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JP4182449B2 - 核酸導入時の細胞障害を低減する方法 - Google Patents
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本発明は、核酸を導入する際、細胞への導入を妨げることなく、細胞障害を低減する方法に関する。更に詳しくは、核酸導入後の適切な時間に、酸性多糖を添加することにより、効率的な核酸の導入と細胞障害の低減の両方を成し遂げるための方法に関する。
細胞に核酸を導入する技術は、遺伝子産物の機能解析、タンパク質発現、遺伝子発現の抑制、転写制御領域の解析などの基礎的な分野から、遺伝子治療等の応用分野まで、幅広く用いられる基本的な技術となっている。
細胞に核酸を導入する方法として、エレクトロポレーション法、マイクロインジェクション法などの物理的方法、リン酸カルシウム、DEAE−デキストラン、脂質、リポソーム、ポリマー等の物質を用いる化学的方法、アデノウイルス、レトロウイルス等を用いる生物学的方法が知られている。化学的方法は、簡便であるため、現在、様々な核酸導入用試薬が市販され、広く使用されている。また、これらの方法は、安全性が高い、大スケールでの製造が容易、簡便に使用可能等の理由により、in vivoでの使用にも適していると考えられている。
しかしながら、これらの手法の欠点として、細胞障害が生じやすい、核酸の導入が困難な細胞が存在する、実験の再現性が低い、等が挙げられるが、その中でも、最も深刻なのは細胞障害である。細胞障害は、核酸導入用試薬の種類および使用量、DNAと核酸導入用試薬の混合比、細胞の種類、核酸導入時の細胞数、細胞の状態等の諸要因に影響を受ける。細胞への核酸の導入率もまた、これらの要素の影響を受け、細胞へのダメージを低減するために上記条件を調節すると、導入率の低下が見られることが多い。
細胞障害を低減させる方法として、核酸を導入した後に、培地交換を行う方法が提唱されているが、それほどの効果が認められないことが多く、また、煩雑な手間がかかるとの問題がある。更に、培地交換を行うタイミングによっては、細胞への核酸の導入率が低下してしまうこともある。
核酸導入時に表れる細胞への障害を低減する方法として、唯一Dragomir, A.らによって、低分子量化ヘパリンをトランスフェクション後2時間以内に添加する方法が報告されている(非特許文献1)。この報告では、CFBE(Cystic fibrosis human bronchial epithelial cells)、CFSME(Cystic fibrosis submucosal epithelial cells)細胞を対象に、GenePorter2(Gene Therapy Systems製)あるいはポリエチレンイミン(25kDa、Sigma−Aldrich製)を用いトランスフェクションを実施し、トランスフェクションの2時間後に、新しい培地に交換、培地中に低分子量化ヘパリンを添加することで、細胞障害を低減可能であることが示されている。しかしながら、この方法では、顕著な遺伝子導入率の低下が見られている。すなわち、効率的な核酸の導入と細胞障害の低減の2つの課題を同時に達成できていない。また、この方法は、トランスフェクション後に培地を除去し、新しい培地に交換する過程を含んでおり、煩雑な手間がかかってしまう。
Life Sciences 75, 2203−2216 (2004)
従来技術では、低分子量化ヘパリンの添加により、核酸導入時に表れる細胞障害を低減することが可能であるものの、細胞への核酸の導入が妨げられるとの問題がある。従って、本発明の目的は、動物細胞に核酸を導入する際、遺伝子導入を妨げることなく、細胞障害を低減する方法を提供することにある。
本発明者らは、種々検討の結果、意外にも、トランスフェクションから低分子量化ヘパリンの添加までの時間(トランスフェクションにより障害を受けた細胞の回復に寄与する低分子化ヘパリンを添加するまでの時間)を、逆に2時間からさらに延長することにより、遺伝子導入率を低下させることなく、細胞障害の低減が可能であることを見出した。
本発明者らは、また、フコイダン、ヘパリン、デキストラン硫酸、コンドロイチン硫酸C、アルギン酸、コンドロイチン硫酸Bなどの、低分子量化ヘパリン以外の化合物を用いることで細胞障害が低減することも見出した。
すなわち、本発明は以下の構成からなる。
項1.
