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JP4188970B2 - カムロブ材、これを用いたカムシャフト及びカムロブ材の製造方法 - Google Patents
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JP4188970B2 - カムロブ材、これを用いたカムシャフト及びカムロブ材の製造方法 - Google Patents

カムロブ材、これを用いたカムシャフト及びカムロブ材の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、内燃機関に用いられるカムロブ材、これを用いたカムシャフト、及びカムロブ材の製造方法に関する。
内燃機関(エンジン)に用いられる動弁装置のカムシャフトとして、シャフトにカムロブを備えた組立式のカムシャフトが知られている。このカムシャフトに備えられるカムロブは、転がり接触するカムフォロワ(ローラフォロワ)を相手材とするもの、及び、摺動接触(滑り接触)するカムフォロワ(スリッパフォロワ)を相手材とするもの、に分けられる(例えば、特許文献1参照)。
こうした内燃機関において、カムシャフトやロッカーアーム等の部品は、運転中に高速で摺動することから、摺動特性が要求されている。特に、上述の転がり接触するローラフォロワを相手材とするカムロブは、ローラフォロワとの接触面積が少なく、その外周面において耐摩耗性、耐ピッチング性及び耐スカッフィング性の全ての摺動特性に優れることが要求されている。
このため、従来より、鋳造時にカムノーズ部分に冷やし金を用いて急速凝固させ、カムノーズの表面部分に固い白鋳鉄組織を形成したチルカムを備えるカムシャフトが用いられている。このチルカムシャフトは、外周表面に固いチル組織を有するため、優れた耐摩耗性及び耐スカッフィング性を有するものである。
一方、組立式カムシャフトにおいて、カムピースを温間成形することにより、カムピースの密度を向上させて、シャフトの拡径処理の際にカムピースが割れるという問題を解決する技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
:特開2001−240948号公報 :特開2003−14085号公報
しかしながら、チルカムシャフトは、耐ピッチング特性に劣るという問題があった。そのため、チルカムシャフトは、高負荷のかかるエンジンには使用が難しいという問題があった。
また、温間成形によるカムピースの密度の向上には限界があり、チルカムシャフトと同様に、高負荷のかかるエンジンには使用が難しいという問題があった。
そこで、本発明は、こうした問題点を解決し、耐摩耗性、耐ピッチング性及び耐スカッフィング性等の摺動特性に優れ、高負荷のかかるエンジンに好適に使用できるカムロブ材、これを用いたカムシャフト及びカムロブ材の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明のカムロブ材は、Ni:0.3−5.0質量%、C:0.5−1.2質量%、B及びPの少なくとも一方:0.02−0.3質量%及び残部が不可避的不純物を含有する鉄系焼結合金からなり、外周面硬さがHRC50以上で、かつ、密度が7.5g/cm以上であることを特徴とする。
この発明によれば、特定の成分組成からなる鉄基合金からカムロブ材を作製するので、高硬度、高密度のカムロブ材を提供することができる。特に、B及びPの少なくともいずれかが含有されていることにより、焼結中に液相を発生させて、製造されたカムロブ材の密度を高めることができる。その結果、本発明のカムロブ材は、耐摩耗性、耐スカッフィング性、耐ピッチング性等の摺動特性に優れたものとなる。そのため、高負荷のかかるエンジン、たとえば、通常のエンジンの2倍程度の面圧のかかるエンジンに対しても、好適に使用できるカムロブを提供することができる。
上記本発明のカムロブ材においては、前記鉄系焼結合金は、さらに、Mo:2.5質量%以下を含有することを特徴とする。この発明によれば、上述の作用に加えて、焼結後のカムロブ材の焼入れ性を高め、鉄合金基地の固溶効果を促進したカムロブ材が得られる。
上記本発明のカムロブ材においては、前記カムロブ材は、ローラフォロワを相手材とすることを特徴とする。この発明によれば、カムロブ材が、その靭性及び硬さにより、繰り返し接触疲労強度が向上したものであるため、耐ピッチング特性に代表される繰り返し接触疲労強度が必要とされるローラフォロワの相手材として好適に使用することができる。
