が吹き出す冷風ノズル17を用いることができる。この場合、冷風ノズル17は、冷風の吹出口18を基材1の表面に向けて、基材1を介して両側に配置することができる。各冷風ノズル17はホース19を介して冷風発生装置(図示省略)と連通してあり、冷風発生装置によって発生した冷風がホース19内を通って冷風ノズル17に送られるようにしてある。そして、冷風ノズル17で基材1の両面に冷風を吹き付けて基材1の温度を下げることによって、容易に基材1の温度をワニス2の温度よりも低く設定することができるものである。しかも冷風ノズル17は基材1に接触させる必要がなく、つまり非接触で基材1を冷却することができるので、基材1に塵や埃が付着するのを防止することができ、またたとえ基材1に塵や埃が付着していたとしても、冷風を吹き付けることによって基材1に付着している塵や埃を吹き飛ばして除去することができるものである。
【0029】
また請求項2の発明において冷却ユニット16としては、図3に示すような冷却ロール3を用いることもできる。この場合、冷却ロール3は、1本のみを用いることができるほか、複数本を並設して用いることができる。冷却ロール3の内部には水などの冷媒を通し、冷却ロール3自体を冷却することができるようにしてある。そして、複数本の冷却ロール3の間に基材1を通して、各冷却ロール3の外周面に基材1を接触させて基材1の温度を下げることによって、容易に基材1の温度をワニス2の温度よりも低く設定することができるものである。しかも上記のように冷却ロール3は基材1に接触させているので、冷却効率を向上させることができるものである。
【0030】
基材1の温度をワニス2の温度よりも低く設定するということは、逆に言えばワニス2の温度を基材1の温度よりも高く設定するということであるから、ワニス2の温度を上げるようにしてもよい。すなわち図4に示す実施の形態においては、含浸槽4の底面から側面にわたる外周面を囲い込むようにジャケット20を設けてある。このジャケット20の外部には、ジャケット20の内部と連通する流入口21と流出口22が形成してあり、一定温度の温水又は蒸気を流入口21からジャケット20の内部へ供給すると共に流出口22からジャケット20の外部へ排出して、ジャケット20の内部を絶えず一定温度の温水又は蒸気で満たしておくことによって、含浸槽4の外周面を介してワニス2を加温することができ、容易にワニス2の温度を基材1の温度よりも高く設定することができるものである。また図5に示す実施の形態においては、ヒーター23をワニス2に浸漬されるようにして含浸槽4内に配置してあり、ヒーター23によって直接ワニス2を加温することができ、容易にワニス2の温度を基材1の温度よりも高く設定することができるものである。
【0031】
そして、図1に示すように一対の搬送ロール5,6を通して上方に送られた基材1は、ガイドロール29によって再び下方へ送られ、ディップロール8の下側に接触するように塗工槽7に貯えられたワニス2内に導入される。このとき基材1の表層部にワニス2が塗布される。次にワニス2が塗布された基材1は、塗工槽7から引き上げられて一対のスクイズロール9,10の間を通過する。上記スクイズロール9,10の間を通過させることによって、基材1の表層部に余剰に塗布されたワニス2がしぼり取られる。上記スクイズロール9,10の間を通過した基材1はその後、乾燥機内に導入され、乾燥機で加熱されてワニス2の樹脂が半硬化する。このようにして、長尺の基材1を進行させることによって、未含浸部の残存率を大幅に低下させたプリプレグを連続的に製造することができるものである。ここで、樹脂量(レジンコンテント)が40質量%のプリプレグを製造する場合、基材1の片面からワニス2を浸透させて含浸させる片面含浸のみでは樹脂量を30質量%程度に上げるのが限界であるが、上記のようにディップロール8によるディッピングを追加することによって、樹脂量を40質量%にまで引き上げることができるものである。
【0032】
なお、ワニス2を浸透させる前の基材1の内部に水分が存在していると、ワニス2が気泡12を押して運ぶのを水分が妨げるおそれがある。そこで、図1に示す実施の形態においては、プリプレグを製造する環境全体をチャンバー24で囲い込み、このチャンバー24内を除湿するようにしてある。このようにすると、基材1の内部から水分を取り除くことができ、ワニス2の浸透によってスムーズに気泡12を運ぶことができるものである。特にワニス2を浸透させる前の基材1を除湿すればよいので、プリプレグを製造する環境全体をチャンバー24で囲い込む以外に、ワニス2を浸透させる前の基材1のみをチャンバーで囲い込み、このチャンバー内を除湿するようにしてもよい。
