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JP4190230B2 - 焼結体の製造方法 - Google Patents
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JP4190230B2 - 焼結体の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、焼結体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
リン酸カルシウム系セラミックスの一種であるハイドロキシアパタイトは、骨や歯の主成分であり、優れた生体親和性を有しており、人工骨、人工歯根、医科用あるいは、歯科用セメント等の生体材料として利用されている。
【0003】
ところで、ハイドロキシアパタイトを、人工骨や人工歯根等の生体材料として用いる場合には、その焼結体が用いられる。この場合、焼結体は、十分な機械的強度を有することが求められる。これには、相対密度が高い焼結体、すなわち、高密度の焼結体を製造することが必要である。
【0004】
また、このような焼結体は、その内部にクラック等が発生した場合、機械的強度の低下を招くため、製造後、内部の検査(クラック等の存在の有無)が行われる。このため、焼結体は、透明性を有していることが好ましい。
【0005】
ここで、焼結体は、高密度なもの程、透明性が高くなる傾向がある。かかる観点からも、高密度の焼結体を製造することが重要となる。
【0006】
従来、このような焼結体は、ハイドロキシアパタイト粉体を、所望の形状に成形した後、得られた成形体を焼結することにより製造している。
【0007】
ところが、従来の製造方法では、満足するような相対密度を有する焼結体(すなわち、高密度の焼結体)を得ることが困難であった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、大がかりな装置を用いることなく、高密度の焼結体を製造し得る焼結体の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜(12)の本発明により達成される。
【0010】
(1) ハイドロキシアパタイト粉体を、1ton/cm以上の圧力で加圧して圧粉体を得る工程と、
大気の酸素分圧より高い酸素分圧の酸素含有雰囲気中で、前記圧粉体を925〜1300℃の温度で焼成して焼結体を得る工程とを有することを特徴とする焼結体の製造方法。
これにより、高密度の焼結体を得ることができる。
【0011】
(2) 前記加圧は、等方的に行われる上記(1)に記載の焼結体の製造方法。
これにより、より高密度の焼結体を得ることができる。
【0012】
(3) 前記等方的な加圧は、静水圧加圧により行われる上記(2)に記載の焼結体の製造方法。
これにより、より高密度の焼結体を得ることができる。
【0013】
(4) 前記静水圧加圧は、5〜50℃の温度で行われる上記(3)に記載の焼結体の製造方法。
【0014】
かかる圧粉体の製造方法は、簡易な装置で行うことができ、工業製品の製造工程として実用性に優れている。
【0015】
(5) 前記酸素含有雰囲気の酸素分圧は、380mmHg以上である上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の焼結体の製造方法。
これにより、より高密度の焼結体を得ることができる。
【0016】
(6) 前記ハイドロキシアパタイト粉体は、カルシウム源とリン酸源との少なくとも一方を溶液として用いる湿式合成法により合成され、前記合成の際に得られるスラリーを用いて製造されたものである上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の焼結体の製造方法。
【0017】
これにより、高価な製造設備を必要とせず、容易かつ効率よくハイドロキシアパタイトを合成することができる。
【0018】
(7) 前記カルシウム源は、水酸化カルシウムまたは酸化カルシウムを主成分とするものであり、前記リン酸源は、リン酸を主成分とするものである上記(6)に記載の焼結体の製造方法。
【0019】
これにより、ハイドロキシアパタイトをより効率よくかつ安価に合成することができる。
【0020】