上記課題を解決する本発明のカムシャフトは、上記本発明のカムロブ材からなるカムロブを備えたことを特徴とする。この発明によれば、耐摩耗性、耐スカッフィング性、耐ピッチング性等の摺動特性に優れ、高負荷のかかるエンジンにも好適に使用できるカムシャフトを提供することができる。
さらに、上記課題を解決するカムロブ材の製造方法は、上記本発明のカムロブ材の製造方法であって、前記鉄系焼結合金の組成となるように調製された鉄系合金粉末を所定のカムロブ形状に圧縮成形する圧縮成形工程と、前記圧縮成形された成形体を焼結する焼結工程とを二度以上繰り返し、前記焼結された焼結体を焼入れ・焼戻し処理することを特徴とする。
この発明によれば、最後の焼結工程の前後の寸法精度が高く、カムロブ製造後の切削をせずに済むか、切削量が少なくて済む。そのため、カムロブの製造にかかる手間と費用を低減させることができる。さらに、製造後のカムロブの外周面硬さをHRC50以上とすることができ、また、密度を7.5g/cm以上とすることができる。そのため、製造後のカムロブ材は、高硬度、高密度とすることができ、耐摩耗性、耐スカッフィング性、耐ピッチング性等の摺動特性に優れたものとすることができる。そのため、高負荷のかかるエンジン、たとえば、通常使用されているエンジンの2倍程度の面圧がかかるエンジンに対しても、好適に使用できるカムロブを提供することができる。
上記本発明のカムロブ材の製造方法は、前記カムロブ材の外周面にショットブラストを施すことを特徴とする。この発明によれば、ショットブラストを行うことにより、カムロブ材の耐ピッチング性を向上させることができる。
以上のように、本発明のカムロブ材によれば、特定の成分組成からなる鉄基合金から製造されるので、高硬度、高密度のカムロブ材を提供することができる。特に、B及びPの少なくともいずれかが含有されていることにより、焼結中に液相を発生させて、製造されたカムロブ材の密度を高めることができる。その結果、本発明のカムロブ材は、耐摩耗性、耐スカッフィング性、耐ピッチング性等の摺動特性に優れたものとなる。そのため、高負荷のかかるエンジン、たとえば、通常のエンジンの2倍程度の面圧のかかるエンジンに対しても、好適に使用できるカムロブを提供することができる。そして、本発明のカムロブ材は、ローラタイプのカムフォロワの相手材として、好適に用いられるものとなる。
また、本発明のカムロブ材の製造方法によれば、最後の焼結工程の前後の寸法精度が高く、カムロブ材製造後の切削をせずに済むか、切削量が少なくて済む。そのため、カムロブ材の製造にかかる手間と費用を低減させることができる。さらに、製造後のカムロブ材の外周面硬さをHRC50以上とすることができ、また、密度を7.5g/cm以上とすることができる。そのため、製造後のカムロブ材は、高硬度、高密度とすることができ、耐摩耗性、耐スカッフィング性、耐ピッチング性等の摺動特性に優れたものとなる。そのため、高負荷のかかるエンジン、たとえば、通常のエンジンの2倍程度の面圧のかかるエンジンに対しても、好適に使用できるカムロブを提供することができる。
[図1]本発明のカムロブ材を備えた内燃機関の動弁装置の一態様を示す斜視図及び本発明のカムシャフトの平面図である。
[図2]本発明の実施例の評価に用いた二円筒接触試験機の概略図である。
[図3]本発明の実施例について、Ni(ニッケル)含有量に対するカムロブ材の密度を示すグラフである。
[図4]本発明の実施例について、Ni含有量に対するカムロブ材の硬度を示すグラフである。
[図5]本発明の実施例について、Ni含有量に対するカムロブ材のピッチング発生回数を示すグラフである。
[図6]本発明の実施例について、Ni含有量に対するカムロブ材の寸法変化率を示すグラフである。
[図7]本発明の実施例について、Ni含有量に対するカムロブ材のカムリフト誤差を示すグラフである。
[図8]本発明の実施例について、C(炭素)含有量に対するカムロブ材の密度を示すグラフである。
[図9]本発明の実施例について、C含有量に対するカムロブ材の硬度を示すグラフである。
[図10]本発明の実施例について、P(リン)含有量に対するカムロブ材の密度を示すグラフである。
[図11]本発明の実施例について、P含有量に対するカムロブ材の硬度を示すグラフである。