核酸導入(トランスフェクション)用試薬を用いて動物細胞に核酸を導入する際の細胞障害を低減するための方法であって、核酸導入後に培地に酸性多糖成分を添加することを特徴とする細胞障害の低減方法。
項2.
酸性多糖が硫酸基を有することを特徴とする、請求項1に記載の細胞障害の低減方法。
項3.
酸性多糖が2糖以上の繰り返し構造を有することを特徴とする、請求項2に記載の細胞障害の低減方法。
項4.
酸性多糖がヘパリン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、フコイダン、デキストラン硫酸、ケラタン硫酸からなる群より選択される1つ以上である、請求項3に記載の細胞障害の低減方法。
項5.
酸性多糖が、低分子量化されていることを特徴とする請求項4に記載の細胞障害の低減方法。
項6.
酸性多糖を、核酸導入後2時間以降(2時間は含まない)に培地に添加することを特徴とする請求項1に記載の細胞障害の低減方法。
項7.
酸性多糖成分の添加時に培地交換を行う請求項1に記載の細胞障害の低減方法。
項8.
細胞への核酸の導入に、リン酸カルシウム、DEAE−デキストラン、脂質、リポソーム、ポリマーからなる群より選択される物質を用いる、請求項1に記載の細胞障害の低減方法。
項9.
請求項1〜8に記載の方法で使用する酸性多糖を成分として含む、細胞障害を低減させる試薬またはキット。
本発明により、細胞への核酸の導入を妨げることなく、核酸導入時に表れる細胞障害を低減することができるようになった。そのため、動物細胞への核酸の導入を簡便、容易、かつ、再現性よく実施できるようになった。
本発明でいう、細胞障害とは、核酸導入用試薬の添加によって引き起こされる細胞死、あるいは、細胞の形態変化を意味する。この細胞障害は、核酸導入実施後、MTT法、LDH法などにより評価することができる。MTT法では、MTT、XTT、MTS、WST等のテトラゾリウム塩を用い、これらの物質が生細胞内ミトコンドリア脱水素酵素によって還元され、ホルマザンを生成する性質を利用している。本方法では、生じたホルマザンの吸光度を測定することにより、生細胞数を算出することができる。また、LDH法では、細胞膜に障害を受けた死細胞から遊離した乳酸脱水素酵素を測定することにより、細胞障害を評価する。
本発明は、核酸導入後に酸性多糖成分を添加することを特徴とする細胞障害の低減方法である。
酸性多糖成分は、バッファーに溶解し、水溶液として添加することが好ましい。酸性多糖成分を溶解するバッファーとしては、特に限定されないが、例えばHEPESバッファー、リン酸バッファーなどがあげられる。
本発明において、トランスフェクション後に添加する多糖は、酸性残基を有している、いわゆる酸性多糖と呼ばれるものを用いる。好ましくは、硫酸基を有するもので、例えばヘパリン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、フコイダン、デキストラン硫酸、ケラタン硫酸があげられる。より好ましくは、糖2分子当たり、硫酸基を複数含むものであり、特に限定されないが、ヘパリン、ヘパラン硫酸、フコイダン、デキストラン硫酸があげられる。更に好ましくは、酸性多糖が生体由来であるものであり、例えば、ヘパリン、ヘパラン硫酸があげられる。
また、酸性多糖は、低分子量化されていてもよく、例えば、低分子量化ヘパリン、低分子量化フコイダンを用いてもよい。ここでいう低分子量化とは、酸性多糖を化学的または酵素的に分解することを意味する。用いる低分子量化ヘパリン、低分子量化フコイダンは、好ましくは分子量2,000〜8,000Da、更に好ましくは分子量4,000〜6,000Daのものである。
また、本発明における酸性多糖は、種々の塩の化合物として供給されると考えられるが、種類は限定されない。例えば、ナトリウム塩、アンモニウム塩、リチウム塩、カルシウム塩を用いることができる。
