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JP4191390B2 - 麦芽評価方法及び麦芽アルコール飲料の香味安定性の予測方法。 - Google Patents
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JP4191390B2 - 麦芽評価方法及び麦芽アルコール飲料の香味安定性の予測方法。 - Google Patents

麦芽評価方法及び麦芽アルコール飲料の香味安定性の予測方法。 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
麦芽アルコール飲料の製造原料である麦芽の評価方法および当該麦芽から製造される麦芽アルコール飲料の香味安定性を予測する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ビール、発泡酒等の麦芽を原料とする麦芽アルコール飲料の香味安定性を向上させて、保存による香味の劣化を抑制することは業界においては長年の懸案課題である。原料、醸造、パッケージング、さらには製品の流通に至るまで様々な施策が検討されてきた。需要に応じた製造量の管理、製造日から出荷日までの時間短縮、輸送や保存管理の徹底などの鮮度管理を図っている。また、麦芽アルコール飲料は酸化により香味が劣化することが一般的に知られており、たとえば、ろ過ラインおよびビール詰め機等における酸素ピックアップの低減、エアレーション量の最適化、仕込初期における酸素巻き込み低減によるマイシェ酸化防止、マイシェpH適正化によるリポキシゲナーゼをはじめとする酸化酵素の反応の抑制等が行われてきた。
【0003】
香味安定性を向上維持する上で、主原料である麦芽の品質の評価が重要であるといわれているものの、香味安定性の観点から麦芽を効果的に評価する方法がいまだに確立していないのが現状である。
麦芽アルコール飲料の香味安定性を評価する指標として、一定温度、時間の条件下で保存した麦芽アルコール飲料のトランス−2−ノネナール量を測定する方法が知られている。この値が高いと例えば段ボール臭と表現されるような好ましくない香味のする麦芽アルコール飲料となる。麦芽の糖化からホップ添加、煮沸までの仕込工程中に麦芽由来の脂質がリポキシゲナーゼによる酵素的酸化や自動酸化を経て、トランス−2−ノネナール及びその前駆体は生成される。これらを総称してノネナールポテンシャルといい、Drostらは麦汁のリポキシゲナーゼ量およびノネナールポテンシャル量と自然劣化した製品ビール中のトランス−2−ノネナール量とは高い相関性関係があり、これらの値が単一種のビール製造におけるビールの劣化の可能性を予測するのに有用であると報告している。(B.W.Drost et al;Am.Soc.Brew.Chem.Journal、Vol.48、No.4、124−131(1990))
【0004】
一方、原料品質が麦芽アルコール飲料の香味安定性に及ぼす影響を定量的に評価する方法として、評価対象の麦芽を単独で用いて実際に麦芽アルコール飲料を製造、一定条件下で保存後、トランス−2−ノネナールを測定する方法が考えられるが、コストと時間が非常にかかり、多数の麦芽を評価するのに適していない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述の文献では、大麦品種の特定されていない単一の麦芽をの製麦条件、またはその後の仕込条件を変えて麦汁を作り、当該麦汁のノネナールポテンシャル量及び当該麦汁から製造したビールの一定条件下で保存後のトランス−2−ノネナール量を測定しているのみで、かつノネナールポテンシャルとトランス−2−ノネナールとの相関性に関して定量的な扱いはされていない。Drostらの論文以来現在に至るまで、彼らの仮説は十分に検証されていない。