(8) 前記ハイドロキシアパタイト粉体は、リン酸三カルシウムの含有量が0.1wt%以下の前記スラリーを用いて製造されたものである上記(7)に記載の焼結体の製造方法。
これにより、より高密度の焼結体を得ることができる。
【0021】
(9) 前記ハイドロキシアパタイト粉体は、下記の条件Aを満足する前記スラリーを用いて製造されたものである上記(7)または(8)に記載の焼結体の製造方法。
条件A:前記スラリーの一部を取り出し、成形圧力2ton/cmで圧縮成形し、検出面を有するサンプル用成形体を形成した後、該サンプル用成形体を大気中1200℃×2時間で焼成して得られたサンプルの検出面(表面粗さRa=10μm)に存在する物質をX線回折により解析した場合、得られるピークのうち、ハイドロキシアパタイトに由来するピークの強度が最も大きく、かつ、リン酸三カルシウムに由来するピークが観察されない。
【0022】
かかるスラリーを用いることにより、特に高密度の焼結体を得ることができる。
【0023】
(10) 前記ハイドロキシアパタイト粉体は、水酸化カルシウムまたは酸化カルシウムの含有量が0〜3wt%の前記スラリーを用いて製造されたものである上記(7)ないし(9)のいずれかに記載の焼結体の製造方法。
これにより、より高密度の焼結体を得ることができる。
【0024】
(11) 前記ハイドロキシアパタイト粉体は、下記の条件Bを満足する前記スラリーを用いて製造されたものである上記(7)ないし(10)のいずれかに記載の焼結体の製造方法。
条件B:前記スラリーの一部を取り出し、成形圧力2ton/cmで圧縮成形し、検出面を有するサンプル用成形体を形成した後、該サンプル用成形体を大気中1200℃×2時間で焼成して得られたサンプルの検出面(表面粗さRa=10μm)に存在する物質をX線回折により解析した場合、ハイドロキシアパタイトに由来するピークの強度をXとし、酸化カルシウムに由来するピークの強度をYとしたとき、Y/X<1/10なる関係を満足する。
【0025】
かかるスラリーを用いることにより、特に高密度の焼結体を得ることができる。
【0026】
(12) 厚さ15mmの板状となるように焼結体を作製し、該焼結体に、輝度230000cd/mかつCIE色度図の色度座標(0.543,0.4)の光を照射したとき、透過光の輝度が150cd/m以上となる上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の焼結体の製造方法。
【0027】
かかる特性を有する焼結体(テストピース)は、その透明性が高いものであると判断することができ、同様の条件で製造された焼結体も透明性が高いものと判断することができる。透明性が高い焼結体は、焼成後の検査等で、その内部でのクラック等の焼結欠陥の発生の有無や、その内部への異物の混入の有無等を容易に発見し得る。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の焼結体の製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0031】
図1は、本発明の焼結体の製造方法を示す工程図である。
図1に示す焼結体の製造方法は、ハイドロキシアパタイト粉体の製造工程1と、圧粉体の製造工程2と、圧粉体の整形工程3と、圧粉体の焼成工程4とを有している。以下、各工程について順次説明する。
【0032】
[1]ハイドロキシアパタイト粉体の製造
まず、カルシウム源とリン酸源とを反応させて、ハイドロキシアパタイト(HAp)を合成する。なお、本明細書中のハイドロキシアパタイトとは、Ca/Pモル比が1.60〜1.70のものを指す。
【0033】
このハイドロキシアパタイトの合成には、湿式合成法、乾式合成法、水熱合成法等のいかなる方法を用いてもよいが、カルシウム源とリン酸源との少なくとも一方を溶液として用いる湿式合成法を用いるのが好ましい。これにより、高価な製造設備を必要とせず、容易かつ効率よくハイドロキシアパタイトを合成することができる。
【0034】
湿式合成法を用いる場合、カルシウム源としては、例えば、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、硝酸カルシウム等を用いることができる。一方、リン酸源としては、リン酸、リン酸アンモニウム等を用いることができる。これらの中でも、特に、カルシウム源として水酸化カルシウムまたは酸化カルシウムを主成分とするものが、また、リン酸源としてリン酸を主成分とするものが好ましい。かかるカルシウム源およびリン酸源を用いることにより、ハイドロキシアパタイトをより効率よくかつ安価に合成することができる。
