以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の共押出多層構造体は、ヒートシール層(A)とガスバリア性樹脂層(B)とが直接積層されてなる。ヒートシール層(A)の厚さは好適には2μm以上、より好適には5μm以上である。ヒートシール層(A)の厚さが2μm未満の場合には、ヒートシール強度が不十分となるおそれがある。一方、ヒートシール層(A)の厚さは好適には100μm以下、より好適には50μm以下である。ヒートシール層(A)の厚さが100μmを越えると、屈曲によってピンホールが発生するおそれがある。
ガスバリア性樹脂層(B)の厚さは好適には1μm以上、より好適には3μm以上である。ガスバリア性樹脂層(B)の厚さが1μm未満の場合には、ガスバリア性が不十分となるおそれがある。一方、ガスバリア性樹脂層(B)の厚さは好適には100μm以下、より好適には50μm以下である。ガスバリア性樹脂層(B)の厚さが100μmを越えると、屈曲によってピンホールが発生するおそれがある。
ガスバリア性樹脂層(B)は、20℃、65%RHにおける酸素透過速度が10cc・20μm/m2・day・atm以下であることが必要である。これは、20℃、相対湿度65%の環境下で測定したときに、1気圧の酸素の差圧がある状態で、面積1m2、20μm厚のフィルムを1日に透過する酸素の体積が、10cc以下であることを意味する。ガスバリア性樹脂層(B)の酸素透過速度は、好適には8cc・20μm/m2・day・atm以下であり、より好適には5cc・20μm/m2・day・atm以下である。ガスバリア性樹脂層(B)の酸素透過速度が10cc・20μm/m2・day・atmを超える場合、得られる共押出多層構造体のガスバリア性が不十分となる。また、ガスバリア性を確保するために層を厚くすると、上記のように屈曲によってピンホールが発生しやすくなる。
本発明の共押出多層構造体は、前記ヒートシール層(A)同士をヒートシールしたときのヒートシール強度が100gf/15mm以上であることが必要である。単層又は多層シートを折り曲げ、三方をヒートシールして袋体を製造することは一般に行われることであるが、ヒートシール強度が100gf/15mm未満の場合はそのような袋体のヒートシール部がはがれやすく、密封性が不十分となる。
本発明の共押出多層構造体においては、前記ヒートシール層(A)を構成する樹脂(a)のSP値をSPA、前記ガスバリア性樹脂層(B)を構成する樹脂(b)のSP値をSPBとするとき、SPA及びSPBが下記式(1)を満足することを最大の特徴とする。
0 ≦ |SPA−SPB| ≦ 4 (1)
ここで、SP値とはFEDORS法で求めた値であり、単位は(cal/cm3)1/2である。
共押出多層構造体が式(1)を満足しない場合、すなわち、|SPA−SPB|が4を超える場合は、前記ヒートシール層(A)とガスバリア性樹脂層(B)との層間接着強度が不足する。一方、|SPA−SPB|の値は0であってもよいが、前記ヒートシール層(A)を構成する樹脂(a)と前記ガスバリア性樹脂層(B)を構成する樹脂(b)は異なる。
本発明の共押出多層構造体においては、前記ヒートシール層(A)と前記ガスバリア性樹脂層(B)との層間接着強度は100gf/15mm以上であることが好ましい。前述の多層シートからなる袋体においては、ヒートシール部の強度が充分であっても、層間接着強度が100gf/15mm未満の場合は、袋体が層間ではがれやすく、やはり密封性が不十分となる。
本発明者らが詳細に検討した結果、上に述べた層間接着強度と、式(1)との間には密接な関係があることが判明した。すなわち、|SPA−SPB|が4を超える場合は、前記ヒートシール層(A)とガスバリア性樹脂層(B)との層間接着強度が100gf/15mmを超えることが困難となることが明らかとなった。
一般に、ヒートシール層と樹脂層とからなる多層構造体において、ヒートシール層同士をヒートシールし、これを剥離すると、通常、ヒートシール層同士のヒートシール強度、及び、ヒートシール層と樹脂層との層間接着強度のうちの、小さいほうで剥離する。本発明においては、共押出多層構造体を構成する各層の樹脂を上記のように適宜選択することにより、ヒートシール強度及び層間接着強度のいずれの点においても優れた共押出多層構造体が得られる。
また、本発明者らの検討により、|SPA−SPB|の値が小さくなる程、層間接着強度が大きくなって、ヒートシール層(A)とガスバリア性樹脂層(B)とが剥離しにくくなり、逆に、|SPA−SPB|の値が大きくなる程、層間接着強度が小さくなって、ヒートシール層(A)とガスバリア性樹脂層(B)とが剥離し易くなることが判明した。さらに驚くべき事に、|SPA−SPB|の値は、ヒートシール層(A)同士のヒートシール強度にも影響を及ぼすことが判明した。すなわち、|SPA−SPB|の値を調整することにより、共押出多層構造体をヒートシールした際の剥離強度(ヒートシール層同士のヒートシール強度、及び、ヒートシール層と樹脂層との層間接着強度のうちの小さいほう)を制御することができる。共押出多層構造体を構成する樹脂にも依存するが、例えば、|SPA−SPB|がおおむね0.5以下の場合、共押出多層構造体の剥離強度は非常に大きくなるので、密封性が必要な用途に適した材料となる。一方、|SPA−SPB|がおおむね0.5を超える場合は、共押出多層構造体の剥離強度は人力で引き剥がせる程度になり、易開封性が必要な用途に適した材料となる。
本発明の共押出多層構造体を構成する樹脂(a)及び樹脂(b)は、ヒートシール層(A)及びガスバリア性樹脂層(B)を構成するのに適しており、かつ、上記の要件を満足する。具体的には、樹脂(a)としては、後で示す変性EVOH(a1)が挙げられる。これを使用することにより、シール層(A)同士をシールしたときのシール強度が100gf/15mm以上となる。特に低温でのヒートシール性の観点から、変性EVOH(a1)が好ましい。また、樹脂(b)としては、EVOH(b1)が挙げられる。
本発明の共押出多層構造体を構成する樹脂(a)として好適に用いられる変性EVOH(a1)は、下記構造単位(I)を0.3〜40モル%含有するエチレン含有量5〜55モル%の変性EVOHである。
(式中、R1、R2、R3及びR4は、同一又は異なり、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基(アルキル基、アルケニル基等)、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基(シクロアルキル基、シクロアルケニル基等)又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基(フェニル基等)を表し、これらの炭化水素基は水酸基、カルボキシル基又はハロゲン原子で置換されていてもよく、またR3とR4とは結合していてもよい。)
好適な実施態様では、前記R1及びR2がともに水素原子である。より好適な実施態様では、前記R1及びR2がともに水素原子であり、前記R3及びR4のうち、一方が炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基であって、かつ他方が水素原子である。好適には、前記脂肪族炭化水素基がアルキル基又はアルケニル基である。変性EVOH(a1)をバリア材として使用する際のガスバリア性を特に重視する観点からは、前記R3及びR4のうち、一方がメチル基又はエチル基であり、他方が水素原子であることがより好ましい。
また、変性EVOH(a1)をバリア材として使用する際のガスバリア性の観点からは、前記R3及びR4のうち、一方が(CH2)iOHで表される置換基(ただし、i=1〜8の整数)であり、他方が水素原子であることも好ましい。バリア材としてのガスバリア性を特に重視する場合は、前記の(CH2)iOHで表される置換基において、i=1〜4の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、1であることがさらに好ましい。