【0006】
一方、実際の麦芽アルコール飲料製造では、購入される麦芽の種類は多岐にわたり、品種ごと、産地ごと、作付け年度ごとに特性値はまちまちであることから、通常複数の麦芽を混合して使用されることが多い。使用する麦芽ごとに製造される麦芽アルコール飲料の香味安定性の指標であるトランス−2−ノネナール量を予測する方法、さらには複数麦芽を使用した場合の麦芽アルコール飲料の香味安定性を予測する方法の確立が必要であり、これら現場レベルでのビールの品質向上に上記の知見を応用するには、さらに詳細な検討を加える必要があった。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決すべく鋭意研究の結果、本発明者らは高いノネナールポテンシャル量を生成できる新しい麦汁の製造法を確立し、その方法にて製造された麦汁のノネナールポテンシャル量とそれを用いて製造された麦芽アルコール飲料に生成されるトランス−2−ノネナール量とには高い相関があることを検証することができ、さらに複数の麦芽を用いて麦芽アルコール飲料を製造する場合において、個々の麦芽のノネナールポテンシャルの加重平均値と該飲料のトランス−2−ノネナール量が高い相関があることを見いだし、麦芽アルコール飲料の香味安定性に関する麦芽の評価び該麦芽から製造される麦芽アルコール飲料の香味安定性の予測が可能となり、本発明を完成させた。
【0008】
従って、本発明の第1は麦芽から小スケールで調製した麦汁のノネナールポテンシャルを指標とすることを特徴とする麦芽アルコール飲料の製造に用いる麦芽の評価方法に関する。
【0009】
本発明の第2は麦汁の調製工程が以下の▲1▼〜▲5▼の工程からなる本発明の第1記載の麦芽の評価方法に関する。
▲1▼ディスク型粉砕機またはローラー型粉砕機を用いてローラ間隔またはディスク間隔を0.1以上0.8mm未満に設定して麦芽を粉砕する工程、
▲2▼麦芽1重量部と温度が40℃以上60℃未満、かつ硬度が5°dH 以上15°dH未満の温水を4重量部以上6重量部未満混合する工程、
▲3▼麦芽と温水の混合物を40℃以上60℃未満の温度にて10分以上70分未満保持する工程、
▲4▼前記混合物を60℃以上75℃未満の温度にて30分以上から60分未満保持する工程、
▲5▼前記混合物を75℃以上で1分以上保持する工程。
【0010】
本発明の第3は、ローラー間隔またはディスク間隔を0.2mmに設定して麦芽を粉砕し、麦芽1重量部に温度が50℃、かつ硬度が10°dH の温水5重量部を混合する本発明の第2記載の麦芽の評価方法に関する。
【0011】
さらに、本発明の第4は、麦芽から小スケールで調製した麦汁のノネナールポテンシャルから当該麦芽から製造されるアルコール飲料中に生成するトランス−2−ノネナール量を推定し、当該トランス−2−ノネナール量を指標とすることを特徴とする麦芽アルコール飲料の香味安定性の予測方法に関する。
【0012】
本発明の第5は、式1の相関関係式を用いてアルコール飲料中に生成するトランス−2−ノネナールの量を推定することを特徴とする本発明の第4記載の麦芽アルコール飲料の香味安定性の予測方法に関する。
y=0.019x−0.074
(式中、x:ノネナールポテンシャル、y:麦芽アルコール飲料中のトランス−2−ノネナール量)
【0013】
本発明の第6は、麦汁の調製工程が以下の▲1▼〜▲5▼の工程からなる第4または5記載の麦芽アルコール飲料の香味安定性の予測方法に関する。
▲1▼ディスク型粉砕機またはローラー型粉砕機を用いてローラー間隔またはディスク間隔を0.8mm未満に設定して麦芽を粉砕する工程、
▲2▼麦芽1重量部と温度が40℃以上60℃未満、かつ硬度が5°dH 以上15°dH未満の温水を4重量部以上6重量部未満混合する工程、
▲3▼麦芽と温水の混合物を40℃以上60℃未満の温度にて10分以上70分未満保持する工程、