【0035】
以下、カルシウム源として水酸化カルシウムまたは酸化カルシウムを主成分とするものを、また、リン酸源としてリン酸を主成分とするものを用いる場合について説明する。
【0036】
この場合、ハイドロキシアパタイト(HAp)は、例えば容器内で、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)または酸化カルシウム(CaO)の懸濁液中に、リン酸(H3PO4)溶液を滴下し、混合することにより合成される。
【0037】
この反応は、次式(I)または(II)の通りである。
10Ca(OH)2+6H3PO4 → 2Ca5(PO4)3(OH)+18H2O ・・・(I)
10CaO+10H2O+6H3PO4 → 2Ca5(PO4)3(OH)+18H2O ・・・(II)
ここで、合成の進行が不十分であると、スラリー状をなす混合物(以下、単に「スラリー」と言う。)中に、未反応物(Ca(OH)2やCaO)が、不純物として存在することになる。
【0038】
また、さらに反応を継続すると、次式(III)に示す反応により、2次反応生成物としてリン酸三カルシウム(TCP)が生成される。
【0039】
3Ca5(PO4)3(OH)+H3PO4 → 5Ca3(PO4)2+3H2O ・・・(III)
この反応が進行すると、2次反応生成物であるリン酸三カルシウムが、スラリー中に不純物として存在することになる。
【0040】
このようにして合成されたハイドロキシアパタイトを含むスラリーを用いて、ハイドロキシアパタイト粉体を製造するが、本発明者は、かかるスラリー中に、前述したような不純物がほとんど存在しないようにすることにより、得られる焼結体の相対密度を高くすること、すなわち、高密度の焼結体を得ることができることを見出した。
【0041】
以下、スラリー中のリン酸三カルシウムおよび未反応物(Ca(OH)2、CaO)の含有量(濃度)の好適な範囲について、それぞれ説明する。
【0042】
[リン酸三カルシウム]
スラリー中のリン酸三カルシウムの含有量(濃度)は、特に限定されないが、0.1wt%以下であるのが好ましく、存在しないことがより好ましい。このように、リン酸三カルシウムの含有量が少ないスラリーを用いることにより、より高密度の焼結体を得ることができる。
【0043】
さらに、スラリーとしては、下記の条件Aを満足するようなものが最適である。
【0044】
条件A:スラリーの一部を取り出し、成形圧力2ton/cmで圧縮成形し、検出面を有するサンプル用成形体を形成した後、このサンプル用成形体を大気中1200℃×2時間で焼成して得られたサンプルの検出面(表面粗さRa=10μm)に存在する物質をX線回折により解析する。このとき、得られるピークのうち、ハイドロキシアパタイトに由来するピークの強度が最も大きく、かつ、リン酸三カルシウムに由来するピークが観察されない。
【0045】
かかる解析方法は、前記焼成に際して、ハイドロキシアパタイトと不純物との焼結速度の違いにより、ハイドロキシアパタイトの粒子成長が先行し、これに伴って、不純物が粒子間隙から押し出され、サンプル表面(特に検出面)に析出することを利用し、この検出面をX線回折により解析することにより、不純物の存在を確認することができる。かかる解析方法によれば、高精度でスラリー中の不純物の存在を確認することができる。
【0046】
そして、スラリーが前記条件Aを満足すれば、このものは、リン酸三カルシウムを含有しないか、または、リン酸三カルシウムを含有する場合でも極めて少量であることがわかる。このため、かかるスラリーを用いることにより、特に高密度の焼結体を得ることができる。
【0047】
[未反応物]
スラリー中の未反応物の含有量(濃度)は、特に限定されないが、0〜3wt%程度であるのが好ましく、0.025〜1wt%程度であるのがより好ましい。スラリー中に比較的少量の未反応物が存在する場合、酸化カルシウム(なお、未反応物である水酸化カルシウムは、焼成により酸化カルシウムに変化する)は、得られる焼結体の相対密度を高める傾向にあるため、より高密度の焼結体を得ることができる。なお、スラリー中の未反応物の含有量が前記上限値を超えると、後述する圧粉体の焼成条件等によっては、高密度の焼結体を得ることが困難となる場合がある。