変性EVOH(a1)に含まれる上述の構造単位(I)の量は0.3〜40モル%の範囲内であることが好ましい。構造単位(I)の量は、0.5モル%以上であることがより好ましく、1モル%以上であることがさらにより好ましく、2モル%以上であることが最も好ましい。一方、構造単位(I)の量は、35モル%以下であることがより好ましく、30モル%以下であることがさらにより好ましく、25モル%以下であることが最も好ましい。含まれる構造単位(I)の量が上記の範囲内にあることで、ガスバリア性及び低温でのヒートシール性を兼ね備えた変性EVOH(a1)を得ることができる。
変性EVOH(a1)のエチレン含有量は5〜55モル%であることが好ましい。変性EVOH(a1)のエチレン含有量が5モル%未満の場合は、低温でのヒートシール性又は溶融成形性が悪化するおそれがある。より好適には10モル%以上であり、さらに好適には20モル%以上であり、特に好適には25モル%以上であり、さらに好適には31モル%以上である。一方、変性EVOH(a1)のエチレン含有量が55モル%を超えるとガスバリア性あるいはフレーバー成分の非吸着性が不足するおそれがある。より好適には50モル%以下であり、さらに好適には45モル%以下である。
変性EVOH(a1)を構成する、上記構造単位(I)及びエチレン単位以外の構成成分は、主としてビニルアルコール単位である。このビニルアルコール単位は、通常、原料のEVOH(a0)に含まれるビニルアルコール単位のうち、後述する一価エポキシ化合物と反応しなかったビニルアルコール単位である。また、EVOH(a0)に含まれることがある未ケン化の酢酸ビニル単位は、通常そのまま変性EVOH(a1)に含有される。変性EVOH(a1)は、これらの構成成分を含有するランダム共重合体であることが、NMRの測定や融点の測定結果からわかった。さらに、本発明の目的を阻害しない範囲内で、その他の構成成分を含むこともできる。
変性EVOH(a1)の好適なメルトフローレート(MFR)(190℃、2160g荷重下)は0.1〜30g/10分であり、より好適には0.3〜25g/10分、さらに好適には0.5〜20g/10分である。ただし、融点が190℃付近あるいは190℃を超えるものは2160g荷重下、融点以上の複数の温度で測定し、片対数グラフで絶対温度の逆数を横軸、MFRの対数を縦軸にプロットし、190℃に外挿した値で表す。
上記の変性EVOH(a1)を製造する方法は特に限定されない。本発明者らが推奨する方法は、エチレン−ビニルアルコール共重合体(a0)と分子量500以下の一価エポキシ化合物とを反応させることにより、変性EVOH(a1)を得る方法である。
変性EVOH(a1)の原料として用いられるEVOH(a0)としては、エチレン−ビニルエステル共重合体をケン化して得られるものが好ましい。EVOHの製造時に用いるビニルエステルとしては酢酸ビニルが代表的なものとして挙げられるが、その他の脂肪酸ビニルエステル(プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル等)も使用できる。また、本発明の目的が阻害されない範囲であれば、他の共単量体、例えば、プロピレン、ブチレン、イソブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィン;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の不飽和カルボン酸又はそのエステル;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン系化合物;不飽和スルホン酸又はその塩;アルキルチオール類;N−ビニルピロリドン等のビニルピロリドン等を共重合することもできる。
EVOH(a0)のエチレン含有量は5〜55モル%であることが好ましい。EVOH(a0)のエチレン含有量が5モル%未満の場合は、得られる変性EVOH(a1)の低温でのヒートシール性が悪化するとともに、溶融成形性も悪化するおそれがある。より好適には10モル%以上であり、さらに好適には20モル%以上であり、特に好適には25モル%以上であり、さらに好適には31モル%以上である。一方、EVOH(a0)のエチレン含有量が55モル%を超えると、得られる変性EVOH(a1)のガスバリア性あるいはフレーバー成分の非吸着性が不足するおそれがある。より好適には50モル%以下であり、さらに好適には45モル%以下である。ここで、EVOH(a0)がエチレン含有量の異なる2種類以上のEVOHの配合物からなる場合には、配合重量比から算出される平均値をエチレン含有量とする。
さらに、EVOH(a0)のビニルエステル成分のケン化度は好ましくは90%以上である。ビニルエステル成分のケン化度は、より好ましくは95%以上であり、さらに好ましくは98%以上であり、最適には99%以上である。ケン化度が90%未満では、得られる変性EVOH(a1)のガスバリア性、特に高湿度時のガスバリア性が低下するおそれがあるだけでなく、フレーバー成分の非吸着性が不足し、熱安定性が不十分となり、成形物にゲル・ブツが発生しやすくなるおそれがある。なおここで、EVOH(a0)がケン化度の異なる2種類以上のEVOHの配合物からなる場合には、配合重量比から算出される平均値をケン化度とする。
なお、EVOH(a0)のエチレン含有量及びケン化度は、核磁気共鳴(NMR)法により求めることができる。
さらに、EVOH(a0)として、本発明の目的を阻外しない範囲内で、ホウ素化合物をブレンドしたEVOHを用いることもできる。ここでホウ素化合物としては、ホウ酸類、ホウ酸エステル、ホウ酸塩、水素化ホウ素類等が挙げられる。具体的には、ホウ酸類としては、オルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸等が挙げられ、ホウ酸エステルとしてはホウ酸トリエチル、ホウ酸トリメチル等が挙げられ、ホウ酸塩としては上記の各種ホウ酸類のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、ホウ砂等が挙げられる。これらの化合物のうちでもオルトホウ酸(以下、単にホウ酸と表示する場合がある)が好ましい。
EVOH(a0)として、ホウ素化合物をブレンドしたEVOHを用いる場合、ホウ素化合物の含有量は好ましくはホウ素元素換算で20〜2000ppm、より好ましくは50〜1000ppmである。この範囲内でホウ素化合物をブレンドすることで加熱溶融時のトルク変動が抑制されたEVOHを得ることができる。20ppm未満ではそのような効果が小さく、2000ppmを超えるとゲル化しやすく、成形性不良となる場合がある。
また、EVOH(a0)として、リン酸化合物を配合したEVOHを用いてもよい。これにより樹脂の品質(着色等)を安定させることができる場合がある。本発明に用いられるリン酸化合物としては特に限定されず、リン酸、亜リン酸等の各種の酸やその塩等を用いることができる。リン酸塩としては第一リン酸塩、第二リン酸塩、第三リン酸塩のいずれの形で含まれていても良いが、第一リン酸塩が好ましい。そのカチオン種も特に限定されるものではないが、アルカリ金属塩であることが好ましい。これらの中でもリン酸二水素ナトリウム及びリン酸二水素カリウムが好ましい。リン酸化合物を配合したEVOHを用いる場合の、リン酸化合物の含有量は、好適にはリン酸根換算で200ppm以下であり、より好適には5〜100ppmであり、最適には5〜50ppmである。
ただし、後述のように周期律表第3〜12族に属する金属のイオンを含む触媒の存在下にEVOH(a0)と一価エポキシ化合物とを反応させる場合には、リン酸塩が触媒を失活させるのでできるだけ少ないことが好ましい。その場合のEVOH(a0)のリン酸化合物の含有量は、好適にはリン酸根換算で200ppm以下であり、より好適には100ppm以下であり、最適には50ppm以下である。