▲4▼前記混合物を60℃以上75℃未満の温度にて30分以上から60分未満保持する工程、
▲5▼前記混合物を75℃以上で1分以上保持する工程。
【0014】
本発明の第7は、ローラー間隔またはディスク間隔を0.2mmに設定して麦芽を粉砕し、麦芽1重量部に温度が50℃、かつ硬度が10°dH の温水を5重量部を混合する請求項6記載の麦芽アルコール飲料の香味安定性の予測方法に関する。
【0015】
さらに、本発明の第8は複数種の麦芽の混合物から製造される麦芽アルコール飲料の香味安定性の予測方法において、該混合物を構成する各麦芽から調製される麦汁のノネナールポテンシャルの加重平均値から当該麦芽混合物から製造されるアルコール飲料中に生成するトランス−2−ノネナール量を推定し、当該トランス−2−ノネナール量を指標とすることを特徴とする麦芽アルコール飲料の香味安定性の予測方法に関する。
【0016】
【発明の実施の形態】
前述のDrostらの報告には、ノネナールポテンシャルの測定方法の項に、次のような記載がある。「ノネナールポテンシャルはビール条件(pH4.0、酸素が少ない状態)で麦汁がトランス−2−ノネナールを生成する潜在可能性を決定するための一種の強制特性値である。リン酸でpH4.0に調整したもと入れ麦汁(pitching wort)10mlを密閉試験管にて100℃で2時間加熱した。」とあるが、もと入れ麦汁の製造方法は開示されていない。また、何も処理をしない麦芽から調製した麦汁、該麦芽を高温で糖化した麦汁、高温焙燥した該麦芽から調製した麦汁及び高温糖化+高温焙燥にて調製した麦汁4種類の麦汁のノネナールポテンシャルを測定、分析値の比較をしているに過ぎず、多数種の麦芽についてサンプルのノネナールポテンシャルを効率よく測定するには新たに麦汁の調製方法を見いだす必要があった。
【0017】
麦芽の指標値、たとえばエキス含量、可溶性窒素、色度などの品質指標値やろ過速度や糖化時間などの作業性指標値の測定に、標準の調製方法が定められているコングレス麦汁(EBC麦汁)を使用するが、コングレス麦汁のノネナールポテンシャルは平均約6ppbと低い値となり、またその分布範囲も狭く、安定的に微量な分析値上の差異を把握することは困難であった。そこで、現業のビール醸造における麦汁調製法に沿った、かつ麦汁中にトランス−2−ノネナールを多量に生成可能な麦汁調製法の確立のため、下記の条件を検討した。
【0018】
第1に麦芽の粉砕の条件である。粉砕度を高めることによって、マイシェ中に溶出する、脂質酸化酵素であるリポキシゲナーゼ(LOX)活性が増加し、脂質の酸化産物であるノネナールポテンシャルも同時に高まると考えた。実施例に示したとおり、粉砕度を高めることにより、LOX活性が増加し、ノネナールポテンシャルも同時に高まることを確認した。実施例ではディスクミル、ローラーミルを使用したが、他にはハンマーミルなど本発明の麦芽評価方法に十分な量のノネナールポテンシャルが生成可能な粉末が調製できる機器であれば特に制限はない。ディスクミル、ローラーミルの場合、ディスク間隔またはローラー間隔は0.1以上0.8mm未満が好ましい。0.1mm未満では微粉末になりすぎ、溶けの悪い麦芽などの作業性に問題が生じ、0.8mm以上では十分な量のリポキシゲナーゼが麦汁中に溶出せず、ノネナールポテンシャルが生成しにくい。最も好ましくはディスク間隔またはローラー間隔が0.2mmの場合であり、この場合最もノネナールポテンシャルが多量に生成するので、麦芽ノネナールポテンシャルが最大値となる。
【0019】