[図12]本発明の実施例について、P含有量に対するカムロブ材のピッチング発生回数を示すグラフである。
[図13]本発明の実施例について、B(ホウ素)含有量に対するカムロブ材の密度を示すグラフである。
[図14]本発明の実施例について、B含有量に対するカムロブ材の硬度を示すグラフである。
[図15]本発明の実施例について、Mo(モリブデン)含有量に対するカムロブ材の密度を示すグラフである。
[図16]本発明の実施例について、Mo含有量に対するカムロブ材の硬度を示すグラフである。
符号の説明
1 カムロブ材(回転接触用)
2 カムシャフト
3 ローラフォロワ(回転接触用のカムフォロワ)
4 内燃機関の動弁装置
5 カムロブ材(滑り接触用)
6 スリッパフォロワ(滑り接触用のカムフォロワ)
7 シャフト
8 カムロブ材の試験片
9 相手材円筒試験片
10 潤滑油
11 荷重
以下に、本発明のカムロブ材、カムシャフト及びカムロブ材の製造方法について説明する。
本発明のカムロブ材は、Ni:0.3−5.0質量%、C:0.5−1.2質量%、B及びPの少なくとも一方:0.02−0.3質量%及び残部が不可避的不純物を含有する鉄系焼結合金からなり、外周面硬さHRCが50以上であり、密度が7.5g/cm以上である。鉄系焼結合金には、さらに、Mo:2.5質量%以下を含有させることができる。
まず、鉄系焼結合金について説明する。
Ni(ニッケル)は、強度・靭性を高める作用がある。Niの含有量は、0.3−5.0質量%とする。Niが0.3質量%未満では、十分な強度・靭性が得られない。一方、Niが5.0質量%を超えると焼結時の寸法変化量が大きくなるため、精度が悪くなってしまう。Niは、1.0−3.0質量%含有させることが好ましい。
C(炭素)は、耐摩耗性を満足させるカム外周面硬さが得られる作用がある。Cの含有量は、0.5−1.2質量%とする。Cが0.5質量%未満では、焼入れ・焼戻し処理後に所望のカム外周面硬さが得られにくく、耐摩耗性に劣る。一方、Cが1.2質量%を超えると圧縮性が著しく低下し、密度が上がらない。Cは、0.8−1.0質量%含有させることが好ましい。
B(ホウ素)及びP(リン)は、Fe(鉄)及びCと低融点の三元共晶液相を生じて焼結を促進させる作用がある。B及びPの少なくともいずれかが、本発明のカムロブ材に用いる鉄系焼結合金に含まれている。このB及びPの少なくとも一方の含有量は、0.02−0.3質量%である。B及びPの少なくとも一方が0.02質量%未満では、上記の作用が小さく、後述する密度及び硬度を有さなくなる場合がある。一方、B及びPの少なくとも一方が0.3質量%を超えると、焼結時の収縮量が大きくなり、カムロブ材の寸法精度が悪化する。B及びPの少なくとも一方は、0.05−0.20質量%含有させることが好ましい。なお、B及びPの双方を含有させる場合には、そのBとPとの含有割合は、特に限定されないが、通常、B:P=2:1−1:2程度とする。
任意に添加されるMo(モリブデン)は、焼入れ性を高め、鉄系合金基地の固溶効果を促進させる作用がある。Moの含有量は、2.5質量%以下とする。Moは含有量0.05質量%程度から少しずつ効果が得られるが、Moが2.5質量%を超えると圧縮性が著しく悪くなり、密度が上がらない。Moは、好ましくは、0.2−1.5質量%以下程度含有させることが望ましい。
なお、残部の不可避的不純物は、原料粉末に混入する微量の不純物の他、焼結用粉末に添加されるステアリン酸亜鉛のような潤滑剤やその他の添加成分の残留物も含まれる。
次いで、上述の鉄系焼結合金によるカムロブ材の物性について説明する。
カムロブ材の外周面硬さは、HRC50以上とする。HRC50未満では耐摩耗性が満足できない。なお、カムロブ材の外周面硬さの上限値は特に限定されないが、通常、HRC60程度である。外周面硬さはHRC50−55であることが好ましい。ここで、カムロブ材の外周面とは、カムロブとしてカムシャフトに用いた場合にカムフォロワと摺動する面をいう。
また、カムロブ材の密度は、7.5g/cm以上とする。密度が7.5g/cm未満では、カムロブ材の有する空孔により強度が低下して、耐ピッチング性が悪くなり、高負荷のかかるエンジンには使用できない。なお、カムロブ材の密度の上限値は特に限定されないが、通常、7.7g/cm程度である。密度は、7.5−7.6g/cmであることが好ましい。