【0048】
さらに、スラリーとしては、下記の条件Bを満足するようなものが最適である。
【0049】
条件B:スラリーの一部を取り出し、成形圧力2ton/cmで圧縮成形し、検出面を有するサンプル用成形体を形成した後、このサンプル用成形体を大気中1200℃×2時間で焼成して得られたサンプルの検出面(表面粗さRa=10μm)に存在する物質をX線回折により解析する。このとき、ハイドロキシアパタイトに由来するピークの強度をXとし、酸化カルシウムに由来するピークの強度をYとしたとき、Y/X<1/10なる関係(特に、Y/X<1/100なる関係)を満足する。
【0050】
前述したように、かかる解析方法によれば、高精度でスラリー中の不純物の存在を確認することができ、その結果、スラリーが前記条件Bを満足すれば、このものは、未反応物の含有量が極めて少量であることがわかる。このため、かかるスラリーを用いることにより、特に高密度の焼結体を得ることができる。
【0051】
なお、スラリーは、リン酸三カルシウムの含有量および未反応物の含有量のいずれか一方のみが前記範囲であるものでもよいが、それらの双方が前記範囲であるものが好ましい。これにより、極めて高密度の焼結体を得ることができる。
【0052】
次に、このようにして得られたスラリーを、例えば噴霧乾燥等することにより、ハイドロキシアパタイト粉体(以下、単に「粉体」と言う。)を製造する。
【0053】
粉体の平均粒径は、特に限定されないが、1〜30μm程度であるのが好ましく、8〜25μm程度であるのがより好ましい。このような平均粒径の粉体を用いることにより、より高密度の焼結体を得ることができる。
【0054】
なお、得られた粉体は、より緻密な圧粉体を得るために、例えば500〜800℃×2〜6時間程度の処理条件で熱処理した後、例えばジェットミルやターボミル等で粉砕して、平均粒径6〜20μm程度(粉砕前の50〜80%程度の平均粒径)とするようにしてもよい。
【0055】
[2]圧粉体の製造
次に、得られた粉体(またはこれを予め所望の形状に圧粉成形したもの)に対し、圧力を加え、圧密化する。
【0056】
加圧の方法としては、等方的に加圧する方法や、1軸プレスのように1方向(1軸方向)にのみ加圧する方法等のいずれであってもよいが、等方的に加圧する方法、特に静水圧加圧が好ましい。これにより、加圧後の圧粉体の密度を均一にすることができ、その結果、より高密度の焼結体を得ることができる。
【0057】
静水圧加圧としては、例えば5〜50℃程度(好ましくは10〜30℃程度)の温度で加圧されるCIP(Cold Isostatic press)法と、加熱下(例えば65℃以上)で加圧されるHIP(Hot Isostatic press)法、Hot press法とがあるが、CIP法を用いるのが好ましい。CIP法は、簡易な装置で行うことができ、後述する被膜に耐熱性を要求されない等の利点を有し、工業製品の製造工程として実用性に優れている。
【0058】
静水圧加圧の具体的な方法としては、粉体の表面を液体遮断性のある被膜で覆い、これを静水圧加圧装置に装填し、静水圧加圧を施す。CIP法の場合、被膜としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂材料や、天然ゴム、イソプレンゴムのようなゴム材料を用いることができる。この被膜は、例えばディッピングや真空パッキング法により形成することができる。
【0059】
加圧の圧力(加圧圧力)は、特に限定されないが、1ton/cm以上であるのが好ましく、1〜3ton/cm程度であるのがより好ましく、2〜3ton/cm程度であるのがさらに好ましい。この圧力が低過ぎると、十分な加圧の効果(特に密度の均一化)が期待できない場合があり、また、圧力を前記上限値よりさらに高くしても、効果の向上が見られず、また、大型の装置が必要となり設備が高価になる。
【0060】
このようにして得られた加圧後の圧粉体は、高密度となり、しかもその密度が均一となる。後述する焼成により焼結した際、収縮率が減少するとともに均一に収縮するため、最終的に得られた焼結体の寸法精度が高く、また、焼結体の密度が均一となり、クラックや欠損等の焼結欠陥の発生が抑制され、その結果、破損し難い(機械的強度に優れる)ものとなる。