第2に麦芽に混合する温水の温度、量の条件である。この条件は、製造する麦芽アルコール飲料の種類に応じて変化するが、温水の温度は40℃以上60℃未満が好ましく、さらに好ましくは50℃がよい。さらに、粉砕した麦芽に温水を混合後、同じ温度を保持するために麦芽と温水の混合物を約1時間保温する。リポキシゲナーゼを主とする酸化酵素の反応は、この間に進行するといわれており、その脂質酸化反応によりノネナールポテンシャルが生成する。麦芽と水の混合時に酵素反応に好適な温度域、すなわち40℃以上60℃未満の温水を加えておくことが必要である。
【0020】
さらに重要なのが、混合する温水の量である。麦芽1重量部に対し、温水を4重量部以上6重量部未満を加えることが好ましい。一般的に現業における麦汁調製ではタンパク分解を効率よく行うため、麦芽1重量部に対し温水を2重量部から3重量部を加えるのが良いとされているが、ノネナールポテンシャルを測定することを目的とする本発明における麦芽調製法においては実施例に示したとおり、温水を4重量部以上とするのが好ましい。そして、現業の麦汁成分組成からかけ離れてしまうことから温水を6重量部未満とするのが好ましい。さらに麦芽1重量部に対し温水を5重量部とするのが好ましい。また、季節によって水の硬度が変化し、マイシェpHや酵素の安定性に変動を与え、ノネナールポテンシャルポテンシャル値に影響する可能性が考えられるので、温水の硬度を常に一定に調整する必要があり、その値は5°dH 以上15°dH 未満が好ましく、さらに10°dHが好ましい。5°dHでは水の緩衝能が不足し、15°dH以上ではビールの香味に大きな影響が出る。
【0021】
第3に麦汁の温度調整ダイヤグラムである。まず、上記麦芽と温水の混合物を40℃以上60℃未満の温度で、10分以上70分未満保持する。上述したように、麦芽中の脂質などをトランス−2−ノネナール及びその前駆体に変換するリポキシゲナーゼによる酸化反応はこの段階で進行するといわれており、40℃未満では酵素活性が低く、脂質酸化反応が進まずノネナールポテンシャル値が低くなり、60℃以上では酵素が失活し、反応が進まずノネナールポテンシャルが低くなる。10分未満の保持時間では脂質酸化反応が十分に進まず、ノネナールポテンシャルが低くなり、70分以上では酵素が殆ど失活するため、時間のロスとなる。次いで、10分間かけて65℃前後に昇温する。
【0022】
65℃前後に昇温したマイシェは現業ビール工場の麦汁と同品質のものを得るために、アミラーゼ等のデンプン分解酵素等の反応を進めるべく60℃以上75℃未満の温度で30分以上60分未満保持する。60℃未満ではデンプンの液化が起こらず、その分解酵素活性が低くなり、75℃以上では同酵素が失活する。30分未満では十分デンプンが分解されず、60分以上では過度のデンプン分解がすすみ、時間のロスとなる。次いで、11分間かけて76℃前後に昇温し、75℃以上で1分以上保持することにより各種酵素を失活させ、反応を停止させる。酵素反応を完全に停止させるためには、上記の温度、時間が必要である。
【0023】
上記のノネナールポテンシャル測定用に開発された麦汁調製法を用いて23種の麦芽のノネナールポテンシャルを測定、同じ麦芽を各々単独で用いてパイロットプラントスケールの200Lの醸造設備においてビールを製造し、保存後に生成したトランス−2−ノネナール量を測定し、各麦芽のノネナールポテンシャルとトランス−2−ノネナール量との相関を調べたところ、次式に示す一次相関関係式が得られ、両者の間には高い相関があることが判明した。
【0024】
y=0.019x−0.074
(式中、x:ノネナールポテンシャル、y:麦芽アルコール飲料中のトランス−2−ノネナール量)
【0025】
この関係式を用いることにより、任意の麦芽のノネナールポテンシャルから、該麦芽から製造した麦芽アルコール飲料の保存後のトランス−2−ノネナール量を容易に推定でき、ひいては該麦芽アルコール飲料の香味安定性を予測することが可能となった。なお、前記式に記載の一次関係式は本発明の代表的な例であり、麦芽の種類、麦芽アルコール飲料の種類、醸造設備が異なれば、関係式の各定数は変動するのはいうまでもなく、麦芽アルコール飲料中のトランス−2−ノネナール量(y)とノネナールポテンシャル(x)との関係を一次相関関係式で記述されれば、特に制限はない。
