JP4175445B2 - 温水供給システム及び該温水供給システムを備える構造物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、温水供給システム及び該温水供給システムを用いた建造物に関し、より詳細には、熱移動をカスケード型にすることにより効率を向上させたカスケード式蓄熱槽を用いた温水供給システム及び該温水供給システムにより温水が供給される建造物に関する。
【0002】
【従来の技術】
我が国においては、アメニティ嗜好の高揚に伴い、特に民生用のエネルギー消費は依然として増大する傾向にあり、ライフスタイルや社会的ニーズに適合させつつ、よりいっそう省エネルギー化を推進する必要がある。また、エネルギー消費の増加による地球環境の悪化や、都市部での消費電力のピークを低減させ、電力消費の負荷平準化といった問題に対応する必要もある。さらに、近年における電力需要は、その特徴として空調機といったヒートポンプの急激な普及に伴い、夏場ばかりではなく冬場にもピークがあらわれるツインピーク型の需要曲線を与えており、年間を通して低質な熱需要である冷暖房需要に対応した合理的なエネルギーシステムを構築することにより、都市居住とエネルギー消費との調和を行うこと必要とされている。
【0003】
エネルギーにはいくつかの形態があるが、空調・給湯といった住宅において必要とされるエネルギーの最終形態は、熱エネルギーであることが多い。熱エネルギーは、適切な蓄熱システムを用いることにより貯蔵が可能であり、蓄熱システムを取り入れることにより熱の供給側と需要側とを時間的・量的に調節することを可能とし、電力消費の平準化、熱源機器の高効率化、熱回収等の観点から省エネルギーを効果的に達成することを可能とする。また、排熱や太陽熱のように発生する熱量が不安定な未だ有効に利用されているとはいえないエネルギーを有効に利用するためには、蓄熱システムを用いることが必要である。
【0004】
従来、上述した目的から種々の蓄熱システムが提案されている。従来の蓄熱システムは、単一温度の蓄熱槽から供給される単一温度の熱を利用するものであり、各温度に対応する蓄熱槽に対して個別の熱源を用いる必要が生じ、このためよりいっそうエネルギーを有効利用して省エネルギーを達成することが蓄熱槽に対して望まれている。
【0005】
すなわち、通常の熱源では、ガス、石油といった燃料が用いられ、これらの化石燃料は、燃焼温度が数百度と高温となる。この熱を最初から100℃以下の温度を与えるための加熱に用いるのでは、熱エネルギーを充分に活用しているとはいえない。熱をよりいっそう合理的に利用するためには、必要とされる温度レベルを考慮して段階的に熱を利用する、いわゆるカスケード式の熱利用を行うことが望ましい。
【0006】
上述したカスケード型蓄熱システムは、コ・ジェネレーション、太陽熱、生活排水等種々の熱源から得られる熱を温度範囲別に分けて蓄熱し、熱需要に合わせて必要とされる温度レベルに適合した熱を供給する蓄熱システムである。
【0007】
このようなカスケード型蓄熱槽は、蓄熱時には蓄熱媒体である水の温度による密度差を利用して、温度が高く密度の小さな水と、温度が低く密度の大きな水とが混合してしまわないように、垂直方向に蓄熱槽内部において温度成層を形成させて蓄熱し、各温度領域が混合して温度レベルが均一化してしまうことによる熱効率の低下を防止するものである。したがって上述したようなカスケード型蓄熱槽を用いた温水供給システムを提供することができれば、よりいっそうエネルギーの有効利用を行うことができる温水供給システムを提供することが可能となる。
【0008】
また、上述した温水供給システムを用いた建造物を提供できれば、都市居住におけるエネルギー需要の問題に対して寄与することが可能となり、地球環境の悪化、電力のピークカット・付加平準化といった問題に対して大きく貢献することが可能となる。
【0009】
本発明者は、上述の観点からカスケード型蓄熱槽に対する検討を加えてきており、カスケード型に蓄熱を行う蓄熱槽についてこれまで、充分な温度成層型の蓄熱槽が提供できることを報告している。上述した温度成層は、温度成層を形成させるための温水循環や、温水供・排水口等の形状、温水温度といった条件により形成されるものである。したがってこのような条件を維持させながら、この温度成層が形成されたカスケード型蓄熱槽から給湯器、床暖房、空調機といったそれぞれ温水需要量が相違し、季節的にも需要量が変動する熱需要手段へと安定して温水供給を行うことができる温水供給システム及び該温水供給システムにより温水が供給される建造物が望まれている。