なお、加圧後、表面の被膜は、所定の方法により除去される。
【0061】
[3]圧粉体の整形
次に、得られた圧粉体に対し、必要に応じ、その形状または寸法を整える。
【0062】
この圧粉体の整形は、例えば、圧粉体に所定の機械加工を施すことにより行われる。機械加工としては、例えば、切削加工、研削加工、研磨加工等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて行うことができる。
【0063】
圧粉体自体は、最終的に得られる焼結体に比べてその硬度がはるかに低いため、機械加工等による圧粉体の整形は、容易に行うことができ、特に、低硬度の工具を用いても行うことができ、また、機械加工の加工速度も速い。
【0064】
[4]圧粉体の焼成
以上のようにして得られた圧粉体は、例えば焼成炉内で、大気の酸素分圧より高い酸素分圧の酸素含有雰囲気中で焼結(焼成)され、焼結体とされる。
【0065】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、圧粉体を、大気の酸素分圧より高い酸素分圧の酸素含有雰囲気中で焼成することにより、特に高密度の焼結体を得ることができることを見出した。
【0066】
かかる酸素含有雰囲気(焼成雰囲気)の典型例としては、純酸素雰囲気が挙げられるが、酸素含有雰囲気としては、酸素と他のガスとの混合ガス(特に、酸素を主とする混合ガス)を用いることもできる。
【0067】
また、大気圧以上(例えば2〜10気圧)の加圧下で圧粉体の焼成を行う場合には、結果的に酸素分圧が大気の酸素分圧より高くなるため、酸素含有雰囲気として大気を用いることもできる。
【0068】
なお、大気圧(1気圧)下で圧粉体の焼成を行う場合には、高い気密性を有する焼成炉を用いる必要がない。換言すれば、簡易な構成の焼成炉を用いることができるという点で好ましい。これにより、焼結体の製造コストの低減を図ることができる。
【0069】
このような酸素含有雰囲気の酸素分圧(純酸素雰囲気の場合、焼成炉内の圧力)は、380mmHg以上であるのが好ましく、550mmHg以上であるのがより好ましい。これにより、得られる焼結体の相対密度をより高くすることができる。
【0070】
なお、大気圧下で酸素含有雰囲気の酸素分圧を高くするには、酸素含有雰囲気(焼成雰囲気)中に占める酸素の体積を大きく(濃度を高く)するようにすればよい。
【0071】
また、本発明者は、このような酸素分圧の高い酸素含有雰囲気中で圧粉体を焼成することにより、焼成の温度(焼成温度)を比較的低温とすることができること、さらに、この場合、ハイドロキシアパタイトの粒子成長を抑制しつつ、圧粉体を焼結に至らすことができ、その結果、さらに高密度の焼結体を得ることができることをも見出した。
【0072】
また、このような比較的低温で圧粉体の焼成を行うことにより、焼成時間の短縮、焼成に要するエネルギーの低減、焼成炉に用いられる発熱体にかかるコストの削減等を図ることができるという利点もある。
【0073】
この焼成における温度(焼成温度)は、925〜1300℃であり、1000〜1250℃程度であるのが好ましい。なお、焼成温度が低すぎると、圧粉体が効率よく焼結されない場合がある。
【0074】
かかる焼成温度の保持時間(焼成時間)は、30分〜8時間程度であるのが好ましく、2〜4時間程度であるのがより好ましい。
以上のような工程を経て、焼結体が得られる。
【0075】
本発明の焼結体の製造方法により製造される焼結体は、高密度なものであり、機械的強度も極めて高いものとなる。このため、この焼結体は、椎弓スペーサ−や耳小骨等の人工骨、人工歯根等の生体材料として好適に使用し得る。
【0076】
また、本発明の焼結体の製造方法により製造される焼結体は、次のような特性を有しているのが好ましい。
【0077】
すなわち、厚さ15mmの板状となるようにテストピース(焼結体)を作製し、このテストピースに、輝度230000cd/mかつCIE色度図の色度座標(0.543,0.4)の光を照射したとき、透過光の輝度が150cd/m以上(特に、200cd/m以上)となるような特性である。
【0078】