以上のように、本発明のカムロブ材は、高密度・高硬度であるため、カムフォロワとの接触において、高い耐ピッチング特性を有する。このため、本発明のカムロブ材からなるカムロブは、高負荷のかかるエンジンに好適に使用することができる。さらに、本発明のカムロブ材は、耐摩耗性、耐スカッフィング性にも優れ、摺動特性に優れたものである。
また、本発明のカムロブ材は、ローラタイプのカムフォロワ(ローラフォロワ)の相手材として、好適に用いられる。ここで、図1(a)には、本発明のカムロブ材からなるカムロブ1を備えたカムシャフト2とローラフォロワ(転がり接触タイプのカムフォロワ)3が接触する態様を示した内燃機関の動弁装置4の斜視図を示す。なお、図1(a)の手前側にはカムシャフト2に備えられたカムロブ5とスリッパフォロワ(摺動接触タイプのカムフォロワ)6が示されている。
このローラフォロワ3としては、ローラタペット、ローラロッカーアーム等が挙げられる。このようなローラフォロワ3及びこの相手材となるカムロブ材1においては、耐ピッチング特性に代表される繰り返し接触疲労強度が必要とされる。本発明においては、カムロブ材の焼結中にB又は/及びP成分により液相を発生させ、カムロブ材を緻密化し、密度を向上させたものである。このようにして、カムロブ材の靭性及び硬さの向上が図られ、繰り返し接触疲労強度を向上させたものである。そのため、本発明のカムロブ材は、ローラフォロワの相手材として好適に使用することができる。
なお、上述の本発明のカムロブ材を用いることにより、図1(a)、図1(b)に示すようなカムシャフト2を提供することができる。このカムシャフト2の態様、製造方法については後述する。
次いで、本発明のカムロブ材の製造方法について説明する。この製造方法は、上述の本発明のカムロブ材についてのものである。
本発明のカムロブ材の製造方法は、上述の組成の鉄系焼結合金となるように配合、調製した鉄系合金粉末を用い、圧縮成形工程及び焼結工程を二度以上繰り返し、焼入れ・焼戻し処理を行うものである。さらに、カムロブ材の外周面にショットブラストを施すことができる。
鉄系合金粉末に添加する元素の組成、配合比、作用等は、上述のカムロブ材の説明におけるものと同様である。焼結後に、上述の範囲内の組成比となるように、鉄系合金粉末を配合、調製する。
そうした鉄系合金粉末を、各成分が均等に混ざるように混合し、所定の形状に圧縮成形する圧縮成形工程について説明する。この圧縮成形工程は、2回以上行われる。なお、2回目以降の圧縮成形工程は、焼結工程の後に行われる。
この圧縮成形工程は、従来公知の圧縮成形装置を用いて行われ、通常、メカプレス等を用いてプレス成形が行われる。圧縮成形時の面圧は、最後の圧縮成形工程を除く圧縮成形工程(仮成形)においては、通常、5−7ton/cm程度とする。また、最後の圧縮成形工程においては、通常、7−12ton/cm程度とし、仮成形よりも高い面圧とする。なお、圧縮成形工程における温度は、通常の温度と同様であり、20−40℃程度で行う。
このように鉄系合金粉末を圧縮成形した後、その成形体を焼結する焼結工程について説明する。この焼結工程は、2回以上行われる。
焼結工程は、従来公知の焼結装置を用いることができ、通常、真空焼結炉等を用いて行う。焼結工程における温度は、最後の焼結工程を除く焼結工程(仮焼結)においては、通常、650−850℃程度とする。また、最後の焼結工程においては、通常、1100−1200℃程度、好ましくは1130−1180℃程度とし、仮焼結よりも高い温度とする。焼結工程における成形体の周囲の雰囲気は、通常の焼結時の雰囲気と同様であり、特に限定されないが、Axガス、Rxガス、真空等の雰囲気の下で焼結が行われる。カムロブ材の成形体の焼結にかかる時間は、通常の時間と同様であり、特に限定されないが、30−90分程度である。
次いで、最後の焼結工程で得られたカムロブ材の焼結体について、焼入れ・焼戻し処理を行う。焼入れ処理は、通常、熱処理炉等において、800−950℃で、30−150分程度保持した後、油、水等を用いて、30−100℃程度に急冷することにより行う。焼戻し処理は、上述の焼入れ処理の後、通常、120−200℃で、30−150分程度保持した後、2−10℃/分程度の速度で、10−40℃程度まで冷却することにより行う。焼入れ・焼戻し処理によれば、カム外周面の硬さを高めて、カムロブ材の耐摩耗性を向上させることができる。