本発明においては、トランスフェクションから酸性多糖の添加までの時間(トランスフェクションにより障害を受けた細胞の回復に寄与する酸性多糖を添加するまでの時間)は、2時間を超える長さとすることが好ましく、より好ましい下限は3時間、更に好ましくは4時間、より好ましい上限は12時間、更に好ましくは10時間である。これにより、遺伝子導入率を低下させることなく、細胞障害の低減が可能になる。
また本発明においては、核酸の導入後、培地交換を行い、核酸導入用試薬を除去した後に、酸性多糖成分の添加を行ってもよい。培地交換のタイミングは、酸性多糖成分の添加の直前が好ましい。この場合、単に酸性多糖成分を添加したときと比較し、更なる細胞障害の低減効果が得られることがある。
本発明において、細胞への核酸の導入方法には特に限定されない。核酸の導入方法として、例えば、リン酸カルシウム法、DEAE−デキストラン法、リポフェクション法などが挙げられる。
今回の検討では核酸導入用試薬として、ポリマーの1種のポリエチレンイミン、および、脂質を主成分とするLipofectamine2000を用いたが、本発明の範囲は、これらに限定されるものではなく、核酸を導入するために、他の脂質、あるいは、他のポリマーを主成分とする試薬、あるいは、リン酸カルシウム、DEAE−デキストランを主成分とするいずれの試薬を用いても差し支えない。
また本発明においては、導入する核酸の種類にも限定されない。非特許文献1では、プラスミドDNAを導入した場合に、細胞障害の低減が可能であるとの結果が開示されているのみである。一方、本発明では、プラスミドDNAだけでなく、RNA、および、siRNAを導入した場合でも、酸性多糖の添加により、細胞障害の低減が可能であった。
当然、使用する細胞の種類も限定されるものではない。今回、COS−7細胞(アフリカミドリザル腎由来)、および、HeLa細胞(ヒト子宮頚部癌由来)を用い検討を行ったが、他の動物細胞を対象に核酸の導入を行った後に、酸性多糖を添加してもよい。
本発明は、更に、本発明の方法で使用する酸性多糖を成分とする細胞障害を低減させる試薬、キットにも及ぶ。本発明の方法を含む試薬を供給することで、多くのユーザーが核酸導入実験を容易にかつ再現性よく実施することができるようになると予想されるからである。
本発明の一態様としては、核酸導入時の細胞障害を低減する試薬、キットを考えることができる。
具体的には、例えば、0.1〜10mg/mLのヘパリン溶液あるいは低分子量化ヘパリン溶液を供給する形態が考えられる。それを、市販あるいは別途調製したトランスフェクション試薬と組み合わせて使用する。例えば、トランスフェクション試薬を用いて核酸を導入し、その2時間後以降(2時間は含まない)に、ヘパリン溶液あるいは低分子量化ヘパリン溶液を培地に添加することにより、細胞の障害性を防止することができる。
あるいは、例えば、上記低分子量化ヘパリン溶液とトランスフェクション試薬とをセットにしたものも、本願発明の試薬またはキットに含まれる。更に、例えば、上記低分子量化ヘパリン溶液、トランスフェクション試薬に加えて、細胞に導入する核酸をセットにしたものもまた、本願発明の試薬またはキットに含まれる。
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
実施例1:低分子量化ヘパリン添加のタイミングの細胞生存率、遺伝子導入率に及ぼす影響
トランスフェクション前日に、12ウェルプレートに1.0×10cells/wellでCOS−7細胞を播種した。トランスフェクションは、ポリエチレンイミン(25kDa、Aldrich製)あるいはLipofectamine2000(Invitrogen製)を用いて行った。