【0026】
本発明のもう一つの大きな特徴は、各麦芽を複数混合した麦芽混合物を原料とした麦芽アルコール飲料の保存後のトランス−2−ノネナール量を、各麦芽のノネナールポテンシャルから求め、麦芽アルコール飲料の香味安定性を予測できる点にある。具体的には各麦芽のノネナールポテンシャルを加重平均してもとめた麦芽混合物のノネナールポテンシャルを上述した一次相関関係式に代入することにより、該麦芽混合物を原料とする麦芽アルコール飲料の保存後のトランス−2−ノネナール量を推定する。麦芽はその種類、産地、作付け年度等により固有のノネナールポテンシャル値を持つが、現業の麦芽アルコール飲料の製造では単一の麦芽から製造することは少なく、通常は複数の麦芽を混合して該飲料を製造することから、各麦芽のノネナールポテンシャル値を有効に活用する方法がなかった。本発明では実施例に示したように、各麦芽のノネナールポテンシャルの加重平均値を求めることにより、その加重平均値の低い麦芽からはトランス−2−ノネナールを生成しにくい麦芽アルコール飲料が製造でき、加重平均値の高い麦芽からはトランス−2−ノネナールを生成しやすい該飲料が製造できることが判明した。また、現業の工場規模の醸造設備においても同様の結果を得、実用性が非常に高いことを確認した。
【0027】
本麦芽評価方法を製麦会社ごとに層別を行った。その結果、製麦会社によって麦芽のノネナールポテンシャル値の平均値やばらつきが大きく異なっていることが明らかとなった。この分析結果から、製麦会社を評価してノネナールポテンシャルの高い麦芽を製造している会社から購入量を削減、あるいは中止することにより、自社の製造する麦芽アルコール飲料のトランス−2−ノネナールを低減させることが可能である。あるいは本麦芽評価方法を標準法として採用し、製麦会社と協力して製麦条件の変更試験などを行うことにより、ノネナールポテンシャルの低い麦芽の製造法を開発し、その麦芽を購入する手段も可能となった。
【0028】
また、同一製麦会社内でも製麦工場によって麦芽ノネナールポテンシャル値が異なる傾向を示す例もあった。ノネナールポテンシャルの高い麦芽を製造している工場からは購入しない等の条件を製麦会社に提示することにより、低ノネナールポテンシャル麦芽を購入し、麦芽アルコール飲料中のトランス−2−ノネナール量を減少させることが可能となった。
【0029】
【発明の効果】
本発明の方法により、麦芽のノネナールポテンシャルを指標とした麦芽評価の方法が可能となり、当該麦芽から製造されるビール、発泡酒等の麦芽アルコール飲料製造後のトランス−2−ノネナール量から麦芽アルコール飲料の香味安定性を予測することが、短時間に、かつ多数のサンプルについて行うことが可能となり、さらに本方法を麦芽の購買先の選択あるいは麦芽製造方法の改善に活用することができる。以上により香味安定性の優れた麦芽アルコール飲料を製造するシステムが構築された。
【0030】
【実施例】
以下に、実施例にて具体的に本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(試験例)麦汁のノネナールポテンシャルの測定方法
麦汁を遠心処理しリン酸にてpH4.0に調整後、密閉容器にて100℃で2時間加熱した。清澄な麦汁10mlに内部標準化合物を添加、PFBHA(0−(2,3,4,6−ペンタフルオロベンジル)ヒドロキシルアミン塩酸塩)により誘導体化した。Sep−Pak C18 Lightを用いて固相抽出したトランス−2−ノネナールを質量計付きガスクロマトグラフィーにて定量した。固相抽出には多数サンプルを自動的に処理できる自動固相抽出装置(MORITEX社製、EXMULTI)を用いた。蒸留水25mlを流量10ml/minでカラム洗浄後、誘導体化処理済みの麦汁10mlを流量5ml/minで注入しカラムに吸着させた。25mlの蒸留水を流量7ml/minでカラム内に残存した水溶性の不要物質を除去後、5分間窒素を注入してカラム内の水を蒸発させた。その後、1mlのヘキサンを用いて、流量1ml/minでカラムに吸着している物質を溶出した。