さらに、カムロブ材の焼結体の外周面に、ショットブラストを行うことが好ましい。ショットブラストを行うことにより、カムロブ材の外周面に残留圧縮応力を生じさせ、耐ピッチング性を向上させることができる。ショットブラストは、通常、カムロブ材を回転させ、その外周面にショットできるようにノズルを調整し、スチール、ガラスビーズ等のグリッドを、5kg/cm程度の圧力でカムロブ材の外周面にぶつけることにより処理が行われる。
なお、本発明のカムロブ材の製造方法により製造されたカムロブ材は、最後の焼結工程の前後における寸法変化率が−−(±)0〜0.5%程度となる。この寸法変化率とは、三次元測定機を使用し、最後の焼結工程前の成形体とその焼結工程後の焼結体の外周形状を360°に渡り1°毎に最低一点を測定し、測定点からトレースされた両方の形状を重ね合わせて各測定点の寸法変化率を求め、そのうちの最大値を指す。
このように、本発明のカムロブ材の製造方法によれば、少なくとも2回の圧縮成形工程と焼結工程とを経るので、最後の焼結工程の前後の寸法精度が高く、カムロブ材製造後の切削をせずに済むか、切削量が少なくて済む。そのため、カムロブ材の製造にかかる手間と費用を低減させることができる。さらに、製造後のカムロブ材の外周面硬さをHRC50以上とすることができ、また、密度を7.5g/cm以上とすることができる。そのため、製造後のカムロブ材は、高硬度、高密度とすることができ、耐摩耗性、耐スカッフィング性、耐ピッチング性等の摺動特性に優れたものとすることができる。その結果、高負荷のかかるエンジン、たとえば、通常のエンジンの2倍程度の面圧のかかるエンジンに対しても、好適に使用できるカムロブ材を提供することができる。
なお、このようにして製造されたカムロブ材を、シャフトに組み付け、固定することによって、図1(b)に示すような組立式カムシャフト2が得られる。こうしたカムシャフト2は、例えば、S45C等の材質からなるシャフト7の所定位置に所定角度で、焼きばめ又は冷やしばめによって組み付け、固定することによって得られる。カムロブ材をシャフトに組み付け、固定する方法としては、上記した焼きばめ及び冷やしばめが、組立精度、安価な設備費の点で好ましいが、圧入や、拡散接合等の他の方法によることも可能である。また、このカムシャフト2は、本発明のカムロブ材からなるカムロブ1のみを備えてもよいし、図1(a)のように、本発明によるカムロブ1と、滑りタイプのカムフォロワ6に対して好適な摺動特性を有するカムロブ5とを備えるものとしてもよい。このようにして製造されるカムシャフトは、カムロブの研削加工が全く不要か、必要であっても非常にわずかで済む。こうして、耐摩耗性、耐スカッフィング性、耐ピッチング性等の摺動特性に優れ、高負荷のかかるエンジンにも好適に使用できるカムシャフトを提供することができる。
以下に、実施例と比較例によって本発明をさらに具体的に説明する。
(実施例1−30)
表1に記載の最終成分組成になるように各元素を鉄粉中に添加して焼結用粉末を調製し、6ton/cmの面圧でカムロブの形状に圧縮成形し、次いで700℃で90分間焼結を行った。さらに、10ton/cmの面圧で圧縮成形し、次いで1140℃で60分間焼結を行った。次いで、この焼結体を900℃で100分加熱し、その後、油冷にて焼入れ処理を行った。さらに、この焼結体を150℃で60分間加熱し、その後、空冷にて焼戻し処理を行った。その後、ショットブラストを行い、実施例1−30のカムロブ材を作製した。
(比較例1)
表1に記載の最終成分組成になるように、各元素を溶融させ、冷やし金を有する鋳型に流し込んで急冷し、凝固させてチル鋳鉄を得た。これを研磨することにより、比較例1のカムロブ材を作製した。
(比較例2−5)
表1に記載の最終成分組成になるように各元素を鉄粉中に添加して焼結用粉末を調製し、5ton/cmの面圧でカムロブの形状に圧縮成形し、次いで1100℃で60分間焼結を行うことにより、比較例2−5のカムロブ材を作製した。
Figure 0004188970
Figure 0004188970
(評価方法及びその結果)
各実施例及び各比較例により得られたカムロブについて、(1)密度、(2)外周面のロックウェル硬さHRC、(3)ピッチング発生回数及び摩耗量、(4)寸法変化率、(5)カムリフト誤差を測定した。各測定方法を以下に説明し、各測定結果を表2に示す。
(1)密度
得られたカムロブ材の試験片をパラフィンで封孔処理し、アルキメデス法によって密度を測定した。
(2)外周面のロックウェル硬さ