また、後述する通り、変性EVOH(a1)は、好適にはEVOH(a0)と分子量500以下の一価エポキシ化合物との反応を、押出機内で行わせることによって得られるが、その際に、EVOHは加熱条件下に晒される。この時に、EVOH(a0)が過剰にアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩を含有していると、得られる変性EVOH(a1)に着色が生じるおそれがある。また、変性EVOH(a1)の粘度低下等の問題が生じ、成形性が低下するおそれがある。また、後述のように触媒を使用する場合には、触媒を失活させるため、それらの添加量はできるだけ少ないことが好ましい。
上記の問題を回避するためには、EVOH(a0)が含有するアルカリ金属塩が金属元素換算値で50ppm以下であることが好ましい。より好ましい実施態様では、EVOH(a0)が含有するアルカリ金属塩が金属元素換算値で30ppm以下であり、さらに好ましくは20ppm以下である。また、同様な観点から、EVOH(a0)が含有するアルカリ土類金属塩が金属元素換算値で20ppm以下であることが好ましく、10ppm以下であることがより好ましく、5ppm以下であることがさらに好ましく、EVOH(a0)にアルカリ土類金属塩が実質的に含まれていないことが最も好ましい。
また、本発明の目的を阻外しない範囲内であれば、EVOH(a0)として、熱安定剤、酸化防止剤を配合したものを用いることもできる。
EVOH(a0)の固有粘度は0.06L/g以上であることが好ましい。EVOH(a0)の固有粘度はより好ましくは0.07〜0.2L/gの範囲内であり、さらに好ましくは0.075〜0.15L/gであり、特に好ましくは0.080〜0.12L/gである。EVOH(a0)の固有粘度が0.06L/g未満の場合、延伸性、柔軟性及び耐屈曲性が低下するおそれがある。また、EVOH(a0)の固有粘度が0.2L/gを越える場合、変性EVOH(a1)を含む成形物においてゲル・ブツが発生しやすくなるおそれがある。
EVOH(a0)の好適なメルトフローレート(MFR)(190℃、2160g荷重下)は0.1〜30g/10分であり、より好適には0.3〜25g/10分、さらに好適には0.5〜20g/10分である。ただし、融点が190℃付近あるいは190℃を超えるものは2160g荷重下、融点以上の複数の温度で測定し、片対数グラフで絶対温度の逆数を横軸、MFRの対数を縦軸にプロットし、190℃に外挿した値で表す。MFRの異なる2種以上のEVOHを混合して用いることもできる。
変性EVOH(a1)の原料として用いられる、分子量500以下の一価エポキシ化合としては、炭素数が2〜8のエポキシ化合物が特に好ましい。化合物の取り扱いの容易さ、及びEVOH(a0)との反応性の観点からは、一価エポキシ化合物の炭素数は好適には2〜6であり、より好適には2〜4である。EVOH(a0)との反応性、及び得られる変性EVOH(a1)のガスバリア性の観点からは、1,2−エポキシブタン、2,3−エポキシブタン、エポキシプロパン、エポキシエタン及びグリシドールが特に好ましく、中でもエポキシプロパン及びグリシドールが好ましい。食品包装用途、飲料包装用途、医薬品包装用途等の、衛生性を要求される用途では、エポキシ化合物として1,2−エポキシブタン、2,3−エポキシブタン、エポキシプロパン及びエポキシエタンを用いることが好ましく、特にエポキシプロパンを用いることが好ましい。本発明の多層構造体を使用した容器は、最内層にシール層(A)として変性EVOH(a1)が配置され、内容物と直接接触する場合が多いことから、この点は重要である。
なお、一価エポキシ化合物としては、上記した化合物の他、国際公開02/092643号パンフレット(特許文献2)に記載された分子量500以下の一価エポキシ化合物のいずれも使用可能である。これらの一価エポキシ化合物は、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、ごく微量の多価エポキシ化合物を含んでいてもよい。
上記EVOH(a0)と上記の一価エポキシ化合物とを反応させることにより変性EVOH(a1)が得られる。このときの、EVOH(a0)及び一価エポキシ化合物の好適な混合比は、EVOH(a0)100重量部に対してエポキシ化合物1〜50重量部であり、さらに好適にはEVOH(a0)100重量部に対してエポキシ化合物2〜40重量部であり、特に好適にはEVOH(a0)100重量部に対してエポキシ化合物5〜35重量部である。
EVOH(a0)と上記の一価エポキシ化合物とを反応させることにより、変性EVOH(a1)を製造する方法は特に限定されないが、EVOH(a0)と一価エポキシ化合物とを溶液で反応させる製造法、及びEVOH(a0)と一価エポキシ化合物とを押出機内で反応させる製造法等が好適な方法として挙げられる。
溶液反応による製造法では、EVOH(a0)の溶液に酸触媒あるいはアルカリ触媒存在下で一価エポキシ化合物を反応させることによって変性EVOH(a1)が得られる。また、EVOH(a0)及び一価エポキシ化合物を反応溶媒に溶解させ、加熱処理を行うことによっても変性EVOH(a1)を製造することができる。反応溶媒としては、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド及びN−メチルピロリドン等のEVOH(a0)の良溶媒である極性非プロトン性溶媒が好ましい。
反応触媒としては、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、硫酸及び3フッ化ホウ素等の酸触媒や水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、ナトリウムメトキサイド等のアルカリ触媒が挙げられる。これらの内、酸触媒を用いることが好ましい。触媒量としては、EVOH(a0)100重量部に対し、0.0001〜10重量部程度が適当である。反応温度としては室温から150℃の範囲が適当である。
EVOH(a0)と一価エポキシ化合物とを押出機内で反応させる製造法では、使用する押出機としては特に制限はないが、一軸押出機、二軸押出機又は二軸以上の多軸押出機を使用し、180〜300℃程度の温度でEVOH(a0)と一価エポキシ化合物とを反応させることが好ましい。後述のように、押出機内で反応させる際に触媒を存在させる場合には、低めの溶融温度とすることが好ましいが、触媒を使用しない場合の好適な温度は200℃〜300℃程度である。
二軸押出機又は二軸以上の多軸押出機を用いた場合、スクリュー構成の変更により、反応部の圧力を高めることが容易であり、EVOH(a0)と一価エポキシ化合物との反応を効率的に行えるようになる。一軸押出機では2台以上の押出機を連結し、その間の樹脂流路にバルブを配置することにより、反応部の圧力を高めることが可能である。また同様に二軸押出機又は二軸以上の多軸押出機を2台以上連結して製造してもよい。
押出機内で反応させる製造法と、溶液反応による製造法を比較した場合、溶液反応の場合は、EVOH(a0)を溶解させる溶媒が必要であり、反応終了後に該溶媒を反応系から回収・除去する必要があり、工程が煩雑なものとなる。また、EVOH(a0)と一価エポキシ化合物との反応性を高めるためには、反応系を加熱及び/又は加圧条件下に維持することが好ましいが、溶液反応の場合と比較して、押出機内での反応ではかかる反応系の加熱及び/又は加圧条件の維持が容易であり、その観点からも押出機内での反応のメリットは大きい。
また、上記の一価エポキシ化合物は、必ずしも沸点の高いものばかりではないため、溶液反応による製造法では、反応系を加熱した場合、系外に一価エポキシ化合物が揮散するおそれがある。しかしながら、押出機内でEVOH(a0)と一価エポキシ化合物とを反応させることにより、一価エポキシ化合物(B)の系外への揮散を抑制することが可能である。特に、押出機内に一価エポキシ化合物を添加する際に、加圧下で圧入することにより、EVOH(a0)と一価エポキシ化合物との反応性を高め、かつ一価エポキシ化合物の系外への揮散を顕著に抑制することが可能である。