(実施例1)ノネナールポテンシャル測定用麦汁の調製
−麦芽の粉砕度の検討−
評価対象の麦芽を各々粉砕した麦芽を60gを計量、マイシェアパラートにて温水(50℃、10°dH)240mlと攪拌混合し、図1に例示したダイヤグラムに準じた温度条件下でマイシェを調製した。50℃で60分保温後、10分間で65℃に昇温、65℃で40分間保温後、11分間で76℃(1℃/1分)まで昇温。76℃で5分間保温後、冷却する。次に、このマイシェを遠心処理(7500rpm、15mim)した後、その上清をNo.2濾紙にてろ過して得た麦汁を試験例1の方法でノネナールポテンシャルを測定した。粉砕条件を表1に、粉砕度と麦汁中に生成したトランス−2−ノネナール(MA−E2N−P)量の関係を図2に、粉砕度とマイシェ調製開始5分後の麦汁中のリポキシゲナーゼ(LOX)活性との関係を図3に示す。
【0031】
【表1】
Figure 0004191390
【0032】
現業のビール製造で一般的に行われているローラー式粉砕と実験室で使用できるディスクミルを使った粗粉砕はノネナールポテンシャル量及びリポキシゲナーゼ活性はほぼ同等であった。ディスク間隔0.2の微粉砕では顕著にノネナールポテンシャル、リポキシゲナーゼ活性共に増大した。この結果から0.2mm程度の狭いディスク間隔にて調製したものであれば、高濃度のノネナールポテンシャルが生成することが判明した。
【0033】
<麦芽と温水の混合比の検討>
次いで、麦芽と温水との混合比について検討した。麦芽1重量に対し温水を2.5、3、4、5重量を各々加え、麦汁を調製したところ、麦芽1重量に対し図4に示すように5重量であるときが最も大きなノネナールポテンシャル値を示した。
【0034】
(実施例2)麦芽のノネナールポテンシャルと保存ビールのトランス−2−ノネナール量との相関)
実施例1に記載した方法にて23種類の麦芽から麦汁を調製し、ノネナールポテンシャルを測定した。一方、同じ麦芽を各々単独で用いて200Lスケールの醸造設備においてビールを製造した。これら23点のビールを37℃、1週間保存後、生成したトランス−2−ノネナール(E2N)を測定した。ノネナールポテンシャルとトランス−2−ノネナールの相関関係を図5に示す。
【0035】
図5から明らかに両者には高い相関があり、この相関図から相関関係式y=0.019x−0.074(式中、x:ノネナールポテンシャル、y:麦芽アルコール飲料中のトランス−2−ノネナール量)を求めた。これによりこの醸造設備においてビールを製造する場合、麦芽のノネナールポテンシャルを測定し、相関関係式に測定値を代入することにより、同じ麦芽を原料とするビールの保存後のトランス−2−ノネナール量を予測することができる。
【0036】
(実施例3)複数の麦芽を使用するビールの香味安定性の評価
125KLの工場醸造設備における現業の麦芽アルコール飲料の製造では、複数の麦芽を混合して醸造する。この場合、各麦芽のノネナールポテンシャルの加重平均値を用いて、純粋に麦芽が及ぼす麦芽アルコール飲料の香味安定性への影響を評価する。つまり、香味安定性は各種醸造工程のばらつきに影響されるが、本方法により、麦芽の仕込が異なる期間に行われたビールであっても比較可能となる。