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明においては、上述した温度成層型の蓄熱槽を有効に利用することにより、効率よく熱を蓄える機能に加え、温度成層として蓄熱された熱のうち、高温層から温度の高い給湯といった高温熱需要手段に供給し、給湯に比較して、低温で賄いうる暖房等の熱需要に対してはより低い温度の層から温水を供給することにより、利用形態に最も適した形で熱エネルギー、すなわち温水を提供することを可能とするカスケード型蓄熱層を用いた温水供給システム及び該温水供給システムを用いた建造物を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、本発明の温水供給システム及び該温水供給システムを備えた建造物により達成される。
【0012】
すなわち、本発明の請求項1の発明によれば、高温層と、中温層と、低温層とを内部に形成する単一の蓄熱層と、上記各層の温水を利用する複数の熱需要手段とを備え、上記高温層は、上記中温層の上部で該中温層の温度範囲にある温水を加熱して循環させることにより熱供給されて形成され、上記中温層は、上記低温層の上部で該低温層の温度範囲にある温水を加熱して循環させることにより熱供給されて形成され、上記低温層は、該低温層よりも低温の水を加熱して循環させることにより熱供給されており、上記高温層から高温熱需要手段を機能させるための温水を供給し、該高温熱需要手段を機能させて温度の低下した排水を上記中温層へと循環させ、上記中温層から中温熱需要手段を機能させるための温水を供給し、該中温熱需要手段を機能させて温度の低下した排水を上記低温層へと循環させ、上記低温層から低温熱需要手段を機能させるための温水を供給し、上記低温熱需要手段を機能させて温度の低下した排水は、調整層へと循環されており、上記各熱需要手段へと温水を供給することを特徴とする温水供給システムが提供される。
【0013】
本発明の請求項2の発明によれば、上記高温層は、80℃以上の温度範囲とされ、上記中間層は、40℃〜60℃とされ、上記低温層は、略40℃とされていることを特徴とする温水供給システムが提供される。
【0014】
本発明の請求項3の発明によれば、上記中温層には、上記低温層の温水が加熱手段を通して循環されることを特徴とする温水供給システムが提供される。
【0015】
本発明の請求項4の発明によれば、高温層と、中温層と、低温層とからなる温度成層が形成され、上記高温層は、上記中温層の上部で該中温層の温度範囲にある温水を加熱して循環させることにより熱供給されて形成され、上記中温層は、上記低温層の上部で該低温層の温度範囲にある温水を加熱して循環させることにより熱供給されて形成され、上記低温層は、該低温層よりも低温の水を加熱して循環させることにより熱供給されて形成された単一の蓄熱槽を備え、上記高温層から高温熱需要手段を機能させるための温水を供給し、該高温熱需要手段から排出される温度の低下した温水を上記中温層へと循環させると共に、上記中間層から中温熱需要手段を機能させるための温水を供給し、該中温熱需要手段から排出される温度の低下した温水を上記低温層へと循環させ、上記低温層から低温熱需要手段を機能させるための温水を供給し、該低温熱需要手段からの排水は、調整層へと循環されており、上記各熱需要手段へと温水を供給することを特徴とする温水供給システムを備える建造物が提供される。
【0016】
本発明の請求項5の発明によれば、上記高温熱需要手段と、上記中温熱需要手段と、上記低温熱需要手段とが設置され、上記高温層,上記中温層,上記低温層のうち少なくとも1つの層から対応する温度の温水を用いる上記熱需要手段へと温水が各階毎に供給されることを特徴とする建造物が提供される。
【0017】
本発明の請求項6の発明によれば、上記高温層は、80℃以上の温度範囲とされ、上記中温層は、40℃〜60℃とされ、上記低温層は、略40℃とされていることを特徴とする建造物が提供される。
【0018】