ポリエチレンイミンを用いた場合は、以下の手順に従いトランスフェクションを実施した。pQBI25(Quantum Biotechnologies製)3.0μgとポリエチレンイミン3.0μgを無血清D−MEM中で混合し、室温で20分間静置した。予め、培地を無血清D−MEMに交換しておいた各ウェルに、作成したプラスミドDNAとポリエチレンイミンの複合体溶液を添加し、37℃、5%COインキュベーター内でインキュベートした。インキュベート2、4、6、8、10時間後に、PBSに溶解した1.25mg/mL低分子量化ヘパリン(4,000−6,000Da、Sigma製)溶液10μLを添加した。低分子量化ヘパリン添加の1日後、血清含有D−MEM 1mL を添加し、37℃、5%COインキュベーター内で更に1日間インキュベートした。
また、Lipofectamine2000を用いた場合は、以下の手順に従いトランスフェクションを実施した。pQBI25 1.0μgとLipofectamine2000 2.5μLをOpti−MEM I Reduced Serum Medium(Invitrogen製)中で混合し、室温で20分間静置した(Lipofectamine2000の取扱説明書参照)。各ウェルに、作成したプラスミドDNAとLipofectamine2000の複合体溶液を添加し、37℃、5%COインキュベーター内でインキュベートした。インキュベート2、4、6、8、10時間後に、PBSに溶解した1.25mg/mL低分子量化ヘパリン溶液10μLを添加し、37℃、5%COインキュベーター内で更に2日間インキュベートした。
トランスフェクション後の細胞障害は、テトラゾリウム塩WST−8を含む市販のキットを用い、評価した。具体的には、生細胞数測定試薬SF(ナカライテスク社製)を各ウェルに100μL添加、37℃にて20分間インキュベート後、マイクロプレートリーダーを用い、650nmの吸光度を参照に、450nmの吸光度を測定した。得られた吸光度を基に、トランスフェクションしていない細胞の生存率を100%とし、トランスフェクション後の細胞生存率を算出した。次に、遺伝子導入率について、FACS(fluorescence activated cell sorting)解析により測定した。すなわち、トランスフェクション2日後の細胞をトリプシンで処理後、PBS中に浮遊させ、サンプルとし、FACSCalibur(ベクトンディッキンソン社製)を用い、GFPの発現の有無により遺伝子導入率を算出した。
その結果、図1、2に示す結果を得ることができた。図1、2は、それぞれポリエチレンイミン、Lipofectamine2000を用い、トランスフェクションを実施し、低分子量化ヘパリン添加のタイミングを検討した際の細胞生存率、遺伝子導入率を示す図である。どちらの核酸導入用試薬を用いた場合でも、トランスフェクションの2時間後に低分子量化ヘパリンを添加した場合、十分な細胞障害の低減効果が見られているものの、遺伝子導入率の低下も見られていた。一方、トランスフェクションの4時間後以降に低分子量化ヘパリンを添加した場合には、遺伝子導入率の低下はあまり見られておらず、本条件により細胞障害の低減と効率的な核酸の導入の両方を実現可能であることがわかった。
図1は、低分子量化ヘパリンの添加タイミングに着目し、その細胞生存率、遺伝子導入率に及ぼす影響について、非特許文献1で使用されているポリエチレンイミン(25kDa、Aldrich製)を核酸導入用試薬として用い、COS−7細胞を対象に検討した結果を示す。
トランスフェクションの2時間後に低分子量化ヘパリンを添加した場合、十分な細胞障害の低減が見られたものの、低分子量化ヘパリン未添加と比較し遺伝子導入率の低下が見られていた。一方、トランスフェクションから低分子量化ヘパリンの添加までの時間を延長することにより、遺伝子導入率を低下させることなく、細胞障害の低減が可能であった。
図2は、代表的な核酸導入用試薬のLipofectamine2000(Invitrogen製)を用い、COS−7細胞を対象にトランスフェクションを実施、低分子量化ヘパリンの添加タイミングの細胞生存率、遺伝子導入率に及ぼす影響について検討した結果を示す。