高ノネナールポテンシャル麦芽配合、低ノネナールポテンシャル配合2通りの配合の麦芽混合物を原料としてA醸造設備にてビールを醸造、製品保存後(37℃1週間、25℃1ヶ月間)のトランス−2−ノネナール量を測定し、官能評価をおこなった。高ノネナールポテンシャル麦芽は各麦芽ノネナールポテンシャル値の加重平均値が高い麦芽配合、低ノネナールポテンシャル麦芽配合は加重平均値が低い麦芽配合である。その他の醸造条件は同一にして比較した。試醸は同一設備で2回行った。各麦芽配合の加重平均値を表2に、該混合麦芽を用いたビール製造後37℃1週間、25℃1ヶ月保存したビールのトランス−2−ノネナール量を図6に示す。低ノネナールポテンシャル麦芽配合の方がトランス−2−ノネナール生成量が低い結果となった。
【0037】
【表2】
Figure 0004191390
【0038】
また、同様に保存した麦芽アルコール飲料を官能検査において両者比較した結果を図7に示す。低ノネナールポテンシャル麦芽配合の方が酸化評点が低く、低ノネナールポテンシャルの方が良いと答えた割合の方が多かった。なお、酸化評点の高い方が酸化の進んだ香味の劣化したビールであることを示す。
【0039】
(実施例4)工場の醸造設備でのノネナールポテンシャル
実施例3に記載の高ノネナールポテンシャル麦芽配合と低ノネナールポテンシャル麦芽配合の2通りの処方で、各工場の醸造設備において醸造した。各麦芽配合の麦芽ノネナールポテンシャル加重平均値を表3に示す。図8に各試験の冷麦汁のノネナールポテンシャルの結果を示す。いずれの設備においても低ノネナールポテンシャル麦芽配合をした方がノネナールポテンシャル生成量が低かった。従って、本麦芽評価方法は異なる醸造設備で醸造する場合においても有効であることが示唆された。
【0040】
【表3】
Figure 0004191390
【0041】
(実施例5)製麦会社ごとの層別
本麦芽評価方法を用いて製麦会社ごとに層別を行った。結果を図9に示す(図中、括弧内の数字は試験サンプル数を表す)。なお、これらの製麦会社はいずれも欧州系の会社で、使用している大麦品種はいずれも欧州系の品種である。製麦会社によって麦芽のノネナールポテンシャル値の平均値やばらつきが大きく異なっていることが明らかとなった。
【0042】
(実施例6)製麦会社内におけるノネナールポテンシャルのばらつき
本麦芽評価方法を用いて同一製麦会社内の製麦工場ごとに層別を行った。結果を図10(図中、nは試験サンプル数を表す)に示す。同一製麦会社内でも工場ごとに麦芽ノネナールポテンシャル値が異なる傾向を示すことが明らかとなった。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の麦汁調製温度ダイアグラムの一例を示す。
【図2】麦芽の粉砕条件と麦汁のノネナールポテンシャルとの関係を示す。縦軸はノネナールポテンシャル。
【図3】麦芽の粉砕条件と麦汁のリポキシゲナーゼ活性との関係を示す。縦軸はリポキシゲナーゼ活性。
【図4】麦芽と水の混合比と麦汁中に生成するノネナールポテンシャル値との関係を示す。
【図5】麦芽のノネナールポテンシャルと該麦芽から製造したビールの保存後のトランス−2−ノネナール生成量との相関を示す。図の上の式はその一次相関関係式である。Xは麦芽ノネナールポテンシャル、Yはトランス−2−ノネナール生成量
【図6】高ノネナールポテンシャル麦芽配合と低ノネナールポテンシャル麦芽配合の2通りの麦芽混合物から、A醸造設備で製造したビールの保存後のトランス−2−ノネナール量を示す。
【図7】A醸造設備で混合麦芽から製造した保存後ビールの官能検査結果を示す。
【図8】A醸造設備を含む6つの醸造設備にて、A醸造設備と同じ処方の混合麦芽から調製した麦汁のノネナールポテンシャル値を示す。
【図9】製麦会社間の麦芽ノネナールポテンシャルの比較を示す。
【図10】同一製麦会社の製麦工場間の麦芽ノネナールポテンシャルの比較を示す。

Claims (6)