ここで、テストピースを用いる理由について説明する。実際の焼結体は、その使用目的に応じて、形状や寸法等が適宜設定される。このため、同一の条件で透過光の輝度を測定しても、一律に評価が行えない場合がある。そこで、前述した焼結体の製造方法に従って、テストピースを作製し、このテストピースが前記特性を有するものであれば、これと同様の条件で製造された実際の焼結体も、テストピースで確認される特性に相当する特性が得られているものと推定することができるからである。
【0079】
そして、前記特性を有するテストピースは、その透明性が高いものであると判断することができ、同様の条件で製造された焼結体も透明性が高いものと判断することができる。
【0080】
透明性が高い焼結体は、焼成後の検査等で、その内部でのクラック等の焼結欠陥の発生の有無や、その内部への異物の混入の有無等を容易に発見し得る。
【0081】
以上、本発明の焼結体の製造方法について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0082】
例えば、本発明では、任意の目的で、工程[1]の前工程、工程[1]〜[4]の間に存在する中間工程、または工程[4]の後工程を設けるようにしてもよい。
【0083】
【実施例】
次に、本発明の焼結体の製造方法の具体的実施例について説明する。
【0084】
[焼結体の製造]
次のようにして、実施例1〜10および比較例1〜4の焼結体を製造した。
【0085】
(実施例1)
<1> まず、水酸化カルシウム140gを純水6Lに分散させ、その中へ、リン酸濃度2wt%のリン酸水溶液を滴下し、十分に撹拌、混合して、ハイドロキシアパタイトを合成し、ハイドロキシアパタイトを含むスラリーを得た。
【0086】
次に、かかるスラリーを噴霧乾燥機を用いて噴霧乾燥し、平均粒径20μmのハイドロキシアパタイト粉体を得た。
【0087】
このとき、スラリーの一部を取り出し、成形圧力2ton/cmで圧縮成形し、検出面を有するサンプル用成形体を形成した後、このサンプル用成形体を大気中1200℃×2時間で焼成して得られたサンプルの検出面(表面粗さRa=10μm)に存在する物質をX線回折により解析した。なお、サンプルの寸法は、直径15mm、高さ8mmとした。
【0088】
その結果、リン酸三カルシウム(TCP)に由来するピークは確認されず、酸化カルシウム(CaO)に由来するピークの強度は、ハイドロキシアパタイト(HAp)に由来するピークの強度の1/250であった。
【0089】
さらに、得られたハイドロキシアパタイト粉体を、600℃×4時間の条件で熱処理した後、ジェットミルにより粉砕した。これにより、平均粒径16μmのハイドロキシアパタイト粉体を得た。
【0090】
<2> 次に、このハイドロキシアパタイト粉体を、圧縮成形機にて円柱状に固め、その後、ビニール製の袋状体に入れて真空梱包して、静水圧加圧により常温(24℃)下、1ton/cmの圧力で圧縮成形し、直径21mm、高さ52mmの円柱状の圧粉体を得た。
【0091】
<3> 次に、圧粉体をダイヤモンドカッターにより切削加工(機械加工)し、直径20mm、高さ50mmの円柱とした。
【0092】
<4> 次に、この圧粉体を、焼成炉内で焼成し、焼結体を得た。なお、焼成条件は、純酸素雰囲気(焼成雰囲気)中、1050℃×2時間とした。また、焼成炉内の圧力は、760mmHg(1気圧)とした。
【0093】
(実施例2)
前記工程<2>において、静水圧加圧の圧力を、1.5ton/cmとした以外は、前記実施例1と同様にして焼結体を製造した。
【0094】
(実施例3)
前記工程<2>において、静水圧加圧の圧力を、2.0ton/cmとした以外は、前記実施例1と同様にして焼結体を製造した。
【0095】
(実施例4)
前記工程<4>において、焼成条件を、純酸素雰囲気中、925℃×2時間とした以外は、前記実施例3と同様にして焼結体を製造した。
【0096】
(実施例5)
前記工程<4>において、焼成条件を、純酸素雰囲気中、950℃×2時間とした以外は、前記実施例3と同様にして焼結体を製造した。
【0097】
(実施例6)
前記工程<4>において、焼成条件を、純酸素雰囲気中、1000℃×2時間とした以外は、前記実施例3と同様にして焼結体を製造した。
【0098】
(実施例7)
前記工程<4>において、焼成条件を、純酸素雰囲気中、1250℃×2時間とした以外は、前記実施例3と同様にして焼結体を製造した。
【0099】