本発明の請求項7の発明によれば、上記低温層の温水を太陽熱温水器を通して上記中温層へと循環させることを特徴とする建造物が提供される。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面を参照してより詳細に説明する。図1は、本発明に用いるカスケード型蓄熱方式の概念を示した図である。本発明に用いるカスケード型蓄熱槽1は、内部が各層別に仕切られていない単一の蓄熱槽として構成されており、その内部に最上部から高温層2と、中温層3と、低温層4とからなる温度成層が形成されている。高温層2と中温層3との間には、両層が僅かに混合された混合域5が形成されている。同様に中温層3と低温層4との間には、これらの層が互いに混合された混合域6が形成されていて、各層が定常的にカスケード型蓄熱槽内に存在するように熱及び温水循環量等が設定されている。
【0020】
高温層2は、コ・ジェネレーション、ヒートポンプ等の高温熱源7により加熱された中温層3の上側の部分からの温水が循環されて加熱されており、中温層3は、太陽熱、中温度熱源といった中温熱源8により加熱された低温層4の上側から導出された温水が循環され、さらに低温層4は、生活排熱や、それ以外の低温度熱源等の低温熱源9によって加熱された調整層10からの温水により加熱されている。また、図1には、調整層10と低温層4との間には混合域11が形成されているのが示されている。
【0021】
図1中に示されたカスケード型蓄熱方式における熱供給を説明すると、まず、高温層2からの水を高温の熱を必要とする高温熱需要手段12へと供給し、エネルギーを消費して低温とされた排水を中温層3の上部へと供給する。中温層3からは、中温の熱を必要とする中温熱需要手段12へと温水が供給され、この中温熱需要手段13の排水が低温層4の上部へと供給されているのが示されている。さらに低温層4からは、低温の熱を必要とする低温熱需要手段14へと温水が供給されていて、低温熱需要手段14の排水が調整層10へと供給されているのが示されている。調整層10に一旦蓄積された低温層4よりも低温の水は、生活排熱といった低温熱源9により所定の温度にまで加熱された後、低温層4へと循環されていて、カスケード式に熱利用すことが可能とされている。
【0022】
図1中では調整層10は、カスケード型蓄熱槽1に隣接して設けられているのが示されているが、本発明においては、カスケード型蓄熱槽1の外部に調整層10と同様の機能を有するシステムを設けておくようにしても良い。また、この構成とする場合には、混合域11は必ずしも形成されなくとも良い。さらに、このシステムは、低温層4ばかりにではなく、所望により高温層2、中温層3の範囲の温度にまで低温の水を加熱して、各層へと供給するようにされている。また、低温層4からは、ヒートポンプ等の加熱手段15を介して中温度熱需要手段13へと供給されていて、カスケード型蓄熱槽1の熱的効率をさらに向上させている。
【0023】
この加熱手段15は、図1に示されるように直接中温熱需要手段13を機能させるのではなく、中温層3へと循環されるように構成することも可能である。また、本発明の温水供給システムにおいては、上述したカスケード式の熱供給は、高温層2から順次中温層3,低温層4へと排水を供給するものばかりではなく、中温層2から中温熱需要手段13へと温水を供給し、中温熱需要手段13からの排水を低温層4へと循環させる構成を含むものでも良い。
【0024】
図2は、本発明のカスケード型蓄熱槽1の内部に形成される温度成層の温度分布を高温層2と低温層4とについて示した概略図である。縦軸は、高温層2及び中温層4の各層の合計高さで規格化した無次元高さhであり、横軸は、高温層2から中温層4までの高さ方向の温度差で規格化した無次元温度である。本発明に用いるカスケード型蓄熱槽1は、内部が仕切られていない単一の蓄熱槽の内部に高温層2と、中温層3と、低温層4といった、互いに温度範囲が異なる3つの層からなる温度成層を形成させるものである。このような温度成層は、加熱された水の比重及び各層への温水循環による加熱条件等を適宜選択することによって形成することができる。
【0025】
また、図2に示されるように、本発明に用いるカスケード型蓄熱槽1内においては、さらに高温層2と中温層3、中温層3と低温層4とのそれぞれの間において互いの層が混合した混合域が形成される。この混合域をできるだけ最小にするように温水循環量及び温度、循環位置等を設定することによりカスケード型蓄熱槽1内部において温度成層を形成させることが可能となる。理想的に温度成層が形成された場合の温度分布は、図2中、破線で示されている。また、図2では、高温層2と、中温層3と、低温層4との体積は異なるように示されているが、図1で説明したようにカスケード型蓄熱槽1中において、高温層2と、中温層3と、低温層4とを互いに形成する場合には、適宜いかなる体積として形成することもできる。
【0026】