  1. 麦汁の調製工程が以下の1〜5の工程からなる、麦芽から小スケールで調製した麦汁のノネナールポテンシャルを指標とすることを特徴とする麦芽アルコール飲料の製造に用いる麦芽の評価方法。
    1.ディスク型粉砕機またはローラー型粉砕機を用いてローラ間隔またはディスク間隔を0.1以上0.8mm未満に設定して麦芽を粉砕する工程、
    2.麦芽1重量部と温度が40℃以上60℃未満、かつ硬度が5°dH 以上15°dH未満の 温水を4重量部以上6重量部未満混合する工程、
    3.麦芽と温水の混合物を40℃以上60℃未満の温度にて10分以上70分未満保温する工程、
    4.前記混合物を60℃以上75℃未満の温度にて30分以上から60分未満保持する工程、
    5.前記混合物を75℃以上で1分以上保持する工程。
  2. ローラー間隔またはディスク間隔を0.2mmに設定して麦芽を粉砕し、麦芽1重量部に温度が50℃、かつ硬度が10°dH の温水5重量部を混合する請求項記載の麦芽の評価方法。
  3. 麦芽から小スケールで調製した麦汁のノネナールポテンシャルから当該麦芽から製造されるアルコール飲料中に生成するトランス−2−ノネナール量を、次の相関関係式
    y=0.019x−0.074
    (式中、x:ノネナールポテンシャル、y:麦芽アルコール飲料中のトランス−2−ノネナール量)
    を用いて推定し、当該トランス−2−ノネナール量を指標とすることを特徴とする麦芽アルコール飲料の香味安定性の予測方法であって、麦汁の調製工程が以下の1〜5の工程からなる麦芽アルコール飲料の香味安定性の予測方法。
    1.ディスク型粉砕機またはローラー型粉砕機を用いてローラ間隔またはディスク間隔を0.8mm未満に設定して麦芽を粉砕する工程、
    2.麦芽1重量部と温度が40℃以上60℃未満、かつ硬度が5°dH 以上15°dH未満の温水を4重量部以上6重量部未満混合する工程、
    3.麦芽と温水の混合物を40℃以上60℃未満の温度にて10分以上70分未満保持する工程、
    4.前記混合物を60℃以上75℃未満の温度にて30分以上から60分未満保持する工程、
    5.前記混合物を75℃以上で1分以上保持する工程。
  4. ローラー間隔またはディスク間隔を0.2mmに設定して麦芽を粉砕し、麦芽1重量部に温度が50℃、かつ硬度が10°dH の温水を5重量部を混合する請求項記載の麦芽アルコール飲料の香味安定性の予測方法。
  5. 複数種の麦芽の混合物から製造される麦芽アルコール飲料の香味安定性の予測方法において、該混合物を構成する各麦芽から調製される麦汁のノネナールポテンシャルの加重平均値から当該麦芽混合物から製造されるアルコール飲料中に生成するトランス−2−ノネナール量を推定し、当該トランス−2−ノネナール量を指標とすることを特徴とし、麦汁の調製工程が以下の1〜5の工程からなる、麦芽アルコール飲料の香味安定性の予測方法。
    1.ディスク型粉砕機またはローラー型粉砕機を用いてローラ間隔またはディスク間隔を0.8mm未満に設定して麦芽を粉砕する工程、
    2.麦芽1重量部と温度が40℃以上60℃未満、かつ硬度が5°dH 以上15°dH未満の温水を4重量部以上6重量部未満混合する工程、
    3.麦芽と温水の混合物を40℃以上60℃未満の温度にて10分以上70分未満保持する工程、
    4.前記混合物を60℃以上75℃未満の温度にて30分以上から60分未満保持する工 程、
    5.前記混合物を75℃以上で1分以上保持する工程。
  6. ローラー間隔またはディスク間隔を0.2mmに設定して麦芽を粉砕し、麦芽1重量部に温度が50℃、かつ硬度が10°dH
    の温水を5重量部を混合する請求項5記載の麦芽アルコール飲料の香味安定性の予測方法。
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