(実施例8)
前記工程<4>において、焼成条件を、酸素とアルゴンガスとの混合ガス雰囲気中、1050℃×2時間とした以外は、前記実施例3と同様にして焼結体を製造した。なお、酸素分圧は、190mmHgとした。
【0100】
(実施例9)
前記工程<4>において、焼成条件を、酸素とアルゴンガスとの混合ガス雰囲気中、1050℃×2時間とした以外は、前記実施例3と同様にして焼結体を製造した。なお、酸素分圧は、380mmHgとした。
【0101】
(実施例10)
前記工程<4>において、焼成条件を、酸素とアルゴンガスとの混合ガス雰囲気中、1050℃×2時間とした以外は、前記実施例3と同様にして焼結体を製造した。なお、酸素分圧は、570mmHgとした。
【0102】
(比較例1)
前記工程<2>において、静水圧加圧の圧力を、0.5ton/cmとした以外は、前記実施例1と同様にして焼結体を製造した。
【0103】
(比較例2)
前記工程<4>において、焼成条件を、純アルゴンガス雰囲気中、1050℃×2時間とした以外は、前記実施例1と同様にして焼結体を製造した。
【0104】
(比較例3)
前記工程<4>において、焼成条件を、1気圧の大気中、1050℃×2時間とした以外は、前記実施例3と同様にして焼結体を製造した。
【0105】
(比較例4)
前記工程<4>において、焼成条件を、純酸素雰囲気中、900℃×2時間とした以外は、前記実施例3と同様にして焼結体を製造した。
【0106】
[評価]
前記実施例1〜10および比較例1〜4で製造された焼結体に対して、それぞれ、外形寸法により求めた体積の値と、更に重量の値とを基に、比重を考慮して相対密度を求めた。
この評価の結果を、表1に、焼結体の製造条件とともに示す。
【0107】
【表1】
Figure 0004190230
【0108】
表1に示すように、実施例1〜10で製造された焼結体(本発明の焼結体の製造方法により製造される焼結体)は、いずれも、相対密度が高いものであった。
【0109】
また、圧粉体の製造において、加圧の圧力を2〜3ton/cmとし、圧粉体の焼成において、焼成雰囲気を酸素分圧が550mmHg以上の酸素含有雰囲気、焼成温度を1000〜1250℃とすることにより、得られた焼結体は、その相対密度が特に高いものとなった。
【0110】
これに対し、比較例1〜4で製造された焼結体は、いずれも、相対密度が低いものであった。
【0111】
また、寸法:縦45mm、横25mm、厚さ15mmの板状のテストピース(焼結体)を、前記実施例3および前記比較例3と同様の製造条件で、それぞれ、テストピースA(実施例3に対応)およびテストピースB(比較例3に対応)を作製した。
【0112】
なお、テストピースAは、透明性を有する白色を呈し、テストピースBは、透明性を有さない(濁ったような)白色を呈した。
【0113】
これらのテストピースA、Bに対して、それぞれ、次のような特性評価を行った。
【0114】
85Wのハロゲンランプより光ファイバーを通して照射する光源を用意した。なお、この光源からの光の輝度および色度を、色彩色度計(ミノルタ社製、「CS−100」)を用いて測定した結果、それぞれ、230000cd/m、CIE色度図の色度座標(0.543,0.4)であった。
【0115】
この光を、テストピースA、Bの厚さ15mmの部分に、それぞれ、照射して、透過光の輝度を前記色彩色度計により測定した。
【0116】
その結果、テストピースAの輝度は、480cd/mであった。これに対し、テストピースBの輝度は、63cd/mであった。すなわち、テストピースA(本発明)がテストピースB(比較例)より、その透明性が高いことが確認された。
【0117】
また、テストピースAは、その内部の状態が目視により確認可能であり、目視による確認の結果、クラック等の焼結欠陥の発生や異物の混入は、認められなかった。これに対し、テストピースBは、透明性が低いため、その内部の状態を目視により確認することが困難であり、焼結欠陥が存在するか否かの判別も不可能であった。
【0118】
なお、前記実施例1、2、4〜10および比較例1、2、4と同様の製造条件で、それぞれ、作製したテストピースについても、前記と同様にして特性評価を行った。その結果、各実施例1〜10および比較例1〜4で製造した焼結体の相対密度と、各テストピースの特性評価結果とに対応関係があること、すなわち、相対密度が高くなるにつれて透明性が高くなる傾向にあることが確認された。