押出機内での反応の際の、EVOH(a0)と一価エポキシ化合物の混合方法は特に限定されず、押出機にフィードする前のEVOH(a0)に一価エポキシ化合物のスプレー等を行う方法や、押出機にEVOH(a0)をフィードし、押出機内で一価エポキシ化合物と接触させる方法等が好適なものとして例示される。この中でも、一価エポキシ化合物の系外への揮散を抑制できる観点から、押出機にEVOH(a0)をフィードした後、押出機内で一価エポキシ化合物と接触させる方法が好ましい。また、押出機内への一価エポキシ化合物の添加位置も任意であるが、EVOH(a0)とエポキシ化合物との反応性の観点からは、溶融したEVOH(a0)に対して一価エポキシ化合物を添加することが好ましい。
本発明者が推奨する、EVOH(a0)と一価エポキシ化合物との、押出機内での反応による製造法は、(1)EVOH(a0)の溶融工程、(2)一価エポキシ化合物の添加工程及び(3)ベント等による、未反応の一価エポキシ化合物の除去工程、からなる。反応を円滑に行う観点からは、系内から水分及び酸素を除去することが好適である。このため、押出機内へ一価エポキシ化合物を添加するより前に、ベント等を用いて水分及び酸素を除去してもよい。
また、前述の通り、一価エポキシ化合物の添加工程においては、一価エポキシ化合物を加圧下で圧入することが好ましい。この際に、この圧力が不十分な場合、反応率が下がり、吐出量が変動する等の問題が発生する。必要な圧力は一価エポキシ化合物の沸点や押出温度によって大きく異なるが、通常0.5〜30MPaの範囲が好ましく、1〜20MPaの範囲がより好ましい。
変性EVOH(a1)の製造方法では、EVOH(a0)と一価エポキシ化合物とを、周期律表第3〜12族に属する金属のイオンを含む触媒の存在下に押出機中で溶融混練することが好適である。周期律表第3〜12族に属する金属のイオンを含む触媒を存在させることによって、より低い温度で溶融混練しても効率良くEVOH(a0)と一価エポキシ化合物とを反応させることができる。すなわち、比較的低温での溶融混練によっても、変性量の大きい変性EVOH(a1)を容易に得ることができる。EVOHは高温での溶融安定性が必ずしも良好な樹脂ではないことから、このように低温で溶融混練できることは、樹脂の劣化を防止できる点から好ましい。触媒を使用せずにEVOH(a0)と一価エポキシ化合物とを反応させた場合には、得られる変性EVOH(a1)のMFRが原料のEVOH(a0)のMFRよりも低下する傾向があるが、触媒を使用した場合には、MFRはほとんど変化しない。
使用される触媒は、周期律表第3〜12族に属する金属のイオンを含むものである。触媒に使用される金属イオンとして最も重要なことは適度のルイス酸性を有することであり、この点から周期律表第3〜12族に属する金属のイオンが使用される。これらの中でも、周期律表第3族又は第12族に属する金属のイオンが適度なルイス酸性を有していて好適であり、亜鉛、イットリウム及びガドリニウムのイオンがより好適なものとして挙げられる。なかでも、亜鉛のイオンを含む触媒が、触媒活性が極めて高く、かつ得られる変性EVOH(a1)の熱安定性が優れていて、最適である。
周期律表第3〜12族に属する金属のイオンの添加量はEVOH(a0)の重量に対する金属イオンのモル数で0.1〜20μmol/gであることが好適である。多すぎる場合には、溶融混練中にEVOHがゲル化するおそれがあり、より好適には10μmol/g以下である。一方、少なすぎる場合には、触媒の添加効果が十分に奏されないおそれがあり、より好適には0.5μmol/g以上である。なお、周期律表第3〜12族に属する金属のイオンの好適な添加量は、使用する金属の種類や後述のアニオンの種類によっても変動するので、それらの点も考慮した上で、適宜調整されるべきものである。
周期律表第3〜12族に属する金属のイオンを含む触媒のアニオン種は特に限定されるものではないが、その共役酸が硫酸と同等以上の強酸である1価のアニオンを含むことが好ましい。共役酸が強酸であるアニオンは、通常求核性が低いので一価エポキシ化合物と反応しにくく、求核反応によってアニオン種が消費されて、触媒活性が失われることを防止できるからである。また、そのようなアニオンを対イオンに有することで、触媒のルイス酸性が向上して触媒活性が向上するからである。
共役酸が硫酸と同等以上の強酸である1価のアニオンとしては、メタンスルホン酸イオン、エタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン等のスルホン酸イオン;塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン等のハロゲンイオン;過塩素酸イオン;テトラフルオロボレートイオン(BF4 −)、ヘキサフルオロホスフェートイオン(PF6 −)、ヘキサフルオロアルシネートイオン(AsF6 −)、ヘキサフルオロアンチモネートイオン等の4個以上のフッ素原子を持つアニオン;テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートイオン等のテトラフェニルボレート誘導体イオン;テトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、ビス(ウンデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート)コバルト(III)イオン、ビス(ウンデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート)鉄(III)イオン等のカルボラン誘導体イオン等が例示される。
上記例示したアニオン種のうち、ヘキサフルオロホスフェートやテトラフルオロボレート等のアニオン種を含む触媒を使用した場合には、アニオン種そのものは熱的に安定で求核性も非常に低いものの、当該アニオン種がEVOH中の水酸基と反応してフッ化水素が発生し、樹脂の熱安定性に悪影響を与えるおそれがある。また、コバルトのカルボラン誘導体イオン等はEVOHと反応することがなく、アニオン種自体も熱的に安定ではあるが、非常に高価である。
EVOHと反応することがなく、アニオン種自体も熱的に安定であり、かつ価格も適切なものであることから、触媒のアニオン種としてはスルホン酸イオンが好ましい。好適なスルホン酸イオンとしては、メタンスルホン酸イオン及びトリフルオロメタンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオンが例示され、トリフルオロメタンスルホン酸イオンが最適である。
上述のように、使用される触媒はその共役酸が硫酸と同等以上の強酸である1価のアニオンを含むものであることが好適であるが、触媒中の全てのアニオン種が同一のアニオン種である必要はない。むしろ、その共役酸が弱酸であるアニオンを同時に含有するものであることが好ましい。前記式(X)で示されたような反応メカニズムであれば、EVOHが触媒と反応して金属アルコキシドを形成する際にアニオンの一つが共役酸として系内に遊離する。これが強酸であった場合には、一価エポキシ化合物と反応するおそれがあるとともに、EVOHの溶融安定性にも悪影響を及ぼすおそれがある。
共役酸が弱酸であるアニオンの例としては、アルキルアニオン、アリールアニオン、アルコキシド、アリールオキシアニオン、カルボキシレート並びにアセチルアセトナート及びその誘導体が例示される。なかでもアルコキシド、カルボキシレート並びにアセチルアセトナート及びその誘導体が好適に使用される。
触媒中の金属イオンのモル数に対する、共役酸が硫酸と同等以上の強酸であるアニオンのモル数は、0.2〜1.5倍であることが好ましい。上記モル比が0.2倍未満である場合には触媒活性が不十分となるおそれがあり、より好適には0.3倍以上であり、さらに好適には0.4倍以上である。一方、上記モル比が1.5倍を超えるとEVOHがゲル化するおそれがあり、より好適には1.2倍以下である。前記モル比は最適には1倍である。なお、原料のEVOH(a0)が酢酸ナトリウム等のアルカリ金属塩を含む場合には、それと中和されて消費される分だけ、共役酸が硫酸と同等以上の強酸であるアニオンのモル数を増やしておくことができる。