このような温度成層を形成するためには、少なくとも高温層2の上部を例えば高温熱源7により加熱した温水を循環させて加熱し、高温層2の下側部から熱需要手段に供給する温水を排出させると共に、中温層3を低温層4からの温水を中温熱源8又は加熱手段15により加熱して中温層3の上部へと循環させることにより形成させることができる。また、中温層3と低温層4との間についても同様な方法で形成させることができる。上述した高温層の温度範囲としては、都市居住における用途を考慮すれば、約80℃以上とされることが好ましく、中温層の温度範囲としては約40℃〜約60℃とされることが好ましく、低温層の温度範囲としては約20℃〜約40℃とされていることが好ましい。
【0027】
図3は、本発明において用いるカスケード型蓄熱槽1の断面図である。本発明に用いるカスケード型蓄熱槽1には、少なくとも高温層2,中温層3,低温層4にそれぞれ高温熱源7,中温熱源8,低温熱源9により加熱された温水を導入するための温水供給口16a,16b,16cと、高温層2,中温層3,低温層4からそれぞれの高温熱需要手段12,中温熱需要手段13,高温熱需要手段14へと温水を供給するため、温水を排出する温水排出口17a,17b,17cとが設けられているのが示されている。図3においては、各層あたり温水供給甲16a,16b,16c及び温水排水口17a,17b,17cは、それぞれ1つずつ設けられているのが示されているが、必要に応じていくつでも設けることが可能である。図3に示す温水供給口16a,16b,16c及び温水排出口17a,17b,17cは、本発明のカスケード型蓄熱槽1の温度成層を良好に形成させる必要があり、特にカスケード型蓄熱槽1に隣接した開口部形状により、温度成層における混合域の幅が左右されることになる。
【0028】
図4は、温水供給口16a,16b,16c及び温水排出口17a,17b,17cのカスケード型蓄熱槽1に隣接した側の開口部形状を示した図である。本発明において用いる温水供給口及び温水排出口等の形状は、図4(a)に示されるようにパイプ18を単に切断した円形とされていても良く、また図4(b)に示されるようにパイプ18の先端部に複数のじゃま板19a,19bを間隔dで設けて、じゃま板19a,19bの隙間hから温水を吐出させて温水供給口付近における温水の流れを妨げるような、整流器型の形状とされていても良い。
【0029】
図5は、本発明に用いることができる温水供給口及び温水排出口のカスケード型蓄熱槽1に隣接する側の開口部のさらに変形例を示した図である。本発明に用いる温水供給口及び温水排出口等の形状は、図5(a)に示すように、パイプ18の先端部に対して方形の排出口が形成されたプレート部材20を取り付けて方形とされていても良く、また図5(b)に示すように、長方形の排出口が形成されたプレート部材21を取り付けて長方形とされていても良い。
【0030】
本発明においては、図4及び図5に示したいかなる形状の温水供給口及び温水排水口であっても用いることができるが、図2に示した混合域をシャープに形成させる、すなわち混合域の幅をより小さくするためには、図4(b)に示す整流器型の形状とされていることが好ましいことが見出された。図4(b)に示す整流器型形状の寸法には特に制限はないが、じゃま板19a,19bの径dと隙間hとの比(h/d)が0.9〜0.009の間とされていることが好ましい。
【0031】
また、図3に示したカスケード型蓄熱槽1は、温水排出口17a,17b,17cから直接温水を排出する構成とされているが、本発明においては温水を各熱需要手段へと供給させるため、所定の熱需要手段によりエネルギーが消費されて温度が低下した温水を通した循環用パイプをカスケード型蓄熱槽1の内部に挿通して、カスケード型蓄熱槽1内の温水と熱交換させた後、再度所定の熱需要手段へと循環パイプを通して供給するようにすることもできる。この構成を用いれば、熱需要手段により消費される温水の量が大きく変動した場合にもカスケード型蓄熱槽1の内部の温度成層を維持させるための熱供給及び温水循環量とは別に熱需要手段への温水供給をよりいっそう容易に制御することができる。
【0032】