Lipofectamine2000を用いた場合でも、トランスフェクションの2時間後に低分子量化ヘパリンを添加した場合は、十分な細胞障害の低減が見られたものの、低分子量化ヘパリン未添加と比較し遺伝子導入率の低下が見られていた。一方、トランスフェクションから低分子量化ヘパリンの添加までの時間を延長することにより、遺伝子導入率を低下させることなく、細胞障害の低減が可能であった。
以上をまとめると、低分子量化ヘパリン添加のタイミングの細胞生存率、遺伝子導入率に及ぼす影響について検討した結果、核酸の導入から低分子量化ヘパリンの添加までの時間を延長することにより、細胞障害の低減効果を維持しつつ、かつ、効率的に核酸を導入することが可能であった。また、用いる核酸導入用試薬はポリエチレンイミンに限定されず、Lipofectamine2000を用いた場合でも、低分子量化ヘパリンの添加により、細胞障害の低減が可能であった。
実施例2:各種酸性多糖の添加による細胞生存率、遺伝子導入率に及ぼす影響
トランスフェクション前日に、12ウェルプレートにCOS−7細胞の場合1.0×10cells/wellで、HeLa細胞の場合1.5×10cells/wellで播種した。トランスフェクションは、Lipofectamine2000(Invitrogen製)を用い、以下の手順で行った。pQBI25(Quantum Biotechnologies製)1.0μgとLipofectamine2000 2.5μLをOpti−MEM I Reduced Serum Medium(Invitrogen製)中で混合し、室温で20分間静置した(Lipofectamine2000の取扱説明書参照)。各ウェルに、作成したプラスミドDNAとLipofectamine2000の複合体溶液を添加し、37℃、5%COインキュベーター内でインキュベートした。インキュベート6時間後、PBSに溶解した1.25mg/mL各種酸性多糖溶液10μLを添加し、37℃、5%COインキュベーター内で更に2日間インキュベートした。酸性多糖は、低分子量化ヘパリン、フコイダン、ヘパリン、デキストラン硫酸、コンドロイチン硫酸C、アルギン酸、コンドロイチン硫酸B、ヒアルロン酸の計8種類を用いた。
トランスフェクション後の細胞障害は、テトラゾリウム塩WST−8を含む市販のキットを用い、評価した。具体的には、生細胞数測定試薬SF(ナカライテスク社製)を各ウェルに100μL添加、37℃にて20分間インキュベート後、マイクロプレートリーダーを用い、650nmの吸光度を参照に、450nmの吸光度を測定した。得られた吸光度を基に、トランスフェクションしていない細胞の生存率を100%とし、トランスフェクション後の細胞生存率を算出した。次に、遺伝子導入率について、FACS(fluorescence activated cell sorting)解析により測定した。すなわち、トランスフェクション2日後の細胞をトリプシンで処理後、PBS中に浮遊させ、サンプルとし、FACSCalibur(ベクトンディッキンソン社製)を用い、GFPの発現の有無により遺伝子導入率を算出した。
その結果、表1に示す結果を得ることができた。表1は、検討した酸性多糖の特徴と細胞障害の低減効果の強弱の関係を示す表である。表1には、COS−7細胞、HeLa細胞を対象に、Lipofectamine2000を用いトランスフェクションを実施し、その6時間後、各種化合物を添加して検討した結果を示す。
COS−7細胞、HeLa細胞のどちらを対象とした場合も、低分子量化ヘパリン、フコイダン、ヘパリン、デキストラン硫酸、コンドロイチン硫酸C、アルギン酸、コンドロイチン硫酸Bなどの酸性多糖で細胞障害の低減が確認できた。しかし、同じ酸性多糖でもヒアルロン酸では細胞障害の低減が確認できなかった。また、糖2分子当たりに硫酸基を複数(好ましくは1.5〜4分子)含む、低分子量化ヘパリン、フコイダン、ヘパリン、デキストラン硫酸の4種類では、大幅な細胞障害の低減が可能であった。更に、フコイダン、ヘパリン、デキストラン硫酸を用いた場合では、低分子量化ヘパリンを上回る細胞障害の低減効果を確認できた。このとき、どの酸性多糖を用いた場合も、遺伝子導入率の低下はほとんど認められなかった。