触媒の調製方法は特に限定されるものではないが、好適な方法として、周期律表第3〜12族に属する金属の化合物を溶媒に溶解又は分散させ、得られた溶液又は懸濁液に、共役酸が硫酸と同等以上の強酸(スルホン酸等)を添加する方法が挙げられる。原料として用いる周期律表第3〜12族に属する金属の化合物としては、アルキル金属、アリール金属、金属アルコキシド、金属アリールオキシド、金属カルボキシレート、金属アセチルアセトナート等が挙げられる。ここで、周期律表第3〜12族に属する金属の化合物の溶液又は懸濁液に、強酸を加える際には、少量ずつ添加することが好ましい。こうして得られた触媒を含有する溶液は押出機に直接導入することができる。
周期律表第3〜12族に属する金属の化合物を溶解又は分散させる溶媒としては有機溶媒、特にエーテル系溶媒が好ましい。押出機内の温度でも反応しにくく、金属化合物の溶解性も良好だからである。エーテル系溶媒の例としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等が例示される。使用される溶媒としては、金属化合物の溶解性に優れ、沸点が比較的低くて押出機のベントでほぼ完全に除去可能なものが好ましい。その点においてジエチレングリコールジメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン及びテトラヒドロフランが特に好ましい。
また、上述の触媒の調整方法において、添加する強酸の代わりに強酸のエステル(スルホン酸エステル等)を用いても良い。強酸のエステルは、通常強酸そのものより反応性が低いために、常温では金属化合物と反応しないことがあるが、200℃前後に保った高温の押出機内に投入することにより、押出機内において活性を有する触媒を生成することができる。
触媒の調製方法としては、以下に説明する別法も採用可能である。まず、水溶性の周期律表第3〜12族に属する金属の化合物と、共役酸が硫酸と同等以上の強酸(スルホン酸等)とを、水溶液中で混合して触媒水溶液を調製する。なおこのとき、当該水溶液が適量のアルコールを含んでいても構わない。得られた触媒水溶液をEVOH(a0)と接触させた後、乾燥することによって触媒が配合されたEVOH(a0)を得ることができる。具体的には、EVOH(a0)ペレット、特に多孔質の含水ペレットを前記触媒水溶液に浸漬する方法が好適なものとして挙げられる。この場合には、このようにして得られた乾燥ペレットを押出機に導入することができる。
触媒を使用する場合には、押出機内の温度は180〜250℃とすることが好ましい。この場合、EVOH(a0)と一価エポキシ化合物を反応させる際に触媒が存在するために、比較的低温で溶融混練しても、効率良くEVOH(a0)と一価エポキシ化合物の反応を進行させることができる。温度が250℃を超える場合にはEVOHが劣化するおそれがあり、より好適には240℃以下である。一方、温度が180℃未満の場合にはEVOH(a0)と一価エポキシ化合物の反応が十分に進行しないおそれがあり、より好適には190℃以上である。
EVOH(a0)と一価エポキシ化合物を反応させる際に触媒を存在させる方法は特に限定されない。好適な方法として、触媒の溶液を調製し、その溶液を押出機内に添加する方法が挙げられる。触媒の溶液の調製方法は前述したとおりである。この方法によれば、後述の別法に比べて生産性が高く、触媒を安定的に供給できるために製品の品質を安定化することもできる。触媒の溶液を押出機に導入する位置は特に限定されないが、EVOH(a0)が完全に溶融している場所で添加することが、均一に配合できて好ましい。特に、一価エポキシ化合物を添加する場所と同じ場所又はその近傍で添加することが好ましい。触媒と一価エポキシ化合物をほぼ同時に配合することにより、ルイス酸である触媒の影響によるEVOH(a0)の劣化を最小限に抑制することができるとともに、十分な反応時間を確保できるからである。したがって、触媒の溶液と一価エポキシ化合物とを混合した液を予め作成しておいて、それを一箇所から押出機中に添加することが最適である。
上述のように、EVOH(a0)と一価エポキシ化合物とを、触媒の存在下に押出機中で溶融混練することが好適であるが、その後で触媒失活剤を添加してさらに溶融混練することがより好ましい。触媒を失活させなかった場合には、得られる変性EVOH(a0)の熱安定性が悪くなるおそれがあり、用途によっては使用に問題をきたす可能性がある。
使用される触媒失活剤は、触媒のルイス酸としての働きを低下させるものであればよく、その種類は特に限定されない。好適にはアルカリ金属塩が使用される。その共役酸が硫酸と同等以上の強酸である1価のアニオンを含む触媒を失活させるには、当該アニオンの共役酸よりも弱い酸のアニオンのアルカリ金属塩を使用することが必要である。こうすることによって、触媒を構成する周期律表第3〜12族に属する金属のイオンの対イオンが弱い酸のアニオンに交換され、結果として触媒のルイス酸性が低下するからである。触媒失活剤に使用されるアルカリ金属塩のカチオン種は特に限定されず、ナトリウム塩、カリウム塩及びリチウム塩が好適なものとして例示される。またアニオン種も特に限定されず、カルボン酸塩、リン酸塩及びホスホン酸塩が好適なものとして例示される。
触媒失活剤として、例えば酢酸ナトリウムやリン酸一水素二カリウムのような塩を使用しても熱安定性はかなり改善されるが、用途によっては未だ不十分である場合がある。この原因は、周期律表第3〜12族に属する金属のイオンにルイス酸としての働きがある程度残存しているため、変性EVOH(a1)の分解及びゲル化に対して触媒として働くためであると考えられる。この点をさらに改善する方法として、周期律表第3〜12族に属する金属のイオンに強く配位するキレート化剤を添加することが好ましい。このようなキレート化剤は当該金属のイオンに強く配位できる結果、そのルイス酸性をほぼ完全に失わせることができ、熱安定性に優れた変性EVOH(a1)を与えることができる。また、当該キレート化剤がアルカリ金属塩であることによって、前述のように触媒に含まれるアニオンの共役酸である強酸を中和することもできる。
触媒失活剤として使用されるキレート化剤として、好適なものとしては、オキシカルボン酸塩、アミノカルボン酸塩、アミノホスホン酸塩等が挙げられる。具体的には、オキシカルボン酸塩としては、クエン酸二ナトリウム、酒石酸二ナトリウム、リンゴ酸二ナトリウム等が例示される。アミノカルボン酸塩としては、ニトリロ三酢酸三ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸三ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸三カリウム、ジエチレントリアミン五酢酸三ナトリウム、1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸三ナトリウム、エチレンジアミン二酢酸一ナトリウム、N−(ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸一ナトリウム等が例示される。アミノホスホン酸塩としては、ニトリロトリスメチレンホスホン酸六ナトリウム、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)八ナトリウム等が例示される。なかでもポリアミノポリカルボン酸が好適であり、性能やコストの面からエチレンジアミン四酢酸のアルカリ金属塩が最適である。
触媒失活剤の添加量は特に限定されず、触媒に含まれる金属イオンの種類や、キレート剤の配位座の数等により適宜調整されるが、触媒に含まれる金属イオンのモル数に対する触媒失活剤のモル数の比が0.2〜10となるようにすることが好適である。上記の比が0.2未満の場合には、触媒が十分に失活されないおそれがあり、より好適には0.5以上、さらに好適には1以上である。一方、上記の比が10を超える場合には、得られる変性EVOH(a1)が着色するおそれがあるとともに、製造コストが上昇するおそれがあり、より好適には5以下であり、さらに好適には3以下である。