【0033】
図6は本発明の実施の形態の他例を示すものである。本実施の形態においては、含浸槽4内にワニス噴出装置25を配置してある。このワニス噴出装置25の上面は、水平に搬送される基材1の下面と一定の間隔をおいて対向している。またワニス噴出装置25の上面にはワニス噴出口(図示省略)が複数形成されており、ワニス噴出装置25の下部にはワニス吸入口(図示省略)が形成されている。
【0034】
そして、水平に搬送される基材1の下面にワニス2を接触させるにあたっては、ワニス噴出装置25を作動させて、含浸槽4内のワニス2をワニス吸入口からワニス噴出装置25の内部に吸入し、このワニス2をワニス噴出口から上方に向けて噴き上げるようにして行っている。噴き上げられたワニス2のうち一部は基材1の下面に接触してそのまま基材1の内部に浸透する。このとき、基材1のワニス2と接触する側と反対側の片面(上面)は、雰囲気の気体(通常は空気)にのみ接触しているだけであり、実質的に他の物に接触しないフリーな状態にある。従って、このように基材1の下面からワニス2を浸透させると、このワニス2が基材1の内部に存在する気泡12を押し上げてフリーな上面から外部へ追い出すことができるものである。一方、その他のワニス2は基材1の下面に当たって跳ね返り、ワニス噴出装置25の上面や含浸槽4内に落下するので、再度利用することができるものである。しかも図6に示す実施の形態においては、基材1の下方からワニス2を上方に向けて噴き上げることによって基材1の下面にワニス2を接触させるようにしてあるので、図1に示す実施の形態のように基材1の下面のみにワニス2を接触させるために一対の搬送ロール5,6の位置を調整する手間や、含浸槽4に貯えるワニス2の量を増減させてワニス2の液面の高さを調整する手間を省くことができるものである。なお、その他の構成については図1に示した実施の形態と同様である。
【0035】
図7は本発明の実施の形態のさらに他例を示すものである。本実施の形態においては、含浸槽4内にプレートパン26を滑り台のようにθ=15〜30°の角度で傾斜させて配置してあって、含浸槽4内においてプレートパン26の上端部には供給部4aを、プレートパン26の下端部には受け部4bをそれぞれ設けてある。供給部4aには流入口(図示省略)からワニス2が所定の一定流量で供給されている。このように供給部4aに供給されたワニス2は供給部4aからオーバーフローし、オーバーフローしたワニス2はプレートパン26の傾斜する上面にその上端から流入して流下し、受け部4bにその下端から流入するようになっている。受け部4bに流入したワニス2は流出口(図示省略)から流出されるが、供給部4aへと循環されるようになっている。
【0036】
プレートパン26の上方において基材1は一対の搬送ロール5,6の間に架け渡してプレートパン26の上面と平行になるように傾斜させてあり、基材1とプレートパン26との間の隙間はプレートパン26の上面を流下するワニス2の液厚みとほぼ等しくなるように設定してある。基材1とプレートパン26との間の間隔は、一般的には1〜5mmに設定されるものである。
【0037】
このものにあって、供給部4aからオーバーフローさせてワニス2をプレートパン26の上面を流下させながら、図7の矢印のように基材1をプレートパン26と同じ所定の角度で傾斜させて搬送すると、基材1が傾斜している領域において基材1の下面はプレートパン26の上のワニス2の液面に接触し、基材1にワニス2がその下面から浸透する。一方、基材1のワニス2と接触する側と反対側の片面(上面)は、雰囲気の気体(通常は空気)にのみ接触しているだけであり、実質的に他の物に接触しないフリーな状態にある。従って、このように基材1の下面からワニス2を浸透させると、このワニス2が基材1の内部に存在する気泡12を押し上げてフリーな上面から外部へ追い出すことができるものである。しかも図7に示す実施の形態においては、基材1がプレートパン26の上端部から下端部に至るまでの間、基材1の傾斜に沿って流下しているワニス2に基材1を接触させて浸透させることができるものであり、基材1の送り速度を速くしても十分な量のワニス2を基材1に含浸させることができ、高速含浸が可能になるものである。基材1をワニス2に接触させる時間は、少なくとも30秒を確保するのが一般的である。なお、その他の構成については図1に示した実施の形態と同様である。