なお、低分子量化ヘパリンを遺伝子導入直後に添加した場合はほとんど遺伝子導入されなかった。また、遺伝子導入2時間後に添加した場合でも、遺伝子導入率は25−26%にとどまった。(比較例)
このように、本発明者らは、フコイダン、ヘパリン、デキストラン硫酸、コンドロイチン硫酸C、アルギン酸、コンドロイチン硫酸Bなどの、低分子量化ヘパリン以外の化合物を用いることで細胞障害が低減することを見出した。
Figure 0004182449
実施例3 siRNA導入系での低分子量化ヘパリンの細胞障害低減効果の確認
実施例1で、プラスミドDNAのかわりに、siRNAを用い、低分子量化ヘパリンの効果を検討した。
Neuro 2a細胞、あるいは、HeLa細胞を対象に、Lipofectamine2000を用いてトランスフェクションを行う系で検討した。具体的には、Neg. control siRNA, Fluorescein(Qiagen製)60pmolとLipofectamine2000 3.0μLをOpti−MEM I Reduced Serum Medium中で混合し、室温で20分間静置した(Lipofectamine2000の取扱説明書参照)。各ウェルに、作成したsiRNAとLipofectamine2000の複合体溶液を添加し、37℃、5%COインキュベーター内でインキュベートした。インキュベート6時間後に、PBSに溶解した1.25mg/mL低分子量化ヘパリン溶液10μLを添加し、37℃、5%COインキュベーター内で更に2日間インキュベートした。その後、実施例1での方法を用いて、トランスフェクション後の細胞生存率を算出した。その結果、プラスミドDNAのかわりに、siRNAを用いた場合でも、低分子量化ヘパリンによる細胞障害の低減が確認できた。
本発明の核酸導入時の細胞障害を低減する方法により、効率的な核酸の導入を妨げることなく、細胞への障害を低減することが可能である。遺伝子産物の機能解析、タンパク質発現、遺伝子発現の抑制、転写制御領域の解析などの基礎的な分野から、遺伝子治療等の応用分野にまで利用することができ、産業界に大きく寄与することができる。
COS−7細胞を対象にポリエチレンイミンでトランスフェクションを実施後、低分子量化ヘパリン添加のタイミングを検討した際の、細胞生存率と遺伝子導入率を示す図。図の見方は、例えば、細胞生存率60%で導入率40%のとき、当初100個の細胞があったとすると、100×0.6×0.4=24個の細胞に導入されることを示す。トランスフェクション実施直後の細胞生存率は100%で導入率は0%である。 COS−7細胞を対象にLipofectamine2000でトランスフェクションを実施後、低分子量化ヘパリン添加のタイミングを検討した際の、細胞生存率と遺伝子導入率を示す図。図の見方は、図1と同じ。

Claims (3)

  1. 核酸導入(トランスフェクション)用試薬を用いて動物細胞に核酸を導入する際の細胞障害を低減するための方法であって、Lipofectamine2000(商標)を形質導入用試薬とし、形質導入後「6時間」の時点でフコイダン又はデキストラン硫酸を添加することを特徴とする細胞障害の低減方法。
  2. フコイダン又はデキストラン硫酸の添加時に培地交換を行う請求項1に記載の細胞障害の低減方法。
  3. 請求項1〜のいずれかに記載の方法で使用するフコイダン又はデキストラン硫酸を成分として含む、細胞障害低減用試薬またはキット。
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