触媒失活剤を押出機へ導入する方法は特に限定されないが、均一に分散させるためには、溶融状態の変性EVOH(a1)に対して、触媒失活剤の溶液として導入することが好ましい。触媒失活剤の溶解性や、周辺環境への影響等を考慮すれば、水溶液として添加することが好ましい。
触媒失活剤の押出機への添加位置は、EVOH(a0)と一価エポキシ化合物とを、触媒の存在下に溶融混練した後であればよい。しかしながら、エチレン−ビニルアルコール共重合体(a0)と一価エポキシ化合物とを、触媒の存在下に溶融混練し、未反応の一価エポキシ化合物を除去した後に触媒失活剤を添加することが好ましい。前述のように、触媒失活剤を水溶液として添加する場合には、未反応の一価エポキシ化合物を除去する前に触媒失活剤を添加したのでは、ベント等で除去して回収使用する一価エポキシ化合物の中に水が混入することになり、分離操作に手間がかかるからである。なお、触媒失活剤の水溶液を添加した後で、ベント等によって水分を除去することも好ましい。
本発明の製造方法において、触媒失活剤を使用する場合の好適な製造プロセスとしては、
(1)EVOH(a0)の溶融工程;
(2)一価エポキシ化合物と触媒の混合物の添加工程;
(3)未反応の一価エポキシ化合物の除去工程;
(4)触媒失活剤水溶液の添加工程;
(5)水分の減圧除去工程;
の各工程からなるものが例示される。
変性EVOH(a1)は、周期律表第3〜12族に属する金属のイオンを0.1〜20μmol/g含有することが好ましい。かかる金属のイオンは、前述の製造方法において触媒を使用した際の触媒残渣として含有され得るものであり、その好適な金属のイオンの種類については、前述の触媒の説明のところで述べたとおりである。より好適には0.5μmol/g以上である。また、より好適には10μmol/g以下である。
また、変性EVOH(a1)は、スルホン酸イオンを含有することが好適である。かかるスルホン酸イオンは、前述の製造方法において触媒を使用した際の触媒残渣として含有され得るものであり、その好適なスルホン酸イオンの種類については、前述の触媒の説明のところで述べたとおりである。スルホン酸イオンの含有量は0.1〜20μmol/gであることが好適である。より好適には0.5μmol/g以上である。また、より好適には10μmol/g以下である。
さらに、変性EVOH(a1)中のアルカリ金属イオンの含有量がスルホン酸イオンの含有量の1〜50倍(モル比)であることが好適である。アルカリ金属イオンは、前述の製造方法において触媒失活剤を使用した際の残渣として含有され得るとともに、原料のEVOH(a0)に由来して含有され得るものである。当該アルカリ金属イオンの含有量がスルホン酸イオンの含有量の1倍未満である場合には、製造工程において、触媒の失活が十分に行われておらず、変性EVOH(a1)の熱安定性に問題を生じる場合があり、より好適には2倍以上である。一方、アルカリ金属イオンの含有量がスルホン酸イオンの含有量の50倍を超える場合には、変性EVOH(a1)が着色するおそれがあり、好適には30倍以下である。
こうして得られた変性EVOH(a1)の融点は160℃以下であることが好ましい。これによって、低温での良好なヒートシール性が確保される。より好適には150℃以下であり、さらに好適には140℃以下である。また、これによって低温で溶融成形することも可能である。
変性EVOH(a1)には、必要に応じて各種の添加剤を配合することもできる。このような添加剤の例としては、酸化防止剤、可塑剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、フィラー等を挙げることができ、これらを本発明の作用効果が阻害されない範囲でブレンドすることができる。
本発明の共押出多層構造体を構成するヒートシール層(A)は、上記の変性EVOH(a1)のみを含有してもよいが、変性EVOH(a1)と、それ以外の熱可塑性樹脂との混合物からなるものであってもよい。このとき、変性EVOH(a1)と、それ以外の熱可塑性樹脂とからなる樹脂組成物は、好適には、変性EVOH(a1)1〜99重量%と熱可塑性樹脂1〜99重量%とからなるものである。
ここで、変性EVOH(a1)と配合される熱可塑性樹脂は特に限定されず、前記構造単位(I)を含有しないEVOH(a2)、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ポリケトン等が挙げられる。また、各種の共重合体を使用することもできる。
中でも、熱可塑性樹脂として、前記構造単位(I)を含有しないEVOH(a2)を使用することが好ましい。EVOH(a2)が有するガスバリア性、フレーバー成分の非吸着性あるいは透明性を大きく低下させることなく、低温でのヒートシール性を大きく改善することが可能だからである。変性EVOH(a1)とEVOH(a2)との配合重量比は、10/90〜90/10の範囲が好ましい。重量比が10/90未満の場合は、条件によってはヒートシール性が不十分になる場合がある。重量比は20/80以上がより好ましく、30/70以上がさらにより好ましい。一方、重量比が90/10を超える場合は、高度なガスバリア性が要求される用途においては好ましくない場合がある。重量比は、80/20以下がより好ましい
EVOH(a2)のエチレン含有量の好適な範囲は、混合する変性EVOH(a1)によっても変化し、また、目的に応じて調整すべきであるが、熱安定性及び低温でのヒートシール性の観点からは20モル%以上であることが好ましく、25モル%以上がより好ましく、27モル%以上がさらにより好ましい。また、ガスバリア性やフレーバー成分の非吸着性の観点からは、50モル%以下であることが好ましく、45モル%以下がより好ましく、38モル%以下がさらにより好ましい。さらに、EVOH(a2)のケン化度は99%以上であることが好ましく、99.5%以上がより好ましい。
変性EVOH(a1)とそれ以外の熱可塑性樹脂とをブレンドする方法は、特に限定されるものではない。樹脂ペレットをドライブレンドしてそのまま溶融成形に供することもできるし、より好適にはバンバリーミキサー、単軸又は二軸押出機等で溶融混練し、ペレット化してから溶融成形に供することもできる。ブレンド操作時に樹脂の劣化が進行するのを防止するためには、ホッパー口を窒素シールし、低温で押出すことが好ましい。また、混練度の高い押出機を使用し、分散状態を細かく均一なものとすることが、バリア性、透明性を良好にすると共に、ゲル、ブツの発生や混入を防止できる点で好ましい。
溶融根練に使用される装置としては、連続式インテンシブミキサー、ニーディングタイプ二軸押出機(同方向又は異方向)等の連続型混練機が最適であるが、バンバリーミキサー、インテンシブミキサー、加圧ニーダー等のバッチ型混練機を用いることもできる。また別の連続混練装置としては石臼のような摩砕機構を有する回転円板を使用したもの、例えば、(株)KCK製のKCK混練押出機を用いることもできる。混練機として通常に使用されるものの中には、一軸押出機に混練部(ダルメージ、CTM等)を設けたもの、又は、ブラベンダーミキサー等の簡易型の混練機も挙げることができる。
この中で、本発明の目的に最も好ましいものとしては連続式インテンシブミキサーを挙げることができる。市販されている機種としてはFarrel社製FCM、(株)日本製鋼所製CIM、(株)神戸製鋼所製KCM、LCM、ACM等がある。実際にはこれらの混練機の下に一軸押出機を有する、混練と押出ペレット化を同時に実施する装置を採用するのが好ましい。また、ニーディングディスク又は混練用ローターを有する二軸混練押出機、例えば、(株)日本製鋼所製のTEX、Werner&Pfleiderer社のZSK、東芝機械(株)製のTEM、池貝鉄工(株)製のPCM等も本発明の混練の目的に用いられる。