【0038】
図8は本発明の実施の形態のさらに他例を示すものである。本実施の形態においては、含浸槽4の上方に一対の搬送ロール5,6が所定の間隔をあけて上下に配置してあり、これら一対の搬送ロール5,6の間に架け渡した基材1が垂直下向きに搬送されるようにしてある。また一対の搬送ロール5,6の間の高さであって、上側の搬送ロール5寄りの高さにワニス供給装置27を配置してある。このワニス供給装置27の側面は、垂直に搬送される基材1の片面と一定の間隔をおいて対向しており、ワニス供給装置27の上記側面にはワニス供給口(図示省略)が複数形成されている。
【0039】
そして、垂直に搬送される基材1の片面にワニス2を接触させるにあたっては、ワニス供給装置27を作動させて、ワニス2をワニス供給口から側方に向けて噴き出させて供給するようにして行っている。噴き出されたワニス2のうち一部は基材1の片面に接触してそのまま基材1の内部に浸透する。このとき、基材1のワニス2と接触する側と反対側の片面は、雰囲気の気体(通常は空気)にのみ接触しているだけであり、実質的に他の物に接触しないフリーな状態にある。従って、このように基材1の片面からワニス2を浸透させると、このワニス2が基材1の内部に存在する気泡12を押し付けてフリーな片面から外部へ追い出すことができるものである。一方、その他のワニス2は基材1の片面に接触しながら流下するが、この間にも基材1の内部に浸透する機会を得ることができるものである。また基材1の内部に浸透しなかったワニス2は含浸槽4内に流れ落ちるので、含浸槽4からワニス供給装置27へワニス2を返送するような循環系を構築すれば、ワニス2の再利用を図ることができるものである。しかも図8に示す実施の形態においては、基材1を垂直に搬送しながら基材1の片面にワニス2を供給して接触させることによってワニス2を基材1に含浸させるようにしてあるので、図1に示す実施の形態のように基材1の下面のみにワニス2を接触させるために一対の搬送ロール5,6の位置を調整する手間や、含浸槽4に貯えるワニス2の量を増減させてワニス2の液面の高さを調整する手間を省くことができるものである。なお、その他の構成については図1に示した実施の形態と同様である。
【0040】
また、プリプレグを製造する環境に応じて、既述のように基材を水平に搬送したり、基材を傾斜させて搬送したり、基材を垂直に搬送したりして、基材の搬送方向を変えることによって、スペース上の制約を受けないようにすることができるものである。
【0041】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0042】
図11は本発明を実施するにあたって使用した装置を示すものである。28は片面含浸装置であって、実際には、含浸槽が上面を開口して形成してあり、この含浸槽の上方に回転駆動する一対の対向する搬送ロールが所定の間隔をあけて、かつこれらの搬送ロールの最下部が同じ高さとなるように配置してあるが、上記含浸槽と一対の搬送ロールは図示省略している。一方、塗工槽7が上面を開口して形成してあって、この塗工槽7内には回転駆動するディップロール8が配置してあり、その上方には回転駆動する一対の対向するスクイズロール9,10が配置してある。さらにスクイズロール9,10の上方には乾燥機(図示省略)が設けられている。片面含浸装置28における含浸槽と塗工槽7はいずれもワニス2を貯えており、ディップロール8はこのワニス2に浸漬されるようにして塗工槽7内に配置されている。なお、ワニス2の温度は30℃に保持してある。
【0043】
さらに、片面含浸装置28の手前に温調ロール30を4本並設して、この温調ロール30で基材1を一定の温度に調節することができるようにしてある。なお、温調ロール30は、内部に冷媒を通せば、冷却ロールとして機能することはいうまでもない。
【0044】
ここで、ワニス2としては、ブロム化ビスAノボラック型エポキシ樹脂(ダウ・ケミカル製「DER514 EK80」)67.3質量部、ノボラック型エポキシ樹脂(東都化成(株)製「YDCN220 EK75」)10.3質量部、ジシアンジアミド(日本カーバイド工業(株)製「DICY」)3.9質量部、ジメチルホルムアミド18.5質量部、2−メチル−4−メチルイミダゾール0.03質量部を配合して得られる、粘度50cP/30℃のFR−4タイプの積層板形成用のものを用いた。
【0045】
一方、上記ワニス2を含浸させる基材1としては、長尺帯状に形成されたガラスクロスである日東紡(株)製「7628H258」(温度:5℃、20℃、30℃)を使用した。