図6は、本発明の温水供給システムの配管を具体的に示した配管図である。図6に示した本発明の温水供給システムでは、カスケード型蓄熱槽1は、内部に高温層2と、中温層3と、低温層4とからなる温度成層が形成されている。高温層2は、中温層3からライン22を介して排出される温水を地表面G.Lに配置されたヒートポンプ23により加熱した後、高温層2へとライン24を通して循環させることにより加熱されている。このヒートポンプ23は、可逆運転可能とされていても良く、例えば中温層3からの温水供給量が多い場合には、高温層2からの温水を冷却して中温層3へと導入すると共に、低温層4からも温水供給を行って、カスケード型蓄熱槽1内部の温度成層を維持させるようにされていても良い。図6では、ライン22には、流量計22−1が設けられ、ライン24には、バルブ24−1が設けられ、後述するライン25には、流量計25−1が設けられ、ライン27には、バルブ27−1が設けられ、ライン42の上部にはエアー抜きバルブ42−1が設けられているのが示されているが、本発明の温水供給システムにおいては、所望によりいかなる位置にバルブ、流量計、圧力計、ポンプといった手段を配置させることも可能である。
【0033】
高温層2の85℃付近の温水は、さらにライン25により地表面G.Lに設置された冷凍機26へと供給され、冷凍機26を駆動して温度が80℃程度まで低下した温水をライン27を介して高温層2の底部へと循環させている。この冷凍機26は、低温の熱を必要とする例えば空調機冷却用の冷水を製造するために用いられており、この冷水は、図示しないラインにより冷房が必要とされる空間へと供給されるようにされている。上述した冷凍機26は、さらに図示しない冷却塔により冷却されるようにされていても良い。
【0034】
中温層3は、その底部付近において中温熱源8として用いられる周辺設備の排熱を利用して加熱された低温層4から導出された温水がライン28を介して循環され加熱されている。さらに中温層3の上部には、低温層4の底部から導出された低温の温水がライン29から加熱手段15へと供給され、中温層3における最高温度付近にまで加熱された後、ライン30を通して中温層3へと再度供給されていて、高温層2と中温層3との間に温度成層を形成させる構成とされている。このライン30は、必要に応じて中温度熱需要手段13へと直接導かれ、中温度熱需要手段13を機能させる構成とされていても良い。上述した加熱手段15としては、上述したようにヒートポンプ等を用いることもできるが、加熱手段15としては、建造物の屋上に配置された利用効率の低い太陽光線を用いる太陽熱温水器とすることもできる。
【0035】
低温層4は、低温熱源9により加熱された温水がライン31により導入されて加熱が行われている。また、低温層4の底部は、ライン32を通して調整層10として機能する図示しないヒートポンプといった加熱手段、蓄熱手段、冷凍機、圧縮機、循環ポンプ等から構成された調整システム33へと連通されている。この調整システム33は、低温層4から低温熱需要手段14へとライン34を通じて供給され、熱エネルギーを放出して低温層4よりも低温とされた排水の熱をライン35を通して受け取っている。
【0036】
調整システム33により加熱された例えば低温熱需要手段14からの排水は、調整システム33内に含まれる図示しないヒートポンプ等により加熱され、低温層4に適合する範囲の温水とされた後、低温層4の底部へとライン32、又は図示しない別のラインを介して供給され、再度低温層4における低温熱需要手段14への供給のために用いられるようにされている。
【0037】
図6においては、調整システム33からの温水を低温層4へと戻すものとして説明した。しかしながら本発明においては、高温熱需要手段12,中温熱需要手段13,低温熱需要手段14といったそれぞれ温水需要量が異なり、また季節的にも温水供給量が変動する温水供給量に対応しつつ、安定な温水供給を行う必要がある。このため、本発明の温水供給システムは、調整システム33により加熱される水は、必ずしも低温層4のみに対応させて加熱して循環させるのみではなく、適宜高温層2,中温層3の温度成層の形成に影響を及ぼさない程度の温度にまで調整システム33内において加熱された後、所定の層へと戻されるように構成される。上述の構成とすることにより、カスケード型蓄熱槽内における各層の実質的な体積が温水供給量により変化しないようにさせつつ、各熱需要手段へと温水を供給することが可能となり、各層の体積が大きく変動することによる温度成層間の温度均一化を防止しつつ、安定な温水供給を行うことが可能となる。この点からは、上述したように高温層2,中温層3,低温層4から供給する温水をカスケード型蓄熱槽1内から直接供給するのではなく、カスケード型蓄熱槽1内に熱交換パイプを挿通させて熱交換させた後各熱需要手段へと再循環させることも可能である。
【0038】