これらの連続型混練機を用いるにあたっては、ローター、ディスクの形状が重要な役割を果たす。特にミキシングチャンバとローターチップ又はディスクチップとの隙間(チップクリアランス)は重要で、狭すぎても広すぎても良好な分散は得られない。チップクリアランスとしては1〜5mmが最適である。
また、混練機のローターの回転数は100〜1200rpm、好ましくは150〜1000rpm、さらに好ましくは200〜800rpmの範囲が採用される。混練機チャンバー内径(D)は30mm以上、好ましくは50〜400mmの範囲のものが挙げられる。混練機のチャンバー長さ(L)と内径(D)との比L/Dは4〜30が好適である。また混練機はひとつでもよいし、また2以上を連結して用いることもできる。混練時間は長い方が良い結果を得られるが、樹脂の劣化防止及び経済性の点から10〜600秒、好適には15〜200秒の範囲であり、最適には15〜150秒である。
本発明の共押出多層構造体に使用される樹脂(b)であるEVOH(b1)としては、上述のEVOH(a0)と同様の樹脂が挙げられる。
本発明の共押出多層構造体は、ガスバリア性樹脂層(B)がヒートシール層(A)と隣接していない側面に、別の層(C)を有していてもよい。層(C)としては、EVOH、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、各種共重合体等の樹脂の他、紙、金属箔等を使用することができる。また層(C)はこれらの材料からなる層を組み合わせたものでもよい。
本発明の共押出多層構造体を製造する方法は特に限定されず、共押出法、ドライラミネート法、押出コーティング法等を採用することができる。具体的には、ヒートシール層(A)及びガスバリア性樹脂層(B)を共押出する方法;ガスバリア性樹脂層(B)からなるフィルム上に、ヒートシール層(A)を押出コーティングする方法;ガスバリア性樹脂層(B)からなるフィルム上に、ヒートシール層(A)及び他の層(C)からなる溶融多層体を共押出コーティングする方法;ヒートシール層(A)からなるフィルムと、ガスバリア性樹脂層(B)からなるフィルムとをドライラミネートする方法;ヒートシール層(A)及びガスバリア性樹脂層(B)からなる多層フィルムと、他の層(C)からなるフィルムとをドライラミネートする方法等が例示される。これらの中でも、ヒートシール層(A)及びガスバリア性樹脂層(B)を共押出する方法が好ましい。他の層(C)を設ける場合は、積層する際に必要に応じて接着剤を使用することもできる。なお、ヒートシール層(A)及びガスバリア性樹脂層(B)は、一軸延伸又は二軸延伸により配向していてもよい。
こうして得られた本発明の共押出多層構造体は、ヒートシール層(A)同士を重ねてヒートシールすることにより、容器及び包装体(袋、カップ、チューブ、トレー、ボトル等)とすることができる。前述のように、本発明の共押出多層構造体はシール強度及びヒートシール層(A)とガスバリア性樹脂層(B)との層間接着強度が優れており、また、ヒートシール層(A)とガスバリア性樹脂層(B)との組み合わせを適宜選択することにより、一定の範囲内で剥離強度の制御が可能であり、使用目的に合った開封性を有する容器及び包装体を提供することが可能となる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。変性EVOH(a1)及びEVOH(a0)に関する分析は以下の方法に従って行った。
(1)EVOH(a0)のエチレン含有量及びケン化度:
重水素化ジメチルスルホキシドを溶媒とした1H−NMR(核磁気共鳴)測定(日本電子社製「JNM−GX−500型」を使用)により得られたスペクトルから算出した。
(2)EVOH(a0)の固有粘度:
試料とする乾燥EVOHからなる乾燥ペレット0.20gを精秤し、これを含水フェノール(水/フェノール=15/85:重量比)40mlに60℃にて3〜4時間加熱溶解させ、温度30℃にて、オストワルド型粘度計にて測定し(t0=90秒)、下式により固有粘度[η]を求めた。
[η]=(2×(ηsp−lnηrel))1/2/C (L/g)
ηsp=t/t0−1 (specific viscosity)
ηrel=t/t0 (relative viscosity)
C ;EVOH濃度(g/L)
t0:ブランク(含水フェノール)が粘度計を通過する時間
t:サンプルを溶解させた含水フェノール溶液が粘度計を通過する時間
(3)EVOH(a0)中の酢酸の含有量の定量:
試料とするEVOHの乾燥ペレット20gをイオン交換水100mlに投入し、95℃で6時間加熱抽出した。抽出液をフェノールフタレインを指示薬として、1/50規定のNaOHで中和滴定し、酢酸の含有量を定量した。
(4)変性EVOH(a1)及びEVOH(a0)中のナトリウムイオン及びカリウムイオンの定量:
試料とする変性EVOH又はEVOHの乾燥ペレット10gを0.01規定の塩酸水溶液50mlに投入し、95℃で6時間撹拌した。撹拌後の水溶液をイオンクロマトグラフィーを用いて定量分析し、ナトリウムイオン及びカリウムイオンの量を定量した。カラムは、(株)横河電機製のICS−C25を使用し、溶離液は5.0mMの酒石酸と1.0mMの2,6−ピリジンジカルボン酸を含む水溶液とした。なお、定量に際してはそれぞれ塩化ナトリウム水溶液及び塩化カリウム水溶液で作成した検量線を用いた。
(5)EVOH(a0)中のリン酸イオン及び変性EVOH(a1)中のトリフルオロメタンスルホン酸イオンの定量:
試料とする変性EVOH又はEVOHの乾燥ペレット10gを0.01規定の塩酸水溶液50mlに投入し、95℃で6時間撹拌した。撹拌後の水溶液をイオンクロマトグラフィーを用いて定量分析し、リン酸イオン及びトリフルオロメタンスルホン酸イオンの量を定量した。カラムは、(株)横河電機製のICS−A23を使用し、溶離液は2.5mMの炭酸ナトリウムと1.0mMの炭酸水素ナトリウムを含む水溶液とした。なお、定量に際してはリン酸二水素ナトリウム水溶液及びトリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム水溶液で作成した検量線を用いた。
(6)変性EVOH(a1)中の亜鉛イオンの定量:
試料とする変性EVOHの乾燥ペレット10gを0.01規定の塩酸水溶液50mlに投入し、95℃で6時間撹拌した。撹拌後の水溶液をICP発光分析により分析した。装置はパーキンエルマー社のOptima4300DVを用いた。測定波長は206.20nmを用いた。なお、定量に際しては市販の亜鉛標準液を使用して作成した検量線を用いた。
(7)変性EVOH(a1)及びEVOH(a0)のメルトフローレート(MFR):
メルトインデクサーL244(宝工業株式会社製)を用いて測定した。具体的には、測定する樹脂のチップを、内径9.55mm、長さ162mmのシリンダーに充填し、190℃で溶融した後、溶融した樹脂に対して、重さ2160g、直径9.48mmのプランジャーによって均等に荷重をかけ、シリンダーの中央に設けた径2.1mmのオリフィスより押出された樹脂の流出速度(g/10分)を測定し、これをメルトフローレート(MFR)とした。
合成例1−変性EVOH(a1−1)の合成
表1−1に示すような構成、物性を有するEVOH(a0−1)のペレット5kgをポリエチレン製袋に入れた。そして、酢酸亜鉛二水和物27.44g(0.125mol)及びトリフルオロメタンスルホン酸15g(0.1mol)を水500gに溶解させて水溶液を調製し、前記水溶液を袋の中のEVOHに添加した。以上のようにして触媒溶液が添加されたEVOHを、時々、振り混ぜながら袋の口を閉じた状態で90℃で5時間加熱し、EVOHに触媒溶液を含浸させた。得られたEVOHを、90℃で真空乾燥することにより、亜鉛イオンを含む触媒を含有するEVOH(a0−1Zn)を得た。
EVOH(a0−1)90重量部に、前記のEVOH(a0−1Zn)10重量部をドライブレンドしたものを用いた。また、分子量500以下の一価エポキシ化合物としてエポキシプロパンを用いた。東芝機械社製TEM−35BS押出機(37mmφ、L/D=52.5)を使用し、樹脂フィード口から、上記ドライブレンド物をフィードし、圧入口1からエポキシプロパンをフィードした。ベント2を減圧して未反応のエポキシプロパンを除去し、圧入口2からエチレンジアミン4酢酸3ナトリウム3水和物の8.2重量%水溶液を添加した。ベント3を減圧して水分を除去し、変性EVOH(a1−1)を得た。