【0046】
そして、上記の装置を使用して次のような実験を行った。まず、基材1を長手方向に常に300mm/10秒の一定速度で送るようにして、温調ロール30に通して基材1を一定の温度(5℃、20℃、30℃)に調節した。次に、一定温度に調節した基材1を片面含浸装置28に送って、基材1の下面から30℃に調節したワニス2を浸透させた。次に、ガイドロール29を通し、塗工槽7に貯えられたワニス2内に導入してディップロール8の下側に接触させた後に塗工槽7から引き上げて一対のスクイズロール9,10の間を通過させた。その後、乾燥機(図示省略)内に導入して乾燥機で加熱することによって、プリプレグを製造した。
【0047】
このようにして得られた各プリプレグについて、次のようにして未含浸部残存率を求めた。すなわち図12に示すように、基材1のフィラメントに沿って形成される未含浸部分31のうち、基材1の縦糸と横糸との交点部分33(図12において点線で囲んだ部分)に残存する基材1内の未含浸部分31の長さ及び数に基づいて未含浸部分31の総量を導出し、基材1の冷却及び基材1の片面接触によるワニス2の含浸を行わずに浸漬含浸(ディッピング)によるワニス2の塗布のみを行って得られたプリプレグの未含浸部分31の総量を100%とし、これを基準として、各温度につき、基材1の冷却及び基材1の片面接触によるワニス2の含浸を行って得られたプリプレグの未含浸部残存率を求めた。結果を表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
表1にみられるように、基材1とワニス2の温度が同じである比較例1のものよりも、基材1の温度をワニス2の温度よりも低く設定した実施例1及び比較例2のものの方が、未含浸部残存率が低くなることが確認される。特に、基材1の温度を5℃にすると共に基材1とワニス2の温度差を25℃にした実施例1のものは、未含浸部残存率を大幅に低下できることが確認される。
【0050】
【発明の効果】
上記のように本発明の請求項1に係る基材への含浸方法は、基材の片面からワニスを浸透させることによって基材にワニスを含浸させるにあたって、基材の温度をワニスの温度よりも低く設定するので、ヤーン間の空隙だけではなくフィラメント間の空隙にも十分な量のワニスを浸透させることが可能となり、ヤーン間に存在する気泡に加えてフィラメント間に存在する気泡をも容易に基材の外部へ押し出すことができるものである。
また請求項1の発明は、基材に冷風を吹き付けて基材の温度を下げた後にワニスを基材に含浸させるので、容易に基材の温度をワニスの温度よりも低く設定することができるものであり、また、基材に塵や埃が付着していたとしても冷風を吹き付けることによって、基材に付着している塵や埃を吹き飛ばして除去することができるものである。
また請求項1の発明は、基材の温度を3〜5℃にした後にワニスを基材に含浸させるので、フィラメント間の空隙に十分な量のワニスを浸透させることができるという効果をさらに高く得ることができるものである。
上記のように本発明の請求項2に係る基材への含浸方法は、基材の片面からワニスを浸透させることによって基材にワニスを含浸させるにあたって、基材の温度をワニスの温度よりも低く設定するので、ヤーン間の空隙だけではなくフィラメント間の空隙にも十分な量のワニスを浸透させることが可能となり、ヤーン間に存在する気泡に加えてフィラメント間に存在する気泡をも容易に基材の外部へ押し出すことができるものである。
また請求項2の発明は、基材を冷却ロールに通すことによって基材の温度を下げた後にワニスを基材に含浸させるので、容易に基材の温度をワニスの温度よりも低く設定することができるものであり、しかも冷却効率を向上させることができるものである。
また請求項2の発明は、基材の温度を3〜5℃にした後にワニスを基材に含浸させるので、フィラメント間の空隙に十分な量のワニスを浸透させることができるという効果をさらに高く得ることができるものである。
【0052】
また請求項3の発明は、基材とワニスの温度差を25〜30℃にした後にワニスを基材に含浸させるので、フィラメント間の空隙に十分な量のワニスを浸透させることができるという効果をさらに高く得ることができるものである。
【0055】
また請求項4の発明は、基材を除湿した後にワニスを基材に含浸させるので、基材の内部から水分を取り除くことができ、ワニスの浸透によってスムーズに気泡を運ぶことができるものである。
【0056】