上述したように形成された高温層2、中温層3、低温層4から各熱需要手段への熱、すなわち温水の供給についてさらに図6を用いて説明する。高温層2からは、ライン36を通して約80℃の温水が供給されている。このライン36の温水からの熱エネルギーが高温熱需要手段12により消費されることになる。ライン36からの温水は、高温熱需要手段12によりその熱エネルギーが抽出されてしまうので温度が低下する。この温度が低下した温水は、高温熱需要手段12から排出されて、ライン37を介して約60℃の中温層3の中間部へと導入される。
【0039】
次いで中温層3から中温熱需要手段13へと、ライン38を介して温水が供給され、その熱エネルギーが抽出され、抽出された熱エネルギーが中温熱供給手段13において消費される。熱エネルギーが消費されて低温となった排水は、ライン39を通して約20℃〜約40℃とされた低温層4の上部へと導入される。
【0040】
低温層4からは、ライン34を通して低温熱需要手段14へと熱エネルギーが供給される。低温熱需要手段14から排出された排水は、ライン35を通して調整システム33へと導入され、図示しない家庭内生活排熱、ヒートポンプ、蓄熱手段等により適切な温度とされた後、高温層2,中温層3,低温層4といった所望の層へと供給される。
【0041】
さらに、図6に示されるように高温層2の温水は、ライン40を介して建造物41内へと導入され、建造物41内の図示しない高温熱需要手段へと熱エネルギーを供給する。この高温層4から供給される温水は、高温熱需要手段を機能させて熱エネルギーを放出した後、ライン42を介して高温層2へと循環されている。また、上述した高温層2からの温水は、建造物41内へと導入されて、高温熱需要手段へとエネルギーを放出した後、再度高温層2へと戻されるのではなく、カスケード型熱利用ができるように、中温層3へと導入する構成とすることもできる。
【0042】
また、中温層3及び低温層4からそれぞれそれぞれ建造物41内に設置された図示しない中温熱需要手段及び低温熱需要手段へと供給される温水は、中温熱需要手段及び低温熱需要手段へと熱エネルギーを放出した後、カスケード型蓄熱槽1内での温度成層を乱さない場合には、再度中温層3及び低温層4へと戻されても良い。また、中温層3及び低温層4から供給され、中温熱需要手段及び低温熱需要手段において熱エネルギーを放出した排水は、その後それぞれの循環ラインにより中温層4及び調節システム33へとそれぞれ循環させるようにすることも可能である。
【0043】
上述した循環方法のうち、図6では、低温層4から建造物41の内部に設置された低温熱需要手段へと温水が供給され、低温熱需要手段14により熱エネルギーが抽出された低温の排水がライン43を通して調整システム33へと循環されて上述したように加熱された後、所定の熱需要手段へと供給されるのが示されている。いずれの循環方法を採用する場合でも、上述したカスケード型蓄熱槽1から各熱需要手段への温水供給は、カスケード蓄熱槽1内の各混合域を実質的に拡大させないようにして行われる。
【0044】
また、上述した高温熱需要手段12、中温熱需要手段13,低温熱需要手段14には、必要に応じてカスケード型蓄熱槽1から供給される温水と熱交換を行うための図示しない熱交換器が適宜設けられていても良い。
【0045】
図7は、本発明の温水供給システムを備えた建造物41を示した図である。図7においては説明の便宜上、カスケード型蓄熱槽1の温度成層を維持させるための配管については省略して示している。建造物41には、屋上に太陽熱温水器44が設けられていて、低温層4から中温層3の上部へと循環される温水を所定の温度にまで加熱させている。このように加熱された温水は、ライン30を介して中温層3の上部へと循環されて、中温層3に対して熱供給を行う。構造物41は、さらに、屋上緑化されていても良い。
【0046】
建造物41には、共用部熱需要手段として、ファンコイルユニットFCU,ランドリーL,ボイラーB,サウナSといった高温熱需要手段と、コンポストといった生ゴミ処理装置Cといった中温熱需要手段と、プールPといった低温熱需要手段とが設けられている。また建造物41には、複数の階床45が設けられていて、各階床45における居住空間内には、飲食用の給湯設備HWSS,居室用ファンコイルユニットLFCU,浴室乾燥機BDといった高温熱需要手段と、床暖房FHといった中温熱需要手段と、浴槽BHといった低温熱需要手段とが設けられているのが示されている。
【0047】