【0119】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、高密度の焼結体が得られる。
【0120】
また、かかる焼結体は、その透明性が高いものとなるので、その内部における焼結欠陥の発生の有無や異物の混入等を、容易に発見することができる。
【0121】
また、製造条件を適宜設定することにより、得られる焼結体の相対密度および透明性をより高いものとすることができる。
【0122】
このような焼結体は、機械的強度にも優れるため、椎弓スペーサーや耳小骨等の人工骨、人工歯根等に好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の焼結体の製造方法を示す工程図である。
【符号の説明】
1 ハイドロキシアパタイト粉体の製造
2 圧粉体の製造
3 圧粉体の整形
4 圧粉体の焼成

Claims (12)

  1. ハイドロキシアパタイト粉体を、1ton/cm以上の圧力で加圧して圧粉体を得る工程と、
    大気の酸素分圧より高い酸素分圧の酸素含有雰囲気中で、前記圧粉体を925〜1300℃の温度で焼成して焼結体を得る工程とを有することを特徴とする焼結体の製造方法。
  2. 前記加圧は、等方的に行われる請求項1に記載の焼結体の製造方法。
  3. 前記等方的な加圧は、静水圧加圧により行われる請求項2に記載の焼結体の製造方法。
  4. 前記静水圧加圧は、5〜50℃の温度で行われる請求項3に記載の焼結体の製造方法。
  5. 前記酸素含有雰囲気の酸素分圧は、380mmHg以上である請求項1ないし4のいずれかに記載の焼結体の製造方法。
  6. 前記ハイドロキシアパタイト粉体は、カルシウム源とリン酸源との少なくとも一方を溶液として用いる湿式合成法により合成され、前記合成の際に得られるスラリーを用いて製造されたものである請求項1ないし5のいずれかに記載の焼結体の製造方法。
  7. 前記カルシウム源は、水酸化カルシウムまたは酸化カルシウムを主成分とするものであり、前記リン酸源は、リン酸を主成分とするものである請求項6に記載の焼結体の製造方法。
  8. 前記ハイドロキシアパタイト粉体は、リン酸三カルシウムの含有量が0.1wt%以下の前記スラリーを用いて製造されたものである請求項7に記載の焼結体の製造方法。
  9. 前記ハイドロキシアパタイト粉体は、下記の条件Aを満足する前記スラリーを用いて製造されたものである請求項7または8に記載の焼結体の製造方法。
    条件A:前記スラリーの一部を取り出し、成形圧力2ton/cmで圧縮成形し、検出面を有するサンプル用成形体を形成した後、該サンプル用成形体を大気中1200℃×2時間で焼成して得られたサンプルの検出面(表面粗さRa=10μm)に存在する物質をX線回折により解析した場合、得られるピークのうち、ハイドロキシアパタイトに由来するピークの強度が最も大きく、かつ、リン酸三カルシウムに由来するピークが観察されない。
  10. 前記ハイドロキシアパタイト粉体は、水酸化カルシウムまたは酸化カルシウムの含有量が0〜3wt%の前記スラリーを用いて製造されたものである請求項7ないし9のいずれかに記載の焼結体の製造方法。
  11. 前記ハイドロキシアパタイト粉体は、下記の条件Bを満足する前記スラリーを用いて製造されたものである請求項7ないし10のいずれかに記載の焼結体の製造方法。
    条件B:前記スラリーの一部を取り出し、成形圧力2ton/cmで圧縮成形し、検出面を有するサンプル用成形体を形成した後、該サンプル用成形体を大気中1200℃×2時間で焼成して得られたサンプルの検出面(表面粗さRa=10μm)に存在する物質をX線回折により解析した場合、ハイドロキシアパタイトに由来するピークの強度をXとし、酸化カルシウムに由来するピークの強度をYとしたとき、Y/X<1/10なる関係を満足する。
  12. 厚さ15mmの板状となるように焼結体を作製し、該焼結体に、輝度230000cd/mかつCIE色度図の色度座標(0.543,0.4)の光を照射したとき、透過光の輝度が150cd/m以上となる請求項1ないし11のいずれかに記載の焼結体の製造方法。
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