ロックウェル硬度計により、Cスケールにて、得られたカムロブ材の試験片のカムノーズの外周を5点計測し、その平均値を算出し、外周面のロックウェル硬さとした。
(3)ピッチング発生回数及び摩耗量
ピッチング発生回数と摩耗量については、以下のように測定した。図2に示す二円筒接触試験機を用い、一定速度に回転するカムロブ材の各試験片8と相手材円筒試験片9の回転面を接触させ、両試験片の接触面に潤滑油10を滴下しながら所定の荷重11をかけて回転させ、ピッチングが発生するまでの回転回数を計測し、ピッチング発生回数とした。また、同様に各試験片8を回転させて、一定回転回数(1×10回)当たりの摩耗沈み量(μm)を測定し、摩耗量とした。
(測定条件)
測定装置:二円筒接触試験機
回転数:1500rpm
潤滑油:エンジンオイル 10W30
油温:100℃
油量:2×10−4/min
荷重:3000N
スベリ率:0%
相手材:SUJ2
判定方法:AE(アコースティックエミッション)にて、ピッチング発生の亀裂を検知し、そのときの接触回数をピッチング発生回数としてS−N曲線を作成し、各試験片と比較した。
(4)寸法変化率
三次元測定機を使用し、二次成形体と二次焼結体の外周形状を360°に渡り1°毎に測定し、測定点からトレースされた両方の形状を重ね合わせて各測定点の寸法変化率を求め、その中の最大値を二次成形体に対する二次焼結体の寸法変化率として特定した。なお、比較例2−5については、成形と焼結を一度だけ行っているので、一次成形体と一次焼結体の外周形状について、寸法変化率を測定した。
(5)カムリフト誤差
二次焼結体を焼入、焼戻し後、更にショットブラストした後の試験片についてカムリフト誤差を測定した。カムプロフィール測定プログラムアドコールを用いてカムプロフィールを測定し、目的のプロフィールと比較して、その誤差を検出し、リフト誤差とした。なお、比較例2−5については、成形と焼結を一度だけ行っているので、一次焼結体を焼入、焼戻し後の試験片についてカムリフト誤差を測定した。
Figure 0004188970
Figure 0004188970
(測定結果についての考察)
(イ)Ni(ニッケル)量の影響(実施例1〜8、16)
表2の実施例1〜8、16は、Ni量が互いに異なる合金の密度、硬度、ピッチング発生回数、摩耗量、寸法変化率、カムリフト誤差のそれぞれの試験結果を示している。
密度、硬度およびピッチング発生回数は、Ni量0.5%〜5.0%までは、Ni量が増加するにつれて、いずれも増加傾向である。密度は、図3に示すように、7.52〜7.58g/cmと少しずつ増加傾向である。硬度も、図4に示すように、52.5〜55.5HRCと、密度と同様に少しずつ増加傾向である。また、ピッチング発生回数も、図5に示すように、1.2×10〜6.0×10と増加傾向となっている。
摩耗量は、Ni量0.5%〜5.0%までは、0.19〜0.23μm/1×10回と、比較的変化が少なく安定している。
寸法変化率は、図6に示すように、Ni量0.5%〜5.0%までは、−0.1〜−0.5%と少しずつ増加傾向である。また、カムリフト誤差は、図7に示すように、寸法変化率と同様に、Ni量0.5%〜5.0%までは、0.02〜0.05mmと少しずつ増加傾向である。
(ロ)C(炭素)量の影響(実施例9〜12、24、25)
表2の実施例9〜12、24、25は、C量が互いに異なる合金の密度、硬度、ピッチング発生回数、摩耗量、寸法変化率、カムリフト誤差のそれぞれの試験結果を示している。
密度は、図8に示すように、C量が0.5%と低い場合には7.55g/cmと高めであり、C量が増加すると密度は減少傾向となり、C量が1.2%と高い場合には、密度は7.51g/cmと低めである。硬度は、密度とは逆に、図9に示すように、C量0.5%〜1.2%までは、51.5〜56.0HRCと増加傾向となっている。
ピッチング発生回数は、C量0.5%〜1.2%までは、1.5×10〜3.5×10と比較的変化が少なく安定している。摩耗量は、ピッチング発生回数と同様に、C量0.5%〜1.2%までは、0.16〜0.25μm/1×10回と比較的変化が少なく安定している。寸法変化率は、C量0.5%〜1.2%までは、−0.1〜−0.4%と少し増加傾向である。カムリフト誤差は、C量0.5%〜1.2%までは、0.01〜0.03mmと比較的変化が少なく安定している。
(ハ)P(リン)量の影響(実施例1、13〜15)