また、図7では、高温層2から供給された温水と熱交換を行って、居住空間内へと温水供給を行うための熱交換器46が別途設置されているのが示されている。この熱交換器46は、建造物41の階床45に設置される必要な熱需要手段に対応して個別に設けることもできる。この熱交換器46は、カスケード型蓄熱槽1から供給される温水と上水とを熱交換させて、各熱需要手段へとエネルギーを与えるようにするものである。
【0048】
本発明の建造物41においては、上述した各階床45ごとにカスケード型蓄熱槽1の高温部2,中温部3,低温部4の少なくとも1つの層から上述した各熱需要に適合した熱需要手段へと温水による熱エネルギーを供給する温水供給ラインが設けられていることが好ましい。
【0049】
図7中では、中温層3部分に連結された1本のライン47を介して、各階床45の熱需要手段のうちの1つ、例えば床暖房FHへと各階床毎にライン48,49を通して各階床45ごとに温水が供給されているのが示されている。図示した階床45a,45b以外の階床の床暖房FHに対しても、同様にして各階毎に温水が供給されている。さらに、ライン48,49には、各階床毎に異なる水頭圧を調節するための圧力調節手段が設けられていて、水圧が均一化されるようにされていても良い。上述したような圧力調節手段としては、加圧手段、絞り手段、増圧ポンプといった手段の他、これまで知られているいかなる手段でも用いることができる。
【0050】
上述の構成とすることにより、特に浴槽BHや、床暖房FHといった比較的温水を消費する中温熱需要手段や低温熱需要手段について、各階床45に対して1つの配管から温水を供給するよりも各階床毎に相違する水頭圧の影響を最小限に抑えながら熱需要手段に対して均等な温水の供給を行うことが可能となる。また、本発明の建造物41においては、中温熱需要手段に対して各床毎に中温層3から温水を供給するのみではなく、高温層2及び低温層4からも同様にして各階床41毎に温水を供給するようにされていても良い。
【0051】
本発明はこれまで、図面に示した実施例を持って説明してきたが、温度成層により形成される各層の総数は、所望によりいくつでも形成することができる。また、カスケード型蓄熱槽には当業界において知られているいかなる断熱手段を用いることもできし、温度成層される各層の温度範囲は、所望により適宜設定することが可能である。また、本発明においては、建造物として居住用の建造物を用いて説明したが、必ずしも居住用建造物である必要はなく、複数の階床を有するいかなる建造物に対しても本発明が適用できることはいうまでもないことである。
【0052】
【発明の効果】
本発明の請求項1の発明によれば、種々の熱需要に応じた熱供給が可能で、温度成層を良好に維持することができる単一のカスケード式蓄熱槽を有効に用いる温水供給システムが提供でき、蓄熱槽用の加熱手段が温度域ごとに必要とされず効率的な温水供給システムが提供できる。
【0053】
本発明の請求項2の発明によれば、カスケード式蓄熱槽を用い、都市居住に必要とされる熱需要を賄うことが可能な温水供給システムが提供できる。
【0054】
本発明の請求項3の発明によれば、カスケード型蓄熱槽の効率をより向上させた温水供給システムが提供できる。
【0055】
本発明の請求項4の発明によれば、都市生活において最も必要とされる温度において温水を供給することができ、単一のカスケード式蓄熱槽を有効に用いる温水供給システムが提供でき、蓄熱槽用の加熱手段が温度域ごとに必要とされず効率的な温水供給システムを用いた省エネルギー対応の建造物が提供できる。
【0056】
本発明の請求項5の発明によれば、各階床への温水の供給の際の水頭圧の影響を低減して良好な熱供給を行うことを可能とするカスケード型蓄熱槽の効率をより向上させた建造物が提供できる。
【0057】
本発明の請求項6の発明によれば、カスケード式蓄熱槽を用い、都市居住に必要とされる熱需要を賄うことが可能な温水供給システムを備えた建造物が提供できる。
【0058】
本発明の請求項7の発明によれば、太陽エネルギーといったエネルギーを有効に活用して効率の向上したカスケード式蓄熱槽を用い、種々の熱需要に対応可能な省エネルギー化が可能な建造物が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いるカスケード型蓄熱槽の概念図。
【図2】本発明のカスケード型蓄熱槽内部に形成される温度成層を示した概略図。
【図3】本発明に用いるカスケード型蓄熱槽の断面図。
【図4】本発明に用いるカスケード型蓄熱槽の温水供給口の形状を示した図。