また請求項5の発明は、基材を水平に搬送しながら基材の下面にワニスを接触させることによってワニスを基材に含浸させるので、基材の下面からワニスが浸透して、基材の内部に存在する気泡を押し上げて基材の上面から外部へ出すことができるものである。
【0057】
また請求項6の発明は、基材の下方からワニスを上方に向けて噴き上げることによって基材の下面にワニスを接触させるので、基材の下面にワニスを接触させるために一対の搬送ロールの位置を調整したり、含浸槽に貯えるワニスの量を増減させてワニスの液面の高さを調整したりする手間を省くことができるものである。
【0058】
また請求項7の発明は、基材を所定の角度で傾斜させて搬送しながら基材が傾斜している領域においてワニスを基材の傾斜に沿って流下させつつ基材に含浸させるので、基材が傾斜して搬送される間、基材の傾斜に沿って流下しているワニスに基材を接触させて浸透させることができるものであり、基材の送り速度を速くしても十分な量のワニスを基材に含浸させることができ、高速含浸が可能になるものである。
【0059】
また請求項8の発明は、基材を垂直に搬送しながら基材の片面にワニスを供給して接触させることによってワニスを基材に含浸させるので、基材を水平に搬送する場合のように基材の下面にワニスを接触させるために一対の搬送ロールの位置を調整したり、含浸槽に貯えるワニスの量を増減させてワニスの液面の高さを調整したりする手間を省くことができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の実施の形態の他例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の実施の形態のさらに他例を示す概略断面図である。
【図4】本発明の実施の形態のさらに他例を示す概略断面図である。
【図5】本発明の実施の形態のさらに他例を示す概略断面図である。
【図6】本発明の実施の形態のさらに他例を示す概略断面図である。
【図7】本発明の実施の形態のさらに他例を示す概略断面図である。
【図8】本発明の実施の形態のさらに他例を示す概略断面図である。
【図9】ワニスの浸透速度とヤーンを構成するフィラメント間の広狭との関係を説明するための説明図である。
【図10】基材とワニスが接触する箇所を拡大した断面図である。
【図11】本発明の実施例で使用した装置を示す概略断面図である。
【図12】プリプレグに形成された未含浸部の様子を示す説明図である。
【符号の説明】
1 基材
2 ワニス
3 冷却ロール
Claims (8)
- 基材の片面からワニスを浸透させることによって基材にワニスを含浸させるにあたって、基材に冷風を吹き付けて基材の温度をワニスの温度よりも下げて3〜5℃にした後にワニスを基材に含浸させることを特徴とする基材への含浸方法。
- 基材の片面からワニスを浸透させることによって基材にワニスを含浸させるにあたって、基材を冷却ロールに通すことによって基材の温度をワニスの温度よりも下げて3〜5℃にした後にワニスを基材に含浸させることを特徴とする基材への含浸方法。
- 基材とワニスの温度差を25〜30℃にした後にワニスを基材に含浸させることを特徴とする請求項1又は2に記載の基材への含浸方法。
- 基材を除湿した後にワニスを基材に含浸させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の基材への含浸方法。
- 基材を水平に搬送しながら基材の下面にワニスを接触させることによってワニスを基材に含浸させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の基材への含浸方法。
- 基材の下方からワニスを上方に向けて噴き上げることによって基材の下面にワニスを接触させることを特徴とする請求項5に記載の基材への含浸方法。
- 基材を所定の角度で傾斜させて搬送しながら基材が傾斜している領域においてワニスを基材の傾斜に沿って流下させつつ基材に含浸させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の基材への含浸方法。
- 基材を垂直に搬送しながら基材の片面にワニスを供給して接触させることによってワニスを基材に含浸させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の基材への含浸方法。
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