表2の実施例1、13〜15は、P量が互いに異なる合金の密度、硬度、ピッチング発生回数、摩耗量、寸法変化率、カムリフト誤差のそれぞれの試験結果を示している。
P量に関する密度、硬度、ピッチング発生回数は、Niと同様の傾向を示している。密度は、図10に示すように、P量0.05%〜0.3%までは、7.51〜7.54g/cmと少しずつ増加傾向である。硬度も、図11に示すように、P量0.05%〜0.3%までは、52.0〜54.0HRCと、密度と同様に少しずつ増加傾向である。また、ピッチング発生回数は、図12に示すように、P量0.05%〜0.3%までは、8.5×10〜1.5×10と増加傾向となっている。
摩耗量は、P量0.05%〜0.3%までは、0.20〜0.23μm/1×10回と比較的変化が少なく安定している。寸法変化率は、摩耗量と同様に、P量0.05%〜0.3%までは、−0.1〜−0.2%と比較的変化が少なく安定している。カムリフト誤差は、P量0.05%〜0.3%までは、0.02〜0.03mmと比較的変化が少なく安定している。
(ニ)B(ホウ素)量の影響(実施例10、17〜19)
表2の実施例10、17〜19は、B量が互いに異なる合金の密度、硬度、ピッチング発生回数、摩耗量、寸法変化率、カムリフト誤差のそれぞれの試験結果を示している。
密度は、図13に示すように、B量0.02%〜0.3%までは、7.51〜7.53g/cmと変化が少なく安定している。硬度も、図14に示すように、B量0.02%〜0.3%までは、53.0〜54.0HRCと密度と同様に変化が少なく安定している。
ピッチング発生回数は、B量0.02%〜0.3%までは、2.0×10〜3.2×10と比較的変化が少なく安定している。摩耗量も、B量0.02%〜0.3%までは、0.21〜0.24μm/1×10回と、比較的変化が少なく安定している。寸法変化率は、摩耗量と同様に、B量0.02%〜0.3%までは、−0.2〜−0.4%と比較的変化が少なく安定している。カムリフト誤差は、B量0.02%〜0.3%までは、0.02〜0.04mmと比較的変化が少なく安定している。
(ホ)Mo(モリブデン)量の影響(実施例6、20〜23、26〜30)
表2の実施例6、20〜23、26〜30は、Mo量が互いに異なる合金の密度、硬度、ピッチング発生回数、摩耗量、寸法変化率、カムリフト誤差のそれぞれの試験結果を示している。
密度は、図15に示すように、Mo量が0.3%と低い場合には7.54g/cmと高めであり、Mo量が増加すると密度は減少傾向となり、Mo量が2.5%と高い場合には、圧縮性が著しく悪くなるために、密度が7.50g/cmと低めである。硬度は、図16に示すように、Mo量が0.3%〜2.5%までは、焼入れ性が高まり、55.5〜56.5HRCと高めであり、変化が少なく安定している。
ピッチング発生回数は、Mo量が0.3%〜2.5%までは、1.8×10〜2.5×10と比較的変化が少なく安定している。摩耗量は、Mo量が0.3%〜2.5%までは、0.16〜0.21μm/1×10回と低めであり、かつ、比較的変化が少なく安定している。寸法変化率は、Mo量が0.3%〜2.5%までは、0〜−0.3%と、比較的変化が少なく安定している。カムリフト誤差は、Mo量が0.3%〜2.5%までは、カムリフト誤差は0.02〜0.04mmと比較的変化が少なく安定している。
(ヘ)Ni、B、Moの各種組合せについて(実施例24〜29)
表2の実施例24〜29は、Ni量、B量、Mo量が互いに異なる合金の密度、硬度、ピッチング発生回数、摩耗量、寸法変化率、カムリフト誤差のそれぞれの試験結果を示している。
Ni量1.0%〜3.5%、B量0.05%〜0.2%、Mo量0.3%〜2.0%の組合せにおける各試験結果について考察する。
密度は、Moの影響を受ける為、Ni、Bの元素を変化させてもほとんど効果がなく、7.50〜7.54g/cmと、比較的低めから中程度に推移している。硬度は、C量が高めであり、かつ、Moの影響を受ける為、55.5〜56.5HRCと比較的高めに推移している。
ピッチング発生回数は、Moにより密度が影響を受け、また、Niの影響を受ける為、1.8×10〜3.5×10と広範囲に推移している。摩耗量は、C量が高めであり、CとMoとの相乗効果により硬度が影響を受ける為、硬度が高めであり、0.16〜0.21μm/1×10回と、比較的低めに推移している。
寸法変化率は、Niの影響を受けるため、0〜−0.4%と広範囲に推移している。カムリフト誤差は、寸法変化率と同様に、Niの影響を受けるため、0.01〜0.04mmと広範囲に推移している。