【図5】本発明に用いるカスケード型蓄熱槽の温水供給口の形状を示した図。
【図6】本発明の温水供給システムの配管図。
【図7】本発明の温水供給システムを備える建造物の概略図。
【符号の説明】
1…カスケード型蓄熱槽
2…高温層
3…中温層
4…低温層
5…混合域
6…混合域
7…高温熱源
8…中温熱源
9…低温熱源
10…調整層
11…混合域
12…高温熱需要手段
13…中温熱需要手段
14…低温熱需要手段
15…加熱手段
16a,16b,16c…温水供給口
17a,17b,17c…温水排出口
18…パイプ
19…じゃま板
20…プレート部材
21…プレート部材
22…ライン
22−1…流量計
23ヒートポンプ
24…ライン
24−1…バルブ
25…ライン
25−1…流量計
26…冷凍機
27…ライン
27−1…バルブ
29…ライン
30…ライン
31…ライン
32…ライン
33…調整システム
34…ライン
35…ライン
36…ライン
37…ライン
38…ライン
39…ライン
40…ライン
41…建造物
42…ライン
42−1…エアー抜きバルブ
44…太陽熱温水器
45…階床
46…熱交換器
47…ライン
48…ライン
49…ライン
FCU…ファンコイルユニット
L…ランドリー
B…ボイラー
S…サウナ
C…生ゴミ処理装置
P…プール
HWSS…給湯設備
LFCU…居室用ファンコイルユニット
BD…浴室乾燥機
FH…床暖房
BH…浴槽
Claims (7)
- 高温層と、中温層と、低温層とを内部に形成する単一の蓄熱層と、
前記各層の温水を利用する複数の熱需要手段とを備え、
前記高温層は、前記中温層の上部で該中温層の温度範囲にある温水を加熱して循環させることにより熱供給されて形成され、
前記中温層は、前記低温層の上部で該低温層の温度範囲にある温水を加熱して循環させることにより熱供給されて形成され、
前記低温層は、該低温層よりも低温の水を加熱して循環させることにより熱供給されており、
前記高温層から高温熱需要手段を機能させるための温水を供給し、該高温熱需要手段を機能させて温度の低下した排水を前記中温層へと循環させ、前記中温層から中温熱需要手段を機能させるための温水を供給し、該中温熱需要手段を機能させて温度の低下した排水を前記低温層へと循環させ、前記低温層から低温熱需要手段を機能させるための温水を供給し、前記低温熱需要手段を機能させて温度の低下した排水は、調整層に循環されており、前記各熱需要手段へと温水を供給することを特徴とする温水供給システム。 - 前記高温層は、80℃以上の温度範囲とされ、前記中間層は、40℃〜60℃とされ、前記低温層は、略40℃とされていることを特徴とする請求項1に記載の温水供給システム。
- 前記中温層には、前記低温層の温水が加熱手段を通して循環されることを特徴とする請求項1又は2に記載の温水供給システム。
- 高温層と、中温層と、低温層とからなる温度成層が形成され、
前記高温層は、前記中温層の上部で該中温層の温度範囲にある温水を加熱して循環させることにより熱供給されて形成され、
前記中温層は、前記低温層の上部で該低温層の温度範囲にある温水を加熱して循環させることにより熱供給されて形成され、
前記低温層は、該低温層よりも低温の水を加熱して循環させることにより熱供給されて形成された単一の蓄熱槽を備え、
前記高温層から高温熱需要手段を機能させるための温水を供給し、該高温熱需要手段から排出される温度の低下した温水を前記中温層へと循環させると共に、前記中間層から中温熱需要手段を機能させるための温水を供給し、該中温熱需要手段から排出される温度の低下した温水を前記低温層へと循環させ、前記低温層から低温熱需要手段を機能させるための温水を供給し、該低温熱需要手段からの排水は、調整層に循環されており、前記各熱需要手段へと温水を供給することを特徴とする温水供給システムを備える建造物。 - 前記高温熱需要手段と、前記中温熱需要手段と、前記低温熱需要手段とが設置され、前記高温層,前記中温層,前記低温層のうち少なくとも1つの層から対応する温度の温水を用いる熱需要手段へと温水が各階毎に供給されることを特徴とする請求項4に記載の建造物。
- 前記高温層は、80℃以上の温度範囲とされ、前記中温層は、40℃〜60℃とされ、前記低温層は、略40℃とされていることを特徴とする請求項4に記載の建造物。
- 前記低温層の温水を太陽熱温水器を通して前記中温層へと循環させることを特徴とする請求項4,5又は6に記載の建造物。
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