混練条件は以下のとおりである。
押出機仕様、運転条件:
東芝機械社製TEM−35BS押出機(37mmφ、L/D=52.5)
C1/C2、C3/C4〜C15=水冷/200℃/220℃
スクリュー回転数; 200rpm
フィード位置、仕様、条件:
C1(樹脂フィード口);ドライブレンド物;11kg/hr
C8(圧入口1);エポキシプロパン;2.5kg/hr(フィード時圧力3.5MPa)
C13(圧入口2);エチレンジアミン4酢酸3ナトリウム3水和物の8.2重量%水溶液;0.14kg/hr
ベント位置、減圧条件:
C6(ベント1);60mmHg
C12(ベント2);200mmHg
C14(ベント3);20mmHg
上記溶融混練操作における、一価エポキシ化合物の混合割合は、EVOH100重量部に対して22.7重量部であった。EVOHの重量に対する金属イオンのモル数で2.5μmol/gの触媒が添加された。触媒に含まれる金属イオンのモル数に対する触媒失活剤のモル数の比は1であった。
こうして得られた変性EVOH(a1−1)の構成、物性を表1−2に示す。アルカリ金属イオンの含有量は、トリフルオロメタンスルホン酸イオンの含有量の3.9倍(モル比)であった。なお、変性EVOH(a1−1)の化学構造については、国際公開02/092643号パンフレット(特許文献2)に記載された手順に従って変性EVOH(a1−1)をトリフルオロアセチル化した後にNMR測定を行うことによって求めた。変性EVOH(a1−1)のエチレン含有量は32モル%であり、構造単位(I)の含有量は8モル%であった。
合成例2−変性EVOH(a1−2)の合成
EVOHとして、表1−1に示すような構成、物性を有するEVOH(a0−2)のペレットを使用した以外は合成例1と同様にして変性EVOH(a1−2)を得た。変性EVOH(a1−1)の構成、物性を表1−2に示す。アルカリ金属イオンの含有量は、トリフルオロメタンスルホン酸イオンの含有量の3.9倍(モル比)であった。なお、変性EVOH(a1−2)の化学構造については、合成例1と同様にして求めた。変性EVOH(a1−2)のエチレン含有量は44モル%であり、構造単位(I)の含有量は8モル%であった。
実施例1
ヒートシール層(A)を構成する樹脂(a)として、合成例1で得られた変性EVOH(a1−1)を、ガスバリア性樹脂層(B)を構成する樹脂(b)として、エチレン含有量32モル%のEVOH(b1−1)(株式会社クラレ製「EVAL」F101、酸素透過速度:0.5cc・20μm/m2・day・atm(20℃、65%RH))を、それぞれ使用し、2種3層共押出装置を用いて、下記共押出成形条件で厚みの異なる2種類の3層フィルム(a1−1/b1−1/a1−1)を作製した。各種層の厚みを表2に示す。
共押出成形条件は以下のとおりである。
層構成:
変性EVOH(a1−1)/EVOH(b1−1)/変性EVOH(a1−1)
各樹脂の押出機仕様、各樹脂の押出し温度:
変性EVOH(a1);
32φ押出機 3T−32−A(株式会社プラスチック工学研究所製)
C1/C2/C3=150/200/200℃
EVOH(b1);
20φ押出機 ラボ機ME型CO−EXT(株式会社東洋精機製)
C1/C2/C3=175/200/200℃
Tダイ仕様:
300mm幅2種3層用 (株式会社プラスチック工学研究所製)
ダイ温度200℃
冷却ロールの温度:50℃
引き取り速度:4m/分
上記作成した3層フィルムを用いて、酸素透過速度を測定した。また得られた3層フィルムに50μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(株式会社東セロ製「OP−U1」)を接着剤AD−335A(東洋モートン)を用いてドライラミネートした多層フィルムを作成し、到達平衡剥離強度を測定した。評価結果を表2にまとめて示す。
多層構造体剥離強度、到達平衡剥離強度の求め方:
多層フィルムを長さ100mm、幅20mmに切断し、安田精機製「YAA式ヒートシーラー」を用いてプレス圧1kgf/cm2、プレス時間1秒の条件で、ヒートシール温度を60℃から140℃まで10℃刻みで変化させてヒートシールを行った。このフィルムを幅15mmに切断し、島津製作所製「オートグラフ」を用いて剥離強度を測定した。剥離強度を剥離した距離に対してプロットしたグラフ(図1)を作成し、剥離強度が一定となった時の剥離強度を多層構造体剥離強度とした。次に多層構造体剥離強度をヒートシール温度に対してプロットしたグラフ(図2)を作成し、多層構造体剥離強度がヒートシール温度に依存せず一定となった時の多層構造体剥離強度を到達平衡剥離強度とした。
なお、ここで言う多層構造体剥離強度とは、上記の剥離強度測定において得られた強度の意味であり、得られた数値は、通常は、ヒートシール層(A)同士の接着強度、及び、ヒートシール層(A)とガスバリア性樹脂層(B)の層間接着強度のうちの、小さいほうを表している。
実施例2
樹脂(b)として、エチレン含有量38モル%のEVOH(b1−2)(株式会社クラレ製「EVAL」H101、酸素透過速度:0.9cc・20μm/m2・day・atm(20℃、65%RH))を用いた以外は実施例1と同様にして多層フィルムを製造して評価した。評価結果を表2にまとめて示す。
実施例3
樹脂(b)として、エチレン含有量44モル%のEVOH(b1−3)(株式会社クラレ製「EVAL」E101、酸素透過速度:1.5cc・20μm/m2・day・atm(20℃、65%RH))を用いた以外は実施例1と同様にして多層フィルムを製造して評価した。評価結果を表2にまとめて示す。
実施例4〜6
樹脂(a)として、合成例2で得られた変性EVOH(a1−2)を用いた以外は実施例1〜3と同様にして多層フィルムを製造して評価した。評価結果を表2にまとめて示す。
比較例1
ヒートシール層(A)を構成する樹脂(a)として、三井住友ポリエチレン製「MIRASON」(x−1)を、ガスバリア性樹脂層(B)を構成する樹脂(b)として、前述のEVOH(b1−1)を、それぞれ使用し、2種3層共押出装置を用いて、下記共押出成形条件で厚みの異なる2種類の3層フィルム(x−1/b1−1/x−1)を作製した。各種層の厚みを表2に示す。
共押出成形条件は以下のとおりである。
層構成:
ポリエチレン(x−1)/EVOH(b1−1)/ポリエチレン(x−1)
各樹脂の押出機仕様、各樹脂の押出し温度:
ポリエチレン(x−1);
20φ押出機 ラボ機ME型CO−EXT(株式会社東洋精機製)
C1/C2/C3=175/180/180℃
EVOH(b1−1);
20φ押出機 ラボ機ME型CO−EXT(株式会社東洋精機製)
C1/C2/C3=175/200/200℃
Tダイ仕様:
300mm幅2種3層用 (株式会社プラスチック工学研究所製)
ダイ温度190℃
冷却ロールの温度:50℃
引き取り速度:4m/分
上記作成した3層フィルムを用いて、実施例1と同様にして評価した。評価結果を表2にまとめて示す。
上記のように、ヒートシール層(A)として変性EVOH、ガスバリア性樹脂層(B)としてEVOHを使用した本発明の共押出多層構造体は、低温での良好なヒートシール性と優れたガスバリア性とを併せ持つ。また、実施例の共押出多層構造体においては、|SPA−SPB|が0.5以下の場合、共押出多層構造体の剥離強度が約900g/15mm以上であり、|SPA−SPB|が0.3〜0.5の場合に共押出多層構造体の剥離強度が最大となる。一方、|SPA−SPB|が0.5を超える場合は、共押出多層構造体の剥離強度は|SPA−SPB|の値の増加とともに小さくなる。このような傾向を利用して、ヒートシール層(A)とガスバリア性樹脂層(B)の組み合わせを選択することにより、共押出多層構造体の剥離強度を所望の数値に制御することができる。