(ト)B、Pの組合せについて(実施例30)
表2の実施例30は、BおよびPの組合せによる合金の密度、硬度、ピッチング発生回数、摩耗量、寸法変化率、カムリフト誤差のそれぞれの試験結果を示している。
C量、Mo量が高めのため、密度は低めで、硬さは逆に高めとなり、ピッチング発生回数、摩耗量は、上述の各実施例の範囲中の中間程度であり、寸法変化率は低めで、カムリフト誤差は高めであった。このように、BとPとを組み合わせても、本発明の範囲の密度および硬度が得られ、その他も良好な結果が得られた。
(チ)比較例について
実施例1−30は、比較例1−5のいずれよりも優れていた。
比較例2は、BおよびPを含有していない点で、本発明に含まれていない。その結果、比較例2は、密度、ピッチング発生回数が各実施例よりも低く、耐ピッチング性が劣っていた。また、比較例2は、摩耗量が各実施例よりも大きく、耐摩耗性が劣っていた。比較例2は、一回圧縮一回焼結により製造された(以下、1P1Sという。)ため、寸法変化率が各実施例よりも高めであり、また、カムリフト誤差も各実施例よりも高めであった。このように、比較例2は、寸法変化率、カムリフト誤差、双方ともに劣っていた。
比較例3は、Niを含有していない点で、本発明に含まれていない。その結果、比較例3は、密度、ピッチング発生回数が各実施例よりも低く、耐ピッチング性が劣っていた。また、比較例3は、密度、硬度ともに各実施例よりも低いため、摩耗量が各実施例よりも大きく、耐摩耗性が劣っていた。比較例3は、1P1Sにより製造されたため、寸法変化率が各実施例よりも高めであり、また、カムリフト誤差も各実施例よりも高めであった。このように、比較例3は、寸法変化率、カムリフト誤差、双方ともに劣っていた。
比較例4は、C、Ni、Pの含有量が本発明の規定量よりも低く、本発明に含まれていない。その結果、比較例4は、密度、ピッチング発生回数が各実施例よりも低く、上述の比較例2、3よりもさらに耐ピッチング性が劣っていた。また、比較例4は、密度、硬度ともに各実施例よりも低いため、摩耗量が各実施例および上述の比較例2、3よりも大きく、耐摩耗性が非常に劣っていた。
比較例5は、C、Ni、Pの含有量がいずれも本発明の規定量よりも高く、本発明に含まれていない。その結果、比較例5は、比較例2、3と同様に、密度、ピッチング発生回数が各実施例よりも低く、耐ピッチング性が劣っていた。また、比較例5は、密度、硬度ともに各実施例よりも低いため、摩耗量が各実施例よりも大きく、耐摩耗性が劣っていた。さらに、比較例5は、1P1Sにより製造されたため、寸法変化率が各実施例よりも極端に高めであり、また、カムリフト誤差も各実施例よりも極端に高めであった。このように、比較例5は、寸法変化率、カムリフト誤差、双方ともに劣っていた。

Claims (6)

  1. Ni:0.3−5.0質量%、C:0.5−1.2質量%、B及びPの少なくとも一方:0.02−0.3質量%、並びに残部がFe及び不可避的不純物からなる鉄系焼結合金からなり、外周面硬さがHRC50以上で、かつ、密度が7.5g/cm3以上であることを特徴とするカムロブ材。
  2. 前記鉄系焼結合金は、さらに、Mo:2.5質量%以下を含有することを特徴とする請求項1に記載のカムロブ材。
  3. 前記カムロブ材は、ローラフォロワを相手材とすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のカムロブ材。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のカムロブ材からなるカムロブを備えたことを特徴とするカムシャフト。
  5. 請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のカムロブ材の製造方法であって、前記鉄系焼結合金の組成となるように調製された鉄系合金粉末を所定のカムロブ形状に圧縮成形する圧縮成形工程と、前記圧縮成形された成形体を焼結する焼結工程とを二度以上繰り返し、前記焼結された焼結体を焼入れ・焼戻し処理することを特徴とするカムロブ材の製造方法。
  6. 前記カムロブ材の外周面にショットブラストを施すことを特徴とする請求項5に記載のカムロブ材の製造方法。
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